明治38年9月1日(金曜日)

媾和条約調印 条約の調印は当地にて全てを終わり、当地より直ちに我が全権は帰朝すると思われる

媾和条件

媾和条件の主たるものは、樺太の分割は北緯五十度を以て日露の境とする。東清鉄道の日本が所有となるのは、テフシュン駅から以南であり、俘虜賠償金は約一億五千万円

大々屈辱の大理由

開戦以来連戦連勝の我が日本帝国は何が故に今回の如き屈辱に甘んじてまでも講和の成功を図らなければならないのか

媾和条約調印 29日午後7時ポーツマス特派員発

条約の調印は全てワシントンで行われるであろうとの説もあったが当地にて全てを終わり、当地より直ちに我が全権は帰朝すると思われる。

媾和条件

国民新聞の報道によれば媾和条件の主たるものは、次の様である。

樺太の分割は北緯五十度を以て日露の境とする。両国ともに樺太に於いては兵備をしない事に定められ、朝鮮に於いても北の露国と境を接する所は互いに兵備を置かない事に定められたと云う。

東清鉄道の日本が所有となるのはハルピンの南、テフシュン駅から以南の分であり、俘虜賠償金は約一億五千万円との説がある。

沿海州沿岸の漁業権に関しては日露両国共に同等の権利を持つ事に定められていると云う。

大々屈辱の大理由

開戦以来連戦連勝の我が日本帝国は何が故に今回の如き屈辱に甘んじてまでも講和の成功を図らなければならないのか。五千億の民衆は皆愕然として当局有志の不甲斐なさを憤らない人は居ない。

桂首相は講和談判開始された当時、ある人に次の様に語った。

今回の戦争の目的は帝国の侵略的精神から生まれたのではなく、自衛上止むを得ず生まれた事はかの宣戦の詔勅によっても明らかである。そして韓国は既に我が勢力範囲に帰して、満州に於ける露国の経営は又水泡に帰し、却って我が勢力圏内に在ることで開戦の目的は既に貫徹されたものと言うべきで、償金や割地の様な事は寧ろ枝葉に属すると云うべきである。

講和条件に関する投書

ウイッテ

戦争に負けて、談判で大勝利を占めた敵の大使はさすがに小村よりウイッテだ。

落首

樺太を半分取って樺の字をロシヤから読めばばかとなるなり。