明治37年6月13日(月曜日)

海軍の蓋州砲撃 派遣した艦隊は旅順口の背面海岸を封鎖中である

ドクトル、イーストレーキ氏の従軍談 日本軍は確かには大和魂を持って居る

大本営移転せず 移転を望んでいるのは大本営関係の役人

時局雑俎 旅順の天嶮は単に前面からの砲撃だけでは決して陥落しない

海軍の蓋州砲撃

去る六日以来遼東湾方面を行動した東郷第三艦隊司令官報告

派遣した艦隊は旅順口の背面海岸を封鎖中であるが去る七日一部を北上させ、蓋州付近沿岸の威嚇射撃を行った。たまたま塔山付近を南下する軍用列車がいたが我が砲撃に驚いて再び北方に引返した。蓋州付近に於いて敵は我れの上陸に備えようとしているようで歩兵、騎兵が次第に増加し、地形を利用して我を待とうとしているようであったが赤城、宇治の両艦が急に海岸に接近してこれを猛撃し、多大の損害を加えたようである。

ドクトル、イーストレーキ氏の従軍談

米国は非常な熱誠を以って我が国に同情を寄せ、その結果同国赤十字社員であるドクトル、イーストレーキ氏を数名の医員と共に自費で我が軍に従軍させ、彼我兵士の負傷者を救護させる事になった。そのため韓国に渡航し、その後戦地に於いて熱心に活動していたが一時日本に来ていたので話を聞く機会があった。

鴨緑江の激戦に遭遇しましたが日本軍の勇壮な行動を見ていると確かには大和魂を持って居ると感心しました。将校は兵士が伏せて射撃をして居る時でも直立又は折式の姿勢で指揮をとっており、飛び来る弾丸を物ともせず軍刀を振るって活発に戦う有様は剛胆無比というべきです。

大本営移転せず

その移転を望んでいるのは大本営関係の役人であり、それは臨戦地になれば従軍記章が貰えて加俸が今より二割近く多くなる為である。又之を望まないのは新聞社で、移転になると今でさえ電報料で支出が嵩んで居るところを本社と大本営間を電報が行き交う事になれば電報料の為に破産する小新聞も出てくるだろうと或人の評である。

時局雑俎

ロンドン フォートナイリーレビュー紙上で東洋通のイーハミルトン氏は旅順の情勢を解説し、日本の作戦計画が単に前面の砲撃によってこれを陥落させようとしているのであれば到底成功しないと断言している。その要旨を紹介する。

旅順の山頂にある要塞には十八から二十台の砲台があって、何れも鎮守府とは完全な交通手段があって、その他に六門から八門の大砲を持っている海上砲台があって十インチから十一インチの大砲を備えている。これに加えて速射砲と無線電信機を持っている。

旅順前面の山は急勾配の斜面であって草木もない。ただ黄金山砲台付近のみは雑草によって覆われている。

旅順の砲台は皆海面より非常に高い位置にあるためにその発射には砲眼で照準する必要が無いため発射速度が非常に早くなる。

旅順の天嶮は単に前面からの砲撃だけでは決して陥落しないと私は固く信じている。