明治38年9月3日(日曜日)

 

英国の媾和観 英国の新聞は断固たる日本の利益であると称し、一般人民も戦争を終結したのは利口なやり方であり

平和と佛露独 パリ―発行の諸新聞はあまり日本の寛大さを称賛せず、その多数は露帝が一切の譲歩を拒絶した聡明さを讃え奉っている。

政友会幹部の態度

文明、人道の名の下に平和の克復を見る事が出来たのは大いに喜ぶべき事、この際列国の意向に反するのは最も危険な事等から考えると現在の講和は良くその時を得たものである

講和問題と進歩党 鳩山和夫氏は目下の大問題に就き大いに党の反対意見を発表し兼ねて戦後の経営に就き力を尽くさなければならないと述べ,

英国の媾和観 1日ロンドン特約通信員発

英国の新聞は断固たる日本の利益であると称し、一般人民も日本がこの際支那に於ける貿易を開発する意味で、戦争を終結したのは利口なやり方であり、日本は露国よりも財政上の支援を要する事が少ないと言える。

平和と佛露独 1日上海経由ロンドンルータス社発

パリ―発行の諸新聞はあまり日本の寛大さを称賛せず、その多数は露帝が一切の譲歩を拒絶した聡明さを讃え奉っている。

セントピータスブルグの諸新聞は現在露国陸軍の勢力が未だかって無い程強大となっているのに、平和条約を締結された事を悲しんでいる。

独逸の諸新聞は何れも平和の成立を歓迎している。

政友会幹部の態度

政友会は昨日午前、協議員会を開き、冒頭に西園寺総裁は講和問題に関し訓示的演説を行った。その要点は今回の講和会議は一種特別の性質がある事、文明、人道の名の下に平和の克復を見る事が出来たのは大いに喜ぶべき事、この際列国の意向に反するのは最も危険な事等から考えると現在の講和は良くその時を得たものであると断じ、次に樺太の割譲、軍費の支弁の二件に対して、僅かに樺太の一部を得るに過ぎなっかった事は余の最も不満とする所であるが今となっては最早せんない事である。

講和問題と進歩党

進歩党では昨日午後一時から政務調査委員総会を開いた。鳩山和夫氏は目下の大問題に就き大いに党の反対意見を発表し兼ねて戦後の経営に就き力を尽くさなければならないと述べ,犬養毅氏もまさかこの様な大屈辱の協定をするとは考えていなかった。就いては今後成すべき事はこの善後策のみで、先に政府は講和の成否に係らず臨時議会を開くとの約束があり、我が党の尽くすべきはこの時にあり、大いに政府の責任を問はなければならないと述べた。