明治37年8月2日(火曜日)

本願寺差押えられる 美濃国大橋銀行より借り出した金の利子4千円を滞納した

プレヴェの後任 フォン、ワール将軍が選ばれるであろうと予想されている

ベーリング海漁業問題 英国が同漁業地を保護する事と決まったようである

トルストイ伯 日露戦争論 誰も希望しない、誰も求めないことが起こってしまった

先月下旬の貿易 輸出に於いて生糸の売れ行きが著しく伸びた

本願寺差押えられる(京都)

大谷派本願寺は美濃国大橋銀行より借り出した金の利子4千円を滞納したため、昨31日執達吏が光栄法主の財産を差し押さえようとした。しかしこの屋敷は大谷伯爵家の所有であり、負債は本願寺に属するものとの理由で差押さえを拒絶した。その為篠原事務総長方等で差押さえを行った。

プレヴェの後任

露国内務大臣の後任に、フォン、ワール将軍が選ばれるであろうと予想されている。将軍は内務次官の1人で全露国憲兵団の司令官を兼ね警察行政上素晴らしい権限を有する人である。フォン、ワール将軍の子息は、一士官として目下松山において捕虜の身であり、気の毒な事である。

ベーリング海漁業問題

ベーリング海の海豹漁業問題について、英露両国間の交渉がまとまり英国が同漁業地を保護する事と決まったようである。それまで厳重に取締りを行っていた露国軍艦が、日露戦争の為にこの地にいない事を幸いにして、米国や日本の密漁船が欲しいままに密漁を行い、従来露国皇室の御用品として買い上げられていたラッコ皮さえ続々市場に現れていた。

トルストイ伯 日露戦争論

トルストイ伯の日露戦争論は6月16日のロンドンタイムス紙上の約10欄を埋めた大長編で、伯が心血を注いだ最近の大作といわれるものである。

第1章より

戦争はまたもや始まった。誰も希望しない、誰も求めない困ったことが起こってしまった。

東西を隔てる事幾千里、一方は殺生を禁じている仏教の国、片方は博愛を標榜しているキリスト教徒であるにも拘らず両者互いに野獣の如く海に陸に他を虐殺している。

解説:トルストイ伯とは「戦争と平和」、「アンア、カレーニナ」で知られる世界的文豪で、この論文は、日露戦争の勃発に際して発表した反戦論文で、ロシアでは発禁処分となりロンドンタイムスに掲載された。

先月下旬の貿易

 先月下旬の海外貿易は、輸出に於いて生糸の売れ行きが著しく伸び、製茶、銅、樟脳等の重要品も又増加したがそれに対して輸入綿花が特に減退した結果84万円余りの輸出超過となっている。また金銀は引き続き銀の輸入が多い為48万円の輸入超過である。