明治37年6月29日(水曜日)

獨逸新聞の旅順海戦評 鮮血淋漓の悲劇的災厄の報道に接する日も近い

両将の衝突 クロパトキン、アレキセーエフ両将の確執はますます激しくなっている。

ハルピンの兵員 日本軍は225千の露兵と会戦することになる

露都の一風説 米国はそのフィリピン領土を日本に売渡そうとする意思がある

獨逸新聞の旅順海戦評

先日の旅順口外の海戦に関する評論で、機敏な日本人はその前に被った運送船の損害をこれで取り戻したのみならず、その損害に対して高い利子を徴した。今や大勢は露国にとって甚だ絶望すべきものとなっている。鮮血淋漓の悲劇的災厄の報道に接する日も近いのではないだろうかと。

両将の衝突 佛 五月十七日

クロパトキン、アレキセーエフ両将の確執はますます激しくて、前者は鴨緑江に於ける敗戦の責任を後者に帰している。ク将軍の最初の計画は旅順を棄てハルピンに撤退することであったがア総督は、それでは旅順の艦隊を失い、その守備隊も退却の途中で日本兵の為に殲滅させられる恐れがあるため、これは非常に下手な作戦であるとした。露帝の左右に侍している者の中には旅順の不抜を信じてア総督の所論に賛成する者が多かったようである。 

  アレキセーエフ海軍大将は極東総督(太守)であり、極東に於ける軍事、外交、行

政の責任者である。クロバトキン陸軍大将はロシア陸軍の満州軍総司令官で極東総

督にとっては部下となる。

ハルピンの兵員 

露都通信によれば、ク将軍はリョウヨウを棄て、12万の兵と共にハルピンまで撤退し、ここに於いてハルコフからの55千人、モスコーからの5万人を集合させる予定である。

日本軍が同地に到着するためにはなお6週間が必要であり、到着したならば225千の露兵と会戦することになるであろう。

露都の一風説

66日ノーボエ紙ば、米国はそのフィリピン領土を日本に売渡そうとする意思があるように報道しているが、これは日米両国間に他日生ずるであろう闘争を避けたいとする米国人の意見に基くものである。これについて同紙は更に、米国のフィリピン領有は、欧州諸国が喜ばないことであるが、しかし日本がこれを領有することに比べると遥かに勝っている。日本が一度これを手に入れるならば、欧州諸国のアジアに於ける利害は激しく脅迫されるであろう。特に英国は印度に於いて、佛国は印度支那に於いて及びオランダはインドネシアの地に於いて、常に注意をしなければならないような事態になるであろう。