明治38年6月5日(月曜日)

日英同盟拡充 、英国外務大臣「我らの意見は、あくまでもこの継続を考えなければならない」

佐世保病院内初会見 東郷大将は、後二時「ロジェストウェンスキー」提督を病院に訪問した

 

日英同盟拡充 4日上海経由ロンドン ルータス社発

保守党の主宰する晩餐会の席上で、英国外務大臣「ランスダウン」侯は日英同盟継続に関して次のように述べた。

「我らの意見は、期限の到来次第、あくまでもこの継続を考えなければならないとするものである。ただこの際考慮すべき実際問題は、この同盟条約を現在の形のままに継続するか、又は更に一層これを堅固にし、且つ凝結させるべきある種の手段を求める必要があるのではないか、という点にある。何れにせよこの同盟は、有力な平和の手段にする必要があり、若し可能であれば今後、これを以て単に大火の延焼を防止させるのみならず、世に一切の大火の跡を根絶するようこれを改正する必要がある」

佐世保病院内初会見 3日佐世保特派員発電

東郷大将は通訳として山本大尉を従え、午後二時「ロジェストウェンスキー」提督を病院に訪問した。

提督は重傷にもかかわらず、身を起して慇懃に之を迎えた。

この時東郷大将は礼を厚くして次の様に告げた。

「戦闘の常とは言え、貴君が今回負傷された事は本官の最も痛嘆に堪えない所であります。

殊に当病院は捕虜収容所でないので、万事不自由な点が多いと思いますが、貴君幸いにこの意を諒として、一日も早く快癒の上、本国に帰還されるよう切望します」と言葉を尽くして慰安された。

これに対して「ロジェストウェンスキー」提督は厚遇に感謝し、さらに感慨に堪えない風に、しばし感涙に咽ばれた後「貴国艦隊が最も精鋭で有力であることは、本官の敬服する所であり、貴官の丁重な訪問に接した事は、又余の無上の光栄とする所であります。ここに謹んで貴官の健康を祝します」と答えた。