明治43年8月の世界情勢

主要記事

世界情勢

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土勃関係険悪 31日上海経由ロイター社発

ソフィア来電―ブルガリアに在住するマケドニア人に対し、トルコ官憲が武器を没収しようとして彼らを不法に取り扱った結果、トルコとブルガリア間の関係が再び面倒になりそうである。

ロンドンタイムスの通信員の報道によれば、ブルガリアは万一の場合に対する準備を始めており、そしてもし外交上の手続きで、本件を満足に解決することができない場合には、軍隊に動員令を下す決心であると言われている。

82

英国と西蔵 1日北京特派員発

英国政府は、1日、当地の公使館を通じて支那政府に対し、チベットに騒乱が起きない限りは、国境を越えて兵を進めないと声明した。ダライラマがチベットに入った後、支那兵と西蔵民衆との間に紛争が起きる懸念を英人も共に認めており、インド兵のチベットへの侵攻の準備はそれを恐れているからである。

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土国海軍拡張 2日タイムス社発

コンスタンティノープル来電―トルコ政府は、北清事変の際に清国を訪問した独逸戦艦ウエルト号(9,874トン)と同ブランデンブルク号(9,874トン)を購入し、これに対し百万ポンドを支払った。

解説:戦艦三笠の排水量は15,140トンである。現在のイスタンブールは、当時はコンスタンティノープルと呼ばれていたようである。

西蔵騒憂続報 2日上海経由ロイター社発

本社カルカッタ通信員の報道によれば、チベットと密接な関係がある商人等は、英人のダライラマ歓待を感謝しているチベット人が英人の商店等を攻撃するようなことは決してないと確信している。チベット人は、ダライラマを追っている清兵を妨害しようとしているが、もし紛争が起こるとするならば、清人がこのチベット人を懲罰しようとする結果であろうと言明した。本社シムラ通信によれば、英国軍隊がいよいよ活動する場合にはシリグリを基地とするであろうと言われている。

 

84

西蔵と英国 3日タイムス社発

タイムスは社説に於いて、チベット問題を論じ、インド東北地域における英兵の集結は、紛争が将に起きようとしている兆候であると論じ、1904年カングハスバンドのチベット遠征以後取ってきた政策が誤っていたことを悲しみ、もし清国が引き続きチベットに於いて攻勢を取る場合には、英国はチベットとの関係を考え直す必要があると言明した。

カメルン土人懲罰 3日上海経由ロイター社発

独逸遠征隊を派遣した結果、カメルン土人の酋長7名が逮捕され、独逸商人殺害事件の共犯者として斬首された。

解説:第1次世界大戦終了後カメルにンは英仏の委任統治領となった。

 

85

西蔵と英国 4日上海経由ロイター社発

1903年より翌年に掛けて、英国のチベット交渉委員であったサー、フランシス、ヤングハスバンド氏は、タイムス社に寄稿し、1904年、ラッサに行った使節の結果は、次第に放棄された。清国人は着々と努力し、再び我々とチベット人との間に入り込んだ。私の経験によれば、清国人は自らその隣人であるインド人に反対する政策を執るか、若しくはチベット人を焚き付け、その様な政策を執らせる傾向があると言明した。

南極探検陸上隊員決定 内国電報4日発

厳密な体格検査 8壮漢2少年

一度南極探検計画が発表されると、船員、隊員の希望者はたちまち300余名に及び、いずれも決死の覚悟をもって、白瀬隊長に迫っていたが、帝国大学内科診察室で厳密な体格検査を行い、甲種合格者の内より、更に白瀬氏が人物検査の上、陸上要員として次の3名を選抜した。

新井嘉平氏 高木吉太郎氏 奥野春治氏

 

8月6日

土耳其の暴乱 5日タイムス社発

コンスタンティノープル来電―公式の算定によれば、ダマガスカス地方に於いて、去る日曜日以後1千名のドルーズ人が殺害された。その上今回更に多数の軍隊が派遣される。

解説:多くのイスラム教徒は、ドルーズ派(シーア派の1派から分派した)はイスラムではないと考えている。

西蔵問題論評 5日上海経由ロイター社発

先年、遠征隊司令官としてチベットに入ったヤングハスパンド少将が、再びロンドンタイムスに寄稿し、チベットに関する英露協約の利益は、清国人が独り占めをしている。チベット人唯一の希望、則ち全て彼らの任意にさせる方針は、決してこれを放棄してはならない。彼らは英露両国に向かって保護を哀訴しているのではないかと論評した。

8月7日

日露協約と英国 6日タイムス社発         

ロンドンタイムスは、その社説に於いて日露協約と満州との関係を次のように論評している。

我々は日露両国と清国との間に従来結ばれていた取り決めに関し、もう少し詳細に説明するよう希望する。満州における英国通商の発達を考えると、英国は今回の日露新協約が第三国に及ぼす影響の度合いについて、曖昧不明な点が無いようにしておく必要があると考える。なお東清鉄道、綿愛鉄道及び川漢鉄道の管理及び敷設条件の決定については、列国が速やかに回答を与え、そして相互の交誼を一層明確にする必要があると論断した。

西蔵問題論評 6日上海経由ロイター社発

佛国の新聞タンは、チベット問題を論評し、清国はチベットに対し、表面上は何処までも保護国の仮面を被っているも、その実チベットに対し、帝国主義を行うと言う野心がある。しかし清国の帝国主義なるものは、隣接する強国の感情を害するような結果を招かずして目的を達するかどうか疑問である。

達頼の声望 5日北京特派員発

前ダライラマは、ナバル国のラマ教徒の間で、非常な人望がある。そして同国民は勇敢なので、一朝この教徒を率いてチベットに入るならば、非常に面倒なことになるとして、支那政府はダライの処分に困惑しており、一部には再度位に就かせるのではとの説もある。

8月9日

印度反乱密謀 8日タイムス社発

ダッカ来電―反乱陰謀事件に関する逮捕が、ベンゴール州の各地で行われた。嫌疑を受け捕縛された者の中には、有力な人物が若干含まれているがその罪名は英帝に対し反旗を翻さんとする行動である。若しくは新法律に違反する行動の諸点にあると思われる。又弾薬製造機械も今回政府の手に捕獲されたとの情報がある。尚印度官憲は、印度各州に亘って存在する英国政治の転覆を図る密謀を首尾良く暴露することが出来た確信している。

8月10日

露国虎病大流行 9日タイムス社発

露国来電―コレラは盛んに諸郡村に蔓延しつつあり。患者数は既に6万5千に上り、死亡者数も又5万になろうとする勢いである。ドニッツ地方の石炭産出は

6割減少し、農業も非常な損害を受けている。

達頼喇嘛復位説 8日北京特派員発

北京政府は、亡国の要求に従い、ダライラマを復位させようと協議中であるとの説がある。

811

大浦農相と会議所 9日桑港特派員発

13日当地着の予定の為、商業会議所は8日午後、役員会を開き、15日同男爵を招待することに決定した。この招待は単に敬意を表するのみならず、当地に開かれる予定の大博覧会の趣意を述べ、且男爵に尽力を依頼するのようである。

露帝独逸行 9日伯林特約通信社発

独逸ナウハイム浴場付近のヘッセン大公及び大公妃を訪問される予定の露帝及び皇后は、数週間に亙り滞在されると思われる。これは皇后に療養の時間を与える為のようである。また一行の人数は少ないようである。

東北農民の心配 内国電報10日発

降雨が止まず、米価が次第に高騰し、38年の様な凶作になるのではと人心が恐々としているが、稲作は漸く穂が出る時期を迎えたばかりであるので、未だ悲観するにはおよばず、天気が回復すれば平年作になること疑いなしと言っている。

 

812

佛国大統領瑞西行 11日タイムス社発

巴里帯電―佛国大統領ファリエル氏は近い内にスイスを訪問すると思われる。これは佛国がスイスとの友好を育む利益を認めた結果と思われる。三国同盟の独逸は既にこれまでスイスとの親交を重んじていたが、佛国は過去に於いてこれを軽視していた傾向があった。そしてスイス共和国は今後欧州勢力均衡を保つ一要素となるものと思われる。

解説:スイスは原文では瑞西(スイッツル)と書かれていたが当時森鴎外はスイッツル 瑞西と表現していたようである。

南阿兵制論 11日上海経由路透社発

ブレトリア(トランスバール)来電―サウス氏は演説で、南阿の市民にスイス陸軍の例に倣い、軍事的訓練を受けさせるよう主張した。

西蔵と露国 11日上海経由路透社発

タイムス露国通信員がヤングハズバンド氏の論文に関連した報道によると、露国政府は、チベットのラッサに英露代表者を置き、且北京を経ずに直接チベット内政に干渉する目的を以て、自ら諸条約の修正を発議する考えはない。しかし李国よりこれを発議する場合には賛成すると思われる。

 

813

土勃関係後報 タイム社発

ブルガリア政府は、武装解除事件に関する暴動を終止させる為、先にトルコ官憲の為にマケドニアに於いて捕らわれ、その後トルコの手に抑留中であるブルガリア人を安全に取り戻したいと思い、トルコに対して至急、その意見を提示したいと求めた。

西蔵形勢改善 12日上海経由路透社発

シムラ来電―チベットの情勢は、次第に平和に傾き、清国軍隊の活動もその勢いを弱めた。この情勢では多分英国軍隊が国境を越えて、チベットに入ることはないと信じられている。

欧州移民近況 11日紐育特派員発

7月中に欧州よりニュウヨークに来た移民は52,700余人であり、追い返された者1,127人、無学文盲の者が12,900人であった。

 

814        

獨逸造船罷業 13日タイムス社発

ハンブルグ特報によれば、ダンチッヒ及びエルポング等に於ける所謂西プロシャのnを除き、その他獨逸の各私立造船所に於いては、本日より実際業務の

中止となる予定であるが、影響を被る労働者は3万千名である。その原因は、労働団体が賃金15分の増加を要求したことにあったが、雇主等はこれを拒絶し、工場閉鎖を決行する事となった。雇主、労働組合共に強固な組織を有するが特に雇主は報復手段を執ることに賛成している。

土勃国境問題 12日伯林特約通信社発

マケドニア人のブルガリア国境侵入は依然として継続中であり、ブルガリアは列国に対し、ブルガリアの為にトルコに干渉するよう求めたが、この要求は現在まで列強が受け入れていない。

 

815

英露関係親密 13日タイムス社発

露都来電―今回転職のため帰国することが決まった駐露英国大使は、送別会の席上で余は英露両国政府は、両国共通の利益及び世界の平和の為何処までも努力することを信じて疑わずと演説した。

日本関税の影響 13日紐育特派員発

国務省に於いては、日本の新関税は、米国のレール、機関車、客車、鉄管、皮類電信用針金等に最も重税を課する事となり、相互の譲歩がない限り、輸出業者は困惑するであろうと言われている。

阿片問題 14日北京特派員発

阿片問題をヘーグの会議に取り上げる件に関し手は、既に各国の承認があり、清国の委員には、2名が内定していると外国人の語るところであるが英国の承諾があるかどうかは未だ明らかでない。

8月16

佛獨軍備関係 15日タイムス社発

巴里来電―獨逸がライン河の左岸に計画的に要塞を増築し、且ペルギーとルクセンブルクの境界上に鉄道を敷設中であることは佛国人の注意を大いに引き付けている。

ナイチンゲール逝去 15日上海経由路透社発

ク愛リミヤ戦争以来有名なフローレンス、ナイチンゲール嬢が90歳の高齢で逝去された。

佛軍軍用飛行機隊 同上

佛国陸軍は、1910年度予算で各種の飛行機50機を新たに注文した。これは1911年度に軍用飛行隊を組織する為であり、1,100万フランの予算を議会に要求すると思われる。

817

獨逸製艦計画 16日タイムス社発

伯林来電―1911年度の獨逸海軍の予算には、川漢1隻、巡洋艦3隻の建造費が計上されていると言われている。そして獨逸の製艦計画は依然として、従来の方針を踏襲し、格別縮小の様子はない。

土勃関係後報 16日上海経由路透社発

ソフィア来電―土耳古兵がマケドニアに於けるブルガリア人に加えた暴行に関し、勃牙利王は、先週の土曜部以来、内閣大臣を招集し、時局について協議中である。なおその後350名のブルガリア人は当地に避難している。

日本密漁船又捕らえられる 16日桑港特派員発

東海丸がベーリング海峡にて密漁中、警戒船タコマに捕らえられ、ウナルシカに護送された。

 

818

英国富豪の美学 17日タイムス社発

英国富豪サー、アーチスト、カスセルは、先帝エドワード陛下の記念として、獨逸に在住する英国人及び英国に在住する独逸人の為に職業を斡旋し、且支援する目的を以て英国協会というものを設立しようと発起し、率先してその資金20万ポンドを寄付した。

生駒艦佛国到着 17日巴里通信社発

月曜日(15日)日本軍艦生駒はブレストに到着した。直ちに佛国艦隊と礼砲を交換する。文武官憲並びに市民の歓迎が盛んであった。火曜日(16日)には、海軍公式宴会が開かれ、席上佛国で有名な海軍軍楽隊の演奏がある。士官は巴里に行き、3日間滞在し、大統領の宴会に参列し、なお諸所を観覧することになっている。来る日曜日には、日本側にて生駒艦上にて宴会を開き、約1千名を招待する予定である。

清国軍艦新造注文 16日上海特派員発

三菱会社は、清国砲艦1隻を新造する注文を受けた。同艦は排水量780トン、速力16ノットである。なお清国より、日本の造船所に対し、この他にも若干の注文があると思われる。同時に獨逸に小型砲艦4隻、米国に巡洋艦1隻注文する為に、現在交渉中

 

819

土耳其の海軍力 18日タイムス社発

巴里来電―タン紙は、トルコが今回獨逸から戦艦4隻を購入し、その海軍力を増加した結果、ギリシャは今後海陸両に於いて、非常に不利な立場になった。そして露国も又ボスボラス海峡に於ける海軍の活動について考慮せざるを得ないであろうと論評した。

加奈陀と東洋人 同上

バンクーバー来電―当地労働組合の会長は、カナダ首相ラウリエル氏に対し、支那人の人頭税を5百ドルから千ドルに引き上げる事を要求し、且将来法律を制定する場合は、なるべく全ての亜細亜人を排斥する方針とられるよう提議した。首相ロウレエル氏は、これに対しカナダ政府は英領コロンビアに於ける特殊な労働問題以外に東洋諸国との外交的関係及びカナダの一般的利益を考慮しなければならないと答えた。

生駒歓迎 18日上海経由路透社発

軍艦生駒は佛国ブレスト港に入港した。同港の官憲は、生駒将校を招待して、正式な晩餐会を開き、その席上日佛海軍の為に乾杯の交換が行われた。

820

加奈陀と日本人 19日タイムス社発

バンクーバー来電―カナダ首相ラウリエル氏は、英領コロンビア労働組合の会長に対し、カナダ政府は、支那人の人頭税を引き上げる事については考慮することもあるが、しかし現在のところ、その種類の如何を問わず、日本移民問題については、何らの提議も受理する事はできない。いわんや人頭税のごとき、彼らの面目を傷つける提議は、たとえこの為に内閣の運命に関するとも、英帝国一般の利害を顧みて、これを受け付けることはできない。政治上に於いて、他国民を軽蔑し、これを残酷に取り扱う時代は既に終わっている。我々は常に公明平等主義を以て、外人を待遇する英帝国政府の例に倣わなければならないと通告した。

クリート騒櫌 19日上海経由路透社発

 クリート島に於いては、キリスト教徒とイスラム教徒との軋轢が益々激しくなり、レネモ、スウダ、カンジア地方には、襲撃、暴行がしばしば発生している。カンジアに於いては、キリスト教徒の財産家1名が生きながら焼き殺された。キリスト教徒はイスラム教徒に対し、ボイコットを組織しようと奔走中である。

821

米国共和党危機 20日タイムス社発

紐育来電―重要な共和党員の会議がオイスターベイで開かれた。前大統領ルーズベルト氏は、ニュウヨーク州共和党大会の議長候補者になることを否決され、激怒している。

タフト内閣の多数はロ氏に反対である。しかし衝突を避ける為には、ニューヨーク州の共和党大会に出席せざるを得ず、又共和党両派の闘争を促進させない為にも、同州知事の選挙運動にも関与せざるを得ないであろうと信じられている。

クリート島問題 20日上海経由路透社発

ギリシャに合併を希望しているクリート島民の領袖3名は、保護列国の意見を考慮して、ギリシャ国民会議議員に立候補することを断念した。

露兵撤退商議 同上

テヘラン来電―露兵撤退の件に関し、現在ペルシャ政府と露国政府の間で協議が進行中である。

生駒歓迎 同上

日本大使館に於いて,生駒乗組将校の為に午餐会が開かれ、佛国海軍卿も臨席した。

米国共和党内証 同上

米国諸新聞の報道するところによると、ルーズベルト氏がニューヨーク共和党大会の議長候補者たることを拒まれたのは、全く、氏が共和党急進派の首領となる前に、タフト氏及び共和党内の保守派と別れる口実を作る為に、ロ氏が自ら案出した策略であると言っている。

822

米国共和党 21日上海経由路透社発

合衆国共和党の分離は、世人の注目を集めている。ルーズベルト氏は、若し1912年の大統領改選期となり、共和党の政策がその意に満たなければ、自ら大統領候補者となるであろうと伝えられる。

世界最強の戦艦 同上

世界最強の戦艦オリオン号が英国レジー、ウインチスタに於いて進水式を行なった。同艦は13インチ半砲10門を備え、排水量23千百トン、速力21ノットであり、4マイル有効の新式21インチ魚雷発射管を有する。建造費は2百余万ポンドである。

合衆国と米国 20日桑港特派員発

米国国務卿は、オブライエン氏の報告に基き、何時東京より合邦の通知を受けるかも知れないと観測している。米国政府は現在まで日本の韓国合邦に対し、何らの抗議もしていないが、米国は韓国に対する幾多の条約を有し、既得権に影響がある為、合邦の場合には当然日本政府より通帳を受けるであろうと信じている。これら条約の主なものは、通商条約と治外法権であり、そして韓国との関税は協定であり最も影響が大きいと思われる。

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米国共和党 21日上海経由路透社発

合衆国共和党の分離は、世人の注目を集めている。ルーズベルト氏は、若し1912年の大統領改選期となり、共和党の政策がその意に満たなければ、自ら大統領候補者となるであろうと伝えられる。

世界最強の戦艦 同上

世界最強の戦艦オリオン号が英国レジー、ウインチスタに於いて進水式を行なった。同艦は13インチ半砲10門を備え、排水量23千百トン、速力21ノットであり、4マイル有効の新式21インチ魚雷発射管を有する。建造費は2百余万ポンドである。

合衆国と米国 20日桑港特派員発

米国国務卿は、オブライエン氏の報告に基き、何時東京より合邦の通知を受けるかも知れないと観測している。米国政府は現在まで日本の韓国合邦に対し、何らの抗議もしていないが、米国は韓国に対する幾多の条約を有し、既得権に影響がある為、合邦の場合には当然日本政府より通帳を受けるであろうと信じている。これら条約の主なものは、通商条約と治外法権であり、そして韓国との関税は協定であり最も影響が大きいと思われる。\ 

8月23

日本関税論評 22日タイムス社発

英国上院議員リットレー卿は、ブラックプールに於いて演説、今や英国は日本の間税改正が英国、特にランカッシャー及びヨークシャーの紡績及び毛織門を非常に侵害していることを知り始めたと思う。日本人の目的は、現在英国から日本に輸出している製品を日本で生産し、その結果、極東の市場に於いて英国に対抗する為であると明言した。

土耳古兵侵入事件 同上

コンスタンティノープル来電―露国は土耳古兵が露国の国境に近いペルシャの領土に侵入したことに対し抗議を申し込んだ。最近2年間に於いて、土耳其はゥルミヤ地方の領土をかなり多く占領し、これを自国の統治の下においている。

獨領土蕃の不満 22日上海経由路透社発

スタンダードのベルリン通信によれば、獨領東アフリカの開拓者であるカール、ピーター博士が主催するマキシミリアンの所報によれば、東アフリカの土民は独逸の統治に不満を抱き、英国の南阿連邦に加盟したいとの希望を持っていると言われている。

解説:現在のタンザイニアであり、北西部にビクトリア湖 北東部にはキリマンジャロがある。

8月24

露土海軍関係 23日タイムス社発

コンスタンティノープル来電―トルコの半官報は、トルコの海軍拡張計画について、露国とトルコの間に如何なる海軍拡張の競争が起こっても、トルコが黒海の中立を保障する以上、露国の黒海艦隊をバルチック艦隊に合同させないであろうと論評した。

米国共和党内情 同上

紐育来電―タフツ大統領は、ニューヨーク州共和党大会議長問題について、ルーズベルト氏と不和との説を否認し、シャーマン氏は議長候補に推されていても、その議決はそのままとして、結局ルーズベルト氏が同大会の議長に選ばれ、重要な演説をするであろうと語った。

合併と清国 23日北京特派員溌

日韓合併に関して、北京在住の外国人は多大の興味を持って注目しており、合併後、韓国と諸外国との條約関係及び日本が韓国及び韓国皇帝を如何にするのかについて疑念を持ちはじめている。支那人側にあっては、これに注意を払う者は少ない。

 

825

日韓合併と露国 24日タイムス社発  

露都来電―木野大使は、本国政府に対し、日韓合併は、近々実行されると一般に期待されている。露国は、確かに甚だしい異議を唱えず、日韓合併は、日露の関係を侵害する事はないと通報した。

タフト氏とロ氏 24日上海経由路透社発

ルーズベルト氏は、大統領タフト氏が意見を公表した事を喜んでおり、これで共和党内紛問題の真相も十分明瞭となった。

合併と佛国 23日巴里通信社発

日韓合併の発表は、永く予期され、了解されており、佛国においても何らの驚きもなく、日本に反対する保守的新聞すら、韓人の日本人となることは韓人の為に幸せであるであろうと論じ、それは、韓国に於ける日本の行動が、文明を意味し、従って人民の安全、平和の保証となるからである。

826

日韓合併と英国 25日タイムス社発

ロンドンタイムスは、日韓合併を論評して、多くの面倒な問題を確実に解決する唯一の手段として、日韓合併は、避けることのできない措置である。従来、常に高等政治の舞台に示した、高邁不遜の勇気を奮って、将来更に国運の伸長を図らなければならない事を自覚している日本は、断じて再び朝鮮を新来者の食物として、放置して置くことはできないのである。韓国占領初期に於ける、過度な日本の武断的権勢が、漸次制限されるであろうことは、我々の信じて疑わない所である。ただ日本の新関税を韓国にまで及ぼして、英国の通商が侵害される様なことは、あってはならないと結論づけている。

日韓合併と獨逸 同上

獨逸政府は、日韓合併をもって、両国関係の必然的発展であるとし、これに対する獨逸の利害関係は、ただ将来の経済的状態及び関税規則にあるのみと考えている。 

827

獨帝久振の演説 26日タイムス社発ふ

伯林来電―獨逸皇帝はケエグスベルグに於いて演説し、朕は当地の要塞を取り払い、市の発達に資するようにしたいと思う。朕は上帝の佑助と精鋭な軍隊の力により、平和を維持することが出来ると信じて疑わない。もし一朝緩急があれば、堡塁がなくともプロシャの連隊がある。少しも憂うる必要がないと云われた。

合併の英国新聞 26日上海経由路透社発

アーリニュース 合併は頗る無慈悲に決行された。これは東洋に於ける帝国主義実行の恐るべき先駆である。

ロンドンタイムス 

 日韓合併は、以前より明らか分かっていた。合併は多くの面倒な問題を確実に解決する唯一の手段である。隆隆として勃興した日本は、遂に島嶼国的地位を離れた。そして

日本は、従来常に高等政治に表示した高邁不撓の勇気を奮って、更に国運の伸張を図らなければならないことを自覚している。                                     

米国新聞の評論 25日紐育特派員発

25日のトリビューン新聞は、韓国滅亡と題して、次の様に論じている。

日韓が合邦は、自然の成行きであり、我々の予期したことである。日本は国際法上、韓国と他列国との条約、権利を尊重するものと信じている。日本は清国と戦い、又露国と戦い,自己の立脚点を明らかにした。韓国は今後、日本の開発を直接に受けるべき国となる以上は、今より速やかに全て進歩、発展すべきは無論、韓国民の為にも又各国通商上にも利益があるであろうと論じた。

 

例のヘラルド新聞は、毒筆を揮わず、至極真面目に事実を報道した。

 

8月28日

獨帝演説非難 27日タイムス社発

伯林来電―獨逸皇帝のケエグスベルグに於ける演説は、又しても議論を引き起こした。諸新聞は、皇帝の演説内容は、宰相ボルエエツヒが予め承知していた事か、宰相は果たして皇帝が演説中に述べて意見に同意であるかどうかを質問し、いずれにしても皇帝の演説は国民の意思を無視して、自分勝手の振る舞いをなされたものと言わざるを得ないと論評した。そして温和な新聞まで、帝王神権と民意尊重の矛盾が著しく獨帝の言動に現れることを遺憾とした。

合併と米国新聞 26日紐育特派員発

26日のニューヨークタイムス紙は、「日本と韓国」と題して、日本は現在迄、事実上韓国を支配していた。今回は形式的に合邦を発表したに過ぎず、この形式的な発表は、日韓には左程影響はないが、列国には大いに関係がある。合邦は、恰も英国のエジプトに於ける、フランスのマダガスカルに於ける、獨逸の東アフリカに於ける、米国のフィリイピンに於けると同様である。日本が韓国に於ける外国との関係をどのようにするかの問題は大いに注意すべきである。(一部抜粋)

829

紡績休業 27日紐育特派員発

合衆国マンチェスター市の紡績会社職工17千人が休業し、ピッツバーグ市に於いても,9月日より13日まで休業する会社が数社ある。チコピー市は8月27日より9月12日まで、5千人の職工が休業した。これは綿花が騰貴して、職工の賃金も高く、到底営業することが出来ないからである。

合併と清国人 28日北京特派員発

日韓合併に関して、当地の帝京日報は次の記事を掲げた。

韓国は、ついに日本の所有になり、韓国皇帝は、毎年費用を受けるのみとなった。この決定を聞いた韓人の不平は甚だしく、日本は万一の場合を考え、警戒を厳重にしている。

日本は韓国の独立を保障して、今だそれ程経過していないにも拘わらず、韓国の滅亡を見たが我が国はこれを見て考えさせられる点がある。各国は清の独立を保障すると宣言している。果たして韓国の轍を踏むのか、否か。清国の将来は、我が国民の決心及び脳力如何に掛かっている。

他の新聞は外国新聞の批評を掲載するのみであった。

830

話す活動写真 29日タイムス社発

紐育来電―発明家エジソン氏は、活動写真があたかも話しているかの様に見させる工夫をして、これを大衆の前で実験をした。これは蓄音機、活動写真の両機械(まったく別個なもの)を電気力に依って、完全に時を同じくして働かせるものである。

朝鮮年号消滅 内国電報29

朝鮮が既にわが国に併合された結果、従来の隆熙(りゅうき)年号は当然消滅し、今後は同じく明治年号に依ることとされた。

併合と英紙論評

8月27日デーリーテレグラフ紙は、韓国の併合は、真に日本の将来に影響するものであり、我々は、その結果、次の二者の内、必ずどちらかが起こると考える。

その一つは、日露関係であり、韓国の併合は両者の争いを促進するかも知れない。日本の欲望が韓国のみで満足するとは到底信じられず、南満州は、一層直接に日本の利益と勢力の範囲内になるからである。

更に重要なものは、清国に関するものであり、日本は韓国併合によって、直接清国と領土を接することになった。清国に痛切な利害関係を持つ欧米人に、既に若干の不安の念を起こさせ始めており、その動きを促進させるに違いない。韓国の併合それ自体は余儀なきものであるが、しかし世界の平和と進歩の上に及ぼす影響に至っては、極めて大きいものがあると論断している。(一部抜粋)

清人の併合観

30年前の韓国皇帝は、清国からすると一つの藩王に過ぎなかったものが、その後情勢の変化に伴い、一藩王は何時しか韓国皇帝陛下として、立派な独立国皇帝となったものである。しかし今や又再転して、前時代に於ける藩王よりさらに権力がない一王族となったのは止むを得ない結果であろう。韓国については、昔と今で事実に於いて、変化があったわけではない。従って今、これに対し俄かに驚くほどのものではない。(一部抜粋)

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獨逸観艦式 30日タイムス社発

ダンチッヒ来電―獨逸皇帝は戦艦21隻、巡洋艦8隻、駆逐艦55隻よりなる公海艦隊の観艦式に臨席された。式典終了後、艦隊は演習を行ったが、戦艦の活動は円滑であり、少しも混乱することは無かった。

獨帝演説弁護 30日上海経由路透社発

伯林来電―半官報北獨アルゲマイネツアイツング祇は、獨逸皇帝の演説の中で特に「皇帝がその思う所に依って事を行う」と言う一言に対する諸新聞の攻撃を反復し、その時々の世論を行為の基準とする皇帝は明君にあらずと断定した。

日韓合併と米国 29日紐育特派員発

 

合併協約の全文は、29日の新聞に掲載された。そして関税が10年間据え置かれる保証を与えたので、賛成反対の声は共になく、至極平穏である。