明治38年7月1日(土曜日)

黒海艦隊謀反 反乱者は大砲を発砲して、一砲弾で21名のコサック兵を殺した

謀反別報 艦長が一人の水兵を銃殺したので、反乱を起こし、士官を攻撃して数名を殺した

黒海艦隊謀反 29日ロンドン特約通信員発

黒海艦隊所属戦艦クニアズ、ポテムキン号の艦上での反乱が一度伝えられてから、露国に関するその他の報道は一切顧みられなくなった。

上記の戦闘艦以外の諸艦船もまた反乱に加わろうとする勢いがある。オデッサ全市を挙げて、人心は動揺している。反乱者は大砲を発砲して、一砲弾で21名のコサック兵を殺した。

暴徒は港内の各所で略奪や破壊を行い、汽船は放火され、商品は奪われ、殺戮された者は既に百名を越えている。

この騒動は恐らく一大騒乱の始まりではないかと思われる。

謀反別報 30日上海特派員発

オデッサに停泊中の戦艦クニヤズとポテキンの水兵は食物材料の請願書を差し出したところ、艦長が一人の水兵を銃殺したので、反乱を起こし、士官を攻撃して数名を殺したと報道されている。この朝水兵等は同僚の死体を陸上に上げたが帽子も被らない罷免労働者やその他の群衆が死体を受け取って、検視した。警察官やコサック兵は群衆を解散させようとしたが、群衆はこれに抵抗して、戦闘が始まった。罷免労働者のとって重大であった情勢は、一転して激烈となった。

解説:映画「戦艦ポチョムキン」で有名な事件である。 戦艦ポチョムキン艦上において、乗組員の食事用の肉にウジ虫が湧いていたことをきっかけに反乱が発生、しかし最後には戦艦ポチョムキンは、ルーマニアコンスタンツァに入港し、乗組員は当地に亡命。彼らの一部は恩赦の誘いにのってロシアに帰国後、処刑された。