期日 |
日本関係 |
期日 |
露清関係 |
期日 |
英米関連 |
期日 |
独仏その他関連 |
3月6日 |
桑港の排斥運動 |
3月2日 |
錦愛鉄道と露国 |
3月1日 |
米国の巨艦建造 |
3月3日 |
波斯首相辞職 |
3月8日 |
米国資本家日露英攻撃 |
3月6日 |
清国大学協議 |
3月2日 |
無謀なる海軍拡張 |
3月7日 |
英独関係情偽 |
3月12日 |
桑港の排日運動 |
3月14日 |
極東政策と米国 |
3月11日 |
英国海軍拡張 |
3月8日 |
沸獨関係論 |
3月14日 |
日米戦争と罪悪 |
3月25日 |
錦愛鉄道問題答弁 |
3月12日 |
べ氏功労表彰延期 |
3月10日 |
英紙の論評 |
3月17日 |
日米問題論戦 |
3月31日 |
芬蘭自治権剥奪 |
3月12日 |
日米戦争談真相 |
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3月19日 |
日米協商談 |
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3月15日 |
印度革命派檄文 |
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3月28日 |
羽二重と樟脳 |
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3月16日 |
英国海相演説 |
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3月17日 |
米国鉄道大罷業 |
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3月24日 |
米国海軍予算 |
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3月26日 |
米国鉄道紛議落着 |
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3月29日 |
印度人種衝突 |
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3月1日
ダライラマの哀訴 28日タイムス社発
露都来電―ダライラマは露国政府に哀訴した。清国官憲は、チベット人民が何ら清国を挑発していないにも拘わらず、妄りに攻撃的態度を執り、暴行を欲しいままにしていると説き、露国が英国と協力してチベットを援ける様求めた。
解説:2月24日以降、連日の様に報道されている記事の続報
米国の巨艦建造 28日上海経由ロイター社発
ワシントン来電―米国海軍卿メイヤー氏は3万2千トンと言う前例のない大型戦艦を建造する権限を求めようとしている。し非公式に伝えられている所によれば、米国政府は、日本が3万2千トンに近い戦艦2隻を起工中であるとの報道を受けたと言われている。
解説:2月27日記事の続報
膠州知事増俸 26日ベルリン特約通信社発
獨逸の議会予算委員会は、知事の増俸を意味する1万マルクの膠州予算増加額を削減した。同額は4千マルクと定められた。
解説:中国北部の山東半島にある膠州湾一帯はドイツの租借地であった。中心は青島で、現在でも有名な青島ビールはドイツの手で始められた。知事は総督の誤りではないかと思われる。
3月2日
錦愛鉄道と露国 28日桑港特派員発
露国外相イズワオルスキー氏は、米国その他の関係列国に対し、米国国務郷ノックス氏が提議した錦愛鉄道建設に対する修正を既に非公式に発表したとの説がある。
露国の修正案は、既電のとおり錦愛鉄道建設を止め、これに代えて、北京よりウルガ及びヤクイを経て張家口に伸ばしバイカル線でシベリア鉄道に接続すると言う蒙古鉄道である。到底収支が取れないであろうと露国でも賛成が少なく、米国は無論同意する筈もない。
解説:米国の鉄道王ハリマンは、当初列強で共同運営する満州鉄道の中立化案を提案した。しかしこれが受け入れられなかったので次いで、これに並行する錦州と璦琿(アイグン)を結ぶ錦愛鉄道を提案し、当然日本と露国はこれを受け入れていない。
無謀なる海軍拡張 同上
海軍卿が14インチ砲12門を搭載する3万2千トンの軍艦の建造を提案したのに対し、下院予算委員長タウネイ氏は、これは造船所に操られた夢であり、この様な無謀な戦艦を建造すれば米国は破産の外ないであろうと述べ、最近造船所に操られて軍備拡張論が盛んな事を攻撃して、この様な議論を続きていると日本のみならず、ドイツとの戦争談も盛んになる時がくるであろうと嘲った。
解説:3月1日「米国の巨艦建造」の続報である。
清国政府の回答 1日北京特派員発
英国がチベット事件に関し、支那政府に詰問したのに対し外務部は大要次の様な意味の回答を発したと言われている。即ち支那がチベットに兵を送ったのは全くその境内の騒乱を鎮圧するためであり、チベットの政治その他を根本より改善する意志はない、且つインドの辺境に騒乱を及ぼさない様に、又通商を妨害しない様に速やかに平和の処置を取るであろう云々
解説:2月24日以降連日の様に報道されている記事の続報
3月3日
土勃紛議と墺紙 2日タイムス社発
ウイン来電―オーストリアの諸新聞は、トルコとブルガリア国境に於ける両国兵士の闘争は危険千万であるとして、深く世人の注意を促した。しかもこれは露国のバルカン諸邦連合計画に付随して起こった奇怪な事実であると言明している。
波斯首相辞職 同上
テヘラン来電―ペルシャ首相は辞職した。表面の理由は露国軍隊を撤退させる事が出来なかった事によるが、その実は多分英露両国の提議した借款問題に関係し、内閣の意見が一致しなかった結果と思われる。
解説:ペルシャの北半分は露国の南半分は英国の勢力圏である。
ダライラマ歓迎 1日上海経由ロイター社発
ダライラマは、本朝ダルジェリングに到着する予定であり、インド政府の賓客として、優遇されるであろう。なお仏教徒等は、同地居留のラマ教徒と共に歓迎行列を準備中である。
解説:連日報道されている記事の続報
3月4日
佛国洪水の影響 3日タイムス社発
パリ―来電 洪水の結果、沸国は小麦の一大欠乏を生じそうな状況である。リイルの綿業罷工者達等は数個の工場を襲い、略奪を欲しいままにしている。
解説:2016年6月フランスで大洪水が発生し、1910年以来と報道されているが、当時の報道を見ると1910年1月23日暴風雨が佛国を襲う、1月24日佛国の大洪水で被害甚大であると報道されていた。
ダライラマと英国 3日上海経由ロイター社発
インド事務次官モンテギュウ氏は下院に於いてインド総督ミントウ卿の電報を朗読した。これは、チベットの事変を詳報したもので「清人はダライラマに従前同様の権力を保有させるという誓約を破った」と説くダライラマの愁訴を否定するものであった。次官は又清国が英国の照会に回答し誓約を与えたが、これに関する英国の意見を述べるには次期が早いと言明した。
英国海軍追加予算 同上
英国下院は追加海軍費68万9千1百ポンドの支出を可決した。この内45万7千ポンドは追加ドレッドノート型戦艦4隻に対する支出である。
3月5日
印度仏教徒抗議 4日上海経由ロイター社発
本社の印度ダルジリング通信によれば、同地の仏教徒が大会を開き、清国のダライラマ虐待を憤怒し、その地位を要求、且つ清国皇帝に対し、在チベット軍隊の撤退と駐チベット大臣の免職を求める決議を行った。
西蔵変乱と英国 同上
英国外相サー、グレー氏は、下院に於いて演説し、インドとチベットの関係がチベットの行政変革により影響を受けるであろうと想像する事は出来ない。英国政府の一般方針は、条約上の義務を厳守するにある。尚英国以外の関係国も同様に条約上の義務を厳守する事が必要である等と言明した。
露清交渉 3日ベルリン特約通信社発
露都の電報通信によれば、露国政府は清国外務部に向け、ダライラマ廃位に付きその意志を宣明する様要求した。清国政府はこれに対し、駐チベット清国官憲は、チベットの内政及びラマ教に決して干渉しない旨回答した。
3月6日
清国大学協議 5日上海経由ロイター社発
英国ケンブリッジ大学評議員会堂に於いて集会が行われ、副校長が熱心にこの計画の賛成論を述べた。駐清英国公使サトウ氏は、1900年の清国と列強間の衝突が最終の衝突であると信じると説き、英国の優越的地位の根底である教育を行う事こそ1900年に清人が受けた損害に対して与えるべき最も貴重な報酬であると言明した。
解説:1900年の義和団の乱の賠償金として、清国は各国に過酷な賠償金を支払った。
その額は利息を含め9億8千万両であり、当時の歳入8千8百万両の約10倍であった。過酷な賠償金に対し国際的な批判が起こり、各国はそれぞれの方法で清国に還元する事になり、例えば米国は精華大学を創設している。この記事もその運動の一つと思われるが清国大学は歴史に残っていない。
露国移民失敗 4日桑港特派員発
ハワイ移民課の斡旋によりハワイに送られた露国移民4百余名は、給料の少ない事に不満を持ち、砂糖耕地に行くことを拒んでいたが、この程ワシントン駐在露国太師に打電し、帰国できる様に要請した。
桑港の排斥運動 同上
日韓人排斥協会の運動がますます激しくなり、市内の日本人が続々解雇され始めている。なお近日中に行われるカルフォルニア州知事選挙に利用する目的で、排斥運動は次第に激烈になる模様である。
3月7日
英独関係情偽 6日上海経由ロイター社発
獨逸帝国議会に於いて海軍問題の討議に際し、獨逸の海軍政策は英国の疑惑を挑発すると述べた社会党議員の質問に対し、海軍大臣テルピッツ氏は次の様に答えた。獨逸の海軍は決して侵略を目的とせず、只我が領土の沿岸及び海運業を保護する為のみであり、現在の建艦計画に於いても少しも他の疑惑を招く様な威嚇的性質を含んでいない。
獨逸政府は何処までも英国政府との友好を持続し、両国民の感情を互いに有益な方向へ向かわせる事に引き続き務めたいと考えると言明した。(一部抜粋)
解説:獨逸は海軍大臣テルピッツの下で、英国と建艦競争をしている。4年後の1914年6月、サラエボでのオーストリア皇太子暗殺事件で第1次世界大戦が始まっている。
3月8日
沸獨関係論 7日タイムス社発
パリ―来電 佛国社会党党首ジョオレ氏は、代議院に於いて演説し、40年前佛国がドイツに割譲したアルサス、ローレンスの人民は、自治権を得且つ共和制となる事を望んでいると説き、この希望が実現されると佛獨間の親交に対する最後の障害物がここに排除されるようになると言明した。
解説:40年前、フランスは普佛戦争(プロシャとフランス間の戦争)に敗れ、アルサス、ローレンスをドイツに割譲している。
米国資本家日露英攻撃 同上
ワシントン来電 米国資本家ヤコブ、シーフ氏は、ニューヨーク共和党クラブの午餐会に於いて、人種的偏見を論議した際、日露両国が清国を臣従者の位置に置く為に握手した点に言及し、大いにこれを遺憾とし、特に英国もこの仲間に加入し、世界の最大危機を起こそうとするに至っていると言明した。
(備考:シーツ氏は、ユダヤ人で日露戦争の際露国に対する反感から日本に同情し、米国内の日本外債募集も氏が関係するクーン、ローブ銀行の手で行われた。しかも現在例のモルガン一派のシンジケートに加わり、大いに清国投資に熱中している。
加奈陀大雪崩(日本人39名の安否) 6日桑港特派員発
英領コロンビア州ロッキー山脈中のロージャースに於いて大雪崩が発生した。作業列車に乗っていた92名が埋没し、24名が負傷した。その列車には日本人労働者が39名乗っており、未だ消息不明である。
3月9日
佛国河流減水 8日タイムス社発
パリ―来電 セイヌ河を始め諸河流はゆっくりであるが着々と減水し始めている。
解説:3月4日洪水の影響の記事の続報
清国と西蔵 7日北京特派員発
清国は現在最もチベット問題を重大視しているが、その観察は非常に楽観的である。
政教分離に根拠を置き、ダライラマを一つの宗教の首長として、これを尊敬するかしないのは支那政府の任意であると考え、更に外国から干渉を受ける謂われはないと唱えている。若し外国が支那の主権を尊重するのであれば、廃位のダライラマを歓迎、優待する事は道に反するものと為している。
解説:2月24日以降しばしば報道されている記事の続報であり、現在のチベット情勢とよく似ている。
3月10日
獨逸海軍討議 9日上海経由ロイター社発
ベルリン来電 社会党員等は獨逸帝国議会に於ける海軍予算討議に際し、前週土曜日に於ける海相の演説中、軍備制限問題に言及しなかったことを指摘し、これは英人の不信用を正当化させる所以であると公言した。海相はこれに対し、政府は海軍協約問題を避けた事は無いと説き、又獨逸の建艦計画が急増している事を否認した。
英紙の論評 同上
数種の英国新聞は、獨逸宰相ベートマン、ホルウエル氏の友好的懸念に同意を表すると同時に獨逸の建艦計画は防備としては許されない程の規模であると説き、毎年英国に数百万ポンドを費やさせるという友好は疑わしいものと考えている。
解説:獨逸海軍がもし英国海軍と戦闘を交えたなら、獨逸海軍は敗れるかも知れないが、危険なまでの損害を英国海軍に与えるという海相テルピッツの危険艦隊思想の下で、獨逸は英国に建艦競争を挑んでいた。
3月11日
米紙の日英露攻撃 10日タイムス社発
ワシントン来電―日英露三国を攻撃した米国銀行家ヤコブ、シーツ氏の極東時局観は、諸新聞紙上で幾多の無責任な論評を引き起こした。これらは概ね日本の満州政策を信じなくて、又英国の不信義に対し攻撃をするものであった。ニューヨークタイムス紙は、米国こそ満州に於いて機会均等を希望するが日露両国は全くこれと反対の希望を有すると言明した。ハースト一派の諸新聞は米国が更に多数の戦闘艦を建造するよう要求した。
解説:3月8日「米国資本家日露英攻撃」の続報である。この満州問題が大東亜戦争の源流と思われる。
英国海軍予算 10日上海経由ロイター社発
英国海軍予算は、4,060万3,700ポンドに上った。前年度に比べ556万1,000ポンドの増加である。又新造する軍艦建造費は、1,327万9,850ポンドであり、その内1,185万790ポンドは軍艦継続費である。142万9,040ポンドは新計画中に含まれる軍艦(大型戦艦5隻、保護巡洋艦5隻、駆逐艦20隻、潜航艇若干)に対する支出である。
解説:当時の英国陸軍予算は 2,776万ポンドであり、海軍は陸軍予算の約1.46倍であった。
英国海軍拡張 同上
英国海軍予算に関する覚書によれば、来る4月1日に建造中の軍艦は、戦艦7隻、装甲巡洋艦3隻、保護巡洋艦9隻、非装甲巡洋艦2隻、駆逐艦37隻、潜航艇9隻である。
解説:日本海海戦時の日本の主力艦は、戦艦4隻(機雷により2隻の戦艦を喪失していた)、装甲巡洋艦2隻であったが、それ以上の戦艦等を同時に建造する能力を英国は持っていた。
3月12日
べ氏功労表彰延期 10日上海経由ロイター社発
ワシントン来電 米国下院海軍委員会副委員会は、北極発見が証明されるまでベアリー氏に栄誉を付与する手段を執る事を拒んだ。
解説:明治42年9月14日の記事以降ベアリー氏とクック氏の北極点到達論争が行われ、ベアリー氏が勝利している。2月11日「ベアリー氏功労表彰」の記事がある。
日米戦争談真相 10日紐育特派員発
8日朝のサンフランシスコ、クロニクル紙は、社説に於いて痛論して、日米戦争談は陸海軍費を支出させようとするか、経済上の利益を収めようとするかの目的に出たもので、両国は現在に於いても近き将来に就いても戦争すべき理由は無いと述べた。
桑港の排日運動 同上
サンフランシスコ労働同盟は、10日総会を開き、日本商店及び日本人を使用する白人商店に対し、極力ボイコットを行う決議を為し、大運動を起こした。紛争がますます大きくなると思われる。
3月13日
希臘政界平穏 12日タイムス社発
アデン来電 陸軍協会は政府を完全に信任する旨の宣言をし、首尾善く衝突を避ける事が出来た。しかし2個の党派間の十分な妥協はなお成立していない様である。
ダライラマの後任 12日北京特派員発
未だ公表されていないが、ダライラマの後継者は、暫くパンチェンラマを以て処理させる事になり、4人の幕僚はダライラマの逃走後もその職にあり、住民は平穏である。
解説:パンチェンラマは、仏教界で序列第2位であり、この時、清国に協力している。その為1911年の辛亥革命時に、四川省総督が殺害され、ダライラマがチベットに帰った際清国の勢力圏に逃れている。
3月14日
極東政策と米国 12日タイムス社発
ペテルブルグ来電 ノーウエ、ウレーミヤ紙は、米国資本家シラツ氏の演説を論評して、次の様に述べている。アジア政策の根本問題に対する日英露三国の一致は、平和の維持を保障するものである。然るに国務郷ノックス氏の意見に賛成する一派の米人は、何故かこの日英露の一致に対して一定の目論見を立てて、嫌悪の情を煽動中であり、これがシラツ氏の様な米国一流の資本家までが日本人排斥論を宣伝するに至った所以である云々
解説:3月11日「米紙の日英露攻撃」の続報である。
日米戦争と罪悪 13日上海経由ロイター社発
小村外相は、ニューヨークのウオルト新聞に電報を送り、日米間には現実的な不安を引き起こすべき事は一つもない。極東に於ける両国の利害は少しも矛盾せず、又反対せず。日米戦争の如きは、見過ごすことのできない罪悪であると確信する旨宣明した。
3月15日
印度革命派檄文 14日タイムス社発
デッカ発-インド新聞法が制定され、定期刊行物の革命的言論は大いに鎮圧されたが、革命派は盛んに秘密出版を行いつつある。今回東ベンガルに於ける諸大学その他各学校に向け、多数の檄文を配布した者が居る。その内容は、非常に野蛮で、各学生に対し「外人の血をカリ女神に供物として献上せよ」と主張している。なおこの檄文の出処はカルカッタの様である。
「ダライラマ」カルカッタ着 14日上海経由ロイター社発
ダライラマは、カルカッタに到着し、インド総督の馬車でヘスチングスハウスに入った。特別に熱誠な歓迎は無かった。
解説:2月24日以降しばしば報道されている清国による「ダイライラマ」攻撃の記事の続報である。
3月16日
ダライラマと総督 15日上海経由ロイター社発
本社カルカッタ通信によれば、ダライラマはインド総督ミントオ伯に荘厳な公式訪問を行った。ベンガル騎兵隊に護衛されて、馬車で政庁に到着、ミントオ伯に絹襟巻を贈呈した。次いでリントオ伯も返礼として、公式訪問を行った。
英国海相演説 同上
英国海相マクケナ氏は、海軍予算を提出するに当たり、次の演説を行った。
この費用を正統とする所以のものは、実に国家の安全を守る緊急的要務がある為である。予はその過不足の何れにも陥っていない事を示し得る事を望むと説き、3月10日所望の戦艦5隻は、1913年1月を以て竣工する予定で、1913年3月までにドレッドノート型戦艦は、完備される予定であり、二国標準は維持されるであろうと説いた。又豪州、ニュージランドの戦艦を加えれば、同時に建造中のドレッドノート型戦艦は15隻となる。これは、英国の建造力が減退し、現在の地位を維持する事が出来ないのではと言う感想を排除する所以であると述べ、予は将来海軍費の減少する事を希望すると言明した。
解説:英国は獨逸と建艦競争をしており、二強国標準と言う政策を取っている。これは欧州で獨逸,佛を合わせた海軍勢力を凌駕する海軍を持つと言う政策である。第1次世界大戦まで4年
3月17日
米国鉄道大罷業 15日上海経由ロイター社発
米国のシカゴ以西にある各鉄道の火夫全部が参加する同盟罷業は、夜半をもって命令された。諸会社及び労働者間の紛争は、賃金及び昇級に関係する。同罷業は、15万マイルの線路に及び、シカゴより太平洋沿岸に到る各客車、貨車の運転を中止させるものである。米国政府は、鉄道会社の要求により、同紛争を解決する為に干渉すると言われている。
日米問題論戦 15日紐育特派員発
過般、ニューヨークタイムスが満州問題に関し、日本を罵った大論文に対し、各新聞は論戦を開いた。そして「イヴニング ポスト」、「ウオールド」、「サン」、「イヴニング、メール」の4新聞及び「ヘラルド」は、「タイムス」の態度を疑い、これを示す為に黄色の新聞紙を使用した。ある新聞は、現在の米国は満州での利益を得ようとするよりも寧ろ南米に力を尽くす事が得策であると論じた。又小村大臣が日米平和論について、特にウオールド新聞に打電した件に対し、他の新聞は不平の意を漏らした。
解説:3月11日「米紙の日英露攻撃」の続報である。
3月18日
清国大学協議 17日上海経由ロイター社発
諸大学連合の清国大学計画を助成する為、ロンドン市長官邸に於いて有力な人物の会合が行われた。ヒユ、セシル郷、文相ランシマン氏、カンターベリー大僧正等重要な弁士であった。
対清政策と日米 16日桑港特派員発
ワシントン来電―日本はその極東政策を一変し、米国と非公式な同盟を結び、両国が相提携して極東の平和を維持し、清国に於ける門戸開放主義を維持するのではとの説がある。日本大使館に達した情報によれば、日本の新提案は、門戸開放主義を確実にすると共に満州に於ける日本の鉄道の位置を永久に確定しようとしている様である。そして日本の提案は米国に対して、妥協的であり、米国が条件付きで賛成するも拒絶するも日本外交関係を害するものとは思われず、外交家はこの手段を以て日本がアジアにおける現状を維持する事の出来る唯一の手段と信じている。
清帝と西蔵問題 17日北京特派員発
チベット善後策として政務處会議の結果、(1)新ダライラマの選出(2)駐チベット新陸軍の増加(3)人を派遣してチベット人を慰撫する事(4)有力な駐チベット大臣の派遣(5)英露両国に駐在する公使に命じ、両国の対チベット方針を注意させて、臨機の処置に出る事であり、以上の5カ条を基礎とし、着々と実行の歩を進め始めている。
3月19日
日米協商談 18日上海経由ロイター社発
ニューヨークワールドは、日本が米国国務郷に対し、両国共同で極東を支配し、開放主義を維持し、各国の商業的均衡を保護する一つの協定を結ぶ事を提議した旨報道した。
同上続報 同上
本社の知る限り、ロンドンに於いてはニューヨークワールドの日本協商説を裏付ける確実な情報は少しも無く、寧ろありえない事と思われている。且つ日米両国は、1908年11月既に現状維持及び開放政策の宣言を発しており、又現在この様な手段に出るのは却って日本がしばしば公言する方針に違反するものであると指摘され始めている。
ダライラマ 同上
ダライラマは、本日カルカッタ腑を出発し、ダルジリングに向かった。政府の賓客として同地に滞在する予定である。
解説:現在と同様に、ダライラマは清国に追い出されて印度に亡命中である。
3月20日
米紙の戦争否認 19日タイムス社発
ニューヨーク夕刊ポストは、社説に於いて、現在の様に日米衝突の機会より遠ざかっている時代は無く、思慮ある国民は、前大蔵卿ショウ氏の排日説を否認するに躊躇しないと説いた。
解説:3月11日の記事「米紙の日英露攻撃」の続編である。
日米協商説 18日桑港特派員発
内田大使は、極東問題に関し、日本が新たに米国に提議するであろうとの説を否認し、予は少しも関知していない。多分一昨年ルート、高平両氏の間に取り交わした覚書を誤解していると思われると言明した。国務省もこれについて、何ら聞いていないと声明した。しかしロンドン電報によれば、英国では極東問題について、日米間に新交渉があったと確信している。
フ氏親日談 同上
前副大統領フェアバンクス氏は、ニューヨークに帰着し、日米間には戦争は決してないと断言し、米人にとって日本人の信義が厚い事を賞揚した。
露国の回答 20日上海経由ロイター社発
露都来電―諸新聞の報道によれば、露国はチベットに於ける自己の権力回復に援助を求めたダライラマの哀訴に回答する筈である。唯大げさな文句を用いて、英露両国が北京に於いて行った抗議に言及すると思われるが、但しダライラマに対して何ら確固たる希望を与えないであろうと
3月22日
共和党内訌 21日上海経由ロイター社発経由
ワシントン来電―米国下院は、155対191の多数を以て、規則委員より議長を排除する動議を可決した。又一民主党議員は、議長キャノン氏を辞職させようとする動議を提出したが、激しい議論が起こり、155対191の多数で否決された。但し討論の結果、議長キャノン氏の勢力は失墜した。
解説:内訌(ないこう)とは内紛を意味する。
米仏関税協約 同上
米国大統領タフト氏は、米仏関税問題はその全部に亘って協約が成立し、米国は佛国に対し2割5分の減税を許す旨宣言を行った。
英国炭鉱罷業 同上
サウスウエルス炭鉱紛議を解決する協議が挫折し、坑夫20万人の同盟罷業が避けがたい模様である。
解説:日露戦争後の時代に於ける強力な英国の労働組合の実態が分かる。
3月23日
日本艦隊歓迎 22日上海経由ロイター社発
シドニー来電―日本巡洋艦阿蘇、宗谷の両艦は、数週間を期して訪問し、最も熱心に歓迎された。豪州総督ダッドレー卿は、今夜饗宴を開く予定である。
ソマリランド撤兵 同上
アフリカのソマリランドに関する報告書によれば、英国政府は至急内地より軍隊を撤退する事に決定した。又ムラア蕃民に対する防御は、既に武装させている親英派の土族兵を以てこれに当たらせる筈である。
3月24日
上院改革決議案 23日上海経由ロイター社発
3月17日報道のロオスベリー卿が提出した決議案中、残っていた世襲主義廃止に関する議案は、17名対175名の多数で可決された。
米国海軍予算 同上
ワシントン来電―米国海軍支出案は、戦艦2隻、修繕船1隻、巡洋艦2隻、潜航艇5隻の建造を定め、又1億2千9百万ドルの海軍費を定めた。
解説:英国海軍の新予算計画に含まれる軍艦は、大型戦艦5隻、保護巡洋艦5隻、駆逐艦20隻、潜航艇若干である。
英艦上の暴行 同上
デイリーメールの報道によれば、英国戦艦インビンシブル号(1万5千トン)は、ポートランドに於いて、1週間全く孤立の状態に陥った。その砲キョウは全て海中に投げ込まれた。これに関して調査が行われたが、未だ責任者を発見するに至っていない。
3月25日
露兵波斯撤退 24日タイムス社発
露都来電―先にタブリツの紛争に関連してペルシャに入り、次いでツルファーに送られた露国軍隊は今回、露国ツランスコーカシャ州エリバンに帰着する様命令された。
錦愛鉄道問題答弁 24日上海経由ロイター社発
英国外相サー、グレイは、錦愛鉄道問題に関し、サー、ブウル氏の質問に答えて、英国政府がこれについて、自動的態度を執る様に迫られ、又米国よりも同計画に賛成を求めてきたのは事実であるが、我国は1899年英露協約を尊重する義務があるが故にこれに同意する事は出来なかった。しかしこれを以て英米利益関係の衝突と言うのは大きな誤解であると述べ、又日露両国は何の権利があって干渉するのかとの質問に答えて、他国が同件に対する権利を承認、拒否若しくは限定するのは英国政府の任にないと言明した。
解説:錦愛鉄道とは、アメリカの鉄道王ハリマンの計画した世界一周計画の一貫として渤海湾の錦州から西部満州を経て、黒竜江岸の愛輝に至り、東清鉄道に接続するもので、東清鉄道の買収も含まれていた。日露は当然反対した。
3月26日
米国鉄道紛議落着 25日上海経由ロイター社発
米国シカゴ以西の諸鉄道労働者紛議事件は、賃金以外の各点で全て協定が結ばれ、唯賃金のみは仲裁に依る事に定められた。
解説:3月17日米国鉄道大罷業の続報
フ氏親日運動 24日ニューヨーク特派員発
前副大統領フェアバンクス氏は、帰国後盛んに日米両国の為に平和的な発言に努めている。
3月27日
伊国火山噴火 26日上海経由ロイター社発
イタリアのシシリー島エトナ火山は、14個の火口より噴火中であり、溶岩の流れは、ある場所ではその幅1Kmにも及び、今やボシヨオに迫り、住民は避難中である。
解説:エトナ火山は、シチリア島の東部にあり、世界で最も活動的な火山の一つで、常に噴火している。
3月28日
英国上院廃止論 27日上海経由ロイター社発
労働派首領バーンス氏は、上院否認廃止決議案に対する修正案を提出した。即ち上院は、無責任にして国民一般の福祉に反し、且つ国家の進歩を阻害する故に同院は当然排すべきものであると言っている。
羽二重と樟脳 26日パリ通信社発電
佛国議会は関税法を改正し、結局羽二重に対しては百キロに対し350フランの課税を徴する事に決し、そして粗製樟脳は無税と決定した。
解説:羽二重は高級絹織物の一種で、当時日本の代表的な輸出品
3月29日
8日タイムス社発
印度人種衝突 ラフォール来電―
印度人等は、イスラム教徒商人に対し、非買同盟を行った為に人種的偏見の感情が次第に高まり始めている。
解説:この対立が原因でやがてイスラム教徒の国パキスタンが生まれる。
ブータン条約 同上
カルカッタ来電―英国とブータン(インド北部の国)との条約中、重要な規定は、ブータンは対外事項について、一切英国の教導監督を受けることを諾し、以て清国の陰謀を防止するという点にある。
米艦隊欧州行 28日上海経由ロイター社発
ワシントン来電―米国政府は来る11月、大西洋艦隊を地中海回航の途に上らせることに決定した。
解説:米国の艦隊は、日露戦争後英国に次いで世界第2位の艦隊と言われている。
3月30日
爪哇に関する警告 29日タイムス社発
ロンドン商業協会は、ジャワ島に土地を獲得する件に対し警告を発し、オランダ政府は同島の土地私有者より強制的に所有権を剥奪しようと企てている旨言明した。
解説:米英の植民地政策に比較し、オランダのインドネシアに対する植民地政策が最も苛烈なものであった。
芬蘭問題 同上
露都来電―フィンランドの事項中、一般帝国に関係があるとされる範囲を決定する議案が、昨日国民議会に提出された。フィンランド人等は、露国とフィンランド間の問題が如何なる状態において処分されるかに注意し、その遣り口如何によっては、フィンランドの自治を危うくするのではと憂慮している。
解説:当時のフィンランドは、露国の総督の支配下にあった。
3月31日
芬蘭自治権剥奪 30日タイムス社発
露都来電―露国政府のフィンランド立法権制限案は、先に発せられた布告の文言を遥かに越え、その為フィンランドの自治は影のみとならざるを得ない状況に陥っている。依ってフィンランド人は最後の手段として、諸政治機関に対し、ボイコットを行うと威嚇し始めており、不穏な形勢である。
日本人の間諜 30日上海経由ロイター社発
マニラ来電―米国工兵軍団の一兵士が要塞地図を撮影中に捕縛された。尋問の結果、2名の日本人に地図を渡す計画である事が発覚し、その日本人は犯罪兵士と共に捕縛された。この日本人は、多分追放されると思われ、在留日本人は、この2名の日本人は或る欧州の強国の為にこの様な事をしたに過ぎないと言っている。
解説:フィリピンは、米国の保護国となっている。