明治43年の世界情勢

明治43年1月

11

印度綿作収益 31日タイムス社発

ボンベイ来電―綿貿易は、例年の収穫状況よりはるかに豊作である。綿業者等は、1年間で4年分の収益を得つつある。

移民制限協約改締 30日桑港特派員発

ワシントン来電によれば、内田大使は、就任第1番目の仕事として、日本移民を制限することを米国政府に提案するものと伝えられている。しかも日本がいかに改正しようとしているのかは知ることが出来ない。

 

12

獨逸海軍協会檄文 1日タイムス社発

ベルリン来電―獨逸海軍協会の新年の檄文は、獨逸国民に対し、獨逸海軍の拡張政策を支持する様熱望し、英国煽動家の排獨的演説のごときは、これは選挙運動に過ぎないと言明した。

 

13

英国の海軍力 1日上海経由ロイター社発

ペレスフォード郷は、グリムスピーに於いて、次の演説を行った。海軍省は、海軍先任将校より、現在の英国海軍力が実際の必要に適応していない事を指摘した書簡をしばしば受け取っているとの報道を耳にしたが、これは果たして事実であるかどうかを首相アスキス氏に質問した。

亜細亜艦隊創設 同上

ワシントン来電―極東に於ける米国の利益が次第に増加するにつれ、現在の組織のまま全艦隊を管理することが困難となった為、太平洋艦隊をアジア艦隊と太平洋艦隊とに分ける事に決定した。

 

14

希臘内相辞職 3日タイムス社発

アデン来電―ギリシャ陸軍協会は、去る1日、内務大臣の辞職を要求した。これについて内閣は、一旦総辞職を決定したが、皇帝の優渥な御意に依って中止した。内相の辞職は、2日付で発表された。

英国蔵相演説 3日上海経由ロイター社発

英国大蔵尚書ロイドジョージ氏は、イングランドの都市レツデングに於いて演説し、政府は、社会改良の為に18百万ポンドを使用する事を定めた。しかし無責任な世襲的妨害物(貴族の意)を亡ぼすまでは、その利益を受ける事ができないと言明した。

 

15

希臘危機落着 4日タイムス社発

アデン来電―ギリシャ政界の危機は、落着した。内務大臣は、その職を免じられた。武器を執って威嚇的態度を示していた陸軍の将校は、首相マウローハリス氏に対し、陸軍協会は、政府を信任する旨通知した。

ハルバートの日韓合邦論 3日紐育特派員発

一両日前、ニューヨークに到着し、現在ワシントンに滞在中であるハルバート氏が次の様に公言した。

日韓合邦は、明らかポーツマス条約に違反しており、これ程非理、不当なものはない。韓人は決して合邦を認めず、若しこれを決行するならば、国内の暴動は絶える事が無いであろう。予は韓人の為に、十分に力を尽くす事が出来なかったので、愛国心に富む韓人の中には、予を恨み、予に危害を加えようとする者もいた。その為予が京城から大連に赴く際は、日本の保護下にあった。然るに日本の紳士が、その保護下にあった予を見て、秘密探偵であるとしたのは、誤解である云々

解説:ハルバート氏とは、米国の神学者HB・ハルバートであり、1906年に「朝鮮滅亡」を出版しており、キリスト教至上主義者で、朝鮮に比べキリスト教が普及しない日本を野蛮視している。

1905年、日本の第二次日韓協約を妨害する為、皇帝高宗の密書を米国の政府要人に渡そうとした、又19077月のハーグ事件でも高宗の密使を列強諸国の代表と会わせようとして失敗している。

 

16

英国首相の海軍論 4日上海経由ロイター社発

自由党は、海軍に関し益々猛烈に主張し始めている。首相アスキス氏は、バツジントンに於いて演説し、いずれの政府も我が政府以上に、海軍の優勢に注意を払うものはない。我が政府が責任を持つ現在及び今後数年間に於いては、英国の地位は、攻撃の余地が無い優勢を保つと言明した。その他の閣員も同一の演説を行い始めている。

解説:英国は獨逸と建艦競争をしており、2強国標準という政策をとっている。即ち獨逸と仏国との海軍力を合わせてものより、優勢な海軍力を持とうとしている。

 

17

印度革命党捕縛 6日タイムス社発

ボンベイ来電―インド政府は、デカン殺人密謀が発覚した結果、ついに国事犯人の審問期を短縮し、不法団体禁止法律を適用した。そして37名は既に捕縛された。

米国航海補助案 6日上海経由ロイター社発

米国下院議員ハムフレー氏は、米国政府の同意を得て、航海補助法案を下院に提出した。その内容は、極東及び豪州へ郵便物を輸送する第2等級の米国汽船に対する補助を1マイル4ドルに増加し、遠洋通商船のトン税を増加し、且つ外国建造の汽船を外国貿易の為、米国の船籍に移す事を許す件等である。

 

18

米国の新提議(満州鉄道買収問題) 6日桑港特派員発

米国政府は、満州問題解決に関し、露国政府に覚書を提出した。その内容は、各国の共同出資により、そのお金で、満州に於ける諸鉄道を清国政府に買収させ、支配権を出資した各国の共同支配に委ね、中立の位置に置き、完全に商業鉄道とし、政治的軍事的使用を禁止すると述べている。

露国の態度は、英米資本家にアイホンから錦州府までの鉄道敷設権を与える事は露国政府の最も好まない事で、絶対に反対すると言われている。

 

19

米国提議の内容 8日上海経由ロイター社発

米国は、満州の諸鉄道を清国へ売却させ、これを中立とさせようとする覚書を列国に送った。米国の案によれば、この費用は列国がより支給し、従って列国は同鉄道を純粋に商業的、非政治的基礎の上に活用する様監督するべく、又同計画は、ハルピンから大連に至る日露両鉄道線を含むものであり、一方同線は、兵士弾薬の輸送に対して閉鎖すると共に、他方永久的衝突を避け、機会均等主義を安全にする所以の緊急的措置であると言っている。

獨清露英の態度 同上

獨清両国は、米国の満州鉄道中立提議について、好意的な回答を行い、露国は現在慎重に考究中である。また英国は、根本に於いて同意したが、同時に今後何等の行動を執る以前に、先ず日露両国の意見を確かめなければならないと指摘した。

 

110

満州中立論評 9日上海経由ロイター社発

ロンドンタイムスは、米国国務郷ノックス氏の満州中立案が、財政上、政治上のトラブルを生じる恐れがあると切言し、この案を提出したノックス氏の心情や純粋さは、察するに余りあるけれども、あまりにも坦懐過ぎて、却って満州の現状に関する切実な実情を見過ごした嫌いがあると論じた。

解説:連日続報されている満州問題である。坦懐とは物事にこだわらない事である。

 

1月11日

米紙の意見 10日タイムス社発

ニューヨーク来電―諸新聞は、国務郷の提議した満州鉄道を清国に返し、その費用を列強より貸与し、これによって鉄道の中立を図ろうとする案を歓迎し、同提議によって、関係諸国は、止むを得ず公然と満州の将来に関する意志を発表せざるを得ない様になるであろうと指摘した。

土耳其の抗議 10日上海経由ロイター社発

トルコ政府は、クリート内閣がギリシャ皇帝に対し、臣従の宣誓を行い、又同島議会がギリシャ法典を実施する決議を行い、以て新たに甚だしくトルコ皇帝の主権を冒した件に付き、抗議する通牒を列強に送った。

日本の態度と米人 9日桑港特派員発

国務郷ノックス氏の提議した満州鉄道中立案に関し、日本の反対が激しいとの来電があり、米人の感情を激しく動かした。米人は一般にノックス氏提議の成功を望んでいるからである。

 

112

満州提案論評 11日タイムス社発

ニューヨーク、イブニングポスト紙は、満州中立提案は、日本が戦争で得た二三の重大な結果の一つを放棄し、且つ開放主義と清国税関法を破った事を白日の下に晒す事になると言明した。

露紙の米国提案反対 11日上海経由ロイター社発

露国半官報ノーウエ、ウレミヤは、米国国務郷ノックス氏の満州鉄道中立提案を否認し、これは空想の奇怪な産物に過ぎないとし、露国は少しも権利を放棄するべき理由を持たないと論評した。

 

113

米紙の提案反対 11日桑港特派員発

満州問題に関する国務郷ノックス氏の提案に就いては、国内で漸く反対の声が高くなった。サンフランシスコ、ニクルス紙は、今朝の社説において、モンロー主義を破って満州問題に干渉する非を論じ、日露政府がキューバの門戸開放を要求する時は、如何にするのか。米国が満州に関与する事は、日露がキューバに関与する事と同じであると論じた。

満州当路所見(米国の提議に対して) 11日北京特派員発

米国が提議した満州中立問題に対して、清国関係者の議論はまちまちである。有識者は、余りにも突飛は議論であり、到底実行されないのみならず、万一実行される時は、列国が合同して清国の政治に干渉する端緒の第一歩となり、清国の為に悲しむべき結果をもたらすであろう。所謂前門に狼を防いで、後門に虎を招く事になると述べている。

 

114

米国国務郷の意見 13日タイムス社発

ニューヨーク来電―米国国務郷ノックス氏は、日露両国が現状維持よりも寧ろ鉄道中立によって、一層大きな利益を得る事になるであろうと信じると称している。

国務郷は、満州に於いて門戸開放主義を維持すると共にこれを最善の経済的利益を生むよう発達させることを希望し、そして日露両国は同地に近いので、その迅速な発達から受ける利益も一層大きいであろうと考えている。又若し両国がこの提案を拒絶するならば、必ず鉄道競争という伏兵に遭遇するであろうと確信している。

米国提案の内情 12日桑港特派員発

満州鉄道問題に関する米国の提議は、故鉄道王ハリマン氏の意志であり、後継者がこれを継承し、政府を動かしたものとの説がある。

解説:鉄道王ハリマンは一時「満州鉄道日米共同管理に関する予備覚書」を桂首相と交換した事がある。しかしポーツマス条約を結ぶ為に渡米していた外相小村が帰国し、猛反対の結果中止されている。

 

115

満州中立案と露紙 14日タイムス社発

露都来電―露国新聞の多数は、米国国務郷の提案した満州鉄道を中立とする件に反対した。

西蔵人の不満 同上

ロンドンタイムスの入手した情報によれば、チベットの情勢は非常に危機的である。清国官憲とチベット人の確執は絶えまなく、清帝は、チベット人の不満を抱く原因を除く様求める上奏に接した。現在のままで推移するならば戦乱の恐れがあると言われている。

獨逸の回答 14日上海経由ロイター社発

本社ベルリン通信員の関知した所によれば、獨逸は米国国務郷ノックス氏の満州中立提案について、英国と同一の意味で、概ね同意する声明を行う様である。又ベルリン政府筋に於いては、同件が決定を見る迄には、なお長期日を要すると信じられている。

 

116

墺紙の米国提案評 15日タイムス社発

ウイーン来電―フレムデンブラット紙は、米国の満州鉄道中立提案を評して、これは実にほとんご、専ら日本が抱いている大志に反して行われたものであると説き、同提案の成立する見込みは少ないと言明した。

タイムス米国提案評 同上

タイムスは先ず日露両国の意見を聞かなくて行われた米国の満州鉄道中立提議の実行が困難な事は、列国の認識する所であると説き、英国もこれを承認しないであろうと言明した。

 

117

露領の冷静(米国提案に対して)ウラジオ特電

米国の提案に対し、当地方の各新聞紙は非常に冷静であり、露人間には話題にすら上がっていない。

安奉線工事現状 内国電報(16日発)

昨年9月より急遽工事に着手した安奉線は、結氷期間中の事であり、各区工事が振るわず、来る34月頃の解氷期を待って、人夫を増して大工事に着手する筈であり、現在は、唯沿線の土地収用に努めているのみである。大石橋(だいせききょう)と陳相屯(ちんそうとん)間以外の土地収用は終わる予定であるが、積雪、風害等の障害によって延期していると言われている。

解説:列国で南満州鉄道を整備、管理しようと言う米国の提案があるが、日本は着々と工事を進めている。中国旅行で旅順から瀋陽(旧奉天)に行く際に利用するのが安奉線であり、途中大石橋を通過する。

 

118

日露協約主張 17日タイムス社発

露都来電―半官報ノウウオエ、ウレミヤ紙及びビルテヴィヤ紙の両新聞は、露国政府が日本と鉄道協約を締結するよう主張し始めている。

露国の拒絶 16日ベルリン特約通信社発

露国は公式に米国の満州鉄道中立提議の承諾を拒絶した。(上記電報に就いて、我が外務当局に質したが、当局者は少しもこの様な報道に接してなく、多分間違いであろうと語った)

 

119

満州鉄道中立反対 17日ベルリン特約通信社発

露国大蔵大臣の機関紙である一露都新聞は、露国が東清鉄道中立をはじめ、米国の提案を承諾する事はできない旨を報道した。

 

120

印度革命運動 19日タイムス社発

カルカッタ来電―1印度人、連隊の兵士10名が、数名の犯罪陰謀者を連隊内に連れて来たとの疑いで、現在審問が行われている。但し同連隊そのものが英国に対し忠実である事は疑いないと言われている。

提案拒絶と米国 18日桑港特派員発

ワシントン来電によると、国務省は現在でも、ノックス氏が提議した満州鉄道中立構想が完全に失敗に終わったものとは認めていない。しかし18日午後流布された日本が提議を拒絶するであろうとの報は、少し驚愕を以て迎えられた。実際日本の態度が風説の通りであるとするならば、少なくとも現在の所、同提議を放棄しなければならないが、政府当局は、日露両当局者が十分な考慮を費やすことなく拒絶したとは信じていない。故に回答は数か月後になるのではと期待している。(一部抜粋)

解説:この鉄道問題が将来の大東亜戦争の源流と思われる。

 

121

沸国正教問題 20日タイムス社発

パリ―来電―沸国代議院に於いて、学校問題に関する討論が行われた。公立学校の組織に功績のあった一人ビュイゾン氏は、学校に於いては、常識ある人物より反対を受ける様な事項は一切教育してはならず、教師は生徒の前に神を論じてはならないと公言した。

解説:明治391213日沸国に於ける政教分離の記事があり、以後沸国では政教分離が重視されている。

「佛国政教分離問題 12日上海経由ロイター社発」

パリーに於ける法王使節モンタクニキ神父は、家宅捜査を受けた上に逮捕された。国境まで護送される筈である。

佛国内閣会議は、早速、寺院財産の清算を行い、且つ5500名の神父に対して、兵役に就く事を求める決定を行った。

「法王亦甚強硬 同上」

佛国政教分離法がいよいよ実施されることになった為、法王庁は大変激昂している様子である。法王は、この問題の情勢について、自らも断固たる手段を採らざるを得なくなってしまった事を悲しみ、迫害に会おうとも、殉教者を出そうとも、私は、宗教と我が神の道を防護する事を辞せずと述べた。」

獨逸関税難 同上

ベルリン来電―獨逸は、3カ国との間に関税上の難問題が発生する情勢にある。即ち第一米国は多分ペイン関税法中最高税率を獨逸製品に適用するであろう。第二ポルトガルとの通商条約は、危機的な状態である。第三沸国関税改正は、獨逸人に不安を起こさせる内容がある。

米国関税布告 20日上海経由ロイター社発

米国大統領タフト氏は、イギリス(植民地を除く)、イタリア、ロシア、スペイン(植民地を含む)、トルコ(エジプトを除く)にペイン法の最低税率を適用する布告を発した。そして米国に不利な関税を掛ける獨、沸両国に対しては、イタリアが大いに厚遇されるであろう旨を述べる事により、高い税率を暗示した。

 

122

露国の公式拒絶 20日ベルリン特約通信社発

露国政府は、米国国務郷ノックス氏に対し、米国の満州鉄道中立提案は、露国が承諾する事の出来ない提案である旨公式に通知した。

露国拒絶理由 21日上海特派員発

清国政府は米国政府の提議を拒絶した露国政府の回答を参考として受け取ったとの事である。この拒絶の理由は三つあり、第一 清国の主権と満州の門戸開放は、現在の状況により、決して毀損されないと思考される。第二 米国の提議を承諾すれば、満州に於ける露国の企業を妨害する。第三 シベリアとウラジオを連絡する唯一の鉄道を管理する事は露国にとって、死活問題である云々

 

123

露国の提案拒否(愈米国政府に通知する) 22日タイムス社発

露都来電―露国政府は、米国の満州鉄道中立提案を拒絶した。しかも同時にワシントン政府に向け、露国領土の安全を冒さない新鉄道の提案ならば歓んで同案及びその含有する長所等を考究したいと考える旨通知した。

仏英の態度 同上

露都来電―沸国政府は満州鉄道中立問題につき、露国と同一の立場をとると考えられる。又半官報ノウオエ、ウレミヤ及びブーズガゼットは、英国が露国に同意するであろうと確信している。

 

124

米国今後の態度 22日桑港特派員発

国務省は、満州鉄道中立問題に関する日露両国の拒絶公文に接して、非常に失望した。本件がこの拒絶に依って完全に放棄されるか否やは未定であるが、国務省は別に考える所があると思われる。兎に角同省が英国その他と連携した錦齊鉄道(きんさいてつどう)借款問題に特別な注意を払う事になるのは間違いないであろう。そして同件に関しては、日露両国とも異議が無いであろうと信じている。

解説:連日の様に報道されてきた満州鉄道問題は、ひとまず終焉を迎えたが、結局満州問題が、大東亜戦争発生の源流となったと思われる。

沸国の回答 同上

パリ―来電によると、英沸両国も内閣会議の結果、満州鉄道の中立問題に関し、日露両国の拒絶は製糖であると是認し、米国に対しては不同意出ると答弁する事に決定したと言われている。

解説:獨逸の脅威を受けているフランスは、露国と協調しており、英国も日英同盟を結んでいるので当然の結末とも言える。

 

1月25日

米国新聞の余憤 24日タイムス社発

ニューヨーク来電―米国諸新聞は、満州中立提案の拒絶に関して、排日的態度を示し、日本は米国に対して、満州で行われ始めている事を監視する特権を拒否する事は出来ないと警告した。

タイムス通信員の日米韓 同上

タイムス通信員は、満州鉄道中立提案を拒絶する事は、日米間の紛争が大きくなるであろうと考えている。

タイムスの論評 同上

ロンドンタイムスは、日露両国の満州鉄道中立案拒絶に賛成し、米国国務郷が外交家らしからぬ楽天主義を執った事を遺憾とし、又清国政府が深く考えず、英米資本家、請負業者に錦愛鉄道敷設を許さんと企てた事を攻撃した。

 

126

沸国教育法案 25日タイムス社発

パリ―来電―沸国代議院は、学校教育に宗教趣味を加える事を許すべきかどうかの問題について討議を行い、政府側ではあくまで宗教排斥を主張した。そして討論の結果、145対421の大差で政府の信任案が可決され、速やかに新教育法案を施行する必要が是認された。

解説:1月21日「沸国正教問題」の記事の続報であり、そこで政教分離について詳しく解説している。沸国では、現在もイスラム教徒のスカーフを認めていないがこの政教分離の思想の影響ではないかと思われる。

錦愛鉄道論評 25日上海経由ロイター社発

タイムス紙は、清国が錦愛鉄道の敷設を許可するのに、今日の時期を選んだ事を悲しみ、これは、列強間を激しく隔離させ、そして争議を発生させる短見、浅慮の計画であると述べた。

解説:錦愛鉄道とは、南満州鉄道(日本が得た)と平行に走る錦州と愛琿を結ぶ鉄道である。これはアメリカの鉄道王ハリマンの構想であった。

膠州貿易増加 同上

ベルリン来電―獨逸植民省の報告書によれば、膠州の貿易は、1909年度に3割増加した。又炭鉱の産出額も増加した。

解説:膠州湾一帯はドイツの租借地で、獨逸東洋艦隊の基地となっていた。青島でビールの生産を行い、青島ビールとして有名である。

 

127

印度叛乱鎮圧策 26日タイムス社発

カルカッタ来電―法律無視の精神を煽り、青年を無政府主義に傾けさせる責任は、主として叛乱を煽動する新聞にある。印度政府は、これ等新聞の処分に関する法案を近々提出する様である。従来の法律は、現状では、十分な効果が無い。そして政府の方針に関する印度総督の所見は、一般の公衆より、至極もっともであると認められている。

解説:当時無抵抗主義で有名な「ガンジー」は、英国の植民地である南アで少壮弁護士としてインド人の権利擁護に活躍していた。

ベレスフォード嚮の演説 26日上海経由ロイター社発

ベレスフォード嚮は、ダートマスに於いて演説し、政府の海軍政策を攻撃し、戦艦インポシブルは、その備砲12インチを発射する事が出来ない。従って用をなさないと断言した。

解説:ベレスフォード嚮は13日「英国の海軍力」の記事に於いて英国海軍力の不適応を指摘している。

布哇砲台費可決 25日桑港特派員発

米国上院は、既に下院で可決したハワイその他の砲台建設費6百万ドル及び同島維持費百万ドルの支出案を25日通過した。同案の討議中、ネバダ州選出議員ニューランド氏が太平洋権力争いの為、日米間の衝突は免れる事が出来ないと極めて強く且つ露骨に説いた事が最も議員を動かした。

解説:パールハーバーの米海軍基地の誕生であり、日米海軍の衝突のスタートでもある。

 

128

巴里の洪水 27日タイムス社発

パリ―来電―セーヌ河は益々水量が増加し、外務省所在地の地面も非常に弱まっている。下水道は用をなさず、熱病、疫病が発生する恐れがある。これについて、救済費の募集が開始された。なお同海岸の工場は休業し、3万人が住居を失った。

米獨関税問題 26日ベルリン特約通信社発

米獨関税戦争は多分発生する事は無いと思われる。米国では、この様な戦争に反対する世論が次第に高まり始めており、難しい牛肉税問題についても解決しそうである。しかし両国の妥協は、多分現協約が終了する期日である28日前には成立しないであろう。

 

129

米獨沸関税問題 28日タイムス社発

ワシントン来電―獨逸と米国との関税問題に関する争議は、程なく解決するであろうと期待されている。しかし沸国とは意見の一致を見る事は困難な模様である。沸国側では、米国人は値段の高さには頓着なく、現在沸国から米国に輸入する品種の大部分を占める贅沢品を依然買い入れるものと思考している。そして沸国よりの輸入品の価格は日を追って高騰中である。

希臘政局危機 28日上海経由ロイター社発

アデン来電―陸軍軍人同盟はラリ、セオロキス氏の主導により解散する事に一致した。氏は国民議会の招集、憲法の改正を以て、この同盟を解散する条件としたが、危急な情勢と思われる。

 

130

米国リベリア 29日タイムス社発

ワシントン来電―米国政府は、アフリカのリベリア共和国(アメリカで解放された黒人が組織したもの)を以て、サントドミンゴ同様の財政的保護国とするよう計画中である。

解説1822年、開放された奴隷が初めてリベリアに到着している。サントドミンゴはドミニカ共和国の首都

英国選挙の結果 同上

英国選挙は、最早殆ど開票が終わり、その宣告を与えた。統一党は、大いに勢力を増加し、政府も自由党の外、労働党、国民党に依頼せざるを得ず、情勢は国民が両党の主張する大変動を実行させる意思が無い事を示した。なおロンドンタイムスは、今正に上院の有効な改革を行う時期であるとし、在野党も貴族も道理のある改革案には同意、協力するであろうと言明している。

 

131

沸国洪水原因 30日上海経由ロイター社発

沸国に於ける今回の洪水の原因は、当初に非常な豪雨で河川が増水した事が原因で、その後降雪が解けた為にその水量が増加した為である。

日英米三国同盟論(菊池博士招待会) 29日ニューヨーク特派員発

高峰博士は、28日夜菊池男爵を主賓とし、日米人2百名を招待した。又山崎総領事代理もその前夜、盛大な歓迎会を開いた。その席上にてアウトルック雑誌主筆アボット博士は、最も痛快に日英米三国同盟の必要を論じ、世界の平和は、かくしてこそ初めて保障することができるであろうと述べた。

東京より寄贈した桜に虫がつく 同上

先般東京からワシントンに送った桜の樹に悪い虫が発生した。その為ワシントン公園の官吏は、これを植えると他の樹木に害虫が伝搬するのは必然であるとして、植え付けをしない事を政府に要求した。或は焼却するのではとの説もある。

 

明治43年2月

21

獨逸議会騒擾 31日上海経由ロイター社発

ベルリン来電―有力な保守党員オルデンブルヒ氏は、獨逸議会に於いて「獨帝は、何時でも将校に兵士10名を従え、議会を閉鎖せよと命じる事ができる」と公言した。その為に議会は非常に喧噪となり、社会党員、急進主義者、その他は議可に対する侮辱として抗議し、盛んに絶叫した。次いでオ氏はその意は、兵士は大元帥陛下に服従しなければならないと言うにある旨弁明した。

土勃関係険悪 同上

コンスタンチノーブル来電―トルコは、ブルガリアが開戦する意志があるとの説がある為、非常に憂慮し、国境の軍隊は急遽増員中である。

 

22

米国の印度移民 1日タイムス社発

サンフランシスコ来電―印度労働者191名到着した。これについて当地のアジア人排斥協会は一つの警告書を発し、今やカルフォルニア州に於ける印度人は1万人に上り、又毎月約2百名が到着中であると言明した。

解説:当時既に清国人は入国禁止、日本人は日本外務省の政策で、米国への移民禁止している状況であった。

印度回教徒悦服 同上

デイリー来電―印度のイスラム教徒同盟会の会合が開かれた。この集会は、教育及び農工業に関して注目すべき国民的計画を示し、又各社会と協力して、英国の政治に喜んで服従したいと熱心な希望を発表した。

移民政策問答 内国電報(31日発)

午前1040分開会した国会の於いて、大石氏の質問に対し小村外相は次の様に述べた。

我が日本は、日露戦争の結果として一島国より大陸国となった。そして我が国の地位を見ると、西には4億の人民を有する支那と16千万を有する露国がある。東には1億の人口を有する北米合衆国がある。この間に介在して一大飛躍を試みるには、少なくとも1億の人口を有しなければならない。その為に5千万の我が大和民族はこれに集中する必要があり、散逸させてはならない。この大方針の結果として政府はなるべく移民を満韓に手中させる決心である。そしてこの地は、尚2千万、3千万の人口増加に応じるには、十分に余裕がある。その為民族集中の大方針に適すべき方面への移民に対し、政府はこれを幇助するに躊躇しないと答えた。

 

23

希臘憲法修正 2日タイムス社発

アデン来電―ギリシャ皇帝は、陸軍協会が場合によっては宮城を占領すると恫喝した結果、遂に不本意ながら憲法に抵触する国民会議招集を裁可した。現在の憲法によれば、憲法修正を目的とする国民会議の招集は、2個の異なる議会が引き続いて同件を可決した後である事を要し、従って新選挙を行う必要がるとしている。但し皇帝は同意の条件として陸軍協会の解散を要求したが協会はこれを承諾した。

土国新聞激昂 2日上海経由ロイター社発

コンスタンチノーブル来電―トルコの諸新聞は、ギリシャの情勢が危険な事に鑑み、戦備の必要を主張し、クリイトの代表者をギリシャの国民会議に列席させる様な事があれば、これはギリシャとトルコの開戦理由になるであろうと論じている。

解説:クレタ島は、現在ギリシャ領である。当時は、トルコ領であったが人口の1/6のイスラム教徒と5/6のキリスト教徒の間で紛争が絶えず、列強が駐留軍を派遣していた。

 

24

近東問題再燃 3日タイムス社発

コンスタンチノーブル来電―ギリシャ陸軍協会が皇帝を威圧して憲法修正の国民会議を今秋開会させる事となった。この件は非常にトルコの人心を動揺させた。トルコ政府は、クリイト島保護の任にある英露伊沸4カ国に対し「若しクリイト島民がこのギリシャ国民会議に関する新選挙に際し、之に代議員を出すと決定するならば、トルコは止むを得ず自己の主権を守る為に断固たる手段を取るであろう」旨を通知したと信ずべき理由がある。

土勃関係難 同上

ソフイア来電―サロニカの陸軍法定は、8名のブルガリア商人に対し、視学官を殺害したとの罪で死刑を宣告した。この為ブルガリア国民は非常に激昂している。

 

2月5日

希臘の対土誓約 4日タイムス社発

アデン来電―ギリシャ政府は、トルコに対して一つの誓約を与えた。その要旨は、今回開かれる予定の会議はギリシャ人の一般的大会議ではなく、唯憲法の修正を目的とする一つの議会である為、クリイト島より代議員を派遣する機会は無いと述べている。

近東問題困難 同上

コンスタンチノーブル来電―一般公衆及び諸新聞は、ギリシャとトルコの戦争が起こりそうな情勢に非常に驚愕している。彼らは今後発生する事件が、現在アデンの主人公である陸軍協会を圧迫してある行動を執らせる事になるのを憂慮している。但しトルコ政府はクリイト島保護の任にある英露仏伊の4カ国がクリイト島民の挑発的行動を防止する様尽力するであろうと期待し、これを信頼し始めている。

 

2月6日

新印度新聞条例 5日タイムス社発

カルカッタ来電―新新聞法案が印度立法参議院に提出された。同案は地方政庁に対し有害と認められ且つ必ずしも法律上の意義に抵触しなくても謀反的と見なされる新聞の発行を、起訴を待たずに禁止する権限を付与している。又新発行の新聞には保証金を納めさせ、非行がある場合にはこれを没収し、2回目では発行免許をはく奪する事を規定している。

日本財政論評 同上

ロンドンタイムスは、1909年に於ける日本の経済報告を論評し、日本政府は健全な財政政策を行おうと決心しており、その十分な証拠を示したと説き、日本の為政者が行政的に有効な政策を行おうとすると共に経費節減をしている事を称賛している。又南満鉄道の新経費は国民的政策の為であり、健全な財政主義に違反するものではないと言明した。

 

27

近東問題と列国 6日上海経由ロイター社発

沸国外相ビション氏は、トルコとギリシャの紛争を予防する為、関係列国の間で協調が出来た旨を内閣会議に報告し、且つトルコ、ギリシャ両政府の宣言により列国の心配は無くなった事を付け加えて言明した。

解説25日「希臘の対土誓約」の続報

 

28

波斯外相不信任 7日タイムス社発

テヘラン来電―ペルシャ議会に於いて、外務大臣アラ、エス、サルタネ氏に対し、大臣は、未だにペルシャに残留する露兵を退去させる為に、如何なる手段を執ったのかとの質問が起こった。しかるに同大臣は、自己が何もしていない点について、弁明できず、その為議会は満場一致で免職を求める決議を行った。

英露親和論 同上

露都来電―露国半官報ノウオエ、ウレミヤのロンドン通信員ウエスセリトキイ氏は、英露関係について講演を行った。聴衆には多数の有力な官吏がおり、氏は盛んに獨逸派の主張する排英論に反論し、英国の友情が露国にとって莫大な価値がある事を指摘した。英国はボスニア,ヘルチェゴビナ併合問題の難局に於いて、忠実に露国を援助し、又日英同盟は、極東に於ける露国の安全を保障するものであると言明した。

 

29

在米清人激怒 8日タイムス社発

ニューヨーク来電―太平洋沿岸全部に於ける清国人は憤怒のあまり、サンフランシスコに対してボイコットを行い始めている。その理由は同港に於いて東洋移民を虐待したと言っている。

解説:虐待の具体的理由は不明であるが、清国人苦力は数年前から入国禁止となっており、しかも入国官吏は、苦力と商人等の区別が出来ないとの理由で、商人の入国も禁止している。

この為清国内で米国品のボイコット運動が起こっていた。

英国の対清勧告 同上

露都来電―北京駐在英国公使ジョルダン氏は清国政府に対し、錦愛鉄道の敷設を決定するに先立ち、日露両国と協定する必要性を、理由と共に陳述し、注意を求めた。露国官憲側は、この報道に接して大いに満足した。

 

2月10日

印度新聞法案可決 9日タイムス社発

カルカッタ来電―先般インド立法参議院に提出された新聞法案は、終に同院に於いて可決された。同案は必ずしも法律上の意義に合わないが、謀反的と見られる新聞を起訴せずに禁止できる権限を地方政庁に付与し、新発行の新聞に保証金を要求し、非行があればこれを没収し、或は免許を取消す事を規定している。又インド総督は、政府が流刑の宣告を受けた若干の囚人を放免する事に決定した旨宣言した。

阿弗利加と英国 同上

カルカッタ来電―ソマリランド方面に設けていた前線基地を撤退させよとする英国の政策は、土着民の不安を招き、英国保護政策を信頼した土民を離反させる恐れがある。

解説:ソマリランドは英国の植民地で、現在のソマリア共和国の北部でスエズ運河出口に面した地域である。ソマリア共和国の中部には海賊の基地があり、現在も海上自衛隊が艦底、航空機を派遣し、国際的な海賊対処行動に参加している。

 

2月11日

墺露関係改善 10日タイムス社発

露都来電―昨春ボスニア、ヘルチェゴビナ併合以来、疎遠となっていたオーストリアと露国の両国関係は、改善される事になった。両国政府は、共に各々バルカンに於ける現状維持主義を固持し、トルコの新政府に援助し、バルカン諸邦の自由な発達を期すべき旨をそれぞれが宣言し、以てこの双方関係の改善を表明すると思われる。なお英佛両国はこの件に付いて、全面的に賛同した、

解説:明治41年10月9日「巴爾幹時局」の記事にある様に、この頃から露国とオーストリアの関係は悪化していった。オーストリアのボスニア,ヘルチェゴビナ併合に強い危機感を持ったセルビアは、同じスラブ民族である露国に支援を求めた。この問題を巡り、オーストリアと露国は不仲となっていた。

北極発見彰功 10日上海経由ロイター社発

ワシントン来電―米国上院は、北極発見者ベアリー中佐の海軍少将昇任を可決した。

ベ氏功労表彰 同上

ニューヨーク来電―官民が主催する北極探検家ベアリー氏の招待会が行われた。席上、国民的栄誉の証として、氏の北極到着を承認する意味で1万ドルの小切手が氏に贈呈された。ベアリー氏は演説を行い、このお金は我が従兄弟である英人との南極行競争に米国機を以て加わる為の南極探検隊に使用するつもりであると公言し、且つこの世で英人に勝る好敵手は居ないと言明した。

解説:明治42年9月14日 以降連日の様にクック氏とベアリー氏の北極点一番乗り論争が報道されているが、この記事の様にベアリー氏が最初の北極点到達者と認定されている。

 

212

米人の錦愛鉄道観 11日タイムス社発

ワシントン来電―ある方面では、錦愛鉄道は、最も単純に英米両政府の保護下に、最初の計画通りに英米共同事業として、速やかに敷設工事を開始しなければならないと考えている。

解説:錦愛鉄道は、満州南部の愛琿から北部の錦州に至る鉄道で、日本が手に入れた南満州鉄道と平行に走る鉄道である。

第二院廃止論 11日上海経由ロイター社発

英国労働会議は、選挙を経ない第二院は、時世に適しない故、上院を廃止しなければならないと宣言する決議案を満場一致で可決した。但し如何なる第二院にも反対しようとする修正案は否決された。

 

2月13日

佛摩関係険悪 12日タイムス社発

タンジール来電―在ノエタ佛国陸軍特使一行の土人書記が捕縛され、モロッコ王侍従の為に侮辱を受けた。佛国将校連は宮廷より退席した。

パリ―来電―モロッコ王ムライハフィッドは、先にその特使が締結した借款契約の認可を拒絶した。諸新聞は佛国がモロッコに対する佛国債権者を保護する為に断固たる手段を執る様主張した。

波斯人激怒 12日上海経由ロイター社発

本社テヘラン通信によれば、露国が露兵のペルシャ駐屯問題の論議を拒否した件は、テヘラン府の人心を激怒させた。同府に於いては、外国軍隊の占領継続は、全く弁護の余地が無いものと考えている。

排日案可決 11日桑港特派員発

カルフォルニア州選出の下院議員ヘース氏提出の日本人排斥法案は10日満場一致で下院委員会を通過した。同案は日本人と特定していないが、商人、学生、教師又は旅客を除き、現行法で米国市民となり得ない者の入国を拒絶すると言っているのであれば、日本人を指しているのは言うまでもない。そしてこの婉曲な法案が下院を通過する事は殆ど疑いがないと言われているが上院を通過するかどうかは不明である。

 

2月14日

米国外交攻撃(満鉄中立問題) 12日桑港特派員発

11日の下院予算委員会でニューヨーク選出議員ハルリソン氏は、極めて大胆且つ露骨に国務郷ノックス氏の満州問題、ニカラグア問題、中米問題等に関する外交政策の失態及び適当な外交官を得ない点について攻撃を加え、議場の注意を惹いた。しかし外交委員会委員長ベルキンヌ氏は、満鉄問題を弁護し、米国銀行家が支那の起債に関与する事を得たのは、成功ではないかと言い、ハルリッツ氏はマネートラストとして知られた銀行はいざ知らず、他の一般銀行家は少しもこれを関知していないのではないかと皮肉った。

解説:マネートラストとは、ロックフェラーのマネートラストの様に使用され、一部の銀行による独占金融支配の意味と思われる。

排日案の反響 同上

12日のサンフランシスコ、クロニクル紙は下院委員会を通過したヘース氏の日本人排斥案を是非とも通過させなければならないと論じ、且つ通過する事を信じると言っている。同案に対して、日本国民が激昂したとの東京電報は、非常に米国人の注意を惹いた。

解説:米国に於いては、既に労働組合が発達しており、ロビー活動が盛んであった。サンフランシスコの市議会、カルフォルニア州選出の連邦議員は労働組合を無視できなかった様である。現在、同様な現象が韓国系米国人の慰安婦問題にも見られる。

 

215

摩洛哥の謝罪 14日タイムス社発

タンジール来電―モロッコ王ムライハフィドは、在フエツ佛国陸軍のモロッコ人書記を捕縛し、侮辱を与えた件について、これは是認することができないと発表し、この侮辱事件の責任者である官吏に対し佛国将校に謝罪する様命令した。

解説:2月13日「佛摩関係険悪」の続報である。

獨逸社会党運動 14日上海経由ロイター社発

社会民主党員等は、現在人気の無い新選挙法案に反対し、ベルリン市街で多数のデモ行進を行った。そして市の中心に於ける大集会を警吏が阻止した為に、デモ隊と警吏間に衝突が起こり、警吏は空砲を発射し、数名の負傷者が発生した。

 

216

沸獨関税戦争 15日タイムス社発

ベルリン来電―国民自由党は、政府に対し佛国が関税を増加する計画に対し、報復手段を講じる事を勧告した。

獨逸の激昂 14日ベルリン特約通信員

毎日新聞の電報で、獨帝に関する無礼な記事があり、獨逸の至る所で人民を憤怒させた。政府は獨逸諸新聞がこの記事に関連し、排日的暴論をする事を防止する為、大いに尽力中である。

 

2月17

希臘の言論抑圧 16日タイムス社発

アデン来電―ギリシャ陸軍協会は、国民会議招集の意見に反対する諸新聞の発行を禁止し、兵を集めてこの命令を執行しようとするに至った。その為諸新聞記者も必要に迫られ、止む無く異口同音に同会議の招集を主張する事になると思われる。

巴里洪水続報 同上

パリ―来電―セイヌ河は、水嵩が再び増加中であり、南西海岸には激烈な風雨があった。市内進水地区ではポンプをもって水を排水中である。

 

2月18日

蘇丹土民襲撃 17日上海経由ロイター社発

パリ―来電―ダカールよりの公報によれば、沸国の1個分隊は、スーダンのワダイ州アベシュルから旅程3日の地でマサリト蕃賊酋長の為、待伏せ攻撃を受け、土民111名の一隊全部、欧州人大尉1名、中尉2名、軍医2名が虐殺されたとの報告があった。

排日案内情 16日桑港特派員発

ワシントン来電によると、ヘース案に対する日本の世論が激昂した事は少しも驚くには値しない。日本は条約改正の機会に、国民的栄誉を傷つける条項を除こうとしており、若しヘース案に於いてこの件が提出されていないならば、日本は自ら移民に関する協約を破棄し、他の欧州諸国と同一待遇を要求するであろうと信じられていた。日本の激昂は、新条約交渉の進行上、日本が不利になる事があるであろう。しかも時局はカルフォルニア州学校問題紛争の当時よりも悪くなっており、両国政府の衝突が起こるかも知れない。但し一般に信じられているのは、ヘース案が下院委員会を通過したのは、日本の第2条但し書き排除に対する牽制運動であり、到底議会を通過する事は無いであろうと言われている。

希臘陸海軍反目 16日ベルリン特約通信社発

ギリシャ海軍は、陸軍協会に反対し、国王に味方する様になった。その為陸軍軍隊は、驚愕している様である。なお海軍は戦闘準備を整えている。

 

219

英国労働派の態度 18日タイムス社発

英国の政局は、依然として困難である。アイルランド国民党は引き続き政府との提携条件を要求中である。そして政府が国民党の要求に完全に応じる事が出来ないのは明らかである。なお労働派の説明によれば、同派は上院の否認権に対する皇帝の保障なく、又上院の予算否認権にも服従しなくて、首相アスキス氏がその地位を維持する事には反対であると言う。そして急進自由党はこの説に同意している。

英独仏公使質問 18日上海特派員発

英独仏3国公使は、外務部に対し同じ内容の通牒を送った。

イ漢鉄道借款に関する130日の詔勅に対する弁明を求め、三国は清国に最初の約定を履行させようとする旨を通知した。米国は最初の約定には加わっていないのでこの抗議には加えられていない。なお同通牒は、この詔勅を公式に、自然に解釈した結果について考究し、その意味は、清国政府は欧州との間の難問が解決した時には、強硬に道理に背いた大資産家を処分しなければならないと言っている。 

解説:イ漢鉄道とは武漢と香港を結ぶ鉄道であり、列強の利権争奪の舞台となっている。

この記事の大資産家の原文は「紳董」であり、資産家の最上位に位置する大富豪、大資産家を意味する。

 

220

佛国の対摩談判 19日上海経由ロイター社発

佛国はモロッコ王ムライハフィドに対し、48時間以内に借款協約に調印する事を求め、これに応じないならば、断固たる手段を執るであろうと通告した。

日本移民歓迎 18日桑港特派員発

カルフォルニア州ロスアンゼルスの商業会議所では、欧州の移民は劣悪で排除すべきであるが、日本人は全てに良好であるのみならず、カルフォルニア州の農業には非常に必要であるので、大いに歓迎すべきであると決議した。

解説:排日を主張しているのは白人労働者の組合であり、既にカルフォルニア州議会を抑え、連邦議会にも強い影響力を発揮している。

排日案論評 同上

18日朝のサンフランシスコ。クロニクル紙は、日本人排斥案は、日本政府が既に採用し、且つ施行している日本の移民政策を米国の法律上に採用したものに過ぎず、日本に異議ある筈はない旨述べている。

 

221

排日案通過内情 19日紐育特派員発

先般議会に於いて、委員会を通過した日本人及びアジア人排斥案は、現在の情勢では衆議院を通過する模様である。そしてこの裏面には、興味深い魂胆が隠れている。それは最近共和党の内部に軋轢があり、どうかすると現大統領タフト氏の政策に反対しようとする者が多く、特に太平洋岸の選出議員に反対者が多い。同党の幹部は、これ等議員の御機嫌取りとして、衆議院は通過させて、上院では必ず否決する事となっていると確聞する。

米国海軍現状 内国電報(20日発)

日露戦争が世界の海軍国に及ぼした影響は甚大であり、英獨海軍の競争に次いで、佛国海軍の革新となった。米国は更に一層切実に海軍力の増大を感じる様になり、前大統領ルーズベルト氏の主唱により、上下挙って海軍拡張に熱中した。特に新海軍卿マイヤー氏は就任以来、海軍行政組織の改革を実行しようとして、自ら軍港要港を巡視し、要職の将官を欧州に派遣し、海軍制度を視察させ、各軍港の司令長官を集めて、会議を開き、又部内一般から意見を募る等熱心に研究、努力中である。近い将来に於いて著しい発展を示すようになるであろう。単に艦底数が世界第2位海軍国であるの留まらず、必ず実力がこれに伴うようになるであろう。(一部抜粋)

 

222

駐日武官増派 20日桑港特派員発

米国政府は、日本政府の了承が得られるならば更に2名の大使館付き武官を増すと思われる。その武官は、軍事に関係せず、大使の指導の下に日本の風俗、習慣、言語を研究すると言われている。

加奈陀学童排斥 同上

英領コロンビ州のナナイモ地方の社会党員は、東洋児童隔離教育案の提出を予告し、カナダ政府に東洋児童隔離教育学校の設立を余儀なくさせると公言した。

 

2月23日

清国大学協議 22日上海経由ロイター社発

昨日オックスフォード大学に於いて、清国大学計画期成の為に、6百名の同校関係者が集会を行った。ウイリアム、セシル嚮は清国に於ける同計画を歓迎し、一同に対し資金募集に尽力する様求めた。

解説:精華大学は、1911年米国に依って、義和団の賠償金を基に設立された歴史があるが、この英国の運動がどの様な経過を辿ったか不明

ロ卿上院改革 22日上海経由ロイター社発

ローズベリー嚮は、上院に於いて演説し、予は人民が上院の世襲主義に反対していると信じているので、上院は自らその改革案を定め、以て全国民にこれを判断させなければならないと主張した。

 

2月24日

米国罷工暴動 23日タイムス社発

ニューヨーク来電―フィラデルフィアに於いて、激烈な罷工暴動があり、州兵1万人がいつでも出動できる様に準備を命じられた。3百名が逮捕され、負傷者も3百名となった。

解説:陸軍兵力は8万5千人であるが、既に各州に州兵が居た様である。原文では国民兵となっている。

ダライラマ出奔 23日上海経由ロイター社発

カルカッタ在住の本社通信員の報道によれば、員数不明の支那兵が東方からラッサに侵攻し、ダライラマは大臣数名を従えて、インド方面に向け、ラッカを立ち去った。ラマは26日にカリンボンに到着する予定で、タシラマはシガツエェに居ると信じられている。

解説:この事件は、四川省総督が1905年からチベット制圧を始めた事から起こっている。この記事のとおり19010年にはラサまで制圧しようとしており、この記事のとおりダライラマはインドに脱出している。一方タシラマ(パンチェンラマ)は、仏教界で序列第2位であるがこの時、清国に協力している。1911年の辛亥革命時に、四川省総督が殺害された為、ダライラマはチベットに帰り、清兵を排除し、ラサを挽回している。その結果タシラマは清国の勢力圏に逃れた。

極東戦争説 22日桑港特派員発

米国参謀総長ベル将軍は、21日夜ニュー、ヘブン州兵の集会に於いて、米国は極東問題の為に遠からずして戦争をせざるを得なくなるであろう。その為に至急戦備を整える必要があると言明した。

日本人調査費 同上

米国下院は、太平洋沿岸に於ける日本人の状態及び国境を越えて密かに入国する日本人を調査する費用を、12万5千ドルに増加する案を通過させた。

労働同盟排日運動 同上

サンフランシスコ労働同盟は、ヘース氏の排斥案は不十分であるので、更に厳重な排斥法の制定を望む旨を決議し、且つ先に日本人歓迎を決議したロスアンゼルスに排斥会成立運動を開始した。

解説:2月20日「日本移民歓迎」でロスアンゼルスの商業会議所が日本移民を歓迎する記事がある。

 

2月25日

英国の西蔵問題観 24日タイムス社発

露都来電―清兵のチベット侵攻及び暴行、ダライラマのインド行等は、非常に露人を憂慮させ始めている。そして露都では、英国政府が再びチベットの平和を回復する為、北京政府に対し、圧迫を加える様になることを希望している。

前蔵相日本攻撃 23日桑港特派員発

前大蔵卿シヤウ氏は、ニュー、ゼルシー州モーリス市で開催されたワシントン協会に於いて猛烈に日本を非難し、聴衆は無論、全国民を驚かせた。その発言の一部に、日本は太平洋を支配しようとして、この為に血を流すことを厭わないであろうし、人種的闘争は疑いもなくあり、我々は十分な準備をしなければならないと述べている。

費府街鉄罷業 同上

フィラデルフィアで激烈なバス車掌の同盟罷工が起こり、会社はバスを運転しよとして、同盟者はこれを阻止しようとして、23日3名の死者と千余名の負傷者が発生した。

排日運動 同上

サンフランシスコ労働同盟は、強烈な排日運動を始め、日本人を使用する場所には、白人労働者を働かさないという大運動を起こし、既に衝突を起こしている。

 

2月26

排日演説真相 25日タイムス社発

ニューヨーク来電―前大蔵卿で現在カーネギ信託会社社長ショウ氏がニューゼルシー州モオリス市に於いて太平洋上に於ける日本の野心を説き、戦争説を鼓吹し、陸軍参謀長ベル少将がニューヘブン州兵に対し、排日的演説を行った為、東京の人心に非常な悪感情を与えたとの報道は、大いに米人を驚かせた。前蔵相ショウ氏の演説は、決して米人を代表する意見ではなく、従って又重要ではない。ベル少将の演説は、誤報であり、その演説は決して排日的性質ではないと言われている。

西蔵変乱と英国 29日上海経由ロイター社発

ロンドンタイムスは次の様に述べている。ダライラマは、疑いもなくインドに避難するであろう。しかしラマが有力な援助及び有り難く感じられる同情を得るであろうとは期待する事が出来ない。そして現在チベット問題を再考することは、時期が既に遅いと謂えども英国政府は尚且つ清国政府に対し、友好的に意見を陳述すべき方法がある。(一部抜粋)

加州の日人排斥 24日桑港特派員発

カルフォルニア州アルビソ村会に於いて、先日、市街区域内に日本人に土地、家屋の貸与を禁じる決議を行い、又先般一日本人が家屋新築を願出たが許可せず、紛争中である。

米紙の暴論 同上

24日の夕刊ポスト新聞は、一武官の談話を引用し、日本は貧弱な事に加えて、強敵露国を前に控えているので、如何に排斥しても米国に対し戦争をする事は出来ないと説き、大いに煽動的主張をしていた。

 

2月27

ダライラマ到着 26日上海経由ロイター社発

本社ダルゼリング通信によれば、ダライラマは非常に困難な旅行を行い、カリムボンに到着した。尤も途中、仏教徒やシーク教徒等は喜んでこれを援けたそうである。その到着は非常に人心を激動させている。

戦争説と国務郷 25日桑港特派員発

日米戦争説が日本を驚愕させたとの東京電報に接し、国務郷ノックス氏は、却って驚き、次の様に語った。日米両国の関係は、米国と他の諸国が友好的であると同様に友好的であり、少しも紛争の恐れはない。シャウ氏の演説は、単に航海補助問題を論議したに過ぎず、ベル将軍の演説も、内容を詳らかにしないが、軍備拡張を唱えたに過ぎないと思われる。日米間の移民問題は、誰も知っているとおり完全に満足すべき状態にあるので、如何に扇動者が騒いでもこの問題によって世人を動かす事は出来ないであろう。

解説:シャウ氏の演説は、2月25日、26日の記事にあり、ベル将軍の演説は、2月24日の記事にある。

米国海軍拡張 同上

米国下院委員会は、それぞれ11百万ドルの費用で28千トンの2隻の戦艦を始めとして修繕船1隻、大運送船2隻、潜水艇5隻、駆逐艇3隻を建造することに同意した。

解説:米国海軍は、日露戦争前には世界第5位の海軍国であったが、2010年当時は世界第2位の海軍国となっている。

西蔵変乱に対する上諭(ダライラマを平民に落す) 25日北京特派員発

チベットの僧侶が支那官兵に反抗するとは、昨年来しばしば報じられた所であり、支那政府は、この鎮圧の為に四川省より派兵の議があったが、その真偽は明らかではなかった。しかし25日の上諭は、ダライラマの暴戻専横、あらゆる罪悪を指摘し、今回四川の官兵をチベットに送り討伐することが止むを得ない事情を述べ、更にダライラマの名称を剥奪し、チベットに帰ると否とを問わず、これを平民同様とし、後継者の選定を駐チベット大臣に命じた。(一部抜粋)

解説:2月24日にダライラマがチベットを逃れる記事がある。現在のダライラマも中国から同様の仕打ちを受けている。

 

228

前大蔵卿の弁明 仮に日本と戦争した場合 26日桑港特派員発

前大蔵卿シヤウ氏はフィラデルフィアに於いて次の様に語った。予はモーリス市に於いて日本との戦争を予言せず、ただ著名な事実を挙げたのみである。

日本が行おうとすれば、30日以内に20万の軍隊をハワイに送る事が出来るが、我々は運送船を持たない為に10万の軍隊をも送る事は出来ない。戦艦を建造するのも良い。しかし戦艦には運送船や仮想巡洋艦が付かなければ何らの価値もない。

戦争があるとすれば大西洋艦隊をサンフランシスコに回航しようとしても必要な石炭船がないではないか。

予は戦争を予言していない。大戦争の場合、米国が如何なる状態の下に立つであろうかを予言したのみである。(一部抜粋)

解説:関連記事が225日「前蔵相日本攻撃」の記事以降、連日報道されている。当時米国陸軍は85千人であったが、海軍は、英国に次いで世界第2位となっていた。しかし大西洋艦隊が主力で太平洋には見るべき艦隊を持っていなかった。

 

明治43年3月

 

31

ダライラマの哀訴 28日タイムス社発

露都来電―ダライラマは露国政府に哀訴した。清国官憲は、チベット人民が何ら清国を挑発していないにも拘わらず、妄りに攻撃的態度を執り、暴行を欲しいままにしていると説き、露国が英国と協力してチベットを援ける様求めた。

解説224日以降、連日の様に報道されている記事の続報

米国の巨艦建造 28日上海経由ロイター社発

ワシントン来電―米国海軍卿メイヤー氏は32千トンと言う前例のない大型戦艦を建造する権限を求めようとしている。し非公式に伝えられている所によれば、米国政府は、日本が32千トンに近い戦艦2隻を起工中であるとの報道を受けたと言われている。

解説227日記事の続報

膠州知事増俸 26日ベルリン特約通信社発

獨逸の議会予算委員会は、知事の増俸を意味する1万マルクの膠州予算増加額を削減した。同額は4千マルクと定められた。

解説:中国北部の山東半島にある膠州湾一帯はドイツの租借地であった。中心は青島で、現在でも有名な青島ビールはドイツの手で始められた。知事は総督の誤りではないかと思われる。

 

32

錦愛鉄道と露国 28日桑港特派員発

露国外相イズワオルスキー氏は、米国その他の関係列国に対し、米国国務郷ノックス氏が提議した錦愛鉄道建設に対する修正を既に非公式に発表したとの説がある。

露国の修正案は、既電のとおり錦愛鉄道建設を止め、これに代えて、北京よりウルガ及びヤクイを経て張家口に伸ばしバイカル線でシベリア鉄道に接続すると言う蒙古鉄道である。到底収支が取れないであろうと露国でも賛成が少なく、米国は無論同意する筈もない。

解説:米国の鉄道王ハリマンは、当初列強で共同運営する満州鉄道の中立化案を提案した。しかしこれが受け入れられなかったので次いで、これに並行する錦州と璦琿(アイグン)を結ぶ錦愛鉄道を提案し、当然日本と露国はこれを受け入れていない。

無謀なる海軍拡張 同上

海軍卿が14インチ砲12門を搭載する32千トンの軍艦の建造を提案したのに対し、下院予算委員長タウネイ氏は、これは造船所に操られた夢であり、この様な無謀な戦艦を建造すれば米国は破産の外ないであろうと述べ、最近造船所に操られて軍備拡張論が盛んな事を攻撃して、この様な議論を続きていると日本のみならず、ドイツとの戦争談も盛んになる時がくるであろうと嘲った。

解説31日「米国の巨艦建造」の続報である。

清国政府の回答 1日北京特派員発

英国がチベット事件に関し、支那政府に詰問したのに対し外務部は大要次の様な意味の回答を発したと言われている。即ち支那がチベットに兵を送ったのは全くその境内の騒乱を鎮圧するためであり、チベットの政治その他を根本より改善する意志はない、且つインドの辺境に騒乱を及ぼさない様に、又通商を妨害しない様に速やかに平和の処置を取るであろう云々

解説224日以降連日の様に報道されている記事の続報

 

33

土勃紛議と墺紙 2日タイムス社発

ウイン来電―オーストリアの諸新聞は、トルコとブルガリア国境に於ける両国兵士の闘争は危険千万であるとして、深く世人の注意を促した。しかもこれは露国のバルカン諸邦連合計画に付随して起こった奇怪な事実であると言明している。

波斯首相辞職 同上

テヘラン来電―ペルシャ首相は辞職した。表面の理由は露国軍隊を撤退させる事が出来なかった事によるが、その実は多分英露両国の提議した借款問題に関係し、内閣の意見が一致しなかった結果と思われる。

解説:ペルシャの北半分は露国の南半分は英国の勢力圏である。

ダライラマ歓迎 1日上海経由ロイター社発

ダライラマは、本朝ダルジェリングに到着する予定であり、インド政府の賓客として、優遇されるであろう。なお仏教徒等は、同地居留のラマ教徒と共に歓迎行列を準備中である。

解説:連日報道されている記事の続報

 

34

佛国洪水の影響 3日タイムス社発

パリ―来電 洪水の結果、沸国は小麦の一大欠乏を生じそうな状況である。リイルの綿業罷工者達等は数個の工場を襲い、略奪を欲しいままにしている。

解説:2016年6月フランスで大洪水が発生し、1910年以来と報道されているが、当時の報道を見ると1910年1月23日暴風雨が佛国を襲う、1月24日佛国の大洪水で被害甚大であると報道されていた。

ダライラマと英国 3日上海経由ロイター社発

インド事務次官モンテギュウ氏は下院に於いてインド総督ミントウ卿の電報を朗読した。これは、チベットの事変を詳報したもので「清人はダライラマに従前同様の権力を保有させるという誓約を破った」と説くダライラマの愁訴を否定するものであった。次官は又清国が英国の照会に回答し誓約を与えたが、これに関する英国の意見を述べるには次期が早いと言明した。

英国海軍追加予算 同上

英国下院は追加海軍費6891百ポンドの支出を可決した。この内457千ポンドは追加ドレッドノート型戦艦4隻に対する支出である。

 

35

印度仏教徒抗議 4日上海経由ロイター社発

本社の印度ダルジリング通信によれば、同地の仏教徒が大会を開き、清国のダライラマ虐待を憤怒し、その地位を要求、且つ清国皇帝に対し、在チベット軍隊の撤退と駐チベット大臣の免職を求める決議を行った。

西蔵変乱と英国 同上

英国外相サー、グレー氏は、下院に於いて演説し、インドとチベットの関係がチベットの行政変革により影響を受けるであろうと想像する事は出来ない。英国政府の一般方針は、条約上の義務を厳守するにある。尚英国以外の関係国も同様に条約上の義務を厳守する事が必要である等と言明した。

露清交渉 3日ベルリン特約通信社発

露都の電報通信によれば、露国政府は清国外務部に向け、ダライラマ廃位に付きその意志を宣明する様要求した。清国政府はこれに対し、駐チベット清国官憲は、チベットの内政及びラマ教に決して干渉しない旨回答した。

 

3月6日

清国大学協議 5日上海経由ロイター社発

英国ケンブリッジ大学評議員会堂に於いて集会が行われ、副校長が熱心にこの計画の賛成論を述べた。駐清英国公使サトウ氏は、1900年の清国と列強間の衝突が最終の衝突であると信じると説き、英国の優越的地位の根底である教育を行う事こそ1900年に清人が受けた損害に対して与えるべき最も貴重な報酬であると言明した。

解説:1900年の義和団の乱の賠償金として、清国は各国に過酷な賠償金を支払った。

その額は利息を含め9億8千万両であり、当時の歳入8千8百万両の約10倍であった。過酷な賠償金に対し国際的な批判が起こり、各国はそれぞれの方法で清国に還元する事になり、例えば米国は精華大学を創設している。この記事もその運動の一つと思われるが清国大学は歴史に残っていない。

露国移民失敗 4日桑港特派員発

ハワイ移民課の斡旋によりハワイに送られた露国移民4百余名は、給料の少ない事に不満を持ち、砂糖耕地に行くことを拒んでいたが、この程ワシントン駐在露国太師に打電し、帰国できる様に要請した。

桑港の排斥運動 同上

日韓人排斥協会の運動がますます激しくなり、市内の日本人が続々解雇され始めている。なお近日中に行われるカルフォルニア州知事選挙に利用する目的で、排斥運動は次第に激烈になる模様である。

 

37

英独関係情偽 6日上海経由ロイター社発

獨逸帝国議会に於いて海軍問題の討議に際し、獨逸の海軍政策は英国の疑惑を挑発すると述べた社会党議員の質問に対し、海軍大臣テルピッツ氏は次の様に答えた。獨逸の海軍は決して侵略を目的とせず、只我が領土の沿岸及び海運業を保護する為のみであり、現在の建艦計画に於いても少しも他の疑惑を招く様な威嚇的性質を含んでいない。

獨逸政府は何処までも英国政府との友好を持続し、両国民の感情を互いに有益な方向へ向かわせる事に引き続き務めたいと考えると言明した。(一部抜粋)

解説:獨逸は海軍大臣テルピッツの下で、英国と建艦競争をしている。4年後の19146月、サラエボでのオーストリア皇太子暗殺事件で第1次世界大戦が始まっている。

 

38

沸獨関係論 7日タイムス社発

パリ―来電 佛国社会党党首ジョオレ氏は、代議院に於いて演説し、40年前佛国がドイツに割譲したアルサス、ローレンスの人民は、自治権を得且つ共和制となる事を望んでいると説き、この希望が実現されると佛獨間の親交に対する最後の障害物がここに排除されるようになると言明した。

解説40年前、フランスは普佛戦争(プロシャとフランス間の戦争)に敗れ、アルサス、ローレンスをドイツに割譲している。

米国資本家日露英攻撃 同上

ワシントン来電 米国資本家ヤコブ、シーフ氏は、ニューヨーク共和党クラブの午餐会に於いて、人種的偏見を論議した際、日露両国が清国を臣従者の位置に置く為に握手した点に言及し、大いにこれを遺憾とし、特に英国もこの仲間に加入し、世界の最大危機を起こそうとするに至っていると言明した。

(備考:シーツ氏は、ユダヤ人で日露戦争の際露国に対する反感から日本に同情し、米国内の日本外債募集も氏が関係するクーン、ローブ銀行の手で行われた。しかも現在例のモルガン一派のシンジケートに加わり、大いに清国投資に熱中している。

加奈陀大雪崩(日本人39名の安否) 6日桑港特派員発

英領コロンビア州ロッキー山脈中のロージャースに於いて大雪崩が発生した。作業列車に乗っていた92名が埋没し、24名が負傷した。その列車には日本人労働者が39名乗っており、未だ消息不明である。

 

39

佛国河流減水 8日タイムス社発

パリ―来電 セイヌ河を始め諸河流はゆっくりであるが着々と減水し始めている。

解説34日洪水の影響の記事の続報

清国と西蔵 7日北京特派員発

清国は現在最もチベット問題を重大視しているが、その観察は非常に楽観的である。

政教分離に根拠を置き、ダライラマを一つの宗教の首長として、これを尊敬するかしないのは支那政府の任意であると考え、更に外国から干渉を受ける謂われはないと唱えている。若し外国が支那の主権を尊重するのであれば、廃位のダライラマを歓迎、優待する事は道に反するものと為している。

解説:224日以降しばしば報道されている記事の続報であり、現在のチベット情勢とよく似ている。

 

310

獨逸海軍討議 9日上海経由ロイター社発

ベルリン来電 社会党員等は獨逸帝国議会に於ける海軍予算討議に際し、前週土曜日に於ける海相の演説中、軍備制限問題に言及しなかったことを指摘し、これは英人の不信用を正当化させる所以であると公言した。海相はこれに対し、政府は海軍協約問題を避けた事は無いと説き、又獨逸の建艦計画が急増している事を否認した。

英紙の論評 同上

数種の英国新聞は、獨逸宰相ベートマン、ホルウエル氏の友好的懸念に同意を表すると同時に獨逸の建艦計画は防備としては許されない程の規模であると説き、毎年英国に数百万ポンドを費やさせるという友好は疑わしいものと考えている。

解説:獨逸海軍がもし英国海軍と戦闘を交えたなら、獨逸海軍は敗れるかも知れないが、危険なまでの損害を英国海軍に与えるという海相テルピッツの危険艦隊思想の下で、獨逸は英国に建艦競争を挑んでいた。

 

311日 

米紙の日英露攻撃 10日タイムス社発

ワシントン来電―日英露三国を攻撃した米国銀行家ヤコブ、シーツ氏の極東時局観は、諸新聞紙上で幾多の無責任な論評を引き起こした。これらは概ね日本の満州政策を信じなくて、又英国の不信義に対し攻撃をするものであった。ニューヨークタイムス紙は、米国こそ満州に於いて機会均等を希望するが日露両国は全くこれと反対の希望を有すると言明した。ハースト一派の諸新聞は米国が更に多数の戦闘艦を建造するよう要求した。

解説38日「米国資本家日露英攻撃」の続報である。この満州問題が大東亜戦争の源流と思われる。

英国海軍予算 10日上海経由ロイター社発

英国海軍予算は、4,060万3,700ポンドに上った。前年度に比べ556万1,000ポンドの増加である。又新造する軍艦建造費は、1,327万9,850ポンドであり、その内1,185万790ポンドは軍艦継続費である。142万9,040ポンドは新計画中に含まれる軍艦(大型戦艦5隻、保護巡洋艦5隻、駆逐艦20隻、潜航艇若干)に対する支出である。

解説:当時の英国陸軍予算は 2,776万ポンドであり、海軍は陸軍予算の約1.46倍であった。

英国海軍拡張 同上

英国海軍予算に関する覚書によれば、来る4月1日に建造中の軍艦は、戦艦7隻、装甲巡洋艦3隻、保護巡洋艦9隻、非装甲巡洋艦2隻、駆逐艦37隻、潜航艇9隻である。

解説:日本海海戦時の日本の主力艦は、戦艦4隻(機雷により2隻の戦艦を喪失していた)、装甲巡洋艦2隻であったが、それ以上の戦艦等を同時に建造する能力を英国は持っていた。

 

3月12日

べ氏功労表彰延期 10日上海経由ロイター社発

ワシントン来電 米国下院海軍委員会副委員会は、北極発見が証明されるまでベアリー氏に栄誉を付与する手段を執る事を拒んだ。

解説:明治42年9月14日の記事以降ベアリー氏とクック氏の北極点到達論争が行われ、ベアリー氏が勝利している。2月11日「ベアリー氏功労表彰」の記事がある。

日米戦争談真相 10日紐育特派員発

8日朝のサンフランシスコ、クロニクル紙は、社説に於いて痛論して、日米戦争談は陸海軍費を支出させようとするか、経済上の利益を収めようとするかの目的に出たもので、両国は現在に於いても近き将来に就いても戦争すべき理由は無いと述べた。

桑港の排日運動 同上

サンフランシスコ労働同盟は、10日総会を開き、日本商店及び日本人を使用する白人商店に対し、極力ボイコットを行う決議を為し、大運動を起こした。紛争がますます大きくなると思われる。

 

3月13日

希臘政界平穏 12日タイムス社発

アデン来電 陸軍協会は政府を完全に信任する旨の宣言をし、首尾善く衝突を避ける事が出来た。しかし2個の党派間の十分な妥協はなお成立していない様である。

ダライラマの後任 12日北京特派員発

未だ公表されていないが、ダライラマの後継者は、暫くパンチェンラマを以て処理させる事になり、4人の幕僚はダライラマの逃走後もその職にあり、住民は平穏である。

解説:パンチェンラマは、仏教界で序列第2位であり、この時、清国に協力している。その為1911年の辛亥革命時に、四川省総督が殺害され、ダライラマがチベットに帰った際清国の勢力圏に逃れている。

 

314

極東政策と米国 12日タイムス社発

ペテルブルグ来電 ノーウエ、ウレーミヤ紙は、米国資本家シラツ氏の演説を論評して、次の様に述べている。アジア政策の根本問題に対する日英露三国の一致は、平和の維持を保障するものである。然るに国務郷ノックス氏の意見に賛成する一派の米人は、何故かこの日英露の一致に対して一定の目論見を立てて、嫌悪の情を煽動中であり、これがシラツ氏の様な米国一流の資本家までが日本人排斥論を宣伝するに至った所以である云々

解説311日「米紙の日英露攻撃」の続報である。

日米戦争と罪悪 13日上海経由ロイター社発

小村外相は、ニューヨークのウオルト新聞に電報を送り、日米間には現実的な不安を引き起こすべき事は一つもない。極東に於ける両国の利害は少しも矛盾せず、又反対せず。日米戦争の如きは、見過ごすことのできない罪悪であると確信する旨宣明した。

 

315

印度革命派檄文 14日タイムス社発

デッカ発-インド新聞法が制定され、定期刊行物の革命的言論は大いに鎮圧されたが、革命派は盛んに秘密出版を行いつつある。今回東ベンガルに於ける諸大学その他各学校に向け、多数の檄文を配布した者が居る。その内容は、非常に野蛮で、各学生に対し「外人の血をカリ女神に供物として献上せよ」と主張している。なおこの檄文の出処はカルカッタの様である。

「ダライラマ」カルカッタ着 14日上海経由ロイター社発

ダライラマは、カルカッタに到着し、インド総督の馬車でヘスチングスハウスに入った。特別に熱誠な歓迎は無かった。

解説224日以降しばしば報道されている清国による「ダイライラマ」攻撃の記事の続報である。

 

316

ダライラマと総督 15日上海経由ロイター社発

本社カルカッタ通信によれば、ダライラマはインド総督ミントオ伯に荘厳な公式訪問を行った。ベンガル騎兵隊に護衛されて、馬車で政庁に到着、ミントオ伯に絹襟巻を贈呈した。次いでリントオ伯も返礼として、公式訪問を行った。

英国海相演説 同上

英国海相マクケナ氏は、海軍予算を提出するに当たり、次の演説を行った。

この費用を正統とする所以のものは、実に国家の安全を守る緊急的要務がある為である。予はその過不足の何れにも陥っていない事を示し得る事を望むと説き、310日所望の戦艦5隻は、19131月を以て竣工する予定で、19133月までにドレッドノート型戦艦は、完備される予定であり、二国標準は維持されるであろうと説いた。又豪州、ニュージランドの戦艦を加えれば、同時に建造中のドレッドノート型戦艦は15隻となる。これは、英国の建造力が減退し、現在の地位を維持する事が出来ないのではと言う感想を排除する所以であると述べ、予は将来海軍費の減少する事を希望すると言明した。

解説:英国は獨逸と建艦競争をしており、二強国標準と言う政策を取っている。これは欧州で獨逸,佛を合わせた海軍勢力を凌駕する海軍を持つと言う政策である。第1次世界大戦まで4

 

317

米国鉄道大罷業 15日上海経由ロイター社発

米国のシカゴ以西にある各鉄道の火夫全部が参加する同盟罷業は、夜半をもって命令された。諸会社及び労働者間の紛争は、賃金及び昇級に関係する。同罷業は、15万マイルの線路に及び、シカゴより太平洋沿岸に到る各客車、貨車の運転を中止させるものである。米国政府は、鉄道会社の要求により、同紛争を解決する為に干渉すると言われている。

日米問題論戦 15日紐育特派員発

過般、ニューヨークタイムスが満州問題に関し、日本を罵った大論文に対し、各新聞は論戦を開いた。そして「イヴニング ポスト」、「ウオールド」、「サン」、「イヴニング、メール」の4新聞及び「ヘラルド」は、「タイムス」の態度を疑い、これを示す為に黄色の新聞紙を使用した。ある新聞は、現在の米国は満州での利益を得ようとするよりも寧ろ南米に力を尽くす事が得策であると論じた。又小村大臣が日米平和論について、特にウオールド新聞に打電した件に対し、他の新聞は不平の意を漏らした。

解説:3月11日「米紙の日英露攻撃」の続報である。

 

318

清国大学協議 17日上海経由ロイター社発

諸大学連合の清国大学計画を助成する為、ロンドン市長官邸に於いて有力な人物の会合が行われた。ヒユ、セシル郷、文相ランシマン氏、カンターベリー大僧正等重要な弁士であった。

対清政策と日米 16日桑港特派員発

ワシントン来電―日本はその極東政策を一変し、米国と非公式な同盟を結び、両国が相提携して極東の平和を維持し、清国に於ける門戸開放主義を維持するのではとの説がある。日本大使館に達した情報によれば、日本の新提案は、門戸開放主義を確実にすると共に満州に於ける日本の鉄道の位置を永久に確定しようとしている様である。そして日本の提案は米国に対して、妥協的であり、米国が条件付きで賛成するも拒絶するも日本外交関係を害するものとは思われず、外交家はこの手段を以て日本がアジアにおける現状を維持する事の出来る唯一の手段と信じている。

清帝と西蔵問題 17日北京特派員発

チベット善後策として政務處会議の結果、(1)新ダライラマの選出(2)駐チベット新陸軍の増加(3)人を派遣してチベット人を慰撫する事(4)有力な駐チベット大臣の派遣(5)英露両国に駐在する公使に命じ、両国の対チベット方針を注意させて、臨機の処置に出る事であり、以上の5カ条を基礎とし、着々と実行の歩を進め始めている。

 

319

日米協商談 18日上海経由ロイター社発

ニューヨークワールドは、日本が米国国務郷に対し、両国共同で極東を支配し、開放主義を維持し、各国の商業的均衡を保護する一つの協定を結ぶ事を提議した旨報道した。

同上続報 同上

本社の知る限り、ロンドンに於いてはニューヨークワールドの日本協商説を裏付ける確実な情報は少しも無く、寧ろありえない事と思われている。且つ日米両国は、190811月既に現状維持及び開放政策の宣言を発しており、又現在この様な手段に出るのは却って日本がしばしば公言する方針に違反するものであると指摘され始めている。

ダライラマ 同上

ダライラマは、本日カルカッタ腑を出発し、ダルジリングに向かった。政府の賓客として同地に滞在する予定である。

解説:現在と同様に、ダライラマは清国に追い出されて印度に亡命中である。

 

320

米紙の戦争否認 19日タイムス社発

ニューヨーク夕刊ポストは、社説に於いて、現在の様に日米衝突の機会より遠ざかっている時代は無く、思慮ある国民は、前大蔵卿ショウ氏の排日説を否認するに躊躇しないと説いた。

解説311日の記事「米紙の日英露攻撃」の続編である。 

日米協商説 18日桑港特派員発

内田大使は、極東問題に関し、日本が新たに米国に提議するであろうとの説を否認し、予は少しも関知していない。多分一昨年ルート、高平両氏の間に取り交わした覚書を誤解していると思われると言明した。国務省もこれについて、何ら聞いていないと声明した。しかしロンドン電報によれば、英国では極東問題について、日米間に新交渉があったと確信している。

フ氏親日談 同上

前副大統領フェアバンクス氏は、ニューヨークに帰着し、日米間には戦争は決してないと断言し、米人にとって日本人の信義が厚い事を賞揚した。

 

 

321

露国の回答 20日上海経由ロイター社発

露都来電―諸新聞の報道によれば、露国はチベットに於ける自己の権力回復に援助を求めたダライラマの哀訴に回答する筈である。、唯大げさな文句を用いて、英露両国が北京に於いて行った抗議に言及すると思われるが、但しダライラマに対して何ら確固たる希望を与えないであろうと

322

共和党内訌 21日上海経由ロイター社発経由

ワシントン来電―米国下院は、155191の多数を以て、規則委員より議長を排除する動議を可決した。又一民主党議員は、議長キャノン氏を辞職させようとする動議を提出したが、激しい議論が起こり、155191の多数で否決された。但し討論の結果、議長キャノン氏の勢力は失墜した。

解説:内訌(ないこう)とは内紛を意味する。

米仏関税協約 同上

米国大統領タフト氏は、米仏関税問題はその全部に亘って協約が成立し、米国は佛国に対し25分の減税を許す旨宣言を行った。

英国炭鉱罷業 同上

サウスウエルス炭鉱紛議を解決する協議が挫折し、坑夫20万人の同盟罷業が避けがたい模様である。

解説:日露戦争後の時代に於ける強力な英国の労働組合の実態が分かる。

 

323

日本艦隊歓迎 22日上海経由ロイター社発

シドニー来電―日本巡洋艦阿蘇、宗谷の両艦は、数週間を期して訪問し、最も熱心に歓迎された。豪州総督ダッドレー卿は、今夜饗宴を開く予定である。

ソマリランド撤兵 同上

アフリカのソマリランドに関する報告書によれば、英国政府は至急内地より軍隊を撤退する事に決定した。又ムラア蕃民に対する防御は、既に武装させている親英派の土族兵を以てこれに当たらせる筈である。

 

324

上院改革決議案 23日上海経由ロイター社発

317日報道のロオスベリー卿が提出した決議案中、残っていた世襲主義廃止に関する議案は、17名対175名の多数で可決された。

米国海軍予算 同上

ワシントン来電―米国海軍支出案は、戦艦2隻、修繕船1隻、巡洋艦2隻、潜航艇5隻の建造を定め、又129百万ドルの海軍費を定めた。

解説:英国海軍の新予算計画に含まれる軍艦は、大型戦艦5隻、保護巡洋艦5隻、駆逐艦20隻、潜航艇若干である。

英艦上の暴行 同上

デイリーメールの報道によれば、英国戦艦インビンシブル号(15千トン)は、ポートランドに於いて、1週間全く孤立の状態に陥った。その砲キョウは全て海中に投げ込まれた。これに関して調査が行われたが、未だ責任者を発見するに至っていない。

 

325

露兵波斯撤退 24日タイムス社発

露都来電―先にタブリツの紛争に関連してペルシャに入り、次いでツルファーに送られた露国軍隊は今回、露国ツランスコーカシャ州エリバンに帰着する様命令された。

錦愛鉄道問題答弁 24日上海経由ロイター社発

英国外相サー、グレイは、錦愛鉄道問題に関し、サー、ブウル氏の質問に答えて、英国政府がこれについて、自動的態度を執る様に迫られ、又米国よりも同計画に賛成を求めてきたのは事実であるが、我国は1899年英露協約を尊重する義務があるが故にこれに同意する事は出来なかった。しかしこれを以て英米利益関係の衝突と言うのは大きな誤解であると述べ、又日露両国は何の権利があって干渉するのかとの質問に答えて、他国が同件に対する権利を承認、拒否若しくは限定するのは英国政府の任にないと言明した。

解説:錦愛鉄道とは、アメリカの鉄道王ハリマンの計画した世界一周計画の一貫として渤海湾の錦州から西部満州を経て、黒竜江岸の愛輝に至り、東清鉄道に接続するもので、東清鉄道の買収も含まれていた。日露は当然反対した。

 

3月26日

米国鉄道紛議落着 25日上海経由ロイター社発

米国シカゴ以西の諸鉄道労働者紛議事件は、賃金以外の各点で全て協定が結ばれ、唯賃金のみは仲裁に依る事に定められた。

解説317日米国鉄道大罷業の続報

フ氏親日運動 24日ニューヨーク特派員発

前副大統領フェアバンクス氏は、帰国後盛んに日米両国の為に平和的な発言に努めている。

 

3月27日

伊国火山噴火 26日上海経由ロイター社発

イタリアのシシリー島エトナ火山は、14個の火口より噴火中であり、溶岩の流れは、ある場所ではその幅1Kmにも及び、今やボシヨオに迫り、住民は避難中である。

解説:エトナ火山は、シチリア島の東部にあり、世界で最も活動的な火山の一つで、常に噴火している。

 

328

英国上院廃止論 27日上海経由ロイター社発

労働派首領バーンス氏は、上院否認廃止決議案に対する修正案を提出した。即ち上院は、無責任にして国民一般の福祉に反し、且つ国家の進歩を阻害する故に同院は当然排すべきものであると言っている。

羽二重と樟脳 26日パリ通信社発電

佛国議会は関税法を改正し、結局羽二重に対しては百キロに対し350フランの課税を徴する事に決し、そして粗製樟脳は無税と決定した。

解説:羽二重は高級絹織物の一種で、当時日本の代表的な輸出品

 

329

印度人種衝突 28日タイムス社発

ラフォール来電―印度人等は、イスラム教徒商人に対し、非買同盟を行った為に人種的偏見の感情が次第に高まり始めている。

解説:この対立が原因でやがてイスラム教徒の国パキスタンが生まれる。

ブータン条約 同上

カルカッタ来電―英国とブータン(インド北部の国)との条約中、重要な規定は、ブータンは対外事項について、一切英国の教導監督を受けることを諾し、以て清国の陰謀を防止するという点にある。

米艦隊欧州行 28日上海経由ロイター社発

ワシントン来電―米国政府は来る11月、大西洋艦隊を地中海回航の途に上らせることに決定した。

解説:米国の艦隊は、日露戦争後英国に次いで世界第2位の艦隊と言われている。

 

330

爪哇に関する警告 29日タイムス社発

ロンドン商業協会は、ジャワ島に土地を獲得する件に対し警告を発し、オランダ政府は同島の土地私有者より強制的に所有権を剥奪しようと企てている旨言明した。

解説:米英の植民地政策に比較し、オランダのインドネシアに対する植民地政策が最も苛烈なものであった。

芬蘭問題 同上

露都来電―フィンランドの事項中、一般帝国に関係があるとされる範囲を決定する議案が、昨日国民議会に提出された。フィンランド人等は、露国とフィンランド間の問題が如何なる状態において処分されるかに注意し、その遣り口如何によっては、フィンランドの自治を危うくするのではと憂慮している。

解説:当時のフィンランドは、露国の総督の支配下にあった。

 

331

芬蘭自治権剥奪 30日タイムス社発

露都来電―露国政府のフィンランド立法権制限案は、先に発せられた布告の文言を遥かに越え、その為フィンランドの自治は影のみとならざるを得ない状況に陥っている。依ってフィンランド人は最後の手段として、諸政治機関に対し、ボイコットを行うと威嚇し始めており、不穏な形勢である。

日本人の間諜 30日上海経由ロイター社発

マニラ来電―米国工兵軍団の一兵士が要塞地図を撮影中に捕縛された。尋問の結果、2名の日本人に地図を渡す計画である事が発覚し、その日本人は犯罪兵士と共に捕縛された。この日本人は、多分追放されると思われ、在留日本人は、この2名の日本人は或る欧州の強国の為にこの様な事をしたに過ぎないと言っている。

解説:フィリピンは、米国の保護国となっている。

 

明治43年4月

41

西蔵形勢平穏 31日タイムス社発

カルカッタ来電―チベットのラッサ府の情勢は静穏である。チベット駐在大臣は、仏教徒でない兵士等の暴行を抑制している。

解説:チベットのダライラマは、清国に追い出され、インドに滞在中であり、現在のチベットの同じ状況となっている。

芬蘭案攻撃 同上

露都来電―露国立憲民主党党首ミリウコフは、フィンランド立法権制限案に論及し、これはオーストリアのボスニア,ヘルチェゴビナ併合よりも更に悪いと言えないと言明した。なお同案は、今や国民議会に於いて、委員付託となっている。

芬蘭人の態度 同上

ヘルシンキフォルス来電―フィンランド議会の立法権制限案は、静穏な態度を以て迎えられた。但し一般に同案を目して、フィンランドの自由に対する最終的打撃となり始めている。

解説:フィンランドは、ロシア領としてロシア人の総督の支配下にあり、1917年になってロシアから独立している。なおロシアは、1917年ロシア革命が起こり、1922年ソ連となった。

 

42

佛国気球問題討議 1日タイムス社発

パリ来電―佛国上院に於いて陸軍飛行器に関し、長時間の討議があった。有名な技師レイモン氏は、佛獨両国に於ける飛行器の進歩を比較し、佛国が遥かに劣っている事を示した。佛国が、この問題に注目し始めている者を落胆させる措置を取っているのを攻撃し、この為に専門技術学校を設置するよう主張した。これに対し、陸相ブルン氏は、佛国が1913年になるならば、11隻の操縦式気球及び20の気球庫を所有するであろうと公言した。

解説:飛行機は、まだ飛行器と訳されていたようである。

米国紡績不況 1日上海経由ロイター社発

ボストンに於いて発表された統計によれば、南部地方に於ける紡績会社総錘数の5割は休業中である。

労働者の勝利 1日上海経由ロイター社発

ペンシルベニア州の各鉄道会社は、任意に使用人の賃金を引き上げた。この恩恵に浴する者は、総数199千人であり、その金額は1千ドルに上る。そして製鋼トラストもまた同様に賃金を引き上げた。これは一部同州がますます反映している事、一部は労働者の圧力に因る。

 

43

佛国海軍拡張 2日上海経由ロイター社発

佛国代議院は、本年私立造船所に於いて戦艦2隻を起工させる件を可決した。これは3年以内に就役する計画であり、海軍卿ドレベイレール氏は、同艦が各種の点に於いて最新の英獨戦艦に匹敵することを言明した。

米国綿買占応戦 同上

白星線汽船パルチック号は、本日英国リバプールを出発、ニューヨークに向かう予定であるが、これは綿買占めを失敗させる為、米国に送られる予定の多数の荷物の第1回分である。なおリパプールには、米国に送る準備のできた綿が2,3万梱ある。

解説:梱とは、綿の重量を表す単位で、綿糸1梱は400ポンドで181.44Kgである。

 

44

露帝の観劇 3日上海経由ロイター社発

露国皇帝は、数年来オペラを観覧していなかったが、昨夜初めて臨御され、聴衆より熱烈な歓迎を受けられた。

 

45

白耳義関税と佛国 4日タイムス社発

パリ来電―ベルギーの新関税は佛国に於いて激しい非難を引き起こし、一般にこの関税は、主として佛国貿易に対して制定したものとしている。下院関税委員長は、同案が佛国に対する不当な報復と思われる所が多い旨言明した。

露紙の警告 同上

露都来電―半官報ノウオエ、ウレミヤは、その社説に於いて、獨逸がもしペルシャに於いて軍事的便宜を得ようと企てる様な事があれば、これは露国に対し友情を表明中の行動と両立しない所があると言明した。

解説:ペルシャの北半分は露国の勢力圏下であり、南は英国の勢力圏下である

 

46

獨逸波斯に割込む 5日タイムス社発

露都来電―露国外務省及び新聞紙は、もしペルシャが鉄道に関する特権を獨逸の資本家に譲渡する場合、英露の利益は危機に瀕し、その結果ペルシャは列国の確執の舞台となり、危険な状態に陥るであろうと認めている。

解説:昨日の続報

 

4月7日

波斯と獨逸 6日タイムス社発

ベルリン来電―官憲側より出たと思われる記事が諸新聞に掲載されたが、これによると獨逸はペルシャに対し、何らの提議もしなかったと言明している。しかし諸新聞はペルシャの現状が譲与を得る良い機会であると説き、英露両国が他国に与えられる鉄道認可に対して自己の利益に干渉するものとするのは、正統ではないと主張した。

解説:ペルシャは、北半分はロシアの南半分は英国の勢力下であり、ドイツはそこに割込もうとしている。又当時モロッコは沸国の勢力下であるがそこにもドイツが時々手を伸ばしている。

蘇士運河譲与問題 6日上海経由ロイター社発

カイロ来電―エジプト首相は、スエズ運河の譲与期を延長する再約定の件につき、代議院の決議を遵奉する旨宣言し、非常な喝采を受けた。因みに同会委員会は、過般至急、同譲与の再約をする事に反対の報告を行った。

解説1875年英国はエジプトからスエズ運河の株式44%を保有、1882年内乱に軍事介入し、エジプトを保護国としている。この記事の譲与が何を意味するのか不明である。譲与するとすれば英国と思われるが

日本人追放 同上

マニラ来電―スパイとして逮捕された日本人2名は、陸軍嚮の命令により釈放され、台湾に追放された。

解説331日「日本人の間諜」の続報である。

 

48

印度革命運動鎮圧 7日タイムス社発

カルカッタ来電―印度政府は国民党に属する記者アラビンド、ゴスを逮捕する為、令状を発した。

解説:インド独立の父と言われるマハトマ、ガンディは、南アフリカで弁護士として、インド系移民の人種差別に対する権利回復運動を行っていた。

英帝と日英博 同上

英国皇帝は、ネルソン時代の英国海軍に関する各種の資料とネルソン提督が180510月、トラファルガー海戦に於いて殺された弾丸を日英博覧会に出品された。これは、日本人来観者に強い興味を与えるものと信じられた結果と思われる。

佛国海員罷業後報 7日上海経由ロイター社発

マルセイユ来電―沸船モンロンヤの火夫10名は、10日間の禁固となった。政府は、なお550名の火夫を逃亡罪で告発し、同盟役員をも告発した。

 

49

土耳其の内乱 8日タイムス社発

コンスタンチノーブル来電―叛乱を起こしたアルバニア人は、官兵とプリシユチア市外で48時間にわたり戦闘を行い、双方とも気力を失った。トルコ政府は、多数の砲兵隊と共に22個大隊を戦地に派遣中である。

解説:アルバニアは、アドリア海に面した国で、約600年にわたり、オスマントルコの支配下にあったが1912年独立した。

蘇士運河案否決 8日上海経由ロイター社発

カイロ来電―エジプト代議院は、スエズ運河の譲与期延期に関する政府の提案を否決した。

解説:4月7日の記事の続報

獨逸飛行器と佛白 7日巴里特派員発

獨逸のゼツプランド空中飛行器が再び佛国及びベルギー両国を超えて飛行し、主にベルギー人に不安の念を与え始めている。

410

土耳其暴乱 9日タイムス社発

コンスタンチノーブル来電―トルコ軍隊は、リヤブ河畔(アルバニア)に於いてアルバニア人と戦闘し、死傷2百名を出し、大砲1門を失った。

解説:昨日の記事の続報で、2年後アルバニアは独立する事になる。

佛国水夫罷業 同上

パリ―来電―佛国首相ブリアン氏は、マルセーヌの水夫罷業が速やかに落着するものと予想している。海軍次官は、自ら同港に出張し、各大汽船の出港を監督中である。因みに佛国船舶持主及び船長等は、英国船舶の組織、紀律が完全な事を羨望している様である。

蘇士運河案否決 8日ベルリン特約通信社発

スエズ運河会社の譲許期間延長は、エジプトのカイロに於ける立法会議で否決された。人民は大いにこの報道を歓迎した。

解説:英国はスエズ運河の株式44%を保有しており、また当時エジプトを軍事的に支配していた。しかしこの譲許期間延長が何を意味するのか不明である。

 

411

屋外示威の許可 10日上海経由ロイター社発

ベルリン来電―警視庁は、本日選挙に関する3件の街頭運動を許可した。この様な示威運動は、今回初めて行われるものであり、ベルリンの保守党側の新聞は、警視庁がこの運動を許可したのは、やんごとなき辺りの暗示によるものと信じ、憤慨している。

前ダライラマ帰蔵 10日北京特派員発

名号を剥奪された前ダライラマは、帰蔵の意向がある。その処分方法について、清国政府は、駐蔵大臣聯豫(れんよ)氏に向け、ダライラマは、到底復位させる事は出来ないので、五臺山(ごたいざん)に護送し、専心修養させ、民心の動揺を防ぐべしと訓電した。

解説:ダライラマは、現在と同様、4月1日の記事にある様にインドに亡命中である。

 

4月12日

土耳其騒乱形勢 11日タイムス社発

コンスタンチノーブル来電―プリシュチナに於けるアルバニア人反徒は、降伏や解散を拒否し、多数の土民がこれに加わり始めている。

解説:4月10日記事の続報

波斯借款拒絶 同上

テヘラン来電―ペルシャ政府は英露両国公使に対し、両国の共同借款提案に同意する事が出来ない旨回答した。同時に同国の政局が、同案にある抵当及び償還問題に対して、何らの関係もないことを宣明した。

 

4月13日

土耳其反徒休戦 12日タイムス社発

コンスタンチノーブル来電―反乱のアルバニア人等は、ブルシュチナに於けるトルコ司令官と協議中であり、戦闘は中止された。トルコ宰相ハツキ、ベイは、代議院内のアルバニア議員に対し、政府は不必要な事に血を流す様な事は避けたいと思っていると断言した。

解説:昨日の続報

タイムスの日本美術評 同上

ロンドンタイムスは、日英博覧会に於ける美術、特に日本の錦絵を称賛し、その燦爛とした名画の例として北斎、歌麿、広重を挙げた。

蘇士運河問題 12日上海経由ロイター社発

外務次官マクキンノン、ウツド氏は、下院に於いて、議員ホール氏の質問に答えて、スエズ運河に於ける英国政府の利益関係は、2千5百万ポンドの価値があるとされている。しかもエジプト代議院が譲許延長を拒絶した結果、終に終了することになるであろうと言明した。

解説:4月7日記事の続報である。現実には英国が1956年のナセル大統領の国有化宣言まで英国が支配していた。

英露対獨方針 11日ベルリン特約通信社発

英露両国は、ペルシャが第3国の商業的利益を尊重する事が出来るのは無論であるが、両国政府は、唯ペルシャが自国内に於ける両国の政治的、軍事的利権に干渉しない程度に於いて第3国の利権を認める事を希望する旨宣言した。

解説:ペルシャは、北半分は露国の南半分は英国の支配下にあり、そこに獨逸が食指を伸ばしている。

 

4月14日

墺国戦艦進水 13日タイムス社発

ウイーン来電―オーストリアの戦艦ツレニイ号は、トリエストに於いて進水した。なお諸新聞は、一層強大な海軍を備える運動を継続し、ドレッドノート型戦艦を建造する必要性を主張しつつある。

解説:現在のオーストリアは内陸国であるが、当時はアドリア海に港があり、海軍を持っていた。映画「サウンド オブ、ミュウジック」に登場するお父さんはオーストリア海軍大佐であった。

米国共和党不平派の行動 13日上海経由ロイター社発

ワシントン来電―共和党の不平派と民主党と提携した結果、下院に同院議長用自動車費2千5百ドルを111132で否決した。

アルバニア沈静 12日ベルリン特約通信社発

アルバニアは、既にほぼ沈静した。戦地に於けるトルコ兵は、今や非常に多数である為、この上の抵抗は効力がないと思われる。

解説:4月9日土耳其の内乱の続報である。

 

415

獨逸海軍拡張 14日タイムス社発

ベルリン来電―戦艦オジン号の発注が行われ、これで1910年度の建艦計画は完了する予定である。なお獨逸が既に建造を終わり、若しくは建造中のドレッドノート型戦艦は13隻、同インビンシブル型装甲巡洋艦は4隻である。

墺国軍艦建造 同上

ウイーン来電―オーストリア新聞間に於いては、海軍拡張熱が勃興した。政府は1913年までにドレッドノート型戦艦4隻を建造すると伝えられている。

佛国戦艦進水 14日上海経由ロイター社発

ボルドー来電―佛国戦艦ベルニヨ号(183百トン)が進水した。前に進水した5隻と共に最強の艦隊を組織するものである。

 

4月16日

英国政局危機 15日タイムス社発

英国政府は、完全にアイルランド国民党の要求に服従し、首相アスキス氏は、下院に於いて次の演説を行った。上院に於ける否認権廃止法案の通過は、政府が有効に存続する唯一の条件である。上院が若し政府の政策に同意しないか或はこの問題を考慮する事を承諾しない場合には、政府は直ちに法令的効力を政府の政策に与える為に採るべき措置に関し皇帝に奏請するであろう(首相は新たに多数の貴族を作り、上院の反対党を押さえつける裁可を皇帝に奏請する意図)と言明した。(一部抜粋)

解説:上院とは貴族院と思われる。

極東通路短縮 15日上海経由ロイター社発

カナダ大幹鉄道会社総会に於いて、同社長は、今年の秋までには1,361マイルを竣工する計画であると言明した。なおウオルフクリークよりフォートウイリアム、オフ、レイクサテイリオルに至る線路は、カナダを横断する他の鉄道に比し、傾斜面が低く、日本及び清国への距離は、約500マイル短縮されるであろうと報告した。

4月17日

獨逸労働紛争 16日タイムス社発

ベルリン来電―建築業者等は、職工に対し、締出しを決行し始めた。各都市に於ける多数の職工がこの影響を被ると思われる。

墺国軍艦建造 16日上海経由ロイター社発

オーストリアのドレッドノート型戦艦数隻は、議会が現在まで費用の支出を拒絶するにも拘らず建造中である。これは、議会が結局支出するであろうと造船業者等が信じ、財政家の後援を得て、自ら危険を犯して起工し始めているものである。

潜航艇沈降 内国電報16日発

歴山丸は、第一潜水艇隊第六号艇を率いて、広島湾に出動中であったが、15日新港沖合に於いて、第六号艇は母艦を離れて潜水行動中、どうしたのか予定時間になっても浮上しない為、大いに驚き、直ちに当府に無線電信を以てその旨を報告した。潜水艇が浮上してこない時は乗組員全員の死亡を見るのは、英国その他に於いてその例を明らかである。乗組員は艇長佐久間大尉以下十余名である。(一部抜粋)

解説:有名な佐久間艇長の事故を報道する記事である。

 

4月18日

麦は無税 17日上海経由ロイター社発

統一党党首バルフォール氏は、新聞通信員の質問に答えて次のとおり言明した。同僚と共に商議の上に関税改革案を決定したが、これにより断固として植民地より輸入する麦を無税にする事に同意した。各植民地との特恵関税協約成立を援助する為、パンの価格が騰貴するのではとの杞憂があったが、これを霧散させなければならない。

 

4月19日

獨露衝突 17日タイムス社発

露都来電―獨逸の会社は、ペルシャよりウルリア湖(タブリツの西方にあり、英露協約上、露国の勢力圏内に置かれている一つの湖)上の蒸気船交通の独占権を得ようとしているとの情報があり、その為露人は大いに憤怒を示し始めている。

解説:ペルシャは当時、北半分は露国の、南半分は英国の勢力圏下にあった。

土国軍隊集中 同上

サロニカよりの特報によれば、平和回復した旨の発表があったにも拘わらず、北アルバニアに於ける軍隊の集中は、依然として継続し、今や1万7千に上っている。トルコ政府は、先般の暴徒首領株を軍事裁判に附する意があり、又収税及び徴兵の為、人口の登録をする筈と言われている。

 

4月20日

摩洛哥問題遷延 19日タイムス社発

タンジール来電―モロッコ王ムライ、ハフィドは先に佛国政府の強硬な談判に会い、債権者に対する支援、借款契約に同意した。しかも今やこの実行を拒み、例年の慣用手段であった遅延的、阻害的政策を採り始めている。

英国首相動議 19日上海経由ロイター社発

英国下院は、いよいよ今週から重要な時期に入った。傍聴席は立錐の余地なく、首相アスキス氏は、予算決議案について、討論の打ち切りを動議した。昨年、既に長い討論があった事を指摘し、今度の案も殆ど変更する所がないと説き、政府の進退は、一にこの大体において変わらない予算案の通過如何によると言明した。首相の演説は喝采を博した。

 

421

桂冠詩人の日本論 20日タイムス社発

英国の桂冠詩人アルフレッド、オースチン氏は、日本人が有する愛国心の神髄とその力についてタイムスに寄稿し、ローマ人と同様に深く祖先崇拝の宗教を奉じ、且つ往古の神がこの伴侶となって、戦に勝つ事ができると信じている点にあると説いた。

解説:桂冠詩人とは、優れた詩人として英国王室から任命された詩人

 

4月22日

清国海関問題 21日タイムス社発

タイムス紙は、清国政府が条約上の義務を無視し、海関の支配を行おうとしていることを強烈に攻撃し、英国政府は断じて政務処の干渉を許すことは出来ないと主張しなければならないと言明した。

解説:海関とは、清国政府が貿易上の税金を徴収する為に設けた機関であり、どうも条約により、英国が支配しており、徴収した税金を清国政府に収めている様である。これは、清国の役人の不正防止の手段と思われる。

露国の抗議 同上

露都来電―露国政府は、ペルシャのウルミア湖汽船通航譲許を更に獨逸会社に転貸する件に関し、ペルシャ政府に抗議を行った。又獨逸会社に送られようとする機械の運送に関しても異議を唱えている。

解説:4月19日獨露衝突の記事の続報である。

 

4月23日

清国海関問題

ロンドンタイムスは、社説に於いてブレドン氏の税務処員辞職に関連して、清国の海関問題全体について論述し、英国は、清国が借款契約に違反して、海関を支配する事ができる様になることを黙許してはならないと強烈に主張した。サー、ブレドン氏が総税務司署理より税務処に移されたことは、清国が海関行政の独立を覆させようとする運動を始めたものであると説き、政府は清国貿易に従事する各国民の利益の為に、総税務司の独立、特にその昇級問題等に関して、完全な独立を要求しなければならないと主張し、さらにもし清国が明確な制約を破りながら、引続き成功を得させる場合には、その排外的感情は、必ず増長するであろうと付言した。

解説:総税務司とは、清国の税関(海関)行政の長官である。当時は英国人が中国の税関行政を掌握し、北京に総税務司、各税関に税務司が任命されていた。総税務司は、税関収入の管理と支払いを行い、清国の貿易、財政面で大きな力を持っていた。この力を清国が取り戻そうとしている。

 

4月24日

露紙の憤慨 23日タイムス社発

露都来電―半官報ノウオエ、ウレミヤ紙は、ペルシャに於ける獨逸の活動及びペルシャ内閣の態度について、次の様な論評を行った。英露両国は、共に自ら犠牲となってペルシャを援ける政策を捨てて、駐屯中の露兵を撤退させ、同国をペルシャ人自身が意のままにさせる様にしなければならないと主張した。

解説:4月22日「露国の抗議」の続報

獨逸飛行隊 23日上海経由ロイター社発

操舵式飛行器3隻よりなる飛行隊は、本日獨逸コロオンを出発し、ハンブルグに向かう予定である。同港にて獨帝の面前に於いて連合遊弋を試みる事になっている。

解説:当時の新聞では、まだ飛行機3機と書かれてなく、又編隊飛行とも訳されていない。

米国投機商の気焔 同上

投機商パテン氏は、ニューヨークに於いて新聞記者と会見し、予は綿を買い占めた。そして綿の不作に照らして考えるに、欧米紡績工場は、予の要求する代価を支払わなければ8月、9月には休業の外なくなるであろうと言明した。

 

11月25日

長沙暴動再起 24日上海経由ロイター社発

北京駐在英国公使は、英国外務省に打電して、長沙の暴徒が再び蜂起し、在留外国人は、全て2隻の英国船に避難したと報告した。

英国飛行機家の手際 同上

英国飛行機家グラハムホワイト氏は、ロンドンとマンチェスター間で飛行を試み、少しも人目に懸らず、リッチイルドに到着したと言われている。

 

4月26日

波斯対露国 25日タイムス社発

露都来電―テヘランよりの報道によれば、ペルシャの急進派が主張する冒険的政策は阻止された。最も信頼すべき筋の言によれば、カスヴィン(テヘランから西北約90マイル)に駐屯の露兵は撤退する予定

解説:4月24日の記事の続報

飛行中止 25日上海経由ロイター社発

英国飛行家グラハムホワイト氏はマンチェスター行を中止した。風が荒れたために損害を受けた。

解説:昨日の記事の続報

摩洛哥の形勢 同上

タンジール来電―スペインは、スーター(モロッコ内にあるがスペインに属する港)よりモロッコ人居住の一市テツアンまで道路を作り、且つ堡塁を設ける意がある。但し同国がこの様な企図をするならば、モロッコの人心を一般に激高させ、欧州人の安全を危うくするに至るのではと気遣われる。

ダライラマと英露 24日ベルリン特約通信社発

露国半官報ノウオエ、ウレミヤ祇の報道によれば、英露両国は、6月末、ダライラマを露都に来させる事に同意した。

解説:現在と同様に、ダライラマはインドに逃れている。

 

4月27日

アルバニア叛乱 26日タイムス社発

ウイーン来電―広報が伝える所によれば、アルバニアのトルコ陸軍司令官がカチヤニクの狭隘な谷の占領をおざなりにしていた為、アルバニア人等は、ここで列車の進行を停止させ、兵士の武装を解き、補給品を捕獲し、且つ各電信線を切断した。なお反乱したアルバニア人は3万4千に達し、これに反してトルコ軍の人数は2万に過ぎない。

解説49日「土耳其の内乱」で報道され、以後続報があるが。結局アルバニアは2年後独立を達成する。

米国綿作打撃 26日上海経由ロイター社発

米国テネシー、アラバマ、ジョジヤ諸州に於いて風雨があり、ルイジアナ、ミシシッピー、テキサス諸州は気温の低下が激しく、これ等諸州の綿作に障害を及ぼしている。テキサス州の農事委員は、収穫は、平年の半分となる予想で、又綿の種が少ない為に、再植え付けも困難となるであろうと憂慮している。

解説:関連記事が4月24日「米国投機商の気焔」にある。

 

4月28日

土耳其の内乱 27日タイムス社発

コンスタンチノーブル来電―最近トルコ兵がアルバニア人の為に待受け攻撃を受けたテヘルナロワ間道に於いて、激闘の後、遂に叛徒を退散させた。この戦闘に於いてアルバニア人2百名が戦死した。

ウイーン来電―アルバニアに於ける叛乱は非常に世上の注目を惹き、トルコ軍隊がこの征圧に失敗するならば、新立憲政治も危機に瀕する運命に陥るであろうと観測される。

解説:昨日の記事「アルバニア叛乱」の続報

南阿の生駒艦 27日上海経由ロイター社発

ケープタウン来電―生駒艦に乗組み中の日本代議士達は、最も友愛な歓待を受けた。生駒艦は、アルゼンチンのブエノスアイレスに向け出発した。

解説:生駒は世界一周を目指している。

米国綿作打撃 同上

アトランタ来電―数百万エーカーの綿が破滅の危機にある。南部諸州全部の綿作地帯は、寒冷であり湿気が多い。

解説:朔日の記事「米国綿作打撃」の続報

 

4月29日

露清協議不成立 28日タイムス社発

露都来電―ハルピンに於ける露清両国委員会は、松花江通航問題の解決について、完全に失敗した。露国政府は、その委員会に対し、清国があくまでも条約を無視しようとするので、止むを得ずこの協議を中止する様訓令した。多分露国は、今後松花江の課徴金を清国税関に支払う事を拒否するであろうと言われている。

解説:松花江は、アムール川を通じて外海につながる国際河川であり、ハルピン市や吉林市を通っている。

埃及と英国 28日上海経由ロイター社発

外務次官マクキンノン、ウッド氏は質問に答えて、特にエジプト首相ブートロスバーシャ殺害事件に関係ある諸種のエジプト情勢報告は、我々の希望通りの満足なものではない。但し予は英人に侮辱が加えられたとは聞いていないと言明した。

英国飛行家成功 同上

英国家ボルハン氏は、今朝5時30分マンチェスターに到着した。

 

4月30

露国と松花江 29日タイムス社発

露都来電―露国政府は北京駐在露国公使に対し、清国が6月までに松花江問題を解決しないならば、露国は清国の諸規則を無視するであろうと通知する様訓令した。

アルバニア叛乱 29日上海経由ロイター社発

コンスタンチノーブル来電―トルコ兵が、北部アルバニアを通じて優勢な叛徒に出会ったのは、最早疑いがない。叛徒は、カチアニ隘路の両端を占領し、鉄道を食い止め始めている。

公果境界策定 同上

獨逸新聞の報道によれば、コンゴ境界協議はようやく終了し、ドイツはランガ地方全部を獲得し、ベルギーは、境界線としてキヴ湖の西岸を得、又獨逸は、キヴ湖中のキウイスウイ島を領有した。ルウエンゾルは山頂を分界として、英国とベルギーの両国間に分割されたと言われている。

解説:列強がアフリカ植民地を分割する状況一端を示している。

 

明治43年5月

5月1日

土耳其内乱形勢 30日タイムス社発

コンスタンチノーブル来電―アルバニア人との戦闘は、木曜夜カチャニク間道に於いて開始し、今尚戦闘中である。アルバニア人の総数は3千乃至6千と見積もられる。

ウイーン来電―後報によれば、アルバニア反乱軍は、ドヤコウを占領し、約半個大隊のトルコ兵の武装を解除し、且つ全軍を撃退した。北アルバニア各村の官吏は反乱軍に合同した。

解説:連日の様に報道されている記事の続報

松花江に関する訓令 29日ベルリン特約通信社発

露都電報通信の報道によれば、露国政府は、清国の松花江通航規則について、駐清露国公使に訓電を送った。その内容は、清国の提案は到底露国が承認できないものであり、依って露国は清国が7月1日に露人の条約権に一致する新規則を定めることを要求する。清国がこの挙に出ない場合には、露国は自由行動を執り、且つ昨年中、清国に払い込んだ通行税の返還を要求すべしである。

解説:昨日の続報

 

5月2日

否認権案愈提出 1日上海経由ロイター社発

英国上院否認権案は、いよいよ法案として議会に提出された。同案はその前文に於いて上院に代えて、世襲でなく民選の第2院を設ける必要があるが、しかしこれは直ちに実行するものではない。故に財政案が1カ月以内に上院を通過しない場合は、下院議長は、皇帝に奏上し、その裁可を得れば財政案を法律とする事が最も便宜的な方法である。(一部抜粋)

新聞紙の飛行懸賞 同上

英国飛行家ポールハン氏の為に心のこもった宴会が行われた。デーリー、メール祇は、今回の飛行に対して1万ポンドの賞金を懸けていたが、ロンドンとエジンバラ間を復航するならば、更に1万ポンドの賞金を与える旨を発表した。

解説:4月29日ポールハンがマンチェスターまでの飛行に成功した記事がある。

 

53

土耳其内乱形勢 2日タイムス社発

コンスタンチノーブル来電―トルコ軍は、激戦の末、遂にアルバニア反乱軍が固守していたカチャニク隘路を取り戻した。アルバニア反乱軍は、カラダ山に退去し、同地で新たな戦闘が発生した。

土国官賊講和条件 同上

ウイーン来電―サロニカより来た広報によれば、北部アルバニア人等は、降伏に同意したが、ただトルコ政府が租税を軽減し、且つ武装解除命令を取消す様に主張中である。但しトルコ政府がもしこの条件を承諾するならば、その威信の失墜を見る憂いがある。又これを容れずに断固として秩序の回復手段を執ったならば、アルバニア人は、多分再び抗戦するものと考えられる。

解説:連日の様に報道されているが、アルバニア独立までの戦いである。

 

5月4日

松花江問題 3日タイムス社発

露都来電―駐清露国公使の報告によれば、清国は松花江通航に関し、条約上の義務を逃れる政策を執り、今や同通航に対し消極的性質を付そうと企て、ハルピンは海港であると主張した。但しこれは全く自家撞着の態度であり、現に清国は1909年、松花江河流通航規則なるものを発布している。

解説:5月1日「松花江に関する訓令」の続報

英国紡績業危機 同上

英国紡績業の雇用主と職工は、賃金の切下げについて合意を得る事が出来ず、従って一大罷業が起こる恐れがある。

土国官賊激戦 3日上海経由ロイター社発

ウイーン来電によれば、トルコの軍隊はクロブルゼチツのアルバニア反乱軍を包囲する為、カチャニク峡谷を進軍中、多数のアルバニア兵と激戦となり、多くの死傷者が出たと伝えられる。

 

5月5日

米国の対清政策 4日タイムス社発

ワシントン来電―米国大統領タフト氏は、ピッツバーグに於いて極東問題に関し長時間の演説を行った。米国政府が粤漢(えつかん)鉄道借款に干渉するのは、条約権を保持し、米国資本家の利益を保護したいと考えているからであると公言し、又政府は商業上の利害より見て、錦愛鉄道計画に賛成していると述べた。なおタフト氏は、これに対する露国の反対を無視し、日本は既に同計画に協同する意志があり、且つ鉄道協議は満足に進行中であると述べた。

解説:粤漢鉄道とは、中国の武漢と広州を結ぶ鉄道であり、利権を巡り列強の争いがあったが、1911年獨逸に加え、英米佛の4カ国の借款で建設する協定が成立している。しかしこの鉄道が完成したのは1936年であった。

錦愛鉄道は、満州に於ける利権を求めて、米国の鉄道王ハリマンが構想した案が基になっている。当初全満州の鉄道を中立化し、国際シンジケートでの支配を考えたが日露に反対され、それに対抗する案として、米国資本に依る錦洲と愛琿を結ぶ錦愛鉄道が構想された。しかし日露両国に反対され実現できなかった。この記事では日本は賛成とあるが誤りである。

土兵死傷 同上

コンスタンチノーブル来電―トルコ軍隊は、カムチャンク隘路に於いてアルバニア叛乱軍と戦闘した際、422名の死傷者を生じた。

排猶太人熱 同上

ウイーン来電―ハンガリーに於いては、ユダヤ人排斥熱が蔓延し始めている。

諾威詩人の名誉 3日ベルリン特約通信社発

ノルウェーの戦艦ノルチ号は、佛国よりノルウェー首都クリスチアナまで、詩人ビヨルンソン氏の遺骸を運んで来た。同府に於いては、王族と同様の礼砲を以て迎えられた。全国民は大詩人の死を悲しんだ。

解説:この詩人は、ビョルンスティエルネ・ビョルンソンであり、1903年にノーベル文学賞を受賞している。

 

56

英国鉱業論 5日タイムス社発

デヴォンシア公は、鉄鋼協会の集会に於いて次の様な演説を行った。イギリスは常に鉄、石炭、鋼等の産出に於いて、優越的地位を維持する様に努力しなければならない。これによって広大な地域を有する我国は、一層発展するであろう。英国は今後数世紀間、各方面に於いて強大な生産国として存在し続けるであろうが、しかしその優越的地位の維持は、広大な海外領土があるからこそ初めて出来得る所であると言明した。

解説:阿知羅 隆雄の「ヴィクトリア繁栄期の所領経営と家産管理」によるとデヴォンシア公爵家は英国を代表する資産家の様である。同家は、1920年頃には、土地貴族から株式、債券保有貴族へと転身している。

2次大戦後、英国の繁栄は終わり、パックスアメリカーナの時代がやってくる。

土耳其兵敗北 5日上海経由ロイター社発

コンスタンチノーブル来電―私報によれば、現在アルバニア叛乱兵の手にあると言われているジアコワに於いて、激烈な戦闘があり、トルコ官兵の一個大隊が、ジアコワに到る途中に叛乱兵の待伏せ攻撃を受け、多大の死傷者を生じ、退去せざるを得なくなった。

 

5月7日

日露協約説(離間運動が起これるが如し) 6日タイムス社発

露都来電―日韓の合併を承認し、且つ満州及び蒙古に於ける日露両国の勢力範囲を限定する日露条約成立の噂が北京より伝わり始めているが、これは大いに注目に値し、再び日英露親交反対の運動が起こされた兆候と見なければならない。現在露国の世論は、日本が朝鮮に於いて優越的地位を占める権利を承認しているけれども、しかしこれに何らかの変動をきたす様なことがあれば、これは英露両国外交の過失と見なす傾向がある。

巴奈馬運河防備 同上

ワシントン来電―パナマ運河の防備計画は、大いに進捗した。太平洋方面の運河河口に於いては、3個の砲台を島上に設け、1個を大陸に置き、大西洋方面に於いては、2個の砲台を大陸に置く様である。守備兵は4千名と言われている。

解説:パナマ運河は、この記事の4年後の1914年に開通する。

ロ氏の平和論 6日上海経由ロイター社発

本社クリスチアナ通信によれば、米国前大統領ルーズベルト氏は、ノーベル賞金委員会に於いて、国際平和と題して次の演説を行った。

予は平和を維持する事は可能と考える。ヘーグにある仲裁裁判所を充分に活用しようとする誠意ある各国政府は、殆ど全ての問題を含んだ仲裁条約を締結すべきであると説き、終わりに正直に平和を望む強国は、「平和同盟」なるものを組織し、これで自己等の平和を維持するのみならず、他国が平和を破ろうとする場合には、威力を加えてこれを防止しなければならない。これが実現すると、これは非常に良い案であると言明した。

解説:第1次世界大戦もこの記事の4年後の1914年に起こる。

 

5月8日

日本館観覧会 7日タイムス社発

和田日英博覧会長、陸奥大使館参事官その他の日本官憲は、現在迅速に進捗しつつある

日英博覧会の日本館観覧の為に招待会を開いた。来観者は何れも展覧品の美しい事と完全な事に驚嘆した。

万国気球会議 6日ベルリン特約通信社発

万国気球会議が近々パリ―に於いて開催される予定である。

 

5月9日

英帝崩御 新皇帝の宣言 7日上海経由ロイター社発

7日はロンドンを始め、英国各地が皆深甚なる哀悼の情に満たされ、政治的及び社交的な業務は一般に休止した。

午後3時議会は開かれ、直ちに閉会した。大法官を始め貴族院は議員約50名参集し、新帝に忠誠を誓った。

解説:新帝はジョージ5世で、第1次世界大戦を迎える事になる。

 

5月10日

獨帝の愁嘆 9日タイムス社発

獨帝は、駐獨英国大使ゴッセン氏と会談し、深くその叔父である英国先帝の崩御を悲しむ旨を語り、大葬に関する儀式次第が判明次第、英国に向け出発すると語られた。

解説:獨帝の母は、英国王室出身である。

新帝の方針 同上

新帝ジョージ5世は、土曜日枢密院会議を招集し、哀しみに湛えながら男子らしい演説を行い、朕が一生の目的は、先帝の跡を学び、人民の利害改善の為に尽力し、憲政を維持するにあると宣明した。なお帝の即位は月曜日公式に発表される予定である。

英国紡績悶着 8日ベルリン特約通信社発

英国の紡績業に賃金問題が起ころうとしている。大罷業は多分防ぐ事ができると思われる。

 

5月11日

即位宣示式 10日タイムス社発

英帝ジョージ5世の即位は、英帝国の大部分を通じ、本日付で宣示された。ロンドンに於いては、最初聖ゼームス宮殿に於いて宣示があり、儀式は壮麗を極め、皇子等の臨席があり、市民は、盛んに新帝に忠実でありたいとの熱情を表明した。

 

5月12日

新帝と日英博 11日タイムス社発

英国新帝陛下は、数千の人民が職業を失おうとしている事を不憫に思われ、日英博覧会の会場式を延期しない様に希望された。その為同博覧会は、来る土曜日に、儀式なしで開場される事になった。新帝のこの聖旨を拝する以前は、博覧会委員は、大葬後まで開会式を延期する事に決定していた。

 

513

土耳其軍勝利 12日タイムス社発

フェリソイチ(アルバニア)のトルコ軍本営からの報告によれば、トルコ軍隊5個縦隊は、モラワル平原を進撃し、今や同方面を鎮撫した様子である。3個縦隊がテヘンノロゾ間道に接近するやアルバニア叛乱兵4千名が頑固に抵抗したが、512日に到り、激戦6時間の後、遂に官軍が占領した。

日本人の著書 同上

牧野芳雄という日本人が「ロンドンに於ける日本美術」という一書を表した。タイムス紙はこれを称賛し、これはロンドンに於いて必死に飢餓と戦い、遂に成功した面白い日記であると書いている。

解説:牧野芳雄は、イギリスで貧乏に堪え、絵を描き続け、1907年に出版した画集で成功したと言われており、1910年にこの自叙伝を発表している。1921年には、訪英した皇太子(昭和天皇)に謁見、第2次世界大戦の為、イギリスを去り、重光葵の援助を受け、日光に疎開している。その縁で油絵や鉛筆画が湯河原の重光葵記念館にも展示されている。

 

5月14日

米国海軍拡張 13日タイムス社発

12日米国戦艦フロリダ号が、ブルックリンに於いて進水をした。これは、最も国民を満足される所である。同艦は、国営造船所が現在までに建造した最大の軍艦であり、民間造船所に注文した姉妹艦ユータ号と殆ど同様の速度で建造された。費用は約百2万ポンドであり、12インチ砲10門を装備している。なお米国政府は、14インチ砲10門を備える新型戦艦の建造を計画中である。

解説:フロリダ号の排水量2万3千トン、速力21ノットである。

 

5月15日

日英博覧会 14日タイムス社発

日英博覧会は、いよいよ本日開会される予定である。時恰も国民的服喪期に際する為、何らの儀式が行われないのは、非常に遺憾である。但し同博覧会は、二個の島帝国間の通商的関係に顕著な効果を生じると思われ、又その同盟の感想を新たにする所以であり、その開会は実に注意すべき事件である。

解説:5月12日記事「新帝と日英博」にある様に、博覧会委員は、大葬後まで開会式を延期する事に決定していたが、新帝の希望で開会される事になった。

 

5月16日

日英博覧会概観 14日タイムス社発

日英博覧会は、本日を以て開会する。壮麗な陳列館が相並んで日光に輝く様は、実に堂々たるものがある。幾多の湖水、運河、瀑布が広大な範囲を占め、美しい色彩に満ちた日英庭園に於いて大いに人目を引く。日本部に於いては第一、小さな灌木等を並べ、長い遠景を示すものと第二、種々の島を造り、その特色とするものがある。橋梁、岩石、装飾的家屋等は至る處にあり、風景を絶佳ならしめている。(一部抜粋)

日露関係現情 付日韓合併問題 15日上海経由ロイター社発

日露関係に関するロンドンタイムスの露都特電によれば、日露両国は今一層親密な相互理解を作る事の利益及び両国の政治的並びに経済的利益関係が日露の接近により強固になることを能く了解している。

日韓合併について仮令この計画が実行される暁に於いても日本の同盟国及び友邦は少しも苦痛を感じる事は無いと観測される。(一部抜粋)

 

5月17日

土耳其軍隊前進 16日タイムス社発

フェリソイチよりの報告によれば、トルコの軍隊は引き続き前進中であり、彼等は政府の改革計画の実行を謀る目的を持っている。フリズレンド付近に於ける多数の村落に於いては、白旗が翩翻と翻っている。なおトルコ人が無暗に家屋を焼き払っているとの報道は事実ではなく、むしろ彼らはなるべく邸宅破壊の数を少なくしようと注意している。

解説:アルバニアがトルコから独立する戦闘であり、1912年トルコから独立

セ卿と清国大学 同上

ウイリアム、セシル卿(先にオックスフォード大学を中心として一清国大学設立計画を立てた宗教家)は、清国に於ける大学伝道に関して、要位にある教育家と協議する為、米国を訪問した後、リバプールに帰着した。卿の談によれば、訪問の結果は非常に満足であり、同計画は確かに実行を見るべき状況にあると。

解説:精華大学が1910年にアメリカの資金で設立されているがここで考えられている大学が精華大学かもしれない。習近平は精華大学を卒業している。

芬蘭合併案可決 14日ベルリン特約通信社発

露国国民議会は、フィンランド合併に関する議案に少しの修正を加え、これを通過させた。

 

5月18日

アルバニア人攻撃 17日タイムス社発

在米国のアルバニア人等は、ボストンで開催された会合に於いて「トルコ人のアルバニア婦人虐殺を憤怒し且つ列国に訴えてその干渉を求める」決議案を採択し、且つこれを外国に電送した。

解説:アルバニアがトルコから独立する戦闘であり、1912年トルコから独立

波斯形勢と英紙 同上

タイムス紙は、ペルシャに於いて盗賊等が組織的に横行している結果、同国の英国貿易が衰退に向かうとのブシール通信を掲載し、これら種族を鎮圧し、商業を保護する為ファルス提督を任命する様要求した。

解説:ペルシャの北部は露国の勢力範囲で南半分は英国の勢力範囲である。

摩洛哥騒乱 同上

本社フエツ通信員の報道によれば、モロッコのヒアイナ種族が日々官軍を攻撃し、多大の死傷を生じさせ始めている為、司令官はモロッコ王に対し、全ての援兵を送られん事を要請した。そしてモロッコ王はこれに応じ、援兵を派遣した為、フエツ市は今や何等の防備も無く、各国領事は形勢を悲観している。

 

5月19日

日英博成功 18日タイムス社発

現在ペンテコスト祭日に際し、日英博覧会の観客数は予想を超えている。よって博覧会に於いては、或る時間を定め、時々門を閉鎖する事によって、内部の観客にそれぞれ分散する余裕を与え、然る後に再び門を開き、観客を入場させる事が必要となった。

ハレー彗星に対する迷信 18日ベルリン特約通信社発

地球がハレー彗星の尾に包まれるのは、ドイツでは19日5時42分より始まる譯である。イタリアでは地球滅亡の時が来るのを恐れる迷信が盛んであり、且つローマ法王の救いを求め始めている。キール天文台では、地球に何等の危難を来さない旨を発表した。

 

5月20日

獨逸と波斯 18日ベルリン特約通信社発

英露諸新聞に現れた獨逸外務省がペルシャの政局に干渉しようとしているとの報道は、獨逸に於いて否認された。獨逸政府は、これまでと同様にペルシャに於ける獨逸人の経済的利益を保護するに止まるであろう。

英国紡績危機 同上

英国ランカッシャー綿業者は、職工の賃金を5分低減する事に決定した。この為同盟罷業を見るであろうと予想される。

 

521

獨露協約説 20日タイムス社発

本社露都通信員によれば、半官報ロシヤは、獨逸はペルシャに於ける英露両国の政治的、軍事的利権の優越を承認する意志があり、又露国は、同国に於ける獨逸の商業的要求を満足させる意志がある。従って満足な協定の成立に好都合である旨を報道した。

パリ来電―佛国消息通は、ペルシャに対する獨逸の態度は、モロッコに難問題が起こった時と同様に、極めて危険な外交政策に支配され始めていると観測している。

陸軍拡張決議案 20日桑港特派員発

カルフォルニア州選出議員マックラン氏は、19日上院に於いて陸軍嚮に対し、国防に関する報告を求める決議案を提出し、説明演説を行った。太平洋岸は大西洋岸に比べて非常に危険であり、日本の陸軍は、既に太平洋沿岸諸州を調査し、精密な地図を有している。一朝日本と戦端を開き、日本兵が上陸した場合、太平洋沿岸諸州は米国の領土でなくなるであろうと叫んだ。

長沙暴動観測 同上

米国国務省が広東より得た報告によれば、南清の長沙に於いて、特に米国人が排斥されるのは、米国に清国人排斥法があり、米国が清国人を排斥している為であると述べている。

 

5月22日

壮嚴なる大葬 20日在倫敦長谷川特派員発

本日英国先帝エドワード7世陛下の大葬が行われた。天気晴朗でロンドン全市は雑踏を極めた。沿道の警備も厳重を極め、3個軍団で隙間なく兵を並べた。午前9時、欧州9カ国の皇帝は、宮廷よりウエストミンスターホールに赴き、皇帝皇后の参列移棺式があり、行列はここを出発した。(一部抜粋)

波斯と英獨露 20日ベルリン特約通信社発

先般ウイーンの煽動的な新聞の一紙は、ペルシャに関して英露両国及び獨逸間の衝突を予想する不穏な文章を掲げたが、露国諸新聞はこの記事を取り上げ、獨逸は平和の攪乱者であると攻撃した。獨紙ケルロツセ、ツアイツングは、この攻撃に答えて、獨逸がウルミア湖の運行業譲与及び鉄道借款を得よとしているとの説は、全く事実無根である。獨逸は1907年英露協商によって保障されている経済的利権を保持しようと望んでいるのみで、獨逸は決して条約上の義務を放棄したことはないと言明した。(一部抜粋)

 

5月23日

製艦大反対 21日ニューヨーク特派員発

20日海軍予算委員会に於いて、2万6千トンの戦艦2隻を新たに建造する議案に大反対の議論が起こった。その理由は、国民の公金を浪費し、万国平和会議の原則に悖ると言うにある。

清国の科挙 22日北京特派員発

先般北京に於いて挙行された郷試験の結果、全国各地方より選抜された2千余名中、3百20名が合格し、本日上諭をもって発表された。科挙は既に廃止を宣告されたが、旧学者に対する一時的な便法として行われたもので、今後1回で完全に廃止される予定である。

解説:科挙とは、官吏登用試験で、1804年のアヘン戦争後、近代化が叫ばれる様になり、1905年にこの制度は廃止された。

 

524

英帝の勅語 23日タイムス社発

英国皇帝は国民に対して勅語を発表し、先帝に対する愛慕と忠誠の念が十分に表現せられたことを感謝し、朕は人民が亦朕を援助し、且つ朕を父皇の様に見るであろうと信じていると宣明された。

土耳其の抗議 23日上海経由ロイター社発

トルコ政府は、新たに列強に同文の通牒を送り、520日所報のクリイト議会に於いて、イスラム教議員の追放、その他クリイト政府の不当な行動に対し注意を促した。

解説:トルコとギリシャがクレタ島を巡って争いとなっている。1913年オスマン帝国が領有権を放棄した。

 

525

獨帝出発 24日上海経由ロイター社発

獨帝は、昨日午後ロンドンを御出発された。その際多数の群衆が集まり、通路には警官が配置された。なお英帝は情温かにご決別された。

海軍拡張論勝利 24日サンフランシスコ特派員発

米国上院には、海軍縮小論者と拡張派との間に激論が行われたが、24日遂に拡張派の勝利に帰し、1億3千万ドルの海軍予算案が通過した。この内には1隻千百万ドルのドレッドノート型戦艦2隻の建艦費が含まれている。23日下院に於いてこの議案が通過した時は戦艦3隻であったが、上院に於いてドレッドノート型2隻に修正された次第である。

5月26日

川漢鉄道借款協約 25日タイムス社発

パリー来電―川漢鉄道の借款分配問題は、様々な意見があり、久しく解決しなかったが、今回漸く英沸獨米の4カ国資本家団間に於いて妥協が成立した。その代表者は、協約に調印した。同協約は、英米獨仏の4カ国が皆均等の割合を以て引き受けることを定めてる。

巴里無線電信 同上

パリーのエッフェル塔より無線電信を以て、陸上の各局もしくは海上の船舶にパリ―の時刻を報じる新事業が開始された。これは4千km乃至5千km四方の範囲に於いて成功するだろうと信じられている。

近東問題紛糾 24日ベルリン特約通信社発

ギリシャ内閣会議は、難しい情勢となった為、ギリシャ皇帝に対し一日も早く帰国するよう要求した。又トルコ政府は、クリイト保護の任にある英露佛西の4カ国に通牒を発し、クリイト島議会がギリシャ皇帝に臣従する宣誓を行ったのは無効であると説き、この許容しがたい状態につき、解決を謀るよう求めた。

 

5月27日

新西蘭防備と吉元帥 26日タイムス社発

キッチナー元帥は、以前ニュージーランドを訪問し、豪州とニュージーランドと共通の陸軍組織を採る事、その他国防計画につき協議を行ったが、今回同州の防備を総攬する高級陸軍将校を選定すると言われている。

記事:キッチナー元帥は、ボーア戦争に勝利を収め、英印軍の司令官、エジプト総督となり、第1次世界大戦では陸軍大臣となったが1916年ロシアに向かう巡洋艦が撃沈され、戦死した。

日本関税攻撃 同上

支那協会幹事はタイムスに寄稿し、激烈に日本の新関税を攻撃し、その増加した税率とその結果とは、主に英国製品に影響する。従って日本で商業に従事している多数の商会は業務を放棄せざるを得なくなるであろうと公言した。

タイムスも社説を掲げ、今回与えられた数字を検討すると、これは英国の貿易が関税率変更の為に大損害を受けるであろう事を確証するものである。その最も高くなった二三の税率は、明らかに他国よりも英国より多く輸入される貨物に影響すると言明した。(一部抜粋)

 

5月28日

欧州の平和 27日上海経由ロイター社発

獨帝はベルリンに御帰着された。これを機として獨逸の諸新聞が国際的平和について、論評したのは大いに注目を惹いた。尤も獨帝がロンドンに於いて、佛国外務卿ビション氏と会談した際、欧州の連盟を鼓吹したとの評判は正式に否認されたが、獨帝の今回の英国訪問は良好な感情を与え、英国諸新聞も善意の論評を下し始めた。

解説:獨逸皇帝ウエルヘルム2世の母は、英国王室の出身で、英国皇帝とは従妹同士である。しかしウエルヘルム2世は野心家で、4年後に第1次世界大戦を開始した。

米国の巨砲採用 内国電報(27日朝)

米国海軍省が本年度に於いて建造する戦艦2隻は、何れも2万7千トンであり、英国の既成戦艦より優れているのみならず、更に14インチ砲を採用している。

米国は、従来、英国と同じく12インチ砲を採用して来たが、昨秋から14インチ砲の試験を行い始めており、今回採用する事に決めたものと思われる。今英国が12インチ半砲を試験中であるのに対し、早くも14インチ砲を採用するに至ったのは、米国の戦艦は、巨艦巨砲で、共に世界の冠たるものと言う事ができる。

 

5月29日

蘇士運河盛況 28日上海経由ロイター社発

1909-10年度のスエズ運河会社報告によれば、同年度は、会社の歴史に於いて、最も利益が多い年であった。通行料収入は、約5百万ポンド増加し、これはインド貿易が再び活発となり、且つ満州の豆類の輸出が発達した為と言われている。

解説:スエズ運河は英国が支配している。

新造艦製図中 27日ニューヨーク特派員発

米国が今回新造する戦艦は、2隻共2万7千トンであり、14インチ砲を10門搭載する事になっており、現在海軍兵学校委員の手によって製図中であるので、出来次第入札が行なわれるであろう。

解説:製図が海軍兵学校で行われているとの報道であるが、日本の海軍兵学校にはこの機能はなかった。翻訳の誤りの可能性もある。

列国の要求 27日ベルリン特約通信社発

クリイト保護の任にある英仏露伊の4カ国はクリイト議会が、40日間にイスラム教徒議員の復帰を許さなければならないと要求した、これら議員は、ギリシャ皇帝に臣従する宣誓を行わなかった為に放逐されたものと言われている。列国はこの要求が容れられない場合には、再び同島を占領するであろう。

解説:5月26日「近東問題紛糾」記事のトルコ通牒に対する列国の処置である。

 

530

獨逸宰相辞職勧告 29日上海経由ロイター社発

獨逸の急進党及び社会党は、選挙法改正案が否決されたのを喜び、首相ベエトマンホルウエツヒ氏の辞職を要求した。

 

531

土耳其の決心 30日タイムス社発

コンスタンティノープル来電―トルコは、クリイト島議会がギリシャ皇帝に対し臣従の宣誓を行い、又この宣誓を拒否したイスラム教徒議員を放逐した件につき、強硬に抗議中である。トルコ宰相ハツキ、ベイは、代議院に於いて、政府は飽く迄クリイトの外国併合を防止する決心である。若しギリシャが干渉を敢えてするならば、トルコは止むを得ず開戦することになるであろうと言明した。

尼国官軍死傷 30日上海経由ロイター社発

ニカラグア政府の軍隊は、ブリユツイドに於いて、反乱軍の陣地を攻撃したが、成功せず、死傷250名を出した。

 

明治43年6月

6月1日

南阿連邦創設祝祭 31日タイムス社発

ヨハネスブルク来電―31日(火曜)、南阿連邦の創設を祝す為に、トランスバールとケープ植民地、ナータルとオレンジリバー植民地の4州各地に於いて、周到な準備が行われつつある。又当日は、南阿総督グラッドストン子爵、首相ボタ、将軍その他諸大臣が宣誓を行う等荘厳な儀式を挙行する筈である。

米貨排斥運動 同上

サンフランシスコ清人の組織である数個の商業団体は、清国に於ける米貨排斥を開始する運動に着手する事を決定した。その理由は、サンフランシスコ移民国官吏等が不必要に且つ侮辱的な規則を以て清人旅行者を苦しめているとの事である。

解説:日本人労働者の入国は禁止されているが、清人労働者である苦力はそれ以前に入国禁止になっていた。しかもここにある様に苦力以外の旅行者や商人等も苦力と見分がつかないとの理由で、入国管理官が入国禁止にしている。以前も清国全土で米国製品の不買運動が起こっていた。

 

6月2日

墺帝とボスニア訪問 1日タイムス社発

サラゼウス(ボスニア)来電―フランツヨセフ皇帝は、数時間に亘って各宗派の代表者、陸軍将校、諸領事、文官等多数を引見し、一人一人に慇懃にその歓迎に答えられた。午後はローマ教会、イスラム教会、ユダヤ教会等を訪問された。一般大衆は深く感動した様子であった。

解説:オスマントルコの衰退に伴い、オーストリアは1908年ボスニア、ヘルチェゴビナを併合した。バルカン半島で唯一ロシアと同じスラブ民族であるセルビアは、脅威を感じ、そして1914年ボスニア、ヘルチゴビナの首都サラエボで、フランツヨセフ皇帝の皇太子夫妻がボスニア系セルビア人に暗殺され、第1次世界大戦が始まっている。

飛行機条約 1日サンフランシスコ特派員発

合衆国とメキシコ両政府は、急激に進歩中である空中飛行機を利用して、密輸入を計画するものがある事を恐れ、飛行機条約なるものを締結し、飛行機の通過すべき一定の通路を設定しようと、現在協議中である。なお両国政府がこの条約を締結しようとするのは、商品のみならず、移民の潜入をも防ぐ事も目的の一つである。

 

6月3日

日本国税と英国 2日タイムス社発

支那協会の書記ウイルコックス氏は、再びロンドンタイムス紙に投稿し、日本の新関税率が特に英国に不利であるとの議論に対する日本新聞の反論に更に反論した。その要旨は、議論上より言えば、日本新聞の議論は正当かも知れないが、しかし実際の結果はどうか。現に綿糸布の輸入税は、新税法に於いて増加しているではないか。新関税法が英国の貿易に果たして不利益を与えるかどうかを判断すべき正確な比較の基礎は、日本が過去11年間実際に賦課してきた税率と新税率との間にある云々

解説:5月27日の記事「日本関税攻撃」の続報である。

アルバニア征伐 同上

アルバニアから来た特報によれば、トルコ軍隊3個師団は、ドヤコリに向け進軍中である。そしてその内一個師団は、何らの抵抗設けずにラホワツを占領した。村民は武器を官軍に引渡している。主要な家屋は消失した。

解説:アルバニアは1912年オスマントルコから独立した。

クリート政府の哀訴 2日上海経由ロイター社発

クリート政府は、列国に公文を送り、速やかにギリシャに併合されるよう哀訴した。しかしギリシャの外、列国政府の同意を得るのは難しいと思われる。

解説:5月31日の記事「トルコの決心」の続報

哀れな摩洛哥 同上

公債協約の規定により、佛国監理官はモロッコ関税収入の一割をモロッコ国王に与え、残り9割を自国に取り立てる事に着手した。

 

6月4日

芬蘭自治保存請願 3日上海経由ロイター社発

佛国下院議員百名、同上院議員百50名及びイタリー代議院議員百28名は、文書によって露国国民会議に訴え、フィンランド憲法を保存するよう主張した。

解説:フィンランドはロシア総督の支配下で議会も認められていたが、この記事にある様に憲法が改正されて議会が廃止されようとしている。

日本労働者敬遠 2日ニューヨーク特派員発

カルフォルニア州労働局に於いて、日本労働者を必要とするとの噂があったが、この事に関しスタンフォード大学総長ジョルダン氏は、シカゴに於いて演説し、カルフォルニア州が日本の労働者を容易に入国させるべきとの説は、賛同し難い。例え日本労働者を必要とする状態があるとしても、先ず日本の労働者は渡米しない方が日本の為にも米国の為にも利益になるであろうと述べた。

解説:カルフォルニア州政庁が、日本移民は優秀であり必要との報告書を出しており、これに対する反論の様である。

 

6月5日

米鉄の威嚇 4日タイムス社発

ニューヨーク来電―米国西部の有力な諸鉄道会社は、政府が運賃増加を禁止した事に対抗する意味で、今後各種鉄道改善を中止し、服務人員を減少すると公言した。この様な事は、不実の態度であり、鉄道会社自身の上にも悪影響を及ぼすであろうとは一般に認められる所である。

米獨の衝突 4日上海経由ロイター社発

コンスタンティノープル来電―米人の小アジア鉄道敷設計画は、先般国務会議に於いて是認されたので、鉄務省の会議に附せられた。然るに獨逸の抗議が行われた結果、大障害に合う事になった。因みに米人の計画は8万平方kmの採掘権を含んでいる。

英国の狂喜 同上

飛行家ロールス氏の海峡横断に関して、英国に於いては欣喜に溢れた様相である。ロ氏が使用した双翼飛行機は英国で製造され、その機械は佛国製である。

 

6月6日

クリート問題 5日上海経由ロイター社発

最近、非公式にパリ―を訪問されたギリシャ皇帝は、大統領ファリエル氏及び佛国内閣大臣と会見し、その後同じく非公式にローマに到着した。謂うまでもなく昨今議論沸騰して、険悪な問題となっているクリート事件を協議する為である。そしてギリシャ人もクリート島民も現在の結合関係を解かない決心であり、同時にトルコも又その決心である。

非買同盟と米人 5日サンフランシスコ特派員発

当市清国人の米製品に対するボイコット決議は、米人を非常に狼狽させ、新聞はこれに論評を加え始めている。沿岸連合商業会議所代表者は、支那人側に協議を申し込み、3日当市の商業会議所に於いて、清人委員と会見した。その結果、移民局が移民取扱いについて不法に過激であるかどうかを調べ、若し支那人側の主張に理由があるならば、商業会議所より中央政府に請願することとし、それまでボイコットを一時見合わせることとした。

解説:6月1日の記事「米貨排斥運動」の続報

南京騒乱と欧州人 4日巴里特派員発

清国よりの電報によれば、南京に於いて激烈な騒乱が起こったという報に対して、沈静化を望んでいる欧州人は不安の念を抱いている。

満州移民方針 内国電報5日発

小村外相は、第26議会に於いて従来の北米、南米その他海外移民は最早その余地がない為、今後努めて我が同胞を満韓に集中させる方針であると言明した。

差し当たり東洋拓殖会社の機関により内地人の韓国移住を奨励中の現状であるが、満州方面に於ける邦人移住については、未だ具体的奨励策が無く、従って現在の處、鉄道工事若しくは架橋工事に従事する一部の少数の単独者に限られている。(一部抜粋)

北海道新移住地決定 同上

北海道経営案の実行と共に道庁は、移住民保護政策によって成るべく多数に移住を奨励する目的も以て、先般来各府県に吏員を派遣し、専ら勧誘中であるが、本年度新たに移住地として選定したのは174か所で、この面積は1億4千百95町歩であり、細部は次のとおり。

北見国48か所 5千7百10万町歩、渡島国21か所 7百85万町歩、その他略(一部抜粋)

解説:日露戦争後、北海道への本格的な植民が行われたようである。

 

6月7日

法王回章と獨逸 6日上海経由ロイター社発

イタリーのボロメオ枢機卿聖列3百年祭に当たり、ローマ法王が発した回章は、ボロメオと同時代の宗教改革派を激しく攻撃した為、プロシャの人心を激怒させている。議会に於いては、種々の質問が起こり、政府に対し事件の再発を防止する措置を執るよう要求した。

近東形勢険悪 5日ベルリン特約通信社発

ギリシャ政府は、情勢が容易でない為に、予備兵を招集中であり、トルコ政府は、大いにこれを憂慮しているとの説がある。

 

6月8日

摩洛哥の危機 7日タイムス社発

タンジール来電によれば、フエツ守備隊の一部は、俸給の支払いを受ける事が出来ない結果、脱走した。又現在フエツに向け退却中の一連隊は、引続き叛乱した土蕃に攻撃されたが、遂に脱走した。

希臘の決心 6日ベルリン特約通信社発

アデンよりの報道によれば、ギリシャ政府は、遠からずクリート島をギリシャに併合する宣言を行う意志であり、ギリシャ皇帝はクリート問題を解決する方法が一にその希臘への併合にあることを宣言した。

解説:6月6日クリート問題の続報

前摩洛哥王巡礼 同上

前モロッコ王アブダル、アジスはメッカへの巡礼の途に上った。

解説:現モロッコ王が戦闘に勝利し、前モロッコ王を追放した。

法王失言問題答弁 同上

プロシャ政府は、下院に於ける自由保守両党の質問に答えて、法王が宗教改革家を攻撃したと伝えられたものは、全くローマの新聞が法王の言を曲解した結果であると言明した。

解説:前日の記事の続報

 

6月9日

アルバニア形勢 7日タイムス社発

アルバニアよりの特報によれば、同地の反乱は鎮圧した旨公式に発表された。しかもトルコ政府の楽天的態度に拘わらず同地の難問題が真に解決されたとは信じがたい。因みにトルコ政府は、同地に恒久的守備隊を置き、又人民の武装解除を厳重に実行させる意志があると言われている。

解説:結局アルバニアは2年後独立した。

鉄道問題妥協 7日ニューヨーク特派員発

米国政府と鉄道会社との訴訟事件に関し、6日、26会社の代表者と大統領と会見したが、鉄道会社側よりは一切値上げせずと申しでたので大統領も然らば政府も訴訟を取り下げると容易に妥協が成立したが、これには何か密約があると言われている。

解説:6月5日記事「米鉄の威嚇」の続報

法王と獨逸 同上

ローマ法王は、獨逸巡礼者一行を法王庁に引見し、自己が獨帝、獨逸連邦君主、獨逸人民に対し、至大の尊敬を払っていると言明した。この行動は先般法王の回章の為に、獨逸に於いて喚起した悪感情を和らげる効果があると思われる。

解説:昨日の記事の続報

 

610

日本関税反対 9日タイムス社発

英国マンチェスター市のキャリコ布印染業協会は、タイムスに寄稿し、日本新関税は、大陸の競争者よりも寧ろ英国の印染業者にとって不利であると公言し、且つ比較表を示した。

解説5月27日「日本関税攻撃」にある日本の新関税は主に英国製品に影響するという記事の続報と思われる。印染(しるしぞめ)とは、半纏、のぼりや暖簾(のれん)、旗などに、屋号や家紋などを 染め抜いてある染物のことで、キャリコ布印染業とは、キャラコという生地の印染業と思われる。

芬蘭憲法廃棄 同上

露国国民議会は、僅か7分間で、一世紀間継続して来たフィンランド憲法の廃止を決議した。

希土関係険悪 9日上海経由ロイター社発

コンスタンティノープル来電―ギリシャ公使はトルコに於けるギリシャ製品の排斥に抗議し、宰相ハツキベイと熱烈な会見を行った。宰相は、この国民的愛国的運動が法律に違反しない限りは、自己もこれに干渉する事は出来ない旨公言した。

 

6月11日

猶太人迫害 10日タイムス社発

露都来電―スモレンスクの官憲は、ユダヤ人に迫害を加え、且つ全員の放逐に着手したとの情報があった。

解説:スモレンスクは、ドニエプル河沿いの古都で、ヨーロッパからロシアへの通り道にある為、ナポレオン戦争等で度々戦火を受けた。

希土関係険悪 10日上海経由ロイター社発

トルコに於けるギリシャ排斥の感情は日を追って益々激しくなり、スミルナに於いては、ギリシャの汽船に対するボイコットが起こり、ギリシャ人は商店を閉じた。

法王回章問題 9日ベルリン特約通信社発

法王庁に派遣されているプロシャ使節は政府の命により、法王の回章に抗議する通牒を法王に提出した。因みにロセルヴィトロ、ロマノ新聞は法王が獨逸新教徒の名誉を棄損する意志がなかったこと、又その獨逸新教徒に対し尊敬の念を持っていると言明した。

 

6月12日

芬蘭案可決 11日上海経由ロイター社発

フィンランドを露国議会の立法に殆ど従わせる議案は、激しい討議の末、23対164の大多数を以て下院の第3議会を通過した。

列国の通帳 11日上海経由ロイター社発

列国領事は、昨日クリート政府に最後の連合通牒を送り、若し回教徒議員をクリート議会に復席させなかったならば、列強はこの情勢を処罰する為に断固たる手段をとるであろうと言明した。

 

6月13日

阿片専売と英国 12日上海経由ロイター社発

英国政府は、広東の阿片専売問題に関し、インド政庁と公信を交わしつつあるが、この阿片専売は条約違反であると認められ、そしてボンベイの阿片商人は皆容易ならざる事態であると認めている。印度貿易は既に夥しい影響を受けており、商人は非常な損害を受けつつある。彼らは条約上の権利が励行される迄、阿片の売下げを停止することを政府に勧告した。

 

6月14日

埃及革命党鎮圧案 13日タイムス社発

アレキサンドリアよりの特報によれば、新聞裁判法、秘密団体、学校紀律に関する3個の議案は、エジプト立法参議院に於いて、軽率にも或る法案は完全に否決され、或る法案は散々に修正を加えられた。但しエジプト政府が党派的煽動を許さない決心を有しているのは明瞭である為、結局遠からず原案どおりにて通過を見る事になるであろうと予想される。

解説:エジプトは英国の支配下にある。

キ元帥辞職説 同上

英国政府は、遠からずキッチナー元帥が地中海陸軍司令長官の職を辞する事を希望する旨を発表するであろうと信じられる。蓋し元帥は元々、同職を好まない色を示しており、唯先帝のご希望二より止む無く就任を受託したものである。

解説:キッチナー元帥は、第一次世界大戦に於いて陸軍大臣となった。

6月15日

キ元帥辞職 14日タイムス社発

キッチナー元帥の地中海陸軍総督辞職が英国上院に於いて発表された。

獨逸陸軍演習 同上

獨逸に於いては、従来の25万の陸軍招集兵に代えて、今年度は37万1千を招集し、武装した総兵員数は百万に達する筈である。9月ダンチッヒとケニヒスベルヒ間で演習を挙行する予定で、今回は海軍上陸作戦を含み、且つ陸軍の操舵式飛行機4機、ライト式飛行機10機をも使用する様である。

埃及問題討議 14日上海経由ロイター社発

英国下院に於いて、一団の弁士がエジプトの情勢について注意を促し、政府の自治制度案を攻撃し、今のエジプトの情勢は速やかに断固たる措置を必要とすると主張した。然るに外相サー、グレイ氏はエジプト駐在官ゴルスト氏の事業を称賛し、エジプトの情勢は諸君の言う様に重大ではない。しかし真面目な警告は必要であり、もし不穏な兆候が継続する場合には、自己の権力の存在を明らかにせざるを得ないと言明した。

 

6月16日

近東問題と英国 15日上海経由ロイター社発

英国下院に於いて、外相サー、グレーは、クリート問題に関し次の様に言明した。

英国が他の列国と異なる意見を持っているとの報道は、事実無根である。英国の目的は列国と同一であり、クリート島民が若しこの上、現状の打破を企て、以てトルコを怒らせて近東の平和を危うくし、列国に断固とした手段を取る事を余儀なくさせるならば、これは決して彼らの利益にならない云々

埃及政府の強圧 同上

カイロ来電―エジプト内閣は、新たに制定され、そして立法議会が否決した新聞法案を原案のまま可決した。又秘密結社及び学生教育に関する法律(この2法案は立法議会が修正し、骨抜きにしたもの)を否決した。そして内閣は強い決意で、議会の行動を制圧し、議会の権力を弱めつつ、政治的犯罪の発生を予防している。

解説:当時のエジプトは、英国の高等弁務官の支配下にあり、内閣が立法機能を持っていた様である。英国の新聞に、英国のエジプト統治より日本の韓国統治の方が優れているという記事があった。

法王回章問題落着 14日ベルリン特約通信社発

ローマ法王庁及びプロシャ政府の衝突は、法王庁より不都合を謝する通牒を送って、遂に決着した。又法王庁の教務卿メリー、デル、ワル大僧正はこれに付言して、法王の回章は発表されないと公式に宣明した。なおプロシャ王はこの回章に関し、法王に書簡を送るであろう旨発表した。

解説:しばらく続いていたこの報道もこれで決着した。

6月17日

排日的暴動 15日ニューヨーク特派員発

ダーリントンに於いて暴動があり、日本人が退去した。これは酒屋と公証人等の扇動に基づくとの事であるが、材木会社側の声明によれば、数日前より不穏な形跡があったので、会社より同地の官憲に保護する事を嘆願したが拒絶された。故に14日シャトル駐在帝国領事は、現場に出張して調査中である。又材木会社には、他に労働者が居ないので、日本人を呼び戻そうとして奔走中である。そして両三日中に帰還するとの事であり、会社は今後暴行を防ぐ為に、柵の新築に着手し、番人を置く計画である。

国務郷の親日論 同上

国務郷ノックス氏は、15日ペンシルバニア大学の卒業式に臨み、米国外交方針を発表し、に関し次の様に述べた。

現在見られる様な日本の発展はペルー提督の開国が契機となっており、日本政府の改革も米国政府のやり方に倣う所がある。そして半世紀間日本と親密になったのは米国人の誇りとする所であり、故に今後ますます親密にすることを望む。

西蔵の政教分離 15日北京特派員発

清国政府は外国の干渉を恐れ、チベットの処分策を決定していなかったが、新ダライラマを僭立後のチベットは平和であり、駐蔵大臣の政令が能く行われているので、この度、年来の希望である政教を分離し、新ダライラマは宗教のみを管理し、商務、外交は駐蔵大臣が政府の命を受け折衝の任に当たる事とした。従って将来ダライラマと外国人との間に条約を結んでも清国政府はこれを承認しない事とし、これに関し外務部より北京公使館に通牒したとの事である。

解説:本来のダライラマは、清国の手を逃れている。最近の中国のやり方と似ている事を100年位前にも行っていた様である。

 

6月18日

日本新関税攻撃 17日タイムス社発

ブラッドフォード商業会議所会頭は、ロンドンタイムスに寄稿し、若し日本の新関税法が修正されない場合には、ブラッドフォードの貿易業者は死活的な打撃を被るであろうと断言し、更に英国政府は英国の通商及び航海業の利益を保護する意志である事を日本政府に通告するよう英国政府に勧告し、最後に英国の生産品に対し特別な税率を協定する様要求した。(一部抜粋)

日本人迫害事件 16日ニューヨーク特派員発

日本労働者の迫害事件について、帝国領事は穏便に済まそうとしたが、会社は加害者等を処罰するよう訴え出た。加害者は全村に亘る為に解決が困難な様である。

 

619

波蘭の暴行 18日上海経由ロイター社発

露国のポーランドに於いて再び暴動が発生しており、ラドム(ワルシャワの北60マイル)に於いて憲兵大佐が殺害された。又ワルシャワ市に於いては、警察署長に爆弾を投げた者が居たが、署長は幸いにも負傷しなかった。刺客と従犯者ともに自殺した。

解説:当時はポーランドとフィンランドはロシア領であった。

土国の警戒 同上

コンスタンティノープル来電―トルコ政府はギリシャの軍事的準備に対し、驚いてはいないが警戒的手段として予備旅団を招集する事に決定した旨宣告された。又コンスタンティノープルに於いては、昨日ギリシャ貨物のボイコットが宣言された。

解説:度々報道されている通り、クレタ島を巡り、ギリシャとトルコが対立している。

 

620

クリート問題 19日上海経由ロイター社発

佛国外務卿ロショ氏は、内閣会議の席上でクリート問題に関し次の様に報告した。クリート保護にあたる列国は、同島に関する意見で完全に一致しており、列国はその決意を尊重させ、且つ緩急に応じる為に、今やスーダ湾に於ける海軍力を増加しようとしている。

解説:前日の記事の続報

 

621

ロ氏の将来 20日タイムス社発

ニューヨーク来電―米国前大統領ルーズベルト氏は、ニューヨーク市長ゲイノア氏の歓迎演説に答えて、予は各種国民的問題の解決に助力したいとの念が強いと言明した。この言は、氏が再び公的生活に入り、活発に活動したいとの意思を表したものと一般に認識された。

解説:ルーズベルトは、1912年の大統領選挙に立候補したが敗れた。

獨逸陸軍進歩 20日上海経由ロイター社発

ベルリン来電―獨逸は陸軍の専門分野の能力を増強中であると伝えられる。そしてその実例を挙げれば鉄道、電信、飛行機等の諸分野であると言われている。

 

622

紐育知事強硬 21日タイムス社発

ニューヨーク来電―ニューヨーク州知事ヒユフス氏は、ニューヨーク州立法部議会の終わりに臨んで、同会を通過した総額94万ポンドに上る支出案を否認した。この支出は、政党党首達が、同知事が提出した予選選挙法案(選挙上の腐敗を一掃する目的の法案)を否決した際、自分達を応援して反対票を投じた議員等に報いる必要がある為、これら議員連の利益を図る目的で通過させたものである。この否認の結果、党首達は公金を賄賂に用いる力を失う事になった。

623

クリート屈服 22日タイムス社発

コンスタンティノープル来電―最近クリートより到着した報道によれば、同国官憲は遂に列強に屈服し、同島イスラム教徒代議士にギリシャ皇帝に臣従の宣誓をすること無く、直ちに議会に列席する事を許すような様子である。事ここに到ったのは、主に英国がクリートに加えた圧迫と露国が再び軍隊で同島を占領しようと提議したことに依る。

 

624

芬蘭と露国首相 22日上海経由ロイター社発

露都来電―ロシア帝国参議院は、フィンランド政治案を討議中である。首相ストリイピン氏は、自由派の非難に答えて、フィンランドに於ける露国の主権は無制限である故、同案をフィンランド議会に附して、これを決議させる必要はないと主張した。

波斯の廃露熱 同上

本社テヘラン通信によれば、ペルシャに於いては、再び排露熱が勃興し、露国兵士が駐屯する土地において、意外な出来事がしばしば発生中である。よって露国は要求の一つとしてタフリツ知事の免職を求めている。

解説:ペルシャの北半分は露国の勢力下、南半分は英国の勢力下にあった。

西班牙宗教改革 23日上海経由ロイター社発

スペインに於いては、政府の宗教改革に対し猛烈な反対運動が発生している。カソリック教徒は、強烈な抗議を打電しつつある。政府は、ローマに向け旧教に忠実であると声明する使書を送った。又カソリック教徒でない者は集会を行い、信教上の自由を要求中である。

(備考、スペイン政府は先般、カソリック教会のみを優遇する制度を改め、カソリック以外の宗派にも公に伝道し、宗派の旗、その他の徽章等を外部に現わす事を許したのは既電のとおり)

 

625

土耳其の希臘貨物排斥 24日タイムス社発

コンスタンティノープル来電―ギリシャの海運業、貿易及び諸商店に対するボイコットが急速に且つ広範囲に広がりつつある。

解説623日「クリート屈服」の続報

獨逸飛行機成功別報 24日上海経由ロイター社発

ドイツに於いて空中飛行船ツエッペリン第7号が何らの故障もなく、乗客輸送を遂行した事に対し、社会は非常な満足を表した。当日ツ伯爵は飛行機の全部に座り、操縦の任に就いた。乗客は総計13名で、船室は非常に豪華に装飾されていた。

 

626

獨沸関税戦争 25日タイムス社発

パリ来電―獨逸政府は、外国より輸入するウイスキーとブドウ酒に最高税率を課すつもりである旨宣言した。その為仏国はこれに対し、報復手段を執ろうと準備中である。獨逸外務省は、敢えて佛国の事業に対してのみこの課税をしたいのではないと説き、これは完全に国庫収入の必要からであると言明した。

日露協約調印近し 25日上海経由ロイター社発

デイリー、テレブラフ露都通信によれば、日露条約は数日以内に調印されると思われる。これは日露関係を親密にさせるものであり、将来、結局同盟になるであろうと信じられている。

同条約は、唯満州にのみ関係しているが、その意味する所は、満州の平和が、他の極東地方に平和をもたらす所以であると言っている。そして将来の極東政策の基礎として「現状維持」を完全に是認した。なお同新聞通信員は次の様に付言している。米国が善意からと思われるが、充分に時局に適合しない行動を執った事と清国が露国に対し、友好的でない点が、日露の接近を大いに助けた。

 

627

洪牙利議会開会 26日上海経由ロイター社発                               

オーストリア皇帝は、ハンガリー議会の開会式に臨み、政府党の勝利はハンガリー政府の地位を強固にし、平和的発展の為に喜ばしいことであり、そしてこの議会に普通選挙法の実施と防衛兵力増加に関する法案が提出されるであろうと言明し、最後に欧州の平和がますます恒久的になる事は、本当に喜ばしいと述べられた。

解説:ハプスブルク家は、オーストラリアとハンガリーの皇帝であった。4年後に第1次世界大戦が始まる。

阿片問題交渉 26日北京特派員発

現在英国代理公使と外務部との間で交渉中である阿片問題は、単にインド商人の損害問題ではなく、清国の阿片禁止に重大な関係がある。10カ年を期してインドより阿片輸入を禁止する事になり、清国内では3年間で完全に阿片耕作を禁止する協定を結んだ。しかしその結果、現在、阿片の価格は禁止以前の7倍になり、インド商人は、輸入を毎年十分の一減少させているが、彼らの3年間に受けた利益は莫大なものとなった。しかも価額の高騰の結果、ペルシャ、トルコ、フィリピンより間接輸入を行う者が加わり、昨年、一昨年共に10万ポンドの増加であった。

 

628

英国海軍演習 27日タイムス社発

英国海軍大演習は74日より開始し、3週間に亘り行われる予定である。これに参加する艦艇は、戦艦44隻、装甲及び保護巡洋艦56隻、駆逐艦119隻、潜航艇60隻、水雷艇85隻等の総計401隻である。そして諸艦は既に活動を開始している。

解説:海軍力で世界NO1の英国である。日本海海戦当時の日本の戦艦は4隻であった。

摩洛哥沸兵進軍 同上

タンジール来電―二隊の佛国軍隊は、モロッコのカサブランカより内地に向け約100マイル満足に進軍を遂げ、その間何等の反対も受けなかった。この進軍の目的は排佛運動に対抗し、これを鎮圧する為である。

解説:モロッコは佛国の保護国であった。

クリート問題通牒 27日上海経由ロイター社発

コンスタンティノープル駐箚英国大使サー、ゼラルド、ロサーは、クリート保護の任にある英伊沸露の4国を代表して、通牒をトルコ政府に送り、クリートに於けるトルコの主権が尊重されるべきと述べ、4国は各第2回目の軍艦を派遣しつつある旨言明した。

解説:トルコは、クリートを巡り、ギリシャと紛争中である。

 

6月29

日露協約と米清 26日タイムス社発

露都来電―半官報ノウオエ、ウレミヤ紙は、日露協約の成立が切迫している事が、極東の露国利権に対する米清両国の態度に良好な影響を与えたと述べている。清国が松花江の通航問題について、従来の頑迷な主張を放棄する事に決定した事を歓迎し、清国は露国に対し友好的政策を執る事に決定し、これを後悔する理由はないものと信じると言明している。

解説:日露戦争後、英米の極東進出に対抗する為に、日露間で4次にわたりむすばれた協約で、1907年7月調印された。満州での相互の特殊利益と日本の朝鮮,ロシアの外蒙古に対する特殊利益を相互に承認した。

日本関税反対 同上

バーミンガム商業会議所は、英国商務院に対し日本の新関税が同地方の貿易に重大な衰退を与える旨報告した。

 

630

獨逸外相更迭 29日タイムス社発

ベルリン来電―獨逸外務大臣ディエン男爵は、パリ―駐箚獨逸大使に決定した。シエン男爵の外交の遣り口は常に熱狂的愛国家の不満足を買っていた。当地の預言者達は、この変動の結果、獨逸の外交政策が強硬となると予期している。

解説4年後第1次世界大戦が始まる。

土国議会閉会 29日上海経由ロイター社発

コンスタンティノープル来電―トルコ代議院は111日まで休会する。宰相ハツキー、ペー氏は、クリート保護の責任がある列国の友誼を称揚し、列国のギリシャに対する態度は非難すべき点は無いと明言し、且つトルコ国民が、公正に事を取扱う土廷に対し、厳正な態度を採る様希望した。

解説628日の記事「クリート問題通牒」の続報

 

明治43年7月

 

 

71

摩洛哥の戦闘 30日タイムス社発

タンジール来電―1200人の佛国軍隊と5000人のモロッコ人(叛賊か)とが、623日テドオに於いて激戦した。モロッコ人の戦死は300名であり、沸人は11名戦死し、70名負傷した。

阿片問題 同上

英国下院に於いて植民省予算の審議があり、自由党議員のテオドアー、テーラー氏は、政府が香港及び海峡植民地の阿片窟に加えた措置を感謝し、更に姓名登記をすることを拒んでいる現在の阿片喫煙者全員の登記をさせることを願った。次いで植民次官シーリー氏が起ち、政府の阿片売買に対する意見は変更せずと述べ、香港の同売買を終わらせるためには、多少の補償を与える事が必要であり、そうすれば不平の声は聞かれないだろうと言明し

た。

解説:海峡植民地とはマレー半島の英国植民地である。

 

72

佛国海相の演説 1日タイムス社発

パリ―来電―海軍大臣は、代議院に於いて演説し、駆逐艦が先頃汽船と衝突して沈没した事に言及し、商港の付近に於いて演習を禁じる規則が往々、無頓着な士官の為に無視されることを認めた。

又復日米戦争論 30日紐育特派員発

新聞記者会の怪物ハースト氏の機関紙ニューヨークアメリカンは、3日間に亘り、日米戦争は到底避ける事が出来ない故に強大な海軍を造るべしとの論文を掲げた。

 

73

日韓合邦と米国 1日紐育特派員発

日韓合併が切迫していると米国一般に信じられている。しかしこれに対し何等の異論はない。

列国軍艦派遣 1日ベルリン特約通信社発

クリート保護の任にある英沸露伊四国の軍艦9隻はクリート島北岸のスーダ湾に集合した。

解説:6月20日「クリート問題」も続報である。

膠州獨兵増加 2日上海特派員発

山東巡撫は、政府に対し、獨逸が膠州湾付近に歩兵及び騎兵2千名、砲兵1千6百を増加した理由を獨逸公使に質問する様に要請した。政府は大いに驚き、外務部に至急この兵士の撤退を獨逸公使に迫らせる事とした。

解説:膠州湾一帯は獨逸の租借地である。東南アジアに於ける列強の植民地は、英国のインド、ビルマ、マレー半島、佛国のインド支那、オランダのインドネシアであるが遅れて進出した列強の獨逸は、この膠州湾と南洋諸島しかなかった。中国の青島ビールはその名残である。

 

74

日本関税攻撃 3日上海経由ロイター社発

日本の関税は相変わらず厳しい非難の的となっている。ロンドンタイムスは、日本の関税は堅牢であり、耐久性に富む英国製器械の代わりに、粗製の器械を保護している。印刷機械も然りと述べた東京発の記事を掲載した。

昨年の移民 2日紐育特派員発

カルフォルニア州に渡来した昨年度の移民総数は百3万5千5百95人であり、前年より28万3千人多い。

 

7月5日

土耳其と墺獨 4日上海経由ロイター社発

コンスタンティノープル来電―トルコに於けるギリシャ人反対のボイコットは漸く衰勢に向かいつつある。トルコ政府は獨逸、オーストリア両国に対し、クリート問題を明確に決定する為、両国も同問題に関係する列国団に加入する意があるかと質問した。

 

76

日露協約成立通告 5日タイムス社発R

パリ―来電―日露協約の調印が行われた。英沸両国政府は、その内容、条件の通告を受けた。

協約と佛国 同上

日刊新聞ル、ジョルナル、デ、デバの報道によれば、沸国は同協約によって、満州の現状維持が保証されたことを歓迎し、且つその成立は、全く清国が満州に於いて威厳を回復しようとする企てに答えたものと認めている。又同新聞は、日本の朝鮮併合完成を妨害するものは全くなしと言明した。

 

77

日露協約論評 6日タイムス社発

タイムスは、社説に於いて日露協約を論じ、これは世界政治の上にも深い意義を有するものである。英国に於いては、最終衝突の機会を取り去るものとして、誠意をもって歓迎されたと説き、又欧州に於ける露国の権威をも回復する所以であると言明した。

解説:この当時は、日露の満州に於ける権益が米、英、仏国で好意的に捉えられている。

日露協約内容 6日上海経由ロイター社発

日露協約は調印され、その内容、条件は英沸両国に通告されたが、但し未だ発表されていない。伝えられる所によると、これは従前の日露諸協定と同一の方針により、満州の現在情勢の維持を保障し、且つ若しこれら日露間の諸協約若しくは清国との間に結んだ諸協約が他から邪魔を蒙る場合には、両国は協力して防護の手段を取る事ができると言われている。

日米戦争論宣伝 5日サンフランシスコ特派員発

例の新聞王と称せられるハースト氏は、最近至る所で日米衝突の免れざる事を論じていたが、4日より当地のエキザー、ナー紙上に於いて、盛んに日米の衝突は免れる事が出来ない事、これに対し米国の準備が無い事を警告し、海軍拡張の必要性を説いている。その筆法は極めて煽動的である。

解説:当時は米国海軍は、英国に次いで第2位の海軍勢力と言われていたが、太平洋側の勢力は殆ど無かった。準備がないとはこの事と思われる。

 

78

日露協約と獨逸 7日タイムス社発

ベルリン来電―クロイツ、ツアイツング紙は日露協約成立を論評して、獨逸が極東に於いて最も願うところは現状維持であり、故に日露協約成立の為に、少しも激昂する様な事は無い。唯米清両国がこれに対し如何なる態度を執るかを見るのは、非常に興味がある事であると言明した。

日露協約評 7日上海経由ロイター社発

ロンドンタイムスは社説に於いて日露協約を論じ、同協約の成立は世界政治上重要な意義を有する出来事である。極東の平和を永久的基礎の上に確立しようと希望するものは最深の満足を以てこの結果を見るに至ったのを祝賀しなければならないと言明した。

クリート問題 同上

本社の得た情報によると、最近クリートの情報は穏やかでなく、クリート議会は、再開に際し飽く迄も「イスラム教議員にギリシャ国王に臣従する宣誓をさせる」と主張する情勢が増加しつつある。依って同島保護の任にある英露佛伊4国は、もしこの様な場合になるならば、如何なる手段を執るべきかについて協議中である。多分その様な行動があれば、4国の軍隊をクリートに上陸させるであろうと信じられている。

 

79

クリート問題 8日タイムス社発

コンスタンティノープル来電―クリート代議院は、無益に且つ危険な難局を生じさせたので、今や速やかにこれを解決する為に断固たる手段を執る時期に到ったと認められる。なお同問題の為、トルコとギリシャ間に衝突が起こる得る恐れがある。

日露協約続聞 8日上海経由ロイター社発

タイムス露都通信員の報道(7日発タイムス特電)は、日露協約の内容、条件が去る6日本社所報のものと同一であることを確認した。

又両協約国は、満州に於ける双方の鉄道を改善し、連絡を完全にする為、互いに友好的な協力をし、同時に各種有害な競争を行わない旨約定した。(この協定が協約中に含められているか、或は別個のものであるか尚不明である)

日韓合併反対運動 7日紐育特派員発

サンフランシスコを中心として、各地に散在する韓国人等が連合して、日韓合併反対会を組織した。米人の助力を求める為である。

 

710

佛国の協約評 9日タイムス社発

パリ―来電=佛国諸新聞は一般に日露協約を歓迎した。ル、ジョルナル、デ、デバ紙は、同協約を以て獨逸膨張派が主唱中であった黄人種反対欧州大連合組織の論に打撃を加えるものとしている。

獨紙の日露協約観 8日ベルリン特約通信社発

獨逸諸新聞は、日露協約が満州に於ける獨逸の商業的競争を制限する様な結果さえ生じなければ、これは極東平和の新結束として歓迎すべきものであると述べている。

巴奈馬運河 同上

パナマ運河の開削工事管理者は、19111月を以て、同運河の公式開業式を行う予定と述べた。(備考 米国が同運河を譲り受け、自ら工事に着工して以来約10年、工事はほぼ完了の域に近づいたが難工事がある為、開業式は191511日と内定しており、この電報の1911年は多分1915年の誤りと思われる。)

解説:実際にパナマ運河が開通したのは1914815日である。

 

711

獨紙の日露協約評 10日上海経由ロイター社発

獨逸新聞は日露協約に対して反対の評論を試み、同協約は主として米国を目的として締結されたのみならず、又他の列強に不利益をもたらすであろうと評論している。フランクフルテル、ツアイツング紙は、同協約は時局に何らの変更をもたらすことなく、日露両国は依然として敵であると論じ、又フォツシラセ、ツアイラング紙は、同協約は日本の最も危険な競争者である米国に対して締結されたと論じている。

 

712

クリート問題落着 11日タイムス社発

カンギア来電―クリート議会は列国の要求に従い、イスラム教徒議員の着席を許し、その為同島民は漸く難局より救われ、安心する事になった。但し今回の解決は島民の希望より一歩後退するものと考えられつつある。

日露協約と米国 同上

華盛頓来電―米国側の日露協約評は驚くべき程慎重であり、警戒的態度をとっている。但しワシントンの楽天家といえども同協約成立の結果、国務卿の満州案が将来終に採用されるべしという点について、一層疑念を深くせざるを得ない様である。イブニング、ポースト紙は、同協約を論じて日露両国が満州の米国起業に反対して偏頗的措置を執る意思があるかどうかはなお今後の證明を待って判断しなければならないと言明した。

土耳其の抗議 9日ベルリン特約通信員発

トルコ政府は、クリート保護の任にある英沸露伊の四国に書を送り、ギリシャ皇帝のトルコ内政干渉に抗議した。

日露協約と佛国 10日パリ発

日露協約は佛国の諸新聞を満足させた。佛国諸新聞は日、露、英、佛間の緊密な同盟を予想し、冷淡な態度を以て獨逸の諸批評を迎え、そしてこの新協約が確かに佛国に於ける日本の信用を高め、その地位を重くすると信じている。

 

713

クリートの宣明 12日タイムス社発

カンデア来電―クリート政府は同島保護の任にある英仏伊露4か国の要求に服従する旨宣言した。

獨帝親簡問題 12日上海経由ロイター社発

マドリス氏をニカラグア大統領として承認する獨帝の書簡が発表された結果、ワシントンに於いて様々な論評があるが、これは英米両国が同様な承認を与えていない為である。但し国務省は獨逸外務省の過失を重大視していないと言う。なおこれより先にワシントンに於いてはマドリス氏が欧州の某強国に対し「若し自己を大統領として承認する場合には、これに貯炭地を与える」と申し出たとの風説がある。

 

714

日露協約と獨逸 13日上海経由ロイター社発

獨逸新聞ダーゲッヒ、リウンドハム紙は、本紙が確かな筋から得た情報によれば、今回の日露協約の発議者は英国の外交家であり、彼等は協約の締結にも関係している。そして英国外交家の目的は、獨逸に対抗する三国同盟を作るにあると述べている。

獨逸新聞憤激 同上

ニカラグア共和国大統領に宛てた獨逸の書簡が、ロンドンより米国に送られ、米国に於いて発表された事が判明した。この為ベルリンの民心は、非常に憤慨している。獨逸の諸新聞は、獨米離間の種子を播くものとして、英国新聞を攻撃し、米国人に、獨帝が中米の事に干渉する意思があると思わせるのは、如何なる手段を用いても不可能であると論評した。

 

715

協約と獨逸 14日上海経由ロイター社発

日露両国大使は、獨逸外務省に日露協約の正文を通知し、その一層の極東平和を保障する所以であり、門戸開放主義にはなんら影響がない旨言明した。外相シエン男爵はこれに答えて、予は獨逸の経済的活動に対して門戸開放主義が適用されるであろうと確実であると信じると述べた。

日露協約と米国 13日ニュヨーク特派員発

日露協約は13日の新聞紙上に発表された。国務卿ノックス氏は、米国の主義に沿わないと述べたとの説がある。又秘密条約があるとの説は全く無根であると打ち消された。

獨逸の否認 同上

獨逸が米国の対ニカラグア政策に反対しているとの説に対し、獨逸は無根であると打ち消している。

 

7月16

英国と西蔵 15日上海経由ロイター社発

チベットに関する分厚い青書が発表された。その中で最も注目すべきは88日付外相サー、グレーの第2回公文であり、その内容は英清両国の間に締結された諸条約及び通商協約を清国が厳守する義務がある事を主張するものである。英国外相はその公文に於いて、英国には、常にシキム、ブータン及びネパールの各地方に於ける利益を擁護する準備がある事を通告し、これら地方に清国の兵力を増加する事の得策でない事を警告している。

英獨海軍競争 同上

英国首相アスキス氏は下院に於いて建艦費予算の討議に際し、今や獨逸との利害関係は全世界にわたり、至る所に拡大しつつある。我々は真に我が海軍力を増加する事が当然であると認める。特に獨逸がその建艦計画を繰り上げた事は争う事の出来ない事実であり、これは英国政府が今回の海軍拡張案を提出する所以であると言明した。

解説:第1次世界大戦まで4年の状況である。

 

717

佛紙と日露協約 16日タイムス社発

パリ―来電―ル、タン紙は、日露協約に言及し、獨逸はアジアに於ける勢力均衡の確定を希望しなければならない。これは満州における日露両国の地位は、モロッコに於ける佛国と同じであると言明した。

西蔵と英国 15日上海経由ロイター社発

チベットに関する青書(外交白書)の示す所によれば、チベットの大臣等は、清国の内政干渉を調査する為に英国将校を派遣する様しばしば要求し、且つインド及びナバル間と同様の同盟を結ぶ事を切望している。

米国と尼国干渉 15日サンフランシスコ特派員発

国務卿ノックス氏は、ニカラグア大統領マトリッズ氏が一米人を投獄し、同国に在住するその他の米国人の生命財産が危険な状態であるとの理由で、更に同国に干渉しつつあると

 

718

日露協約と清紙 17日奉天特派員発

16日露協約に関し、17日の中國報は日露協約の警告と題して次の社説を掲げた。「米国が満州中立の提議を行った結果、日露は非常に狼狽して、遂に今日の協約を締結した。主権者である清国を度外視し、自ら主人公のごとく振舞っている。この様な外交の失態を行ったのは、我が政府の外交が常に列国の猜疑心を利用して、これを抑えようとした結果である。」(一部抜粋)

 

7月20日

生駒倫敦着 19日タイムス社発

日本軍艦生駒はグレヴィセンド(ロンドンの東南24マイル、テームズ河岸の一部)に到着した。乗組み士官は、19日夜ロンドン市長官邸に於いて供応を受ける予定である。

加奈陀移民問題 同上

トロント来電―カナダ大幹線鉄道の山中線は大変な労働者不足に苦しんでいる。この原因は全くアジア人排斥の結果である為、請負業者等は移民制限を変更する様に提議している。

 

7月21日

着英後の生駒乗員 20日上海経由ロイター社発

生駒の水兵は、ロンドン市中を見学し、同艦の主要士官は英国皇帝及び皇后陛下に謁見した。

英国下院と弾薬費 同上

英国下院は、陸海軍弾薬費及び海軍工廠費を可決した。陸相ハルデン氏及び海相マッケナー氏は、議員の攻撃に答えて、陸海軍にて貯蔵しているコルダイトは、大砲の標準数と正確に適合する。特に海軍に於いては、砲の数よりも割合に多く貯蔵している旨言明した。

 

722

加奈陀鉄道と東洋人 21日タイムス社発

トロント来電―鉄道人夫に関する規則で、アジア人を排斥し、スカンジナビア人を入れる事が決まった。

生駒歓迎別報 21日上海経由ロイター社発

日英博名誉総裁アーサー、コンノート殿下は、博覧会に於ける生駒将校歓迎午餐会を司会し給い、同盟国海軍の代表者を歓迎する旨御演説があり、加藤大使その他は、それぞれ適当な答辞を述べた。

英帝戴冠布告 同上

明日、英帝戴冠の布告が、セントゼームス宮に於いて行われる。儀式は、即位宣示の際と同様であり「キング、オブ、アームス」(役名であり、即位宣示の際にも宣示を行ったもの)の布告等があり、次いでチャーリンククロス、テンブルーバー、及びローヤル、エキスチェンジ(取引所)間等迄行列があり、これらの諸所で、それぞれ布告が行われる事になっている。

 

723

波斯守旧派運動 22日タイムス社発

テヘラン来電―イスラム教徒指導者等は憲政反対運動に尽力し、ペルシャ官憲がミュウジテヒト殺害者を捕縛、懲罰できない事を攻撃している。

印度革命運動 同上

カルカッタ来電―一民家に多量の弾薬、短銃が発見された。同家に居た住民は既に逃亡していた。

米艦派遣 21日サンフランシスコ特派員発

ニカラグア国グランアス駐在の米国領事その他米人の生命、財産が危険な状態である為に、巡洋艦タコマ号を派遣する事に決定した。

 

724

日本議員歓迎 23日上海経由ロイター社発

英国政府の主催で日本代議士歓迎午餐会がハムブトンコートに於いて開かれた。ハートコート氏が司会をし、外相サー、グレー、その他諸大臣、加藤大使等が臨席した。席上皇帝からの書簡が朗読され、極めて慇懃なものであった。外相サー、グレーは日本天皇陛下の為に乾杯し、日露協約が日英同盟及び平和維持する従来の政策を損じないばかりか、却って大いにこれを安全にする点に貢献するものであると説き、同盟再約の正当は充分に証明されたと言明し、徳川貴族院議長はこれに対し答辞を述べた。

猶太移民上陸拒絶 22日ニューヨーク特派員発

ガルベストンに上陸した露国のユダヤ人25名は、契約移民として上陸を許さず、且つ帰国を言い渡されたが下院議員の有志が彼らを上陸させようと尽力中である。

尼国港湾封鎖続報 22日サンフランシスコ特派員

米国国務省は、ノールウエイ政府がニカラグア国ブリユ、フィールド湾の封鎖宣言を承認した事に対し、その港は公海港である。しかるにノールウエイ政府が封鎖されたと認めたのは、その港の状態を知らないからであると宣言した。

解説:当時も、現在と同じくニカラグアは激しく米国と対立していた。

 

725

満州通課税問題 24日上海経由ロイター社発

最近露国に於いて発表された半官的報道によれば、露国政府はシベリア鉄道で極東に輸送される貨物に通課税を賦課する事を考慮中であるが、獨逸の新聞は、本件に関し一般の注意を促し、露国は満州に於ける外国貿易を阻害する意思があるのか、そもそもこの計画は列国に対し、満州の門戸開放を誓約した日露協約から生じる第一の結果であるのかどうかと質問した。

 

726日

英獨海軍妥協論 25日上海経由ロイター社発

ベルリン来電―フォルウエルツは、政府が帝国議会総選挙の後1912年に他の海軍案を提出すべきであると説き、政府及び議会に働きかけて海軍拡張案を提出する代わりに、英国との妥協を図る為の大運動を起こす必要があると主張した。

米国戦艦艦隊巡航 24日サンフランシスコ特派員発

米国政府は、本年1116隻の戦艦よりなる大艦隊で欧州諸港を訪問させ、更に地中海を航行させる事を決定した。海軍省は既にその航程と日程を発表した。

ホブソン大佐の国防論 同上

オハイオ州ロレード市に於いて、例のホブソン大佐は、米国太平洋沿岸の防備が不十分な事が日米戦争を招く所以であると述べ、大艦隊を太平洋に派遣すべきであると盛んに主張し、且つ日米関係は日を追って険悪な方向に行きつつあると述べた。

 

獨逸戦艦と十四吋砲 26日タイムス社発

ノイステナクリヒテン紙の報道によれば、獨逸はクルップ工場で製造した十四吋砲を今後のドレッドノート型戦艦に装備するようである。

解説:英国のドレッドノート型戦艦は12吋砲を搭載し、又戦艦三笠も12吋砲であった。獨逸はそれよりも大型の大砲を装備した。

 

728

タイムス印度論 27日タイムス社発

ロンドンタイムスは、モンテグ氏が下院に於いて印度の対英感情が変化し、親英的となったと説いた事を攻撃し、氏はこの様な事を述べない方が賢明であると論じ、更に印度事務大臣モーレ卿、総督ミント卿も同一の事を述べているが、これらは不正当であると言明した。

獨逸海相辞職否認 27日上海経由ロイター社発

ベルリン来電―獨逸海軍卿テルピッツ大将が辞職したとの説は、半官的に否定された。これは英獨海軍妥協の運動者に対する一打撃であると信じられる。

解説:テルピッツは獨逸海軍を英国海軍戦力に比較して、6割の戦力を持つ第2位の海軍とした。

米国陸相の日本観 27日サンフランシスコ特派員発

米国陸相ジツキンソン氏が或る新聞社より日米戦争説に対する氏の意見を徴したのに対し、予が日本を訪問した結果、日米戦争等がある筈がないという予の意見は更に強固になった。日本の工業商業は各方面に発展中であり、この状態で日本が我が国に戦争を挑む事は想像すらできない。我が国も断じて戦争を欲せず。そして戦争を避ける為には全ての方法手段を講じるものである。(一部抜粋)

 

729

佛国陸軍の読書力 28日タイムス社発

パリ―来電―今年の徴兵には、1万4千人2百25名の文字を解さない者がいる。

 

730

獨逸演習と飛行器 29日タイムス社発

ベルリン来電―ツエペリン、グロス、パーセワル等諸式の飛行機がメツツに於ける陸軍演習に参加した。なお内務省に於いては、事故の発生を防ぐ為に規則の制定を検討中である。

日韓合邦と英国 同上

英国外相サー、エドワード、グレイは下院に於いて、朝鮮合併が実行される暁には、政府は英国の商業的利権を防護する手段を講じるであろうと言明した。

731

英兵西蔵派遣 30日上海経由ロイター社発

本社シムラ通信員の初報によれば、2個のインド連隊は、山砲隊と共にチベットに入る準備を整える様命令された。これは清兵の活動結果、同地に騒乱が起こる恐れがある為である。唯今の所、グネツトングに大量の供給品が集められ、若しチベットジャンテー、ヤータン等の英国商会等が攻撃を蒙る場合には、この保護の為に進軍する準備が出来ている。但し清兵及びチベット人間が相戦う場合には、英兵は厳密に中立を守る事になる様である。

 

明治43年8月

 

81

土勃関係険悪 31日上海経由ロイター社発

ソフィア来電―ブルガリアに在住するマケドニア人に対し、トルコ官憲が武器を没収しようとして彼らを不法に取り扱った結果、トルコとブルガリア間の関係が再び面倒になりそうである。

ロンドンタイムスの通信員の報道によれば、ブルガリアは万一の場合に対する準備を始めており、そしてもし外交上の手続きで、本件を満足に解決することができない場合には、軍隊に動員令を下す決心であると言われている。

82

英国と西蔵 1日北京特派員発

英国政府は、1日、当地の公使館を通じて支那政府に対し、チベットに騒乱が起きない限りは、国境を越えて兵を進めないと声明した。ダライラマがチベットに入った後、支那兵と西蔵民衆との間に紛争が起きる懸念を英人も共に認めており、インド兵のチベットへの侵攻の準備はそれを恐れているからである。

83

土国海軍拡張 2日タイムス社発

コンスタンティノープル来電―トルコ政府は、北信事変の際に清国を訪問した独逸戦艦ウエルト号(9,874トン)と同ブランデンブルク号(9,874トン)を購入し、これに対し百万ポンドを支払った。

解説:戦艦三笠の排水量は15,140トンである。現在のイスタンブールは、当時はコンスタンティノープルと呼ばれていたようである。

西蔵騒憂続報 2日上海経由ロイター社発

本社カルカッタ通信員の報道によれば、チベットと密接な関係がある商人等は、英人のダライラマ歓待を感謝しているチベット人が英人の商店等を攻撃するようなことは決してないと確信している。チベット人は、ダライラマを追っている清兵を妨害しようとしているが、もし紛争が起こるとするならば、清人がこのチベット人を懲罰しようとする結果であろうと言明した。本社シムラ通信によれば、英国軍隊がいよいよ活動する場合にはシリグリを基地とするであろうと言われている。

 

84

西蔵と英国 3日タイムス社発

タイムスは社説に於いて、チベット問題を論じ、インド東北地域における英兵の集結は、紛争が将に起きようとしている兆候であると論じ、1904年カングハスバンドのチベット遠征以後取ってきた政策が誤っていたことを悲しみ、もし清国が引き続きチベットに於いて攻勢を取る場合には、英国はチベットとの関係を考え直す必要があると言明した。

カメルン土人懲罰 3日上海経由ロイター社発

独逸遠征隊を派遣した結果、カメルン土人の酋長7名が逮捕され、独逸商人殺害事件の共犯者として斬首された。

解説:第1次世界大戦終了後カメルにンは英仏の委任統治領となった。

 

85

西蔵と英国 4日上海経由ロイター社発

1903年より翌年に掛けて、英国のチベット交渉委員であったサー、フランシス、ヤングハスバンド氏は、タイムス社に寄稿し、1904年、ラッサに行った使節の結果は、次第に放棄された。清国人は着々と努力し、再び我々とチベット人との間に入り込んだ。私の経験によれば、清国人は自らその隣人であるインド人に反対する政策を執るか、若しくはチベット人を焚き付け、その様な政策を執らせる傾向があると言明した。

南極探検陸上隊員決定 内国電報4日発

厳密な体格検査 8壮漢2少年

一度南極探検計画が発表されると、船員、隊員の希望者はたちまち300余名に及び、いずれも決死の覚悟をもって、白瀬隊長に迫っていたが、帝国大学内科診察室で厳密な体格検査を行い、甲種合格者の内より、更に白瀬氏が人物検査の上、陸上要員として次の3名を選抜した。

新井嘉平氏 高木吉太郎氏 奥野春治氏

 

8月6日

土耳其の暴乱 5日タイムス社発

コンスタンティノープル来電―公式の算定によれば、ダマガスカス地方に於いて、去る日曜日以後1千名のドルーズ人が殺害された。その上今回更に多数の軍隊が派遣される。

解説:多くのイスラム教徒は、ドルーズ派(シーア派の1派から分派した)はイスラムではないと考えている。

西蔵問題論評 5日上海経由ロイター社発

先年、遠征隊司令官としてチベットに入ったヤングハスパンド少将が、再びロンドンタイムスに寄稿し、チベットに関する英露協約の利益は、清国人が独り占めをしている。チベット人唯一の希望、則ち全て彼らの任意にさせる方針は、決してこれを放棄してはならない。彼らは英露両国に向かって保護を哀訴しているのではないかと論評した。

8月7日

日露協約と英国 6日タイムス社発   

ロンドンタイムスは、その社説に於いて日露協約と満州との関係を次のように論評している。

我々は日露両国と清国との間に従来結ばれていた取り決めに関し、もう少し詳細に説明するよう希望する。満州における英国通商の発達を考えると、英国は今回の日露新協約が第三国に及ぼす影響の度合いについて、曖昧不明な点が無いようにしておく必要があると考える。なお東清鉄道、綿愛鉄道及び川漢鉄道の管理及び敷設条件の決定については、列国が速やかに回答を与え、そして相互の交誼を一層明確にする必要があると論断した。

西蔵問題論評 6日上海経由ロイター社発

佛国の新聞タンは、チベット問題を論評し、清国はチベットに対し、表面上は何処までも保護国の仮面を被っているも、その実チベットに対し、帝国主義を行うと言う野心がある。しかし清国の帝国主義なるものは、隣接する強国の感情を害するような結果を招かずして目的を達するかどうか疑問である。

達頼の声望 5日北京特派員発

前ダライラマは、ナバル国のラマ教徒の間で、非常な人望がある。そして同国民は勇敢なので、一朝この教徒を率いてチベットに入るならば、非常に面倒なことになるとして、支那政府はダライの処分に困惑しており、一部には再度位に就かせるのではとの説もある。

8月9日

印度反乱密謀 8日タイムス社発

ダッカ来電―反乱陰謀事件に関する逮捕が、ベンゴール州の各地で行われた。嫌疑を受け捕縛された者の中には、有力な人物が若干含まれているがその罪名は英帝に対し反旗を翻さんとする行動である。若しくは新法律に違反する行動の諸点にあると思われる。又弾薬製造機械も今回政府の手に捕獲されたとの情報がある。尚印度官憲は、印度各州に亘って存在する英国政治の転覆を図る密謀を首尾良く暴露することが出来た確信している。

8月10日

露国虎病大流行 9日タイムス社発

露国来電―コレラは盛んに諸郡村に蔓延しつつあり。患者数は既に6万5千に上り、死亡者数も又5万になろうとする勢いである。ドニッツ地方の石炭産出は

6割減少し、農業も非常な損害を受けている。

達頼喇嘛復位説 8日北京特派員発

北京政府は、亡国の要求に従い、ダライラマを復位させようと協議中であるとの説がある。

 

明治43年9月

 

明治43年10月

 

明治43年11月

 

明治43年12月