明治38年4月30日(日曜日)

モロッコ問題 パリー発行ル、タンはモロッコ問題に関し、独逸に対する好戦的論文を掲げている

敵艦隊の用意 サイゴン及びカムラン湾等の有力な通信施設がある港湾付近を遊弋している

露都騒乱の憂慮 イースター祭(5月1日)の当日、騒乱が発生する恐れがある

モロッコ問題 佛国はその東の国境に注意を払う必要があると認められる

モロッコ問題 28日ベルリン特約通信社発

パリー発行ル、タンはモロッコ問題に関し、独逸に対する好戦的論文を掲げているが、佛国政府はこの論文は銀行家の策略から生まれたと主張した。

敵艦隊の用意

敵の第2艦隊が、その遊弋している場所を安南南方沿岸に限っているには大きな理由がある。即ち同艦隊はなるべくサイゴン及びカムラン湾等の有力な通信施設がある港湾付近を遊弋し、必要な時が来たならば直ちに各方面に通信を送る為である。現在の艦隊の位置からカムラン湾まで70マイル、サイゴンまで200マイル内外であり、快速の駆逐艦であれば1時間25ノットの速力が出せ、僅かな時間でその目的を達成する事ができる。

露都騒乱の憂慮

最近露京から伝わる諸報道によれば露国はイースター祭(5月1日)の当日、同地に於いて騒乱が発生する恐れがあるため、諸大公の宮殿、政府の建物並びに諸銀行は現在強力な軍隊が護衛中であり、又多数の大地主は続々と露京を退去していると言われている。

モロッコ問題 29日上海経由ロンドンルーター社発

モロッコに対する独逸の決然とした深慮遠謀な政策はパリーに於いて欧州政界の危険要因を大きくするのであり、佛国はその東の国境に注意を払う必要があると認められる。