明治38年4月の世界情勢

主要記事

 

期日 日本関係 期日 露関係 期日 英米関連 期日 その他
4月2日 国債応募五倍 4月8日 露国の講和否定 4月15日 日英同盟の拡張  4月1日 モロッコと独逸 
4月3日 戦利艦の引き揚げ 4月10日 開戦の責任 4月22日 英船と外国軍艦   4月1日 英獨佛関係
4月9日 敵艦隊来る 4月15日 今度は弁護士 4月24日 批評と希望  4月2日 フィンランドの軍資金献納 
4月11日 捕虜収容の現在員数 4月20日 15日の敵艦隊  4月29日 ハワイの移民局新設 4月3日 佛国とモロッコ 
4月18日 敵艦隊の所在判明  4月22日 露都また騒動     4月5日 モロッコ問題 
4月23日 北海道移住民(函館) 4月30日 露都騒乱の憂慮     4月12日 南アフリカ支那苦力の暴動
4月25日 住民の災難         4月21日 佛国の中立問題
            4月22日 佛国の物資供給
            4月23日 カムラン湾問題
            4月27日 佛国外相留任 
            4月27日 独逸使節
            4月29日 日本人排斥法の廃棄

世界情勢

東京朝日新聞明治三十八年四月一日(土)

モロッコと独逸 モロッコに於いては全ての通商国が均等の権利を持つべきである

英獨佛関係 独逸がモロッコ問題に干渉すればかえって英仏協商を強固にする

モロッコと独逸 31日上海経由ロンドンルーター社発

独逸の宰相ビューロ伯は議会で次の演説を行った。モロッコに於いては全ての通商国が均等の権利を持つべきであるとする独逸の政策は不変である。もしもモロッコの門戸開放主義を変えようとするものがあれば、独逸は自己の商業利益を守るため重大な関心を持ち、直接モロッコ国王と交渉する考えである。

英獨佛関係 (同上)

佛国の各新聞は「独逸の宰相の演説は明白に佛国に対する反感を表すものである。」と激昂している。しかし独逸がモロッコ問題に干渉すればかえって英仏協商を強固にするので、英仏協商にとっては好都合である。」と論評している。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月二日(日)

国債応募五倍 第4回国庫債券応募額は、総額約4億4千5百60万円であった

外人応募8千万 昨日午後2時までの調査によれば約7千9百万円の巨額に達した

フィンランドの軍資金献納 100万ポンドを献納し、2万6千人のフィンランド人は出征を免れた

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国債応募五倍

一昨日を以って締め切られた第4回国庫債券応募額は、午後2時頃までの調査によれば総額約4億4千5百60万円であり、第1回以上の好成績であった。

外人応募8千万

外国人の応募者が非常に多くなるであろうとは予想された事であったがそれ以上の好成績であり、昨日午後2時までの調査によれば約7千9百万円の巨額に達し、その国別は英米両国人が最も多く、次は清国人のようである。

フィンランドの軍資金献納 1日ロンドン特約通信員発

ピータースブルグのデーリー、クロニクル着電によるとフィンランドの上院は、フィンランド人を一人も極東に出征させないとの条件で100万ポンドを軍費として献納する事を申し出て、露帝は諸大臣と長時間協議の結果、これを勅許した。その結果2万6千人のフィンランド人は出征を免れた。

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東京朝日新聞明治三十八年四月三日(月)

戦利艦の引き揚げ ワリヤーグの引き揚げに着手する予定である

佛国とモロッコ 佛国はモロッコに対して特別な地位を当然保有する

戦利艦の引き揚げ 2日仁川特派員発

新井少将以下が昨日山東丸にて仁川に到着した。作業船日新、入山、平和が到着するのを待って、ワリヤーグの引き揚げに着手する予定である。

解説:この時引き揚げられたワリヤーグの舵輪は記念艦三笠の6番砲室に展示されている。

明治37年2月11日 巡洋艦ワリヤーグと砲艦コレーツは日本海軍の攻撃を受け、港内で自沈した。ロシア海軍はこの2艦の敢闘精神を称え、100周年となる2004年2月11日、仁川に記念碑を立て除幕式を行った。

佛国とモロッコ (同上)

佛国外相デルカッセ氏は、モロッコに於ける佛国の利益について、上院の演説で次のように述べた。「佛国は、他国の利益を無視してまで佛国の利益を求めず、他国の利益と佛国の利益を一致させる事を望むのみである。地中海に領土を持つ諸国は、佛国の属領アルゼリヤが持つモロッコに対する関係から佛国がモロッコに対して特別な地位を当然保有する事を認めている。」

解説:本紙4月1日の記事「モロッコと独逸」に見られるようにこの問題を巡り。獨佛が対立している。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月四日(火)

 新聞休刊日

 

東京朝日新聞明治三十八年四月五日(水)

ポーランドの巡査 ワルシャワに於いて、社会党と警察の間で激しい衝突が起った

モロッコ問題 独逸の新聞は、佛国外務大臣が上院で行った演説を酷評している 

ポーランドの巡査 3日ロンドン特約通信員発

ワルシャワに於いて、社会党と警察の間で激しい衝突が起こり、警察が一斉射撃を行い、4名を殺し40名を負傷させた。

モロッコ問題 (同上)

独逸の新聞は、佛国外務大臣がモロッコ問題について上院で行った演説に対して、これは時局の解決に資するところが無いと酷評している。従って現在の外交の状況を考えると佛獨両国は、モロッコにおける利益に関して、国際法上の一独立国であるモロッコの政府と各自が直接に交渉する事となるであろうと述べている。

解説:本紙43日に関連記事「佛国とモロッコ」がある。 

 

東京朝日新聞明治三十八年四月六日(水)

霰(あられ)進水():本日午前9時半、進水式を挙行した。

長春吉林の一線 長春と吉林の中間に現在10万人内外の敵が踏みとどまっている。

霰(あられ)進水()

駆逐艦霰(あられ)(250余トン)が本日午前9時半、進水式を挙行したが、その成績は極めて良好であった。

長春吉林の一線 5日門司特派員発

長春(ちょうしゅん)以南の鉄嶺(てつれい)間においては、大兵力を展開するのに適当な陣地がないため、敵は長春(ちょうしゅん)と吉林(きーりん)の中間に相当な陣地を作ろうとして、現在10万人内外の敵が踏みとどまっている。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月七日(金)

露国の騒擾依然 露国国内の騒擾(そうじょう)は依然として続いている

露廷の和戦両派 戦争継続を主張する者が再び勢力を得た

インドの大地震 インドのアグラから北方のシムラにかけて昨日大地震が発生した。

露国の騒擾依然 5日ロンドン特約通信員発

露国国内の騒擾(そうじょう)は依然として続いている。暴動や流血の情報がひんぱんに流れ、秘密警察が活動し、テロの惨状を見る。さらにコレラが発生し、被害が加わっている。

露廷の和戦両派 (同上)

露廷においては、戦争継続を主張する者が再び勢力を得て、講和を主張する諸大臣等は厳しい反撃を受けている。

インドの大地震 6日上海経緯油ロンドンルーター社発

インドのアグラから北方のシムラにかけて昨日大地震が発生した。被害は非常に大きく、死者が多数発生していると思われる。中でもラフォールは被害が最も大きく家屋の崩壊した者が多く、有名な宮殿もまた損害を受けた。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月八日(土)

モロッコ問題 独逸はモロッコの現状を維持し、門戸開放を主張している

英仏元首会見の目的 独逸のモロッコ問題に対抗して英仏協約を明白に確保するためである

露国の講和否定 露国側の諸報道は、再び強い語調で講和に関する全ての風説を否定している 

モロッコ問題 7日上海経由ロンドンルーター社発

ワシントン駐在独逸大使は米国陸軍省を訪問して覚書を提出した。その覚書によると、独逸はモロッコの現状を維持し、各国の商業関係を安定させるため極東に於けるように門戸開放を主張している。この覚書には一言も佛国の事に触れていない。この覚書は大統領の許に送られた。

英仏元首会見の目的 7日上海経由ロンドンルーター社発

エドワード皇帝とルーペ大統領との会見は独逸皇帝のタンジール行きに先立って協議されたが、これは独逸のモロッコ問題に対抗して英仏協約を明白に確保するためであると言われている。

露国の講和否定 6日ベルリン特約通信社発

露国側の諸報道は、再び強い語調で講和に関する全ての風説を否定し、露国はスンダ群島に於いて海軍の勝利を得る事を希望している。又現在予備兵が動員されつつある。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月九日(日)

佛国とモロッコ 佛国は将来起こるあらゆる誤解に関して他国と協議することを厭わない

敵艦隊来る 39隻からなる露国艦隊がただ今カリモン岬に到達した

佛国とモロッコ 8日上海経由ロンドンルーター社発

佛国外務大臣デルカッセ氏は下院に於いて一語一句に注意を加えながら、次の様な説明を行った。佛国は友人としてモロッコに以前のとおり有益な忠言をする予定であるが、もとよりこのために他を害したいとは思わない。また佛国は将来起こるあらゆる誤解に関して他国と協議することを厭わない。

解説:本紙4月5日に関連記事「モロッコ問題」がある。

敵艦隊来る(いよいよシンガポールを通過) 8日シンガポール特約通信員発電

39隻からなる露国艦隊がただ今カリモン岬に到達した。

40隻の露国艦隊が東方に向け、当地沖を通過しつつあり。(同上)

露国第2バルチック艦隊の全部が本日午後3時に当地沖を通過した。(同上8日午後5時発)

 

東京朝日新聞明治三十八年四月十日(月)

莫大な戦備 莫大な弾薬の注文が同政府から行われている

講和論者の失敗 名誉的講和準備の意見は遂に用いられなかった

開戦の責任 今やこの大失敗の責任は果たして誰にあるのか

莫大な戦備 8日ロンドン特約通信員発電

露国はいよいよ大規模な戦備に着手したものと想像される。莫大な弾薬の注文が同政府から行われている。某会社のごときは1社で価格が7百万ポンドに達する大砲及び弾丸の注文を引き受けた。

講和論者の失敗 (同上)

露帝において某有力者の提起した名誉的講和準備の意見は遂に用いられなかった。

開戦の責任 ノウオエ ウレミヤ新聞の社説(外務省着電)

露国は戦争を希望しないのみならず、流血を避けるため誠実に譲歩したいと思っていたが、日本との8ヶ月の交渉の後、露国外交は遂にこの本意を達成する事に失敗し、今やこの大失敗の責任は果たして誰にあるのか。世論は実にその何人であるか知りたいと思っている。

解説 1903年7月30日、極東統監部を設けて「アレクセイエフ」を統監に任命する事が発表された。このことは各大臣の知らない間に決定されて突然発表されたのである。

1902年から3年にかけて「ベゾブラゾフ」一派の陰謀は着々と進展した。陛下は外務大臣や私が反対し、陸軍大臣「クロパトキン」も多少の反対をしたにも拘わらず、この連中の説を傾聴するようになった。そして極東統監部の設置は、対極東政策で私が敗北者となった事を示し、その結果、日本との開戦は遂に避けられないものとなった。(原書房「ウイッテ回想記」から)

 

東京朝日新聞明治三十八年四月十一日(月)

露都の憂慮 ウラジオストックに関する憂慮が真剣に考えられ始めた

2艦隊別報 汽船タラ号はシンガポール北方130マイルに露艦40隻を見た

捕虜収容の現在員数 内地21箇所へ収容された捕虜の現在数は合計58,759名であった

露都の憂慮 8日ベルリン特約通信社発

セントピータースブルグに於いては、ウラジオストックに関する憂慮が真剣に考えられ始めた。

2艦隊別報 10日上海特派員発電

4日付シンガポール・ルーター通信員発電によれば、ペナンから入港した汽船タラ号はシンガポール北方130マイルに露艦40隻を見たとの事である。

捕虜収容の現在員数

開戦以来内地21箇所へ収容された捕虜の現在数は次のとおりであり、奉天方面の捕虜も、傷病者で後送できない者除いてほとんど収容を終わっている。

習志野(3,000名)、佐倉(3,120名)、濱寺(27,925名)、金沢(4,522名)、松山(3,673名)

その他16箇所の捕虜を合わせて合計58,759名であった。

解説3,000名未満の収容所名は省略した。この内、将校の収容者数は918名であり、最も多いのは松山の393名、次いで名古屋の111名、静岡の109名で他は50名以下であり、濱寺はゼロであった。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月十二日(水)

南アフリカ支那苦力の暴動 5百名の支那人の坑夫が金鉱の構内より脱出した

開戦責任弾劾 責任のあった外交家を弾劾する為に、これに関する外交文書が必要である

敵艦隊給炭技術 全員が実地の研究を積み、給炭技術に熟練したものと考えられる 

南アフリカ支那苦力の暴動 11日上海経由ロンドンルータース社発

昨日5百名の支那人の坑夫がジャムパース、ジープ金鉱の構内より脱出してヨハネスブルグに向かったが、騎馬警官がこれを追い返した。支那人は警官に対して3時間ばかり石を投げつけて抵抗したが、警察官は軽傷のみであった。この騒動で土人は警官を助けた。支那人で逮捕された者は28名であった。

開戦責任弾劾 10日ベルリン特約通信社発

ノウエ、ウレミヤは戦争勃発に関して、責任のあった外交家を弾劾する為に、これに関する外交文書が必要である事を繰り返し熱心に主張している。

敵艦隊給炭技術 

敵艦隊のインド洋横断に際しては、途中で石炭の供給が必要であるにも拘わらず、1回も島嶼に寄港する事無く、またあまり遅れる事無く航海しており不思議である。これは長く航海を続けたため、全員が実地の研究を積み、給炭技術に熟練したものと考えられる。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月十三日(木)

敵艦隊オランダ領に入る バルチック艦隊の一部は、バンカ島マントク港に到着した

オランダ艦隊の急行 オランダ艦隊は密封命令書を持って北方に急行した

米艦また動く 米国巡洋艦ローレー号は数隻の駆逐艦と共にパラワン島に派遣された

敵艦隊オランダ領に入る 12日上海経由ロンドンルーター社発電

バルチック艦隊の一部は、バンカ島マントク港に到着した。ロジェストウェンスキー自身がこの艦隊を率いていると思われる。

オランダ艦隊の急行 12日ロンドン特約通信員発電

バタビヤ ルーター通信員の電報によればバルチック艦隊がバンカ島モントク港にいると思われるのでオランダ艦隊は密封命令書を持って北方に急行した。

米艦また動く 12日上海経由ロンドンルーター社発電

ロンドン発電報によればフィヒリピンの中立を確保して、日露双方の交戦国のいずれにも、同島を交戦の場に使用させない為に米国巡洋艦ローレー号は数隻の駆逐艦と共にパラワン島に派遣された。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月十四日(金)

上海露艦に注意 露艦(アスコルド)に対して厳重な注意を要求した

上海露艦に注意

我が領事は道台に、露艦(アスコルド)に対して厳重な注意をし、異常事態が発生したならば責任は清国にあり、そして日本は自衛上、自由な行動を取るであろうと警告した。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月十五日(土)

日英同盟の拡張 チェンバレン氏は永久的な攻守同盟とするべきであると主張した

今度は弁護士 露国の各党派に属している弁護士が露都において大集会を開いた

カナダの日本人排斥 日本人及び支那人の労働者がサモン河の鮭漁に従事する事を拒んだ

日英同盟の拡張 13日ロンドン特約通信員発

チェンバレン氏が日英同盟について、これをさらに継続するのみならず更に拡張して、永久的な攻守同盟とするべきであると主張した。この明白な政策は、既に一般国民の中に成熟しているが、この度英国一流の政治家の一人であるチェンバレン氏が賛成の意思を公表した事により更に勢いがつこうとしている。

今度は弁護士 14日ロンドン特約通信員発

露国の各党派に属している弁護士が露都において大集会を開いた。警官の妨害があったにも拘わらず改革思想を広めて人民を教育し、平和的憲法を要求する決議を行った。会議に出席した弁護士は、直ちに露都を去るかさもなければ追放すると命じられた。

カナダの日本人排斥 14日上海経由ロンドンルーター社発

英領コロンビアにおいて白人労働者は暴力で日本人及び支那人の労働者がサモン河の鮭漁に従事する事を拒み、警察官がこれら東洋労働者を保護しつつある。今後騒動が起こる恐れがある。

オタワ在勤の日本領事は英領コロンビアに於ける日本人排斥の法案が成立したことに抗議書を提出した。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月十六日(日)

露国の政党勃興 露国にては先日の勅宣に対して諸政党が緊急に創立されようとしている

敵艦隊のその後 バシー海峡を通過して広い太平洋に出て大きな迂回をするかも知れない

露国の政党勃興 14日ロンドン特約通信員発

露国にては先日の勅宣(34日か)に対して諸政党が緊急に創立されようとしている。その内最も強力なものが急進党又は立憲党であり、これらは地方議会議員、教授や学生等が主な党員で普通選挙法の採用を目的としている。

敵艦隊のその後 

はるばる東航の敵艦隊は、去る11日に仏領サイゴンの南方で、北方に航海中を視認されて以来その消息を絶っている。再び引き返さない限り今頃は台湾の付近に現れる計算となる。しかしそれは突飛な見方で多分台湾とフィリピンの間のバシー海峡を通過して広い太平洋に出て大きな迂回をするかも知れない。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月十七日(月)

敵艦隊の北上 汽船「コーナー」号は、コンドール島沖でバルッチック艦隊に遭遇した

敵艦隊の北上 15日上海特派員発電

上海タイムスの香港特電によれば汽船「コーナー」号は、コンドール島沖でバルッチック艦隊に遭遇し、巡洋艦が同船に向かって積荷、行先を尋ね、臨検の後に立ち去った。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月十八日(火)

コーカサス行政改革 総督は地方行政改革に関して各州の代表者を協議のため召還した

敵艦隊の所在判明 14日仏領安南カムラン湾に錨泊している事を確認した

露国某大官の談 露国は古来未だかって賠償金を他国に支払った事が無い

コーカサス行政改革 17日ロンドン特約通信員発

コーカサス総督は地方行政改革に関して各州の代表者を協議のため召還した

敵艦隊の所在判明  17日大本営海軍幕僚

露国太平洋第2艦隊は14日仏領安南カムラン湾に錨泊している事を確認した。

カムラン湾はサイゴンの北東約160マイルにあり、安南中最良の港の一つであり、内外2港に分かれ、外港は長さ3マイル、幅2マイル、内港は長さ8マイル、幅2~3マイルの大きな湾であり深さも錨泊に適している。

露国某大官の談 

3月20日米国連合通信社に語ったところによる。

露国は古来未だかって賠償金を他国に支払った事が無く、又歴史に照らしてみても、賠償金の支払いの保障として他国の領土を占領しておくこと無しに賠償金を要求した先例は無い。現に日本は未だ露国の尺寸の領土をも占領していない。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月十九日(水)

ウイッテ失権 露帝はウイッテの委員会を解散して、政敵の委員会に引き継がせた

旅順の戦利品 (捕虜)総員41641

カムラン湾 佛領安南のカムラン湾は、安南で最も良港である

ウイッテ失権 18日ロンドン特約通信員発

露帝は1225日の勅令に基づき、ウイッテを議長として農民の待遇を改善する方策について調査中であったが、この委員会を解散して、その事務をウイッテの政敵である著名な頑固者が議長となっている他の委員会に引き継がせた。

旅順の戦利品 418日大本営

今般調査した結果は次のとおり。(捕虜)

総員41641人(将官 17名、佐官、尉官1439名、下士卒 4万百85名)

カムラン湾

露国太平洋艦隊の停泊地となった佛領安南のカムラン湾は、安南で最も良港であるとは言え商港ではない。その為住民も極めて少なく外国船が寄港する事も無いので同湾の奥深く投錨すれば人目を避けることができる。敵艦隊がもしここでウラジオストックに到着する為に必要な全てを準備中であるならば多少の日時が必要となるであろう。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月二十日(木)

ポーランド懐柔 露国政府はポーランド語を公用語として使用できるように調査中であると発表した

15日の敵艦隊 各種の情報を総合すると太平洋第2艦隊は、なおカムラン湾に停泊している

黒海艦隊の東航準備 近いうちに太平洋に向かう為に全艦隊を動員する準備を行うとの説がある 

ポーランド懐柔 19日上海経由ロンドンルーター社発

ポーランド総督は同地方に露国のゼムストウオ同様な地方制度を創設する目的で

準備会議開催を命じた。又露国政府はポーランド語を公用語として使用できるように調査中であると発表した。

15日の敵艦隊 19日上海特派員発電

南方より来た各種の情報を総合すると露国太平洋第2艦隊が15日現在、なおカムラン湾に停泊しており、商船を臨検している事までは確認できたがその他は漠然として不明である。

黒海艦隊の東航準備 18日ロンドン特約通信員発電

セバストポールからの報道によれば演習中の黒海艦隊は帰港を命じられた。近いうちに太平洋に向かう為に全艦隊を動員する準備を行うとの説がある。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月二十一日(金)

清国賠償金問題 露国公使を除いて各国公使は新協定文書に記名調印した

山東省の採掘権 独逸は又新たに山東省の鉱山採掘権を要求した

佛国の中立問題 日本人が激昂しているのは当然であると思われる

カムランの敵艦隊 太平洋第2艦隊はサイゴンに於いて多数の生肉及び野菜を注文した

清国賠償金問題 20日北京特派員発

清国の賠償金(北清事件)1件は、露国公使を除いて各国公使は新協定文書に記名調印したので露国公使も必ず異論無く調印するであろうと言われている。

山東省の採掘権 (同上)

独逸は又新たに山東省の鉱山採掘権を要求したとの説がある。

佛国の中立問題 19日ロンドン特約通信員発

ロジェストウェンスキーの艦隊が長々と安南に留まっている為に、日本人が激昂しているのは当然であると思われる。さりながらロンドンやワシントンに於いては、佛国の罪状を認める為の十分な証拠があるかどうか疑っている者が多い。

カムランの敵艦隊 19日上海特派員発電

太平洋第2艦隊はサイゴンに於いて多数の生肉及び野菜を注文した。

カムラン湾を通過した汽船は、香港において日曜日(16日)には露艦を同地に見ることは出来なかったと述べている。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月二十二日(土)

露都また騒動 露都ブチロフ工場の職工は他の工場の職工に同盟罷工を呼びかけていた

佛国の物資供給 サイゴンの大商店は、巨額の物資の調達に応じた様である

英船と外国軍艦 英国船は無線電信を使用して外国軍艦の行動を通報する権利を有する

露都また騒動 21日ロンドン特約通信員発

露都ブチロフ工場の職工2千名は他の工場の職工に向かって同盟罷工を呼びかけていたが、騎馬警官のために弾丸を浴びせられ、やがて歩兵のために完全に壊滅させられた。その後歩兵の一部は同工場に駐屯し、その付近も兵力で警戒している。

佛国の物資供給 20日ベルリン特約通信社発

佛国の半官通信社アブアス社がサイゴンから得た情報によれば、サイゴンの数店の大商店は、インド支那の海岸で(露国艦隊に)商品を受け渡す約束で巨額の物資の調達に応じた様である。

英船と外国軍艦 (同上)

英国海軍省は露国政府の質問に答えて、英国船は相互に無線電信を使用して外国軍艦の行動を通報する権利を有すると答えた。(露国政府の質問は多分第2太平洋艦隊に関連した事と思われる)

 

東京朝日新聞明治三十八年四月二十三日(日)

広告 「男工募集」 年齢により日給30銭以下17銭以上支給する

北海道移住民(函館) 昨年に比べて非常に多く475戸、1978人であった

カムランワンの敵状 佛国の中立義務違反はもはや疑う余地が無くなった

広告 「男工募集」印刷局印刷部

男工100名募集 満15歳以上18歳未満  年齢により日給30銭以下17銭以上支給する。

北海道移住民(函館)

本年1月以来本月15日までの北海道移住民の数は、昨年に比べて非常に多く475戸、1978人であった。

カムランワンの敵状

公報及びその他の信頼できる情報によれば敵艦隊が依然カムラン湾内に停泊し、通常の軍事行動の一環として港外を巡回である事が遂に確実となった。敵の傍若無人な行動と佛国の中立義務違反はもはや疑う余地が無くなった。

 

>東京朝日新聞明治三十八年四月二十四日(月)

カムラン湾問題 佛国政府はインドシナの総督に対して厳重に中立を守る旨の命令を伝達した

退去訓令(露国海軍省の) 同提督が安南海岸に逗留する事に警告を発した

批評と希望 海軍部内においては同艦隊の大成功は間違いないと信じられている

カムラン湾問題 22日ロンドン特約通信員発

カムラン湾の状況が危険である事を佛国が認めたため、同国政府はインドシナの総督に対して厳重に中立を守る旨の緊急な命令を伝達した。

退去訓令(露国海軍省の) (同上)

セントピータースブルグからの情報によれば露国海軍省はロジェストウェンスキー提督に対して同提督が安南海岸に逗留し、或いは接近する事は大いに平和を危うくするものであると警告した。そして同省では同提督が自分に送られた公式の訓令に服従するであろう事を信じている。

批評と希望 (同上)

ロンドンに於ける一致した世論では、ロジェストウェンスキーは既にカムラン湾に於いて石炭、糧食を積み入れて今日までに大きな利益を得たといわれている。

ピータースブルグの海軍部内においては同艦隊の大成功は間違いないと信じられている。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月二十五日(火)

敵艦隊出る 露国艦隊は422日カムラン湾を出発した

佛国外相の留任 首相等の勧告を受け入れて留任する事に決定した

住民の災難 収穫は云うまでもなく、畑は防禦工事のために荒らされ、あらゆる家は徴発された

敵艦隊出る

佛国政府から我が政府に対して次の通告があった。

インドシナ総督からの報告によると露国艦隊は422日カムラン湾を出発したが但しその目的地は不明である。

佛国外相の留任

佛国外相デルカッセ氏はモロッコ問題及びカムラン湾事件に関する新聞紙の攻撃に対して責任を取る為辞表を提出していたが首相等の勧告を受け入れて留任する事に決定した。

住民の災難(一兵卒の所見)

会戦がある度に最も気の毒なのは相も変わらずその住民である。沙河の戦いで対陣している時、第1線に挟まれた所では、収穫は云うまでもなく、畑は防禦工事のために荒らされ、あらゆる家は徴発され、樹木は切られ、相当の蓄えのある者以外は糊口をしのぐことが出来ない。職業はただ苦力(クーリー)に雇われる事のみである。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月二十六日(火)

クリート合併問題 列強は、同島をギリシャに合併する事には反対であると答えた

佛国の中立態度 運送船に、ただ航海に必要な量の石炭の積み込みを許した

捕虜の陰謀(金沢) 昨夜10時発覚して、歩兵2個中隊を派遣して事なきを得た

クリート合併問題 25日ロンドン特約通信員発

列強はクリート内閣に対して、同島をギリシャに合併する事には反対であると答えた。

ギリシャ政府もまた合併の申入れに対して、ギリシャ人が熱望している事であるが列強の考えに対抗するような決定はしてはならないと答えた。

解説:クリート島とは現在ギリシャ領となっているクレタ島であり、帰属を巡ってトルコとの間で紛争があり1913年ギリシャ領となった。次のホームページ「希土戦争」に詳しく書かれている。http://www3.kiwi-us.com/~ingle/topix-2/grecoturkowar1897.html

佛国の中立態度 24日上海経由ロンドンルーター社発

バルチック艦隊は日曜日の朝、悉くカムラン湾を抜錨した。

4隻の露国の運送船がサイゴンに入港しており、同知事はこの運送船に多量の石炭を積み込む事を禁止し、ただ航海に必要な量の積み込みを許した。

捕虜の陰謀(金沢)

当地出羽町にある収容所で捕虜の曹長1名と兵卒3名が首謀者となって下士官、兵約50名が団結して、収容所を焼き、衛兵の銃剣を奪い逃走する計画があったが昨夜10時発覚して、歩兵2個中隊を派遣して警戒した為事なきを得た。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月二十七日(木)

佛国外相留任 国外務卿のデルカッセ氏は留任することとなった

独逸使節 特殊な使命を帯びてモロッコの首都フエツスに向かってリスボンを出発しようとしている

カムラン湾付近 露国太平洋第2艦隊は22日(土)同湾を出発した

敵艦隊の汽船拿捕 バルチック艦隊は日本に向け米を積み込んだ2隻の汽船を拿捕した

佛国外相留任 26日ベルリン特約通信社発

佛国外務卿のデルカッセ氏は留任することとなったが独逸政府は、初めからこれを予想し、またこの様になる事を希望していた。デルカッセ氏の留任はモロッコを保護国としようとする佛国の計画に対して、独逸の拒否する姿勢を継続しやすくする。

独逸使節(同上)

ポルトガル駐在独逸公使ダッテレバッハ伯は、特殊な使命を帯びて、51日モロッコの首都フエツスに向かってリスボンを出発しようとしている。

カムラン湾付近 25日上海特派員発電

サウスチャイナー、モーニングポストの特派員がカムラン湾から発信した情報によれば、露国太平洋第2艦隊は22日(土)同湾を出発したが、なお同地に独逸船その他の運送船合計18隻が残っている。

敵艦隊の汽船拿捕 26日上海経由ロンドンルーター社発電

4月25日サイゴン発電によればバルチック艦隊はサイゴンから日本に向け米を積み込んだ2隻の汽船を拿捕した。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月二十八日(金)

クリート問題 列強は、現在クリート島がギリシャに合併する事に反対である

ステッセル罪名 ステッセル将軍は軍法会議に掛けられ裁判を受ける予定である

石炭船抑留 香港においては現在石炭を搭載する数隻の船舶を抑留している

クリート問題 26日ベルリン特約通信社発

列強は、現在クリート島がギリシャに合併する事に反対である。クリート島民はこれに従うよう云われているが島民がもし聞かないならば列強はこれに対して適切な処置を行うものと思われる。

ステッセル罪名 (同上)

ステッセル将軍は軍法会議に掛けられ、権限以外の行為があった疑いで裁判を受ける予定である。しかし旅順に於いては開城の責任は将軍の職責外であり要塞司令官スミルノフのみが決定する事項である。

石炭船抑留 27日香港特派員発

香港においては石炭の輸出を禁止するという最近の中立規則に関する宣言に基き、現在石炭を搭載する数隻の船舶を抑留している。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月二十九日(土)

敵の新海軍計画 露廷に於ける新艦隊を建造する計画は、現在進行中である

日本人排斥法の廃棄 カナダ政府は日本人排斥法に対して不許可の通知を出した

ハワイの移民局新設 このほどハワイ県会には新法が提出され26日成立した

敵の新海軍計画 27日ロンドン特約通信員発

露廷に於ける新艦隊を建造する計画は、現在進行中であり、その費用は相変わらず75千万円になると報道されている。

日本人排斥法の廃棄(同上)

カナダ政府は英領コロンビア(注:首都はオタワ)の日本人排斥法に対して不許可の通知を出した。その理由は、この法案が大英帝国と日本帝国との関係に影響を与えるためと言われている。

ハワイの移民局新設

米国に於ける日本人排斥熱は遂にハワイにまで及び数日来同地白人労働者間には示威運動さえ行われた。このほどハワイ県会には新法が提出され26日成立した。これは移民官を外国(東洋を指す)に派遣する事としているが、その目的はもっぱら日本人を監視し、新たに白人労働者を移入させ日本人に対抗させようとする事にある。

 

東京朝日新聞明治三十八年四月三十日(日)

モロッコ問題 パリー発行ル、タンはモロッコ問題に関し、独逸に対する好戦的論文を掲げている

敵艦隊の用意 サイゴン及びカムラン湾等の有力な通信施設がある港湾付近を遊弋している

露都騒乱の憂慮 イースター祭(5月1日)の当日、騒乱が発生する恐れがある

モロッコ問題 佛国はその東の国境に注意を払う必要があると認められる

モロッコ問題 28日ベルリン特約通信社発

パリー発行ル、タンはモロッコ問題に関し、独逸に対する好戦的論文を掲げているが、佛国政府はこの論文は銀行家の策略から生まれたと主張した。

敵艦隊の用意

敵の第2艦隊が、その遊弋している場所を安南南方沿岸に限っているには大きな理由がある。即ち同艦隊はなるべくサイゴン及びカムラン湾等の有力な通信施設がある港湾付近を遊弋し、必要な時が来たならば直ちに各方面に通信を送る為である。現在の艦隊の位置からカムラン湾まで70マイル、サイゴンまで200マイル内外であり、快速の駆逐艦であれば1時間25ノットの速力が出せ、僅かな時間でその目的を達成する事ができる。

露都騒乱の憂慮

最近露京から伝わる諸報道によれば露国はイースター祭(5月1日)の当日、同地に於いて騒乱が発生する恐れがあるため、諸大公の宮殿、政府の建物並びに諸銀行は現在強力な軍隊が護衛中であり、又多数の大地主は続々と露京を退去していると言われている。

モロッコ問題 29日上海経由ロンドンルーター社発

モロッコに対する独逸の決然とした深慮遠謀な政策はパリーに於いて欧州政界の危険要因を大きくするのであり、佛国はその東の国境に注意を払う必要があると認められる。