明治38年3月の世界情勢

主要記事

期日 日本関係 期日 露関係 期日 英米関連 期日 その他
3月4日 沙河全線の活動 3月1日 北海事件国際審判報告 3月5日 英国海軍予算 3月4日 佛国とインドシナ
3月7日 渾河(こんが)の大勝 3月1日 露国対鉄道戦略  3月5日 英国海軍拡張 3月18日 日仏の関係 
3月8日 奉天大混雑 3月4日 労働者の強硬  3月15日 英国新聞讃評  3月25日 ポーランドの騒乱 
3月9日 奉天陥落予想 3月5日 露国動乱続報  3月26日 新外債成立  3月31日 フィンランドの革命運動
3月10日 敵全軍の退却  3月11日 露国農民蜂起 3月27日 船舶液体燃料について    
3月11日 奉天占領 3月19日 敵総帥の更迭        
3月12日 大包囲大勝利大収穫  3月28日 ゴルキーに対する起訴        
3月13日 大収穫大捕虜大死傷 3月29日 南露の大反乱         
3月13日 社告 3月30日 クリミヤ騒乱         
3月17日 鉄嶺占領の結果 3月31日 露国全体の不穏        
3月23日 捕虜に関する新規定            
3月31日 日本公債大人気            

世界情勢

東京朝日新聞明治三十八年三月一日

全国大同盟罷工 3月4日を期してロシア全帝国を挙げて大同盟罷工を行う計画がある

北海事件国際審判報告 ハル事件国際審問委員会は2月25日最終報告を決定した

露国対鉄道戦略 露国政府は鉄道の同盟罷工を抑止する最終手段を取るに至った

全国大同盟罷工 27日ロンドン特約通信員発

3月4日を期してロシア全帝国を挙げて大同盟罷工を行う計画があるようである。

露国政府は鉄道工夫の同盟罷工を鎮圧し、満州への輸送を確実なものとするために今や非常手段を取ろうとしている。

北海事件国際審判報告(その筋着電)

ハル事件国際審問委員会は2月25日最終報告を決定したがその要点は次のようであった。

・英国漁船は全て正規の灯火を掲げ法規に従い漁業をしていた。

・砲火を開いた行為及び漁船に対する結果については司令官に責任がある。

・漁船は何ら敵対的行為をした事も無く、又現場には水雷艇が居ないにも拘わらず砲火を

 開いたのは不当である。

露国対鉄道戦略 2月26日在露京タイムス通信員発 

満州への増援部隊の輸送を確実にする必要があるため、遂に露国政府は鉄道の同盟罷工を抑止する最終手段を取るに至った。即ち政府は彼らの要求を全て認め、他方においては全ての鉄道に戦時動員令を適用し、その結果鉄道雇用者は軍事法廷の支配を受ける事となった。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月二日

欧州の兵略家所見 日本が今や軍事上確然とした地位を占めたとの見方で一致した

敵或いは攻勢に転じるか 敵は増強の形勢があり、或いは攻勢をかけてくるかも知れない

ポーランド農民動く ポーランドの農民は社会党員に扇動されて罷工運動に参加中である

欧州の兵略家所見 1日上海経由ロンドン特約通信員発

欧州の兵略家は皆露軍の運命を悲観し、そして日本が最後の大勝を期して今や軍事上確然とした地位を占めたとの見方で一致した。

敵或いは攻勢に転じるか

敵は沙河戦当時のように再び我が右翼の背後に迂回しようと計画し、多数の兵力を清河城線に増加していたが、今はかえって我が軍のために機先を制せられ、多数の損害を被って退却したが、情報によれば敵はこの方面に増強の形勢があり、或いは攻勢をかけてくるかも知れない。

ポーランド農民動く 1日上海経由ロンドンルーター社発

ワルシャワ発ルーター電報によれば、ポーランドの農民は社会党員に扇動されて罷工運動に参加し中である。ポーランド国民の十分の七は農民であるため、これは実に重大な進展である。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月三日

ステッセル 虐殺を避けるための降伏は余の義務であったと答えた

自由党と日英同盟 政府の後継者は日英同盟に対する一切の義務を履行すべきであると演説した

ポーランド戒厳令 露国はポーランド全国に戒厳令を布いた

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ステッセル 2日上海経由ロンドンルーター社発

当時の大物であるステッセルはモスコーに到着した。彼は昨日セルジ大公夫人と午餐を共にし、終わって市民代表者の歓迎に答え、当時日本軍は主要な砲台をことごとく占領したので虐殺を避けるための降伏は余の義務であったと答え、夕刻ピータースブルグに向かって出発した。

自由党と日英同盟 (同上)

下院議員自由党員サー、エドワード、グレー氏は、チェルテンハムに於いて、政府の後継者は日英同盟に対する一切の義務を履行すべきであると演説した。

ポーランド戒厳令 2日上海経由ロンドンルーター社発

露国はポーランド全国に戒厳令を布いた。

広告「言海」

文学博士大槻文彦著 発行所 合資会社吉川弘文館 定価1円50銭、予約価格金1円

本書の予約発表いらい非常な盛況で既に5万数千部のご注文を賜り、今尚1万部以上のご注文を滞らせている。よって3月31日まで予約を延期する。

解説:有名な国語辞書「言海」の広告で、復刻版を現在でもAmazonで求めることができる。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月四日

労働者の強硬 政府が1月21日以来逮捕している3千人の労働者の即時釈放を要求した

佛国とインドシナ 佛国の拓殖務卿はインドシナは佛国の財産でなければならないと述べた

沙河全線の活動 清河城(せいかじょう)を占領した我が部隊は北方に進撃中である

労働者の強硬 3日上海経由ロンドンルーター社発

ピータースブルグの労働者は昨日(3月1日)200人の選挙人を選出した。この選挙人の職務は職工惨状審査会に出席する代表者を任命するためであったが、しかしこれらの選挙人は政府が1月21日以来逮捕している3千人の労働者を即時釈放し、身体住居の不可侵、言論出版の自由に関する諸々の要求をことごとく認めなければ断じてその職を行う事は出来ないと拒絶した。

佛国とインドシナ 2日ベルリン特約通信社発

佛国の拓殖務卿エチエンヌ氏は殖民事業関係者の大宴会で、インドシナは佛国の財産でなければならないと述べ、この殖民事業は決して他の妨害を許すわけにはいかないと公言した。

解説:当時ベトナム、カンボジャ、ラオスはフランスの支配下にあり仏領インドシナと呼ばれていた。

沙河全線の活動

清河城(せいかじょう)を占領した興京(こうきょう)方面の我が部隊は北方に進撃中であるが、その北の撫順(ぶじゅん)街道の救兵台(きゅうへいだい)並びにその東方の馬圏子(ばけんし)には、多くの大砲を有する1個師団以上の敵兵があり、その敵兵に向かって攻撃中と思われる。

解説:2月28日、鴨緑江軍が救兵台(きゅうへいだい)付近に進出し砲撃を始め、各軍もそれぞれ攻撃を開始し、日本軍の攻撃態勢は予定通り進行した。そこで3月1日全戦線にわたって、総攻撃が開始され、奉天の戦いが始まっている。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月五日

露国動乱続報 資産家は家を挙げて避難の準備を始めている

英国海軍予算 1905年度の予算は3億3千万円であり昨年度に比べると少し減少している

英国海軍拡張 1905年度は戦闘艦1隻、装甲巡洋艦4隻等の建造に着手する予定である

独逸給炭船 9隻の独逸給炭船がバルチック艦隊を追ってポートサイドを出港した。   

露国動乱続報 3日ロンドン特約通信員発

ピータースブルグの形勢は重大な危惧を惹起しつつある。職工等は今日(3日)正午までにその要求が入れられない場合には大々的な同盟罷工を起すと脅迫している。資産家は家を挙げて避難の準備を始めている。モスコー及びワルシャワに於いても動乱が起こり非常に不穏な情勢である。

英国海軍予算 4日上海経由ロンドンルーター社発

1905年度の英国海軍予算は3億3千万円であり、昨年度に比べると少し減少している。これは主として新艦建造費及び修繕費が少なくなった為である。又前年度の予算がチリー海軍の巡洋艦2隻を購入した為金額が増加している事も一つの原因である。

解説:チリーはアルゼンチンとの紛争に備え、イギリスで巡洋艦を建造していたが紛争が終わり不要となったため、その売却先を探していた。イギリスは、ロシア海軍が購入交渉を始めている事を知り、また日本は国会が閉会中で予算が付かない状態であったため急遽2隻とも購入した。この巡洋艦がここに報道されている巡洋艦である。その後日本はアルゼンチンがイタリアで建造した2隻の巡洋艦を購入した。それが「日進」と「春日」である。

英国海軍拡張 (同上)

1905年度は戦闘艦1隻、装甲巡洋艦4隻、航洋駆逐艦6隻、海防駆逐艦12隻、潜航艇11隻の建造に着手する予定である。

解説:この年に建造された戦艦が有名なフィッシャー提督の「ドレッドノート」型であり、次のホームページに詳しく解説されている。

「戦艦ドレッドノート」 http://ww1.m78.com/topix/dreadnought.html

独逸給炭船(同上)

9隻の独逸給炭船、2隻の軍需物資搭載船がバルチック艦隊を追ってポートサイドを出港した。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月六日

形勢いよいよ危し 大同盟罷工の開始が再び宣言され、組織的な叛乱が起こる恐れがある

北海事件賠償 英国が要求した金額は約65万円であった

ポーランドの動乱 ワルシャワの同盟罷工は広く一般の職業に広まる勢いがある

全線の戦況 我が軍は間もなく全線を挙げて本戦に移るであろうと言われている

形勢いよいよ危し 

大同盟罷工の開始が再び宣言された。罷工に続いて組織的な叛乱が起こる恐れがあり、革命党員等は外国使節に対して、露都に留まり妄りに外出しないように警告した。戦争に対しては一般に無遠慮な悲観説を唱えている。

北海事件賠償 5日上海経由ロンドンルーター社発

英国が北海事件賠償金として要求した金額は約65万円であった。

ポーランドの動乱(同上)

ワルシャワの同盟罷工は広く一般の職業に広まる勢いがあり、罷工者は爆弾や拳銃で威嚇の態度を取っている。

政府がガス会社の職工に職場に復帰するよう強制できないならば、今度の日曜日は全市暗黒となるであろう。

露帝の詔勅の効果はなく、政府は急いでワルシャワ及びロズに軍隊を集めつつある。

全線の戦況

今や我が軍は最東端の興京(こうきょう)方面から最西端の新民庁舎(しんみんちょう)方面までお互いに連携して攻撃運動を開始したようである。その後その筋に達した諸報告によれば我が軍は既に前進陣地を破り、本防禦線に入った部隊もあり、刻一刻戦況が進捗中との事である。そのため我が軍は間もなく全線を挙げて本戦に移るであろうと言われている。

解説:日本軍は3月1日奉天に対し総攻撃を開始している。第2軍(奥大将)はロシア軍の右翼陣を粉砕しつつ、奉天の西側に向かって進撃しようとし、第3軍(乃木大将)はあたかも第2軍を旋回軸として大旋回を開始している。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月七日

詔勅の是非 露帝が発した前後2回の宣言に対して欧州の諸新聞中、或ものは之を非難している

渾河(こんが)の大勝 最近欧露から到着したばかりの第16軍団の2個師団を全敗させた

露都罷工続報 5万1千人が既に職を離れている 

詔勅の是非 5日ベルリン特約通信社発

露帝が発した前後2回の宣言に対して欧州の諸新聞中、或ものは之を非難し或ものは差し控えた口調で評論している。第2回の詔勅は露帝が改革の目的を達成するために民選代議士を招集することを公表したものである。

渾河(こんが)の大勝 6日上海経由ロンドンルーター社発電

日本軍は渾河の対岸に於いて顕著な勝利を獲得し莫大な損害を敵に与えて、最近欧露から到着したばかりの第16軍団の2個師団を全敗させ極めて多量の弾薬を捕獲した。

露都罷工続報 6日上海経由ロンドンルーター社発

セントピータスブルグに於ける同盟罷工運動は次第に勢力を増して、5万1千人が既に職を離れている。但し去る土曜日は無事に経過した。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月八日

露都小康 セントピータースブルグに於いては、騒動が再起することはなかった

奉天大混雑 日本軍の意外な出現により、奉天の市中は大混雑となっている

敵総帥の逃げ支度 クロパトキン将軍は幕僚と共に汽車に乗った 

奉天城外戦況 奉天占領は本日中と思われる

騎兵中尉南部伯 南部中尉もついに満州の雪と消えた 

露都小康 6日ロンドン特約通信員発

予期に反してセントピータースブルグに於いては、騒動が再起することはなかった。

奉天大混雑 7日上海経由ロンドンルター社発電

在奉天ルーター通信員の報道によれば、日本軍の意外な出現により露軍はびっくり仰天させられ、奉天の市中は大混雑となっている。

解説:クロパトキンは奉天東側の鴨緑江軍を乃木軍と思い、急遽シベリア第1軍団を奉天東側に移動させた。しかし本当の乃木軍出現の報に驚いて、先に東側に回したシベリア第1軍団を呼び戻した。東に駆け付け、西に走ったシベリア軍団はすっかり疲れてしまった。

この間、第3軍団(乃木軍)は全力で奉天西北方に達し、まさに、奉天を側背からおびやかすようにみえたので露軍は驚いている。

敵総帥の逃げ支度 6日新民屯特派員発

クロパトキン将軍はただ今(午後2時)幕僚と共に汽車に乗った。

奉天城外戦況 6日新民屯特派員発電

渾河(こんが)の敵は昨夜撃退され露軍は奉天の南3里の場所に居る。奉天占領は本日中と思われる。奉天の敵主力は城北に留まり、今や戦闘は激烈を極めている。

騎兵中尉南部伯

定洲の初陣にも独り傷つかず、鴨緑江の役、遼陽の役、沙河の会戦にも微傷だにしなくて、武運の極めて目出度たかった南部中尉もついに満州の雪と消えた。

その任務に倒れる名誉とはいうものの南部家は由来不幸が多く、祖父母、父母相次いで長逝(ちょうせい)し、今や最も期待されていた中尉が戦没した。残るのは令弟令妹各1人のみで令弟は利淳といい学習院に在籍している。

解説:南部中尉は、盛岡藩藩主の直系である。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月九日

露都職工又動く 警察署長は職工を追い散らせようとした際撃ち殺されてしまった

大戦続報(8日朝) 馬群丹付近において我が部隊は北方に向け追撃中である

奉天陥落予想 当地では人々は陥落の情報を待ち受けている

露都職工又動く 8日上海経由ロンドン特約通信員発

露京のブチロフ工場の職工は一昨日、蒸気機関2つを破裂させ、続いて職工仲間の間で闘争が起こり、22名が死傷した。彼等は選挙で選んだ委員が逮捕されて退去を命じられたため非常に憤激している。警察官は遂に彼等の不平仲間の首領を放逐したいと思ったが、しかし警察署長は職工を追い散らせようとした際撃ち殺されてしまった。

大戦続報(8日朝) 3月8日午前大本営着電

馬群丹付近において数日来優勢な敵と交戦中であった我が部隊は本日午前8時頃敵をその陣地より撃退し、北方に向け追撃中である。

奉天陥落予想 7日新民屯特派員発電

奉天総攻撃は今朝より開始されたと聞いている。既に三方を包囲された情勢であるので露軍は退却が困難な位置に居りその損害は莫大なものとなりそうである。当地では人々は陥落の情報を待ち受けている。

解説:第3軍(乃木大将)が奉天の頸部に突き入ろうとした3月7日に戦気は動き始め、先ず第1軍(黒木大将)正面のロシア軍に異常が認められた。砲撃が間遠くなり、後方では車両の往復がひんぱんになった。黒木軍司令官はこれらの兆候から、ロシア軍は退却しようとしていると判断し、第1軍将兵はロシア軍を急迫して渾河(こんが)に迫った。

大山総司令官は、決戦の時いたると判断し、8日午前10時各軍に追撃命令を発した。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月十日

 

奉天城内 3月8日総追撃の命令の中で部隊の奉天城内に宿営することを厳禁する  

敵全軍の退却 我全軍の追撃、敵は今朝から退却を始めた

奉天城内 (軍隊宿営の厳禁)

大清国帝室発祥の地を尊重し並びに奉天に居住する支那人民の安寧を保持するために、満州軍総司令官大山巌は昨日3月8日総追撃の命令の中で、部隊の奉天城内に宿営することを厳禁する。 明治38年3月9日 大本営

敵全軍の退却 我全軍の追撃 38日夜大本営着電 満州軍総司令官

敵は今朝から退却を始め、我が各軍は猛烈に之を追撃中である。

解説:9日は昼頃から、満州特有の烈風が吹き荒れたが、各軍はいっせいに追撃に出て、夕方にはほぼ輝河の線に達した。この日第3軍(乃木大将)は、優勢な敵の抵抗を受けて、非常に苦戦した。特に奉天北方約7マイルの鉄道駅を攻撃した第1師団は、大逆襲を受け、一時危険な状態となった。退路を断たれまいとする露軍が必死の反撃に出たのである。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月十一日(土)

清国人の感謝 奉天城内に宿営する事を禁じた命令に対して一般支那人は心から感謝している

罷工暴動続報 露国労働者及び農民の運動は引き続き蔓延している

奉天占領 本日10日午前10時、奉天を占領した。 

清国人の感謝 10日上海特派員発

奉天城内に宿営する事を禁じた大山総司令官の命令に対して一般支那人は心から感謝している。

罷工暴動続報 9日ロンドン特約通信員発

露国労働者及び農民の運動は引き続き蔓延しているが、極東の戦争は内政の現状と離れられない関係があり、予備兵の暴動が再発する兆しがある。

西シベリア鉄道員の罷工が眼前に迫っているとの見方がある。

奉天占領 3月10日午後大本営着電

本日10日午前10時、奉天を占領した。数日来の包囲攻撃は全くその目的を達し、今や奉天付近の各所において大変な激戦中であり、捕虜並びに兵器、弾薬、糧秣等諸軍需品を非常に大量に捕獲したためまだ十分な調査がなされていない。

解説:10日、各軍は敗走する敵を追ってさらに進撃中である。

鴨緑河軍(川村大将)は撫順及びその上流に出た。

第1軍(黒木大将)はその左側に進んで、奉天攻撃に向かう第4軍を援護した。

第4軍(野津大将)は、第2軍と第3軍が西方で敵を牽制している間に、奉天の東方を突進、敵の背後を衝いた。このためロシア軍2個師団は、壊走あるいは降伏した。

第2軍(奥大将)は奉天西部及び北部を進撃。午後3時には第1師団の一部が奉天城内に突入した。

第3軍(乃木大将)は、早く鉄道線を手中におさめ、包囲を完成させようとあせったが、ロシア軍は攻撃目標をここに集中し、断固として拒んだ。そのためロシアの大軍を望みながら、ついに取り逃がしてしまった。

同日午後9時、大山総司令官は戦闘の終結を宣言した。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月十二日(日)

露国農民蜂起 数千の農民が隊伍を組み財産を略奪し又は焼き捨てた

ハル事件落着 駐英露国大使は損害賠償金6万5千ポンドを英国外務大臣へ手渡した。 

大包囲 大勝利 大収穫 敵は全く隊形を乱して、疲労困憊の様子で続々と北方に退却する

露国農民蜂起 11日上海経由ロンドン特約通信員発

オレル、チェルニゴフ地方においては、数千の農民が隊伍を組み財産を略奪し又は焼き捨てたため露国政府は遂に強力な軍隊を派遣した。

ハル事件落着 11日上海経由ロンドンルーター社発

駐英露国大使ベンケンドルフ伯はハル漁船の砲撃事件の損害賠償金6万5千ポンドを英国外務大臣ランスダウン侯へ手渡した。

解説:本紙の2月1日、3月1日等に関連記事がある。

大包囲 大勝利 大収穫  3月10日夜大本営着電

諸報告によれば、敵は本日正午より鉄道線路と奉天街道の中間付近を、全く隊形を乱して、疲労困憊の様子で続々と北方に退却する。その数は幾万であるか確かめる事が出来ない。その付近に居る我が歩兵や砲兵は逐次この敵に銃砲火を集中し莫大な損害を与えつつ、日没となった。

解説:大山総司令官は、10日午後9時戦闘の終結を宣し、兵を治めた。ここに奉天大会戦は終了した。この戦闘に参加した日本軍の兵力は25万人で死傷者7万人に達した。一方ロシア側は32万人で死傷者は9万人であった。これらの数字は、それまでの戦争史上に例がなく、規模の点でも、戦史に新たな1ページを加えた。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月十三日(月)

講和の風説 デイリーテレグラフは露帝が講和会議を開くであろうと報道したが未だ確かではない。

メッケル将軍の評 メッケル将軍は日本軍の今回の勝利は日露戦争を終結するものであると述べた。

祝勝(横須賀) 官民大祝賀会が、本日大津海軍射撃場に於いて開催された

収穫 大捕虜 捕虜4万人以上、敵の遺棄した死体2万6千5百人、死傷者 約9万人

社告 本紙の転載は自由であるが転載時必ず「東京朝日着電」等と付記する

講和の風説 11日ベルリン特約通信社発

デイリーテレグラフは、露帝が英仏2国を通じて講和会議を開くであろうと報道したが未だ確かではない。但し外務大臣ラムスドルフ伯は講和を拒否しているが、高級将校たちはこれを歓迎しているのとは確かである。

メッケル将軍の評 (同上)

前日本陸軍顧問であったメッケル将軍は日本軍の今回の勝利は日露戦争を終結するものであると述べた。

祝勝(横須賀)

横須賀、豊島、浦賀の3町長の発案による官民大祝賀会が、本日大津海軍射撃場に於いて開催された。横須賀町民は、鎮守府前から、豊島町民は要塞司令部から、浦賀町民は同地小学校から何れも国旗を持ち、隊伍を組んで午後2時式場に集合した。横須賀町長の祝辞、井上鎮守府司令長官の万歳三唱の後折詰めを開き歓を尽くし、祝意を表した。

大収穫 大捕虜 大死傷 3月12日午後大本営着電

沙河方面の各兵団に於ける捕虜、死傷者の概数は次の通り。

 捕虜 少将ナヒモフ以下4万人以上

 敵の遺棄した死体 2万6千5百人

 死傷者 約9万人

社告

本紙並びに号外紙上の電報及び記事は、特にお断りする分の他、全て他の刊行物において転載自由である。その転載の場合、出所の記入がないため本社の権利上迷惑を受けた場合が少なからずあったため、今後転載に関して次の通りとする。

 ・転載時必ず「東京朝日着電」等と付記する。

 ・号外発行の際は、前項の付記文字は号外記事の中の最大文字と同じ大きさとする。

 ・転載時文章を修正した場合も同様とする。

解説:本紙は、この社告にあるとおり明確に「東京朝日新聞」と明記している。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月十四日(火)

講和否定 露国外務省は講和を申し出るとの噂を否定した

なお追撃 昨12日には敵を奉天の北方10里以北に完全に駆逐し、なお追撃中である

敵総帥 我が軍の退却は各軍の非常な尽力により遂に危機を脱する事が出来た

講和否定 13日上海経経由ロンドンルーター社発

露国外務省は講和を申し出るとの噂を否定した。

駐米露国公使カシニイ伯もまたワシントンに於いて露帝の最後の決心は、勝利を得るまで戦争を継続することであると明言した。

なお追撃 3月13日午前大本営着電

各方面より敵を追撃して北進した各兵団は、各所に於いて抵抗を継続する敵の敗残兵に多大の損害を与えつつ、昨12日には敵を奉天の北方10里以北に完全に駆逐し、なお追撃中である。

敵総帥 13日上海経由ロンドンルーター社発電

10日(金)午後6時、クロパトキン発電報で「我が軍の退却は最大危機を極めたが幸い各軍の非常な尽力により遂に危機を脱する事が出来た。」と述べている。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月十五日(水)

敵総帥辞職 クロパトキンは総指揮権を他人に譲渡する事を露帝に希望した

敵の空頼み 日本の財政が枯渇するであろう事を信じ、戦争を継続しようとする空気がある

英国新聞讃評 英国新聞は異口同音に日本軍の戦術と勇敢を賞賛している 

敵総帥辞職 14日上海経由ロンドンルーター社発電

ロンドンタイムス在露通信員の報道によればクロパトキンは静養を要する為総指揮権を他人に譲渡する事を露帝に希望した。

敵の空頼み 13日ロンドン特約通信員発電

一般人民の間に平和を要求する声があるにも拘わらず、セントピータースブルグの情勢は異なり、日本の財政が枯渇するであろう事を信じて、その時に露国にとって最も有利な条件で平和を締結できるであろうと考え、当分戦争を継続しようとする空気がある。

英国新聞讃評 

英国新聞は異口同音に日本軍の戦術と勇敢を賞賛している。

タイムス新聞の在露通信員は露軍の損失を大砲500門、死傷者20万人と報道し、この損害をもって事実上露軍の全滅であると称している。また他の某新聞は今や露国唯一の政策は講和をすることであると云い、更に他の一新聞は露国政府が事実上講和の風説を打ち消した事を嘲り、これは露国の蒙昧を示すものであると批評している。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月十六日(木)

今日もなお虚喝か:露国が無期限に戦争を継続するという威嚇は単なる虚喝に過ぎない

佛国拓相の東遊 極東における防禦方法の改善を研究する為である 

第3艦隊発進 第3艦隊は13日モロッコからクレタ島のスダに到着した

今日もなお虚喝か 14日ロンドン特約通信員発

タイムス新聞が暴露した露国財政状態の弱点から察して一般に露国が無期限に戦争を継続するという威嚇は単なる虚喝に過ぎないと思われる。

佛国拓相の東遊 15日上海経由ロンドンルーター社発

佛国の拓務卿クレアンテル氏が本年9月、印度支那を訪問する予定であるが、これは、極東における軍事バランスの変化(注 ロシアの敗退)に対応する同地方の防禦方法の改善を研究する為である。

第3艦隊発進

確かなる筋に達した情報によれば、第3艦隊の戦艦ニコライ一世、装甲巡洋艦3隻、巡洋艦1隻及び貨物船等は13日モロッコからクレタ島のスダに到着した。

解説:この戦艦「ニコライ一世」は、やがて日本海海戦で降伏するが記念艦「三笠」の艦内にはこの戦艦の艦橋にあった「血染めの海図」が展示されている。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月十七日(金)

農民の蜂起 皇帝及び某皇族の御料地を略奪した

鉄嶺占領 16日午前零時20分鉄嶺を占領した

鉄嶺占領の結果 兵站基地であったため敵は多くの軍需品を失ってしまった 

農民の蜂起 16日上海経由ロンドンルーター社発

オーレル県及びチェルニゴフ県の農民等は皇帝及び某皇族の御料地を略奪した。

鉄嶺占領 3月16日午前大本営着電

我が前進部隊は至る所で敵を急追し、今や16日午前零時20分鉄嶺を占領した。

鉄嶺占領の結果

鉄嶺は沙河線を第1とすれば第3線の防禦陣地にあたる景勝の地であり、多くの防御工事が施された兵站基地であった。ここが今や我が軍のものになった為、敵は多くの軍需品を失ってしまった。敵軍がこの地を兵站基地に選定したのは満州東北部の物資がことごとくこの地を経由するため、既に大倉庫及び問屋があったためである。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月十八日(土)

日仏の関係 佛国拓殖務卿は植民地の防禦を完全にするのはフランスの義務であると述べた

ただ講和あるのみ 戦争の継続は露国の自殺行為に過ぎない

鉄嶺占領特報 敵軍の一部を撃破して夜半完全に鉄嶺を占領した

日仏の関係 17日ロンドン特約通信員発

佛国拓殖務卿クレメンテル氏は会見者に、「日本の膨張を恐れる理由はない。日本と仏の関係は親密であるが植民地の防禦を完全にするのはフランスの義務である」と述べた。

ただ講和あるのみ 16日上海経由ロンドンルーター社発

パリーの銀行家が露国の新外債を発行する契約に調印する事を拒否した一事は、実に平和に向かわせる一大要因であると認められる。何故なれば銀行家が拒絶したのは、露帝の決心があくまで戦争を継続しようとしていることを見て現在の戦況から考えて、これは露国の自殺行為に過ぎないと考えたからである。

鉄嶺占領特報 16日西奉天特派員発(軍用電信)

我が友軍の一部は昨日午後、鉄嶺付近に於いて我が追撃を拒否していた敵軍の一部を撃破して夜半完全に鉄嶺を占領した。

敵は混乱して北方に敗走し、鉄嶺駅及び糧秣庫等に敵が火を放ったようである。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月十九日(日)

独逸宰相の演説 独逸の運送船は露国の艦隊に随行する事は許されていない

敵総帥の更迭 クロパトキンは満州軍総司令官の職を罷めた

熱心な講和論 いかなる過酷な条件でも受け入れて和を講ずる事が露国を救う事になる  

独逸宰相の演説 17日ベルリン特約通信社発

独逸宰相は帝国議会において、独逸の運送船は露国の艦隊に随行する事は許されてなく、もしドイツ汽船会社が法律や傭船契約に違反することがあれば独逸政府はこれを告発すると演説した。

解説:ドイツ汽船会社の給炭船がバルチック艦隊に随伴して、インド洋を横断している。

敵総帥の更迭 17日ロンドン特約通信員発電

クロパトキンは満州軍総司令官の職を罷め、第1軍司令官リネウイッチ将軍がその任務を引き継ぐことがその筋より公表された。

解説:老将軍リネウイッチは最近支那の匪賊事件に関して長躯北京に入り、後宮に闖入して掠奪を行った事により剛勇の名を揚げた人物である。学識も識見もない、恐らく連隊長程度の地位に置いたならば、勇猛な将校であったろうと元大蔵大臣であった「ウイッテ」が酷評している(原書房 ウイッテの回想録)。

熱心な講和論 (同上)

メンチェルスキー公は、戦争を止めなければならない事を無遠慮に主張して、「露国は日本に打ち破られ、この上戦争を継続する事は露国を滅ぼす事に他ならず、いかなる過酷な条件でも受け入れて和を講ずる事が露国を救う事になる」と述べた。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月二十日()

残敵更に敗北 開原(かいげん)付近の敵は続々と北方に向かい退却中である

将校の死傷:奉天大戦に於ける特務曹長以上の死傷者は、昨日までに1千2百12名である

白耳義の平和論:露国を危機から救出する道は、ただ平和あるのみ。

南洋に島噴出:南硫黄島の東方約3海里に新たに小島が噴出したのを発見した。 

残敵更に敗北 18日午後8時15分西奉天特派員発(軍用通信)

開原(かいげん)付近の敵は続々と北方に向かい退却中であり、某地の駅は昨日午後兵火が盛んであった。法庫門付近には既に敵兵は居ない。

昨夕沙河子(さかし)以南の地には敵兵なしとの情報がある。

将校の死傷

奉天大戦に於ける特務曹長以上の死傷者は、昨日までに1千2百12名であり全体の損害は5万を僅かに越すと言われている。

渾河(こんが)は既に解氷している。

白耳義(ベルジューム)の平和論 外務省着電

ベルジューム新聞紙は奉天、鉄嶺の占領を評価して、日本軍の着々と成功する事を驚嘆し、露国の国内外の現状から戦争を継続する事は露国にとって愚策であると公言している。

また露国の基礎を形成している農民ですら叛乱を企てている時勢に、満州に新たに軍隊を送る事は、とうてい不可能であり、現に露国を危機から救出する道は、ただ平和あるのみと論断している。

南洋に島噴出

南硫黄島の東方約3海里に新たに小島が噴出したのを発見し、硫黄島移住民は危険を冒して実地を探検し、本月4日移住民中谷久吉、東忠三郎の両氏は小笠原島庁に出頭し、口頭でその始末を報告した。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月二十一日()

旅順開城審問 ステッセルを審問するため、ロップ将軍を議長とする委員会が組織された

独逸は日本贔屓 独逸政府は日本が独逸において公債を募集することに反対しない

開原占領 我の一部隊は19日午前4時開原(かいげん)に進入して、これを占領した

旅順開城審問 20日ロンドン特約通信員発

旅順を開城した状況を調査して、ステッセルを審問するため、ロップ将軍を議長とする委員会が組織された。

独逸は日本贔屓 19日ベルリン特約通信社発

独逸宰相ビューロウ伯は、独逸政府は日本が独逸において公債を募集することに反対しないと議会において演説した。

佛国新聞フィガロはこれらの演説は、露国に対して遠慮がちであるものの、日本に対して好都合であると論評している。

開原占領 20日午前大本営着電

我の一部隊は19日午前4時開原(かいげん)に進入して、これを占領した。

午前10時30分に敵騎兵5、60騎、次いで歩兵約3中隊が逆襲してきたが悉くこれを北方に撃退した。開原以南の本道路上の橋梁は敵兵が焼却し、鉄道橋の一部も破壊した。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月二十二日() 

   昨日は春分の日につき本日新聞休刊日 臨時発行

佛国技師解雇 佛国公使は佛国人技師4名の報酬及び旅費として3万4千円を請求した

敵帥の進退 クロパトキン将軍が満州に引き続き勤務する事を申し出た

我輸送機関 1週間以内に奉天まで列車が開通する予定であると報道した

佛国技師解雇 21日京城特派員発

予て韓廷が平攘炭鉱に雇っていた佛国人技師4名が近日中に解雇される予定であり、佛国公使は外部(外務省にあたる)に対してその報酬及び旅費として3万4千円を請求した。

解説:当時の1万円は現在の価格にすると1億円前後と思われる。

敵帥の進退 20日ロンドン特約通信員発電

クロパトキン将軍が第1軍司令官として満州に引き続き勤務する事を申し出たとの報道は確かではない。

我輸送機関 21日ロンドン特約通信員発

黒木軍に従っているルーター通信員は13日付け電報で、渾河(こんが)の鉄橋は殆ど修復を終わり、1週間以内に奉天まで列車が開通する予定であると報道した。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月二十三日(木)

捕虜輸送(宇品) 捕虜1、360名を大津伏見へ輸送する

クロパトキン 満州第1軍司令官に任命された

奉天会戦と我が死傷者 我が損害は結局5万に達する事は無いと言われている

捕虜に関する新規定 将官と同相当官に対する給与の年額は金8百円

捕虜輸送(宇品)

捕虜1、360名を本日午後、大津伏見へ輸送する。

クロパトキン 21日ベルリン特約通信社発電

クロパトキンは満州第1軍司令官に任命された。

コメント:クロパトキンは満州軍司令官を解任された後、自ら希望して格下の第1軍司令官となった。

奉天会戦と我が死傷者

奉天会戦における我が損害の総数は未だに発表されていないが、12日までの総数は4万6千である。以後は残敵を駆逐する程度の他さしたる激戦が無かったため、今回の大戦の我が損害は結局5万に達する事は無いと言われている。

捕虜に関する新規定

捕虜民家居住規則により捕虜に対する給与の年額は次のとおり。

 将官 同相当官  金8百円

 佐官 同相当官  金6百円

 尉官 同相当官  金5百円

解説:現在の貨幣価値にすると、8百万円から5百万円を支給されていた事となる。当時海軍少尉の年俸は444円であったので、相当な厚遇といえる。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月二十四(金)

日英同盟 日本が同盟の継続を希望している証拠として日本の新聞の論説を引用している

上院の海軍討議 前海軍大臣セルボーン卿は、各国海軍の地位について演説した

クロパトキン 露国皇帝は、将軍が満州軍第1軍司令官として勤続する事を承認された

日英同盟 22日ロンドン特約通信員発

ロンドンタイムスは日本が英国と同じく日英同盟の継続を希望している証拠として、東京朝日新聞及びその他の新聞の論説を引用している。但し同盟条約を拡張して、同盟国の一方が他国と交戦する場合、相互に援助する事を義務としたいという日本の主張は早計に過ぎると述べている。

上院の海軍討議 23日上海経由ロンドンルータ社発

前海軍大臣セルボーン卿はその演説の中で、各国海軍の地位について次のように述べた。

各国海軍の地位に大きな変化があったが露国はいずれ一大海軍国となるであろう。佛国は依然として艦船の建造を維持し、その海軍の有効性を維持している。独逸及び米国は同じように増強し、その海軍は共に有力であり、有効性を示している。

クロパトキン 22日ロンドン特約通信員発

露国皇帝はリネウイッチ将軍の同意を得て、クロパトキン将軍が満州軍第1軍司令官として勤続する事を承認された。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月二十五月(土)

鹿島艦進水式 日本の戦闘艦鹿島が進水式を挙行した

ポーランドの騒乱 ポーランドのクトノ地方に於いて大規模な農民党の暴動が発生した

日英同盟 タイムスは日英同盟を改正するという日本の政治家の意見を同情を持って評論している

鹿島艦進水式 24日上海経由ロンドン特約通信員発

日本の戦闘艦鹿島が林公使の面前で進水式を挙行した。

ポーランドの騒乱 (同上)

ポーランドのクトノ地方に於いて大規模な農民党の暴動が発生し、ワルシャワに於いては軍人と農民との間で激しい争いが起こり、同じくポーランドのオストロ地方に於いては多くの死傷者が発生したと報じられている。

日英同盟 24日上海経由ロンドンルーター社発

タイムスは「日英同盟を改正し、戦時には必ず相互に援助する規程を加え、必要な場合に英国海軍と日本陸軍が共同して清国、ペルシャ及びアフガニスタンに対する脅威を無力化する」という日本の政治家の意見を同情を持って評論している。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月二十六日(日)

新外債成立 新公債3千万ポンドが間もなく発行される

対ポーランド政略 ポーランド総督は、ワルチャワに着任後、天主教教会の集会に出席した

新外債成立 24日ロンドン特約通信員発

ロンドン及びニューヨークに於いて、新公債3千万ポンド(3億円)が間もなく発行される予定であり、協定成立した利率は年4朱5厘、発行価格90であり、煙草専売益金を担保としている。

解説:日露戦争前の国家予算は約25千万円であった。

対ポーランド政略 25日ロンドン特約通信員発

ポーランド総督マリモビッチ将軍は、ワルチャワに着任後、直ちに1831年以来行ったことのない天主教教会の集会に出席し、神父を訪問して、秩序の回復に尽力するよう要請した。この友好的態度は、露国政府がポーランドの平和を熱心に維持したいと考える証と思われる。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月二十七日(月)

新公債好景気 米国の引き受けに属する半分は既に応募申し込みが超過している

船舶液体燃料について 世界の石炭は無尽蔵ではないのでこの研究は是非必要である

新公債好景気 26日上海経由ロンドンルーター社発

英国が引き受ける日本公債の半分は、既に同市場に於いてアンダーライトされ、又米国の引き受けに属する半分はニューヨークに於いて既に応募申し込みが超過している。

船舶液体燃料について

現在英米獨の船で、液体燃料(いわゆる重油)の試験を行っているが、その成績は極めて良好である。ボイラーの簡便さ、乗員の減員、積み込みの容易さ、容積の減少、船体の清潔等に於いては確かに優れているが経済性、戦闘時の高速性能、重油タンクの発火防止策等は未だ容易には解決されない。しかし世界の石炭は無尽蔵ではないのでこの研究は是非必要である。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月二十八日(月)

ゴルキーに対する起訴 政府を転覆させる檄文を書いたとの理由で文豪ゴルキーを起訴した

鹿島命名発表 英国に於いて製造中の第2号甲鉄戦艦を鹿島と命名した

ゴルキーに対する起訴 27日上海経由ロンドンルーター社発

露国の当局者は政府を転覆させる檄文を書いたとの理由で文豪マキシム、ゴルキーを起訴した。ゴルキーは現在リガに滞在している。

解説:ゴルキーはソ連において革命作家となる。

詳しくは次のホームページ参照http://www2s.biglobe.ne.jp/~mike/katuno.htm

鹿島命名発表

海軍大臣は本日22日附通達で英国安社に於いて製造中の第2号甲鉄戦艦を鹿島と命名した旨発表した。

解説: 明治37年6月8日の記事「新戦艦鹿島、香取」にイギリス アームストロング社(安社)に発注されたという記事がある。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月二十九日(水)

ワルシャワの爆裂弾 ワルシャワの警察長官ノルケン男爵は、爆弾を投げつけられ重傷を負った

南露の大反乱 露国南部のコーカサス地方において大反乱が発生している

パナマ運河工事 米国政府は遠からずパナマ運河の掘削工事に着手する

前田少将逝く 奉天会戦で負傷した前田少将は遂に野戦病院で逝去した

米国に於ける日本柔道家 ルーズベルト大統領は山下7段を招き、日々柔道を練磨していた

ワルシャワの爆裂弾 27日ロンドン特約通信員発

ワルシャワの警察長官ノルケン男爵は、警察署襲撃事件を調査のため馬車で急行中、爆弾を投げつけられ重傷を負った。暴漢は追跡した巡査一人も射殺して逃走した。警察署襲撃事件は男爵をおびき出す為警察署を襲撃したもので、革命党が苦心して計画したものである。

南露の大反乱 27日ベルリン特約通信員発

露国南部のコーカサス地方において大反乱が発生している。

パナマ運河工事 (同上)

米国政府は遠からずパナマ運河の掘削工事に着手するために英、獨、佛諸国の技師を招聘する予定である。

前田少将逝く

奉天会戦で負傷した前田少将に対し昨日次の沙汰があったが遂に野戦病院で逝去した。

任陸軍中将叙功三級授金鵄勲章(年金700円)授旭日重光章

解説:年金700円とは現在の価値に換算すると約700万円である。

米国に於ける日本柔道家

米国のルーズベルト大統領は講道館7段山下義韶氏を招き、日々柔道を練磨していたがこれを陸軍士官学校の課目に加えようとして、米国随一のレスリングの選手グラント氏を呼び寄せ、大統領の邸宅で試合を行った。山下7段は「締め、投げ、逆」の三手で4回とも見事グラント氏を破り、このため柔道は士官学校の課目に採用される事となった。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月三十(木)

クリミヤ騒乱 クリミヤのヤルタに於いて、警察の駐在所、倉庫、酒店等が襲撃された

モロッコ問題 独逸は現在のモロッコ問題について、仏国との協議を希望しないと明言した

日米英三国同盟案 ロンドン、デイリー、テレグラフは日英米の同盟を作るべきであると論評した

クリミヤ騒乱 29日ロンドン特約通信員発

クリミヤのヤルタに於いて激しい騒動が発生し、警察の駐在所、倉庫、酒店等が襲撃され、警察官は負傷し、店舗の多くは焼けつつあり、現在憲兵の手で鎮圧中であるがセバストポールから遂に軍艦を現場に派遣した。

モロッコ問題 28日ベルリン特約通信員発

独逸は現在のモロッコ問題について、そのサルタンとのみ交渉する考えであり、仏国との協議を希望しないと明言した。

日米英三国同盟案 28日ロンドン特約通信員発

ロンドン、デイリー、テレグラフは世界の平和を確保し、英領インドの辺境とアジア大陸に於ける日本の領域に対する威嚇、侵入等の跡を絶ち、米国が巨大な利害関係を有する清国の門戸開放を確実にするため日英米の大攻守同盟を作るべきであると論評した。

 

東京朝日新聞明治三十八年三月三十一(金)

日本公債大人気 日本の新しい外債は多くの人々が競争して購入しようとしている

経済上の一異例 日本の場合その例に反してかえって信用を増している

露国全体の不穏 露国全土にわたって、再び不穏な情勢になりつつある

フィンランドの革命運動 フィンランドに発生し革命運動は、急速に蔓延しつつある

独逸寄贈の勲章(広島) 乃木大将に贈呈されるメリット勲章を携え、明日戦地に向かう

日本公債大人気 29日ロンドン特約通信員発

日本の新しい外債は多くの人々が競争して購入しようとしているため、これを発行した各銀行は非常に混雑している。応募額は既に数倍も超過している。

経済上の一異例 (同上)

戦争が一年余にわたって継続する時は、勝敗いかんに拘わらず、大抵その国の財政は信用を減少させるのが常であるが、日本の場合その例に反してかえって信用を増していると当地では人々が噂している。

露国全体の不穏 30日ロンドン特約通信員発

露国全土にわたって、檄文に刺激され、再び不穏な情勢になりつつある。

フィンランドの革命運動 (同上)

フィンランドに発生した秩序ある革命運動は、急速に蔓延しつつある。

独逸寄贈の勲章(広島)

独逸公使館武官フォフテン氏は乃木大将に贈呈されるメリット勲章を携え、明日戦地に向かう予定である。