期日 | 日本関係 | 期日 | 露清関係 | 期日 | 英米関連 | 期日 | 独仏その他関連 |
12月1日 | タイムスの論評 | 12月5日 | 日米宣言と清国 | 12月10日 | 欧州移民増加 | 12月1日 | モンテネグロの要求 |
12月3日 | 米国移民報告 | 12月7日 | 露国政府の態度 | 12月11日 | 公果合併と英国 | 12月2日 | 伊太利の排墺運動 |
12月14日 | 晩香坡の亜細亜人排斥熱 | 12月9日 | 伊露黙約成立 | 12月12日 | 米国陸相の国防意見 | 12月3日 | 伊太利外交討議 |
12月16日 | 日米移民問題協定説 | 12月18日 | 露国の墺太利案承諾 | 12月16日 | 印度反乱鎮圧策 | 12月4日 | 佛国海軍の欠点 |
12月23日 | 日本人帰化案 | 12月23日 | 露兵の波斯進撃 | 12月18日 | 獨紙の英国攻撃 | 12月4日 | 墺太利騒櫌 |
12月28日 | マニラ帰客談(長崎) | 12月23日 | ダータネルス問題 | 12月19日 | 印度施政改革案 | 12月5日 | 塞比亜の平和策 |
12月31日 | 排日法案提出 | 12月24日 | 波斯憲政有望 | 12月20日 | 印度革命鎮圧条例 | 12月6日 | 三国同盟危機 |
12月25日 | 露国外相の通牒 | 12月24日 | 巴奈馬運河悲観 | 12月6日 | 佛国海軍弱点暴露問題 | ||
12月28日 | 露国革命党暴動 | 12月26日 | 印度行政改革 | 12月8日 | 佛国提督免職 | ||
12月10日 | 墺貨排斥問題談判 | ||||||
期日 | 独仏その他関連 | 12月10日 | 墺使引揚警告 | ||||
12月22日 | 独逸半官報の所論 | 12月11日 | 墺海軍拡張 | ||||
12月22日 | モンテネグロの墺品排斥 | 12月12日 | 墺国外相の意向 | ||||
12月25日 | 委国革命後聞 | 12月13日 | 独逸宰相演説 | ||||
12月26日 | 形勢益険悪 | 12月14日 | オーストリアの回答 | ||||
12月29日 | 列国会議延期 | 12月15日 | 土墺協議好望 | ||||
12月30日 | 露国外相演説と墺国 | 12月17日 | 二州合併報償案 | ||||
12月31日 | 伊太利の大地震 | 12月17日 | 佛国新植民地 | ||||
12月31日 | 墺国の対露通牒 | 12月19日 | 土国議会開院式勅語 |
明治41年12月
12月1日
タイムスの論評 30日タイムス社発
ロンドンタイムスは、日米両国に対し熱心に祝意を表し、今回の協約成立は、清国の開放主義を確認するものであり、今日まで外国商人が疑いも無く不平を懐き始めていた満州に於いて、真の商工的均等主義が確定された証であろうと期待されている。
巴爾幹時局 30日上海経由ロイター社発
墺国恐慌説否認 ウイーンに於いては、オーストリアが恐慌状態との説を否認し、この説は、モンテネグロ人の銃撃があるかも知れないのでオーストリア人の荷物を運んだ事に起因していると称している。
モンテネグロの要求 モンテネグロは、セツチンエ在住の列国使臣に対し、オーストリアからスピグアの割譲を要求する覚書を送付した。但し同国は、他の報償に対する要求をも放棄する意志は無いという。
12月2日
巴爾幹時局 1日タイムス社発
墺太利の平和的態度
コンスタンチノープル来電―オーストリア政府は、トルコに対し一層協調的な態度を執ると思われる模様である。トルコ駐在オーストリア大使の出発を延期した。
墺国政府の弱味 ウイーン来電ブレーク及びツリエステに於いて政府反対の騒動事件があり、最も注意を引いたのは、外相エーレンタル男爵の政策を痛罵し、英国に対し喝采した事である。警官等は、暴行者を攻撃し、抜剣する事態となった。
伊太利の排墺運動 1日上海経由ロイター社発
ローマに於いて、オーストリア排斥の一大示威運動が行われた。その為に軍隊は、オーストリア大使館に通じる道路の通行を差し止める事になった。
米国艦隊出発 同上
米国艦隊は、マニラを出発し、コロンボの方面に向かった。
12月3日
米国移民報告 2日タイムス社発
ワシントン来電―間もなく発表される予定の商工卿の報告に於いて、同卿は「前年度移民総数は、その前年の143万8千人に対し、92万4千人であった」と説き、且つ日本政府の協力を得て、不法な苦力移民が殆ど皆無となった事に深く満足、感謝の意を表し、同時に又外国移民は、米国の趣味を海外に伝えるので、米国品の輸出を有利にする商業的伝道師であるので、寧ろその増加を喜ぶ旨も陳述する筈
解説:前年度の米国移民は、約100万人であり、日本移民は無くなった様である。清国人と同じ苦力と表現されている。
伊太利外交討議 2日上海経由ロイター社発
ローマのイタリー代議院に於いて、外交問題の討論が行われ、政府の信任投票を行うに当り、激しい攻撃、罵詈が相次ぎ、又バルジライ氏は、オーストリア、伊、独三国同盟成立の際、オーストリアがボスニアを併合する際には、その報償としてイタリアにツレンテロを割譲すると約束したと公言し、大いに人心を動かせた。
12月4日
佛国海軍の欠点 3日タイムス社発
パリー来電―佛国地中海艦隊司令官は、最新戦闘艦6隻が戦闘3時間に及ぶならば、弾薬が欠乏し、戦闘を継続する事が出来なくなるであろう、又弾薬庫の予備が不十分である為、新たに弾薬を補充する事も難しいと語ったとの説が伝わり、人心は大いに激昂した。これについて首相及び海相は、事情を調査中である。
巴爾幹時局 3日上海経由ロイター社発
墺太利の提案 オーストリア大使パルラビシニ氏は、トルコ宰相に会い、今回本国政府からの訓令があったので、ボスニア及びヘルチェゴビナに関し、2個の案を提出する旨を通告した。
墺太利騒櫌 2日ベルリン特約通信社発
アーストリア領プラグ駐在英国領事が侮辱され、又独逸学生等は、その同胞学生がツエク人によって攻撃されたので、プラグに反抗しようとしたが独逸政府がこれを抑えた。因みにプラグに於いては、今回戒厳令が発令された。
12月5日
墺太利騒動鎮静 4日タイムス社発
ブラグ市は静穏に復帰した。これはツエク人及び独逸人が共に戒厳令布告に対して、非常に驚いた結果である。
塞比亜の平和策 同上
ベルグラード来電―セルビア政府は、列国の平和勧告を実行し、各種の挑戦的傾向のある行動を一切排除し始めた。
日米宣言と清国 4日タイムス社発
ロンドンタイムス北京通信員によれば、米国は日米宣言に調印するに先立ち、同宣言を清国外務部に通知し、且つ米国が清国に対する歴史的友好を承認するよう希望した。そして清国は、同宣言に大賛成をした。
解説:カルフォルニア州を中心とする人種差別で、日本よりも早く清国人は全面的に入国禁止となり、以前は、その為に清国全土で米製品の不買運動が行われていた。
12月6日
巴爾幹情勢 5日タイムス社発
三国同盟危機 パリー来電―イタリア代議員の外交問題討議に於いて、イタリアは、今や漸くオーストリア、伊、独三国同盟の精神から離れ、英、露両国の意見に接近し始めている事を表したが、この件は、欧州の人心に深い感動を与えている。有力な外交家等は、オーストリア外相エーレンタール男爵のボスニア、ヘルチェゴビナ併合案は、オーストリアを危険な淵に臨ませ、結局露国政府の活発な干渉を受けるであろうと確信している。
解説:第一次世界大戦に於いて、イタリアは三国同盟を離れ、英露佛を中心とする連合国側に就いた。
佛国海軍弱点暴露問題 5日上海経由ロイター社発
佛国首相クレマンソウ氏は、戦時の会談に於いて、佛国艦隊の砲弾は、規定よりも5割も少ないと言明した地中海艦隊司令官ゼルメニア提督をパリーに召喚し、軍規を破ったとの理由で激しく譴責した。なお同提督は厳罰に処せられるものと思われている。
解説:12月4日「佛国海軍の欠点」の続報
12月7日
巴爾幹時局 5日ペテルスブルグ特派員発
露国政府の態度 露国政府のバルカン政策は、又又一変し、頻りに解決を急ぐようになった。その策としてトルコに賠償金を与え、ボスニア、ヘルチェゴビナ併合を承認させようと現に説得中である。オーストリアは、露英仏及びトルコの承認を予め得る事を条件に、併合問題を列国会議に付する事を承諾した。そしてセルビアとモンテネグロの利益は、第二段に置かれた。これは外債募集上の都合と言われている。
塞比亜の一喜一憂 ベルグラード発電によれば、太子帰国の際には、国民皆歓呼の声を挙げた。しかし3週間後に特使パシツチ氏が帰国して、上下ともに憂色があり、果たして何の兆候か。
12月8日
佛国提督免職 7日タイムス社発
パリー来電―佛国内閣会議は、地中海艦隊司令長官ゼルミネ提督を免職した。但し同提督が新聞記者に対し、不謹慎に佛国戦闘艦隊の弾薬不足を言明した件は、はなはだ良好な結果を生じ、政府にこの欠点の救済を急がせる事になった。
解説:一昨日の記事「佛国海軍弱点暴露問題 」の続報
巴爾幹時局 7日上海経由ロイター社発
墺太利の弁解 ウイーン来電―オーストリアが動員を命じたとの風説を否認する長文の公報の発表があった。同国は、ただ困難が多い国境警備の任務に対して、数団の予備兵を保存して置くのみと言明した。
排墺ボイコット伝播 コンスタンチノープル来電―排オーストリアボイコットは、スミルナを除き、トルコ全土に広がった。
12月9日
波斯国民党檄文 8日タイムス社発
テヘラン来電―ペルシャ国民党は、列国使臣に檄文を送り、列国がペルシャ国民の自由に対する熱望に同情する事を感謝し、且つ若し憲政の拒絶の為に重大な結果を生じる事があれば、ペルシャ宮廷は、実にその責任を負わなければならないと言明した。
メセッド来電―ペルシャ国民党は、官兵を破り、官庁を占領した。
巴爾幹時局 8日上海経由ロイター社発
墺土関係益 近東の情勢は、面白くないと認められ始めている。オーストリア・ボイコットは、少しも減退の模様が無く、オーストリアとトルコ両国の関係は、益々紛糾を極めている。種々取り消されているにも拘らず、両国ともに事変に対する準備をしているのは疑いのない事実である。
伊露黙約成立 別に文書となっていないにもけれども、今回イタリー及びロシア間に黙約が成立し、両国はバルカンに於ける相互の利益問題に声援を与えるであろうと明白に約定したと伝えられている。露都に於いては、満足を以てこの報道を迎え、これに反してウイーンにては非常に不安となり、悩んでいる様である。
12月10日
欧州移民増加 8日紐育特派員発
景気回復と共にヨーロッパからの移民が日に日に増加した。これは景気が挽回した証拠である。
解説:12月3日「米国移民報告」の記事に依ると、昨年度の移民数は、一昨年の143万8千人に対し、92万4千人と減少していた。
巴爾幹時局 9日上海経由ロイター社発
墺貨排斥問題談判 オーストリア大使パルラヴィシニ氏は、トルコ宰相と会見し、オーストリアは、排オーストリア・ボイコットが止み次第、ボスニア及びヘルチェゴビナ問題の決定に関して提案するであろうと通告したのに対し、宰相は、トルコが満足する提案をオーストリアがするならば、ボイコットは直ちに止むであろうと答えた。
巴爾幹時局 9日タイムス社発
墺使引揚警告 コンスタンチノープル来電―オーストリア大使は、トルコのオーストリア製品のボイコット運動が依然として継続している件に関して、トルコ宰相に向け、強硬な談判を試み、又同政府がボイコットを中止させる事ができないならば、断固としてコンスタンチノープルを引き揚げる旨言明したと信じられている。一般人民の意向は、ボイコット継続に賛成である。
佛国海軍の弱点 同上
パリー来電―代議員に於いて、地中海艦隊司令官ゼルミネ将軍が、海軍の現状について悲観的意見を発表した為に休職となった件について、長時間に亙って討論が行われた。世論は、今回の処罰は厳格過ぎると認めている。但し首相クレマンソー氏は、最近の海軍軍人の無責任な言動を中止させ、規律を維持する政府の方針を語を極めて弁護した。なお代議員は、遠からず海軍の現状に関する海相の報告を得る筈である。又政府は、信任投票を求めたのに355票対142票で政府が勝利した。
12月11日
墺海軍拡張 10日タイムス社発
ウイーン来電ーオーストリアは、ツリエステ港に於いて、2万トンの戦艦を若干建造する計画がある旨発表された。又この内3隻は、現在建造中の1万4千6百トンの軍艦が進水式を挙行した後、直ちに建造される筈
解説:映画「サウンド オブ ミュージック」の父親は海軍大佐トラップであり、1930年当時オーストリアはアドリア海に海軍基地を持っていた。
公果合併と英国 10日上海経由ロイター社発
英国外務次官マクキンノン、ウツド氏は、下院に於いて議員の質問に答えて、英国は、未だベルギーのコンゴ併合を承認するに至っていないが、但しベルギーは、国際貿易の自由、その他コンゴがベルリン協約の下に負っている義務を順守すると誓約したと言明した。
解説:当初コンゴは、国王の私有地であり、象牙やゴムの採集が不足した現地住民の手足を切断する等の圧政が欧州諸国の非難の的となった。その為1908年ベルギー政府が国王からコンゴを買い取っている。
12月12日
巴爾幹時局 11日タイムス社発
墺太利の回答 露都来電―オーストリアは、バルカン問題の列国会議に関する露の通牒に対して、極めて協調的な意向を示す回答を与え、その為に平和の望みが一層大きくなってきた。
墺国外相の意向 ウイーン来電―墺国外相エノレンタール男爵は、暫くトルコのオーストリア貨物の排斥を黙認し、ボスニア、ヘルチェゴビナ併合に対するトルコの金銭的報償を考究しようとする意向の様である。国民の意見は、トルコ、オーストリア間に速やかな協定が成立する事を希望している。
米国陸相の国防意見 10日桑港特派員発
陸軍卿ライト氏は、議会へ提出した同省の予算に説明を加え、若し一等国との戦争があるとすれば、35万人の内地防禦軍を要する為、現在の常備軍の外に、25万人以上の国民軍を十分訓練する必要があると説き、その為議会が同予算を可決する事を求めた。
12月13日
独逸宰相演説 11日上海経由ロイター社発
独逸宰相ビューロー公は、帝国議会に於いて次の様な演説を行った。
軍備制限は望ましいことであるが実行は極めて困難であるのみならず、独逸は軍事上、世界に於いて最も不利な地位に立っている。そして外国の情勢は、何時どのように変化するか知れず、その場合に若し独逸の軍備が欧州の情勢が要求する標準以下にあるならば、独逸の安寧は非常に危険な状態に陥るであろうと言明し、更に進んで、オーストリアの時局に対する非難を反撃し、独逸があくまで同盟国(オーストリア)に対する義務を尊重する事を明白に宣言する事は、平和の為に尽くす最良の方法であると断言した。
解説:独逸は西にフランス、東にロシアと国境を接しており、戦争の場合には二正面作戦を行わざるを得なかった。これが独逸は世界に於いて最も不利な地位の意味である。
米艦隊修繕費 11日紐育特派員発
世界一周の米国大艦隊は、帰国後直ちに修理に取り掛かるとの事であり、その資金として、政府から議会に4百万ドル要求した。
解説:10月19日「米艦来」の記事にある様に、米国大西洋艦隊が昨年12月から世界一周の航海を行っている。
12月14日
巴爾幹時局 12日上海経由ロイター社発
オーストリアの回答 オーストリアは、最近露国側の通牒に回答し、仮条約を以てオーストリアのボスニア併合を承認させる為に列国間で協議を行い、且つこの仮条約を近東問題列国会議に提出する事とし、以てオーストリアの体面を全うさせる事を提議した。
晩香坡の亜細亜人排斥熱 13日上海経由ロイター社発
バンクーバーに於いて有志大会があり、中央政府に対しカナダの日英条約加入を取り消し、且つアジア人排斥法案を通過させるよう主張する決議を行った。
12月15日
加奈陀と支那人 14日タイムス社発
オタワ来電―カナダ政府の代表者は、来る2月上海に赴き、清国移民の非常な増加に関し調査する事になっている。
巴爾幹時局 14日上海経由ロイター社発
土墺協議好望 オーストリア半官的の報道する所に依れば、トルコは、オーストリアの貨物排斥を停止させる為に、全力を尽くす事を約束し、又オーストリアは、ボスニア、ヘルチェゴビナ併合に対し、報償を与える意志を以てトルコと協議をするであろうと言っている。
12月16日
印度反乱鎮圧策 15日タイムス社発
カルカッタ来電―新即決裁判法に対しては、土民の手になる諸新聞も反対を唱えるものは少ない。又ボンベイの諸新聞は、革命党が乱暴な手段を執るに至ったならば、この様な方法が効果的であるとみなし、誠心誠意これに賛成している。なおペンゴールの警察に於いては、過激な煽動家を若干捕縛し始めている。
巴奈馬運河悲観説 同上
パリー来電―パナマ運河の技師ブナウ、ヴァリルラ氏は、現在米国の運河開削工事計画は、カタム堤防が堅固でない為に失敗する事疑いなしと考えている。
解説:パナマ運河は、1879年レセップスが着手したが失敗し、結局米国の手で1914年開通している。
日米移民問題協定説 14日紐育特派員発
ワシントン来電のよれば、日本政府との移民問題協定は完全に解決した。小村外相は、米国移民厳禁の次第を日本議会の劈頭に言明すると思われる。これは米国外交の勝利を意味すると述べている。
12月17日
巴爾幹時局 16日上海経由ロイター社発
二州合併報償案
オーストリア大使は、トルコ宰相と会見し、ボスニア及びヘルチェゴビナ併合に対する報償として、オーストリアはトルコが関税を1割5分に引き上げる件を承諾し(これにはドイツも同意する)トルコに於けるオールトリア郵便局の廃止、アルバニアのローマ教徒に対するオーストリアの保護権撤去、ノヴィバサル領土保全保障に同意すると提議し、又トルコの公債に対するボスニア及びヘルチェゴビナの割り当てに対しても報償するであろうと暗示した。
巴奈馬運河と大統領 15日桑港特派員発
大統領ロ氏は、15日上院に覚書を送り、パナマ運河事件に関する諸新聞の攻撃に反駁し、名誉棄損の訴訟を起こす意向であると宣言した。
解説:昨日の記事に対する大統領の反論である。
佛国新植民地 15日ベルリン特約通信社発
佛国議会は、マダガスカルの北西にあるコモロ群島を佛国植民地であると宣言した。
解説:列強による植民地宣言である。住民は紀元前四世紀頃この島に移住し、混血した諸民族の子孫で現在の人口は約十七万人。中世代の怪魚シーラカンスが、近くのモザムビク海峡で発見されている。現在もフランス自治領
12月18日
巴爾幹時局 17日タイムス社発
獨紙の英国攻撃
ベルリン来電―諸新聞が連合して、英国に対し世人の疑念を惹起させようと努力し始めており、この兆候は、日を経ると共にますます明白となっている。英国政府は、オーストリアとトルコ間の協定を妨害し、欧州列国の不和、紛争により自ら利益する目的を持って、近東の紛争を扇動していると攻撃され始めている。
運河腐敗問題と大統領 17日上海経由ロイター社発
米国大統領ルーズベルト氏は、国会に特別教書を送り、パナマ運河の購買に関し不正行為があったとの説を猛烈に攻撃した。これは同件に関係する個人及び米国政府に対する悪質な名誉棄損に外ならず、真の罪人は、この説を掲載したニューヨーク・ウオールド主筆ブリッテルである。この極悪人である米国人に正当な裁判を受けさせる事は、重大な国民的義務であると言明した。
解説:昨日の記事の続報
巴爾幹時局 同上
露国の墺太利案承諾 ロンドンタイムス露都通信に依れば、露国は佛英両国と協議の後、オーストリアがボスニア、ヘルチェゴビナ併合に関し、列国政府と意見を交換したいとの提議を承諾した。但しこれはただ手続きに関係するのみであり、列国会議議題に影響を及ぼすものではないとの事である。
12月19日
印度施政改革案 18日タイムス社発
インド政府の提出した憲政改革案の主要点は、各州の立法議会の議員を増加し、官吏で議員である者を過半数としない事であり、又インド事務大臣モーレー卿は、各州の司法諮問会及び行政諮問会の議員に土人を任用する事を提議した。この提議については、上院議員ランスダウン候、ママクドネル卿及びタイムス新聞社等の異議があった。
土国議会開院式勅語 18日上海経由ロイター社発
トルコ皇帝は、公式馬車にて議会に親臨し、開院式を挙行した。皇帝は、途中市民の歓呼、喝采を受け、議会に於いては自ら勅語を朗読し、かって施行しようとして出来なかった憲政の実施を喜ばれ、ブルガリアの背信及びオーストリアとハンガリが国際信義に反して二州を併合した事を遺憾とし、最後に友邦の尽力により、これらの問題は、平和に都合よく解決されるであろうと期待すると宣下された。
巴爾幹問題と露国 17日ペテルスブルグ特派員発
露国政府は、16日秘密裏にオーストリア政府へ回答を送った。その回答に於いて露国は、オーストリアの提案を入れ、同国が併合問題について予め関係列国と協議を遂げ、この様にして求めて意見を当日開かれる列国会議の基礎とする事に同意した。
12月20日
印度革命鎮圧条例 19日タイムス社発
ボンベイ来電―革命の鎮圧を目的とする新条例は、予想されたより相当寛大で、自由であった。官吏社会はその効果を信用し、これを迎え、又責任ある地位を占めるインド人等もこれを歓迎した。
米国海軍弁護 同上
ニューヨーク来電―退役海軍少将エヴンス氏は、米国戦艦の能力を攻撃する批評家に答えて、米国軍艦は、一艦と一艦を比較すれば、海上に浮かべる何れの軍艦にも劣っていないと言明した。
12月21日
澳門問題形勢 20日上海経由ロイター社発
リスボン来電―ポルトガル、清両国間は、別に何等の意見の衝突も無く、マカオ海境線を設定する協議が無事進行中である旨当地で発表された。
桑港東洋間新航路 19日桑港特派員発
北ドイツロイド汽船会社は、明春よりサンフランシスコと東洋間の航路を開始する契約書に調印した。この航路は、間もなく発足する予定の西太平洋鉄道会社線と接続する為、当然、サンフランシスコと東洋間航路の諸汽船会社との競争を引き起こすであろう。従って米国太平洋汽船会社に対する航路補助金の支給が必要になるものと思われる。
巴爾幹時局 21日タイムス社発
独逸半官報の所論 ベルリン来電―ドイツの半官報は、一方ではトルコに対するドイツの同情が深い事を熱心に述べながら、他方ではオーストリアがボスニア及びヘルチェゴビナ2州を併合するのは、ただ自国の利益や権利を防護するに過ぎないと公言している。蓋しドイツは明らかに策略を弄んでいる。
巴爾幹時局 21日上海経由ロイター社発
モンテネグロの墺品排斥 モンテネグロの国の商人等は、オーストリアの貨物に対しボイコットを始めようとしている。
解説:モンテネグロ人は、ロシア人やオーストリアと激しく対立しているセルビア人と同じスラブ系に属する。
土王詔勅と墺太利
去る18日、議会に下せるトルコ国王の詔勅の中で、オーストリアに言及した論調は、ウイーン政府の憤怒を買っている。但しオーストリア政府は、排オーストリア・ボイコットを中止させようと努力中である為、トルコとオーストリアとの協議には影響は無いものと思われる。なおオーストリアがトルコ政府に送った文書に於いて、最近ボイコットに関連して幾つかの暴行が発生している事を非難している。
ダライラマは、21日朝出発し、チベットへ帰国の途についた。なおチベット行政上、ダライラマの権限に関する清国政府との交渉問題は、未だ解説していないようである。
12月23日
日本人帰化案 21日桑港特派員発
日本人に帰化權を付与する議案が、今期米国議会に提出されるであろうとの説がある。その為当地のアジア人排斥協会は、大いに狼狽し、単に帰化權付与に反対するのみならず日本人は、支那人同様に排斥法律を制定しなければならないとの長文の請願書を上院に送った。
露兵の波斯進撃 21日ベルリン特約通信社発
露国政府は、ペルシャのタブリッツ市をペルシャ国王の手に回復する為に、ロシア兵にアセルバイドシャンを占領させる件に就いて、英国政府の意向を探り始めている。ロンドンにおいては、この件がいよいよ実行されるであろう情勢にあると伝えられている。
解説:当時のペルシャは、北半分はロシアの、南半分は英国の勢力下にあった。
巴爾幹時局 同上
ダータネルス問題
ロンドンよりの報道に依れば、英国政府は、東方問題列国会議の決議によって、ダータネルス海峡を開放しようとする露国政府の希望に反対したと言われている。
解説:ダータネルス海峡は、黒海と地中海を結ぶ重要な海峡であり、ロシアは自由に軍艦を通航させる事を希望し、英国は制限を望んでいる。
12月24日
波斯憲政有望 22日タイムス社発
テヘラン来電―英露は、依然として憲法問題についてペルシャ王に圧迫を継続し、ペルシャ王もようやく軟化しようとしている。有力な守旧派は、ようやく勢力を失う兆候がある。
北阿佛国軍隊減員 同上
パリー来電―佛国は、モロッコのカサブランカ及びアルゼリア国境の駐屯軍隊の大幅な減員を決行した。なお過去2年間の臨時戦費は2百万ポンドに上るようである。
巴奈馬運河悲観 22日紐育特派員発
タフト氏は、1月早々にパナマ運河工事の視察に赴く事になった。パナマ運河工事が予定の様に進捗しない原因は、無論今日までの工事に不完全な点が多かった事であり、前途が非常に気遣われ、その為大統領の努力で、熟練の技師を送り、更に調査を行わせる事になっている。しかし昨今非難の声が高い為にタフト氏が現地を視察する事になった。そして確実な調査によれば、予算の2倍の大金を投じなければ、到底工事の竣工を期し難く、又この様な大金を投じても予定どおり成功するか否やは疑問である故に、タフト氏内閣の第1に苦心するのはこの問題になるであろうと言える。
解説:パナマ運河工事には、土木工事という技術的な問題の外に蚊が媒介する黄熱病という問題があり、米国は陸軍を投入すると共に、現在のお金で16兆円の総工事費と8百億円の黄熱病等の対策費を投じて、1914年になって完成させている。
清国と西蔵行政 24日タイムス社発
北京来電―清国は自らチベットを支配する主権国である旨を布告した。その結果、清国は将来チベットの政治について全責任から逃れられる事ができないと思われる。
委国革命と米国 同上
ワシントン来電―米国政府は、大統領カストロ氏の帰国を禁じ、米国と友好的関係を再開しようとする革命政府をヴェネズエラに成立させる為に、十分な援助を与える意向である。
委国革命後聞 同上
現在病気と称してベルリンを訪問中である「アンデスの奈翁」と言われたヴェネズエラ大統領カストロ氏は、本国に帰らないであろうと一般に考えられ始めている。既にヴェネズエラ大統領ゴメス氏は、カストロ派の官吏を皆免職させ、且つしばしばカストロ氏の侮辱を受けた列国と友好的関係を再開したい希望があると宣言した。
巴爾幹時局 24日上海経由ロイター社発
露国外相の通牒 露国外相イズウオスキー氏は、オーストリアの2州併合に関し、予め列国の意見を交換したいとのオーストリアの提議に就いて、通帳を列国に送った。今日までの主要な難問題は、ロシアとオーストリア両国の意見が一致しない事にある。露国は列国会議を単にオーストリア及びトルコ間の協約を是認させる事に止めようとの提議に同意する事は出来ない。列国会議は、きちんとボスニア方面の関係を明言する事が必要である。今回オーストリアの新提議は、多大の不便を生じる恐れがあり、露庫は友好を欲するが故に、これに反対すると明言した。
12月26日
印度行政改革 25日タイムス社発
カルカッタ来電―ベンガル人の代表者は、インド総督を訪問し、インド行政改革案の実行について、忠実にこれと協力する旨を確約した。これはインドの官民間の隔離の旧政策が放棄された徴証である。又この代表者等は、各方面を十分に代表しており、過激派の新聞記者もこれに加わっている。
巴爾幹時局 同上
形勢益険悪 ウイーン来電―今回露国が列国に送った通牒は、オーストリアに対し友愛に欠ける行動であると認められる。諸新聞は、通牒は列国会議の機会を失わせようとする企てであり、オーストリアは、ボスニア及びヘルチェゴビナのようなオーストリアの内政問題に欧州列国の干渉を許す事はできないと主張している。
ロンドンタイムスは、最近の地平線は非常に暗黒であると言明している。
解説:第一次世界大戦まで6年の情勢である。
12月27日
露国外相演説 26日タイムス社発
露都来電―露都外相イズウオルスキー氏は、国民議会に於ける演説の中で、日米協約の成立を祝して、これは更に一つの平和保障を加えたものであると説き、又露国はペルシャの内政に干渉する意志は無く、ただ英国と何処までも協同してペルシャとの歴史的及び商業的関係を維持しようと欲するのみであると言明した。
波斯政局現情 同上
テヘラン来電―ペルシャの情勢は益々暗くなっている。宮廷派は暗に新選挙法はイスラム教の教義に違反するものであるとの意見を表明している。又トルコに非難している国民党員等は、一層自由主義の憲法が発布されるまでは、トルコ大使館を去らないと主張している。
巴爾幹時局 25日上海経由ロイター社発
露国下院の決議 露国国民議会は、露人と血族を同じくするセルビア、モンテネグロ等のスラブ民族に深甚な同情を表し、且つ政府が彼らの利益を保護する事を希望する決議案を可決した。
解説:第一次世界大戦が発火した原因はこの血であり、オーストリア、ハンガリーの皇太子がボスニア系セルビア人によって暗殺されている。第一次世界大戦まで6年であり、この民族感情が高まっていく。
12月28日
露国革命党暴動 26日桑港特派員発
露国モスクワに於いて革命党員等が一揆を起こし、警察力で鎮圧する事ができず、軍隊が出動して遂に実戦となり、砲兵を繰り出して漸く鎮圧する事ができた。その際警視総監コツツ男爵、ムラチー大佐以下数十名が死傷し、1905年12月以来の大暴動となった様である。
解説:第1次ロシア革命の大騒動は1905年1月22日(日)であり、12月は誤りと思われる。
労働同盟総理特赦 同上
大統領ルーズベルト氏は、米国各地労働同盟員の請願に依り、先般法廷侮辱罪で重罪の判決を受けた米国労働同盟総理ゴンバスキー等を特赦する事に決定したが、その特赦の理由に苦慮していると
解説:この当時、既に力を持った労働組合が存在しており、排日運動の中心は労働組合であった。
マニラ帰客談(長崎) 内国電報
27日入港したマニラから帰国した客の談によると、一時噂された革命党も最近は鎮静化し、首領アギナルドは現在田舎に隠退し、農業に従事し、何らの野心も無い様である。但し一部の人々は彼の現在の状況を何か意味があるものと思っている。
解説:スペインからの独立運動をしていたアギナルドは、米西戦争が始まるとアメリカと独立援助の密約を取り付け、マニラ湾海戦での米艦隊の大勝利の後、1898年6月12日
独立宣言をした(現在のフィリピン独立記念日)。その後アメリカはフィリピンを植民地とする為に米比戦争となり、アギナルトは一時捕虜となっていた。
12月29日
露国外相演説論評 28日タイムス社発
露都来電―露都諸新聞は、外相イズヴオルスキー氏が議会に於いて行った露国外交関係、中でも英国との関係の論評を是認し、且つバルカンのスラブ諸国とトルコとの商業的、政治的合同の主張に賛成した。但しそのボスニア及びヘルチェゴビナの運命につき沈黙を守った事に対しては、非常に失望した様であった。
解説:12月27日の記事の続報
巴爾幹時局 26日ベルリン特約通信社発
列国会議延期 露国が列国会議に送った通牒は、ボスニア及びヘルチェゴビナ併合に対し、欧州の許諾が必要な事を切言し、且つ列国会議を容易にさせる為に会議前に列国協議を行う件に同意している。但しオーストリアが列国会議以前に協定の方法について、ベルリン条約の調印諸国全体と協議する事を希望したので、露国は、列国会議をオーストリアがこれら諸国に通牒を送るまで延期するべきと言っている様である。
12月30日
巴爾幹政局現情 29日タイムス社発
テヘラン来電―ペルシャの守旧党員等は、昨年自分達の計画が失敗した際に行ったと同様の騒動を起こそうとしている。又ペルシャ国王は、その財宝を露国銀行へ質入れしたとの説がある。
露都来電―ペルシャ国王は、リアコフ大佐は自己の保護に欠くべからざる人物であるとして露国政府に哀訴したが、その結果露帝は、同大佐を召喚しない事に決定し、同大佐は、露国陸軍を辞する条件の下でペルシャに滞在する事を許されたとの説がある。
巴爾幹時局 28日ベルリン特約通信社発
露国外相演説と墺国 オーストリアに於いては、露国国民議会に於ける外相イスヴォルスキー氏の演説は、以前の露国外交文書を一層緩和したものと認められ始めている。オーストリア政府は、同外相がボスニア及びヘルチェゴビナ両州の併合に抗議せず、又両州の自治を要求しなくて、反対に露国のオーストリアに対する義務を承認した事に対し、大いに満足している。
12月31日
伊太利の大地震 30日タイムス社発
ローマー来電―今回の地震は、驚くべき激震であり、死者7万5千に上る恐れがある。メッシナ市は、火災の為に殆ど全てが破壊され、メッシナ海峡両岸に位置する村落の多数は崩壊し、灯台は使用不能となっている。カラブリアの諸市町村も破壊されている。
英露両国海軍は、政府を援け、兵士、天幕、糧食等を輸送し始めており、イタリア皇帝は、皇后と共にシシリーに赴かれた。又レツギノ海岸の構造に変動をもたらしたのではと憂慮されている。
巴爾幹時局 29日上海経由ロイター社発
墺国の対露通牒 オーストリアは、12月24日付露国の回答に対し更に通牒を送り、ボスニア及びヘルチェゴビナにオーストリア皇帝の主権を及ぼし、イバザルより撤兵する件は、列国会議に於いて討議しなければならない問題ではないと述べ、トルコ及びオーストリア間における黙契の協議を吹聴し、列国会議は唯両国の協定を容認し、ベルリン条約25条を削除すべきであるとのみ主張し、最後にオーストリアは、セルビア及びモンテネグロに対する補償問題を討議する意志があると言明した。
排日法案提出 29日桑港特派員発
前期の州議会にも日本人排斥法案を提出した下院議員ジョンソン氏は、1月早々に開会されるカルフォルニア州議会に、日本人の営業を廃滅させる目的で、殆ど全ての日本人の事業が会社組織であるので、日本人が会社の重役である事を禁止する法律案を提出すると言われている。同案には日本人の土地所有及び借地を禁止する条項も含まれている。