明治37年6月20日(月曜日)

大本営会議 昨日午前十時より宮中に於いて大本営会議が開かれた。

運送船遭難と山本海相 上村艦隊は、ウラジオと旅順の艦隊の合同を妨げる事を主たる任務としている

日露戦争とポーランド新聞 露国政府は我がポーランド青年を極東に送ろうとしている

大本営会議

昨日午前十時より宮中に於いて大本営会議が開かれた。皇太子殿下、有栖川宮殿下を始め奉り山縣元帥、大山総参謀長、桂首相、寺下陸軍大臣、山本海軍大臣、小村外務大臣、伊東軍令部長等九時三十分から相前後して出仕された。大元帥陛下は岡澤大将並びに侍従武官を従へさせられて御臨席に相成り、直ちに会議を開かれ種々の審議がなされた。大山総参謀長や桂首相等に対し優渥な御下問を賜って、同十二時散会されたようである。

運送船遭難と山本海相 

進歩党の委員加藤政之助、大石熊吉、大津淳一郎の三氏は昨日午前十時山本海相を訪問し次の事項を陳述して同大臣の説明を求めた。

かって元山沖に於いて金州丸が露国のウラジオ艦隊に撃沈された。当時の国民も当局者も共にあってはならない事と考え、それ以来厳重に警戒していたと信じたいが、然るに今回常陸丸以下が遭難してしまった。護衛の無い商船を敵のいる海域で運航するとは遺憾であり、子弟を兵役に服させている一般国民は不安の念に駆られて一日も安心することが出来ない。

山本海軍大臣は次のごとく答弁した。

上村艦隊は対馬及び朝鮮海峡を介して、日本と大陸間の海域を防備することにより、ウラジオと旅順の艦隊を両断して、両者の連絡や合同を妨げる事を主たる任務としている。そのためその一部を割いて、毎日行われている個々の陸兵輸送船を護衛させるならばその本来の任務を遂行する力を殺ぐ恐れあり、万一この本務を失敗するならば全体の作戦計画に狂いを生じて、国家の一大事となってしまい、これだけは当事者として決してしてはならない事と考えている。しかし再び今回の様な不幸があれば、国民は耐える事が出来ないので、安全な特殊の航路を設けることにし、その命令を伝へたので今後の輸送は相当安心することが出来ると考えている。

 

日露戦争とポーランド新聞

日露の海戦以来ポーランドの独立運動が起こり、ポーランドの機関新聞は何れも自由独立の思想を鼓吹する努力をしており、その一つのノーワ レッオーマの社説を紹介する

露国政府は我がポーランド青年を極東に送ろうとしている。私は暴虐無道なロシアの利益の為に、心にも無い戦争をするという不幸を見た。露国は陰険な計略と暴虐な手段とを以て我がポーランドを圧服したように今や又同じ方法によって極東を併合しようとしている。然るに恨みの涙を呑んでいる我がポーランド人が、この敵国ロシアの不正な政策を助けて、数千里も離れた所で血を流さなければならないとは、痛恨の極みである。