明治40年5月7日(水)

摩洛哥王廃位 諸大臣は無能な現在の国王を廃し、その弟ヲマラケスから迎えて、王位に就けようと決し、その旨を宣旨した。

阿片貿易と英国 若し清国政府が自国に於ける阿片の耕作を禁止する必要を自覚する前に、英国政府が印度に於ける阿片の生産に干渉する様な事があれば、実に愚の極みである

摩洛哥政変 新王は同時に佛国医師マウシャン氏を殺害した犯人を赦免し、又既に罷免された知事を復職させた。

欧州外交近情 オーストリア外相エーレンタール男爵とビューロ宰相との会談の結果、更にオーストリアと伊国両国外相の間に商議を開く事になった。

摩洛哥王廃位 6日タイムス社発

タンジール来電―チエシト地方が無政府状態に陥った結果、諸大臣は無能な現在の国王を廃し、その弟ヲマラケスから迎えて、王位に就けようと決し、その旨を宣旨した。

阿片貿易と英国 6日上海経由ロイター社発

約50年間という長い間、清国に於いて貿易事業に従事したアーチバルト、ジョン、リツトル氏が今回英国に帰省した。氏は、訪問した本社員に対して次の様に明言した。

清国の利益の為に、阿片の輸出を減少させる事をインドに要求する事は寧ろ滑稽である。印度の阿片は僅かに清国沿岸の都市で使用されているに過ぎず、清国に於いて使用されている阿片の総額からすれば実に言うに足らざる程の少量である。若し清国政府が自国に於ける阿片の耕作を禁止する必要を自覚する前に、英国政府が印度に於ける阿片の生産に干渉する様な事があれば、実に愚の極みであると考える。

摩洛哥政変 同上

マラケス市民は、先月27日、ムレーハビットをモロッコ王に仰ぐ旨宣言し、新王は同時に佛国医師マウシャン氏を殺害した犯人を赦免し、又既に罷免された知事を復職させた。

解説:佛国はモロッコを保護国としており、3月26日の新聞に佛国医師が殺害された記事がある。

欧州外交近情(三国同盟と英国皇帝) 5日ベルリン特約通信社発

オーストリア外相エーレンタール男爵とビューロ宰相との会談の結果、更にオーストリアと伊国両国外相の間に商議を開く事になった。これは英国皇帝の地中海旅行に対する対抗措置であり、皇帝の旅行に就いて独逸議会は政府と一致団結し、社会民主党すら政府及び軍隊に対する攻撃を緩めた。

解説:独逸、オーストリア及び伊国は三国同盟を結んでいるが、7年後の第1次世界大戦では、伊国はオーストリアとの間に領土問題があり、結局連合国側に立った。