明治37年6月17日(金曜日)

遭難各船 常陸丸が敵艦から包囲攻撃されて白煙が上るのを見た

常陸丸並佐渡丸 常陸丸は、長崎にある三菱造船所に於て建造された最新鋭の船舶である

敵国の恐慌 シベリア鉄道を使用する通商は中止させられ、商工業は恐慌をきたしている

運送船遭難公報 将校の大部分は割腹又はピストルで自殺し某中隊長は海に身を投じた

遭難各船 十五日小倉特派員発電

幾台丸は大島の北方十海里において敵艦に遭遇したが午後四時に博多に帰港した。同船長の談によれば、同船より五海里先を行っていた常陸丸が敵から砲撃されるのを見て航路を変更した。ある船員の談によれば、常陸丸が敵艦から包囲攻撃されて白煙が上るのを見た。行方不明なのは和泉と佐渡の二隻である。敵艦はウラジオの三隻であり、濃霧に乗じて、ウラジオを出港して他の艦隊と合流しようとしたようであるがその後行先不明である。

常陸丸並佐渡丸

常陸丸は去る明治三十一年、長崎にある三菱造船所に於て建造され、我国で造船所が出来て以来の最初で最大の船舶である。同造船所はこれを模範的な船舶とするために多大の損失を忍んで、頗る建造に意を用いて、進水した時は内外の造船や海運関係者から非常な賞賛を博した歴史を持っている。総トン数は六千百七十五トンで速力は14ノットである。

また佐渡丸はアイルランドのウオークマン、クラーク社で建造され、常陸丸と同じように郵船会社が所有する海外航路線の船舶である。

 敵国の恐慌

523日、露国のタイムス通信員の報道によれば、戦争はすでに猛烈な影響を露国の経済会に及ぼしている。ブエオモスチの一記者が次のように報道している。

軍隊がシベリア鉄道付近地方に集中したため、シベリア鉄道を使用する通商は事実上中止させられ、露国の商工業は再び恐慌をきたしている。この商業の停滞により、大きな影響を受けるのはモスコーであり、同地にある幾つかの大型商業機関は支払い能力を失いつつある。

ロッズに於いては十五万人の解雇者があり、同時にオデッサ及びその南部各市における各造船所での修理工事は何れも取り止めとなっている。

運送船遭難公報

昨日午前十時二十分玄界灘に於いて、我が佐渡丸及び常陸丸とも敵艦四隻に砲撃され、敵の魚雷によって午後三時撃沈された。常陸丸生存者の報告によれば連隊長須知中佐は連隊旗を焼却した後、汝等は海上を泳いで帰りこの状況を報告せよと命じられ、その後間もなく戦死された。将校の大部分は割腹又はピストルにて自殺し某中隊長は海に身を投じた。