明治38年6月の世界情勢

主要記事

        期日 日本関係        期日 露関係         期日 英米関連          期日 その他
6月1日 御安心ありたし 6月6日 マニラ竄入 6月1日 日本の大勝と欧州 6月9日 スエーデンからの分離
6月1日 敵帥傷所 6月8日 海戦俘虜総数  6月2日 市場好人気  6月17日 モロッコと佛国
6月2日 捕虜提督病状 6月9日 露国革命難 6月2日 大捷と列国新聞 6月20日 モロッコ問題愈重大
6月5日 佐世保病院内初会見 6月25日 極東総督府廃止  6月3日 捷聞と米国興論 6月21日 モロッコ問題 
6月9日 敵将自殺せんとす     6月12日 講和通牒 6月24日 ポーランドの惨劇
6月14日 七博士一派の講和条件     6月14日 媾和と英国  6月28日 佛国陸相の壮語
6月21日 日本の回答     6月19日 媾和観     
        6月23日 支那人の対米反抗    
        6月28日 媾和予備情報     
        6月30日 米国と清国人    

世界情勢

 

東京朝日新聞明治三十八年六月一(木)

御安心ありたし 連合艦隊司令長官は30日「安心ありたし」との電報を送ってきた

敵帥傷所 体温,脈拍とも異常なく現在脳病があると認められない

日本の大勝と欧州 トラファルガー海戦以来未だかって見たことがない

御安心ありたし

今回の大海戦が将に開かれようとしている時「敵艦見ゆとの警報に接し連合艦隊は直ちに出動之を撃滅せんとす」の電報が東郷大将から到達するや、海軍大臣、軍令部長は直ちに連名で同大将に「連合艦隊の絶大なる成功を祈る」との電報を発し、連合艦隊司令長官は30日大臣、部長に向かい「敵の第1,第2艦隊の主力は殆ど全滅せしに付き御安心ありたし」との電報を送ってきた。

敵帥傷所

司令長官ロジェストウェンスキーは30日佐世保病院に収容されたが、その負傷は頭部の挫創であり、前頭骨の外板の一部が欠損している。内板の異常の有無は不明であるが体温,脈拍とも異常なく現在脳病があると認められない。その他3箇所に負傷があるが何れも軽微である。

日本の大勝と欧州 30日ロンドン特約通信員発

英国及び大陸諸国の新聞は東郷大将の勲功を賞揚している。これをネルソンの功業と対比してその勝利の至れり尽くせる点、その効果の重要な点、その戦略上に及ぼす影響の大なる点に於いてはトラファルガー海戦以来未だかって見たことがないと書いている。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月二日(金)

露紙既に叩頭す 対馬沖の海戦は現在の戦争の行方を決定する

市場好人気 日本の公債は引き続き騰貴している

平和の希望 平和への希望は漸く勢いを得てきた  

捕虜提督病状 ロジェストウェンスキー提督の負傷は前額部の骨が砲弾で挫けている 

大捷と列国新聞 文明各国新聞紙は皆露国が望みの無い戦争を止めるべきと主張している 

露紙既に叩頭す 1日上海経由ロンドンルータ社発

ピータースブルグにあるブールス、ガゼット新聞は、対馬沖の海戦は現在の戦争の行方を決定し、歴史上の新局面を開くものと論じている。

市場好人気 (同上)

その後の電報によれば市場は彷彿として浮き立ち、日本の公債は引き続き騰貴しており、現に開戦以来5ポイントと上昇している。

平和の希望 (同上)

佛国新聞の熱心な主張で、平和への希望は漸く勢いを得てきた。

捕虜提督病状 31日佐世保特派員発電

ロジェストウェンスキー提督の負傷は、前額部の骨が砲弾で挫け、背中及び左腿、右脚にも砲弾創を受けている。しかし診断によれば生命に別状は無いと思われる。参謀長クラビエフロフ大佐も軽傷を負い入院中である。

大捷と列国新聞 31日ロンドン特約通信員発

文明各国新聞紙は、皆露国が望みの無い戦争を止めるべきであると主張している。但し大陸の新聞紙の中には、再び黄禍論を唱えはじめたところもあるが、英国の新聞は、今回の戦争の結果として、日本が当然得るべきものを奪う事には、英国が反対することを明確にしている。

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東京朝日新聞明治三十八年六月三日(土)

捷聞と米国興論 日本が露国艦隊を殲滅したことは世界の歴史にもその類例を見ない

捷聞と米国興論

530日発刊のニューヨークサンによれば、日本が露国艦隊を殲滅し、事実上同国の海軍力を砕破した事は、海軍史は云うを待たず、世界の歴史にもその類例を見ない偉業と言っても過言ではない。日本が文明世界に対し開国したのは、今から僅かに50年前の事であり、ヨーロッパ文明を採用して未だ25年を出ない。そしてやや見るべき海軍を有するにようになってから、未だ10年の星霜を経ただけであるのに、ここに一躍して世界海軍国の首班に列することとなった。

欧州諸国の中で優れた海軍力を持つ英国の他、日本と同じような結果を得る事のできる国がありや否や。そして日本が今回の勝利に乗じていよいよ発達していくと、英国といえどもあまり遠くない将来其の後に付かざるを得なくなる可能性がある。

東京朝日新聞明治三十八年六月四日(日)

武装解除決定 露艦はいずれも既に武装を解くための一切の準備を終わり

獨船の中立厳守 ハンブルグ・アメリカ汽船会社は「ロジェストウェンスキー」の艦隊に随行した事は無いと述べた

武装解除決定 2日上海特派員発

露艦の武装解除について、我が小田切領事が昨日道臺(どうだい)に向かい、本日正午までは猶予を与える旨私信を送っていたが、聞くところによれば呉淞(うーすん)の露艦はいずれも既に武装を解くための一切の準備を終わり、潮位が高まるのを待って、上海に入港する予定であり、事実上この問題は解決した。

獨船の中立厳守 2日ベルリン特約通信社発

ハンブルグ・アメリカ汽船会社は、最近数カ月は我が会社の汽船を売却した事は無く、又現在も売る意思は無く、独逸の運送船は「ロジェストウェンスキー」の艦隊に随行した事は無いと述べた。

東京朝日新聞明治三十八年六月五日(月)

日英同盟拡充 、英国外務大臣「我らの意見は、あくまでもこの継続を考えなければならない」

佐世保病院内初会見 東郷大将は、後二時「ロジェストウェンスキー」提督を病院に訪問した

 

日英同盟拡充 4日上海経由ロンドン ルータス社発

保守党の主宰する晩餐会の席上で、英国外務大臣「ランスダウン」侯は日英同盟継続に関して次のように述べた。

「我らの意見は、期限の到来次第、あくまでもこの継続を考えなければならないとするものである。ただこの際考慮すべき実際問題は、この同盟条約を現在の形のままに継続するか、又は更に一層これを堅固にし、且つ凝結させるべきある種の手段を求める必要があるのではないか、という点にある。何れにせよこの同盟は、有力な平和の手段にする必要があり、若し可能であれば今後、これを以て単に大火の延焼を防止させるのみならず、世に一切の大火の跡を根絶するようこれを改正する必要がある」

佐世保病院内初会見 3日佐世保特派員発電

東郷大将は通訳として山本大尉を従え、午後二時「ロジェストウェンスキー」提督を病院に訪問した。

提督は重傷にもかかわらず、身を起して慇懃に之を迎えた。

この時東郷大将は礼を厚くして次の様に告げた。

「戦闘の常とは言え、貴君が今回負傷された事は本官の最も痛嘆に堪えない所であります。殊に当病院は捕虜収容所でないので、万事不自由な点が多いと思いますが、貴君幸いにこの意を諒として、一日も早く快癒の上、本国に帰還されるよう切望します」と言葉を尽くして慰安された。

これに対して「ロジェストウェンスキー」提督は厚遇に感謝し、さらに感慨に堪えない風に、しばし感涙に咽ばれた後「貴国艦隊が最も精鋭で有力であることは、本官の敬服する所であり、貴官の丁重な訪問に接した事は、又余の無上の光栄とする所であります。ここに謹んで貴官の健康を祝します」と答えた。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月六日(火)

露使と米国大統領 昨日の会談は、何ら実際的な結果を生じなった

マニラ竄入「オーロラ」、「オレグ」「ゼムチユブ」三艦がマニラに到着した

露使と米国大統領 3日ロンドン特派員発

駐米露国大使カシニー伯と米国大統領ルーズベルト氏との昨日の会談は、何ら実際的な結果を生じる様な事は無かったように思われる。

マニラ竄入(さんにゅう)5日上海経由ロンドンルータス社発電

エンクイスト司令官は「オーロラ」、「オレグ」「ゼムチユブ」三艦を率いて、マニラに到着した。三艦は大損がいを受け、艦内には多数の負傷者がいる。

解説:「オーロラ」は、現在記念艦して、サンクトペテルブルグのネバ川河畔に係留されており、観光名所となっている。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月七日(水)

努力倍加の続戦 海陸軍両省は、此の上その努力を倍加して戦争を継続せんとする由を明言

英国の同盟拡張論 タイムスは同盟の範囲及び基礎を拡張すべきと唱えて

マニラの露艦 エンクイスト提督は、マニラに避難した露艦を修理することを願い出た

努力倍加の続戦 5日ロンドン特約通信員発

セントピータースブルグに於いては、依然として鬼面人を威嚇するような態度が継続している。海陸軍両省は、此の上その努力を倍加して、戦争を継続せんとする由を明言し、そのためには更に20万の兵を満州に向かって増派しようとする計画があり、またバルト海沿岸の諸造船所は新艦隊を準備すべき命令を受けた等と言っている。

 

英国の同盟拡張論 5日ロンドン特約通信員発

日英同盟はますます世人の注意を引いており、タイムスは同盟の範囲及び基礎を拡張すべきと唱えて「将来アジアに於ける平和の維持は、日英同盟を三国同盟条約及び露佛同盟条約と同様な条約とする事により確保されるであろう」と述べている。

マニラの露艦 5日ロンドン特約通信員発

エンクイスト提督は、マニラに避難した露艦を修理することを願い出た。米国官吏は「オレグ」は2カ月、「オーロラ」は1カ月、「ゼムチユブ」は7日掛かるであろうと報告した。

提督の語る所によれば、彼は27日の晩、戦場を去ったため、戦闘が翌日も継続した事を知らなかった。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月八日(木)

海戦俘虜総数  6,142名

海戦俘虜総数 

日本海海戦に於ける俘虜の総数は、次のごとし

総員数               6,142名

収容所へ送付済みのもの       5,420名

鎮守府及び対馬警備隊に現在するもの   582名

解放される予定のもの          137名

死亡したもの                3名

上記の他、僧侶及び衛生部員で既に解放されたもの69名いた。

東京朝日新聞明治三十八年六月九日(金)

海戦余聞 敵将自殺せんとす 「ネボガートフ」少将は腰からピストルを出して、自殺をしようとした

 

海戦余聞 敵将自殺せんとす

「ネボガートフ」少将が一時笠置艦に収容されたが、我が山屋艦長は彼と握手して、慇懃に慰めた。彼は身長が高く、豊かな頬、鋭い眼、豊かな髭を蓄え、風采は頗る立派であった。身には海軍少将の略服を着ていた。挙動は非常に沈着であったが腰からピストルを出して、自殺をしようとした。山屋艦長及び機関長が飛びつきピストルを取り上げたと言われている。

解説:「ネボガートフ」少将は、バルチック艦隊の次席指揮官であった。「ロジェストウェンスキー」中将が負傷した後、指揮を引継いだが、528日、日本海軍に降伏した。

山屋艦長とは、海軍大将山屋他人であり、お孫さんの「優美子」さんは、皇太子妃「雅子」さまのお母さんです。

露国革命難

米国連合通信社総取締役メルビル、イーストーン氏がニュヨーク・トリビューン紙に寄せて、露国に於ける革命の困難を論じたものである。

丁度戦争が始まる少し前に、私は露帝に謁見を遂げ、露国の改良すべき施政について言上したが露帝は次のように述べられた。

「露国の改良すべき問題は他の国々とは大分趣が違う。露国人民中一億二千六百万は全くの無学である。無資産の青年が大学に入学し、卒業する。ところがその知識を利用して生計の資を作るべき所が無いので、何時とはなしに不平家となり、革命党となってしまうのである。

国民教育の改良として、我々は成るべく多数の人民を陸軍に採用することを考えたが、これは戦争をする為ではなく、これを教育する為である。自分は軍隊にある者を全員に、初歩の教育を受けさせ、兵役が満期となって除隊するまでに一応読み書きのできるようにしたいと思っている。この様にして初歩の教育と軍隊の訓練とを与えることが出来たなら、これら無知の民を導いて、良い公民にする上で非常に役立つと言わなければならない。

スエーデンからの分離

ノールウエー議会はスエーデンと君主を共にする関係の断絶を宣言し、スエーデン皇族の一人を迎えて君主に奉戴することを皇帝に要請する決議を行い、仮政府を設けた。仮政府はこの決議を皇帝に奏上したが、皇帝は子の処置を裁可しない旨返答をされた。

解説:ノールウェーは、1814年デンマークがスウェーデンに割譲したが、1905年結局スウェーデンとの関係を解消し、ノールウェー王国独立した。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月十日(土)

モスクワ会議  平和と国家の善後策を国民自ら決めなければならないと主張した

スエーデン分割別報 スエーデン王は最早ノールウエー王にあらずといえる決議を行った

モスクワ会議 9日ロンドン特約通信員発

トレボフが禁止したにも拘わらず、モスクワの地方議会連合会は数日続けて開会し、演説者はことごとく平和と国家の善後策を国民自ら決めなければならないと主張した。

スエーデン分割別報 8日上海経由ロンドンルータス発

ノールウエー議会は、スエーデンとの連合を断ち、スエーデン王は最早ノールウエー王にあらずといえる決議を行った。そして現内閣にそれまで国王に属していた統治権を与えようとしている。

                                                                                                             

東京朝日新聞明治三十八年六月十一日(日)

モスコー会議の上奏 自由選挙により人民の代表者を選ぶことを求め

モスコー会議の上奏 10日ベルリン特約通信社発

モスコーに集会した地方会議員及び各市長は露帝に上奏して、和戦の問題を決する為に、自由選挙により人民の代表者を選ぶことを求め、且つ今回の戦争は、全く皇帝の左右の奸臣の過失によるものと言明した。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月十二日(月)

講和通牒 米国大統領ルーズベルト氏は講和の会議を開くよう勧告している

スエーデン分離問題 スエーデン皇帝はノールウエーの運動を革命と認める旨公言した

講和通牒 11日上海経由ロンドンルータス社発

米国大統領ルーズベルト氏は日露両国政府に公文を送った。大統領は、今や全ての人類の為に、この恐るべき悲惨な戦争を終わらせる事が出来るのかどうか、その努力をするべき時が来たとして、北米合衆国は、日本及びロシアに対して友好親善の関係を持っている為に、両国政府に図り、この両大国民の戦争により世界の進歩が阻害される事を認めざるを得ないので、自己の為のみならず文明世界全般の利益の為に、講和の会議を開くよう勧告している。

スエーデン分離問題 10日ベルリン特約通信社発

スエーデン皇帝オスカル二世はノールウエーの運動を革命と認める旨公言した。間もなく開会されるスエーデン議会は本件の解決に何らかの援助を与えるのではと思われる。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月十三日(火)

露廷も和諾 日露両国とも、米国大統領の提議を受け入れた

媾和雑聞 日本の便宜は言うまでの無く、露国大使を日本に迎えることであり

露廷も和諾 11日上海経由ロンドンルータス社発

日露両国とも、米国大統領の提議を受け入れた。ピータスブルグ及び東京の株式は活況を極めた。

媾和雑聞 

日露両国の全権が会合する場所に関しては、直接日露の間で決めるべきか、或いは米国大統領の仲介により双方の希望を交換して、一致する地点を求めるべきか、或いは他の簡便な方法で選定するのか未だ聞いていない。しかし日本の便宜は言うまでの無く、露国大使を日本に迎えることであり、戦勝国の権利は間接、直接にこの問題より使い始められなければならない。

東京朝日新聞明治三十八年六月十四日(水)

媾和と英国 露国が今までの政策と野心を完全に放棄しない限り、平和を得る事は出来ない

七博士一派の講和条件 これは諸氏が一致した最小限度の条件である

媾和と英国 12日ロンドン特約通信員発

両交戦国が共に、媾和談判を開始する意思があるとの報道は、至るところで満足を以て迎えられた。但し露国が太平洋沿岸の一大強国でありたいとする今までの政策と野心を完全に放棄しない限り、到底両国間の平和を得る事は出来ないと英国に於いては見られている。

露帝がこの政策が失敗に帰した事を悟れるかどうかはなお疑わしい。

七博士一派の講和条件

時局問題を研究する博士等の集会に於いて、一昨夜、戸水寛人、岡田朝太郎、中村進午、建部遯吾、松浦厚、渡邊千冬、藏原惟昶等は次の様な相談を行ったがこれは諸氏が一致した最小限度の条件である。

媾和予備条件

一、  媾和談判の場所 日本

一、  休戦 予備条約の締結までは休戦せず、その後は条件を付けて休戦する。

講和条件

一、償金 三十億円

一、土地  

(一) 樺太、カムチャッカのみならず沿海州全部の割譲

(二) 遼東半島に於いて、露国の有する権利を譲渡させること

(三) 満州に関しては、日清両国の決定に従うこと

一、

(一) 東清鉄道及びその敷地の割譲

(二) 以下略

一、国際役務

 以下略

 

東京朝日新聞明治三十八年六月十五日(木)

大統領と清国貿易 清国に於ける米国貿易の為に十分尽力すべき事を約束

会合地未定 ワシントンも満州も共に都合が悪く

ワシントンか東京か 日露両全権がワシントン又は東京に於いて会見する予定であると予想

大統領と清国貿易 14日上海経由ロンドンルータス社発

米国大統領は、米国アジア協会の代表に、清国に於ける米国貿易の為に十分尽力すべき事を約束し、且つそれに関し当局の官吏と打ち合わせをする予定と述べた。アジア協会の代表は清国人排斥問題に関し促す所があった。

会合地未定  14日上海経由ロンドンルータス社発

ワシントン電報によると、日露両国全権委員の会合地は未定であり、ワシントンも満州も共に都合が悪く、米国大統領が或いは仲介者として働くのではと思われる。

ワシントンか東京か 14日ベルリン特約通信社発

ベルリンに於いては、独逸及び米国が日露媾和に関して発議する所があった結果、日露両全権がワシントン又は東京に於いて会見する予定であると予想している。この会見が成立すれば獨米両国はその任務を既に終わったものと認め、特に調停は両国の企図するところではない。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月十六日(金)

清国政府と媾和 列国と共に戦争を調停する意思があると言われている

媾和の観察 人々は媾和問題の前途を楽観している

モロッコと佛国 モロッコの太守は佛国政府に対して断固として処置の通告書を送った

清国政府と媾和 15日上海特派員発

外務部は各国駐在公使に日露媾和に関する各国の意向を確かめて電報するように命じた。又政府が特使を海外に派遣し、列国と共に戦争を調停する意思があると言われている。

昨日慶親王は米国公使と会見した。

媾和の観察 14日ロンドン特約通信員発

パリ―及びワシントンに於いて、人々は媾和問題の前途を楽観している。しかし日露両国が全権委員の任命に就いて、果たして同一の意思を有するや否やは疑わしい。

モロッコと佛国 15日ロンドン特約通信員発

モロッコの太守は佛国政府に対して、フランスた土匪に武器弾薬を供給し続けている事に関し、断固として処置の通告書を送ったと伝えられている。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月十七日(土)

ウイッテ慨言 ウイッテは、露国は政策を一大変更する必要がある旨述べた。

モロッコと佛国 佛国は武器弾薬を王位簒奪者に供給しようとしていると理解されている。

英艦上の椿事 演習中に六インチ弾丸が砲身内に於いて破裂した

ウイッテ慨言 15日ロンドン特約通信員発

ウイッテは露国の要路にある者が今日の形勢を良く理解出来ていないことを嘆き、露国は政策の一大変更をする必要がある旨述べた。

モロッコと佛国 16日ロンドン特約通信員発

モロッコに対する独逸の政略に対抗する意味で、佛国はモロッコ王に供給するはずであった武器弾薬を反対に、その王位簒奪者に供給しようとして頻りに秋波を送っていると理解されている。

英艦上の椿事 16日上海経由ロンドンルータス社発

英国戦闘艦マグニフィヤント号はモロッコ国アナユアノ沖に於いて演習中に六インチ弾丸が砲身内に於いて破裂して、掌砲大尉を始め十八名が負傷した。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月十八日(日)

有期的続戦 ワシントンは日露両国全権委員の会合地として選定された

英艦椿事後報 天候の為、砲弾の薬夾が発火しなかったので、砲尾栓を開いた時、突然爆発が起きた

 

有期的続戦 17日ワシントン特約通信員発

ワシントンは日露両国全権委員の会合地として選定された。但し戦争は議定書が調印されるに至るまで依然継続されるであろう。

英艦椿事後報 16日上海経由ロンドンルータス社発

英国戦艦マグニフィヤントの椿事は、セント、ゼームス停泊中に天候の為、砲弾の薬夾が発火しなかったので、砲尾栓を開いた時、突然爆発が起きた。その為大尉ストーバルキ及び水兵三名の死者を出した。

東京朝日新聞明治三十八年六月十九日(月)

媾和観 日露両全権の集合地が公示されたのは、和議が着々と進みつつある

モロッコ問題 オウストリヤ、伊、米の三国はも又列国会議に参加する旨通告した

露国政変について アレキシス大公及びアヴエラン提督の辞職はいよいよ事実ななったようである

 

媾和観 17日上海経由ロンドンルータス社

ワシントンを日露両全権の集合地に選定した旨が公示されたのは、和議が着々と進みつつある事実を示すものの様に理解することが出来る。そうでなければ談判に就いて何事も発表されるわけがないと一般に言われている。

モロッコ問題 同上

パリ―在住独逸大使ラドリン公は現在ルウヴイエ氏と重要な協議を行っている。

オウストリヤ、伊、米の三国はモロッコに浅からぬ関係がある列国が列国会議の開催の勧誘に応ずるについては、三国も又これに参加する旨通告した。

露国政変について 

最初ワシントン特電が伝えたアレキシス大公(海軍元帥)及びアヴエラン提督の辞職はいよいよ事実ななったようである。但し辞職の原因は日本海海戦により海軍が全滅したため、遂にその地位を保つ事が出来なくなったのではないかと思われる。そして露国主戦派が政治的に一打撃を被ったものと見る事が出来る。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月二十日(火)

独逸海兵の交代 独逸海兵の交代兵約二千名が来着した

露国の国民会議 露国の大臣会議は、国民会議の議会を立法参議院と命名した

ポーランド人決議 ポーランド人は自ら団結して行動することを要すと決議した

モロッコ問題愈重大 佛国外相は、モロッコ問題に関する列国会議を拒絶するのに躊躇している

 

独逸海兵の交代 19日膠州湾特派員発

18日午後二時、独逸海兵の交代兵約二千名がレイン号にて来着した。

露国の国民会議 19日ロンドン特約通信員発

露国の大臣会議は、国民会議に関する制度の原案中、重要な二十五カ条を承認し、その議会を立法参議院と命名した。

ポーランド人決議 同上

ワルシャワに於いて、主要なポーランド人が会合し、現在のロシア政府に対しては、如何なる希望も放棄せざるを得ず、ポーランド人はポーランドの為に自ら団結して行動することを要すと決議した。

モロッコ問題愈重大 18日上海経由ロンドンルータス社発

独逸の圧迫が益々重大になる事、及び独逸の目論見に対する佛国政府の憂慮が益々大きくなる為に、佛国外相ルヴイエ氏は、英国政府から佛国の政策に充分の援助を与えるとの強固な保証を受けているにも拘らず、断然モロッコ問題に関する列国会議を拒絶するのに躊躇していると信じられている。そして英国が進んで積極的に列国会議を拒絶したのは却って、幾分か事態を複雑ならしめた。

佛国の国境諸軍団が兵力を充実し且つ士官の外出を制限した事は今や疑うことのできない事実である。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月二十一日(水)

日本の回答 日本政府の回答書は、冷静にして巧怜(こうれい)、真に辞令の妙を極めている

モロッコ問題 佛国外交官は英国が列国会議に参加するであろうと予想

日本の回答 19日ロンドン特約通信発

媾和談判開始の提議に応じた日本政府の回答書は、冷静にして巧怜(こうれい)、真に辞令の妙を極めている。平和への希望は日本側にあると思わせようとする露国の外交的努力を眼中に於いていない辺りは、未だ何物もかくの如く日本の尊厳を加える所以であると言わざるを得ないと大絶賛を博している。この回答は、益々露国の応ずべき講和条件の如何なるべきかを人々が知りたいと思う気持ちを深くしている。

モロッコ問題 19日べルリン特約通信社発

佛国首相ルウヴイエ氏は外相の椅子を兼務することとなった。

モロッコ問題に関する談判は静かに進行中である。佛国外交官は英国が列国会議に参加するであろうと予想し、佛国新聞の所見も又同じである。

パリ―新聞タンは、半官的に英国の行動は形勢を危険にするものであり、少しも独逸と戦う意思の無い佛国が独逸と戦うのは英国を利することになると述べている。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月二十二日(木)

両国全権会合期 談判は多分八月中旬より開かれると思われる

露帝と国民議会 連合地方議会の委員は、完全に公の資格で露帝に謁見した

両国全権会合期 21日ワシントン特約通信員発

日本の全権委員は八月初旬にワシントンに到着の予定である。談判は多分八月中旬より開かれると思われる。

露帝と国民議会 21日上海経由ロンドン特約通信員発

連合地方議会の委員は、完全に公の資格で露帝に謁見した。委員の内には露都の代表者3名も含まれていた。謁見の際、トロペツコイ公爵は露国の悲惨な状態に就いて、一時間半露帝に奏上を行った。露帝は深く感動し、戦争の犠牲、特に対馬海峡の戦争に於ける莫大な犠牲を傷み、且つ国民議会招集の件は日々念頭に掛けている趣旨の勅答があった。委員は今後地方議会が露国と帝室とを結びつけることに満身の力を尽くさん事を希望し、会見を謝しつつ退出した。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月二十三日(金)

支那人の対米反抗 米国の支那人排斥法に対する反抗運動は、日々勢力を加え

モロッコ問題と佛国 佛国議会はモロッコに関する政府の温和な態度を是認

支那人の対米反抗 22日上海特派員発

米国の支那人排斥法に対する反抗運動は、日々勢力を加え、各省の著名な商人達も上海商業会議所の決議に賛成し、シンガポールの支那人も既に米国との貿易を止め、何れも連合運動を希望し、当地で米国人が設立した学校の生徒退校及び米国商店の雇入れ辞職が毎日増加し、漢字新聞は米人の広告掲載を謝絶する相談をし、旧暦六月七日頃までにもし米国が譲歩しなければこぞって反抗運動を実行すると言っている。米国の支那貿易は或いはこれにより打撃を被り、我が国の輸出業は偶然の利を受けるかもしれない。

モロッコ問題と佛国 22日ベルリン特約通信員発

佛国議会はモロッコに関する政府の温和な態度を是認し、此の事件に関する賛否を討論する動議は退けられた。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月二十四日(土)

有栖川宮歓迎 英国では、皇室は国民と共に両殿下の歓迎に就いて準備中である

ポーランドの惨劇 一斉射撃により群衆を蹴散らせたたが、十八名を殺し、百名を負傷させた

有栖川宮歓迎 22日ロンドン特約通信員発

英国では、有栖川宮及び同殿下が近々ご来着されるので、大変な関心を引き起こしている。皇室は国民と共に両殿下の歓迎に就いて準備中である。

ポーランドの惨劇 23日上海経由ロンドン特約通信員発

ポーランドのルーター通信員によれば、コサックの蛮行に抗議して、職工のデモが行われた。五万の職工が暴虐な政府を倒せと叫びながら市内を練り歩いている時、突然コサック兵と竜騎兵が道に現れ、一斉射撃により群衆を蹴散らせたたが、十八名を殺し、百名を負傷させた。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月二十五日(日)

日本軍制と印度 印度軍総指揮官キツチナー将軍は日本の制度に学べと結論した

極東総督府廃止 アレキセエフは極東総督府廃止の為、その地位を失い

南欧の騒乱 リワン地方(トルコ国境に近い所)に於いて、激しい騒乱が発生し

日本軍制と印度 23日ロンドン特約通信員発

印度軍総指揮官キツチナー将軍は印度軍の状況を非常に精密に論じた後、印度在住の当局者は日本の制度に学び、露国のそれに従ってはならないと結論した。

極東総督府廃止 同上

アレキセエフは極東総督府廃止の為、その地位を失い、新たに帝国参議院議員に任じられたが、これは当人の本望であろうと思われる。

南欧の騒乱 24日ベルリン特約通信員発

コーカサス、特にリワン地方(トルコ国境に近い所)に於いて、激しい騒乱が発生し、アルメニア人に対して暴行を加えつつあり。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月二十六日(月)

満州善後意見下問 西太后の指示により満州の今後に関する意見を詳細に奏上することを命じた

佛国と雲南四川鉄道 佛国領事は、雲南と四川間の鉄道工事にフランス技師を採用するよう求めた

満州善後意見下問 25日北京特派員発

清国政府は西太后(せいたいこう)の指示により、各省の督撫(とくぶ)に対して、日露間で間もなく戦争が終結しようとしていることに関し、満州の今後に関する意見を詳細に奏上することを命じた。

解説:西太后は有名な清朝末期の権力者で1908年死去している。

督撫は清の地方官で諸州を監察する役職

佛国と雲南四川鉄道 同上

蒙自(もうじ)駐在の佛国領事は、支那の国家事業である雲南と四川間の鉄道工事にフランス技師を採用するよう求めたが雲貴総督に拒否されたので、そうであれば他国の技師を採用しないという保証を得たいと要求したが矢張り拒否された。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月二十七日(水)

モロッコ問題と独仏 ベルリン駐在佛国大使ピクル氏は、モロッコ問題に関する文書を独逸宰相に送った

独逸と駐清軍隊 全く独逸の清国駐屯軍は動かす必要は無い

モロッコ問題と独仏 26日ベルリン特約通信員発

ベルリン駐在佛国大使ピクル氏は、モロッコ問題に関する文書を独逸宰相に送った。この文書には別に佛国の回答は書かれていなく、単に一般の状況を説明しているに過ぎないが言葉使いが非常に丁寧で、且つ穏やかな表現である。パリ―の諸新聞によれば、佛国の意見は多少の変更を加える余地があるようである。又独逸の諸新聞はパリ―人が非常に憂慮しているのを見て、いわれなき憂慮であると言っている。

独逸と駐清軍隊 同上

デイリーテレグラフ紙は独逸が杭州湾守備隊を除いて、清国駐屯軍を全員引き揚げる用意があると報道しているがこれは無論虚報である。独逸は清国駐屯軍の撤退については、以前直隷省に各国守備隊を置いた時と同様に、列国の協議の結果に待つべきであると考える。従って全く独逸の清国駐屯軍は動かす必要は無い。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月二十八日(木)

対米反抗後聞 米国東南にある商業界に激震が走り、支那人上陸条例の改正を希望している

独仏間の関係 独逸大使は、フランスの人心はこの事件に関して恐怖を抱く理由は無いとして

媾和予備情報 米国政府は八月の第一週にワシントンで会見してはどうかとの提案を露国に行った

佛国陸相の壮語 佛国が三十五年間の努力で完成した戦闘準備は今や最高の状態に達しており

対米反抗後聞 27日北京特派員発

米国東南にある商業界に激震が走り、支那人上陸条例の改正を希望しているとの電報が昨日あった。

当地における米国との新取引中止は支那歴618日迄待つ事となった。

独仏間の関係 27日上海経由ロンドン特約通信員発

フランスの覚書に対する独逸の答弁は二三日中に提出されると思われるが、しかし独逸大使は答弁の内容について佛国内閣議長ルーブイエと協議する予定で、フランスの人心はこの事件に関して恐怖を抱く理由は無いとして、平穏に決着する希望を持っている。

媾和予備情報 26日ワシントン特約通信員発

米国政府は日露両国の全権委員が八月の第一週にワシントンで会見してはどうかとの提案を露国に行った。

駐露米国大使マイヤー氏は今夜、大統領ルーズベルト氏に対して露国全権委員の選任が終わったとの電報を発信した。

休戦は全く見込みは無い。

ルーズベルト氏の手許には日本全権大使の姓名の通知が既に届いている。

佛国陸相の壮語 27日上海経由ロンドンルータス社発

佛国陸軍卿ベルトー氏はベルサイユに於ける演説中、現時局に関する事には言及しないが、佛国が三十五年間の努力で完成した戦闘準備は今や最高の状態に達しており、その装備は完全であり、その将校は如何なる国民と比較しても遜色は無いと述べた。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月二十九日(金)

露国内乱雑文 ワルシャワに於いては、官兵が突進し、六個の障害物を排除して、数十名を負傷させた

独仏交渉 モロッコ問題に関する独逸の通牒がパリー政府に交付された

露国内乱雑文 28日上海経由ロンドン特約通信員発

ワルシャワに於いては、官兵が突進し、六個の障害物を排除して、数十名を負傷させた。民衆は激昂して、警察官及びコサック兵のパトロール隊と再三衝突を起こし、ロツヅ虐殺の二の舞になろうとしたが非常に多数の陸兵と豪雨の為に妨げられて小康を得る事が出来た。

二万のユダヤ人がロツヅを退去した。

独仏交渉 27日ベルリン特約通信社発

モロッコ問題に関する独逸の通牒がパリー政府に交付された。政界で推測されている所によれば、これはモロッコに対して独逸が保持する主義を繰り返し、且つ国際会議の観点から詳細に佛国の反対に答弁したものである。そしてこの公文は佛国に対して友好的な回答をさせる機会を得させる為、全て温和な文言を用いているようであった。

 

東京朝日新聞明治三十八年六月三十日(土)

清廷の要求 媾和談判にその代表者を加わらせるように求めた

有栖川宮と我が同盟 日英同盟条約を改めて、有効な相互防衛条約にしたいとの説が支持される米国と清国人 清国商人及び旅行者に対して、十二分に丁寧で親切にするべき

モロッコ問題 パリ―に於いては佛国がモロッコ会議に確かに同意するものと信じられている

清廷の要求 29日ワシントン特派員発

清国は媾和談判にその代表者を加わらせるように求めた。

有栖川宮と我が同盟 28日上海経由ロンドンルータス社発

スタンダード新聞は、有栖川宮の来訪は、我々英国人が日本人に対して表していた尊敬の念を益々強くすると述べ、この頃世間では、日英同盟条約を改めて、有効な相互防衛条約にしたいとの説が支持されるようになっている。如何なる場合にも同盟国の一方が困っている時は他の一方も又その害を受ける事必然であるのでこの説は頗る当を得ていると述べている。

米国と清国人 29日上海経由ロンドンルータス社発

米国大統領は清国商人及び旅行者に対して、十二分に丁寧で親切にするべき旨を移民局官吏に命令した。

モロッコ問題 29日ベルリン特約通信社発

独逸大使タツテンバツハ伯は使命を終わった後、フエズから帰国する予定である。

パリ―に於いては佛国がモロッコ会議に確かに同意するものと信じられている。

 

又佛国新聞は、独逸政府の行動に誠心誠意が見られる事を確認しており、この一事は佛国が独逸国と協同してこの問題を解決するのに好都合であるとしている。