1 当時の世界情勢

明治43年7月

7月1日
摩洛哥の戦闘 30日タイムス社発
タンジール来電―1200人の佛国軍隊と5000人のモロッコ人(叛賊か)とが、6月23日テドオに於いて激戦した。モロッコ人の戦死は300名であり、沸人は11名戦死し、70名負傷した。
阿片問題 同上
英国下院に於いて植民省予算の審議があり、自由党議員のテオドアー、テーラー氏は、政府が香港及び海峡植民地の阿片窟に加えた措置を感謝し、更に姓名登記をすることを拒んでいる現在の阿片喫煙者全員の登記をさせることを願った。次いで植民次官シーリー氏が起ち、政府の阿片売買に対する意見は変更せずと述べ、香港の同売買を終わらせるためには、多少の補償を与える事が必要であり、そうすれば不平の声は聞かれないだろうと言明した。
解説:海峡植民地とはマレー半島の英国植民地である。

 

7月2日
佛国海相の演説 1日タイムス社発
パリ―来電―海軍大臣は、代議院に於いて演説し、駆逐艦が先頃汽船と衝突して沈没した事に言及し、商港の付近に於いて演習を禁じる規則が往々、無頓着な士官の為に無視されることを認めた。
又復日米戦争論 30日紐育特派員発
新聞記者会の怪物ハースト氏の機関紙ニューヨークアメリカンは、3日間に亘り、日米戦争は到底避ける事が出来ない故に強大な海軍を造るべしとの論文を掲げた。

7月3日
日韓合邦と米国 1日紐育特派員発
日韓合併が切迫していると米国一般に信じられている。しかしこれに対し何等の異論はない。
列国軍艦派遣 1日ベルリン特約通信社発
クリート保護の任にある英沸露伊四国の軍艦9隻はクリート島北岸のスーダ湾に集合した。
解説:6月20日「クリート問題」も続報である。
膠州獨兵増加 2日上海特派員発
山東巡撫は、政府に対し、獨逸が膠州湾付近に歩兵及び騎兵2千名、砲兵1千6百を増加した理由を獨逸公使に質問する様に要請した。政府は大いに驚き、外務部に至急この兵士の撤退を獨逸公使に迫らせる事とした。
解説:膠州湾一帯は獨逸の租借地である。東南アジアに於ける列強の植民地は、英国のインド、ビルマ、マレー半島、佛国のインド支那、オランダのインドネシアであるが遅れて進出した列強の獨逸は、この膠州湾と南洋諸島しかなかった。中国の青島ビールはその名残である。

 

7月4日
日本関税攻撃 3日上海経由ロイター社発
日本の関税は相変わらず厳しい非難の的となっている。ロンドンタイムスは、日本の関税は堅牢であり、耐久性に富む英国製器械の代わりに、粗製の器械を保護している。印刷機械も然りと述べた東京発の記事を掲載した。
昨年の移民 2日紐育特派員発
カルフォルニア州に渡来した昨年度の移民総数は百3万5千5百95人であり、前年より28万3千人多い。

 

7月6日
日露協約成立通告 5日タイムス社発R
パリ―来電―日露協約の調印が行われた。英沸両国政府は、その内容、条件の通告を受けた。
協約と佛国 同上
日刊新聞ル、ジョルナル、デ、デバの報道によれば、沸国は同協約によって、満州の現状維持が保証されたことを歓迎し、且つその成立は、全く清国が満州に於いて威厳を回復しようとする企てに答えたものと認めている。又同新聞は、日本の朝鮮併合完成を妨害するものは全くなしと言明した。

 

7月7日
日露協約論評 6日タイムス社発
タイムスは、社説に於いて日露協約を論じ、これは世界政治の上にも深い意義を有するものである。英国に於いては、最終衝突の機会を取り去るものとして、誠意をもって歓迎されたと説き、又欧州に於ける露国の権威をも回復する所以であると言明した。
解説:この当時は、日露の満州に於ける権益が米、英、仏国で好意的に捉えられている。
日露協約内容 6日上海経由ロイター社発
日露協約は調印され、その内容、条件は英沸両国に通告されたが、但し未だ発表されていない。伝えられる所によると、これは従前の日露諸協定と同一の方針により、満州の現在情勢の維持を保障し、且つ若しこれら日露間の諸協約若しくは清国との間に結んだ諸協約が他から邪魔を蒙る場合には、両国は協力して防護の手段を取る事ができると言われている。
日米戦争論宣伝 5日サンフランシスコ特派員発
例の新聞王と称せられるハースト氏は、最近至る所で日米衝突の免れざる事を論じていたが、4日より当地のエキザー、ナー紙上に於いて、盛んに日米の衝突は免れる事が出来ない事、これに対し米国の準備が無い事を警告し、海軍拡張の必要性を説いている。その筆法は極めて煽動的である。
解説:当時は米国海軍は、英国に次いで第2位の海軍勢力と言われていたが、太平洋側の勢力は殆ど無かった。準備がないとはこの事と思われる。

 

7月8日
日露協約と獨逸 7日タイムス社発
ベルリン来電―クロイツ、ツアイツング紙は日露協約成立を論評して、獨逸が極東に於いて最も願うところは現状維持であり、故に日露協約成立の為に、少しも激昂する様な事は無い。唯米清両国がこれに対し如何なる態度を執るかを見るのは、非常に興味がある事であると言明した。
日露協約評 7日上海経由ロイター社発
ロンドンタイムスは社説に於いて日露協約を論じ、同協約の成立は世界政治上重要な意義を有する出来事である。極東の平和を永久的基礎の上に確立しようと希望するものは最深の満足を以てこの結果を見るに至ったのを祝賀しなければならないと言明した。
クリート問題 同上
本社の得た情報によると、最近クリートの情報は穏やかでなく、クリート議会は、再開に際し飽く迄も「イスラム教議員にギリシャ国王に臣従する宣誓をさせる」と主張する情勢が増加しつつある。依って同島保護の任にある英露佛伊4国は、もしこの様な場合になるならば、如何なる手段を執るべきかについて協議中である。多分その様な行動があれば、4国の軍隊をクリートに上陸させるであろうと信じられている。

 

7月9日
クリート問題 8日タイムス社発
コンスタンティノープル来電―クリート代議院は、無益に且つ危険な難局を生じさせたので、今や速やかにこれを解決する為に断固たる手段を執る時期に到ったと認められる。なお同問題の為、トルコとギリシャ間に衝突が起こる得る恐れがある。
日露協約続聞 8日上海経由ロイター社発
タイムス露都通信員の報道(7日発タイムス特電)は、日露協約の内容、条件が去る6日本社所報のものと同一であることを確認した。
又両協約国は、満州に於ける双方の鉄道を改善し、連絡を完全にする為、互いに友好的な協力をし、同時に各種有害な競争を行わない旨約定した。(この協定が協約中に含められているか、或は別個のものであるか尚不明である)
日韓合併反対運動 7日紐育特派員発
サンフランシスコを中心として、各地に散在する韓国人等が連合して、日韓合併反対会を組織した。米人の助力を求める為である。

 

7月10日
佛国の協約評 9日タイムス社発
パリ―来電=佛国諸新聞は一般に日露協約を歓迎した。ル、ジョルナル、デ、デバ紙は、同協約を以て獨逸膨張派が主唱中であった黄人種反対欧州大連合組織の論に打撃を加えるものとしている。
獨紙の日露協約観 8日ベルリン特約通信社発
獨逸諸新聞は、日露協約が満州に於ける獨逸の商業的競争を制限する様な結果さえ生じなければ、これは極東平和の新結束として歓迎すべきものであると述べている。
巴奈馬運河 同上
パナマ運河の開削工事管理者は、1911年1月を以て、同運河の公式開業式を行う予定と述べた。(備考 米国が同運河を譲り受け、自ら工事に着工して以来約10年、工事はほぼ完了の域に近づいたが難工事がある為、開業式は1915年1月1日と内定しており、この電報の1911年は多分1915年の誤りと思われる。)
解説:実際にパナマ運河が開通したのは1914年8月15日である。

 

7月11日
獨紙の日露協約評 10日上海経由ロイター社発
獨逸新聞は日露協約に対して反対の評論を試み、同協約は主として米国を目的として締結されたのみならず、又他の列強に不利益をもたらすであろうと評論している。フランクフルテル、ツアイツング紙は、同協約は時局に何らの変更をもたらすことなく、日露両国は依然として敵であると論じ、又フォツシラセ、ツアイラング紙は、同協約は日本の最も危険な競争者である米国に対して締結されたと論じている。

明治43年6月

6月1日

南阿連邦創設祝祭 31日タイムス社発
ヨハネスブルク来電―31日(火曜)、南阿連邦の創設を祝す為に、トランスバールとケープ植民地、ナータルとオレンジリバー植民地の4州各地に於いて、周到な準備が行われつつある。又当日は、南阿総督グラッドストン子爵、首相ボタ、将軍その他諸大臣が宣誓を行う等荘厳な儀式を挙行する筈である。
米貨排斥運動 同上
サンフランシスコ清人の組織である数個の商業団体は、清国に於ける米貨排斥を開始する運動に着手する事を決定した。その理由は、サンフランシスコ移民国官吏等が不必要に且つ侮辱的な規則を以て清人旅行者を苦しめているとの事である。
解説:日本人労働者の入国は禁止されているが、清人労働者である苦力はそれ以前に入国禁止になっていた。しかもここにある様に苦力以外の旅行者や商人等も苦力と見分がつかないとの理由で、入国管理官が入国禁止にしている。以前も清国全土で米国製品の不買運動が起こっていた。

6月2日

 

墺帝とボスニア訪問 1日タイムス社発

 

サラゼウス(ボスニア)来電―フランツヨセフ皇帝は、数時間に亘って各宗派の代表者、陸軍将校、諸領事、文官等多数を引見し、一人一人に慇懃にその歓迎に答えられた。午後はローマ教会、イスラム教会、ユダヤ教会等を訪問された。一般大衆は深く感動した様子であった。

 

解説:オスマントルコの衰退に伴い、オーストリアは1908年ボスニア、ヘルチェゴビナを併合した。バルカン半島で唯一ロシアと同じスラブ民族であるセルビアは、脅威を感じ、そして1914年ボスニア、ヘルチゴビナの首都サラエボで、フランツヨセフ皇帝の皇太子夫妻がボスニア系セルビア人に暗殺され、第1次世界大戦が始まっている。

 

飛行機条約 1日サンフランシスコ特派員発

 

合衆国とメキシコ両政府は、急激に進歩中である空中飛行機を利用して、密輸入を計画するものがある事を恐れ、飛行機条約なるものを締結し、飛行機の通過すべき一定の通路を設定しようと、現在協議中である。なお両国政府がこの条約を締結しようとするのは、商品のみならず、移民の潜入をも防ぐ事も目的の一つである。

 

6月3日

 日本国税と英国 2日タイムス社発

 支那協会の書記ウイルコックス氏は、再びロンドンタイムス紙に投稿し、日本の新関税率が特に英国に不利であるとの議論に対する日本新聞の反論に更に反論した。その要旨は、議論上より言えば、日本新聞の議論は正当かも知れないが、しかし実際の結果はどうか。現に綿糸布の輸入税は、新税法に於いて増加しているではないか。新関税法が英国の貿易に果たして不利益を与えるかどうかを判断すべき正確な比較の基礎は、日本が過去11年間実際に賦課してきた税率と新税率との間にある云々

 解説:5月27日の記事「日本関税攻撃」の続報である。

 アルバニア征伐 同上

 アルバニアから来た特報によれば、トルコ軍隊3個師団は、ドヤコリに向け進軍中である。そしてその内一個師団は、何らの抵抗設けずにラホワツを占領した。村民は武器を官軍に引渡している。主要な家屋は消失した。

 解説:アルバニアは1912年オスマントルコから独立した。

 クリート政府の哀訴 2日上海経由ロイター社発

クリート政府は、列国に公文を送り、速やかにギリシャに併合されるよう哀訴した。しかしギリシャの外、列国政府の同意を得るのは難しいと思われる。

 解説:5月31日の記事「トルコの決心」の続報

 哀れな摩洛哥 同上

 公債協約の規定により、佛国監理官はモロッコ関税収入の一割をモロッコ国王に与え、残り9割を自国に取り立てる事に着手した。

 

6月4日
芬蘭自治保存請願 3日上海経由ロイター社発
佛国下院議員百名、同上院議員百50名及びイタリー代議院議員百28名は、文書によって露国国民会議に訴え、フィンランド憲法を保存するよう主張した。
解説:フィンランドはロシア総督の支配下で議会も認められていたが、この記事にある様に憲法が改正されて議会が廃止されようとしている。
日本労働者敬遠 2日ニューヨーク特派員発
カルフォルニア州労働局に於いて、日本労働者を必要とするとの噂があったが、この事に関しスタンフォード大学総長ジョルダン氏は、シカゴに於いて演説し、カルフォルニア州が日本の労働者を容易に入国させるべきとの説は、賛同し難い。例え日本労働者を必要とする状態があるとしても、先ず日本の労働者は渡米しない方が日本の為にも米国の為にも利益になるであろうと述べた。
解説:カルフォルニア州政庁が、日本移民は優秀であり必要との報告書を出しており、これに対する反論の様である。

 

6月6日
クリート問題 5日上海経由ロイター社発
最近、非公式にパリ―を訪問されたギリシャ皇帝は、大統領ファリエル氏及び佛国内閣大臣と会見し、その後同じく非公式にローマに到着した。謂うまでもなく昨今議論沸騰して、険悪な問題となっているクリート事件を協議する為である。そしてギリシャ人もクリート島民も現在の結合関係を解かない決心であり、同時にトルコも又その決心である。
非買同盟と米人 5日サンフランシスコ特派員発
当市清国人の米製品に対するボイコット決議は、米人を非常に狼狽させ、新聞はこれに論評を加え始めている。沿岸連合商業会議所代表者は、支那人側に協議を申し込み、3日当市の商業会議所に於いて、清人委員と会見した。その結果、移民局が移民取扱いについて不法に過激であるかどうかを調べ、若し支那人側の主張に理由があるならば、商業会議所より中央政府に請願することとし、それまでボイコットを一時見合わせることとした。
解説:6月1日の記事「米貨排斥運動」の続報
南京騒乱と欧州人 4日巴里特派員発
清国よりの電報によれば、南京に於いて激烈な騒乱が起こったという報に対して、沈静化を望んでいる欧州人は不安の念を抱いている。
満州移民方針 内国電報5日発
小村外相は、第26議会に於いて従来の北米、南米その他海外移民は最早その余地がない為、今後努めて我が同胞を満韓に集中させる方針であると言明した。
差し当たり東洋拓殖会社の機関により内地人の韓国移住を奨励中の現状であるが、満州方面に於ける邦人移住については、未だ具体的奨励策が無く、従って現在の處、鉄道工事若しくは架橋工事に従事する一部の少数の単独者に限られている。(一部抜粋)
北海道新移住地決定 同上
北海道経営案の実行と共に道庁は、移住民保護政策によって成るべく多数に移住を奨励する目的も以て、先般来各府県に吏員を派遣し、専ら勧誘中であるが、本年度新たに移住地として選定したのは174か所で、この面積は1億4千百95町歩であり、細部は次のとおり。
北見国48か所 5千7百10万町歩、渡島国21か所 7百85万町歩、その他略(一部抜粋)
解説:日露戦争後、北海道への本格的な植民が行われたようである。

 

6月7日
法王回章と獨逸 6日上海経由ロイター社発
イタリーのボロメオ枢機卿聖列3百年祭に当たり、ローマ法王が発した回章は、ボロメオと同時代の宗教改革派を激しく攻撃した為、プロシャの人心を激怒させている。議会に於いては、種々の質問が起こり、政府に対し事件の再発を防止する措置を執るよう要求した。
近東形勢険悪 5日ベルリン特約通信社発
ギリシャ政府は、情勢が容易でない為に、予備兵を招集中であり、トルコ政府は、大いにこれを憂慮しているとの説がある。

 

6月8日
摩洛哥の危機 7日タイムス社発
タンジール来電によれば、フエツ守備隊の一部は、俸給の支払いを受ける事が出来ない結果、脱走した。又現在フエツに向け退却中の一連隊は、引続き叛乱した土蕃に攻撃されたが、遂に脱走した。
希臘の決心 6日ベルリン特約通信社発
アデンよりの報道によれば、ギリシャ政府は、遠からずクリート島をギリシャに併合する宣言を行う意志であり、ギリシャ皇帝はクリート問題を解決する方法が一にその希臘への併合にあることを宣言した。
解説:6月6日クリート問題の続報
前摩洛哥王巡礼 同上
前モロッコ王アブダル、アジスはメッカへの巡礼の途に上った。
解説:現モロッコ王が戦闘に勝利し、前モロッコ王を追放した。
法王失言問題答弁 同上
プロシャ政府は、下院に於ける自由保守両党の質問に答えて、法王が宗教改革家を攻撃したと伝えられたものは、全くローマの新聞が法王の言を曲解した結果であると言明した。
解説:前日の記事の続報

 

6月9日
アルバニア形勢 7日タイムス社発
アルバニアよりの特報によれば、同地の反乱は鎮圧した旨公式に発表された。しかもトルコ政府の楽天的態度に拘わらず同地の難問題が真に解決されたとは信じがたい。因みにトルコ政府は、同地に恒久的守備隊を置き、又人民の武装解除を厳重に実行させる意志があると言われている。
解説:結局アルバニアは2年後独立した。
鉄道問題妥協 7日ニューヨーク特派員発
米国政府と鉄道会社との訴訟事件に関し、6日、26会社の代表者と大統領と会見したが、鉄道会社側よりは一切値上げせずと申しでたので大統領も然らば政府も訴訟を取り下げると容易に妥協が成立したが、これには何か密約があると言われている。
解説:6月5日記事「米鉄の威嚇」の続報
法王と獨逸 同上
ローマ法王は、獨逸巡礼者一行を法王庁に引見し、自己が獨帝、獨逸連邦君主、獨逸人民に対し、至大の尊敬を払っていると言明した。この行動は先般法王の回章の為に、獨逸に於いて喚起した悪感情を和らげる効果があると思われる。
解説:昨日の記事の続報

 

6月10日
日本関税反対 9日タイムス社発
英国マンチェスター市のキャリコ布印染業協会は、タイムスに寄稿し、日本新関税は、大陸の競争者よりも寧ろ英国の印染業者にとって不利であると公言し、且つ比較表を示した。
解説:5月27日「日本関税攻撃」にある日本の新関税は主に英国製品に影響するという記事の続報と思われる。印染(しるしぞめ)とは、半纏、のぼりや暖簾(のれん)、旗などに、屋号や家紋などを 染め抜いてある染物のことで、キャリコ布印染業とは、キャラコという生地の印染業と思われる。
芬蘭憲法廃棄 同上
露国国民議会は、僅か7分間で、一世紀間継続して来たフィンランド憲法の廃止を決議した。
希土関係険悪 9日上海経由ロイター社発
コンスタンティノープル来電―ギリシャ公使はトルコに於けるギリシャ製品の排斥に抗議し、宰相ハツキベイと熱烈な会見を行った。宰相は、この国民的愛国的運動が法律に違反しない限りは、自己もこれに干渉する事は出来ない旨公言した。

 

6月11日
猶太人迫害 10日タイムス社発
露都来電―スモレンスクの官憲は、ユダヤ人に迫害を加え、且つ全員の放逐に着手したとの情報があった。
解説:スモレンスクは、ドニエプル河沿いの古都で、ヨーロッパからロシアへの通り道にある為、ナポレオン戦争等で度々戦火を受けた。
希土関係険悪 10日上海経由ロイター社発
トルコに於けるギリシャ排斥の感情は日を追って益々激しくなり、スミルナに於いては、ギリシャの汽船に対するボイコットが起こり、ギリシャ人は商店を閉じた。
法王回章問題 9日ベルリン特約通信社発
法王庁に派遣されているプロシャ使節は政府の命により、法王の回章に抗議する通牒を法王に提出した。因みにロセルヴィトロ、ロマノ新聞は法王が獨逸新教徒の名誉を棄損する意志がなかったこと、又その獨逸新教徒に対し尊敬の念を持っていると言明した。

 

6月12日
芬蘭案可決 11日上海経由ロイター社発
フィンランドを露国議会の立法に殆ど従わせる議案は、激しい討議の末、23対164の大多数を以て下院の第3議会を通過した。
列国の通帳 11日上海経由ロイター社発
列国領事は、昨日クリート政府に最後の連合通牒を送り、若し回教徒議員をクリート議会に復席させなかったならば、列強はこの情勢を処罰する為に断固たる手段をとるであろうと言明した。

 

6月13日
阿片専売と英国 12日上海経由ロイター社発
英国政府は、広東の阿片専売問題に関し、インド政庁と公信を交わしつつあるが、この阿片専売は条約違反であると認められ、そしてボンベイの阿片商人は皆容易ならざる事態であると認めている。印度貿易は既に夥しい影響を受けており、商人は非常な損害を受けつつある。彼らは条約上の権利が励行される迄、阿片の売下げを停止することを政府に勧告した。

 

6月14日
埃及革命党鎮圧案 13日タイムス社発
アレキサンドリアよりの特報によれば、新聞裁判法、秘密団体、学校紀律に関する3個の議案は、エジプト立法参議院に於いて、軽率にも或る法案は完全に否決され、或る法案は散々に修正を加えられた。但しエジプト政府が党派的煽動を許さない決心を有しているのは明瞭である為、結局遠からず原案どおりにて通過を見る事になるであろうと予想される。
解説:エジプトは英国の支配下にある。
キ元帥辞職説 同上
英国政府は、遠からずキッチナー元帥が地中海陸軍司令長官の職を辞する事を希望する旨を発表するであろうと信じられる。蓋し元帥は元々、同職を好まない色を示しており、唯先帝のご希望二より止む無く就任を受託したものである。
解説:キッチナー元帥は、第一次世界大戦に於いて陸軍大臣となった。

 

6月15日
キ元帥辞職 14日タイムス社発
キッチナー元帥の地中海陸軍総督辞職が英国上院に於いて発表された。
獨逸陸軍演習 同上
獨逸に於いては、従来の25万の陸軍招集兵に代えて、今年度は37万1千を招集し、武装した総兵員数は百万に達する筈である。9月ダンチッヒとケニヒスベルヒ間で演習を挙行する予定で、今回は海軍上陸作戦を含み、且つ陸軍の操舵式飛行機4機、ライト式飛行機10機をも使用する様である。
埃及問題討議 14日上海経由ロイター社発
英国下院に於いて、一団の弁士がエジプトの情勢について注意を促し、政府の自治制度案を攻撃し、今のエジプトの情勢は速やかに断固たる措置を必要とすると主張した。然るに外相サー、グレイ氏はエジプト駐在官ゴルスト氏の事業を称賛し、エジプトの情勢は諸君の言う様に重大ではない。しかし真面目な警告は必要であり、もし不穏な兆候が継続する場合には、自己の権力の存在を明らかにせざるを得ないと言明した。

 

6月16日
近東問題と英国 15日上海経由ロイター社発
英国下院に於いて、外相サー、グレーは、クリート問題に関し次の様に言明した。
英国が他の列国と異なる意見を持っているとの報道は、事実無根である。英国の目的は列国と同一であり、クリート島民が若しこの上、現状の打破を企て、以てトルコを怒らせて近東の平和を危うくし、列国に断固とした手段を取る事を余儀なくさせるならば、これは決して彼らの利益にならない云々
埃及政府の強圧 同上
カイロ来電―エジプト内閣は、新たに制定され、そして立法議会が否決した新聞法案を原案のまま可決した。又秘密結社及び学生教育に関する法律(この2法案は立法議会が修正し、骨抜きにしたもの)を否決した。そして内閣は強い決意で、議会の行動を制圧し、議会の権力を弱めつつ、政治的犯罪の発生を予防している。
解説:当時のエジプトは、英国の高等弁務官の支配下にあり、内閣が立法機能を持っていた様である。英国の新聞に、英国のエジプト統治より日本の韓国統治の方が優れているという記事があった。
法王回章問題落着 14日ベルリン特約通信社発
ローマ法王庁及びプロシャ政府の衝突は、法王庁より不都合を謝する通牒を送って、遂に決着した。又法王庁の教務卿メリー、デル、ワル大僧正はこれに付言して、法王の回章は発表されないと公式に宣明した。なおプロシャ王はこの回章に関し、法王に書簡を送るであろう旨発表した。
解説:しばらく続いていたこの報道もこれで決着した。

 

6月17日
排日的暴動 15日ニューヨーク特派員発
ダーリントンに於いて暴動があり、日本人が退去した。これは酒屋と公証人等の扇動に基づくとの事であるが、材木会社側の声明によれば、数日前より不穏な形跡があったので、会社より同地の官憲に保護する事を嘆願したが拒絶された。故に14日シャトル駐在帝国領事は、現場に出張して調査中である。又材木会社には、他に労働者が居ないので、日本人を呼び戻そうとして奔走中である。そして両三日中に帰還するとの事であり、会社は今後暴行を防ぐ為に、柵の新築に着手し、番人を置く計画である。
国務郷の親日論 同上
国務郷ノックス氏は、15日ペンシルバニア大学の卒業式に臨み、米国外交方針を発表し、に関し次の様に述べた。
現在見られる様な日本の発展はペルー提督の開国が契機となっており、日本政府の改革も米国政府のやり方に倣う所がある。そして半世紀間日本と親密になったのは米国人の誇りとする所であり、故に今後ますます親密にすることを望む。
西蔵の政教分離 15日北京特派員発
清国政府は外国の干渉を恐れ、チベットの処分策を決定していなかったが、新ダライラマを僭立後のチベットは平和であり、駐蔵大臣の政令が能く行われているので、この度、年来の希望である政教を分離し、新ダライラマは宗教のみを管理し、商務、外交は駐蔵大臣が政府の命を受け折衝の任に当たる事とした。従って将来ダライラマと外国人との間に条約を結んでも清国政府はこれを承認しない事とし、これに関し外務部より北京公使館に通牒したとの事である。
解説:本来のダライラマは、清国の手を逃れている。最近の中国のやり方と似ている事を100年位前にも行っていた様である。

 

6月19日
波蘭の暴行 18日上海経由ロイター社発
露国のポーランドに於いて再び暴動が発生しており、ラドム(ワルシャワの北60マイル)に於いて憲兵大佐が殺害された。又ワルシャワ市に於いては、警察署長に爆弾を投げた者が居たが、署長は幸いにも負傷しなかった。刺客と従犯者ともに自殺した。
解説:当時はポーランドとフィンランドはロシア領であった。
土国の警戒 同上
コンスタンティノープル来電―トルコ政府はギリシャの軍事的準備に対し、驚いてはいないが警戒的手段として予備旅団を招集する事に決定した旨宣告された。又コンスタンティノープルに於いては、昨日ギリシャ貨物のボイコットが宣言された。
解説:度々報道されている通り、クレタ島を巡り、ギリシャとトルコが対立している。

 

6月20日
クリート問題 19日上海経由ロイター社発
佛国外務卿ロショ氏は、内閣会議の席上でクリート問題に関し次の様に報告した。クリート保護にあたる列国は、同島に関する意見で完全に一致しており、列国はその決意を尊重させ、且つ緩急に応じる為に、今やスーダ湾に於ける海軍力を増加しようとしている。
解説:前日の記事の続報

 

6月21日
ロ氏の将来 20日タイムス社発
ニューヨーク来電―米国前大統領ルーズベルト氏は、ニューヨーク市長ゲイノア氏の歓迎演説に答えて、予は各種国民的問題の解決に助力したいとの念が強いと言明した。この言は、氏が再び公的生活に入り、活発に活動したいとの意思を表したものと一般に認識された。
解説:ルーズベルトは、1912年の大統領選挙に立候補したが敗れた。
獨逸陸軍進歩 20日上海経由ロイター社発
ベルリン来電―獨逸は陸軍の専門分野の能力を増強中であると伝えられる。そしてその実例を挙げれば鉄道、電信、飛行機等の諸分野であると言われている。

 

6月22日
紐育知事強硬 21日タイムス社発
ニューヨーク来電―ニューヨーク州知事ヒユフス氏は、ニューヨーク州立法部議会の終わりに臨んで、同会を通過した総額94万ポンドに上る支出案を否認した。この支出は、政党党首達が、同知事が提出した予選選挙法案(選挙上の腐敗を一掃する目的の法案)を否決した際、自分達を応援して反対票を投じた議員等に報いる必要がある為、これら議員連の利益を図る目的で通過させたものである。この否認の結果、党首達は公金を賄賂に用いる力を失う事になった。

 

6月23日
クリート屈服 22日タイムス社発
コンスタンティノープル来電―最近クリートより到着した報道によれば、同国官憲は遂に列強に屈服し、同島イスラム教徒代議士にギリシャ皇帝に臣従の宣誓をすること無く、直ちに議会に列席する事を許すような様子である。事ここに到ったのは、主に英国がクリートに加えた圧迫と露国が再び軍隊で同島を占領しようと提議したことに依る。

 

6月24日
芬蘭と露国首相 22日上海経由ロイター社発
露都来電―ロシア帝国参議院は、フィンランド政治案を討議中である。首相ストリイピン氏は、自由派の非難に答えて、フィンランドに於ける露国の主権は無制限である故、同案をフィンランド議会に附して、これを決議させる必要はないと主張した。
波斯の廃露熱 同上
本社テヘラン通信によれば、ペルシャに於いては、再び排露熱が勃興し、露国兵士が駐屯する土地において、意外な出来事がしばしば発生中である。よって露国は要求の一つとしてタフリツ知事の免職を求めている。
解説:ペルシャの北半分は露国の勢力下、南半分は英国の勢力下にあった。
西班牙宗教改革 23日上海経由ロイター社発
スペインに於いては、政府の宗教改革に対し猛烈な反対運動が発生している。カソリック教徒は、強烈な抗議を打電しつつある。政府は、ローマに向け旧教に忠実であると声明する使書を送った。又カソリック教徒でない者は集会を行い、信教上の自由を要求中である。
(備考、スペイン政府は先般、カソリック教会のみを優遇する制度を改め、カソリック以外の宗派にも公に伝道し、宗派の旗、その他の徽章等を外部に現わす事を許したのは既電のとおり)

 

6月25日
土耳其の希臘貨物排斥 24日タイムス社発
コンスタンティノープル来電―ギリシャの海運業、貿易及び諸商店に対するボイコットが急速に且つ広範囲に広がりつつある。
解説:6月23日「クリート屈服」の続報
獨逸飛行船成功別報 24日上海経由ロイター社発
ドイツに於いて空中飛行船ツエッペリン第7号が何らの故障もなく、乗客輸送を遂行した事に対し、社会は非常な満足を表した。当日ツ伯爵は飛行機の全部に座り、操縦の任に就いた。乗客は総計13名で、船室は非常に豪華に装飾されていた。

 

6月26日
獨沸関税戦争 25日タイムス社発
パリ来電―獨逸政府は、外国より輸入するウイスキーとブドウ酒に最高税率を課すつもりである旨宣言した。その為仏国はこれに対し、報復手段を執ろうと準備中である。獨逸外務省は、敢えて佛国の事業に対してのみこの課税をしたいのではないと説き、これは完全に国庫収入の必要からであると言明した。
日露協約調印近し 25日上海経由ロイター社発
デイリー、テレブラフ露都通信によれば、日露条約は数日以内に調印されると思われる。これは日露関係を親密にさせるものであり、将来、結局同盟になるであろうと信じられている。
同条約は、唯満州にのみ関係しているが、その意味する所は、満州の平和が、他の極東地方に平和をもたらす所以であると言っている。そして将来の極東政策の基礎として「現状維持」を完全に是認した。なお同新聞通信員は次の様に付言している。米国が善意からと思われるが、充分に時局に適合しない行動を執った事と清国が露国に対し、友好的でない点が、日露の接近を大いに助けた。

 

6月27日
洪牙利議会開会 26日上海経由ロイター社発  
オーストリア皇帝は、ハンガリー議会の開会式に臨み、政府党の勝利はハンガリー政府の地位を強固にし、平和的発展の為に喜ばしいことであり、そしてこの議会に普通選挙法の実施と防衛兵力増加に関する法案が提出されるであろうと言明し、最後に欧州の平和がますます恒久的になる事は、本当に喜ばしいと述べられた。
解説:ハプスブルク家は、オーストラリアとハンガリーの皇帝であった。4年後に第1次世界大戦が始まる。
阿片問題交渉 26日北京特派員発
現在英国代理公使と外務部との間で交渉中である阿片問題は、単にインド商人の損害問題ではなく、清国の阿片禁止に重大な関係がある。10カ年を期してインドより阿片輸入を禁止する事になり、清国内では3年間で完全に阿片耕作を禁止する協定を結んだ。しかしその結果、現在、阿片の価格は禁止以前の7倍になり、インド商人は、輸入を毎年十分の一減少させているが、彼らの3年間に受けた利益は莫大なものとなった。しかも価額の高騰の結果、ペルシャ、トルコ、フィリピンより間接輸入を行う者が加わり、昨年、一昨年共に10万ポンドの増加であった。

 

6月28日
英国海軍演習 27日タイムス社発
英国海軍大演習は7月4日より開始し、3週間に亘り行われる予定である。これに参加する艦艇は、戦艦44隻、装甲及び保護巡洋艦56隻、駆逐艦119隻、潜航艇60隻、水雷艇85隻等の総計401隻である。そして諸艦は既に活動を開始している。
解説:海軍力で世界NO1の英国である。日本海海戦当時の日本の戦艦は4隻であった。
摩洛哥沸兵進軍 同上
タンジール来電―二隊の佛国軍隊は、モロッコのカサブランカより内地に向け約100マイル満足に進軍を遂げ、その間何等の反対も受けなかった。この進軍の目的は排佛運動に対抗し、これを鎮圧する為である。
解説:モロッコは佛国の保護国であった。
クリート問題通牒 27日上海経由ロイター社発
コンスタンティノープル駐箚英国大使サー、ゼラルド、ロサーは、クリート保護の任にある英伊沸露の4国を代表して、通牒をトルコ政府に送り、クリートに於けるトルコの主権が尊重されるべきと述べ、4国は各第2回目の軍艦を派遣しつつある旨言明した。
解説:トルコは、クリートを巡り、ギリシャと紛争中である。

 

5月29日
日露協約と米清 26日タイムス社発
露都来電―半官報ノウオエ、ウレミヤ紙は、日露協約の成立が切迫している事が、極東の露国利権に対する米清両国の態度に良好な影響を与えたと述べている。清国が松花江の通航問題について、従来の頑迷な主張を放棄する事に決定した事を歓迎し、清国は露国に対し友好的政策を執る事に決定し、これを後悔する理由はないものと信じると言明している。
解説:日露戦争後、英米の極東進出に対抗する為に、日露間で4次にわたりむすばれた協約で、1907年7月調印された。満州での相互の特殊利益と日本の朝鮮,ロシアの外蒙古に対する特殊利益を相互に承認した。
日本関税反対 同上
バーミンガム商業会議所は、英国商務院に対し日本の新関税が同地方の貿易に重大な衰退を与える旨報告した。

 

6月30日
獨逸外相更迭 29日タイムス社発
ベルリン来電―獨逸外務大臣ディエン男爵は、パリ―駐箚獨逸大使に決定した。シエン男爵の外交の遣り口は常に熱狂的愛国家の不満足を買っていた。当地の預言者達は、この変動の結果、獨逸の外交政策が強硬となると予期している。
解説:4年後第1次世界大戦が始まる。
土国議会閉会 29日上海経由ロイター社発
コンスタンティノープル来電―トルコ代議院は11月1日まで休会する。宰相ハツキー、ペー氏は、クリート保護の責任がある列国の友誼を称揚し、列国のギリシャに対する態度は非難すべき点は無いと明言し、且つトルコ国民が、公正に事を取扱う土廷に対し、厳正な態度を採る様希望した。
解説:6月28日の記事「クリート問題通牒」の続報

明治43年5月

5月1日
土耳其内乱形勢 30日タイムス社発
コンスタンチノーブル来電―アルバニア人との戦闘は、木曜夜カチャニク間道に於いて開始し、今尚戦闘中である。アルバニア人の総数は3千乃至6千と見積もられる。
ウイーン来電―後報によれば、アルバニア反乱軍は、ドヤコウを占領し、約半個大隊のトルコ兵の武装を解除し、且つ全軍を撃退した。北アルバニア各村の官吏は反乱軍に合同した。
解説:連日の様に報道されている記事の続報
松花江に関する訓令 29日ベルリン特約通信社発
露都電報通信の報道によれば、露国政府は、清国の松花江通航規則について、駐清露国公使に訓電を送った。その内容は、清国の提案は到底露国が承認できないものであり、依って露国は清国が7月1日に露人の条約権に一致する新規則を定めることを要求する。清国がこの挙に出ない場合には、露国は自由行動を執り、且つ昨年中、清国に払い込んだ通行税の返還を要求すべしである。
解説:昨日の続報

 

5月2日
否認権案愈提出 1日上海経由ロイター社発
英国上院否認権案は、いよいよ法案として議会に提出された。同案はその前文に於いて上院に代えて、世襲でなく民選の第2院を設ける必要があるが、しかしこれは直ちに実行するものではない。故に財政案が1カ月以内に上院を通過しない場合は、下院議長は、皇帝に奏上し、その裁可を得れば財政案を法律とする事が最も便宜的な方法である。(一部抜粋)
新聞紙の飛行懸賞 同上
英国飛行家ポールハン氏の為に心のこもった宴会が行われた。デーリー、メール祇は、今回の飛行に対して1万ポンドの賞金を懸けていたが、ロンドンとエジンバラ間を復航するならば、更に1万ポンドの賞金を与える旨を発表した。
解説:4月29日ポールハンがマンチェスターまでの飛行に成功した記事がある。

 

5月3日
土耳其内乱形勢 2日タイムス社発
コンスタンチノーブル来電―トルコ軍は、激戦の末、遂にアルバニア反乱軍が固守していたカチャニク隘路を取り戻した。アルバニア反乱軍は、カラダ山に退去し、同地で新たな戦闘が発生した。
土国官賊講和条件 同上
ウイーン来電―サロニカより来た広報によれば、北部アルバニア人等は、降伏に同意したが、ただトルコ政府が租税を軽減し、且つ武装解除命令を取消す様に主張中である。但しトルコ政府がもしこの条件を承諾するならば、その威信の失墜を見る憂いがある。又これを容れずに断固として秩序の回復手段を執ったならば、アルバニア人は、多分再び抗戦するものと考えられる。
解説:連日の様に報道されているが、アルバニア独立までの戦いである。

 

5月4日
松花江問題 3日タイムス社発
露都来電―駐清露国公使の報告によれば、清国は松花江通航に関し、条約上の義務を逃れる政策を執り、今や同通航に対し消極的性質を付そうと企て、ハルピンは海港であると主張した。但しこれは全く自家撞着の態度であり、現に清国は1909年、松花江河流通航規則なるものを発布している。
解説:5月1日「

松花江に関する訓令」の続報
英国紡績業危機 同上
英国紡績業の雇用主と職工は、賃金の切下げについて合意を得る事が出来ず、従って一大罷業が起こる恐れがある。
土国官賊激戦 3日上海経由ロイター社発
ウイーン来電によれば、トルコの軍隊はクロブルゼチツのアルバニア反乱軍を包囲する為、カチャニク峡谷を進軍中、多数のアルバニア兵と激戦となり、多くの死傷者が出たと伝えられる。

 

5月5日
米国の対清政策 4日タイムス社発
ワシントン来電―米国大統領タフト氏は、ピッツバーグに於いて極東問題に関し長時間の演説を行った。米国政府が粤漢(えつかん)鉄道借款に干渉するのは、条約権を保持し、米国資本家の利益を保護したいと考えているからであると公言し、又政府は商業上の利害より見て、錦愛鉄道計画に賛成していると述べた。なおタフト氏は、これに対する露国の反対を無視し、日本は既に同計画に協同する意志があり、且つ鉄道協議は満足に進行中であると述べた。
解説:粤漢鉄道とは、中国の武漢と広州を結ぶ鉄道であり、利権を巡り列強の争いがあったが、1911年獨逸に加え、英米佛の4カ国の借款で建設する協定が成立している。しかしこの鉄道が完成したのは1936年であった。
錦愛鉄道は、満州に於ける利権を求めて、米国の鉄道王ハリマンが構想した案が基になっている。当初全満州の鉄道を中立化し、国際シンジケートでの支配を考えたが日露に反対され、それに対抗する案として、米国資本に依る錦洲と愛琿を結ぶ錦愛鉄道が構想された。しかし日露両国に反対され実現できなかった。この記事では日本は賛成とあるが誤りである。
土兵死傷 同上
コンスタンチノーブル来電―トルコ軍隊は、カムチャンク隘路に於いてアルバニア叛乱軍と戦闘した際、422名の死傷者を生じた。
排猶太人熱 同上
ウイーン来電―ハンガリーに於いては、ユダヤ人排斥熱が蔓延し始めている。
諾威詩人の名誉 3日ベルリン特約通信社発
ノルウェーの戦艦ノルチ号は、佛国よりノルウェー首都クリスチアナまで、詩人ビヨルンソン氏の遺骸を運んで来た。同府に於いては、王族と同様の礼砲を以て迎えられた。全国民は大詩人の死を悲しんだ。
解説:この詩人は、ビョルンスティエルネ・ビョルンソンであり、1903年にノーベル文学賞を受賞している。

 

5月6日
英国鉱業論 5日タイムス社発
デヴォンシア公は、鉄鋼協会の集会に於いて次の様な演説を行った。イギリスは常に鉄、石炭、鋼等の産出に於いて、優越的地位を維持する様に努力しなければならない。これによって広大な地域を有する我国は、一層発展するであろう。英国は今後数世紀間、各方面に於いて強大な生産国として存在し続けるであろうが、しかしその優越的地位の維持は、広大な海外領土があるからこそ初めて出来得る所であると言明した。
解説:阿知羅 隆雄の「ヴィクトリア繁栄期の所領経営と家産管理」によるとデヴォンシア公爵家は英国を代表する資産家の様である。同家は、1920年頃には、土地貴族から株式、債券保有貴族へと転身している。
第2次大戦後、英国の繁栄は終わり、パックスアメリカーナの時代がやってくる。
土耳其兵敗北 5日上海経由ロイター社発
コンスタンチノーブル来電―私報によれば、現在アルバニア叛乱兵の手にあると言われているジアコワに於いて、激烈な戦闘があり、トルコ官兵の一個大隊が、ジアコワに到る途中に叛乱兵の待伏せ攻撃を受け、多大の死傷者を生じ、退去せざるを得なくなった。

 

5月7日
日露協約説(離間運動が起これるが如し) 6日タイムス社発
露都来電―日韓の合併を承認し、且つ満州及び蒙古に於ける日露両国の勢力範囲を限定する日露条約成立の噂が北京より伝わり始めているが、これは大いに注目に値し、再び日英露親交反対の運動が起こされた兆候と見なければならない。現在露国の世論は、日本が朝鮮に於いて優越的地位を占める権利を承認しているけれども、しかしこれに何らかの変動をきたす様なことがあれば、これは英露両国外交の過失と見なす傾向がある。
巴奈馬運河防備 同上
ワシントン来電―パナマ運河の防備計画は、大いに進捗した。太平洋方面の運河河口に於いては、3個の砲台を島上に設け、1個を大陸に置き、大西洋方面に於いては、2個の砲台を大陸に置く様である。守備兵は4千名と言われている。

解説:パナマ運河は、この記事の4年後の1914年に開通する。
ロ氏の平和論 6日上海経由ロイター社発
本社クリスチアナ通信によれば、米国前大統領ルーズベルト氏は、ノーベル賞金委員会に於いて、国際平和と題して次の演説を行った。
予は平和を維持する事は可能と考える。ヘーグにある仲裁裁判所を充分に活用しようとする誠意ある各国政府は、殆ど全ての問題を含んだ仲裁条約を締結すべきであると説き、終わりに正直に平和を望む強国は、「平和同盟」なるものを組織し、これで自己等の平和を維持するのみならず、他国が平和を破ろうとする場合には、威力を加えてこれを防止しなければならない。これが実現すると、これは非常に良い案であると言明した。
解説:第1次世界大戦もこの記事の4年後の1914年に起こる。

 

5月8日
日本館観覧会 7日タイムス社発
和田日英博覧会長、陸奥大使館参事官その他の日本官憲は、現在迅速に進捗しつつある
日英博覧会の日本館観覧の為に招待会を開いた。来観者は何れも展覧品の美しい事と完全な事に驚嘆した。
万国気球会議 6日ベルリン特約通信社発
万国気球会議が近々パリ―に於いて開催される予定である。

 

5月9日
英帝崩御 新皇帝の宣言 7日上海経由ロイター社発
7日はロンドンを始め、英国各地が皆深甚なる哀悼の情に満たされ、政治的及び社交的な業務は一般に休止した。
午後3時議会は開かれ、直ちに閉会した。大法官を始め貴族院は議員約50名参集し、新帝に忠誠を誓った。
解説:新帝はジョージ5世で、第1次世界大戦を迎える事になる。

 

5月10日
獨帝の愁嘆 9日タイムス社発
獨帝は、駐獨英国大使ゴッセン氏と会談し、深くその叔父である英国先帝の崩御を悲しむ旨を語り、大葬に関する儀式次第が判明次第、英国に向け出発すると語られた。
解説:獨帝の母は、英国王室出身である。
新帝の方針 同上
新帝ジョージ5世は、土曜日枢密院会議を招集し、哀しみに湛えながら男子らしい演説を行い、朕が一生の目的は、先帝の跡を学び、人民の利害改善の為に尽力し、憲政を維持するにあると宣明した。なお帝の即位は月曜日公式に発表される予定である。
英国紡績悶着 8日ベルリン特約通信社発
英国の紡績業に賃金問題が起ころうとしている。大罷業は多分防ぐ事ができると思われる。

 

5月11日
即位宣示式 10日タイムス社発
英帝ジョージ5世の即位は、英帝国の大部分を通じ、本日付で宣示された。ロンドンに於いては、最初聖ゼームス宮殿に於いて宣示があり、儀式は壮麗を極め、皇子等の臨席があり、市民は、盛んに新帝に忠実でありたいとの熱情を表明した。

 

5月12日
新帝と日英博 11日タイムス社発
英国新帝陛下は、数千の人民が職業を失おうとしている事を不憫に思われ、日英博覧会の会場式を延期しない様に希望された。その為同博覧会は、来る土曜日に、儀式なしで開場される事になった。新帝のこの聖旨を拝する以前は、博覧会委員は、大葬後まで開会式を延期する事に決定していた。

 

5月14日
米国海軍拡張 13日タイムス社発
12日米国戦艦フロリダ号が、ブルックリンに於いて進水をした。これは、最も国民を満足される所である。同艦は、国営造船所が現在までに建造した最大の軍艦であり、民間造船所に注文した姉妹艦ユータ号と殆ど同様の速度で建造された。費用は約百2万ポンドであり、12インチ砲10門を装備している。なお米国政府は、14インチ砲10門を備える新型戦艦の建造を計画中である。
解説:フロリダ号の排水量2万3千トン、速力21ノットである。

 

5月15日
日英博覧会 14日タイムス社発
日英博覧会は、いよいよ本日開会される予定である。時恰も国民的服喪期に際する為、何らの儀式が行われないのは、非常に遺憾である。但し同博覧会は、二個の島帝国間の通商的関係に顕著な効果を生じると思われ、又その同盟の感想を新たにする所以であり、その開会は実に注意すべき事件である。
解説:5月12日記事「新帝と日英博」にある様に、博覧会委員は、大葬後まで開会式を延期する事に決定していたが、新帝の希望で開会される事になった。

 

5月16日
日英博覧会概観 14日タイムス社発
日英博覧会は、本日を以て開会する。壮麗な陳列館が相並んで日光に輝く様は、実に堂々たるものがある。幾多の湖水、運河、瀑布が広大な範囲を占め、美しい色彩に満ちた日英庭園に於いて大いに人目を引く。日本部に於いては第一、小さな灌木等を並べ、長い遠景を示すものと第二、種々の島を造り、その特色とするものがある。橋梁、岩石、装飾的家屋等は至る處にあり、風景を絶佳ならしめている。(一部抜粋)
日露関係現情 付日韓合併問題 15日上海経由ロイター社発
日露関係に関するロンドンタイムスの露都特電によれば、日露両国は今一層親密な相互理解を作る事の利益及び両国の政治的並びに経済的利益関係が日露の接近により強固になることを能く了解している。
日韓合併について仮令この計画が実行される暁に於いても日本の同盟国及び友邦は少しも苦痛を感じる事は無いと観測される。(一部抜粋)

 

5月17日
土耳其軍隊前進 16日タイムス社発
フェリソイチよりの報告によれば、トルコの軍隊は引き続き前進中であり、彼等は政府の改革計画の実行を謀る目的を持っている。フリズレンド付近に於ける多数の村落に於いては、白旗が翩翻と翻っている。なおトルコ人が無暗に家屋を焼き払っているとの報道は事実ではなく、むしろ彼らはなるべく邸宅破壊の数を少なくしようと注意している。
解説:アルバニアがトルコから独立する戦闘であり、1912年トルコから独立
セ卿と清国大学 同上
ウイリアム、セシル卿(先にオックスフォード大学を中心として一清国大学設立計画を立てた宗教家)は、清国に於ける大学伝道に関して、要位にある教育家と協議する為、米国を訪問した後、リバプールに帰着した。卿の談によれば、訪問の結果は非常に満足であり、同計画は確かに実行を見るべき状況にあると。
解説:精華大学が1910年にアメリカの資金で設立されているがここで考えられている大学が精華大学かもしれない。習近平は精華大学を卒業している。
芬蘭合併案可決 14日ベルリン特約通信社発
露国国民議会は、フィンランド合併に関する議案に少しの修正を加え、これを通過させた。

 

5月18日
アルバニア人攻撃 17日タイムス社発
在米国のアルバニア人等は、ボストンで開催された会合に於いて「トルコ人のアルバニア婦人虐殺を憤怒し且つ列国に訴えてその干渉を求める」決議案を採択し、且つこれを外国に電送した。
解説:アルバニアがトルコから独立する戦闘であり、1912年トルコから独立
波斯形勢と英紙 同上
タイムス紙は、ペルシャに於いて盗賊等が組織的に横行している結果、同国の英国貿易が衰退に向かうとのブシール通信を掲載し、これら種族を鎮圧し、商業を保護する為ファルス提督を任命する様要求した。
解説:ペルシャの北部は露国の勢力範囲で南半分は英国の勢力範囲である。
摩洛哥騒乱 同上
本社フエツ通信員の報道によれば、モロッコのヒアイナ種族が日々官軍を攻撃し、多大の死傷を生じさせ始めている為、司令官はモロッコ王に対し、全ての援兵を送られん事を要請した。そしてモロッコ王はこれに応じ、援兵を派遣した為、フエツ市は今や何等の防備も無く、各国領事は形勢を悲観している。

 

5月19日
日英博成功 18日タイムス社発
現在ペンテコスト祭日に際し、日英博覧会の観客数は予想を超えている。よって博覧会に於いては、或る時間を定め、時々門を閉鎖する事によって、内部の観客にそれぞれ分散する余裕を与え、然る後に再び門を開き、観客を入場させる事が必要となった。
ハレー彗星に対する迷信 18日ベルリン特約通信社発
地球がハレー彗星の尾に包まれるのは、ドイツでは19日5時42分より始まる譯である。イタリアでは地球滅亡の時が来るのを恐れる迷信が盛んであり、且つローマ法王の救いを求め始めている。キール天文台では、地球に何等の危難を来さない旨を発表した。

 

5月20日
獨逸と波斯 18日ベルリン特約通信社発
英露諸新聞に現れた獨逸外務省がペルシャの政局に干渉しようとしているとの報道は、獨逸に於いて否認された。獨逸政府は、これまでと同様にペルシャに於ける獨逸人の経済的利益を保護するに止まるであろう。
英国紡績危機 同上
英国ランカッシャー綿業者は、職工の賃金を5分低減する事に決定した。この為同盟罷業を見るであろうと予想される。

 

5月21日
獨露協約説 20日タイムス社発
本社露都通信員によれば、半官報ロシヤは、獨逸はペルシャに於ける英露両国の政治的、軍事的利権の優越を承認する意志があり、又露国は、同国に於ける獨逸の商業的要求を満足させる意志がある。従って満足な協定の成立に好都合である旨を報道した。
パリ来電―佛国消息通は、ペルシャに対する獨逸の態度は、モロッコに難問題が起こった時と同様に、極めて危険な外交政策に支配され始めていると観測している。
陸軍拡張決議案 20日桑港特派員発
カルフォルニア州選出議員マックラン氏は、19日上院に於いて陸軍嚮に対し、国防に関する報告を求める決議案を提出し、説明演説を行った。太平洋岸は大西洋岸に比べて非常に危険であり、日本の陸軍は、既に太平洋沿岸諸州を調査し、精密な地図を有している。一朝日本と戦端を開き、日本兵が上陸した場合、太平洋沿岸諸州は米国の領土でなくなるであろうと叫んだ。
長沙暴動観測 同上
米国国務省が広東より得た報告によれば、南清の長沙に於いて、特に米国人が排斥されるのは、米国に清国人排斥法があり、米国が清国人を排斥している為であると述べている。

 

5月22日
壮嚴なる大葬 20日在倫敦長谷川特派員発
本日英国先帝エドワード7世陛下の大葬が行われた。天気晴朗でロンドン全市は雑踏を極めた。沿道の警備も厳重を極め、3個軍団で隙間なく兵を並べた。午前9時、欧州9カ国の皇帝は、宮廷よりウエストミンスターホールに赴き、皇帝皇后の参列移棺式があり、行列はここを出発した。(一部抜粋)
波斯と英獨露 20日ベルリン特約通信社発
先般ウイーンの煽動的な新聞の一紙は、ペルシャに関して英露両国及び獨逸間の衝突を予想する不穏な文章を掲げたが、露国諸新聞はこの記事を取り上げ、獨逸は平和の攪乱者であると攻撃した。獨紙ケルロツセ、ツアイツングは、この攻撃に答えて、獨逸がウルミア湖の運行業譲与及び鉄道借款を得よとしているとの説は、全く事実無根である。獨逸は1907年英露協商によって保障されている経済的利権を保持しようと望んでいるのみで、獨逸は決して条約上の義務を放棄したことはないと言明した。(一部抜粋)

 

5月23日
製艦大反対 21日ニューヨーク特派員発
20日海軍予算委員会に於いて、2万6千トンの戦艦2隻を新たに建造する議案に大反対の議論が起こった。その理由は、国民の公金を浪費し、万国平和会議の原則に悖ると言うにある。
清国の科挙 22日北京特派員発
先般北京に於いて挙行された郷試験の結果、全国各地方より選抜された2千余名中、3百20名が合格し、本日上諭をもって発表された。科挙は既に廃止を宣告されたが、旧学者に対する一時的な便法として行われたもので、今後1回で完全に廃止される予定である。
解説:科挙とは、官吏登用試験で、1804年のアヘン戦争後、近代化が叫ばれる様になり、1905年にこの制度は廃止された。

 

5月24日
英帝の勅語 23日タイムス社発
英国皇帝は国民に対して勅語を発表し、先帝に対する愛慕と忠誠の念が十分に表現せられたことを感謝し、朕は人民が亦朕を援助し、且つ朕を父皇の様に見るであろうと信じていると宣明された。
土耳其の抗議 23日上海経由ロイター社発
トルコ政府は、新たに列強に同文の通牒を送り、5月20日所報のクリイト議会に於いて、イスラム教議員の追放、その他クリイト政府の不当な行動に対し注意を促した。
解説:トルコとギリシャがクレタ島を巡って争いとなっている。1913年オスマン帝国が領有権を放棄した。

 

5月25日
獨帝出発 24日上海経由ロイター社発
獨帝は、昨日午後ロンドンを御出発された。その際多数の群衆が集まり、通路には警官が配置された。なお英帝は情温かにご決別された。
海軍拡張論勝利 24日サンフランシスコ特派員発
米国上院には、海軍縮小論者と拡張派との間に激論が行われたが、24日遂に拡張派の勝利に帰し、1億3千万ドルの海軍予算案が通過した。この内には1隻千百万ドルのドレッドノート型戦艦2隻の建艦費が含まれている。23日下院に於いてこの議案が通過した時は戦艦3隻であったが、上院に於いてドレッドノート型2隻に修正された次第である。

 

5月27日
新西蘭防備と吉元帥 26日タイムス社発
キッチナー元帥は、以前ニュージーランドを訪問し、豪州とニュージーランドと共通の陸軍組織を採る事、その他国防計画につき協議を行ったが、今回同州の防備を総攬する高級陸軍将校を選定すると言われている。
記事:キッチナー元帥は、ボーア戦争に勝利を収め、英印軍の司令官、エジプト総督となり、第1次世界大戦では陸軍大臣となったが1916年ロシアに向かう巡洋艦が撃沈され、戦死した。
日本関税攻撃 同上
支那協会幹事はタイムスに寄稿し、激烈に日本の新関税を攻撃し、その増加した税率とその結果とは、主に英国製品に影響する。従って日本で商業に従事している多数の商会は業務を放棄せざるを得なくなるであろうと公言した。
タイムスも社説を掲げ、今回与えられた数字を検討すると、これは英国の貿易が関税率変更の為に大損害を受けるであろう事を確証するものである。その最も高くなった二三の税率は、明らかに他国よりも英国より多く輸入される貨物に影響すると言明した。(一部抜粋)

 

5月28日
欧州の平和 27日上海経由ロイター社発
獨帝はベルリンに御帰着された。これを機として獨逸の諸新聞が国際的平和について、論評したのは大いに注目を惹いた。尤も獨帝がロンドンに於いて、佛国外務卿ビション氏と会談した際、欧州の連盟を鼓吹したとの評判は正式に否認されたが、獨帝の今回の英国訪問は良好な感情を与え、英国諸新聞も善意の論評を下し始めた。
解説:獨逸皇帝ウエルヘルム2世の母は、英国王室の出身で、英国皇帝とは従妹同士である。しかしウエルヘルム2世は野心家で、4年後に第1次世界大戦を開始した。
米国の巨砲採用 内国電報(27日朝)
米国海軍省が本年度に於いて建造する戦艦2隻は、何れも2万7千トンであり、英国の既成戦艦より優れているのみならず、更に14インチ砲を採用している。
米国は、従来、英国と同じく12インチ砲を採用して来たが、昨秋から14インチ砲の試験を行い始めており、今回採用する事に決めたものと思われる。今英国が12インチ半砲を試験中であるのに対し、早くも14インチ砲を採用するに至ったのは、米国の戦艦は、巨艦巨砲で、共に世界の冠たるものと言う事ができる。

 

5月29日
蘇士運河盛況 28日上海経由ロイター社発
1909-10年度のスエズ運河会社報告によれば、同年度は、会社の歴史に於いて、最も利益が多い年であった。通行料収入は、約5百万ポンド増加し、これはインド貿易が再び活発となり、且つ満州の豆類の輸出が発達した為と言われている。
解説:スエズ運河は英国が支配している。
新造艦製図中 27日ニューヨーク特派員発
米国が今回新造する戦艦は、2隻共2万7千トンであり、14インチ砲を10門搭載する事になっており、現在海軍兵学校委員の手によって製図中であるので、出来次第入札が行なわれるであろう。
解説:製図が海軍兵学校で行われているとの報道であるが、日本の海軍兵学校にはこの機能はなかった。翻訳の誤りの可能性もある。
列国の要求 27日ベルリン特約通信社発
クリイト保護の任にある英仏露伊の4カ国はクリイト議会が、40日間にイスラム教徒議員の復帰を許さなければならないと要求した、これら議員は、ギリシャ皇帝に臣従する宣誓を行わなかった為に放逐されたものと言われている。列国はこの要求が容れられない場合には、再び同島を占領するであろう。
解説:5月26日「近東問題紛糾」記事のトルコ通牒に対する列国の処置である。

 

5月30日
獨逸宰相辞職勧告 29日上海経由ロイター社発
獨逸の急進党及び社会党は、選挙法改正案が否決されたのを喜び、首相ベエトマンホルウエツヒ氏の辞職を要求した。

 

5月31日
土耳其の決心 30日タイムス社発
コンスタンティノープル来電―トルコは、クリイト島議会がギリシャ皇帝に対し臣従の宣誓を行い、又この宣誓を拒否したイスラム教徒議員を放逐した件につき、強硬に抗議中である。トルコ宰相ハツキ、ベイは、代議院に於いて、政府は飽く迄クリイトの外国併合を防止する決心である。若しギリシャが干渉を敢えてするならば、トルコは止むを得ず開戦することになるであろうと言明した。
尼国官軍死傷 30日上海経由ロイター社発
ニカラグア政府の軍隊は、ブリユツイドに於いて、反乱軍の陣地を攻撃したが、成功せず、死傷250名を出した。


 
  
  
   
    
    
    
     
      
       

 

明治43年4月

4月1日
西蔵形勢平穏 31日タイムス社発
カルカッタ来電―チベットのラッサ府の情勢は静穏である。チベット駐在大臣は、仏教徒でない兵士等の暴行を抑制している。
解説:チベットのダライラマは、清国に追い出され、インドに滞在中であり、現在のチベットと同じ状況となっている。
芬蘭案攻撃 同上
露都来電―露国立憲民主党党首ミリウコフは、フィンランド立法権制限案に論及し、これはオーストリアのボスニア,ヘルチェゴビナ併合よりも更に悪いと言えないと言明した。なお同案は、今や国民議会に於いて、委員付託となっている。
芬蘭人の態度 同上
ヘルシンキフォルス来電―フィンランド議会の立法権制限案は、静穏な態度を以て迎えられた。但し一般に同案を目して、フィンランドの自由に対する最終的打撃となり始めている。
解説:フィンランドは、ロシア領としてロシア人の総督の支配下にあり、1917年になってロシアから独立している。なおロシアは、1917年ロシア革命が起こり、1922年ソ連となった。

4月2日
佛国気球問題討議 1日タイムス社発
パリ来電―佛国上院に於いて陸軍飛行器に関し、長時間の討議があった。有名な技師レイモン氏は、佛獨両国に於ける飛行器の進歩を比較し、佛国が遥かに劣っている事を示した。佛国が、この問題に注目し始めている者を落胆させる措置を取っているのを攻撃し、この為に専門技術学校を設置するよう主張した。これに対し、陸相ブルン氏は、佛国が1913年になるならば、11隻の操縦式気球及び20の気球庫を所有するであろうと公言した。
解説:飛行機は、まだ飛行器と訳されていたようである。
米国紡績不況 1日上海経由ロイター社発
ボストンに於いて発表された統計によれば、南部地方に於ける紡績会社総錘数の5割は休業中である。
労働者の勝利 1日上海経由ロイター社発
ペンシルベニア州の各鉄道会社は、任意に使用人の賃金を引き上げた。この恩恵に浴する者は、総数19万9千人であり、その金額は1千ドルに上る。そして製鋼トラストもまた同様に賃金を引き上げた。これは一部同州がますます反映している事、一部は労働者の圧力に因る。

4月3日
佛国海軍拡張 2日上海経由ロイター社発
佛国代議院は、本年私立造船所に於いて戦艦2隻を起工させる件を可決した。これは3年以内に就役する計画であり、海軍卿ドレベイレール氏は、同艦が各種の点に於いて最新の英獨戦艦に匹敵することを言明した。
米国綿買占応戦 同上
白星線汽船パルチック号は、本日英国リバプールを出発、ニューヨークに向かう予定であるが、これは綿買占めを失敗させる為、米国に送られる予定の多数の荷物の第1回分である。なおリパプールには、米国に送る準備のできた綿が2,3万梱ある。
解説:梱とは、綿の重量を表す単位で、綿糸1梱は400ポンドで181.44Kgである。

4月4日
露帝の観劇 3日上海経由ロイター社発
露国皇帝は、数年来オペラを観覧していなかったが、昨夜初めて臨御され、聴衆より熱烈な歓迎を受けられた。

4月5日
白耳義関税と佛国 4日タイムス社発
パリ来電―ベルギーの新関税は佛国に於いて激しい非難を引き起こし、一般にこの関税は、主として佛国貿易に対して制定したものとしている。下院関税委員長は、同案が佛国に対する不当な報復と思われる所が多い旨言明した。
露紙の警告 同上
露都来電―半官報ノウオエ、ウレミヤは、その社説に於いて、獨逸がもしペルシャに於いて軍事的便宜を得ようと企てる様な事があれば、これは露国に対し友情を表明中の行動と両立しない所があると言明した。
解説:ペルシャの北半分は露国の勢力圏下であり、南は英国の勢力圏下である。

4月6日
獨逸波斯に割込む 5日タイムス社発
露都来電―露国外務省及び新聞紙は、もしペルシャが鉄道に関する特権を獨逸の資本家に譲渡する場合、英露の利益は危機に瀕し、その結果ペルシャは列国の確執の舞台となり、危険な状態に陥るであろうと認めている。
解説:昨日の続報

 

 4月7日
波斯と獨逸 6日タイムス社発
ベルリン来電―官憲側より出たと思われる記事が諸新聞に掲載されたが、これによると獨逸はペルシャに対し、何らの提議もしなかったと言明している。しかし諸新聞はペルシャの現状が譲与を得る良い機会であると説き、英露両国が他国に与えられる鉄道認可に対して自己の利益に干渉するものとするのは、正統ではないと主張した。
解説:ペルシャは、北半分はロシアの南半分は英国の勢力下であり、ドイツはそこに割込もうとしている。又当時モロッコは沸国の勢力下であるがそこにもドイツが時々手を伸ばしている。
蘇士運河譲与問題 6日上海経由ロイター社発
カイロ来電―エジプト首相は、スエズ運河の譲与期を延長する再約定の件につき、代議院の決議を遵奉する旨宣言し、非常な喝采を受けた。因みに同会委員会は、過般至急、同譲与の再約をする事に反対の報告を行った。
解説:1875年英国はエジプトからスエズ運河の株式44%を保有、1882年内乱に軍事介入し、エジプトを保護国としている。この記事の譲与が何を意味するのか不明である。譲与するとすれば英国と思われるが
日本人追放 同上
マニラ来電―スパイとして逮捕された日本人2名は、陸軍嚮の命令により釈放され、台湾に追放された。
解説:3月31日「日本人の間諜」の続報である。

4月8日
印度革命運動鎮圧 7日タイムス社発
カルカッタ来電―印度政府は国民党に属する記者アラビンド、ゴスを逮捕する為、令状を発した。
解説:インド独立の父と言われるマハトマ、ガンディは、南アフリカで弁護士として、インド系移民の人種差別に対する権利回復運動を行っていた。
英帝と日英博 同上
英国皇帝は、ネルソン時代の英国海軍に関する各種の資料とネルソン提督が1805年10月、トラファルガー海戦に於いて殺された弾丸を日英博覧会に出品された。これは、日本人来観者に強い興味を与えるものと信じられた結果と思われる。
佛国海員罷業後報 7日上海経由ロイター社発
マルセイユ来電―沸船モンロンヤの火夫10名は、10日間の禁固となった。政府は、なお550名の火夫を逃亡罪で告発し、同盟役員をも告発した。

4月9日
土耳其の内乱 8日タイムス社発
コンスタンチノーブル来電―叛乱を起こしたアルバニア人は、官兵とプリシユチア市外で48時間にわたり戦闘を行い、双方とも気力を失った。トルコ政府は、多数の砲兵隊と共に22個大隊を戦地に派遣中である。
解説:アルバニアは、アドリア海に面した国で、約600年にわたり、オスマントルコの支配下にあったが1912年独立した。
蘇士運河案否決 8日上海経由ロイター社発
カイロ来電―エジプト代議院は、スエズ運河の譲与期延期に関する政府の提案を否決した。
解説:4月7日の記事の続報
獨逸飛行器と佛白 7日巴里特派員発
獨逸のゼツプランド空中飛行器が再び佛国及びベルギー両国を超えて飛行し、主にベルギー人に不安の念を与え始めている。

 

4月10日
土耳其暴乱 9日タイムス社発
コンスタンチノーブル来電―トルコ軍隊は、リヤブ河畔(アルバニア)に於いてアルバニア人と戦闘し、死傷2百名を出し、大砲1門を失った。
解説:昨日の記事の続報で、2年後アルバニアは独立する事になる。
佛国水夫罷業 同上
パリ―来電―佛国首相ブリアン氏は、マルセーヌの水夫罷業が速やかに落着するものと予想している。海軍次官は、自ら同港に出張し、各大汽船の出港を監督中である。因みに佛国船舶持主及び船長等は、英国船舶の組織、紀律が完全な事を羨望している様である。
蘇士運河案否決 8日ベルリン特約通信社発
スエズ運河会社の譲許期間延長は、エジプトのカイロに於ける立法会議で否決された。人民は大いにこの報道を歓迎した。
解説:英国はスエズ運河の株式44%を保有しており、また当時エジプトを軍事的に支配していた。しかしこの譲許期間延長が何を意味するのか不明である。

4月11日
屋外示威の許可 10日上海経由ロイター社発
ベルリン来電―警視庁は、本日選挙に関する3件の街頭運動を許可した。この様な示威運動は、今回初めて行われるものであり、ベルリンの保守党側の新聞は、警視庁がこの運動を許可したのは、やんごとなき辺りの暗示によるものと信じ、憤慨している。
前ダライラマ帰蔵 10日北京特派員発
名号を剥奪された前ダライラマは、帰蔵の意向がある。その処分方法について、清国政府は、駐蔵大臣聯豫(れんよ)氏に向け、ダライラマは、到底復位させる事は出来ないので、五臺山(ごたいざん)に護送し、専心修養させ、民心の動揺を防ぐべしと訓電した。
解説:ダライラマは、現在と同様、4月1日の記事にある様にインドに亡命中である。

4月12日
土耳其騒乱形勢 11日タイムス社発
コンスタンチノーブル来電―プリシュチナに於けるアルバニア人反徒は、降伏や解散を拒否し、多数の土民がこれに加わり始めている。
解説:4月10日記事の続報
波斯借款拒絶 同上
テヘラン来電―ペルシャ政府は英露両国公使に対し、両国の共同借款提案に同意する事が出来ない旨回答した。同時に同国の政局が、同案にある抵当及び償還問題に対して、何らの関係もないことを宣明した。

4月13日
土耳其反徒休戦 12日タイムス社発
コンスタンチノーブル来電―反乱のアルバニア人等は、ブルシュチナに於けるトルコ司令官と協議中であり、戦闘は中止された。トルコ宰相ハツキ、ベイは、代議院内のアルバニア議員に対し、政府は不必要な事に血を流す様な事は避けたいと思っていると断言した。
解説:昨日の続報
タイムスの日本美術評 同上
ロンドンタイムスは、日英博覧会に於ける美術、特に日本の錦絵を称賛し、その燦爛とした名画の例として北斎、歌麿、広重を挙げた。
蘇士運河問題 12日上海経由ロイター社発
外務次官マクキンノン、ウツド氏は、下院に於いて、議員ホール氏の質問に答えて、スエズ運河に於ける英国政府の利益関係は、2千5百万ポンドの価値があるとされている。しかもエジプト代議院が譲許延長を拒絶した結果、終に終了することになるであろうと言明した。
解説:4月7日記事の続報である。現実には英国が1956年のナセル大統領の国有化宣言まで英国が支配していた。
英露対獨方針 11日ベルリン特約通信社発
英露両国は、ペルシャが第3国の商業的利益を尊重する事が出来るのは無論であるが、両国政府は、唯ペルシャが自国内に於ける両国の政治的、軍事的利権に干渉しない程度に於いて第3国の利権を認める事を希望する旨宣言した。
解説:ペルシャは、北半分は露国の南半分は英国の支配下にあり、そこに獨逸が食指を伸ばしている。

 

4月14日
墺国戦艦進水 13日タイムス社発
ウイーン来電―オーストリアの戦艦ツレニイ号は、トリエストに於いて進水した。なお諸新聞は、一層強大な海軍を備える運動を継続し、ドレッドノート型戦艦を建造する必要性を主張しつつある。
解説:現在のオーストリアは内陸国であるが、当時はアドリア海に港があり、海軍を持っていた。映画「サウンド オブ、ミュウジック」に登場するお父さんはオーストリア海軍大佐であった。
米国共和党不平派の行動 13日上海経由ロイター社発
ワシントン来電―共和党の不平派と民主党と提携した結果、下院に同院議長用自動車費2千5百ドルを111対132で否決した。
アルバニア沈静 12日ベルリン特約通信社発
アルバニアは、既にほぼ沈静した。戦地に於けるトルコ兵は、今や非常に多数である為、この上の抵抗は効力がないと思われる。
解説:4月9日土耳其の内乱の続報である。

 

4月15日
獨逸海軍拡張 14日タイムス社発
ベルリン来電―戦艦オジン号の発注が行われ、これで1910年度の建艦計画は完了する予定である。なお獨逸が既に建造を終わり、若しくは建造中のドレッドノート型戦艦は13隻、同インビンシブル型装甲巡洋艦は4隻である。
墺国軍艦建造 同上
ウイーン来電―オーストリア新聞間に於いては、海軍拡張熱が勃興した。政府は1913年までにドレッドノート型戦艦4隻を建造すると伝えられている。
佛国戦艦進水 14日上海経由ロイター社発
ボルドー来電―佛国戦艦ベルニヨ号(1万8千3百トン)が進水した。前に進水した5隻と共に最強の艦隊を組織するものである。

 

4月16日
英国政局危機 15日タイムス社発
英国政府は、完全にアイルランド国民党の要求に服従し、首相アスキス氏は、下院に於いて次の演説を行った。上院に於ける否認権廃止法案の通過は、政府が有効に存続する唯一の条件である。上院が若し政府の政策に同意しないか或はこの問題を考慮する事を承諾しない場合には、政府は直ちに法令的効力を政府の政策に与える為に採るべき措置に関し皇帝に奏請するであろう(首相は新たに多数の貴族を作り、上院の反対党を押さえつける裁可を皇帝に奏請する意図)と言明した。(一部抜粋)
解説:上院とは貴族院と思われる。
極東通路短縮 15日上海経由ロイター社発
カナダ大幹鉄道会社総会に於いて、同社長は、今年の秋までには1,361マイルを竣工する計画であると言明した。なおウオルフクリークよりフォートウイリアム、オフ、レイクサテイリオルに至る線路は、カナダを横断する他の鉄道に比し、傾斜面が低く、日本及び清国への距離は、約500マイル短縮されるであろうと報告した。

 

4月17日
獨逸労働紛争 16日タイムス社発
ベルリン来電―建築業者等は、職工に対し、締出しを決行し始めた。各都市に於ける多数の職工がこの影響を被ると思われる。
墺国軍艦建造 16日上海経由ロイター社発
オーストリアのドレッドノート型戦艦数隻は、議会が現在まで費用の支出を拒絶するにも拘らず建造中である。これは、議会が結局支出するであろうと造船業者等が信じ、財政家の後援を得て、自ら危険を犯して起工し始めているものである。
潜航艇沈降 内国電報16日発
歴山丸は、第一潜水艇隊第六号艇を率いて、広島湾に出動中であったが、15日新港沖合に於いて、第六号艇は母艦を離れて潜水行動中、どうしたのか予定時間になっても浮上しない為、大いに驚き、直ちに当府に無線電信を以てその旨を報告した。潜水艇が浮上してこない時は乗組員全員の死亡を見るのは、英国その他に於いてその例を明らかである。乗組員は艇長佐久間大尉以下十余名である。(一部抜粋)
解説:有名な佐久間艇長の事故を報道する記事である。

 

4月18日
麦は無税 17日上海経由ロイター社発
統一党党首バルフォール氏は、新聞通信員の質問に答えて次のとおり言明した。同僚と共に商議の上に関税改革案を決定したが、これにより断固として植民地より輸入する麦を無税にする事に同意した。各植民地との特恵関税協約成立を援助する為、パンの価格が騰貴するのではとの杞憂があったが、これを霧散させなければならない。

 

4月19日
獨露衝突 17日タイムス社発
露都来電―獨逸の会社は、ペルシャよりウルリア湖(タブリツの西方にあり、英露協約上、露国の勢力圏内に置かれている一つの湖)上の蒸気船交通の独占権を得ようとしているとの情報があり、その為露人は大いに憤怒を示し始めている。
解説:ペルシャは当時、北半分は露国の、南半分は英国の勢力圏下にあった。
土国軍隊集中 同上
サロニカよりの特報によれば、平和回復した旨の発表があったにも拘わらず、北アルバニアに於ける軍隊の集中は、依然として継続し、今や1万7千に上っている。トルコ政府は、先般の暴徒首領株を軍事裁判に附する意があり、又収税及び徴兵の為、人口の登録をする筈と言われている。

 

4月20日
摩洛哥問題遷延 19日タイムス社発
タンジール来電―モロッコ王ムライ、ハフィドは先に佛国政府の強硬な談判に会い、債権者に対する支援、借款契約に同意した。しかも今やこの実行を拒み、例年の慣用手段であった遅延的、阻害的政策を採り始めている。
英国首相動議 19日上海経由ロイター社発
英国下院は、いよいよ今週から重要な時期に入った。傍聴席は立錐の余地なく、首相アスキス氏は、予算決議案について、討論の打ち切りを動議した。昨年、既に長い討論があった事を指摘し、今度の案も殆ど変更する所がないと説き、政府の進退は、一にこの大体において変わらない予算案の通過如何によると言明した。首相の演説は喝采を博した。

 

4月21日
桂冠詩人の日本論 20日タイムス社発
英国の桂冠詩人アルフレッド、オースチン氏は、日本人が有する愛国心の神髄とその力についてタイムスに寄稿し、ローマ人と同様に深く祖先崇拝の宗教を奉じ、且つ往古の神がこの伴侶となって、戦に勝つ事ができると信じている点にあると説いた。
解説:桂冠詩人とは、優れた詩人として英国王室から任命された詩人

 

4月22日
清国海関問題 21日タイムス社発
タイムス紙は、清国政府が条約上の義務を無視し、海関の支配を行おうとしていることを強烈に攻撃し、英国政府は断じて政務処の干渉を許すことは出来ないと主張しなければならないと言明した。
解説:海関とは、清国政府が貿易上の税金を徴収する為に設けた機関であり、どうも条約により、英国が支配しており、徴収した税金を清国政府に収めている様である。これは、清国の役人の不正防止の手段と思われる。
露国の抗議 同上
露都来電―露国政府は、ペルシャのウルミア湖汽船通航譲許を更に獨逸会社に転貸する件に関し、ペルシャ政府に抗議を行った。又獨逸会社に送られようとする機械の運送に関しても異議を唱えている。
解説:4月19日獨露衝突の記事の続報である。

 

4月23日
清国海関問題
ロンドンタイムスは、社説に於いてブレドン氏の税務処員辞職に関連して、清国の海関問題全体について論述し、英国は、清国が借款契約に違反して、海関を支配する事ができる様になることを黙許してはならないと強烈に主張した。サー、ブレドン氏が総税務司署理より税務処に移されたことは、清国が海関行政の独立を覆させようとする運動を始めたものであると説き、政府は清国貿易に従事する各国民の利益の為に、総税務司の独立、特にその昇級問題等に関して、完全な独立を要求しなければならないと主張し、さらにもし清国が明確な制約を破りながら、引続き成功を得させる場合には、その排外的感情は、必ず増長するであろうと付言した。
解説:総税務司とは、清国の税関(海関)行政の長官である。当時は英国人が中国の税関行政を掌握し、北京に総税務司、各税関に税務司が任命されていた。総税務司は、税関収入の管理と支払いを行い、清国の貿易、財政面で大きな力を持っていた。この力を清国が取り戻そうとしている。

 

4月24日
露紙の憤慨 23日タイムス社発
露都来電―半官報ノウオエ、ウレミヤ紙は、ペルシャに於ける獨逸の活動及びペルシャ内閣の態度について、次の様な論評を行った。英露両国は、共に自ら犠牲となってペルシャを援ける政策を捨てて、駐屯中の露兵を撤退させ、同国をペルシャ人自身が意のままにさせる様にしなければならないと主張した。
解説:4月22日「露国の抗議」の続報
獨逸飛行隊 23日上海経由ロイター社発
操舵式飛行器3隻よりなる飛行隊は、本日獨逸コロオンを出発し、ハンブルグに向かう予定である。同港にて獨帝の面前に於いて連合遊弋を試みる事になっている。
解説:当時の新聞では、まだ飛行機3機と書かれてなく、又編隊飛行とも訳されていない。
米国投機商の気焔 同上
投機商パテン氏は、ニューヨークに於いて新聞記者と会見し、予は綿を買い占めた。そして綿の不作に照らして考えるに、欧米紡績工場は、予の要求する代価を支払わなければ8月、9月には休業の外なくなるであろうと言明した。

 

11月25日
長沙暴動再起 24日上海経由ロイター社発
北京駐在英国公使は、英国外務省に打電して、長沙の暴徒が再び蜂起し、在留外国人は、全て2隻の英国船に避難したと報告した。
英国飛行機家の手際 同上
英国飛行機家グラハムホワイト氏は、ロンドンとマンチェスター間で飛行を試み、少しも人目に懸らず、リッチイルドに到着したと言われている。

 

4月26日
波斯対露国 25日タイムス社発
露都来電―テヘランよりの報道によれば、ペルシャの急進派が主張する冒険的政策は阻止された。最も信頼すべき筋の言によれば、カスヴィン(テヘランから西北約90マイル)に駐屯の露兵は撤退する予定
解説:4月24日の記事の続報
飛行中止 25日上海経由ロイター社発
英国飛行家グラハムホワイト氏はマンチェスター行を中止した。風が荒れたために損害を受けた。
解説:昨日の記事の続報
摩洛哥の形勢 同上
タンジール来電―スペインは、スーター(モロッコ内にあるがスペインに属する港)よりモロッコ人居住の一市テツアンまで道路を作り、且つ堡塁を設ける意がある。但し同国がこの様な企図をするならば、モロッコの人心を一般に激高させ、欧州人の安全を危うくするに至るのではと気遣われる。
ダライラマと英露 24日ベルリン特約通信社発
露国半官報ノウオエ、ウレミヤ祇の報道によれば、英露両国は、6月末、ダライラマを露都に来させる事に同意した。
解説:現在と同様に、ダライラマはインドに逃れている。

 

4月27日
アルバニア叛乱 26日タイムス社発
ウイーン来電―広報が伝える所によれば、アルバニアのトルコ陸軍司令官がカチヤニクの狭隘な谷の占領をおざなりにしていた為、アルバニア人等は、ここで列車の進行を停止させ、兵士の武装を解き、補給品を捕獲し、且つ各電信線を切断した。なお反乱したアルバニア人は3万4千に達し、これに反してトルコ軍の人数は2万に過ぎない。
解説:4月9日「土耳其の内乱」で報道され、以後続報があるが。結局アルバニアは2年後独立を達成する。
米国綿作打撃 26日上海経由ロイター社発
米国テネシー、アラバマ、ジョジヤ諸州に於いて風雨があり、ルイジアナ、ミシシッピー、テキサス諸州は気温の低下が激しく、これ等諸州の綿作に障害を及ぼしている。テキサス州の農事委員は、収穫は、平年の半分となる予想で、又綿の種が少ない為に、再植え付けも困難となるであろうと憂慮している。
解説:関連記事が4月24日「米国投機商の気焔」にある。

 

4月28日
土耳其の内乱 27日タイムス社発
コンスタンチノーブル来電―最近トルコ兵がアルバニア人の為に待受け攻撃を受けたテヘルナロワ間道に於いて、激闘の後、遂に叛徒を退散させた。この戦闘に於いてアルバニア人2百名が戦死した。
ウイーン来電―アルバニアに於ける叛乱は非常に世上の注目を惹き、トルコ軍隊がこの征圧に失敗するならば、新立憲政治も危機に瀕する運命に陥るであろうと観測される。
解説:昨日の記事「アルバニア叛乱」の続報
南阿の生駒艦 27日上海経由ロイター社発
ケープタウン来電―生駒艦に乗組み中の日本代議士達は、最も友愛な歓待を受けた。生駒艦は、アルゼンチンのブエノスアイレスに向け出発した。
解説:生駒は世界一周を目指している。
米国綿作打撃 同上
アトランタ来電―数百万エーカーの綿が破滅の危機にある。南部諸州全部の綿作地帯は、寒冷であり湿気が多い。
解説:朔日の記事「米国綿作打撃」の続報

 

4月29日
露清協議不成立 28日タイムス社発
露都来電―ハルピンに於ける露清両国委員会は、松花江通航問題の解決について、完全に失敗した。露国政府は、その委員会に対し、清国があくまでも条約を無視しようとするので、止むを得ずこの協議を中止する様訓令した。多分露国は、今後松花江の課徴金を清国税関に支払う事を拒否するであろうと言われている。
解説:松花江は、アムール川を通じて外海につながる国際河川であり、ハルピン市や吉林市を通っている。
埃及と英国 28日上海経由ロイター社発
外務次官マクキンノン、ウッド氏は質問に答えて、特にエジプト首相ブートロスバーシャ殺害事件に関係ある諸種のエジプト情勢報告は、我々の希望通りの満足なものではない。但し予は英人に侮辱が加えられたとは聞いていないと言明した。
英国飛行家成功 同上
英国家ボルハン氏は、今朝5時30分マンチェスターに到着した。

 

4月30日
露国と松花江 29日タイムス社発
露都来電―露国政府は北京駐在露国公使に対し、清国が6月までに松花江問題を解決しないならば、露国は清国の諸規則を無視するであろうと通知する様訓令した。
アルバニア叛乱 29日上海経由ロイター社発
コンスタンチノーブル来電―トルコ兵が、北部アルバニアを通じて優勢な叛徒に出会ったのは、最早疑いがない。叛徒は、カチアニ隘路の両端を占領し、鉄道を食い止め中である。
公果境界策定 同上
獨逸新聞の報道によれば、コンゴ境界協議はようやく終了し、ドイツはランガ地方全部を獲得し、ベルギーは、境界線としてキヴ湖の西岸を得、又獨逸は、キヴ湖中のキウイスウイ島を領有した。ルウエンゾルは山頂を分界として、英国とベルギーの両国間に分割されたと言われている。
解説:列強がアフリカ植民地を分割する状況一端を示している。

 

 

明治43年3月

3月1日
ダライラマの哀訴 28日タイムス社発
露都来電―ダライラマは露国政府に哀訴した。清国官憲は、チベット人民が何ら清国を挑発していないにも拘わらず、妄りに攻撃的態度を執り、暴行を欲しいままにしていると説き、露国が英国と協力してチベットを援ける様求めた。
解説:2月24日以降、連日の様に報道されている記事の続報
米国の巨艦建造 28日上海経由ロイター社発
ワシントン来電―米国海軍卿メイヤー氏は3万2千トンと言う前例のない大型戦艦を建造する権限を求めようとしている。非公式に伝えられている所によれば、米国政府は、日本が3万2千トンに近い戦艦2隻を起工中であるとの報道を受けたと言われている。
解説:2月27日記事の続報
膠州知事増俸 26日ベルリン特約通信社発
獨逸の議会予算委員会は、知事の増俸を意味する1万マルクの膠州予算増加額を削減した。同額は4千マルクと定められた。
解説:中国北部の山東半島にある膠州湾一帯はドイツの租借地であった。中心は青島で、現在でも有名な青島ビールはドイツの手で始められた。知事は総督の誤りではないかと思われる。


 

3月2日
錦愛鉄道と露国 28日桑港特派員発
露国外相イズワオルスキー氏は、米国その他の関係列国に対し、米国国務郷ノックス氏が提議した錦愛鉄道建設に対する修正を既に非公式に発表したとの説がある。
露国の修正案は、既電のとおり錦愛鉄道建設を止め、これに代えて、北京よりウルガ及びヤクイを経て張家口に伸ばしバイカル線でシベリア鉄道に接続すると言う蒙古鉄道である。到底収支が取れないであろうと露国でも賛成が少なく、米国は無論同意する筈もない。
解説:米国の鉄道王ハリマンは、当初列強で共同運営する満州鉄道の中立化案を提案した。しかしこれが受け入れられなかったので次いで、これに並行する錦州と璦琿(アイグン)を結ぶ錦愛鉄道を提案し、当然日本と露国はこれを受け入れていない。
無謀なる海軍拡張 同上
海軍卿が14インチ砲12門を搭載する3万2千トンの軍艦の建造を提案したのに対し、下院予算委員長タウネイ氏は、これは造船所に操られた夢であり、この様な無謀な戦艦を建造すれば米国は破産の外ないであろうと述べ、最近造船所に操られて軍備拡張論が盛んな事を攻撃して、この様な議論を続きていると日本のみならず、ドイツとの戦争談も盛んになる時がくるであろうと嘲った。
解説:3月1日「米国の巨艦建造」の続報である。
清国政府の回答 1日北京特派員発
英国がチベット事件に関し、支那政府に詰問したのに対し外務部は大要次の様な意味の回答を発したと言われている。即ち支那がチベットに兵を送ったのは全くその境内の騒乱を鎮圧するためであり、チベットの政治その他を根本より改善する意志はない、且つインドの辺境に騒乱を及ぼさない様に、又通商を妨害しない様に速やかに平和の処置を取るであろう云々
解説:2月24日以降連日の様に報道されている記事の続報

 

3月3日
土勃紛議と墺紙 2日タイムス社発
ウイン来電―オーストリアの諸新聞は、トルコとブルガリア国境に於ける両国兵士の闘争は危険千万であるとして、深く世人の注意を促した。しかもこれは露国のバルカン諸邦連合計画に付随して起こった奇怪な事実であると言明している。
波斯首相辞職 同上
テヘラン来電―ペルシャ首相は辞職した。表面の理由は露国軍隊を撤退させる事が出来なかった事によるが、その実は多分英露両国の提議した借款問題に関係し、内閣の意見が一致しなかった結果と思われる。
解説:ペルシャの北半分は露国の南半分は英国の勢力圏である。
ダライラマ歓迎 1日上海経由ロイター社発
ダライラマは、本朝ダルジェリングに到着する予定であり、インド政府の賓客として、優遇されるであろう。なお仏教徒等は、同地居留のラマ教徒と共に歓迎行列を準備中である。
解説:連日報道されている記事の続報

 

3月4日
佛国洪水の影響 3日タイムス社発
パリ―来電 洪水の結果、沸国は小麦の一大欠乏を生じそうな状況である。リイルの綿業罷工者達等は数個の工場を襲い、略奪を欲しいままにしている。
解説:2016年6月フランスで大洪水が発生し、1910年以来と報道されているが、当時の報道を見ると1910年1月23日暴風雨が佛国を襲う、1月24日佛国の大洪水で被害甚大であると報道されていた。
ダライラマと英国 3日上海経由ロイター社発
インド事務次官モンテギュウ氏は下院に於いてインド総督ミントウ卿の電報を朗読した。これは、チベットの事変を詳報したもので「清人はダライラマに従前同様の権力を保有させるという誓約を破った」と説くダライラマの愁訴を否定するものであった。次官は又清国が英国の照会に回答し誓約を与えたが、これに関する英国の意見を述べるには次期が早いと言明した。
英国海軍追加予算 同上
英国下院は追加海軍費68万9千1百ポンドの支出を可決した。この内45万7千ポンドは追加ドレッドノート型戦艦4隻に対する支出である。

3月5日
印度仏教徒抗議 4日上海経由ロイター社発
本社の印度ダルジリング通信によれば、同地の仏教徒が大会を開き、清国のダライラマ虐待を憤怒し、その地位を要求、且つ清国皇帝に対し、在チベット軍隊の撤退と駐チベット大臣の免職を求める決議を行った。
西蔵変乱と英国 同上
英国外相サー、グレー氏は、下院に於いて演説し、インドとチベットの関係がチベットの行政変革により影響を受けるであろうと想像する事は出来ない。英国政府の一般方針は、条約上の義務を厳守するにある。尚英国以外の関係国も同様に条約上の義務を厳守する事が必要である等と言明した。
露清交渉 3日ベルリン特約通信社発
露都の電報通信によれば、露国政府は清国外務部に向け、ダライラマ廃位に付きその意志を宣明する様要求した。清国政府はこれに対し、駐チベット清国官憲は、チベットの内政及びラマ教に決して干渉しない旨回答した。

 

3月6日
清国大学協議 5日上海経由ロイター社発
英国ケンブリッジ大学評議員会堂に於いて集会が行われ、副校長が熱心にこの計画の賛成論を述べた。駐清英国公使サトウ氏は、1900年の清国と列強間の衝突が最終の衝突であると信じると説き、英国の優越的地位の根底である教育を行う事こそ1900年に清人が受けた損害に対して与えるべき最も貴重な報酬であると言明した。
解説:1900年の義和団の乱の賠償金として、清国は各国に過酷な賠償金を支払った。
その額は利息を含め9億8千万両であり、当時の歳入8千8百万両の約10倍であった。過酷な賠償金に対し国際的な批判が起こり、各国はそれぞれの方法で清国に還元する事になり、例えば米国は精華大学を創設している。この記事もその運動の一つと思われるが清国大学は歴史に残っていない。
露国移民失敗 4日桑港特派員発
ハワイ移民課の斡旋によりハワイに送られた露国移民4百余名は、給料の少ない事に不満を持ち、砂糖耕地に行くことを拒んでいたが、この程ワシントン駐在露国太師に打電し、帰国できる様に要請した。
桑港の排斥運動 同上
日韓人排斥協会の運動がますます激しくなり、市内の日本人が続々解雇され始めている。なお近日中に行われるカルフォルニア州知事選挙に利用する目的で、排斥運動は次第に激烈になる模様である。

 

3月7日
英独関係情偽 6日上海経由ロイター社発
獨逸帝国議会に於いて海軍問題の討議に際し、獨逸の海軍政策は英国の疑惑を挑発すると述べた社会党議員の質問に対し、海軍大臣テルピッツ氏は次の様に答えた。獨逸の海軍は決して侵略を目的とせず、只我が領土の沿岸及び海運業を保護する為のみであり、現在の建艦計画に於いても少しも他の疑惑を招く様な威嚇的性質を含んでいない。
獨逸政府は何処までも英国政府との友好を持続し、両国民の感情を互いに有益な方向へ向かわせる事に引き続き務めたいと考えると言明した。(一部抜粋)
解説:獨逸は海軍大臣テルピッツの下で、英国と建艦競争をしている。4年後の1914年6月、サラエボでのオーストリア皇太子暗殺事件で第1次世界大戦が始まっている。

 

3月8日
沸獨関係論 7日タイムス社発
パリ―来電 佛国社会党党首ジョオレ氏は、代議院に於いて演説し、40年前佛国がドイツに割譲したアルサス、ローレンスの人民は、自治権を得且つ共和制となる事を望んでいると説き、この希望が実現されると佛獨間の親交に対する最後の障害物がここに排除されるようになると言明した。
解説:40年前、フランスは普佛戦争(プロシャとフランス間の戦争)に敗れ、アルサス、ローレンスをドイツに割譲している。
米国資本家日露英攻撃 同上
ワシントン来電 米国資本家ヤコブ、シーフ氏は、ニューヨーク共和党クラブの午餐会に於いて、人種的偏見を論議した際、日露両国が清国を臣従者の位置に置く為に握手した点に言及し、大いにこれを遺憾とし、特に英国もこの仲間に加入し、世界の最大危機を起こそうとするに至っていると言明した。
(備考:シーツ氏は、ユダヤ人で日露戦争の際露国に対する反感から日本に同情し、米国内の日本外債募集も氏が関係するクーン、ローブ銀行の手で行われた。しかも現在例のモルガン一派のシンジケートに加わり、大いに清国投資に熱中している。)
加奈陀大雪崩(日本人39名の安否) 6日桑港特派員発
英領コロンビア州ロッキー山脈中のロージャースに於いて大雪崩が発生した。作業列車に乗っていた92名が埋没し、24名が負傷した。その列車には日本人労働者が39名乗っており、未だ消息不明である。

3月9日
佛国河流減水 8日タイムス社発
パリ―来電 セイヌ河を始め諸河流はゆっくりであるが着々と減水し始めている。
解説:3月4日洪水の影響の記事の続報
清国と西蔵 7日北京特派員発
清国は現在最もチベット問題を重大視しているが、その観察は非常に楽観的である。
政教分離に根拠を置き、ダライラマを一つの宗教の首長として、これを尊敬するかしないのは支那政府の任意であると考え、更に外国から干渉を受ける謂われはないと唱えている。若し外国が支那の主権を尊重するのであれば、廃位のダライラマを歓迎、優待する事は道に反するものと為している。
解説:2月24日以降しばしば報道されている記事の続報であり、現在のチベット情勢とよく似ている。

3月10日
獨逸海軍討議 9日上海経由ロイター社発
ベルリン来電 社会党員等は獨逸帝国議会に於ける海軍予算討議に際し、前週土曜日に於ける海相の演説中、軍備制限問題に言及しなかったことを指摘し、これは英人の不信用を正当化させる所以であると公言した。海相はこれに対し、政府は海軍協約問題を避けた事は無いと説き、又獨逸の建艦計画が急増している事を否認した。
英紙の論評 同上
数種の英国新聞は、獨逸宰相ベートマン、ホルウエル氏の友好的懸念に同意を表すると同時に獨逸の建艦計画は防備としては許されない程の規模であると説き、毎年英国に数百万ポンドを費やさせるという友好は疑わしいものと考えている。
解説:獨逸海軍がもし英国海軍と戦闘を交えたなら、獨逸海軍は敗れるかも知れないが、危険なまでの損害を英国海軍に与えるという海相テルピッツの危険艦隊思想の下で、獨逸は英国に建艦競争を挑んでいた。

3月12日
べ氏功労表彰延期 10日上海経由ロイター社発
ワシントン来電 米国下院海軍委員会副委員会は、北極発見が証明されるまでベアリー氏に栄誉を付与する手段を執る事を拒んだ。
解説:明治42年9月14日の記事以降ベアリー氏とクック氏の北極点到達論争が行われ、ベアリー氏が勝利している。2月11日「ベアリー氏功労表彰」の記事がある。
日米戦争談真相 10日紐育特派員発
8日朝のサンフランシスコ、クロニクル紙は、社説に於いて痛論して、日米戦争談は陸海軍費を支出させようとするか、経済上の利益を収めようとするかの目的に出たもので、両国は現在に於いても近き将来に就いても戦争すべき理由は無いと述べた。
桑港の排日運動 同上
サンフランシスコ労働同盟は、10日総会を開き、日本商店及び日本人を使用する白人商店に対し、極力ボイコットを行う決議を為し、大運動を起こした。紛争がますます大きくなると思われる。

3月13日
希臘政界平穏 12日タイムス社発
アデン来電 陸軍協会は政府を完全に信任する旨の宣言をし、首尾善く衝突を避ける事が出来た。しかし2個の党派間の十分な妥協はなお成立していない様である。
ダライラマの後任 12日北京特派員発
未だ公表されていないが、ダライラマの後継者は、暫くパンチェンラマを以て処理させる事になり、4人の幕僚はダライラマの逃走後もその職にあり、住民は平穏である。
解説:パンチェンラマは、仏教界で序列第2位であり、この時、清国に協力している。その為1911年の辛亥革命時に、四川省総督が殺害され、ダライラマがはチベットに帰った際清国の勢力圏に逃れている。

3月14日
極東政策と米国 12日タイムス社発
ペテルブルグ来電 ノーウエ、ウレーミヤ紙は、米国資本家シラツ氏の演説を論評して、次の様に述べている。アジア政策の根本問題に対する日英露三国の一致は、平和の維持を保障するものである。然るに国務郷ノックス氏の意見に賛成する一派の米人は、何故かこの日英露の一致に対して一定の目論見を立てて、嫌悪の情を煽動中であり、これがシラツ氏の様な米国一流の資本家までが日本人排斥論を宣伝するに至った所以である云々
解説:3月11日「米紙の日英露攻撃」の続報である。
日米戦争と罪悪 13日上海経由ロイター社発
小村外相は、ニューヨークのウオルト新聞に電報を送り、日米間には現実的な不安を引き起こすべき事は一つもない。極東に於ける両国の利害は少しも矛盾せず、又反対せず。日米戦争の如きは、見過ごすことのできない罪悪であると確信する旨宣明した。
 3月15日
印度革命派檄文 14日タイムス社発
デッカ発-インド新聞法が制定され、定期刊行物の革命的言論は大いに鎮圧されたが、革命派は盛んに秘密出版を行いつつある。今回東ベンガルに於ける諸大学その他各学校に向け、多数の檄文を配布した者が居る。その内容は、非常に野蛮で、各学生に対し「外人の血をカリ女神に供物として献上せよ」と主張している。なおこの檄文の出処はカルカッタの様である。
「ダライラマ」カルカッタ着 14日上海経由ロイター社発
ダライラマは、カルカッタに到着し、インド総督の馬車でヘスチングスハウスに入った。特別に熱誠な歓迎は無かった。
解説:2月24日以降しばしば報道されている清国による「ダイライラマ」攻撃の記事の続報である。

3月16日
ダライラマと総督 15日上海経由ロイター社発
本社カルカッタ通信によれば、ダライラマはインド総督ミントオ伯に荘厳な公式訪問を行った。ベンガル騎兵隊に護衛されて、馬車で政庁に到着、ミントオ伯に絹襟巻を贈呈した。次いでリントオ伯も返礼として、公式訪問を行った。
英国海相演説 同上
英国海相マクケナ氏は、海軍予算を提出するに当たり、次の演説を行った。
この費用を正統とする所以のものは、実に国家の安全を守る緊急的要務がある為である。予はその過不足の何れにも陥っていない事を示し得る事を望むと説き、3月10日所望の戦艦5隻は、1913年1月を以て竣工する予定で、1913年3月までにドレッドノート型戦艦は、完備される予定であり、二国標準は維持されるであろうと説いた。又豪州、ニュージランドの戦艦を加えれば、同時に建造中のドレッドノート型戦艦は15隻となる。これは、英国の建造力が減退し、現在の地位を維持する事が出来ないのではと言う感想を排除する所以であると述べ、予は将来海軍費の減少する事を希望すると言明した。
解説:英国は獨逸と建艦競争をしており、二強国標準と言う政策を取っている。これは欧州で獨逸,佛を合わせた海軍勢力を凌駕する海軍を持つと言う政策である。第1次世界大戦まで4年

3月17日
米国鉄道大罷業 15日上海経由ロイター社発
米国のシカゴ以西にある各鉄道の火夫全部が参加する同盟罷業は、夜半をもって命令された。諸会社及び労働者間の紛争は、賃金及び昇級に関係する。同罷業は、15万マイルの線路に及び、シカゴより太平洋沿岸に到る各客車、貨車の運転を中止させるものである。米国政府は、鉄道会社の要求により、同紛争を解決する為に干渉すると言われている。
日米問題論戦 15日紐育特派員発
過般、ニューヨークタイムスが満州問題に関し、日本を罵った大論文に対し、各新聞は論戦を開いた。そして「イヴニング ポスト」、「ウオールド」、「サン」、「イヴニング、メール」の4新聞及び「ヘラルド」は、「タイムス」の態度を疑い、これを示す為に黄色の新聞紙を使用した。ある新聞は、現在の米国は満州での利益を得ようとするよりも寧ろ南米に力を尽くす事が得策であると論じた。又小村大臣が日米平和論について、特にウオールド新聞に打電した件に対し、他の新聞は不平の意を漏らした。
解説:3月11日「米紙の日英露攻撃」の続報である。

3月18日
清国大学協議 17日上海経由ロイター社発
諸大学連合の清国大学計画を助成する為、ロンドン市長官邸に於いて有力な人物の会合が行われた。ヒユ、セシル郷、文相ランシマン氏、カンターベリー大僧正等重要な弁士であった。
対清政策と日米 16日桑港特派員発
ワシントン来電―日本はその極東政策を一変し、米国と非公式な同盟を結び、両国が相提携して極東の平和を維持し、清国に於ける門戸開放主義を維持するのではとの説がある。日本大使館に達した情報によれば、日本の新提案は、門戸開放主義を確実にすると共に満州に於ける日本の鉄道の位置を永久に確定しようとしている様である。そして日本の提案は米国に対して、妥協的であり、米国が条件付きで賛成するも拒絶するも日本外交関係を害するものとは思われず、外交家はこの手段を以て日本がアジアにおける現状を維持する事の出来る唯一の手段と信じている。
清帝と西蔵問題 17日北京特派員発
チベット善後策として政務處会議の結果、(1)新ダライラマの選出(2)駐チベット新陸軍の増加(3)人を派遣してチベット人を慰撫する事(4)有力な駐チベット大臣の派遣(5)英露両国に駐在する公使に命じ、両国の対チベット方針を注意させて、臨機の処置に出る事であり、以上の5カ条を基礎とし、着々と実行の歩を進め始めている。

3月19日
日米協商談 18日上海経由ロイター社発
ニューヨークワールドは、日本が米国国務郷に対し、両国共同で極東を支配し、開放主義を維持し、各国の商業的均衡を保護する一つの協定を結ぶ事を提議した旨報道した。
同上続報 同上
本社の知る限り、ロンドンに於いてはニューヨークワールドの日本協商説を裏付ける確実な情報は少しも無く、寧ろありえない事と思われている。且つ日米両国は、1908年11月既に現状維持及び開放政策の宣言を発しており、又現在この様な手段に出るのは却って日本がしばしば公言する方針に違反するものであると指摘され始めている。
ダライラマ 同上
ダライラマは、本日カルカッタ腑を出発し、ダルジリングに向かった。政府の賓客として同地に滞在する予定である。
解説:現在と同様に、ダライラマは清国に追い出されて印度に亡命中である。
3月20日
米紙の戦争否認 19日タイムス社発
ニューヨーク夕刊ポストは、社説に於いて、現在の様に日米衝突の機会より遠ざかっている時代は無く、思慮ある国民は、前大蔵卿ショウ氏の排日説を否認するに躊躇しないと説いた。
解説:3月11日の記事「米紙の日英露攻撃」の続編である。 
日米協商説 18日桑港特派員発
内田大使は、極東問題に関し、日本が新たに米国に提議するであろうとの説を否認し、予は少しも関知していない。多分一昨年ルート、高平両氏の間に取り交わした覚書を誤解していると思われると言明した。国務省もこれについて、何ら聞いていないと声明した。しかしロンドン電報によれば、英国では極東問題について、日米間に新交渉があったと確信している。
フ氏親日談 同上
前副大統領フェアバンクス氏は、ニューヨークに帰着し、日米間には戦争は決してないと断言し、米人にとって日本人の信義が厚い事を賞揚した。
3月21日
露国の回答 20日上海経由ロイター社発
露都来電―諸新聞の報道によれば、露国はチベットに於ける自己の権力回復に援助を求めたダライラマの哀訴に回答する筈である。、唯大げさな文句を用いて、英露両国が北京に於いて行った抗議に言及すると思われるが、但しダライラマに対して何ら確固たる希望を与えないであろうと
3月22日
共和党内訌 21日上海経由ロイター社発経由
ワシントン来電―米国下院は、155対191の多数を以て、規則委員より議長を排除する動議を可決した。又一民主党議員は、議長キャノン氏を辞職させようとする動議を提出したが、激しい議論が起こり、155対191の多数で否決された。但し討論の結果、議長キャノン氏の勢力は失墜した。
解説:内訌(ないこう)とは内紛を意味する。
米仏関税協約 同上
米国大統領タフト氏は、米仏関税問題はその全部に亘って協約が成立し、米国は佛国に対し2割5分の減税を許す旨宣言を行った。
英国炭鉱罷業 同上
サウスウエルス炭鉱紛議を解決する協議が挫折し、坑夫20万人の同盟罷業が避けがたい模様である。
解説:日露戦争後の時代に於ける強力な英国の労働組合の実態が分かる。
 3月23日
日本艦隊歓迎 22日上海経由ロイター社発
シドニー来電―日本巡洋艦阿蘇、宗谷の両艦は、数週間を期して訪問し、最も熱心に歓迎された。豪州総督ダッドレー卿は、今夜饗宴を開く予定である。
ソマリランド撤兵 同上
アフリカのソマリランドに関する報告書によれば、英国政府は至急内地より軍隊を撤退する事に決定した。又ムラア蕃民に対する防御は、既に武装させている親英派の土族兵を以てこれに当たらせる筈である。

3月24日
上院改革決議案 23日上海経由ロイター社発
3月17日報道のロオスベリー卿が提出した決議案中、残っていた世襲主義廃止に関する議案は、17名対175名の多数で可決された。
米国海軍予算 同上
ワシントン来電―米国海軍支出案は、戦艦2隻、修繕船1隻、巡洋艦2隻、潜航艇5隻の建造を定め、又1億2千9百万ドルの海軍費を定めた。
解説:英国海軍の新予算計画に含まれる軍艦は、大型戦艦5隻、保護巡洋艦5隻、駆逐艦20隻、潜航艇若干である。
英艦上の暴行 同上
デイリーメールの報道によれば、英国戦艦インビンシブル号(1万5千トン)は、ポートランドに於いて、1週間全く孤立の状態に陥った。その砲キョウは全て海中に投げ込まれた。これに関して調査が行われたが、未だ責任者を発見するに至っていない。

3月25日
露兵波斯撤退 24日タイムス社発
露都来電―先にタブリツの紛争に関連してペルシャに入り、次いでツルファーに送られた露国軍隊は今回、露国ツランスコーカシャ州エリバンに帰着する様命令された。
錦愛鉄道問題答弁 24日上海経由ロイター社発
英国外相サー、グレイは、錦愛鉄道問題に関し、サー、ブウル氏の質問に答えて、英国政府がこれについて、自動的態度を執る様に迫られ、又米国よりも同計画に賛成を求めてきたのは事実であるが、我国は1899年英露協約を尊重する義務があるが故にこれに同意する事は出来なかった。しかしこれを以て英米利益関係の衝突と言うのは大きな誤解であると述べ、又日露両国は何の権利があって干渉するのかとの質問に答えて、他国が同件に対する権利を承認、拒否若しくは限定するのは英国政府の任にないと言明した。
解説:錦愛鉄道とは、アメリカの鉄道王ハリマンの計画した世界一周計画の一貫として渤海湾の錦州から西部満州を経て、黒竜江岸の愛輝に至り、東清鉄道に接続するもので、東清鉄道の買収も含まれていた。日露は当然反対した。

3月26日
米国鉄道紛議落着 25日上海経由ロイター社発
米国シカゴ以西の諸鉄道労働者紛議事件は、賃金以外の各点で全て協定が結ばれ、唯賃金のみは仲裁に依る事に定められた。
解説:3月17日米国鉄道大罷業の続報
フ氏親日運動 24日ニューヨーク特派員発
前副大統領フェアバンクス氏は、帰国後盛んに日米両国の為に平和的な発言に努めている。

3月27日
伊国火山噴火 26日上海経由ロイター社発
イタリアのシシリー島エトナ火山は、14個の火口より噴火中であり、溶岩の流れは、ある場所ではその幅1Kmにも及び、今やボシヨオに迫り、住民は避難中である。
解説:エトナ火山は、シチリア島の東部にあり、世界で最も活動的な火山の一つで、常に噴火している。

3月28日
英国上院廃止論 27日上海経由ロイター社発
労働派首領バーンス氏は、上院否認廃止決議案に対する修正案を提出した。即ち上院は、無責任にして国民一般の福祉に反し、且つ国家の進歩を阻害する故に同院は当然排すべきものであると言っている。
羽二重と樟脳 26日パリ通信社発電
佛国議会は関税法を改正し、結局羽二重に対しては百キロに対し350フランの課税を徴する事に決し、そして粗製樟脳は無税と決定した。
解説:羽二重は高級絹織物の一種で、当時日本の代表的な輸出品

3月29日
印度人種衝突 28日タイムス社発
ラホール来電―印度人等はイスラム教徒商人に対し、非買同盟を行い、その為人種的悪感情が次第に増加し始めている。
ブータン条約 同上
カルカッタ来電―英国とブータンとの条約中、重要な規定は、ブータンは対外事項について一切英国の指導監督を受ける事を認め、これに依って清国の陰謀を防止する点にある。
米艦隊欧州行 28日上海経由ロイター社発
ワシントン来電―米国政府は、来る11月、大西洋戦闘艦隊に地中海への回航をさせる事に決定した。

3月29日
印度人種衝突 28日タイムス社発
ラフォール来電―印度人等は、イスラム教徒商人に対し、非買同盟を行った為に人種的偏見の感情が次第に高まり始めている。
解説:この対立が原因でやがてイスラム教徒の国パキスタンが生まれる。
ブータン条約 同上
カルカッタ来電―英国とブータン(インド北部の国)との条約中、重要な規定は、ブータンは対外事項について、一切英国の教導監督を受けることを諾し、以て清国の陰謀を防止するという点にある。
米艦隊欧州行 28日上海経由ロイター社発
ワシントン来電―米国政府は来る11月、大西洋艦隊を地中海回航の途に上らせることに決定した。
解説:米国の艦隊は、日露戦争後英国に次いで世界第2位の艦隊と言われている。

3月30日
爪哇に関する警告 29日タイムス社発
ロンドン商業協会は、ジャワ島に土地を獲得する件に対し警告を発し、オランダ政府は同島の土地私有者より強制的に所有権を剥奪しようと企てている旨言明した。
解説:米英の植民地政策に比較し、オランダのインドネシアに対する植民地政策が最も苛烈なものであった。
芬蘭問題 同上
露都来電―フィンランドの事項中、一般帝国に関係があるとされる範囲を決定する議案が、昨日国民議会に提出された。フィンランド人等は、露国とフィンランド間の問題が如何なる状態において処分されるかに注意し、その遣り口如何によっては、フィンランドの自治を危うくするのではと憂慮している。
解説:当時のフィンランドは、露国の総督の支配下にあった。

3月31日
芬蘭自治権剥奪 30日タイムス社発
露都来電―露国政府のフィンランド立法権制限案は、先に発せられた布告の文言を遥かに越え、その為フィンランドの自治は影のみとならざるを得ない状況に陥っている。依ってフィンランド人は最後の手段として、諸政治機関に対し、ボイコットを行うと威嚇し始めており、不穏な形勢である。
日本人の間諜 30日上海経由ロイター社発
マニラ来電―米国工兵軍団の一兵士が要塞地図を撮影中に捕縛された。尋問の結果、2名の日本人に地図を渡す計画である事が発覚し、その日本人は犯罪兵士と共に捕縛された。この日本人は、多分追放されると思われ、在留日本人は、この2名の日本人は或る欧州の強国の為にこの様な事をしたに過ぎないと言っている。
解説:フィリピンは、米国の保護国となっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明治43年2月

2月1日
獨逸議会騒擾 31日上海経由ロイター社発
ベルリン来電―有力な保守党員オルデンブルヒ氏は、獨逸議会に於いて「獨帝は、何時でも将校に兵士10名を従え、議会を閉鎖せよと命じる事ができる」と公言した。その為に議会は非常に喧噪となり、社会党員、急進主義者、その他は議可に対する侮辱として抗議し、盛んに絶叫した。次いでオ氏はその意は、兵士は大元帥陛下に服従しなければならないと言うにある旨弁明した。
土勃関係険悪 同上
コンスタンチノーブル来電―トルコは、ブルガリアが開戦する意志があるとの説がある為、非常に憂慮し、国境の軍隊は急遽増員中である。

 

2月2日
米国の印度移民 1日タイムス社発
サンフランシスコ来電―印度労働者191名到着した。これについて当地のアジア人排斥協会は一つの警告書を発し、今やカルフォルニア州に於ける印度人は1万人に上り、又毎月約2百名が到着中であると言明した。
解説:当時既に清国人は入国禁止、日本人は日本外務省の政策で、米国への移民禁止している状況であった。
印度回教徒悦服 同上
デイリー来電―印度のイスラム教徒同盟会の会合が開かれた。この集会は、教育及び農工業に関して注目すべき国民的計画を示し、又各社会と協力して、英国の政治に喜んで服従したいと熱心な希望を発表した。
移民政策問答 内国電報(31日発)
午前10時40分開会した国会の於いて、大石氏の質問に対し小村外相は次の様に述べた。
我が日本は、日露戦争の結果として一島国より大陸国となった。そして我が国の地位を見ると、西には4億の人民を有する支那と1億6千万を有する露国がある。東には1億の人口を有する北米合衆国がある。この間に介在して一大飛躍を試みるには、少なくとも1億の人口を有しなければならない。その為に5千万の我が大和民族はこれに集中する必要があり、散逸させてはならない。この大方針の結果として政府はなるべく移民を満韓に手中させる決心である。そしてこの地は、尚2千万、3千万の人口増加に応じるには、十分に余裕がある。その為民族集中の大方針に適すべき方面への移民に対し、政府はこれを幇助するに躊躇しないと答えた。

 

2月3日
希臘憲法修正 2日タイムス社発
アデン来電―ギリシャ皇帝は、陸軍協会が場合によっては宮城を占領すると恫喝した結果、遂に不本意ながら憲法に抵触する国民会議招集を裁可した。現在の憲法によれば、憲法修正を目的とする国民会議の招集は、2個の異なる議会が引き続いて同件を可決した後である事を要し、従って新選挙を行う必要がるとしている。但し皇帝は同意の条件として陸軍協会の解散を要求したが協会はこれを承諾した。
土国新聞激昂 2日上海経由ロイター社発
コンスタンチノーブル来電―トルコの諸新聞は、ギリシャの情勢が危険な事に鑑み、戦備の必要を主張し、クリイトの代表者をギリシャの国民会議に列席させる様な事があれば、これはギリシャとトルコの開戦理由になるであろうと論じている。
解説:クレタ島は、現在ギリシャ領である。当時は、トルコ領であったが人口の1/6のイスラム教徒と5/6のキリスト教徒の間で紛争が絶えず、列強が駐留軍を派遣していた。

 

2月4日
近東問題再燃 3日タイムス社発
コンスタンチノーブル来電―ギリシャ陸軍協会が皇帝を威圧して憲法修正の国民会議を今秋開会させる事となった。この件は非常にトルコの人心を動揺させた。トルコ政府は、クリイト島保護の任にある英露伊沸4カ国に対し「若しクリイト島民がこのギリシャ国民会議に関する新選挙に際し、之に代議員を出すと決定するならば、トルコは止むを得ず自己の主権を守る為に断固たる手段を取るであろう」旨を通知したと信ずべき理由がある。
土勃関係難 同上
ソフイア来電―サロニカの陸軍法定は、8名のブルガリア商人に対し、視学官を殺害したとの罪で死刑を宣告した。この為ブルガリア国民は非常に激昂している。

 

2月5日
希臘の対土誓約 4日タイムス社発
アデン来電―ギリシャ政府は、トルコに対して一つの誓約を与えた。その要旨は、今回開かれる予定の会議はギリシャ人の一般的大会議ではなく、唯憲法の修正を目的とする一つの議会である為、クリイト島より代議員を派遣する機会は無いと述べている。
近東問題困難 同上
コンスタンチノーブル来電―一般公衆及び諸新聞は、ギリシャとトルコの戦争が起こりそうな情勢に非常に驚愕している。彼らは今後発生する事件が、現在アデンの主人公である陸軍協会を圧迫してある行動を執らせる事になるのを憂慮している。但しトルコ政府はクリイト島保護の任にある英露仏伊の4カ国がクリイト島民の挑発的行動を防止する様尽力するであろうと期待し、これを信頼し始めている。

 

2月6日
新印度新聞条例 5日タイムス社発
カルカッタ来電―新新聞法案が印度立法参議院に提出された。同案は地方政庁に対し有害と認められ且つ必ずしも法律上の意義に抵触しなくても謀反的と見なされる新聞の発行を、起訴を待たずに禁止する権限を付与している。又新発行の新聞には保証金を納めさせ、非行がある場合にはこれを没収し、2回目では発行免許をはく奪する事を規定している。
日本財政論評 同上
ロンドンタイムスは、1909年に於ける日本の経済報告を論評し、日本政府は健全な財政政策を行おうと決心しており、その十分な証拠を示したと説き、日本の為政者が行政的に有効な政策を行おうとすると共に経費節減をしている事を称賛している。又南満鉄道の新経費は国民的政策の為であり、健全な財政主義に違反するものではないと言明した。

 

2月7日
近東問題と列国 6日上海経由ロイター社発
沸国外相ビション氏は、トルコとギリシャの紛争を予防する為、関係列国の間で協調が出来た旨を内閣会議に報告し、且つトルコ、ギリシャ両政府の宣言により列国の心配は無くなった事を付け加えて言明した。
解説:2月5日「希臘の対土誓約」の続報

 

2月8日
波斯外相不信任 7日タイムス社発
テヘラン来電―ペルシャ議会に於いて、外務大臣アラ、エス、サルタネ氏に対し、大臣は、未だにペルシャに残留する露兵を退去させる為に、如何なる手段を執ったのかとの質問が起こった。しかるに同大臣は、自己が何もしていない点について、弁明できず、その為議会は満場一致で免職を求める決議を行った。
英露親和論 同上
露都来電―露国半官報ノウオエ、ウレミヤのロンドン通信員ウエスセリトキイ氏は、英露関係について講演を行った。聴衆には多数の有力な官吏がおり、氏は盛んに獨逸派の主張する排英論に反論し、英国の友情が露国にとって莫大な価値がある事を指摘した。英国はボスニア,ヘルチェゴビナ併合問題の難局に於いて、忠実に露国を援助し、又日英同盟は、極東に於ける露国の安全を保障するものであると言明した。

 

2月9日
在米清人激怒 8日タイムス社発
ニューヨーク来電―太平洋沿岸全部に於ける清国人は憤怒のあまり、サンフランシスコに対してボイコットを行い始めている。その理由は同港に於いて東洋移民を虐待したと言っている。
解説:虐待の具体的理由は不明であるが、清国人苦力は数年前から入国禁止となっており、しかも入国官吏は、苦力と商人等の区別が出来ないとの理由で、商人の入国も禁止している。
この為清国内で米国品のボイコット運動が起こっていた。
英国の対清勧告 同上
露都来電―北京駐在英国公使ジョルダン氏は清国政府に対し、錦愛鉄道の敷設を決定するに先立ち、日露両国と協定する必要性を、理由と共に陳述し、注意を求めた。露国官憲側は、この報道に接して大いに満足した。

 

2月10日
印度新聞法案可決 9日タイムス社発
カルカッタ来電―先般インド立法参議院に提出された新聞法案は、終に同院に於いて可決された。同案は必ずしも法律上の意義に合わないが、謀反的と見られる新聞を起訴せずに禁止できる権限を地方政庁に付与し、新発行の新聞に保証金を要求し、非行があればこれを没収し、或は免許を取消す事を規定している。又インド総督は、政府が流刑の宣告を受けた若干の囚人を放免する事に決定した旨宣言した。
阿弗利加と英国 同上
カルカッタ来電―ソマリランド方面に設けていた前線基地を撤退させよとする英国の政策は、土着民の不安を招き、英国保護政策を信頼した土民を離反させる恐れがある。
解説:ソマリランドは英国の植民地で、現在のソマリア共和国の北部でスエズ運河出口に面した地域である。ソマリア共和国の中部には海賊の基地があり、現在も海上自衛隊が艦底、航空機を派遣し、国際的な海賊対処行動に参加している。

 

 

2月11日
墺露関係改善 10日タイムス社発
露都来電―昨春ボスニア、ヘルチェゴビナ併合以来、疎遠となっていたオーストリアと露国の両国関係は、改善される事になった。両国政府は、共に各々バルカンに於ける現状維持主義を固持し、トルコの新政府に援助し、バルカン諸邦の自由な発達を期すべき旨をそれぞれが宣言し、以てこの双方関係の改善を表明すると思われる。なお英佛両国はこの件に付いて、全面的に賛同した、
解説:明治41年10月9日「巴爾幹時局」の記事にある様に、この頃から露国とオーストリアの関係は悪化していった。オーストリアのボスニア,ヘルチェゴビナ併合に強い危機感を持ったセルビアは、同じスラブ民族である露国に支援を求めた。この問題を巡り、オーストリアと露国は不仲となっていた。
北極発見彰功 10日上海経由ロイター社発
ワシントン来電―米国上院は、北極発見者ベアリー中佐の海軍少将昇任を可決した。
ベ氏功労表彰 同上
ニューヨーク来電―官民が主催する北極探検家ベアリー氏の招待会が行われた。席上、国民的栄誉の証として、氏の北極到着を承認する意味で1万ドルの小切手が氏に贈呈された。ベアリー氏は演説を行い、このお金は我が従兄弟である英人との南極行競争に米国機を以て加わる為の南極探検隊に使用するつもりであると公言し、且つこの世で英人に勝る好敵手は居ないと言明した。
解説:明治42年9月14日 以降連日の様にクック氏とベアリー氏の北極点一番乗り論争が報道されているが、この記事の様にベアリー氏が最初の北極点到達者と認定されている。

 

2月12日
米人の錦愛鉄道観 11日タイムス社発
ワシントン来電―ある方面では、錦愛鉄道は、最も単純に英米両政府の保護下に、最初の計画通りに英米共同事業として、速やかに敷設工事を開始しなければならないと考えている。
解説:錦愛鉄道は、満州南部の愛琿から北部の錦州に至る鉄道で、日本が手に入れた南満州鉄道と平行に走る鉄道である。
第二院廃止論 11日上海経由ロイター社発
英国労働会議は、選挙を経ない第二院は、時世に適しない故、上院を廃止しなければならないと宣言する決議案を満場一致で可決した。但し如何なる第二院にも反対しようとする修正案は否決された。

 

2月13日
佛摩関係険悪 12日タイムス社発
タンジール来電―在ノエタ佛国陸軍特使一行の土人書記が捕縛され、モロッコ王侍従の為に侮辱を受けた。佛国将校連は宮廷より退席した。
パリ―来電―モロッコ王ムライハフィッドは、先にその特使が締結した借款契約の認可を拒絶した。諸新聞は佛国がモロッコに対する佛国債権者を保護する為に断固たる手段を執る様主張した。
波斯人激怒 12日上海経由ロイター社発
本社テヘラン通信によれば、露国が露兵のペルシャ駐屯問題の論議を拒否した件は、テヘラン府の人心を激怒させた。同府に於いては、外国軍隊の占領継続は、全く弁護の余地が無いものと考えている。
排日案可決 11日桑港特派員発
カルフォルニア州選出の下院議員ヘース氏提出の日本人排斥法案は10日満場一致で下院委員会を通過した。同案は日本人と特定していないが、商人、学生、教師又は旅客を除き、現行法で米国市民となり得ない者の入国を拒絶すると言っているのであれば、日本人を指しているのは言うまでもない。そしてこの婉曲な法案が下院を通過する事は殆ど疑いがないと言われているが上院を通過するかどうかは不明である。

 

2月14日
米国外交攻撃(満鉄中立問題) 12日桑港特派員発
11日の下院予算委員会でニューヨーク選出議員ハルリソン氏は、極めて大胆且つ露骨に国務郷ノックス氏の満州問題、ニカラグア問題、中米問題等に関する外交政策の失態及び適当な外交官を得ない点について攻撃を加え、議場の注意を惹いた。しかし外交委員会委員長ベルキンヌ氏は、満鉄問題を弁護し、米国銀行家が支那の起債に関与する事を得たのは、成功ではないかと言い、ハルリッツ氏はマネートラストとして知られた銀行はいざ知らず、他の一般銀行家は少しもこれを関知していないのではないかと皮肉った。
解説:マネートラストとは、ロックフェラーのマネートラストの様に使用され、一部の銀行による独占金融支配の意味と思われる。
排日案の反響 同上
12日のサンフランシスコ、クロニクル紙は下院委員会を通過したヘース氏の日本人排斥案を是非とも通過させなければならないと論じ、且つ通過する事を信じると言っている。同案に対して、日本国民が激昂したとの東京電報は、非常に米国人の注意を惹いた。
解説:米国に於いては、既に労働組合が発達しており、ロビー活動が盛んであった。サンフランシスコの市議会、カルフォルニア州選出の連邦議員は労働組合を無視できなかった様である。現在、同様な現象が韓国系米国人の慰安婦問題にも見られる。

 

2月15日
摩洛哥の謝罪 14日タイムス社発
タンジール来電―モロッコ王ムライハフィドは、在フエツ佛国陸軍のモロッコ人書記を捕縛し、侮辱を与えた件について、これは是認することができないと発表し、この侮辱事件の責任者である官吏に対し佛国将校に謝罪する様命令した。
解説:2月13日「佛摩関係険悪」の続報である。
獨逸社会党運動 14日上海経由ロイター社発
社会民主党員等は、現在人気の無い新選挙法案に反対し、ベルリン市街で多数のデモ行進を行った。そして市の中心に於ける大集会を警吏が阻止した為に、デモ隊と警吏間に衝突が起こり、警吏は空砲を発射し、数名の負傷者が発生した。

 

2月16日
沸獨関税戦争 15日タイムス社発
ベルリン来電―国民自由党は、政府に対し佛国が関税を増加する計画に対し、報復手段を講じる事を勧告した。
獨逸の激昂 14日ベルリン特約通信員
毎日新聞の電報で、獨帝に関する無礼な記事があり、獨逸の至る所で人民を憤怒させた。政府は獨逸諸新聞がこの記事に関連し、排日的暴論をする事を防止する為、大いに尽力中である。

 

2月17日
希臘の言論抑圧 16日タイムス社発
アデン来電―ギリシャ陸軍協会は、国民会議招集の意見に反対する諸新聞の発行を禁止し、兵を集めてこの命令を執行しようとするに至った。その為諸新聞記者も必要に迫られ、止む無く異口同音に同会議の招集を主張する事になると思われる。
巴里洪水続報 同上
パリ―来電―セイヌ河は、水嵩が再び増加中であり、南西海岸には激烈な風雨があった。市内進水地区ではポンプをもって水を排水中である。

 

2月18日
蘇丹土民襲撃 17日上海経由ロイター社発
パリ―来電―ダカールよりの公報によれば、沸国の1個分隊は、スーダンのワダイ州アベシュルから旅程3日の地でマサリト蕃賊酋長の為、待伏せ攻撃を受け、土民111名の一隊全部、欧州人大尉1名、中尉2名、軍医2名が虐殺されたとの報告があった。
排日案内情 16日桑港特派員発
ワシントン来電によると、ヘース案に対する日本の世論が激昂した事は少しも驚くには値しない。日本は条約改正の機会に、国民的栄誉を傷つける条項を除こうとしており、若しヘース案に於いてこの件が提出されていないならば、日本は自ら移民に関する協約を破棄し、他の欧州諸国と同一待遇を要求するであろうと信じられていた。日本の激昂は、新条約交渉の進行上、日本が不利になる事があるであろう。しかも時局はカルフォルニア州学校問題紛争の当時よりも悪くなっており、両国政府の衝突が起こるかも知れない。但し一般に信じられているのは、ヘース案が下院委員会を通過したのは、日本の第2条但し書き排除に対する牽制運動であり、到底議会を通過する事は無いであろうと言われている。
希臘陸海軍反目 16日ベルリン特約通信社発
ギリシャ海軍は、陸軍協会に反対し、国王に味方する様になった。その為陸軍軍隊は、驚愕している様である。なお海軍は戦闘準備を整えている。

 

2月19日
英国労働派の態度 18日タイムス社発
英国の政局は、依然として困難である。アイルランド国民党は引き続き政府との提携条件を要求中である。そして政府が国民党の要求に完全に応じる事が出来ないのは明らかである。なお労働派の説明によれば、同派は上院の否認権に対する皇帝の保障なく、又上院の予算否認権にも服従しなくて、首相アスキス氏がその地位を維持する事には反対であると言う。そして急進自由党はこの説に同意している。
英独仏公使質問 18日上海特派員発
英独仏3国公使は、外務部に対し同じ内容の通牒を送った。
イ漢鉄道借款に関する1月30日の詔勅に対する弁明を求め、三国は清国に最初の約定を履行させようとする旨を通知した。米国は最初の約定には加わっていないのでこの抗議には加えられていない。なお同通牒は、この詔勅を公式に、自然に解釈した結果について考究し、その意味は、清国政府は欧州との間の難問が解決した時には、強硬に道理に背いた大資産家を処分しなければならないと言っている。 
解説:イ漢鉄道とは武漢と香港を結ぶ鉄道であり、列強の利権争奪の舞台となっている。
この記事の大資産家の原文は「紳董」であり、資産家の最上位に位置する大富豪、大資産家を意味する。

 

2月20日
佛国の対摩談判 19日上海経由ロイター社発
佛国はモロッコ王ムライハフィドに対し、48時間以内に借款協約に調印する事を求め、これに応じないならば、断固たる手段を執るであろうと通告した。
日本移民歓迎 18日桑港特派員発
カルフォルニア州ロスアンゼルスの商業会議所では、欧州の移民は劣悪で排除すべきであるが、日本人は全てに良好であるのみならず、カルフォルニア州の農業には非常に必要であるので、大いに歓迎すべきであると決議した。
解説:排日を主張しているのは白人労働者の組合であり、既にカルフォルニア州議会を抑え、連邦議会にも強い影響力を発揮している。
排日案論評 同上
18日朝のサンフランシスコ。クロニクル紙は、日本人排斥案は、日本政府が既に採用し、且つ施行している日本の移民政策を米国の法律上に採用したものに過ぎず、日本に異議ある筈はない旨述べている。

 

 

2月21日
排日案通過内情 19日紐育特派員発
先般議会に於いて、委員会を通過した日本人及びアジア人排斥案は、現在の情勢では衆議院を通過する模様である。そしてこの裏面には、興味深い魂胆が隠れている。それは最近共和党の内部に軋轢があり、どうかすると現大統領タフト氏の政策に反対しようとする者が多く、特に太平洋岸の選出議員に反対者が多い。同党の幹部は、これ等議員の御機嫌取りとして、衆議院は通過させて、上院では必ず否決する事となっていると確聞する。
米国海軍現状 内国電報(20日発)
日露戦争が世界の海軍国に及ぼした影響は甚大であり、英獨海軍の競争に次いで、佛国海軍の革新となった。米国は更に一層切実に海軍力の増大を感じる様になり、前大統領ルーズベルト氏の主唱により、上下挙って海軍拡張に熱中した。特に新海軍卿マイヤー氏は就任以来、海軍行政組織の改革を実行しようとして、自ら軍港要港を巡視し、要職の将官を欧州に派遣し、海軍制度を視察させ、各軍港の司令長官を集めて、会議を開き、又部内一般から意見を募る等熱心に研究、努力中である。近い将来に於いて著しい発展を示すようになるであろう。単に艦底数が世界第2位海軍国であるの留まらず、必ず実力がこれに伴うようになるであろう。(一部抜粋)

 

2月22日
駐日武官増派 20日桑港特派員発
米国政府は、日本政府の了承が得られるならば更に2名の大使館付き武官を増すと思われる。その武官は、軍事に関係せず、大使の指導の下に日本の風俗、習慣、言語を研究すると言われている。
加奈陀学童排斥 同上
英領コロンビ州のナナイモ地方の社会党員は、東洋児童隔離教育案の提出を予告し、カナダ政府に東洋児童隔離教育学校の設立を余儀なくさせると公言した。

 

2月23日
清国大学協議 22日上海経由ロイター社発
昨日オックスフォード大学に於いて、清国大学計画期成の為に、6百名の同校関係者が集会を行った。ウイリアム、セシル嚮は清国に於ける同計画を歓迎し、一同に対し資金募集に尽力する様求めた。
解説:精華大学は、1911年米国に依って、義和団の賠償金を基に設立された歴史があるが、この英国の運動がどの様な経過を辿ったか不明
ロ卿上院改革 22日上海経由ロイター社発
ローズベリー嚮は、上院に於いて演説し、予は人民が上院の世襲主義に反対していると信じているので、上院は自らその改革案を定め、以て全国民にこれを判断させなければならないと主張した。

 

2月24日
米国罷工暴動 23日タイムス社発
ニューヨーク来電―フィラデルフィアに於いて、激烈な罷工暴動があり、州兵1万人がいつでも出動できる様に準備を命じられた。3百名が逮捕され、負傷者も3百名となった。
解説:陸軍兵力は8万5千人であるが、既に各州に州兵が居た様である。原文では国民兵となっている。
ダライラマ出奔 23日上海経由ロイター社発
カルカッタ在住の本社通信員の報道によれば、員数不明の支那兵が東方からラッサに侵攻し、ダライラマは大臣数名を従えて、インド方面に向け、ラッカを立ち去った。ラマは26日にカリンボンに到着する予定で、タシラマはシガツエェに居ると信じられている。
解説:この事件は、四川省総督が1905年からチベット制圧を始めた事から起こっている。この記事のとおり19010年にはラサまで制圧しようとしており、この記事のとおりダライラマはインドに脱出している。一方タシラマ(パンチェンラマ)は、仏教界で序列第2位であるがこの時、清国に協力している。1911年の辛亥革命時に、四川省総督が殺害された為、ダライラマはチベットに帰り、清兵を排除し、ラサを挽回している。その結果タシラマは清国の勢力圏に逃れた。
極東戦争説 22日桑港特派員発
米国参謀総長ベル将軍は、21日夜ニュー、ヘブン州兵の集会に於いて、米国は極東問題の為に遠からずして戦争をせざるを得なくなるであろう。その為に至急戦備を整える必要があると言明した。
日本人調査費 同上
米国下院は、太平洋沿岸に於ける日本人の状態及び国境を越えて密かに入国する日本人を調査する費用を、12万5千ドルに増加する案を通過させた。
労働同盟排日運動 同上
サンフランシスコ労働同盟は、ヘース氏の排斥案は不十分であるので、更に厳重な排斥法の制定を望む旨を決議し、且つ先に日本人歓迎を決議したロスアンゼルスに排斥会成立運動を開始した。
解説:2月20日「日本移民歓迎」でロスアンゼルスの商業会議所が日本移民を歓迎する記事がある。

 

2月25日
英国の西蔵問題観 24日タイムス社発
露都来電―清兵のチベット侵攻及び暴行、ダライラマのインド行等は、非常に露人を憂慮させ始めている。そして露都では、英国政府が再びチベットの平和を回復する為、北京政府に対し、圧迫を加える様になることを希望している。
前蔵相日本攻撃 23日桑港特派員発
前大蔵卿シヤウ氏は、ニュー、ゼルシー州モーリス市で開催されたワシントン協会に於いて猛烈に日本を非難し、聴衆は無論、全国民を驚かせた。その発言の一部に、日本は太平洋を支配しようとして、この為に血を流すことを厭わないであろうし、人種的闘争は疑いもなくあり、我々は十分な準備をしなければならないと述べている。
費府街鉄罷業 同上
フィラデルフィアで激烈なバス車掌の同盟罷工が起こり、会社はバスを運転しよとして、同盟者はこれを阻止しようとして、23日3名の死者と千余名の負傷者が発生した。
排日運動 同上
サンフランシスコ労働同盟は、強烈な排日運動を始め、日本人を使用する場所には、白人労働者を働かさないという大運動を起こし、既に衝突を起こしている。

 

2月26日
排日演説真相 25日タイムス社発
ニューヨーク来電―前大蔵卿で現在カーネギ信託会社社長ショウ氏がニューゼルシー州モオリス市に於いて太平洋上に於ける日本の野心を説き、戦争説を鼓吹し、陸軍参謀長ベル少将がニューヘブン州兵に対し、排日的演説を行った為、東京の人心に非常な悪感情を与えたとの報道は、大いに米人を驚かせた。前蔵相ショウ氏の演説は、決して米人を代表する意見ではなく、従って又重要ではない。ベル少将の演説は、誤報であり、その演説は決して排日的性質ではないと言われている。
西蔵変乱と英国 29日上海経由ロイター社発
ロンドンタイムスは次の様に述べている。ダライラマは、疑いもなくインドに避難するであろう。しかしラマが有力な援助及び有り難く感じられる同情を得るであろうとは期待する事が出来ない。そして現在チベット問題を再考することは、時期が既に遅いと謂えども英国政府は尚且つ清国政府に対し、友好的に意見を陳述すべき方法がある。(一部抜粋)
加州の日人排斥 24日桑港特派員発
カルフォルニア州アルビソ村会に於いて、先日、市街区域内に日本人に土地、家屋を貸与を禁じる決議を行い、又先般一日本人が家屋新築を願出たが許可せず、紛争中である。
米紙の暴論 同上
24日の夕刊ポスト新聞は、一武官の談話を引用し、日本は貧弱な事に加えて、強敵露国を前に控えているので、如何に排斥しても米国に対し戦争をする事は出来ないと説き、大いに煽動的主張をしていた。

3月27日
ダライラマ到着 26日上海経由ロイター社発
本社ダルゼリング通信によれば、ダライラマは非常に困難な旅行を行い、カリムボンに到着した。尤も途中、仏教徒やシーク教徒等は喜んでこれを援けたそうである。その到着は非常に人心を激動させている。
戦争説と国務郷 25日桑港特派員発
日米戦争説が日本を驚愕させたとの東京電報に接し、国務郷ノックス氏は、却って驚き、次の様に語った。日米両国の関係は、米国と他の諸国が友好的であると同様に友好的であり、少しも紛争の恐れはない。シャウ氏の演説は、単に航海補助問題を論議したに過ぎず、ベル将軍の演説も、内容を詳らかにしないが、軍備拡張を唱えたに過ぎないと思われる。日米間の移民問題は、誰も知っているとおり完全に満足すべき状態にあるので、如何に扇動者が騒いでもこの問題によって世人を動かす事は出来ないであろう。
解説:シャウ氏の演説は、2月25日、26日の記事にあり、ベル将軍の演説は、2月24日の記事にある。
米国海軍拡張 同上
米国下院委員会は、それぞれ1千1百万ドルの費用で2万8千トンの2隻の戦艦を始めとして修繕船1隻、大運送船2隻、潜水艇5隻、駆逐艇3隻を建造することに同意した。
解説:米国海軍は、日露戦争前には世界第5位の海軍国であったが、2010年当時は世界第2位の海軍国となっている。
西蔵変乱に対する上諭(ダライラマを平民に落す) 25日北京特派員発
チベットの僧侶が支那官兵に反抗するとは、昨年来しばしば報じられた所であり、支那政府は、この鎮圧の為に四川省より派兵の議があったが、その真偽は明らかではなかった。しかし25日の上諭は、ダライラマの暴戻専横、あらゆる罪悪を指摘し、今回四川の官兵をチベットに送り討伐することが止むを得ない事情を述べ、更にダライラマの名称を剥奪し、チベットに帰ると否とを問わず、これを平民同様とし、後継者の選定を駐チベット大臣に命じた。(一部抜粋)
解説:2月24日にダライラマがチベットを逃れる記事がある。現在のダライラマも中国から同様の仕打ちを受けている。

 

2月28日
前大蔵卿の弁明 仮に日本と戦争した場合 26日桑港特派員発
前大蔵卿シヤウ氏はフィラデルフィアに於いて次の様に語った。予はモーリス市に於いて日本との戦争を予言せず、ただ著名な事実を挙げたのみである。
日本が行おうとすれば、30日以内に20万の軍隊をハワイに送る事が出来るが、我々は運送船を持たない為に10万の軍隊をも送る事は出来ない。戦艦を建造するのも良い。しかし戦艦には運送船や仮想巡洋艦が付かなければ何らの価値もない。
戦争があるとすれば大西洋艦隊をサンフランシスコに回航しようとしても必要な石炭船がないではないか。
予は戦争を予言していない。大戦争の場合、米国が如何なる状態の下に立つであろうかを予言したのみである。(一部抜粋)
解説:関連記事が2月25日「前蔵相日本攻撃」の記事以降、連日報道されている。当時米国陸軍は8万5千人であったが、海軍は、英国に次いで世界第2位となっていた。しかし大西洋艦隊が主力で太平洋には見るべき艦隊を持っていなかった。

 

 

 

 

 

明治43年1月

1月1日
印度綿作収益 31日タイムス社発
ボンベイ来電―綿貿易は、例年の収穫状況よりはるかに豊作である。綿業者等は、1年間で4年分の収益を得つつある。
移民制限協約改締 30日桑港特派員発
ワシントン来電によれば、内田大使は、就任第1番目の仕事として、日本移民を制限することを米国政府に提案するものと伝えられている。しかも日本がいかに改正しようとしているのかは知ることが出来ない。

 

1月2日
獨逸海軍協会檄文 1日タイムス社発
ベルリン来電―獨逸海軍協会の新年の檄文は、獨逸国民に対し、獨逸海軍の拡張政策を支持する様熱望し、英国煽動家の排獨的演説のごときは、これは選挙運動に過ぎないと言明した。

 

1月3日
英国の海軍力 1日上海経由ロイター社発
ペレスフォード郷は、グリムスピーに於いて、次の演説を行った。海軍省は、海軍先任将校より、現在の英国海軍力が実際の必要に適応していない事を指摘した書簡をしばしば受け取っているとの報道を耳にしたが、これは果たして事実であるかどうかを首相アスキス氏に質問した。
亜細亜艦隊創設 同上
ワシントン来電―極東に於ける米国の利益が次第に増加するにつれ、現在の組織のまま全艦隊を管理することが困難となった為、太平洋艦隊をアジア艦隊と太平洋艦隊とに分ける事に決定した。

 

1月4日
希臘内相辞職 3日タイムス社発
アデン来電―ギリシャ陸軍協会は、去る1日、内務大臣の辞職を要求した。これについて内閣は、一旦総辞職を決定したが、皇帝の優渥な御意に依って中止した。内相の辞職は、2日付で発表された。
英国蔵相演説 3日上海経由ロイター社発
英国大蔵尚書ロイドジョージ氏は、イングランドの都市レツデングに於いて演説し、政府は、社会改良の為に1千8百万ポンドを使用する事を定めた。しかし無責任な世襲的妨害物(貴族の意)を亡ぼすまでは、その利益を受ける事ができないと言明した。

 

1月5日
希臘危機落着 4日タイムス社発

アデン来電―ギリシャ政界の危機は、落着した。内務大臣は、その職を免じられた。武器を執って威嚇的態度を示していた陸軍の将校は、首相マウローハリス氏に対し、陸軍協会は、政府を信任する旨通知した。
ハルバートの日韓合邦論 3日紐育特派員発
一両日前、ニューヨークに到着し、現在ワシントンに滞在中であるハルバート氏が次の様に公言した。
日韓合邦は、明らかポーツマス条約に違反しており、これ程非理、不当なものはない。韓人は決して合邦を認めず、若しこれを決行するならば、国内の暴動は絶える事が無いであろう。予は韓人の為に、十分に力を尽くす事が出来なかったので、愛国心に富む韓人の中には、予を恨み、予に危害を加えようとする者もいた。その為予が京城から大連に赴く際は、日本の保護下にあった。然るに日本の紳士が、その保護下にあった予を見て、秘密探偵であるとしたのは、誤解である云々
解説:ハルバート氏とは、米国の神学者H・B・ハルバートであり、1906年に「朝鮮滅亡」を出版しており、キリスト教至上主義者で、朝鮮に比べキリスト教が普及しない日本を野蛮視している。
1905年、日本の第二次日韓協約を妨害する為、皇帝高宗の密書を米国の政府要人に渡そうとした、又1907年7月のハーグ事件でも高宗の密使を列強諸国の代表と会わせようとして失敗している。

 

1月6日
英国首相の海軍論 4日上海経由ロイター社発
自由党は、海軍に関し益々猛烈に主張し始めている。首相アスキス氏は、バツジントンに於いて演説し、いずれの政府も我が政府以上に、海軍の優勢に注意を払うものはない。我が政府が責任を持つ現在及び今後数年間に於いては、英国の地位は、攻撃の余地が無い優勢を保つと言明した。その他の閣員も同一の演説を行い始めている。
解説:英国は獨逸と建艦競争をしており、2強国標準という政策をとっている。即ち獨逸と仏国との海軍力を合わせてものより、優勢な海軍力を持とうとしている。

 

1月8日
米国の新提議(満州鉄道買収問題) 6日桑港特派員発
米国政府は、満州問題解決に関し、露国政府に覚書を提出した。その内容は、各国の共同出資により、そのお金で、満州に於ける諸鉄道を清国政府に買収させ、支配権を出資した各国の共同支配に委ね、中立の位置に置き、完全に商業鉄道とし、政治的軍事的使用を禁止すると述べている。
露国の態度は、英米資本家にアイホンから錦州府までの鉄道敷設権を与える事は露国政府の最も好まない事で、絶対に反対すると言われている。

 

1月9日
米国提議の内容 8日上海経由ロイター社発
米国は、満州の諸鉄道を清国へ売却させ、これを中立とさせようとする覚書を列国に送った。米国の案によれば、この費用は列国がより支給し、従って列国は同鉄道を純粋に商業的、非政治的基礎の上に活用する様監督するべく、又同計画は、ハルピンから大連に至る日露両鉄道線を含むものであり、一方同線は、兵士弾薬の輸送に対して閉鎖すると共に、他方永久的衝突を避け、機会均等主義を安全にする所以の緊急的措置であると言っている。
獨清露英の態度 同上
獨清両国は、米国の満州鉄道中立提議について、好意的な回答を行い、露国は現在慎重に考究中である。また英国は、根本に於いて同意したが、同時に今後何等の行動を執る以前に、先ず日露両国の意見を確かめなければならないと指摘した。

 

 

1月10日
満州中立論評 9日上海経由ロイター社発
ロンドンタイムスは、米国国務郷ノックス氏の満州中立案が、財政上、政治上のトラブルを生じる恐れがあると切言し、この案を提出したノックス氏の心情や純粋さは、察するに余りあるけれども、あまりにも坦懐過ぎて、却って満州の現状に関する切実な実情を見過ごした嫌いがあると論じた。
解説:連日続報されている満州問題である。坦懐とは物事にこだわらない事である。

 

1月11日
米紙の意見 10日タイムス社発
ニューヨーク来電―諸新聞は、国務郷の提議した満州鉄道を清国に返し、その費用を列強より貸与し、これによって鉄道の中立を図ろうとする案を歓迎し、同提議によって、関係諸国は、止むを得ず公然と満州の将来に関する意志を発表せざるを得ない様になるであろうと指摘した。
土耳其の抗議 10日上海経由ロイター社発
トルコ政府は、クリート内閣がギリシャ皇帝に対し、臣従の宣誓を行い、又同島議会がギリシャ法典を実施する決議を行い、以て新たに甚だしくトルコ皇帝の主権を冒した件に付き、抗議する通牒を列強に送った。
日本の態度と米人 9日桑港特派員発
国務郷ノックス氏の提議した満州鉄道中立案に関し、日本の反対が激しいとの来電があり、米人の感情を激しく動かした。米人は一般にノックス氏提議の成功を望んでいるからである。

 

1月12日
満州提案論評 11日タイムス社発
ニューヨーク、イブニングポスト紙は、満州中立提案は、日本が戦争で得た二三の重大な結果の一つを放棄し、且つ開放主義と清国税関法を破った事を白日の下に晒す事になると言明した。
露紙の米国提案反対 11日上海経由ロイター社発
露国半官報ノーウエ、ウレミヤは、米国国務郷ノックス氏の満州鉄道中立提案を否認し、これは空想の奇怪な産物に過ぎないとし、露国は少しも権利を放棄するべき理由を持たないと論評した。

 

1月13日
米紙の提案反対 11日桑港特派員発
満州問題に関する国務郷ノックス氏の提案に就いては、国内で漸く反対の声が高くなった。サンフランシスコ、ニクルス紙は、今朝の社説において、モンロー主義を破って満州問題に干渉する非を論じ、日露政府がキューバの門戸開放を要求する時は、如何にするのか。米国が満州に関与する事は、日露がキューバに関与する事と同じであると論じた。
満州当路所見(米国の提議に対して) 11日北京特派員発
米国が提議した満州中立問題に対して、清国関係者の議論はまちまちである。有識者は、余りにも突飛は議論であり、到底実行されないのみならず、万一実行される時は、列国が合同して清国の政治に干渉する端緒の第一歩となり、清国の為に悲しむべき結果をもたらすであろう。所謂前門に狼を防いで、後門に虎を招く事になると述べている。

 

1月14日
米国国務郷の意見 13日タイムス社発
ニューヨーク来電―米国国務郷ノックス氏は、日露両国が現状維持よりも寧ろ鉄道中立によって、一層大きな利益を得る事になるであろうと信じると称している。
国務郷は、満州に於いて門戸開放主義を維持すると共にこれを最善の経済的利益を生むよう発達させることを希望し、そして日露両国は同地に近いので、その迅速な発達から受ける利益も一層大きいであろうと考えている。又若し両国がこの提案を拒絶するならば、必ず鉄道競争という伏兵に遭遇するであろうと確信している。
米国提案の内情 12日桑港特派員発
満州鉄道問題に関する米国の提議は、故鉄道王ハリマン氏の意志であり、後継者がこれを継承し、政府を動かしたものとの説がある。
解説:鉄道王ハリマンは一時「満州鉄道日米共同管理に関する予備覚書」を桂首相と交換した事がある。しかしポーツマス条約を結ぶ為に渡米していた外相小村が帰国し、猛反対の結果中止されている。

 

1月15日
満州中立案と露紙 14日タイムス社発
露都来電―露国新聞の多数は、米国国務郷の提案した満州鉄道を中立とする件に反対した。
西蔵人の不満 同上
ロンドンタイムスの入手した情報によれば、チベットの情勢は非常に危機的である。清国官憲とチベット人の確執は絶えまなく、清帝は、チベット人の不満を抱く原因を除く様求める上奏に接した。現在のままで推移するならば戦乱の恐れがあると言われている。
獨逸の回答 14日上海経由ロイター社発
本社ベルリン通信員の関知した所によれば、獨逸は米国国務郷ノックス氏の満州中立提案について、英国と同一の意味で、概ね同意する声明を行う様である。又ベルリン政府筋に於いては、同件が決定を見る迄には、なお長期日を要すると信じられている。

 

1月16日
墺紙の米国提案評 15日タイムス社発
ウイーン来電―フレムデンブラット紙は、米国の満州鉄道中立提案を評して、これは、実にほとんご完全に日本が抱いている大志に反して行われたものであると説き、同提案の成立する見込みは少ないと言明した。
タイムス米国提案評 同上
タイムスは、先ず米国の満州鉄道中立提議は、日露両国の意見を質さなくて行われた為に実行が困難であり、これは列国の認識する所であると説き、英国もこれを承認しないであろうと言明した。

 

1月17日
露領の冷静(米国提案に対して)ウラジオ特電
米国の提案に対し、当地方の各新聞紙は非常に冷静であり、露人間には話題にすら上がっていない。
安奉線工事現状 内国電報(16日発)
昨年9月より急遽工事に着手した安奉線は、結氷期間中の事であり、各区工事が振るわず、来る3、4月頃の解氷期を待って、人夫を増して大工事に着手する筈であり、現在は、唯沿線の土地収用に努めているのみである。大石橋(だいせききょう)と陳相屯(ちんそうとん)間以外の土地収用は終わる予定であるが、積雪、風害等の障害によって延期していると言われている。
解説:列国で南満州鉄道を整備、管理しようと言う米国の提案があるが、日本は着々と工事を進めている。中国旅行で旅順から瀋陽(旧奉天)に行く際に利用するのが安奉線であり、途中大石橋を通過する。

 

1月18日
日露協約主張 17日タイムス社発
露都来電―半官報ノウウオエ、ウレミヤ紙及びビルテヴィヤ紙の両新聞は、露国政府が日本と鉄道協約を締結するよう主張し始めている。
露国の拒絶 16日ベルリン特約通信社発
露国は公式に米国の満州鉄道中立提議の承諾を拒絶した。(上記電報に就いて、我が外務当局に質したが、当局者は少しもこの様な報道に接してなく、多分間違いであろうと語った)
 
 1月19日
満州鉄道中立反対 17日ベルリン特約通信社発
露国大蔵大臣の機関紙である一露都新聞は、露国が東清鉄道中立をはじめ、米国の提案を承諾する事はできない旨を報道した。

 

1月20日
印度革命運動 19日タイムス社発
カルカッタ来電―1印度人、連隊の兵士10名が、数名の犯罪陰謀者を連隊内に連れて来たとの疑いで、現在審問が行われている。但し同連隊そのものが英国に対し忠実である事は疑いないと言われている。
提案拒絶と米国 18日桑港特派員発
ワシントン来電によると、国務省は現在でも、ノックス氏が提議した満州鉄道中立構想が完全に失敗に終わったものとは認めていない。しかし18日午後流布された日本が提議を拒絶するであろうとの報は、少し驚愕を以て迎えられた。実際日本の態度が風説の通りであるとするならば、少なくとも現在の所、同提議を放棄しなければならないが、政府当局は、日露両当局者が十分な考慮を費やすことなく拒絶したとは信じていない。故に回答は数か月後になるのではと期待している。(一部抜粋)
解説:この鉄道問題が将来の大東亜戦争の源流と思われる。

 

1月21日
沸国正教問題 20日タイムス社発
パリ―来電―沸国代議院に於いて、学校問題に関する討論が行われた。公立学校の組織に功績のあった一人ビュイゾン氏は、学校に於いては、常識ある人物より反対を受ける様な事項は一切教育してはならず、教師は生徒の前に神を論じてはならないと公言した。
解説:明治39年12月13日沸国に於ける政教分離の記事があり、以後沸国では政教分離が重視されている。
「佛国政教分離問題 12日上海経由ロイター社発」
パリーに於ける法王使節モンタクニキ神父は、家宅捜査を受けた上に逮捕された。国境まで護送される筈である。
佛国内閣会議は、早速、寺院財産の清算を行い、且つ5500名の神父に対して、兵役に就く事を求める決定を行った。
「法王亦甚強硬 同上」
佛国政教分離法がいよいよ実施されることになった為、法王庁は大変激昂している様子である。法王は、この問題の情勢について、自らも断固たる手段を採らざるを得なくなってしまった事を悲しみ、迫害に会おうとも、殉教者を出そうとも、私は、宗教と我が神の道を防護する事を辞せずと述べた。」
獨逸関税難 同上
ベルリン来電―獨逸は、3カ国との間に関税上の難問題が発生する情勢にある。即ち第一米国は多分ペイン関税法中最高税率を獨逸製品に適用するであろう。第二ポルトガルとの通商条約は、危機的な状態である。第三沸国関税改正は、獨逸人に不安を起こさせる内容がある。
米国関税布告 20日上海経由ロイター社発
米国大統領タフト氏は、イギリス(植民地を除く)、イタリア、ロシア、スペイン(植民地を含む)、トルコ(エジプトを除く)にペイン法の最低税率を適用する布告を発した。そして米国に不利な関税を掛ける獨、沸両国に対しては、イタリアが大いに厚遇されるであろう旨を述べる事により、高い税率を暗示した。

 

1月22日
露国の公式拒絶 20日ベルリン特約通信社発
露国政府は、米国国務郷ノックス氏に対し、米国の満州鉄道中立提案は、露国が承諾する事の出来ない提案である旨公式に通知した。
露国拒絶理由 21日上海特派員発
清国政府は米国政府の提議を拒絶した露国政府の回答を参考として受け取ったとの事である。この拒絶の理由は三つあり、第一 清国の主権と満州の門戸開放は、現在の状況により、決して毀損されないと思考される。第二 米国の提議を承諾すれば、満州に於ける露国の企業を妨害する。第三 シベリアとウラジオを連絡する唯一の鉄道を管理する事は露国にとって、死活問題である云々

 

1月23日
露国の提案拒否(愈米国政府に通知する) 22日タイムス社発
露都来電―露国政府は、米国の満州鉄道中立提案を拒絶した。しかも同時にワシントン政府に向け、露国領土の安全を冒さない新鉄道の提案ならば歓んで同案及びその含有する長所等を考究したいと考える旨通知した。
仏英の態度 同上
露都来電―沸国政府は満州鉄道中立問題につき、露国と同一の立場をとると考えられる。又半官報ノウオエ、ウレミヤ及びブーズガゼットは、英国が露国に同意するであろうと確信している。

 

1月24日
米国今後の態度 22日桑港特派員発
国務省は、満州鉄道中立問題に関する日露両国の拒絶公文に接して、非常に失望した。本件がこの拒絶に依って完全に放棄されるか否やは未定であるが、国務省は別に考える所があると思われる。兎に角同省が英国その他と連携した錦齊鉄道(きんさいてつどう)借款問題に特別な注意を払う事になるのは間違いないであろう。そして同件に関しては、日露両国とも異議が無いであろうと信じている。
解説:連日の様に報道されてきた満州鉄道問題は、ひとまず終焉を迎えたが、結局満州問題が、大東亜戦争発生の源流となったと思われる。
沸国の回答 同上
パリ―来電によると、英沸両国も内閣会議の結果、満州鉄道の中立問題に関し、日露両国の拒絶は製糖であると是認し、米国に対しては不同意出ると答弁する事に決定したと言われている。
解説:獨逸の脅威を受けているフランスは、露国と協調しており、英国も日英同盟を結んでいるので当然の結末とも言える。

 

1月25日
米国新聞の余憤 24日タイムス社発
ニューヨーク来電―米国諸新聞は、満州中立提案の拒絶に関して、排日的態度を示し、日本は米国に対して、満州で行われ始めている事を監視する特権を拒否する事は出来ないと警告した。
タイムス通信員の日米韓 同上
タイムス通信員は、満州鉄道中立提案を拒絶する事は、日米間の紛争が大きくなるであろうと考えている。
タイムスの論評 同上
ロンドンタイムスは、日露両国の満州鉄道中立案拒絶に賛成し、米国国務郷が外交家らしからぬ楽天主義を執った事を遺憾とし、又清国政府が深く考えず、英米資本家、請負業者に錦愛鉄道敷設を許さんと企てた事を攻撃した。

 

1月26日
沸国教育法案 25日タイムス社発
パリ―来電―沸国代議院は、学校教育に宗教趣味を加える事を許すべきかどうかの問題について討議を行い、政府側ではあくまで宗教排斥を主張した。そして討論の結果、145対421の大差で政府の信任案が可決され、速やかに新教育法案を施行する必要が是認された。
解説:1月21日「沸国正教問題」の記事の続報であり、そこで政教分離について詳しく解説している。沸国では、現在もイスラム教徒のスカーフを認めていないがこの政教分離の思想の影響ではないかと思われる。
錦愛鉄道論評 25日上海経由ロイター社発
タイムス紙は、清国が錦愛鉄道の敷設を許可するのに、今日の時期を選んだ事を悲しみ、これは、列強間を激しく隔離させ、そして争議を発生させる短見、浅慮の計画であると述べた。
解説:錦愛鉄道とは、南満州鉄道(日本が得た)と平行に走る錦州と愛琿を結ぶ鉄道である。これはアメリカの鉄道王ハリマンの構想であった。
膠州貿易増加 同上
ベルリン来電―獨逸植民省の報告書によれば、膠州の貿易は、1909年度に3割増加した。又炭鉱の産出額も増加した。
解説:膠州湾一帯はドイツの租借地で、獨逸東洋艦隊の基地となっていた。青島でビールの生産を行い、青島ビールとして有名である。

 

1月27日
印度叛乱鎮圧策 26日タイムス社発
カルカッタ来電―法律無視の精神を煽り、青年を無政府主義に傾けさせる責任は、主として叛乱を煽動する新聞にある。印度政府は、これ等新聞の処分に関する法案を近々提出する様である。従来の法律は、現状では、十分な効果が無い。そして政府の方針に関する印度総督の所見は、一般の公衆より、至極もっともであると認められている。
解説:当時無抵抗主義で有名な「ガンジー」は、英国の植民地である南アで少壮弁護士としてインド人の権利擁護に活躍していた。
ベレスフォード嚮の演説 26日上海経由ロイター社発
ベレスフォード嚮は、ダートマスに於いて演説し、政府の海軍政策を攻撃し、戦艦インポシブルは、その備砲12インチを発射する事が出来ない。従って用をなさないと断言した。
解説:ベレスフォード嚮は1月3日「英国の海軍力」の記事に於いて英国海軍力の不適応を指摘している。
布哇砲台費可決 25日桑港特派員発
米国上院は、既に下院で可決したハワイその他の砲台建設費6百万ドル及び同島維持費百万ドルの支出案を25日通過した。同案の討議中、ネバダ州選出議員ニューランド氏が太平洋権力争いの為、日米間の衝突は免れる事が出来ないと極めて強く且つ露骨に説いた事が最も議員を動かした。
解説:パールハーバーの米海軍基地の誕生であり、日米海軍の衝突のスタートでもある。

 

1月28日
巴里の洪水 27日タイムス社発
パリ―来電―セーヌ河は益々水量が増加し、外務省所在地の地面も非常に弱まっている。下水道は用をなさず、熱病、疫病が発生する恐れがある。これについて、救済費の募集が開始された。なお同海岸の工場は休業し、3万人が住居を失った。
米獨関税問題 26日ベルリン特約通信社発
米獨関税戦争は多分発生する事は無いと思われる。米国では、この様な戦争に反対する世論が次第に高まり始めており、難しい牛肉税問題についても解決しそうである。しかし両国の妥協は、多分現協約が終了する期日である2月8日前には成立しないであろう。

 

1月29日
米獨沸関税問題 28日タイムス社発
ワシントン来電―獨逸と米国との関税問題に関する争議は、程なく解決するであろうと期待されている。しかし沸国とは意見の一致を見る事は困難な模様である。沸国側では、米国人は値段の高さには頓着なく、現在沸国から米国に輸入する品種の大部分を占める贅沢品を依然買い入れるものと思考している。そして沸国よりの輸入品の価格は日を追って高騰中である。
希臘政局危機 28日上海経由ロイター社発
アデン来電―陸軍軍人同盟はラリ、セオロキス氏の主導により解散する事に一致した。氏は国民議会の招集、憲法の改正を以て、この同盟を解散する条件としたが、危急な情勢と思われる。

 

1月30日
米国とリベリア 29日タイムス社発
ワシントン来電―米国政府は、アフリカのリベリア共和国(アメリカで解放された黒人が組織したもの)を以て、サントドミンゴ同様の財政的保護国とするよう計画中である。
解説:1822年、開放された奴隷が初めてリベリアに到着している。サントドミンゴはドミニカ共和国の首都
英国選挙の結果 同上
英国選挙は、最早殆ど開票が終わり、その宣告を与えた。統一党は、大いに勢力を増加し、政府も自由党の外、労働党、国民党に依頼せざるを得ず、情勢は国民が両党の主張する大変動を実行させる意思が無い事を示した。なおロンドンタイムスは、今正に上院の有効な改革を行う時期であるとし、在野党も貴族も道理のある改革案には同意、協力するであろうと言明している。







 

 

 

 

明治42年12月

12月1日
米国対ニカラグア 30日タイムス社発
ニューヨーク来電―ニカラグアに於ける現大統領ゼラヤと革命軍司令官エストラダとの対立状態が今尚続いている。米国国務省に於いては、同国に干渉する意志がない為に、最近盛んである「米国は断固たる手段に出るべし」との風説も大いに下火となった。これは反乱に味方した米国人2名の処刑事件が干渉の理由を与えなかったことによると言われている。
英獨境界協約 30日上海経由ロイター社発
本社ベルリン通信によれば、英領ウガンダと獨領東アフリカ及びコンゴ間の境界を決定した英獨協約が調印された。但しコンゴとの協議が残っているので、その内容は現在秘密にされている。
米人処刑は正当 29日桑港特派員発
ニカラグア議会は、12月1日開会の予定であるが、大統領ゼラヤ氏が退職するであろうとの声が高く、その他に種々の風説があるが同国政府が反乱に加わった2名の米国人を処刑した事は適切であると見做されている。

 

12月2日
波斯近情 1日タイムス社発
テヘラン来電―シラーツとプシヤイア間の道路は、土賊の為に交通を遮断された。ペルシャ大蔵大臣は、3万5千の軍隊と国内の秩序を維持する為の外債募集を希望している。
実業団帰国 30日桑港特派員発
実業団は、30日朝、一行に随伴し、国内を旅行した各地商業会議所代表者及びサンフランシスコの主要な実業家30余名を地洋丸に招待して、送別朝食会を催した。渋沢男爵の熱意溢れる熱誠ある感謝と別離の言葉があり、サンフランシスコのコナブ、シャトルのローマン両商工会議所会頭等の痛切な送別の辞があった。
尚米国商工会議所と日本商工会議所代表者は、両国実業の調査機関を設置し、日本より米国に輸出する絹織物、米国から日本に輸入する機械類等が他国輸入額より劣る場合には、その理由を研究し、両国貿易の発展を図る内談が整った。

 

12月3日
獨逸海軍予算 2日タイムス社発
ベルリン来電―獨逸海軍予算は、全て前年度より高額となっている。潜航艇費及び大砲費は、それぞれ約50万ポンド増加し、又海軍将校、兵士数は、57,170名である。前年に比して3,401名増加した。
解説:この潜航艇とは、海戦史上有名なUボートである。

 

12月4日
ダライラマの談話 3日タイムス社発
露都来電―ダライラマは、清国はその頑固な態度を和らげた。チベット人は、同地方の商業を一手に握っている英国人と親善は関係を結ぶ事が出来ると明言し、なおチベットと露国との間に永久的な外交関係を結ぶ事を希望している旨を仄めかしているとブリアtt、ドルチイフ紙は報道している。
米尼国交断絶 3日上海経由ロイター社発
ワシントン来電―米国政府は、国務郷の書簡と共に旅券を駐米ニカラグア代理公使に交付した。この国務郷の書簡は、大統領ゼラヤがニカラグア国内及び国際の平和を侵害した事を非難し、且つ大統領は、結局革命を承認するであろうが、革命党及び非革命党は、米国の利益を害した事に対する責任があると付言した。
なお米国軍艦3隻は、既にニカラグアに向け出発するよう命じられた。

 

12月5日
米国の海軍計画 4日タイムス社発
ワシントン来電―米国大統領タフト氏は、明後日に開会される議会に送る教書に於いて、国民兵の例に倣った海軍予備兵の新設を主張し、太平洋と大西洋に戦艦に対する設備を設ける計画を述べている。特に太平洋に於いて最新の戦艦に対する設備のある乾ドックは、唯一か所である事を指摘し、更にキュウバのガンタナの軍港完成を主張している。
尼国革命軍優性 3日桑港特派員発
ラマに於けるニカラグア官軍と革命軍との戦闘は、2日間続いているが未だ勝敗が決していない。しかし革命軍が優勢であり、大統領ゼラヤが敗北するであろうとの情報がる。又米国新聞は、ゼラヤによって処刑されたカンノン、グレース2名の死体は寸断され、焼き捨てられたと報じ、且つこの蛮行はゼラヤの命令によると言われており、非常に国民の感情を刺激し始めている。
解説:数日来報道されているニカラグア内乱の続報である。

 

12月6日
尼国大統領危し 4日桑港特派員発
ニカラグワ陸軍大佐グワデムズ氏は、手兵百名を率いて革命軍に投降した。ラマ付近に居る大統領ゼラヤ氏の軍隊は千4百に過ぎず、壊滅するのは間もなくと言われている。又ゼラヤ氏は、国務郷ロックス氏の最後の通牒を認めず、代表者をワシントンに送り、政府当局者間に運動させ、国会も動かし、両国の関係を回復させようと努力している様である。
鉄道大罷業 同上
大北鉄道その他の見張番人同盟罷業は、最後まで争う事となったが、他の鉄道労働者全体も同情し、罷業に加わろうとする情勢である。全国の鉄道全体が休業する様になるかも知れないと言われている。

 

12月7日
希帝の時局観 6日タイムス社発
アデン来電―ギリシャ皇帝は、タイムス通信員に対し、同国内外の情勢について非常に楽天的な意見を述べた。朕はトルコと親密になる事を希望し、トルコ大使に向かい、平和の意志について、明確な約束を与えたと言明した。
解説:クレタ島は、ギリシャとトルコの間で領有権争いがあるが、この当時はオスマン帝国領であった。
西班牙暴民無罪 同上
バルセロナ来電―去る7月バルセロナに於いて、革命運動を起こし、学校寺院を破壊した暴動事件の被告人870名は無罪放免された。又50名は将に審問に付されようとしている。

 

12月8日
米国鉄道大罷工 7日タイムス社発
ニューヨーク来電―全国製造業者協会は、米国が好況な状態にある旨を言明した報告書を発した。これと同時に高給を要求する鉄道工夫の大規模な罷工が起ころうとしている。
新駐清公使の経歴 6日桑港特派員発
国務省は、シカゴのウイリアム、カルフォーン氏を駐清公使に任命した事を発表した。氏は米西戦争前に特使としてキューバに赴き、又ベネズエラ事件の際に、英米の葛藤を生じた時も、ベネズエラに出張した経験がある。

 

12月9日
ソマリランド総督 7日上海経由ロイター社発
英国陸軍少将デブラス氏は、コルドオ大佐の後を継ぎ、英国アフリカ、ソマリランド政務官兼陸軍司令官に任命された。但しこれは政策の変更を意味するものではない。
解説:海賊で有名となっているソマリアの北半分は英国領、南半分はイタリア領であった。
米国大統領教書 7日桑港特派員発
7日午後議会に於いて大統領の教書が朗読された。
極東問題については、多年の政策を変更せず、米国資本を他国と共に清国鉄道建設に投資する事を説いた。
日清関係に就いては、9月4日の日清協約の中に、南満及び安泰両鉄道に沿った鉱山採掘の特権を独占する様に疑われる節があり、調査の結果その様な企画はない事が解った。念の為に日清両国政府の説明を求めたが、各自正式に機会均等主義に違反しない旨の保障を与えたと述べた。
日本との関係を論じ、日本との国交は親密に継続中であり、日本の代表者として久邇宮殿下はハドソン、フルトン記念祭に列席され、又日本実業団は、太平洋沿岸商業会議所の賓客として来訪し、発展している太平洋貿易上に非常に貢献すると思われる。そして日本人労働者の入国禁止は、昨年の協定に従い満足に行われている。(一部抜粋)

 

12月10日
運河紀念博覧会 8日桑港特派員発
8日サンフランシスコ実業者大会が催され、1915年を期してパナマ運河開通世界博覧会を開く事を決定し、委員を選び調査に着手した。
解説:パナマ運河は、予定より早く1914年8月に開通した。
中米擾乱 同上
ホンジュラス政府は、前大統領ボリルラ氏が再び勢力を回復する事を恐れ、国内に戒厳令を発令した。ボ氏は、ニカラグア大統領ゼラヤに援助を受けた現ホンジュラス大統領ダビルラ氏により駆逐された人物であり、その権勢を縛る事になったのは、ニカラグア内乱に関係がある事は無論である。尚両国の反徒は気脈を通じているとの説がある。
解説:12月6日の記事「尼国大統領危し」によると、ニカラグア大統領の立場は危うくなっている。

 

12月11日
英国戦艦新造 10日上海経由ロイター社発
新型戦艦ドレッドノート型1隻をアームストロング造船所に於いて建造する事が決定した。同艦は、1896年以来の最大戦艦であり、この工事の為に失業者は大いに助かると喜ぶべき報道が伝えられる。
クックの化けの皮 同上
ニューヨークタイムス紙は、既に隠退した航海者キャプテン、ルース及び保険会社代理人ドンクル両氏の自白書を発表した。これによれば、この両人は先にクックが如何にも北陸探検旅行を行ったと思わせる航海及び天文観測を作為し、これをクックに与えたが、クックは約束の金員を支払わずに姿を消した。
解説:9月13日「北極占領」の記事があり、これがベアリー氏とクック氏の北極探検論争の始まりである。
クリート問題 同上
クリート保護問題に関し、列国はトルコに公文を送り、現在はクリート島の制度確立に関し、商議すべき適切な時期ではないと通告した。
解説:11月14日、16日の記事の続報である。クリート島ではトルコとギリシャの間で紛争が起きている。

 

12月12日
売春婦の渡米 11日タイムス社発
ワシントン来電―米国移民官は、毎年数千の婦人が売春の目的で米国に移住している旨を報告し、これは実に米国の文明を辱めるものであり、この様な条約違反の行為を防止する事に関し、諸外国協力の必要性を説いた。
解説:欧州からの移民により、米国の人口は日露戦争当時(1905年)7千5百万人、第2次世界大戦当時(1945年)1億3千万人と毎年百万人以上の増加している。
米国綿花予想外 11日上海経由ロイター社発
米国綿花局の報告によれば、今年の綿花収穫は、相場師が楽観的に予想したよりも20万俵の減収であり、ニューヨーク及びリバプールに於ける人気は、未曽有の光景を呈し、相場は非常な狂いを生じた。
沸国羽二重課税 内国電報(11日)
外電によると沸国代議院に於いて、日本羽二重に輸入税を課する案が通過した。従来の沸国関税法では、欧州貨物と東洋貨物の輸入品に区別をし、東洋貨物には最高税率を課していた。我国より沸国に輸出する練羽二重には、100キロ9百ドルの重税となるが、然るに原料品は無税とされ、そして我国の生羽二重は原料品として取り扱われ、リヨンあたりで練羽二重に精製して市場に出されていた。今回生羽二重にも課税する事になれば、我が羽二重業者にとって一大打撃となる。しかし栗野大使よりの電報によれば、生羽二重に課税する代わりに、練羽二重に対しては、東洋品であっても最低課税を課する事となっているとの事である。
(一部抜粋)

 

12月13日
白耳義公果及び沸国 11日上海経由ロイター社発
沸国政府は、ベルギー政府のコンゴ改革案を是認し、若し同案が忠実に実行されるならば、全てのコンゴ土人間に、自由貿易の途を開き、土人等に多大の幸福を与えるであろうと述べた。
解説:コンゴは、ベルギー王室領であり、その植民地政策は苛烈で、ゴム、象牙等の収穫物が規定量に達しない土人の手を切り落とし、列強から非難された。その為その領地を政府が買い上げて、コンゴの改革案を列強に示したものである。

 

12月14日
沸獨関係小康 13日タイムス社発
パリ―来電―獨逸宰相ベニトマン、ホルウエヒ及び外相シエン両氏が議会に於いて平和的演説を行い、モロッコに関して明確な宣言を行った事は、大いに仏国新聞の満足を買った。これで獨沸利益の衝突の事態は、これを避ける事ができると一般に信じられている。
解説:モロッコは沸の保護国であり、度々獨逸が手を出している。
米国愈々派兵 13日上海経由ロイター社発
ニカラグア暴動の巨魁エストラダは、大統領ゼラヤに反抗して、米国の援助を求めた。大統領は、この巨魁を圧伏しよとして頻りに威嚇手段を用いている。
米国巡洋艦タコマは、海兵7百をコロンまで輸送する様命じられ旨ワシントンに於いて報道された。

 

12月15日
尼国征伐案 14日タイムス社発
ニューヨーク来電―ニカラグア大統領ゼラヤ氏は、専制者、僭王、殺人者であるとして米国政府の手によって、同大統領に正当な裁判を受けさせる件を許可する一決議案は、一議員の手により米国上院に提出された。
解説:12月1日の記事以降度々、関連記事が報道されているが2名のアメリカ人が処刑されている。
沸国の対獨憂懼 同上
パリ―来電ー仏国の政治的世論は、獨逸の財政が各種事業保護の傾向を示す事に対し、非常に懸念し始めており、そのバクダット鉄道によって沸国の近東政策を阻害するのではないかと憂慮している。

 

12月16日
米国使命論 15日タイムス社発
ニューヨーク来電―米国大統領タフト氏は、世界的強国としての米国の地位に言及し、ワシントン将軍は「周囲の海洋以外に目を注いではならない」と述べているが、最近時世は一変しており、我国の富強は、今や絶大なものがあり、若し我々が隣国の利益の為にこの力を用いないならば、遂に国際社会の一員である義務を履行しないと言う罪を負う事になるであろうと言明した。

 

12月17日
日英人接近論 16日タイムス社発
タイムス軍事通信員は、日本に於いて未知の友人より、「大和魂」(?)と言う雑誌の第1号数冊を送られた。タイムスはその内容及び目的を充分に記載し、その贈呈を謝し、同時にこの様な稀有の出版を見るだけでは、各人の願望を充分に満足させられないと説き、日英両軍隊間に一層密接な連絡がなければならないと論じた。(一部抜粋)
米国労働紛議 同上
ニューヨーク来電―米国労働同盟は、鋼鉄トラストに対し、事実上の戦争を宣言した。その主張は、同トラストは労働者に低賃金を支払い、同盟の組織や計画を妨害すると言っている。

 

12月18日
沸摩談判順潮 17日タイムス社発
パリ―来電―沸国政府は、先にモロッコ国王ムライ、ハフイッドに対し、沸国債権者に支払いをするよう要求し、同時にその財源は、これを公債に求めても構わないとし、若し沸国に於いて募集する場合には後援者となる旨通告した。これについてモロッコ王は長い間曖昧な態度を執ってきたが、再三交渉した結果、遂に大筋に於いて沸国の要求する債権者仕様の為の募債協議を行う件及び外人の不満を抱ける事項について、匡正策を講じる件を承諾した。
解説:この当時世界の列強では、殆ど全てが皇帝を頂いていた。その中で、モロッコでは、先王が追放され国王ムライが国王になったばかりである。その不安定は国でありながらモロッコは現在でも王制を維持している。又当時モロッコは沸国の保護国であった。
韓国合併協議無根 17日上海経由ロイター社発
露国半官報ノウオエ、ウレミヤは、政府の意を受けて、日露両国が日本の朝鮮合併について協議を始めたとの報道を否認した。
尼国大統領辞職 同上
ニカラグア大統領ゼラヤ氏は辞職した。
解説:12月1日ニカラグアに関する記事から、度々内乱に関する記事が報道されていたが大統領が敗れた様である。

 

12月19日
米兵増派 18日タイムス社発
ニューヨーク来電―ニカラグアに対する米国の干渉は、再び避けられないものと考えられる。7百名の米兵は、米国人保護の目的を持ってコリントオに派遣された。
クック氏発見愈虚偽 18日上海経由ロイター社発
先にクック氏の北極発見が虚構である旨を証言した船長ルース氏は、その後賄賂を以て、この証言の取り消しを勧誘されたが、取り消す事は無いと言明した。
解説:有名なベアリー氏とクック氏の北極点到達論争の記事であり、9月13日「北極占領」以降報道されているが、ベアリー氏が勝利し、クック氏は詐欺罪で収監された。しかし現在ではベアリー氏がクック氏の証人を買収した事が解っており、どちらが正しいのか不明と言われている。
ゼラヤ氏の広言 17日桑港特派員発
ニカラグア大統領ゼラヤ氏は、国務郷ノックス氏に次の様に打電した。
閣下の報告は誤解を含んでいると信じる。調査の為に合衆国が委員を派遣し、調査する様希望する。若し予の執政の為に中米諸国の平和を攪乱したとすれば、予は辞職する必要があり、又予は米国との友好が継続される事を望む故に、国会に辞表を提出した。予は国家に忠誠を表する為、国を去るつもりである。しかし予は予の施政が誤っていたとは思っていない。
解説:12月の初めから連日の様に報道されていたニカラグアの内乱が一応の結末を迎えた様である。

 

12月19日
米兵増派 18日タイムス社発
ニューヨーク来電―ニカラグアに対する米国の干渉は、再び避けられないものと考えられる。7百名の米兵は、米国人保護の目的を持ってコリントオに派遣された。
クック氏発見愈虚偽 18日上海経由ロイター社発
先にクック氏の北極発見が虚構である旨を証言した船長ルース氏は、その後賄賂によってこの証言の取り消しを勧誘されたが、取り消す事は無いと言明した。
解説:有名なベアリー氏とクック氏の北極点到達論争の記事であり、9月13日「北極占領」以降報道されていた。結局ベアリー氏が勝利し、クック氏は詐欺罪で収監された。しかし現在ではベアリー氏がクック氏側の証人を買収した事が解っており、どちらが正しいのか不明と言われている。
ゼラヤ氏の広言 17日桑港特派員発
ニカラグア大統領ゼラヤ氏は、国務郷ノックス氏に次の電報を打電してきた。
閣下の報告は誤解を含んでいると信じる。調査の為に合衆国が委員を派遣する様希望する。若し予の執政の為に中米諸国の平和を攪乱したとすれば、予は辞職する必要があり、又予は米国との友好が継続される事を望む故に、国会に辞表を提出した。予は国家に忠誠を表する為、国を去るつもりである。しかし予は予の施政が誤っていたとは思っていない。
解説:12月の初めから連日の様に報道されていたニカラグアの内乱が一応の結末を迎えた様である。

 

12月20日
安奉線整備 19日奉天特派員発
関東都督府は、安奉線の警備の為に19日より、本渓湖及び鶏冠山に警務支所を設置した。

 

12月21日
伯国鉄道工事難 20日タイムス社発
ベルリン来電―西部ブラジルのマモレ鉄道で労働に従事していた多数の獨逸人が帰国した。これは同地の事情、境遇が忍び難いものである結果である。

 

12月22日
英国軍艦建造 21日上海経由ロイター社発
英国海軍省は、土曜日スーパードレッドノート型戦艦2隻及び装甲巡洋艦1隻を発注した。これは直ちに起工し、1912年に竣工させると思われる。
解説:第1次世界大戦まで5年、英国は、獨逸と建艦競争を行っている。
尼国叛将の懇訴 20日桑港特派員発
ニカラグア革命党の首領エストラダは、国務郷ノックス氏に次の電報を送った。
我が国の平和を期する途は、ゼラヤとその一味をことごとく排除する事にある。我々はこの保障を得るまで、戦争を継続する。自由と正義の名を以て貴国が我々の政府を承認することを切望する。
一方に於いてニカラグア議会は、ゼラヤの推薦によりマドリヅ氏を大統領にイリアス氏を元帥に推薦しようとしている。内乱はまだ終わらないと思われる。
解説:昨日の記事の続報であり、ゼラヤとは前大統領である。

 

12月23日
加奈陀海軍反対 22日タイムス社発
オタワ来電―カナダ海軍の設置に反対するフランス系カナダ人一派の首領は、若しカナダ人に対して、英帝国の為に血と黄金を差し出す事を求めるのであれば、カナダ人に外交政策に対する発言権を付与しなければならないと主張した。
クック発見の否認 22日上海経由ロイター社発
デンマークのコペンハーゲン大学は、クック氏の記録を審査した結果、氏が北極に到着した証拠は無いと宣言した。
解説:12月19日「クック氏発見愈虚偽」の続報である。 この記事によるとクックの発見は学術的に否定された事になる。

 

12月24日
アデン来電―ギリシャ陸相の失言問題に起因する政治的難局が、依然として今も続いている。
陸軍協会は、あくまでも現内閣を維持する様主張し、これに対し2党派から成る反対派は、陸相が辞職しないならば、代議院に出席しないと決議した。これについて、ギリシャ皇帝は平和の為に調停に努力中である。

 

12月25日
英国官吏殺害 24日タイムス社発
ボンベイ来電―インド人の青年がナスクに於いて英国官吏を殺害した。これはブラヒムが反乱罪によって終身流刑に処せられた事に対する復讐であるが同時に政治的犯罪を意味し、刺客は、疑いなく他人に雇われていたと言われている。
沸獨関係改善 同上
パリ―来電―沸国代議院に於いて、外交上の討議があり、国民党員ミュウオイ氏は、沸獨関係の改善を称賛し、復讐談の様な話は、これを止めなければならないと主張した。
解説:第一次世界大戦の5年前である。

 

12月26日
沸人損害賠償 25日タイムス社発
パリ―来電―沸国外務大臣ビシヨン氏は、この夏スペインのバルセロナ暴動の際、沸人が蒙った損害に言及し、この暴徒は無一文の面々であるので、スペインの現行法律の下にあっては、損害賠償を請求する途は無いと説き、同時に唯スペイン政府の公正な精神に訴え中である旨を表明した。

 

12月27日
クックの不名誉 26日上海経由ロイター社発
ニューヨークの保険クラブは、マッキンレー登頂に関するクック博士の報告を審査中であったが、その結果報告は信用できないと決定し、クック博士は同クラブより除名された。
解説:クック博士とは、度々この欄の記事で報道されている通り北極探検一番乗りでビアリー氏と争った医師のクック博士である。ウイッキペデアによるとこのマッキンレー登頂では、ベアリー氏が当時のお金で5,000ドルもの大金(現在の日本円で1,000万円相当とも)を払ってクックのマッキンレー初登頂時の証人を買収したことがわかっており、いずれの探検家が先に北極点に到達したか(あるいはどちらも到達していないか)は大きな議論の対象であり、はっきりしない。
沸獨と摩洛哥 同上
沸国議会に於いて、対外政策を討論中、対外硬派の闘将であるムルボア氏は、モロッコ協約により、沸獨の関係が漸次改善されつつあり事に満足する旨を述べ、復讐の事はもはや討議する必要が無いと述べた。
解説:モロッコは沸国の保護国であり、獨逸がモロッコに手を出した事がある。

 

12月29日
沸国外相演説 28日タイムス社発
パリー来電―沸国代議院は、終日に亘って外交上の討論を行い、外相ビション氏は次の演説を行った。
沸国政府は至る所で平和、協調の増進に尽力した。仏露同盟は、現在の様に強固であった事はない。英露間或は露伊の友情は、これも平和に対する新しい保障である。又モロッコ問題に対する沸獨間の難問題は今や排除されて跡形もない。そして欧州諸国の勢力は、正に堅固な均衡を保っている。
解説:第一次世界大戦の5年前の沸国の状況である。英獨は海上覇権を目指し、建艦競争を行っており、ドイツの参謀本部は、ドイツ軍のフランス侵攻作戦計画(シェリフーン計画)を作っていた。こんな状況では、フランスがドイツに侮られるのは止むを得ないであろう。

 

12月30日
土耳其内閣危機 29日タイムス社発
コンスタンチノーブル来電―トルコ内閣の危機が再び起こった。青年トルコ党の代表である統一進歩期成委員は、宰相ヒルー、パーシャの辞職を要求し、宰相はこれに応じた。
解説:1908年、軍人の青年トルコ党が革命を起こし、トルコ皇帝の専制政治を放棄させている。

 

12月31日
土耳其内閣辞職 30日タイムス社発
コンスタンチノーブル来電-トルコ宰相ヒルー、パーシャは、同盟進歩期成委員等より辞職を要求され、内閣総辞職を行い、トルコ皇帝はこれを聴許した。
摩洛哥借款決定 29日上海経由ロイター社発
タンジールの商民社会は、新モロッコ借款の決定について、非常に満足している。又主にドイツの資本によるララシェ築港の件は今回発表された。



 
 
 
 
  
  

 

 

 

 

 

明治42年11月

11月1日
水兵反乱鎮圧 31日上海経由ロイター社発
ロイター社アデン通信員の報道によれば、同地の水兵反乱は、事実上一先ず鎮圧された。この反乱に於いて、反乱側には行方不明者4名、戦死者5名、負傷者数名を出し、官側には、戦闘艦ハイドラ号が反乱駆逐艦の砲火を浴びた為に、戦死2名、負傷者2名を出した。又各州に於いて動員された軍隊がアデンに到着し始めている。なお反乱者チバルドス大尉の運命は不明である。
解説:昨日の記事の続報で、ギリシャの少壮海軍軍人等は、現在の海軍行政に不平の念を抱き、30日反乱を起こした。

112

波斯露兵撤退 1日タイムス社発

テヘラン特報によれば、カスウインの露国兵士は、領事館護衛コサック兵50名を除き、皆同地を出発した。これは、露国がペルシャに対し何等の意図も持たない事を示す様熱心に主張する新露国公使の考えで行われたものである。

新駐清英国公使 31日ベルリン特約通信社発

イリノイ中央鉄道会社社長スワイベサント、フィシュ氏が駐清米国公使に任命されたとの噂がある。(フィシュ氏は、米国で有名な銀行家兼鉄道経営者であり、以前米国鉄道協会会長も勤めた事がある。58歳)

解説1014日「駐清公使論旨辞職」の続報である。

 

11月3日
希臘反乱審問 2日タイムス社発
アデン来電―当市は今や静穏となった。陸軍将校等の機関紙は、代議院に対し、速やかにその事業を終了する事を勧告し始めている。政府は今回告発された将校等を、普通裁判所に於いて、軍法に基づき審問する事に決定した。多分世論が許す事の出来ない様な刑罰を課すことになると思われる。又兵士は逃亡中の反乱者を捜索中である。
解説:11月1日記事の続報
獨逸官吏腐敗 2日上海経由ロイター社発
獨逸のキールに於いて、同海軍鎮守府倉庫監督ハインリッヒ、同属官3名、商人5名の審問が開始された。罪状は、大規模な有価供給品の窃盗である。

 

11月4日
波斯蕃賊猖嗽 3日タイムス社発
テヘラン来電―ペルシャ政府はアルダビール(ペルシャの北端、カスピ海の西岸に位置する市)を救援しようとしている。同市は、蕃賊に包囲され、しかも弾薬欠乏の為に苦境に陥っている。コーカサス露国駐屯兵も同市領事館を保護する為に出発した。
露国の芬蘭政策 同上
露都来電―露国は先にフィンランドの一州ウイボルグを露国の直轄に移し、又陸軍費の一部をフィンランドに負担させる事を定め、同時に万一の変事に対する準備として、軍隊をフィンランドに派遣した。これについて有力な一政治家は、政府に於いてウイボルグ州併合を決行したが、これは決してフィンランドの権利と自由に打撃を与える意志からではないと公言した。
米国帰化法と土耳其 同上
ニューヨーク来電―トルコ国代表者は、「アジア人は合衆国市民権を得る事は出来ない」と言うワシントン官憲の帰化法解釈に対し、激しく抗議した。これは、同公使館がトルコ国民を構成する6種の主要な民族中、トルコ人、アルメニア人、シリア人、アラビア人の4種族を劣等な好ましからざる分子であるとする理論に、止むを得ず反対しなければならなくなった為である。
米国地学協会の決議 2日桑港特派員発
米国地学協会委員会は、北極を探検したベアリー氏の主張と記録とを十分に調査した後、ベアリー氏が北極に達した事を満場一致で是認し、3日の委員会に付議する予定である。無論これを是認するであろうし、その上は、探検に関する情報を公表すると思われる。しかしその決定はクック氏の探検問題には少しも関係が無く、又同協会は、両氏何れが先に北極に到達したかについては何等決定をしない筈である。

 

11月5日
婦人参政権 4日タイムス社発
ニューヨーク来電―大統領タフト氏は、余は婦人全体が参政権を熱望すると信じる事が出来ない限り、婦人の参政権付与に賛成する事は出来ない。婦人等がいよいよこの権利を熱望するようになるならば、その権利を獲得する事が出来るであろうと言明した。
希臘反乱首領拿捕 4日上海経由ロイター社発
アデン来電―ギリシャ反乱首領、海軍将校4名は、昨夜テブス付近で憲兵と互いに射撃した後、拿捕された。
解説:10月末に起こった反乱記事の続報である。
日米親交論 3日ワシントン特派員発
3日夜の晩餐会席上で、国務郷ノックス氏は次の様な演説を行った。
日本が米国に学ぶように、米国も又日本に学ぶ事が多い。余は日本人の品性に敬服するが、この品性は武士道の賜物である。伊藤公の死はタフト氏の悲しむ所であり、公は一身を国家に捧げた偉人である。又日米の親交は、長く変わる事がないが、将来に於ける激しい商業上の競争は、予め覚悟しなければならない。とは言え礼儀を持って国交を維持するならば、競争は、平和と福利を増進するであろう。

 

11月6日
国務郷の演説 5日タイムス社発
ニューヨーク来電―国務郷ノックス氏は、ワシントンに於いて日本実業団の為に催された饗宴の席上、一行を歓迎する演説を行った。その中で伊藤公は、国家の為に一身を犠牲にした愛国心に富む高尚な政治家であり、且つ優れた組織的な才能を有していたと称賛した。次いで日本人は、通商上では、米国に対する非常に親密な競争を行わなければならないと警告した。
獨逸又増艦 6日上海経由ロイター社発
獨逸は、更に2隻のタービン式ドレッドノート型戦艦を新造するであろうとの情報がある。

 

11月7日
加奈陀軍備反対 6日タイムス社発
オタワ来電―ケベックで開催された商業大会に於いて、軍備拡張に反対する決議が採択された。カナダ首相ロリエル氏は、この決議に答えて、カナダが陸海軍無くして存在できない事は、警察なしで存在出来ないのと同じである。我々の様々な権利を防衛し、且つ母国の要求がある場合にはこれを支援する為に、カナダ海軍を設置する件については、既に確定した事であると公言した。
波斯財産算入 同上
テヘラン来電―ペルシャ政府は、内乱を鎮定する費用が欠乏している結果、今回内閣及び代議院からなる非常会議を開き、熟議の末、皇室の財宝を質入れする事を可決した。但しこの収入は、アルゼヒル(北部ペルシャに位置し、ロシア国境に近い都市)遠征の費用に充てる予定である。なおアルゼヒルに於いては、現在殺傷、略奪が盛んに行われている。
獨紙の英獨協約主張 5日ベルリン特約通信社発
獨逸保守党機関紙クロイツ、ツアイツングは、英獨間で誓約を結び、互いにその領土に関する現状維持を保障する事を主張した。

 

11月9日
摩洛哥と獨逸 8日タイムス社発
タンジール来電―モロッコ王は、先般ドイツが提出したドイツ債権者に対するモロッコの債務を支払えとの要求に回答した。しかしその回答は漠然とし、非常に不満足なものであった。
波斯憂乱形勢 同上
露都来電―廃帝マホメット、アリに味方すると呼号して、蜂起した北部ペルシャ蕃賊は、今尚アルゼビルに於いて奪略をほしいままにしている。但し露国領事館、居留民及び2千人の避難者は皆安全である。

 

11月10日
摩洛哥征伐効果 9日タイムス社発
マドリード来電ーモロッコのマリヤ駐屯軍司令官は、リーフ山土民の掃討作戦に於ける主要な目的が既に達せられたと説明し、余は土民が十分有効な教訓を受けた事を信じると公言した。
解説:スペイン軍がモロッコに駐屯している。
獨米対清策論 9日上海経由ロイター社発
駐米ドイツ大使ベルンストルツ氏は、フィラデルフィア学士会館に於いて演説し、ドイツの外交政策は、純粋に商業的であり、少しも領土的野心を持っていない。米国が清国の問題に関し、新たな発展をするならば第一に之に味方するのはドイツである。ドイツは一時的利益を犠牲にしても、開放政策を固執しようとする者である事を証明したと言明した。
解説:8月7日の記事「川漢借款と米人」に見られる川漢鉄道の問題に関する問題と思われる。米国銀行団が英独仏に遅れて談判に参加している。

 

11月11日
加奈陀海軍と米紙 10日タイムス社発
ニューヨーク来電―2等巡洋艦3隻、駆逐艦4隻を建造し、いよいよ独立海軍の基礎を立てようとするカナダの計画に対し、多数の米国新聞は賛成している。但しニューヨーク、ヘラルド紙は、カナダ海軍は英国の海軍力と結ばれ、英国は同盟に依って日本に結ばれ、日本に太平洋の制海権を得させるかの知れないと論評した。
対清鉄道政策 10日上海経由ロイター社発
英国上院に於いて、スタンフォード郷の質問に答えて、植民大臣クルウ郷は次の様に答えた。
1 山東省に於けるドイツの鉄道及び鉱山に対する占有的要求について、英国政府は何等の保障をドイツに与えた事はない。
2 ロシアの揚子江流域に於ける鉄道敷設計画への参加について、これは唯借款に限り、線路に対し何等の抵当権を得たものではない。

 

11月12日
巴奈馬運河工事 11日タイムス社発
ニューヨーク来電―パナマ運河計画の根本であり又ガタム水門と共に最難関工事として知られるクレブラ水路開削は、その半ばを終えた。今後4年間を経過すれば完成する筈である。
解説:現在は1909年で、パナマ運河は19014年2月に開通した。
巴奈馬運河防備 11日上海経由ロイター社発
ワシントン来電―米国陸海軍将校の連合委員会は、パナマ運河を視察し、同地防備方法を研究させる目的を以て任命された。
豪州罷工続報 同上
シドニー来電―鉱山持主等は、恐喝の下で労働者と協議する事を拒否した。南部に於ける7個の炭鉱に於いては、遂に同盟罷工が行われた。

 

11月13日
布哇比律賓防備 12日タイムス社発
ニューヨーク来電―ハワイの真珠湾は、太平洋上に於ける米国の主要な海軍鎮守府として選定された。又以前から提案されていたマニラ港の修築は見合わせとなり、仮鎮守府をレイテ島のオロンガボに置く。但しフィリピンの防備は主に陸軍によるであろう。
解説:これがパールハーバー海軍基地の始まりである。
英獨協商説 12日上海経由ロイター社発
ドイツ新聞の英獨協商可能談は、英国首相アスキス氏の演説によって復活する事になった。デーリー、クロニクル紙は、首相アスキス氏がドイツの対英感情が変動した証拠があるとした事及び新ドイツ宰相ペートマン、ホルウエヒ氏の就任後、両国間に意見の交換が行われた事を信じると言明した。
解説:第一次世界大戦まで5年

 

11月14日
クリイト問題 13日タイムス社発
アデン来電―トルコは、頻りにクリイト問題決定を要求中である。これは今後、更にギリシャを刺激することになるであろうと見られている。もっともトルコが直ちに無理にこの決定を求める意図であると信じる事は出来ないが、来春になるとどの様な事件が起きるかについては、疑惑を抱くものが多い。
ギリシャ首相は、海軍武装費として、3千万ドラマク(1千1百60万円)を要求した。
米国海軍根拠地 12日ベルリン特約通信社発
米国大統領タフト氏は、将来太平洋艦隊の根拠地をハワイに置く事とし、同時にマニラ湾港の工事は、これに伴いその程度を減少させる様命令した。
世界の最大戦艦 内国電報(13日発)
最近英獨米に於ける軍艦の建造は、ますます巨艦の建造を競う情勢である。そのトン数は増加すると共に主砲の威力に重きを置き、最近まで12インチ砲10門が最大軍艦の標準であったが、現に英国に於いて計画される5号から8号に至る戦艦4隻は、各2万6千トンで、その主砲は、13インチ半10門を採用するに至った。獨逸は未だ2万トン以上の建造計画を発表していないが早晩英国に対する競走上、必ずその計画をするであると信じられている。米国は、2隻の2万5千トンの計画があるが、更にその計画を増大し、新たに3万トンの戦艦4隻の建造を計画し始めている由にて、その主砲は14インチ砲12門である。

 

11月16日
西摩平和談判 15日タイムス社発
マリーヤ来電―スペインは、平和条約として、リーフ地方に於ける土地割譲の主張を固守している。このリーフ土蕃の代表者は、近日中に平和条約についてスペイン司令官と協議を開始するであろうと期待されている。
波斯議会開会 同上
テヘラン来電―ペルシャ議会は、11月15日を以て開会した。本議会は10月中の選挙に於いて当選した新議員を以て構成されるが、その多数は、現政府に賛成の意向を持っている。
クリイト問題 同上
列国は、トルコが通牒を発し、クリイト問題の解決を促したのに対し、近日中に回答し、この回答に於いて、現在はクリイト問題を論議する為の好機ではない旨言明するものと思われる。
解説:10月14日記事の続報である。

 

11月17日
波斯紛乱と露国 16日タイムス社発
テヘラン来電―アルデビル地方に於ける土蕃の暴行は、今尚止んでいない。この為2千余の露兵は、バーク(カスピ海西岸の良港)を出発し、ペルシャ及び露国の境界に位置するアスタラに上陸し、今後の情勢の推移を見守っている。
解説:ペルシャの北半分は露国の勢力圏であり、南半分は英国の勢力間である。
加奈陀首相演説 同上
オタワ来電―カナダ首相は、上奏文の討議に於いて演説し、カナダ議会は自ら海軍を組織する件に付いて、完全に一致した。予は豪州及びニュージランドもカナダの意見に同意するものと考える。若し英帝国が従来の様に強大である事を希望するならば、個々それぞれの国が充分に海軍の発達を期し、以て英帝国全体を強大にするべきであると公言した。
解説:英国は、ドイツと熾烈な建艦競争をしている。

 

11月18日
印度改革反対 17日タイムス社発
カルカッタ来電―インド人の発行する諸新聞は、インド政治を改革する計画に対し、様々な攻撃を試み、又極端な反対者に至っては同改革を阻害する目的を持つ同盟運動を計画中である。
日清協約と米国 同上
ワシントン来電―日清両国間に締結された満州協約中、南満及び安奉沿線の鉱山経営に関する条約に対し、米国政府は、日本も清国もこの鉱山採掘事業について、管理権を占有していないと解釈している。余(タイムス通信員)が確かなる筋から聞く所によると、この解釈は、米国政府が同協約を承認した事を意味するものと言われている。他の条項については、米国政府は日清両国に向かって、何事をも問い合す意志が無く、即ち日本は、その権利に属する所を行えるものであると考えている。
解説:9月3日、7日に日清協約の内容が報道されている。

 

11月19日
芬蘭の反抗 18日タイムス社発
ヘルシンキフォルズ来電―フィランド議会は、先般露国政府の要求した露国陸軍費の一部をフィンランドより拠出し、又同議会の軍事的立法権を制限する諸案を否決した。
解説:11月4日「露国の芬蘭政策」の続報である。

 

11月20日
芬蘭議会解散 19日タイムス社発
ヘルシンキフォルス来電―露帝は、フィンランド議会を解散した。これは同議会があくまでもフィンランドの自治権を主張して、軍事に関する立法権の制限を拒み、且つ10月14日の詔勅に見える毎年露国陸軍費40万ポンドを負担する件を否決した結果である。
解説:昨日の記事の続報である。
米国と中米 同上
ニューヨーク来電―米国政府は、ニカラグア大統領ゼラヤ氏の非行に対し、これを久しく忍んできた。しかも今やいよいよ同国の紛争を終了させる為、断固たる手段を執る事が予想される。

 

11月21日
芬蘭の形勢 20日タイムス社発
露都来電―フィンランド人等は、完全な独立を希望したと一般に考えられている。その為に露国政府は、一層警戒を厳重にしようとしている。
解説:1917年までフィンランドはロシア領であった。
米尼国際裁判 19日桑港特派員発
ニカラグア大統領ゼアラ氏が、同国の反乱に加わったとして2名の米国人を死刑に処した。米国国務省は、同国政府に対し、説明を求め、且つ同国に居る米人の利益を保護する旨を称して、巡洋艦ピッツバーグをコリトンに、砲艦テスモインスをシオンに急派した。米国政府は、エストラダ将軍とゼラヤ大統領とが対立状態にあると認めており、その何れを正統と認めるかにつき、公式の宣告を近く発表するであろうと言われている。

 

11月22日
渡米団帰程 20日ロスアンゼルス特派員発
雪のデンバー、氷のソルトテイクを経て当地に来れと、熱帯の植物が繁茂し、温暖で春の様である。22日更にメキシコ国境のサンジェゴ行き、それより東に向かいアリゾナ州に入り、グランドキャニオンの激流を見て、27日サンフランシスコに到着した。30日出帆する地様丸にてホノルルを経由して、来月18日横浜着の予定である。同日東京にて解散式を行う筈

 

11月23日
沸摩借款問題 22日タイムス社発
タンジール来電―モロッコ王がもし沸国が申し込んだ借款条件を受け入れないならば、沸国は、遠からず軍事的行動を採ることなく、ただ債権者に対する支払い保証として、租税徴収という手段を採ると思われる。
解説:当時のモロッコは仏国の保護国であった。
米国派兵準備 同上
ニューヨーク来電―米国政府は、米国人2名が処刑された事に対し、ニカラグワ政府の弁明に満足せず、既に米国汽船による軍隊輸送の準備を整えた。
解説:当時の米国の陸軍兵力は少なく、8万人位であった。目的はアメリカ大陸を勢力範囲として、この記事にある様に、その秩序を維持する事であった。
粟の輸出 内国電報(22日発)
最近本邦からロンドン及び欧州大陸へ粟の輸出が行われる様になった。その結果欧州航路の同盟汽船会社の協議の結果、重量1トンに付33シリングの運賃に協定した。
解説:当時の日本では、粟の様な雑穀を食べる人が多くいたと言われているが、まだ多くの粟が生産されていた様である。

 

11月24日
杜伯の非軍隊論 23日タイムス社発
ゼチワ来電―非軍隊主義者の大会があり、席上各国民が兵士として服務しない事を熱望したトルストイ伯爵反戦論文が読み上げられ、聴衆は熱心にこれを歓迎した。
解説:日露戦争直前、トルストイ伯爵は、10篇からなる長大な反戦論文をロンドンの新聞に発表した。その冒頭に、「仏教の国である日本と博愛を尊ぶキリスト教徒の国が何故戦うのか」という文言がある。
英国予算案討議 同上
上院に於いて財政案に関する討議を開始した。保守党領袖ランスダオン郷は、下院が今回の予算案を国民の判断に訴える前に、これに同意した事は不当であるとの動議を提出した。大法官ロアバーンス氏は、これに答えて政府は、失業者及び貧民の救済を希望する故に、富裕階級に課税せざるを得ないと言明した。

 

11月25日
希臘改革運動 24日タイムス社発
アデン来電―ギリシャ政府を左右し、且つ各種改革を強制的に実行中である陸軍協会の一機関紙は、国家改革上より是非公職を免職させる必要があるとする人物の名簿を発表しようとしている。尚同紙は、既に名士4名を挙げて、これを攻撃している。
沸国と摩洛哥 同上
パリ―来電―首相ブリアン氏は、代議院に於いて、沸国のモロッコに対する政策を弁明する重要な演説を行い、沸国は、居留沸人の為に公正な待遇を得るよう希望すると述べ、これに次いで社会党の議員は、軍隊のモロッコ占領を撤廃するよう提議したが、賛成者が少数で否決された。
解説:モロッコは沸国の保護国である。
米尼国交断絶 23日桑港特派員発
米国国務郷は、ニカラグア代理公使ロードリグエズとの会見を拒絶した。国交断絶をするものと予想される。
なおニカラグア国に於ける対米感情は、非常に悪化し、善良な多くの国民が、立って米国の野心を挫けと叫んだ。同国に在住する米国人の主要な者は、漸次減少し始めているが、これは、ニカラグア政府の捕縛、投獄したからではないかと推測される。
解説:23日の記事の続報

 

11月26日
波斯強盗横行 25日タイムス社発
テヘラン来電―ブシル駐在露国総領事が強盗団に襲撃され、旅人隊は略奪され、又コサック兵1名が殺害された。
解説:当時ペルシャの北半分は露国の勢力下にあったが、内乱状態である。
希臘改革問題 同上
アデン来電―ギリシャ首相は、海軍行政改革を呼号中である陸軍協会の有力者と会見、協議した。そして国内の平和、秩序の維持が必要な事を主張し、且つ無能な将校や犯罪を行った言われている将校は、適当な方法で、着々免職する事を誓約した。
獨逸予算 25日上海経由ロイター社発
政府側の報告によれば、1910年度獨逸海軍の予算総額は、21,704,412ポンドポンドであり、その内、新艦建造費及び武装調達費は17,177,500ポンドである。又植民省予算では、諸植民地に対する補助金の削減に注意を惹くものがあり、膠州補助金のごときは、実に38,203ポンド削減した。
解説:清国の膠州はドイツの植民地であった。

 

11月27日
希臘海軍将校の要求 26日タイムス社発
アデン来電―ギリシャ海軍の将校は、陸軍協会に通牒を送り、いやしくも艦隊に関する問題については、艦隊の存在を認識し、その意見を尊重するよう要求した。
解説:昨日の記事の続報である。ギリシャ海軍の一部が反乱を起こし鎮圧されている。
巴爾幹連盟説 26日上海経由ロイター社発
ブルガリア王フェルナンドハ、ソフィアに帰る途中、ベルグラードに立ち寄り停車場に於いてセルビア王と同皇太子及び外務大臣の出迎えを受け、直ちに宮廷列車で宮城に赴き、慇懃な歓迎を受けた。そして同時に首都に於いて注意を惹き始めているバルカン諸国の協商若しくは連盟説が益々高くなった。
解説:セルビアは、バルカン半島では、唯一ロシアと同じスラブ民族であり、セルビアが第一次世界大戦の引金を引く事になる。
韓人露国移住 25日ベルリン特約通信社発
露国よりの報道によれば、多数の朝鮮人等は国境を越えて露国領地に移住し始めている。但し露国政府は、これを少しも歓迎していない。

 

11月28日
沸国官吏同盟運動 27日タイムス社発
パリ―来電―約10万人の沸国官吏若しくは雇員を大乗する諸団体は、全国連合同盟を組織することに決定した。保守的共和党諸新聞は、政府は国家を蔑視する傲慢千万の運動を鎮圧しなければならないと論議した。
解説:第一次世界大戦まで5年、英獨は戦争に備えているのに対し沸はこの状態である。
加奈陀海軍反対 26日上海経由ロイター社発
カナダの有力な農業団体である「カナダ農民協会」は、カナダ海軍設置が、却って戦争を誘発することを恐れ、この件を国民全員の投票に諮ることを主張する決議案を可決した。

 

11月29日
満州問題日本攻撃(米国領事の報告) 27日ニューヨーク特派員発
27日のニューヨークタイムスによると、大連在住米国領事よりの報告が米国に到着している。これによると日本政府は、盛んに悪い手段を用いて、外国物品を排斥しており、この事は、日露戦争終了後の満州の解放当時より、外国人が等しく認めている所である。日本政府は、日本品に対して税金を課さなくて輸入させており、この事に関して清国政府も大いに注意を払い、これを各国に注意した。故に清国政府は新たに税関を設けてこの害を防ぐであろうとの説が盛んであると報じ、更にこれは米国政府が秘密にしているが確かであると付記している。
米国の対ニカラグア態度 28日サンフランシスコ特派員発
当地に居る米国御用船3隻は、ワシントン政府よりの秘密命令によって軍需品を積み込み、中米行の準備中である。又ニカラグア駐在米国領事がニカラグア政府によって捕縛、投獄されたと新聞紙は例によって今にも開戦する様に、誇張的に報道を始めている。しかし事実はそれ程切迫していないが、唯陸軍運送船のフィリピン群島行が中止されたのは事実である。

 

11月30日
露兵撤退延期 29日タイムス社発
テヘラン来電―北部ペルシャに於いて、長い間、欲しい侭に略奪をしていた部族が、旧占領地を撤退した。しかし露兵は、これら部族長が真に行動を慎み、略奪品を変換する確約が成立し、同時に各種損害に対する賠償の件等が定まるまでは、依然としてアルデビルに駐屯する事になると思われる。
西軍前進中止 同上
マドリード来電―モオレット氏の新自由党内閣は、多数のモロッコ部族が降伏し、スペイン軍の前進運動が成功した為に、今後更にマリーヤ方面に於いて進撃を行う必要は無いと考えている。但し若干の委員は、将来の防備の為の防塁が必要と考えており、スペイン軍は、それを築く地点を決定する目的で、将に同地に出発しようとしている。

 

 

 

 

 

 

明治42年10月

10月1日
西班牙人歓喜 30日タイムス社発
マドリッド来電―スペインの歩兵、騎兵、砲兵混成部隊は、何らの抵抗も受けずにグルグ山を占領した。この山は、4百年前よりノリラ(スペイン人の植民地)の安泰を脅かして来たが、今やようやくスペイン兵の手に落ちた。スペインはここに遠征の主要な目的を達し、歓声が全国に満ちた。
本社のメリラ遠征員は、山間地方のリフリ族が猶討伐されていないのは事実であるが、これらの蕃賊が討伐されない間は、半島の民心は、決して平穏ではないと報道した。
解説:7月27日からスペイン軍のモロッコ遠征の記事があり、相当な被害を受けた記事があった。その理由が不明であったが、此処はスペインの植民地であったと初めて分かった。
土耳其内政改善 同上
パリ―来電―トルコの将官マムウドシエツケットは、新聞記者に対し次の様に語った。
トルコの新内閣は、既に国内の騒乱を鎮圧した。又総理大臣の俸給は、1カ月千7百ポンドであったものを3百ポンドに減額し、これを以て下級官吏の年金に充てるとして、且つこれら下級官吏の待遇も改善され、その俸給も規則正しく支払われる事となった。

 

10月2日
獨逸戦艦進水 1日タイムス社発
ベルリン来電―第6ドレッドノート型戦艦の進水式がイルヘルムスハアフェン港に於いて挙行された。同時に於ける三ドックも竣工した。
英国戦艦進水 1日上海経由ロイター社発
アルバニー公爵夫人は、ポーツマスに於いて、改良型ドレッドノート型戦艦の進水を掌った。同艦は、既に建造された、若しくは現在建造中のものと比較し最大の戦艦である。
米国抗議は無根 30日桑港特派員発
ワシントン来電によれば、米国政府が日清協約に対し、日本政府に抗議をするというのは無根の説であると当局者は否認している。一部の人は、この協約中に、清国が満州に鉄道を延長する場合に、日本政府と協議しなければならないという条項があるのは、ポーツマス条約違反であり、将来支那が満州に於いて鉄道を敷設する際、その資本の一部を日本に仰ぎ、又日本と協議しなければならないと言うのも、明らかに他列強の投資の道を阻害するものであると説いている。(一部抜粋)
解説;日清協約について、9月3日以降記事があるが、9月7日、8日の記事に見られる様に米国は一貫して反対している。
布哇罷工領袖無罪 同上
ハワイ同盟罷工の為に起訴されていた10名の日本人は、無罪となった。
解説:ハワイの同盟罷工は5月末頃から行われていたが、7月7日に終了した記事がある。
又7月8日、11日に逮捕者に関する記事がある。

 

10月3日
タフト氏航路補助論 2日タイムス社発
ニューヨーク来電―米国大統領タフト氏は、米国の海外貿易を拡張しようと決意し、国会に対し外国郵便事務1年間の純益約67百万ポンドを極東、南米汽船航路補助に支出する様要求しようとしている。大統領は、シャトル市に於いて行った演説で、向う50年間太平洋上の商業的発達は、はるかに他方面を凌駕するであろう。清国は、今や日本の様に大いに覚醒し、長足の進歩を見せ始めている。又日本は、航路補助に最も寛大な態度を示す国の一つであると述べ、故に我々は米国航海業の恥ずべき状態を改善しなければならないと弁明した。
西班牙軍敗北 2日上海経由ロイター社発
スペイン軍は、ツエルアンより偵察的進軍を行ったが、非常な敗北となり、イカリオ将軍、大尉2名、中尉若干名、兵卒14名が戦死し、180名が負傷した。
解説:10月1日スペイン軍大勝のニュースに国中が沸き上がっていた直後のニュースである。
西班牙援兵派遣 同上
数隊の援兵がスペインを出発し、モロッコに向かった。
米国艦隊の謝礼(昨年横浜の大歓迎に対する) 1日紐育特派員発
米国海軍太平洋艦隊乗組員一同は、昨年10月我が国に赴き、大歓迎を受けた事に対し、謝意を表しようとして、種々の案を協議していたが、今回いよいよ黄金杯贈る事になり、既にフィラデルフィアで製造した。その値は米国ドルで2千ドルである。そして金杯には、合衆国太平洋艦隊の士官及び乗組員が1908年横浜を訪問し、その際日本海軍の上下を通じて非常な歓迎を受けた事に対する感謝の辞を銘記した。この金杯は、今回久邇宮殿下の御帰国の際、お持ち帰りを乞う事に決定した。
解説:昨年10月19日以降、米国艦隊が横浜に入港し盛大な歓迎を受けた記事がある。

 

10月4日
西班牙軍の死傷者 3日上海経由ロイター社発
先月28日に於けるスペイン軍の損害は、戦死者41名、負傷者290名であった。なおスペイン軍は、再びツエルアンより進撃し、2日朝5千のモロッコ軍戦線を攻撃し、猛烈な戦争が今なお継続中である。
解説:昨日の記事の続報

 

10月5日
波斯内政難局 4日ロンドンタイムス社発
テヘラン来電―諸銀行がペルシャ政府に資金借用の同意をしない結果、国内秩序回復の為に出征の途に上った軍隊は、十分な活動を試みる事が出来なくて、各地方の紛争、無秩序は依然として改善せず、政府の権力はテヘラン府のみに限られている観がある。
米国紡績休業 4日上海経由ロイター社発
ニューヨーク来電―南部紡績業者の集会に於いて、工場所有者等は生綿の高価と製品の廉価の為に、織物業は現在利益が生まれないものと認定している。その為南部工場の殆ど全部が、今後2週間以内に閉鎖される様子である。

 

10月6日
英紙の清国観 5日上海経由ロイター社発
ロンドンデイリー、メールは「清国の廉価鉄道」という論題で、清国が真に覚醒し始めている事を認め、且つ鉄道は、既に清人が公務に於いても私事に於いても、正直に実行する事の出来る政策である事を理解する様になっている確証を示すと説き、且つ現在の試験で成功するならば、清人は勇気を出して一層奮励するであろうと言明した。
摩洛哥土蕃猖嗽 同上
モロッコのマリーヤ付近のムール人等は、多大の援兵を得て、再び攻勢を取ろうとする様子である。
西摩関係危殆 4日ベルリン特約通信社発
モロッコ王ムライ、ハフィドがスペイン人に対して、神聖戦争を布告する機が迫っている恐れがある。これについて英仏両国は、スペインがこの上膨張計画を講じる事を希望しない態度を執っている。

 

10月7日
仏国の不安 6日タイムス社発
パリ―来電 スペイン政府は、尚援兵1万5千人をマリーヤに派遣しようとしており、容易に土蕃膺懲を切り上げる気配がない。その為仏国新聞は、モロッコに於けるスペインの軍事的政策に関し不安の念を抱き、若しその活動範囲が広がる様であるならば、モロッコに於ける仏国の権利は、危険な状況に陥るであろうと公言している。又駐仏スペイン大使は、これは少しもモロッコ相手に戦争をするのではないと言明しているが一般にスペインは、十分に仏国を安心させなければならないと説くものが多い。
西班牙遠征隊消息 同上
マドリード来電―メリラ及びズルアン両地のスペイン兵は、その陣地を強固にし始めている。
仏国新聞の憂慮 6日上海経由ロイター社発
仏国諸新聞は、モロッコに於けるスペインの進出政策に対し、不安の念を抱き、現在のまま放任するならば、モロッコは、騒乱の渦中に陥りのではと憂慮している。なおモロッコ国内に於いては、既に宗教戦争論が宣伝され始めている。

 

10月8日
タフト氏演説 6日桑港特派員発
大統領タフト氏は、5日夜、当地の歓迎会に於いて州民の希望を代表するカルフォルニア州知事ギレット氏の演説に対し、日清両国及び関係各地の情勢を論じて、今後50年乃至百年間、世界の問題は太平洋に関係すると思われ、その為開運業を保護する必要があると切言した。差し当たり外国郵便の収益8百万ドルを以て、試験的に東洋航路を保護する必要があると論じた。太平洋に16隻の戦艦を常備する必要があるとの知事の要求に対しては、微笑を浮かべながら、若し知事が、戦争は太平洋のみで起こる事を保障するならば、これを常備する事も可能であると受け流し、パナマ運河が完成した暁には、海軍の効率は現在に倍加するであろうと言明した。
駐清公使の用務 同上
駐清公使クレーン氏は、6日朝ワシントンに引き返した件に付いて、国務省は単に訓令を与える必要があった云う以外には説明しなかった。クレーン公使もまた何故に召喚されたのかその理由を解せずという事から諸新聞は、例によって種々な憶測を逞しくしている。甚だしいのは、米亞雑誌に掲載した同氏の意見が不穏で、且つ非外交的であった為諭旨免職となるのではと指摘する者も居る。しかしワシントン来電によれば、用件は満州問題と清国の借款問題に関連している事は疑いがない。

 

10月9日
加奈陀海軍案 8日タイムス社発
オタワ来電―カナダ政府は、英帝国国防会議の決定事項を遂行する為、近日中に海軍整備案を提出する予定である。建造軍艦は、巡洋艦及び駆逐艦等12隻であり、費用は4百万ポンドとなるであろう。又1年の海軍費は60万ポンドである。
日清協約と米国 同上
ニューヨーク来電―国務相は、日清両国間に締結された満州協約に対し異議を申し立てようとして、鋭意研究中である。国務省は、その協約中のある条項に対し疑問があるが、協約の全文を手に入れていない為、意見を決定する事ができない。日清両国の争議をヘーグの仲裁裁判所に付すとの提議は、米国政府が熱心に賛成している所であり、去る7月の日清協約は、米国政府に於いて全く予想していなかった。その当時日清両国に駐在する米国官吏は、いずれもその任地に居なかった為である。そしてその協約は、ポーツマス条約に規定された門戸開放主義に違反するものと認められる。従って米国政府は、多分抗議を提出するであろうと考えられる。

 

10月10日
米国の日清協約反対 9日上海経由ロイター社発
タイムスのニューヨーク通信によれば、米国国務省は、真剣に日清間の満州協約に反対する意向を抱いている。同省は、この協約を以て開放主義にもポーツマス条約にも違反するものと認識している(昨日タイムス特電)
又モーニング、ポストのワシントン通信によれば、駐清米国公使クレーン氏の召喚も日清協約に起因しており、即ち米国は、同協約中の満州鉱山に関する第3条及び第4条の規定に対し、異議を申し立てると思われる。
解説:3条は撫順、烟台炭鉱の件、4条は安奉線鉄道沿道の鉱山採掘の件である。
藤公満州行と米国 8日桑港特派員発
ワシントン来電に、今回我が伊藤公が満州視察の途に就く予定であると報道されたが、これは、政治上重大な意味があるとして、非常に官辺の注意を引いている。米国外交家は、日本が満州に於いて米国の政策を危険にさらす諸種の特権を獲得中であるとして、非常に憂慮している。日本が最近鉱山採掘権及び安奉鉄道改築権を得、又満州鉄道の競争線を敷設する場合には、日本の承諾を得なければならない旨協定させた事は、満州に於ける他の外国人を排斥する事になるのではと疑い始めている。そして伊藤公の満州旅行は、この状態を研究して、或は今後起こると思われる他国の抗議に対する答弁の材料を得るための準備であると観察中である。

 

1011

加奈陀の製艦熱 10日上海経由ロイター社発

カナダに於いて軍艦を建造する事に対し、強大な声援運動が起こり、ハーランド、ウルフス氏がカナダに造船所を設立する計画があると報じられた。

 

1012

将軍懲戒休職 11日タイムス社発

パリ―来電―モロッコのリーフ山方面に於けるスペイン軍の活動は、仏人にその目的に疑惑を抱かせる様になった。モロッコ駐屯仏軍司令官ダマド将軍もモロッコに於ける仏スペイン両国の政策につき論評を行った。これに対し仏国政府は、同将軍の師団長である事を免じ、数カ月間何等の職にも任命しないと思われる。しかし一般の世論は、将軍の紀律違反は、全く愛国的動機から出たものであり、速やかに赦免される事を希望している。

仏国司令官退職 11日上海経由ロイター社発

在モロッコ前仏国司令官は、新聞記者と会見し、強くスペイン兵のモロッコ進撃を憤り、スペインの究極目的は侵略にあると思われると説いた為に、今回退職を命じられた。

 

10月13日
日清協約と米国 12日タイムス社発
ニューヨーク来電―駐清公使クレーン氏が清国に出発するに先立ち召喚されたが、これは日清間の満州協約には何ら関係がない。本当の理由は、果たして駐清公使として適当かどうかにある。伝えられた所によると、米国国務省は、先般シカゴ新聞紙上に発表された日本人政策を攻撃する論議が正にクレーン氏の責任に帰すべきものである証拠を握っていると言っている。又米国政府側では、その日本の対清態度について如何なる程度まで譲歩すべきかについては、何ら決定していないと公言されている。

 

10月14日
駐清公使論旨辞職 13日上海経由ロイター社発
ワシントン来電―シカゴ新聞の記事が、最近日清協約に於ける日本に対する譲歩について、開放政策に違反するとの理由を以て米国は公式に抗議すべきであると説いている。この記事は、米国の政策を予測したクレーン氏より出たものと信じられており、その為国務郷ノックス氏は、クレーン氏に対しその辞職を承認するべき旨を通知した。
解説:昨日の記事の続報である。
フィッシャ提督退隠 同上
英国海軍大将ジョン、フィッシャーは、2週間以内に隠退し、貴族に叙せられ、男爵を授けられるであろうと言われている。
解説:ジョン・アーバスノット・フィッシャー(1841年~1920年)は、イギリス海軍史上でネルソン提督についで重要な人物である。「ドレッドノート型戦艦」の生みの親であり、日本でも巨大な台風に超弩級と呼ばれるのはこのドレッドノート型戦艦の「ド」に由来している。
クック氏愈不信用 同上
ベアリーの同行者4名は、クック氏の引き連れたエスキモー人と会談した結末を詳細に発表した。この土人は、クック氏は、ハイベルグランドの北方に向け、僅かに2進航を行ったのみと主張し、且つク氏が極地探査に費やしたと言っている期間に於ける南方帰航の模様を詳しく語ったという。
解説:進航は翻訳の誤りではないかと思われる。航海上の距離を表すものとして、この言葉は無い。原語が「ケーブル」とするならば、1ケーブルをアメリカ海軍では120ファゾム(219.456メートル)と定義している。
この記事は、有名な北極探検一番乗りを競う事件であり、9月14日以降連日の様に報道されているが、結果はベアリー氏が勝訴した。しかし後にベアリー氏がこのエスキモー人に大金を与えて買収した事が判明している。

 

10月15日
西班牙暴動判決反響 14日タイムス社発
マドリード来電―政府は、無政府党員フエレルに対し、北部暴動に援助を与えたとの理由
で死刑に処する判決を是認した。スペインの在野党は、これに反対し、これは政府がカロ
ニアに於いて行われる思想の自由及び教育の自由、即ちローマ―教会教育に反対する運動
を打破鎮圧する目的に出たものと攻撃した。
印度革命鎮圧 同上
シムラ来電―インド政府の下に立っている諸藩王の領土に於いても、いよいよ英国反対の
反乱的行動を鎮圧しようと決意した模様である。
クレーン氏弁解 14日上海経由ロイター社発
クレーン氏は、シカゴで発表した文書は、自分の不謹慎ではなく、寧ろ大統領タフト氏
の希望を実現しようとして、自分の考えを述べたものである。タフト氏は、極東政治や
商業の状況について、私の言明した内容を語ったと公言した。
クレーン辞職事情 13日桑港特派員発
予が駐清公使の任に於ける際、大統領は、私に対して次の様に述べた。
太平洋は商業上、政治上将来我が国に大きな問題が発生する所である。しかし国民は未だ
これを悟っていない為に、貴官は公開の席上で、或はその他全ての機会を利用してこれを
国民に訴え、その敵愾心の喚起に努めなければならない。(一部抜粋)

 

10月16日
フエレル処刑と欧州 15日タイムス社発
欧州列国の無政府党員、社会党員等は、スペインのバルセロナに於ける無政府党領袖フエ
レルの死刑に反対して、激烈な示威運動を行い、又同人を道に準じた義人とする数個の決
議案を通過させた。パリーの騒動は沈静化したが、イタリアのフロレンス及びミランに於
いては、軍隊と人民間に激しい衝突があった。
ク氏辞職と大統領 15日上海経由ロイター社発
米国大統領タフト氏は、駐清公使クレーン氏の辞職を承認した。世論はクレーン氏に同情
する傾向があり、その辞職は、日本に対する屈辱的犠牲であるとしている。
クック氏攻撃 同上
1906年アラスカのマッキンレー山登山の際、クック氏の案内者で唯一の同行者であっ
たバリルロ氏が1万フィートよりも高い場所に行った事が無く、しかもク氏は、私に命じ
て日記を書き直させたと証言した。この為非常に米国人心を驚かせた。クック氏は、これ
に対し、「若し探検隊が同山に登ることがあれば、私が残した記録を山頂に発見するであ
ろう」と言明した。
解説:9月中旬以降行われている北極一番乗り競争に関連する記事である。

 

10月17日
清国憲政の前途 16日タイムス社発
ロンドンタイムスは、清国各省に於ける諮議局の開設について、次の様に論評している。
日本の進歩発達を促進させたあの称賛すべき勤勉の精神を今後清国各省の地方議会に注入する事は、これを開設するよりも一層の難事と思われる。日本人が武士の道を重んじて、一身を犠牲にする精神及び熱心にして沈着な愛国心は、支那に於いてこれを何處に見出し得るのかと質問している。
解説:諮議局とは、清朝が立憲政治を目指して、各省に開設した地方議会である。
クック氏と自由権 16日上海経由ロイター社発
ニューヨーク市は、第1に北極に到達した人として、クック氏に自由権を許授した。
解説:昨日の記事の続報であり、この時点ではクック氏の一番乗りが認められている。
蒙古鉄道と英米資本 15日桑港特派員発
ワシントン来電によると錦州より蒙古を通りチチハルに達する鉄道に投資しようとする英米資本家は、ほぼその手続きを完了した。しかし北京からの情報によると、日本政府から何らかの交渉があるであろう事は殆ど疑いが無く、既にその覚悟でそれぞれ準備している。
解説:日清協約によって、清国が鉄道敷設をする場合には日本と協議する事となっているが、米国はこの鉄道の大部分は、蒙古を通過し、日本の勢力の範囲外にあると考えている。
この問題に関連し、10月13日、14日に米国公使が召喚された記事がある。

 

10月18日
露国蔵相の用向 17日ウラジオ特派員発
露国蔵相の極東視察事項は
1 自由港閉鎖後の極東経済状態を実地に調査する事
2 露国国庫に最も多い損害を与えている東清鉄道の善後策を根本的に解決する事
3 極東国境に於ける露国住民が、日清両国民より受ける圧迫を防ぐ事
等を主たるものとし、その他対外懸案を一掃する為と伝えられている。

  

1020

 西班牙軍隊欣喜 19日タイムス社発

 モロッコのマリーヤー特報によれば、スペイン軍隊は、今や欣喜の念に満ち、モロッコ土民討伐開始当時の不幸な記憶を一掃したいと思っている。又戦没将校親族の態度は、他の欧州軍隊と異なり、寧ろ日本軍にそれに近いものがある。

 解説:103日、4日の記事によれば、死者は将軍を含めて41名、負傷者290名の大敗北を帰している。 

 チロル氏日本評 同上

以前日本に来た事のあるタイムス特派員は、その長い論文を完了した。氏は結論として、日本人が国民として各種の社会的、財政的、商業的、政治的弊習より覚醒し、その後物質的繁栄の面で、著しく進歩した事及び1908年の詔勅を称賛している。しかも近代日本の諸事業は、旧日本の感化の下に行われており、余は日本が上手くその旧来の精神中、最善なものを保持する事が出来るならば、その将来は、万全に違いないと信じると言明した。

 解説:チロル氏は、ロンドンタイムズの外交部長 1908年の詔勅とは日韓併合の詔勅と思われる。

 伊藤公接待委員 19日北京特派員発

 伊藤公の満州巡遊に対し、清国外務部は、特に接待役として曹汝リン(そうじょりん)氏を奉天に派遣し、敬意を表しようとしている。

  

1021

 英国労働党領袖演説 20日上海経由ロイター社発

 英国独立労働党領袖ケアー、バーチ氏は、スンダーランドに於いて演説し、余は、皇帝の予算干渉説が真実でない事を切望する。政治以外に超然としている間、我々はこれを忍ぶ事が出来る。しかしその干渉が開始される瞬間に於いて、王冠は、貴族連の冠と共に溶解用の高炉に投入されると言明した。

桑港開港紀念祭 各国水平の行列 20日桑港特派員発

 19日より当地の開港記念祭が始まった。これは当港の発見者ポートラに由来するもので、続いて米、日、英。獨、伊、蘭、土各国水兵は、群衆歓呼の中、市内を行進したが、中でも日本の水兵は、戦勝国の軍人として最も盛んな歓呼を以て迎えられ、その紀律が整い、態度が尊厳な事を称賛しない人は無く、在留同胞は、大いに面目を施した。

 解説:出雲が参加している。

 

10月22日
芬蘭自治蹂躙 21日上海経由ロイター社発
露都来電―強大な軍隊は、主にウイボルク州を占領する為にフィンランドに派遣され始めている。フィンランド上院議員等は辞職を命じられ、露人を任命してこれに代え、同時に独立のフィンランド陸軍を設置する要求は、不認可となった。又政府は、議会に対し露国陸軍の為に2百万ポンドを支出する様命令した。
ベ氏土地学会 同上
ワシントン来電―北極探検家ベアリー氏は、国民地理学会に北極探検記録を提出した。
英獨海軍形勢 同上
英国海軍政務官ジョルチ、ラムバート氏は、ベニクックに於ける演説で、19012年3月に至るならば、英国はドイツの13隻に対し、20隻のドレッドノート型戦艦を保有するであろうと述べた。
日本人銀行支払停止 20日桑港特派員発
サクラメント銀行、日米銀行、サクラメント日本銀行に続き、フレスノー勧業銀行も又20日支払いを停止し、在留日本人経済界に大恐慌を惹起した。

 

10月23日
英獨鉄道交渉難 22日タイムス社発
ワシントン来電―米国が清国鉄道借款に参加した結果、他国が引受る予定の鉄道マイル数は、比例的に減少させる必要がある。しかしドイツ政府は、英国側の比例的減少に報いる為に、川漢鉄道に於けるドイツ引受の一部を譲予する事に反対中である。なおこの件については、米国も借款参加の結果深い関係を有している。
解説:8月7日「川漢借款と米人」の記事に見られる様に、米国が遅れて強引に融資に参加している。
伊藤公漫遊と外人 支那特電22日北京特派員発
伊藤公の満州漫遊に関し、当地の外人は一人も単純な漫遊と信じている者は居ない。特に米国シンジゲート代表者であるストレート氏が先般満州総督と鉄道敷設、その他に関し密約を行ったと伝えられ、又一方には露国大蔵大臣の来満、駐清露国公使のハルピン行等がある為に一層何らかの意味があるのではと推測が行われている。

 

10月24日
獨逸社会党大勝利 23日上海経由ロイター社発
ドイツ連邦のザクセン及びバーデンに於ける代議院議員選挙の結果、社会党の得票が著しく増加した事を示している。社会党は従来ザクセンの代議院に於いて僅かに1議席を占めるに過ぎなかったが今回の選挙結果、既に16名を選出し、なおこの外に53名の候補者が第2投票を行おうとしている。
島津公の米人招待 22日桑港特派員発
軍艦出雲に乗り組んでいる島津公爵が今晩、サンフランシスコ第一の料亭であるテートで盛大な晩餐会を開き、主要な米人実業家、新聞記者等を招待した。
解説:サンフランシスコ開港記念祭に軍艦出雲が派遣されている。
伊藤公奉天着 満州特電23日奉天特派員発
伊藤公は、22日夕方6時奉天に到着し、直ちに満鉄公所に入った。我が官民の出迎えの外清国側では、特に歓迎アーチを停車場に設け、各文武官及び軍隊を停車場に派遣した。錫総督及び程巡撫は、自ら満鉄公所に出迎え、その通路には軍隊、巡査を派遣し、厳重な警備を行った。一般民衆には国旗を掲げて敬意を表させる等非常に盛況であり、待遇の丁重な事は従来その例を見ない。一行は23日錫総督を訪問し、後宮殿の北陵を拝観し、6時総督の晩餐会に臨んだ。
伊藤公と露国蔵相 満州特電23日長春特派員発
伊藤公は、25日当地を通過し、26日朝ハルビン着の予定である。露国蔵相は、24日ハルピン着、両3日滞在した後ウラジオに向かう。
解説:伊藤公は、26日ハルピンに到着時、韓国人テロリストに暗殺される。

 

10月25日
出雲艦の招待 桑港特派員発
23日の軍艦出雲に於ける艦上パーティは非常な盛会であり、非常に多い6百余名の日本人及び白人が参加し、何れも満足し、午後5時頃退官した。夜は8時からパレードが行われ、在留日本人の出した山車が至る所で喝采を浴びた。なお軍艦出雲は、24日午後6時、当港を抜錨し、モントレーに向かう予定
日米端艇競漕 同上
23日午後4時より米国海軍選手と我が出雲選手とのボート競技があったが、遂に我が選手の勝利に帰した。
伊藤公錫提督会見 24日奉天特派員発
伊藤公は24日朝、撫順に赴き、同夜奉天に帰る予定である。23日の錫総督の会見は、内外人の注目を惹いたが、錫総督より満州問題に関する清国側の希望を述べたまでであり、他に何等の意味もなかった様である。

 

10月26日
獨逸社会党反対運動 25日タイムス社発
ベルリン来電―バーデン、ザクセン、サクスコブルグ等諸連邦の選挙に於いて、社会主義者の成功を見た結果、諸新聞は激烈な反社会党的な主張を行う様になった。又帝国協会内の自由、保守両党員等は、社会党と戦う目的の檄文を発行し、現在、共通の危難に接するに当たり、市民はお互いに過去の衝突を忘れなければならないと主張している。
伊公錫総督会見論評 25日北京特派員発
北京日報は、24日伊藤公と錫総督と3時間に亘る会見が行われたとの電報を載せ、次の様に述べている。これは支那及び各国が満州協約に不満の気持ちを持っている事を知り、支那人及び外国人の悪感情を融和する為であるとしている。
解説:10月10日の記事「藤公満州行と米国」に見られる様に米国がこの協約には強い不満をもっており、この感情が大東亜戦争の源流と思える。
伊藤公北行 25日奉天特派員発
伊藤公は25日午前11時発、長春を経てハルピンに向かう。29日再び来訪、30日朝発、京奉線で営口に行く予定である。

 

10月27日
伊藤公殺害さる 26日ウラジオ特派員発
伊藤公26日朝ハルピン停車場にて、韓人の為に狙撃され絶命したとの報告があった。
解説:伊藤公は老体を押して初代統監として韓国国民の為に尽くした。日本一流の元老が韓国皇太子の巡行に、父親の様に付き添い、教え諭している次の記事にそれを見る事が出来る。
明治41年8月18日の記事「大阪に於ける韓太子」(大阪) からの抜粋
17日午前大阪に御到着の韓太子は午後大阪城に赴かれる事になり、天守閣に上られた。大小様々な煙突が林立し、黒煙が天に充ちている工業の大都を見下ろしつつ、何故この様に煙が多いのかと御下問された。伊藤太師は静かに商工業の大阪を説明し、一国の盛衰は商工業の発達如何にあり、英明な太子は、学を磨き、将来位に就く時には、大韓民国を導いて商工業を発達させ、国を富ませる事に依り社稷の隆盛を図らなければならないと教えた。
6連発にて絶命 内国電報(26日)
26日午後2時三井着電によれば、今朝伊藤公は、韓人の為に暗殺され、川上総領事、田中満鉄理事が負傷し、犯人は直ちに逮捕とある。
なお別の電報によれば、伊藤公は午前10時、ハルピン駅のプラットホームに下車した。その直後、歓迎の群衆に紛れていた一韓人が6連発の拳銃を手にするや否や、公爵目がけて狙撃した。公は胸部を貫かれて倒れたが、犯人は6発を連射して遂に公爵は絶命した。川上、田中両氏の負傷は軽いとあった。
伊藤公の護衛者 
伊藤公の満州旅行については、関東都督府より特に憲兵数名で護衛させたが、長春以北は、憲兵の護衛を撤廃し全く清国官憲の保護となった次第である。
解説:関東都督府は、1906年に旅順におかれ、関東州統治及び南満州鉄道株式会社の業務監督や満鉄附属地の警備を行う機関であった。
軍艦派遣(遺骸を迎える)  
遺骸は昨夕、長春まで帰着し、27日長春発、旅順に到着の予定である。海軍大臣は、佐世保鎮守府司令長官に向けて、伊藤公迎えの為、軍艦磐手を旅順に急派するよう訓令した。そして公の遺骸を載せた軍艦は、旅順より横須賀軍港に直航する事に決定した。

 

10月28日
伊藤公の臨終 27日大連特派員発
命中した弾丸は3発であり、3発目を受けて即座に倒れ、一言「仕舞った」と言って絶息した。直ちに列車内に運び込み、小山医師が皮下注射をした時、息を吹き返し、古谷、室田に対し、他人を退け二三の遺言を行った。終わって露国蔵相ココウゾフ氏が面会し、見舞いを述べ、犯人を逮捕した事そのと自白を述べたが、公は直ちに絶息した。
凶変と米国 26日紐育特派員発
伊藤公の暗殺事件は、新聞紙が挙って特報を大書した。同時に公爵の人物を称賛し、公を呼ぶに日本のビスマルクと称する者が多い。なお或る者は、韓人の日本に対する思想を一変させるに至らしめたと述べている。
英国人の同情 26日桑港特派員発
ロンドン電報によれば、英国人の全ては、他の欧州人と同様に、新日本建設者である伊藤公が凶手に倒れたとの報道を得て、恰も自国の大政治家を失ったかの様に悲しんでいる。日本大使館には、官吏、外交官その他の来訪者で一杯となり、電報で様子を問い合わせる者が無数である。
秋津洲に変更 内国電報(27日)
伊藤公の遺骸は磐手で送還する事を中止し、現在大連に居る秋津洲に27日に搭乗、送還する事になった旨、27日午後2時、当鎮守府に電報があった。
犯人の審理裁判 同上
ハルピンの犯人は、既に露国警官に逮捕され、昨日あたり我が日本官憲に引き渡された模様である。伊藤公の遭難は、ハルピン駅で起こり、ハルピン駅は、露国警察権の下にある。故に犯人は、露国の法律で処断されなければならないと言えるが、顧みればハルピンは、支那の一解放区として、我が日本の治外法権のある所である。その為犯人は、我が保護国である韓国の国民であるので、露国官憲は犯人をその手に捕えながらも、自ら処分する事を敢えてせず、これを我が領事館に引き渡した次第である。
秋津洲大連出発 
伊藤公爵の遺骸は、昨日午後10時40分大連に到着した。軍艦秋津洲は、同午後12時にこれを搭載して、大連を出発し、全速力で横須賀に直行する事に決定したので、海上が平穏であれば来る31日夜半、或は11月1日早朝横須賀に帰着する予定と言われている。

 

10月29日
英帝の哀悼 28日上海経由ロイター社発
英国皇帝は、伊藤公暗殺について、驚愕置く能わざるを説き、且つその親類に対し、深厚な同情を表した加藤大使宛ての親簡と共に特に式部官長をロンドンに送られた。
米国新聞の痛悼 28日上海経由ロイター社発
ニューヨーク、ヘラルドその他諸新聞は、伊藤公暗殺につき驚骸の意を表し、この為に日露間の親交に影響がない事を希望した。又欧州大陸の諸新聞も公に対して賛辞を連ねている。

 

10月30日
波斯内政順境 29日タイムス社発
テヘラン来電―ペルシャ各州の新知事等は、財政が窮乏する難しい状況にあり、秩序を回復する為の費用が少ないにも拘わらず、着々と厳密、激烈な手段を講じ、その為に盗賊は非常に減少した。
公果施政方針 同上
ブラッセル来電―植民大臣は、代議院に於いて演説し、ベルギーの官吏がコンゴの土民に対し、残虐な圧政を行ったとの報道は事実無根であり、世人の熟知する諸種の弊害は、既に調査した。又土民に対しては、漸次耕作地の所有権を許可する旨言明した。
解説:当初コンゴは国王の私有地であった。当時の植民地では、強制的な搾取はあたりまえであったが、コンゴでは、特に酷く、象牙やゴムの採集が規定量に達しないと手足を切断した。その為に欧州諸国から非難を浴び、1908年政府が国王から植民地を買い取っている。


10月31日
希臘水兵反乱 30日タイムス社発
アデン来電―ギリシャの少壮海軍軍人等は、現在の海軍行政に不平の念を抱き、反乱を起こした。その為反乱軍に属する水雷艇3隻は、政府見方の艦隊とサラミスに於いて激闘したが、反乱軍は敗北し、1隻は損傷、1隻はエルシアスに逃れ、1隻はボロス海軍鎮守府に逃れた。


 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

明治42年9月

9月1日
粤漢鉄道買戻 21日タイムス社発
英国下院に於いて、政府委員マキノンウツド氏は、英国政府は粤漢鉄道敷設権を再び買い戻す為、支那政府に百十万ポンドを支払う権限を香港政庁に付与したと言明した。
安奉線購地協議 31日奉天特派員発
20日から満鉄委員と清国委員との間に開始された安奉線土地買収協議は、今明日中に清国委員で組織する購地局章程を規定した後、土地買収に着手する予定であり、およそ3カ月で終了の見込みである。

9月2日
安微鉱山問題 1日上海経由ロイター社発
英国外相サー、グレーは、安微省鉱山採掘権に関する多くの質問に、次の様に答えた。清国政府が5万ポンドで、鉱山採掘権の回収を提議している事は事実である。しかし現在英国政府の考慮している事は、価格の問題ではなく、英国臣民の権利問題である。そしてこれは、局外者が考える程簡単な問題でなく、英国政府が、はるか以前から考慮している問題で、妥協によって解決されると思われる云々
ハリマン氏軽快 31日上海経由ロイター社発
ハリマン鉄道王は、病気に冒されて以来沈黙を守ってきたが、昨日、自分から門に出て、病気は決して重病ではない旨を告げて、新聞記者が退去する事を求めた。その為新聞記者は、同家付近のホテルを引き上げた。

 

9月3日
日清交渉内容 2日北京特派員発
今回交渉に当たった梁敦彦氏と関係があると称せられる北京日報の発表した内容は次の9項である。
1 日本は間島に於いて支那の主権を承認する。
2 間島在住の日韓人は、日本政府で保護する。
3 間島で事業を行う日本人は清国がこれを保障する。
4 撫順、煙台の炭鉱は、日本が租借する事を許し、租税を納めさせる事。
5 南満鉄道及び京奉鉄道の駅を奉天城に設け、連絡を便利にする。
6 宝庫門鉄道及び満鉄線と平行の鉄道は、日本の承諾なくして敷設しない事
7 大石橋より営口までの鉄道を日本は、新市街まで延長して交通の便を図る事
8 安奉鉄道の守備及び警察問題は他日商議する事
9 本渓湖炭鉱問題は、奉天で商議する事

 

9月4日
ベルリン来電―1908年度獨逸帝国財政が示す最終の数字によれば、その不足額は6百万ポンドに達した。結局公債によってこれを補てんするしかないと思われる。
英国予算難 同上
英国の増税反対運動は、継続中である。タイムス社説によれば、もし上院がこの予算案に不賛成と決定する事になったならば、同院は一切修正を加えず、完全にこれを否決するであろうとの見方が増加してきており、特に内閣員の中にも同案の否決を予想する人々もあるとの事である。
対清政策論評 3日上海特派員発
東亜ロイド紙は、社説に於いて日本の満州政策を論評して、桂候が、深く清国を怒らせなくて、満州の難局を解決する遣り口は、候の驚くべき外交手段を示すと同時に、又冷静に且つ頭脳透明な日本人の政策の特徴と見る事が出来ると言明した。

 

9月5日
波斯大赦 4日タイムス社発
露都来電―英露両国は、ペルシャ新政府に向かい、一般国事犯等に対する大赦を行う様主張し、遂にこれを容れさせた。諸新聞は、この外交的成功を、現在盛んに称賛中である。
解説:ペルシャの北は露国の、南は英国の勢力下にある。
日本実業団歓迎 4日上海経由ロイター社発
諸商業会議所を代表する日本実業家46名は、日米間の友好及び商業的関係を強固にする為、3か月間滞米する予定でシャトルに到着し、ワシントン州知事及びシャトル市長の歓迎を受けた。
摩洛哥惨刑廃止 同上
モロッコ王ムライ、ハフィドは、外国領事の勧告に答えて、今後惨刑を廃止する事を誓約した。
解説:8月29日「摩王の惨虐」の記事に、惨刑の様子が描かれている。

 

9月6日
博覧会日本日 4日シャトル石橋特派員発
4日は、博覧会日本日である。在留日本人団体の盛大な行列があった。我ら一行も旅館前にて、これに加わり、博覧会場に到り、日本館庭園に於いて園遊会式午餐の供応を受け、3時半から場内集会堂にて歓迎会が開かれた。博覧会総裁ギルバート氏及びサンフランシスコ商業会議所ダラー氏の歓迎の辞があり、渋沢、神田、大谷、西村諸氏がこれに答えた。(一部抜粋)
解説:昨日の記事「日本実業団歓迎」の関連記事である。

 

9月7日
日清協約内容続報 6日北京特派員発
満州懸案協約 
正確な筋より得た日清協約の要領は次の通り(長文の為項目のみ)
第1条 清国政府が新民屯より宝庫門にいたる鉄道を敷設する件
第2条 大石橋と営口間の南満州鉄道支線を運転する件
第3条 撫順、烟台炭鉱の件
第4条 安奉線鉄道沿道の鉱山採掘の件
第5条 清国が京奉鉄道線を奉天城下まで延長する件
間島協約
日清両国は、豆満江が清韓の境界であることを認め、間島問題に関し7か条の協約を決定した。(長文の為項目のみ)
第1 清韓両国の境界
第2 解放し各国人の居住、貿易を許す地域
第3 韓国人の豆満江北部での居住
第4 豆満江北での清国法律の施行
第5 韓民の土地財産、旅行、産米等の販売
第6 清国が将来敷設する𠮷長鉄道
第7 日本領事館の設立
解説:9月3日「日清交渉内容」の関連記事である。
日清協約不賛成(米国新聞の態度) 6日タイムス社発
ニューヨーク来電―ニューヨーク、トリビューン紙は、満州に関する日清協約に不賛成の意を表し、同協約は、日本の同方面に於ける鉄道独占を示していると述べ、ニューヨーク、ヘラルド紙も同協約を評して、清国は止むを得ず各種の重要な項目について、悉く譲歩したものであると言明した。
解説:これが太平洋を挟んで、日米対立の原点と思われる。南満鉄道は、9月9日死去する米国の鉄道王ハリマンとの共同経営の話が一時あった。

 

9月8日
日清協約評 7日上海経由ロイター社発
米国に於いては、満州協約に関し、不賛成の論評が行われ、これは満州に於ける各鉄道の独占権を日本に与えるものであるとの意見が盛んに発表されている。
ロンドンモーニング、ポストは同協約を評して、両国間に於ける悪感情と疑念取り除くものであり、英国は、この様な変化を歓迎する。しかし日清間の友愛協同は、日本側では清国の苦境とその感情とを理解し、斟酌する事によって、又清国側では、具体的な改革の必要性を理解できる様になって初めて、望ましいものとなるであろうと言明した。
米艦隊出発 同上
8隻の装甲巡洋艦で編成された米国太平洋艦隊第1艦隊は、6カ月間にわたる極東巡航の為に,サンフランシスコを出発した。

 

9月9日
波斯廃帝年金 8日タイムス社発
ペルシャ諸大臣は、国庫が欠乏し、財政困難な状況であるにも拘わらず、前ペルシャ皇帝モーノット、アリの年金支給協定に調印しようとしている。協定の内容は、廃帝が直ちにペルシャを退去する事を条件として、終身年金10万トマン(約39万円)を支給し、又従前の負債に対する責任を免れる事としている。
日清協約評 8日上海経由ロイター社発
ロンドンタイムスは、日清間の問題を無事に解決した摂生王の判断力及び勇気と伊集○梁敦彦の手腕とを称賛し、今や両国が協同布設によって、鉄道競争問題を実際的に解決する道を開いた事を信じると説き、又列国は、賢明正直に適用するという誓約だけを得るならば、必ずしも清国の輸入税増加に反対するものではないと考えた。

 

9月10日
日土訂交決定 9日上海経由ロイター社発
テレグラフ紙のコンスタンチノープル通信によれば、日本とトルコ間で外交関係を結ぶ件の協議は、既に終了した。そして日本は、列国に対し譲歩的約款を日本人にも適用するよう求めた要求を自ら撤回した。
軍備制限協約 8日ベルリン特約通信社発
英国首相アスキス氏は、下院に於いて海軍軍備に関して、獨逸と協約が出来るかどうかの質問に答えて、英国こそこの様な協約を主張した発起人であると言明した。
(英国首相アスキス氏がこの様な宣言を行った所以は、先年英国は、半官的に獨逸に対し、軍備縮小協約を締結する事を提議したが、獨逸側では、それが部分的、片務的であるとの理由でこれに反対した。最近獨逸に於いて軍備制限協約論が再燃したのは、昨日のロイター電報で見る通りである。)
解説:4年後に第一次世界大戦が始まっている。獨逸は英海軍に対抗して、危険艦隊思想と言われる艦隊を整備しようと建艦競争を挑んでいる。

 

9月11日
鉄道王逝去 9日紐育特派員発
エドワード、エッチ、ハリマン氏は9日午後3時30分、ニューヨーク州オレンジカウンチーのアーデンにある別荘に於いて逝去した。(ハリマン氏は、米国鉄道業者として、ヒル氏と並び称される人)
解説:9月2日「ハリマン氏軽快」の記事があったが逝去した。日露戦争後、ハリマンは来日し、桂首相とロシアから獲得した南満州鉄道を共同経営する約束を交わした事がある。この案は小村寿太郎の反対で破棄されている。
ボイコット鎮撫 10日上海経由ロイター社発
上海道台は、日貨ボイコットを厳禁し、且つこれを主張する者若しくは主張者の為に檄文を印刷するものを逮捕する旨を宣言する長文の論告を発した。
上海市警吏は、如何なるボイコットも起こらない様に警戒をする様命令を受けた。
解説:道台とは行政長官を意味する。

 

9月12日
英人の清国攻撃 11日上海経由ロイター社発
サー、リスター、カエは、ロンドンタイムスに寄稿し、清国が安微省銅官山鉄鉱等に関し、信義を破った事を攻撃した。余は、英国政府が他の妥協を協議する場合に、我らの権利をも討議の問題とすることなく、飽く迄も在清国公使ジョルダン氏の執った強硬的態度を維持することを希望する。又もし我が鉱山採掘権の売り戻しを強いられる事になったなら、相当な代価の支払いを主張しなければならないと言明した。
ロ卿の予算反対 同上
ロオスベリー卿は、グラスゴーの実業家大会に於いて演説し、現政府の予算案は英国の将来を溶鉱炉の中に投げ込み、これを危険にさらす一革命に外ならない、と同案を法律としない事が国民の利益であると言明した。

 

9月13日
ロ卿の進退 12日上海経由ロイター社発
ロオズベリー伯は、グラスゴーに於いて、現内閣の予算案に反対の
演説をする前に、自由同盟会長の地位を辞した。
北極占領 同上
ワシントン来電―ベアリー氏は、北極に米国の国旗を立て、米国大統領の名に於いて極地全部を占領した旨を電報によって国務省に正式に通知した。
解説:北極探検でのベアリー氏とクック博士の論争は有名であるが、その始まりの記事である。

 

9月14日
クック氏攻撃 13日タイムス社発
ニューヨークヘラルド紙は、ベアリー氏が去る8日付で送った通信を掲載した。同通信によれば、クック氏は、エタアに於いてホイットニ氏に対し、その北方に於いて、新陸地を発見した事を語った。但しこれとて1906年バアリー氏が進んだ緯度以北ではない。又北極に到着した事については、一言も語っていないとの事である。
英国総選挙予想 13日上海経由ロイター社発
英国統一党の党首達は、多分11月に行われるであろう選挙に於いて、少なくとも3百名の同党員が選出され、その異分子よりなる名義上の多数党に対し、能く下院を支配する事ができるであろうと予想した。

 

9月15日
北極探検員数 14日タイムス社発
ニューヨーク来電―バツロル、ハーバーから来た報道によると、北極探検家ベアリー氏に随行した者の言を根拠として、ベアリー氏は、ただ1名のエスキモーを伴って、北極に到達した。その他の随行者は、これを南方のある地点に残留させた。
解説:探検家ロバート、ベアリー氏は、1809年4月6日北極点に到達したと主張している。この記事は、その際エスキモー1名のみを伴っていたと書いている。これは、北極到達の証人としては、エスキモー1名のみを意味する
布哇海軍船渠建造 14日上海経由ロイター社発
ハワイに於ける一大海軍ドック建造の契約がワシントンに於いて調印された。
解説:米海軍が、日本に対抗しハワイに大規模な海軍基地の建設を始めた。

 

9月16日
ボイコット 15日奉天特派員発 満州特電
奉天に於けるボイコットの状況を見ると、各地より益々多くの檄文が来て、多少商業界に影響を与えており、物品を買う時、一々何処の国の製品であるか聞き、日本品は買わない者が居る。清国人特に無知な農民は、日本品を避ける傾向があり、一般商人は大いに苦痛を感じている。一般清人は安奉線問題の由来を知らないのに対し、一部排外者は日本の行動を以て清国の主権を害するものとして、巧みに無知の清人を教唆している。
解説:日露戦争時、日本が安東(朝鮮北部にある丹東)と奉天(現在の瀋陽)を結ぶ為に軍用鉄道を設けていたが、安奉線問題は、その鉄道を拡張し正規の鉄道としようとして発生している。
この問題に関し、8月8日英国の見方、10日露国の見方、11日米国の見方の記事がある。

 

9月17日
ベアリー氏談 15日上海経由ロイター社発
北極探検家ベアリー氏は、バットルハーバーに於いて新聞通信員と会見し、北極に到着したのは、予のみである。予はこれを証明する。予はクック氏が北極に到着してない確証を持っている。その為クック氏が報告を発表するのを待って、予も所見を一般大衆に発表し、以て諸科学団体の判断に任せたいと望むと言明した。
解説:9月15日の記事の続報 クック氏と北國点に到達したのは誰かの論争の始まりである。
摩洛哥の酷刑 同上
注意を引くに足る一会見談の伝える所によれば、フエツ駐在列国領事等は、公式に囚人待遇に関する抗議をモロッコ王に提出しようとしている。これより先モロッコ王は、この件について返答し、朕が手足切断の様な刑を執ったのは、寧ろ死刑より善き為であるが、外務部の奏請により15日裁可を経て停止している。殊にモロッコ人等は真に開化していないので、欧州に於いて普通でない刑罰、方法を用いるのは止むを得ない所がある。しかし同一の事情が再び起こらず、この様な刑罰を繰り返す事がない事を希望すると説いたそうである。
解説:9月5日「摩洛哥惨刑廃止」の続報である。

 

9月18日
東洋移民輸入論 16日上海経由ロイター社発
カナダ太平洋鉄道会社の重役は、首相ラウリエル氏と東洋移民輸入問題を論議した。カナダ首相は、これに対しカナダが過去数年間東洋移民を歓迎しなかった事実を指摘した上、ともかく熟考する旨を約束した。
クック氏不信用 同上
北極探検家ベアリー氏の明言する所によれば、氏はクック氏が僅か2区の航進を終わって引き換えした旨クック氏の率いていたエスキモー人より聞き知ったとの事である。
解説:昨日の記事の続報 クック氏はベアリーより早く、1908年4月21日に北極点に到達したと主張している。
ハリマンの遺産 同上
ハリマン氏は遺言を以て、全財産をその未亡人に与えた。その価格は5千万ドル乃至1億5千万ドルと概算される。
解説:9月11日鉄道王逝去の続報である。

 

9月19日
ベ氏の決心 18日タイムス社発
ツタワ来電―北極探検家ベアリー氏は、タック氏の北極探検行を否定する証拠を国際的団体に提供する用意がある事を暗示した。
ボイコットと日英 18日上海経由ロイター社発
タイムス上海通信員は、揚子江に於ける英国諸船舶会社のボイコットが何ら制止を受けていない事実と、これと異なり、学生の主導で行われている同様な排日ボイコットが、日本の圧力によって道台より干渉を受けつつある事実とを対照し比較している。
解説:9月11日「ボイコット鎮撫」の記事がある。

 

9月20日
大統領と渡米団 18日デユールス石橋特派員発
19日正午ミネアポリスに於いて、大統領に謁見の予定であるがミネアポリス州知事が危篤の為、万一の事があるならば中止となる可能性もある。
日貨排斥制抑 19日天津特派員発
日貨排斥運動の為、その後支那街にある日本商店はこの影響を受けているが、清人側の情報によれば、総督は我が領事の警告により、天津人民の日貨排斥に対し、南北巡警総局に命じて各省に厳命し、檄文の配布を禁止したとの事である。
解説:昨日の記事に関連した記事である。

 

9月21日
仏国の陸軍反対運動 20日タイムス社発
パリ―来電―仏国に於いては、陸軍反対運動が依然として継続し、一連隊旗が汚された。
解説:第一次世界大戦まで5年、この様な状況ではドイツに対抗できない。
英国予算妥協説 20日上海経由ロイター社発
ニュース、オブ、ゼ、ウオールド紙の報道によれば、大蔵尚書ロイドジョージ氏は、明日下院に於いて、財政案中、所得税に関する項目の下に、土地所有者に対して重大な譲歩を行う旨を発表する事になっている。これはロイドジョージ氏が現在調停者として尽力しているオンスロオ伯以下代表者と会見した結果である。多分この為に政府と上院との妥協は成立する事になると信じられる。
実業団と大統領 20日横浜直通ロイター社発
ミネアポリス来電―米国大統領タフト氏は、昨日日曜日、商業クラブの昼食会に於いて日本実業団と会見し、且つ日本天皇陛下は親密にして誠意ある米国の友人であると称して、陛下の為に乾杯を挙げた。

 

9月22日
西班牙の摩洛哥征伐 21日タイムス社発
マドリード来電―スペイン軍は、1万5千の軍隊を以て西部モロッコ土民の征伐に着手した。堡塁の砲撃は着々と成功し、住民1千の一村落は既に降伏した。又スペイン兵は、半島を一方の海より他方の海に達する迄占領し、スペイン騎兵の卓抜な行動は大いに称賛を博し始めている。
仏軍旗侮辱事件 同上
仏国の大衆はマコンで起きた事件の為に激しくその心を動かした。同地では、演習後、一連隊旗が盗み出され、便所に投入された。陸軍反対派の首領ヘルウ氏はパリ―の一集会に於いてこの行動を大いに称賛し、愛国心という観念も全てこれと同様に汚辱を被る事を希望した。
解説:昨日の記事「仏国の陸軍反対運動」の続報
摩洛哥の通牒 20日ベルリン特約通信社発
モロッコ政府は、タンジールの外交団に向け、スペインのリーフ山土民征伐に関し、通牒を送った。この通牒は列国の干渉を要求したものと思われる。

 

9月23日
仏国非陸軍運動 22日タイムス社発
パリ―来電―仏国の陸軍反対騒動は、依然として継続しており、アロンソン及びプアルの兵営は、排陸軍派の攻撃を受け、兵士若干名が負傷した。
解説:連日の様に報道されている反軍記事である。これではフランス陸軍はドイツに対する抑止力とはならない。第1次世界大戦まで5年
クック博士到着(未曽有の盛況、その談話) 21日ニューヨーク来電
北極探検家クック博士が21日午前10時到着した。船で途中まで出迎えた者3千人、ニューヨークに近づくと停泊の各汽船は一斉に汽笛を鳴らし、埠頭は幾万の人で埋められた。
クック博士は、世人が探検について博士を疑う事に対し、予はベアリー氏に面会し、意見を交換するまでは何事も言わない。その証拠となるべきものは所持している。全ての証拠書類は、コペンハーゲンの大学に収め、然る後世上に発表するつもりと語った。(一部抜粋)
解説:有名な北極探検論争についての、ベアリー氏とクック氏に関する記事である。関連記事が9月17日、18日、19日にある。

 

9月24日
米国の公使演説 23日上海経由ロイター社発
ニューヨーク来電―駐清公使クレーン氏は、送別の宴に於いて次の様な演説を行った。
清国は、現在解決を要する大問題を有するが、同国は他の干渉さえなければ十分に単独でこれを解決する能力を持っていると説き、更に清国は内国発展の為に外国の資本、材料を必要とするものが多く、米国はこの割り前を得る決心を有すると言明した。
英独戦争論 22日桑港特派員発
ロンドンメール社主ノオスクリツフ卿、タイムス編集長ベル氏が当地に来着し、英独戦争は避ける事ができないと断言して次の様に述べた。
英独戦争の避ける事が出来ないのは、あたかも独仏又は日露戦争の避けられなかったのと同様である。両国の関係は、単線鉄道を2個の列車が疾走するに似ているので、衝突を免れる事は出来ない。これは、獨逸人口の増加が新たに領土を要し、工業の発達が新市場を要する為である。しかもドイツの垂涎する所は英国の国旗が既に翻る所である。英独戦争を見るのは、獨逸が現在計画の海軍が完成する時であろう。獨逸の現在の位置は、百年前のナポレオンの位置に似て、世界の公敵である。

 

9月25日
獨逸陸軍演習と運輸 24日タイムス社発
ベルリン来電―今回の陸軍演習に際し、兵士9万7千人、馬匹2千8百頭、輜重車179両、その他諸器具632トンを1日汽車85両で運搬し、一般列車の運転には何らの影響も与えなかった。
解説:獨逸の作戦は、まず東部戦線でロシア軍を叩き、取って返してフランス軍を叩くという有名な「シュリーフェン計画」であった。この為に東部から西部に如何に早く大軍を移動するかが極めて重要な事であった。
クック氏の栄誉 24日上海経由ロイター社発
ニューヨーク市参事会は、クック氏に市民権を付与し、正しく北極を探検したものとして氏を待遇し始めている。
解説:連日の様に報道されている北極一番乗りであり、一時的にクック氏が優位に立った。
排英ボイコット 同上
ロンドンタイムスの上海通信員は、去る18日付を以て、清国に於ける排英ボイコットを中止させる為に英国政府は如何なる措置を取ろうとしているのかと質問した。外相サー、グレーは、予は駐清公使ジョルダン氏より、現在までに何等の通報にも接していない。何れ相応しい時期に、同公使の報告を受けるであろう。しかしこの様な場合に於いて、援助無き為に英国の商業が日本人の商業より多く困難するというのは、根拠がない推測である。最近数年来のボイコットに於いても、米国人及び日本人は、英国人よりも余計に損害を受けたと言明した。
解説:米国は清国人入国禁止令によって、日本は安奉線鉄道問題でボイコットを受けている。

 

9月26日
露国公使波斯着 25日タイムス社発
テヘラン来電―ハートウツグ氏の後を継ぎ、ペルシャ駐在露国公使に任命されたバクロウスキー、コチエル氏は、本日テヘランに到着した。氏の到着は、英露公使館に於ける慇懃で且つ調和的な関係が今後も継続する事を示すものと認識される。
解説:ペルシャの北半分は露国の、南半分は英国の勢力範囲である。
北極探検評 同上
ウイーン来電―ベルリン海洋博物館監督ペンク氏は、北極探検に関し演説を行い、余はベアリー氏の言を最も信憑性の高いものと思考する。天文的観測は、信頼し難いものがあり、彼のクック氏は、太陽が24時間同一高度にあったと称して、北極に達したと発言したが、この様な事は不可能である。又エスキモー人の証言は何等の価値もないと説いた。
解説:連日報道されている北極論争である。
摩洛哥征伐終了 24日ベルリン特約通信社発
スペイン軍のモロッコ、リーフ山土民攻撃は、近日中に終了する予定であるが、同地占領は、今しばらく継続すると思われる。なお外国使臣等は、モロッに於けるスペイン軍進撃の遣り口に付いて干渉する事はないと思われる。

 

9月27日
ハドソン発見祝典 25日ニューヨーク特派員発
待ち兼ねていたハドソン発見式典は、空前の盛況であり、祭典の式は、午後3時より始まった。参列の各国軍艦は、45万トンであり、見物船がハドソン川を埋めた。高峰博士は、在ニューヨーク日本人を代表して、今回の祭典を祝する為、桜樹1千5百本を寄贈する文書を読み上げ、これに対しウッド、フォード将軍は、桜の花は日本人の精神であると非常に興味ある所見を述べた。
解説:ハドソン発見式典は、フルトンがハドソン川で蒸気船のテストに成功してから100年、英国の探検家ハドソンがハドソン川を発見して300年を記念したお祭りである。この時日本人会が桜を送る事になり、高峰博士が代表して寄贈文を読み上げている。しかし実際にはこの桜は、貨物船の遭難で届かなかった。1912年、有名なワシントンへの桜と同時に、再度ニューヨークへも輸送され事になり、4月植樹式が行われている。
ここに登場する高峰博士とは、タカジアスターゼの発明で有名な高峰譲吉博士であり、タカジアスターゼの独占販売権を持つ三共(現在の第十三共)の初代社長となっている。
1913年帝国学士院会員
久邇宮妃殿下 同上
本日ハドソン河の河畔にある高峰博士の宅に赴かれ、長崎夫人と共に軍艦の通峡を御覧になった。夜に入り、市中は不夜城となり、今夜一夜ニューヨーク市が費やす電灯は、150万燭光である。

 

9月28日
獨逸戦闘艦浸水 27日上海経由ロイター社発
ドイツの第1「超ドレッドノート型」戦艦が昨日キールに於いて進水し、ヘルブランドと命名された。又第2の姉妹艦も今後進水し、1911年から実任務に就く予定である。
解説:9月24日「英独戦争論」の関連記事である。 
ハドソン祝祭 同上
ニューヨーク来電―ハドソン河発見3百年祭とフルトン氏汽船成功百年祭との為に、約2週間に亘り挙行するハドソン、フルトン祝祭が開始された。軍艦の航行があり、祭礼は絶大な規模を以て行われ、諸外国政府は、英国巡洋艦隊以下諸軍艦に依って、それぞれ代表された。
解説:昨日の記事の続報
三国同盟現情 同上
ウイーン来電―半官報フレムテンブレット紙は、ドイツ宰相ホルウエヒ氏の訪問が、過去30年間のオーストリアとドイツ両国が執ってきた同盟政策を強固にした。両国とその第三国同盟との関係は、その欧州政策の揺るぎない根拠となっている。従ってこの意義を基礎とするイタリアとの関係は、確固として今後も変わる事がないであろうと説き、且つ最近に於けるこの実証を引用した。
解説:第一次世界大戦に際し、イタリアは、ドイツ、オーストリアと三国同盟を結んでいたにも拘わらず、結局英仏露側に立った。

 

9月29日
東洋移民減少 28日タイムス社発
オタワ来電―カナダ政府の発表した移民報告によれば、1908年度に於いて日本移民は、昨年度に比して減少し7,106名であった。又インド移民は、前年度の2,623名に対し1908年度には、僅かに6名に過ぎなかった。
日清協約と米国 28日桑港特派員発
米国政府は、10年前に於ける故ヘー氏の協約に基づいて、清国の門戸開放主義を主張する為に満州に関する日清新協約について、日本政府に抗議する準備を行っている。この為に現在詳細な報告を東京及び北京より収集中である。ワシントンの外交社会の意見は、日清協約によれば、日本は無期限に南満州に於いて鉱山の採掘権を獲得したが、これは、故ヘー氏が列国と協商して以来、米国が取ってきた門戸開放主義を危殆にさせるものであると主張している。(一部抜粋)
解説:ここに大東亜戦争の源流をみる事ができる。
日貨排斥の訓令 28日奉天特派員発
日貨排斥に対し今まで、清国当局に於いては教育会、その他の演説に対し何等の取締を行わず、その態度は非常に曖昧であったが、今回政府の訓令により、奉天民政局は、外交問題は、政府に方針があることなので一般人民は、扇動者の言に迷う事がない様にとの告示を出した。因みに廃貨運動は最近下火となっている。


9月30日
波斯廃帝退去 29日タイムス社発
テヘラン来電―国外に退去する事を条件として、終身年金を受ける事を決定した前ペルシャ皇帝マホメッド、アリ―は、「レシト(テヘランの西北170マイルに位置し、裏海に臨んだ都市)」に到着した。又先般首相に選ばれたナスル、ムルク氏が新政治の成功如何を危惧し、就任を受けなかった結果、シバダル氏が首相に任命された。
解説:ペルシャの北半分はロシアの勢力範囲であり、皇帝はロシアに亡命する事が決まっている。レシトとは、グーグルの地図でみると、カスピ海に面したレッシットと思われる。
北極探検論争 29日上海経由ロイター社発
ベアリー氏は、クック氏が決して陸地の見えない場所に進んだ事が無いと反復陳述し、且つクック氏の言う様な旅行の速力は不可能であり、その使用したと言う橇、雪靴も実用に供しない種類であると言明した。然るにクック氏は、これに答えて、余の橇は、ベアリー氏が帰途弓矢を造るのに用いられた。ただその残部と雪靴とは、飢餓した犬に食われたらしいと公言した。
解説:9月の初め頃から、この論争はタイムス紙等で報道されているが、この項では、9月13日「ロ卿の進退」から掲載した。

 

 

 

 

明治42年8月

81

革命運動鎮圧 31日桑港特派員発

バルセロナ軍務知事よりマドリッド参謀本部に達した電報によれば、同地方革命軍は降伏し、その頭領は軍法会議に於いて審議中であり、多分斬首される様である。又カタロニア地方の革命軍は依然として盛んで、リスカヤ地方の革命煽動もますます盛んであると言われている。なおフィケラス地方の秩序は、漸く回復し、多数の反徒を捕縛、投獄した。

欧州驚動 同上

  • モロッコに於けるスペインの大敗は、非常に欧州諸国を驚かし、且つ憂慮させ始めている。パリのある新聞は、これを以て欧州文明に危険を与えたものなので、モロッコ人に報復すべきであると叫んでいる。しかし多くの新聞は、スペイン政府の腐敗を挙げて、欧州諸国が同国を援け、速やかに時局を解決する必要を説きつつある。

 

83

 西班牙の損害高 2日タイムス社発

 79日以来モロッコに於けるスペイン軍の損害は、将校以下約1,090名である。ムール人は727日の戦いで200名を失った。

西班牙騒動騒乱別報 1日上海経由ロイター社発

 バルセロナは平穏となった。市街の至る所が爆弾で破壊された。軍隊及び暴民の死亡者は1,000名、入院者は25,000名と思われる。

 

84

 米国の太平洋艦隊巡航 3日タイムス社発

 ワシントン来電―海軍省は、太平洋艦隊に属する8隻の装甲巡洋艦に対し、95日サンフランシスコを出発し、ホノルルを経てマニラに航行するよう命令した。内2隻は香港に、2隻は呉淞に、2隻は神戸に、2隻は横浜に、何れも来年正月を以て航行するよう命令した。

 米国太平洋艦隊増遣 同上

 ニューヨーク来電―ニューヨーク・ヘラルド紙の報道によれば、太平洋沿岸に配置される予定の装甲巡洋艦は16隻で編成され、艦隊は既に組織されたと言われている。

 波斯と露西亜 同上

 露都来電―ペルシャ派遣隊司令官リアコフ中将、その他の将校は、引き続きテヘランに滞在して、ペルシャ政府の為に尽力すべき旨、その筋から発表された。なおペルシャ政府は、露国と最も親密な関係を保つ為にできる限りの力を尽くしつつある。

 

85

 英仏露の親交 4日タイムス社発

 パリ―来電―英露両帝の乾杯時の言葉に対して、仏国新聞は、筆を揃えて非常に満足の意を表している。新聞は、英露協約から受けるであろう仏国の利益を指摘し、且つ害心のあるドイツ人が最初モロッコ問題で英仏親交が破れるであろうと期待し、次にアジアに於ける英露の部分的競争は、決して終止しないであろうと推断したが、今や二つともその観察が外れた事に失望したのを見て、愉快に堪えずと論評した。

 西班牙騒乱鎮静 同上

 バルセロナ来電―当地は、最早平穏であり、市民はその職に復帰した。今回の騒動で死亡した者百名、負傷者千名と推測される。

 

86

波斯廃帝年金 5日タイムス社発

 テヘラン来電―ペルシャ政府は、先に廃帝モハメッドに対し、年金5千ポンド支給に内定したが、廃帝はこれを不足として抗争していた。しかし今回年金額は、15千ポンドに決定したので、廃帝は、この金額に満足し、いよいよ2週間以内に露国に出発すると思われる。

 ムール人征伐 同上

 スペイン兵達は、モロッコのマリーヤの鉄道建造物に沿って、仮兵営を造り、防御線を構築したが、ムール人によって、この線を破られ、スペイン軍の手に回復されたものは、その一部に過ぎず、ムール人等は、再び盛んに戦闘を開始し始めている。

 解説:ムール人は、モロッコ付近の遊牧民であり、何回が報道されている様にスペイン軍が散々な目に会っている。

支那豚肉佳良 5日上海経由ロイター社発

 新たにロンドンに到着した冷蔵支那豚肉を検査したロンドン商人は、その肉が良好な状態にあると説明し、又鶏卵等も同じく良好であると述べ、今回の輸送に於ける様な状態と性質を維持する事ができるならば、同貿易の将来は有望であると報告した。

 

87

川漢借款と米人 6日タイムス社発

 ニューヨーク来電―米国人の川漢鉄道(せんかん)借款加入に関する協議は、円滑に進行中である。米国銀行家等は、清国政府が米国の要求が正当であると承認した為、同政府との直接協定に依り、英独仏三国の資本家と均等に、この借款募集に応じる事が出来ると確信した。

 解説:川漢鉄道の問題は、618日から報道が始まり、22日、23日、24日、73日、20日、26日と報道されている。618米国の川漢借款談判によると米国銀行団が英独仏に遅れて談判に参加している。7月26日獨逸銀行の陰謀では、獨逸の利権争いが見える。

 タイムス日清関係論 同上

 ロンドンタイムスは、日清関係に関する社説を掲げ、両国間の交渉が、不穏な情勢を示し始めており、特に清国の対日態度が変化してきたのを深く遺憾とし、そもそも今回の紛争事件の裏面には、大きな経済的、政治的、軍事的争点が潜んでおり、この点から考えると、両国の紛争は、上手く適切な落着を見なければならない。蓋し日清両国にとって最高の利益は、極東の平和を乱さず、能くこれを維持する事にあると言明した。

 解説:当時の韓国情勢 86安奉線と鴨緑江架橋工事の記事によると、「安奉線」の修築は、清国政府の回答があると否とに拘わらず、いよいよ来る9月より全線を起工する事になっており、この問題に関する記事である。

 クリート問題 6日上海経由ロイター社発

 トルコに於いては、クリート問題に関し、人心が大いに激高している。トルコ政府は、更に4日間待った後、強力に在クリートギリシャ将校の召喚を要求するものと伝えられている。

  

88

 タイムス安奉線論評 7日タイムス社発

 ロンドンタイムスは、安奉線に関する日本の措置を論評し、日本が満州鉄道に関する決意については、これを驚く人は誰も居ないであろう。又日本の友人で、恐らくこれを非難する様な事はないであろう。蓋し日本にも多少の過失がないとは言えないが、由来満州に於ける同国の地位は、一大戦役に於ける多大の犠牲に対する二三の確固たる報酬の一つであると記憶しなければならないと喝破し、更に清国に向かい、他の強国と結び日本に反抗しようと企てる事がない様に警告し、この様な事は最も危険な災いを内包するものである。思うに清国が改革を決行するに当たり、その最良の親友であり、指導者であるのは矢張り日本にならざるを得ないであろうと言明した。

 解説:昨日の記事「タイムス日清関係論」の続報である。 

 布哇罷工復業(無条件にて) 6日桑港特派員発

 ハワイ日本人同盟罷工者は、いよいよ昨日無条件で復業したとの報があった。

 解説:度々報道された数か月にわたる罷工が失敗に終わっている。

  

89

 安奉線改築論評 支那特電8日上海特派員発

 「チャイナ、ガゼット」は、昨夕の社説に於いて、安奉線について、次の様に論評した。

 日本の決意は重大であり、その結果には大きな影響がある、日本は今回の行動によって、その満州政策を宣言し、明らかにしたと云う事ができる。

 日本が詳細な計画を以て改築しようとする同鉄道は、その戦略家が、満州の一時租借を永久の占領と変え、同地を朝鮮同様にしようとする大計画の一部に外ならず、満州は完全に日本の左右する所となり、清国は永久に奉天を失う事になる。(一部抜粋)

 解説:昨日の記事の続報

 

810

 安奉線と露国 9日タイムス社発

 露都来電―半官報ノウオエ、ウレーミヤ紙は、安奉線の改築に関し論評を行い、清国に対する日本の通牒は、宣戦布告を清国に挑んでいる姿であり、清国が屈服する様な事があれば、速やかに朝鮮と同様な境遇に陥る事になるであろうと説いている。

 又プールスガゼット紙は、非常に驚愕した様子で、我々は日本がこの挙を行うに至った背後には、露国の注意を極東に集中させようと希望する外国の勢力が伏在している事を認めると言明した。しかし官憲側は、むしろ希望に満ちており、東京と北京に於いて平和的尽力を試みようとしつつある。

 土耳其の要求 9日上海経由ロイター社発

 アデン駐在トルコ公使は、ギリシャに対し口頭で、クリイト島に野心がない事を宣言する様要求し、且つこの要求に対する回答を適当な時期に行う様求め、回答がない場合には、公使は永久の休暇を取り、退去する旨言明した。

 

811

列国の対土勧告 10日タイムス社発

 コンスタンチノーブル来電―トルコ政府がギリシャに対し、クリイト島に対して野心が無い旨を宣言すべしと猛烈に要求した件に関し、クリイト保護の任にある露、仏、英、伊4国の駐トルコ大使等は、トルコ政府に対し、今少し温和な態度を執るよう求めた。

 解説:昨日の記事の続報

 西班牙の形勢 同上

 スペインのバルセロナよりの報道によれば、同市に於いて現在一大同盟罷工の準備が行われつつある。これは、先日の動乱に際し、逮捕された面々が、依然として禁固中である為、これに対し抗議する目的である。これに対し陸軍司令官等は、極めて厳格な鎮圧策を執る意志を表明し、略奪行為があるものは、即座に銃殺する旨宣言した。

 解説:7月29日「西班牙の非戦党活動」で報道されて以来、連日の様に暴動に就いて報道されていたが軍により鎮圧された。

 米紙と安奉線論 9日桑港特派員発

 9日朝のサンフランシスコ、クロニクル紙は、満州は清国の領土であるのに日本が自由に鉄道を改築する事は不法であると極論した。

 解説:米国は、8月8日「タイムス安奉線論争」の英国の見方と逆の見方をしている事が分かる。

 

8月12日
摩洛哥征伐 11日タイムス社発
マリーヤ来電―モロッコ土民は、依然として非常に騒がしい為、スペイン政府は、更に1個師団の兵士を派遣し、既に当地に来着している。敵情を視察する為に偵察中の気球は、約2万2千の土民が山中に隠れていると報告した。
クリイト問題形勢 11日上海経由ロイター社発
クリイト問題を平和的に解決する見込みが高くなってきている。トルコ政府の行動は、現在戦意を抱き、ギリシャ反対の示威運動を示唆し始めているとの説がある同盟進歩期成委員会の強い圧迫の結果と見られている。
安奉線平穏 満州特電11日大連特派員発
安奉線は、現在3工区に分け、工事中である。清国官民の態度は、極めて平穏で、妨害等の行為もなく、工事は着々と進行中である。清国兵の増派などは全くの虚説である。本線との接続点は蘇家屯である。昨年来沈滞の満州土工界は、初めて活気を帯びて来ている。

8月13日
クリイト島民憤怒 12日タイムス社発
カンジャ来電―クリイト島保護の任にある英露仏伊4国は、トルコ国民が激しくクリイトのギリシャ併合に反対し、トルコ主権の維持を主張し、情勢が容易ならざる事に鑑み、クリイト島に対し、ギリシャ国旗を引き降ろすべき旨を要求し、これが行われない様であれば、再び同島を占領する事に決定した。しかしクリイト島民等は、この決定に対し、非常に憤怒し、異口同音に、例え亡命することになったとしても、これに同意できないと公言し始めている。
解説:連日この問題が報道されている。
布哇耕主の態度 11日桑港特派員発
ハワイの耕主等は、清人、ポルトガル人及び先に雇い入れた「罷工破り」の労働者を使役し、同盟罷工を煽動したと認めた一部日本労働者の復業を拒んでいるとの報道があった。
安奉線と露国 同上
露都来電によれば、同府に於いて、特に安奉線の価値を認識し、日本が急速に同線の改築に着手したとの報道を得て、政治界は、非常に危惧し始めている。又別に日本がご門江の河口に海軍根拠地を設定して、吉林鉄道を連絡するのではないかとの報道も大いに人心を刺激し、これらはポーツマス条約違反であると言われ始めている。

 

8月14日
露人の波斯悲観 13日タイムス社発
露都来電―ペルシャ廃帝が退去を承諾し、自由主義のカヤル家貴族が摂生となり、国民党の政治がいよいよ行われる事になりそうである。しかし露国の官吏社会に於いては、むしろペルシャの情勢を悲観し、新政府は、秩序の回復を遂行できないのではと観測している。
土希交渉継続 13日上海経由ロイター社発
トルコ政府は、ギリシャ政府に公文を送り、ギリシャ政府の回答には同意し難い旨を告げ、更に両国和親の為、トルコ政府の希望に同意する様ギリシャ政府に勧告した。この公文の用語は、非常に強硬であり、トルコ政府は、適切な期限内に回答を求めているが敢えてその期日を指定していない。
日本人帰化問題 12日桑港特派員発
移民問題について、日本がいわゆる紳士協定を履行している事は疑いない。ただ最恵国条款により、英仏獨伊の諸国民と同様の帰化権を要求するのではと思われるけれど、米国がこれを与えない事は明らかである。しかしタフト氏は、他の外国人に与えているある利権を与える手段を講ずるであろうと思考される。多分条約の義務履行に関して、連邦政府に適当な権利を与える必要を次期議会に送る予定の教書で説く事になるであろう。

 

8月16日
安奉工事進捗(堀満鉄工務課長の談話) 14日安東県特派員発
第二の難工事である福興嶺、鶏冠山両トンネル工事に着手する為、堀満鉄工務課長は14日現場を視察した。一両日中に準備が終わり次第、安東県に来て、鶏冠山との間の工事に着手する予定である。課長曰く、13日現場に奉天総督の使者が来訪し、工事の中止を要求したが、我が政府の命令がない限り之に応じる事はできないので、工事を続行している。(一部抜粋)


8月17日
ク島内閣辞職 16日タイムス社発
カンジャ来電―クリイト保護の任に当たっている英仏露伊4国がトルコの態度に鑑み、クリイト政府に対しギリシャ国旗を降ろす事を要求した結果、同政府は、その言に従い国旗引き降ろしを実行しようと企てた。しかし人民は武装してこれに反対した為に実行する事が出来ず、遂に現内閣は辞職した。
米国の大艦建造 16日上海経由ロイター社発
米国は海軍委員会の主張に基づく3万トンの戦艦建造を研究中である。
クリイト問題 15日ベルリン特約通信社発
英仏露伊4国は、クリイトに於けるギリシャ国旗の引き降ろしを要求した。しかしギリシャはこれに反対し、陸海軍の動員を行うと威嚇し、4国は、むしろトルコに対して適切な行動を取らなければならないと説いた。因みに4国は、在クリイト艦隊を増加中である。

 

8月18日
摩洛哥官軍勝利 17日タイムス社発
一時廃位となるのではとの風説さえあったモロッコ王ムライ、ハフィドは、大いに勢力を回復した。官軍は、春期以来ベルベル族を率いて奮闘してきた僭王を破り、僭王は逃走し、その勢力は完全に失墜した。
解説:明治41年8月25日の記事「摩洛哥局面一変」に、現在の国王ムライ、ハフィドが王位に就いた時の様子が描かれている。「モロッコ王アブダルアジツが敗北し、その軍隊は全部潰走した。同時に僭王ムライハツイドは、タンジールその他に於いてモロッコ王である旨布告した。」
西班牙遠征隊 17日上海経由ロイター社発
本社マリーヤ特派通信員の通信によれば、スペイン司令官マリナ将軍の軍兵は、歩兵3万、騎兵千5百、野戦砲16門、山砲40門で編成され、士気は高く称賛に値する。ただ同地の地勢は、彼らに対し大きな障害である。
クリイト問題 16日ベルリン特約通信社発
クリイト島カニアに於いては、ギリシャ国旗が再び掲げられ、狂喜した農民がこれを警護している。英仏露伊4国は、ギリシャ国旗の引き降ろしを実行させる為に軍艦8隻をカニアに進めた。ギリシャよりオーストリアと獨逸両国に対し、干渉を要求したが、両国は、今回トルコが平和的宣言を行っているとの理由でこれを拒絶した。

 

8月20日
希臘国旗引卸 19日タイムス社発
英露仏伊4国の軍艦よりクリイト島カニアに上陸した兵士は、別に何らの抵抗を受けず、本日払暁、ギリシャ国旗を掲げたポールを切断した。
解説:連日クリイト島問題が報道されているが、8月13日「クリイト島民憤怒」にあるようにギリシャ国旗が掲揚されていた。
キロル韓国論 同上
先頃極東の情勢を視察して帰国したロンドンタイムスのチロル氏は、韓国が日本の保護国となった結果、物質的利益の増進を見るに至った事は疑いない事実であると説いた。朝鮮人の多数は、日本の政治を好まない痕跡があり、その一部分に対しては日本人の行為によるもので、実にその責任を負わなければならないと論じ、更に一転して伊藤公の執った政策は、着々とその成績を挙げ始めており、ある事業は困難であるがその進捗は確実であると言明した。
米国新聞の誤解 19日上海経由ロイター社発
ロンドンタイムスのニューヨーク通信員の報道によれば、同地に於ける一部の米国新聞は、川漢鉄道借款問題に関する紛争を故意に利用して、日英両国は相提携して清国及び清国の友邦である米国に対抗していると称して、米国の対清政策により英国は非常に失敗したと盛んに書き立てていると述べている。
解説:昨日の記事「米国の対清策」についてと思われる。 
布哇罷首領有罪 18日桑港特派員発
ホノルル巡回裁判所陪審会議は、18日増給期成会長牧野、同書記根来、日布時事社長相賀、同記者田坂に対する同盟罷工に関する刑事共謀事件について有罪の決定を与えた。なお共謀事件とは、新聞紙上でハワイ政府転覆密謀共謀罪であるかの様に報道され、人心を惑わしたものであるが、耕主の犬と見なされた千葉某の殺害共謀事件であろうと思われる。

 

8月21日
希臘の対土回答 20日上海経由ロイター社発
本社の聞知する所によれば、クリイト問題に関するギリシャの回答は、非常に協調的で、十分にトルコ政府を満足させ、両国間の誤解を解く事になるであろうと希望を抱かせるに十分な様である。
列国の希土問題 同上
コンスタンチノーブル来電―列国は、トルコ政府に公文を送り、バルカンの平和を害する迄にギリシャとの関係を極度に悪化させない様に強硬な言辞を以て勧告した。

 

8月22日
瑞典罷工 21日タイムス社発
ストックホルム来電―スエーデンの罷工者中、社会党に属さない1万人の労働者は、来る月曜日を以て復業すると思われる。8月18日の計算によれば、罷工関係者数は、28万4千4百18人となった。
クリイト問題小康 同上
クリイト問題の危機は、同島ギリシャ国旗の引き降ろしを決行した結果、今や無事終了したと信じられる。又トルコに於けるギリシャボイコット運動は中止となった。

 

8月23日
希土問題続報 22日上海経由ロイター社発
本社通信員の報道によれば、トルコは多分、列国の通牒に対し、正式な回答を送らないと思われ、又列国もこの通牒に対して、別に回答を求めていない。なおトルコは、公文を以てマケドニアに関し、列国に訴える所があった。
解説:8月21日「列国の希土問題」の続報である。 

 

5月24日
米国大艦建造 23日タイムス社発
ニューヨーク来電―米国海軍省は、2万6千トンの戦艦2隻を建造する事を決め、これに対する入札を開始した。同艦は、それぞれ2百万ポンド以上の費用を要すものと期待されている。又米国はトン数3万トンとなる14インチ砲12門を装備する大戦艦2隻を建造するのではとの噂が再び起こっている。
米国陸軍縮小 同上
米国大統領タフト氏は、陸軍兵士の員数を8万8千より8万に減員する旨を陸軍嚮チツキンソン氏に命令した。これは大統領が、経費節約を断行しようとする意に出たものと信じられている。
解説:5年後に第一次世界大戦が起こる事を考えると8万の陸軍とは信じられない数である。現在の陸上自衛隊は15万人である。但し海軍力は増強している。
クリイト問題 同上
コンスタンチノーブル来電―トルコ内閣会議は、ギリシャの回答を以て満足であるとして、最早ギリシャ政府に対し、直接交渉文書を送らない事に決定した。但しクリイト問題は、今だ解決されていない。

 

8月26日
波斯紛乱続報 25日タイムス社発
テヘラン来電―イエルド街道付近でケルマン種族が蜂起し、英国人の生命財産危うくなっており、非常に重大な情勢となっている。
獨逸海軍省の気兼 25日上海経由ロイター社発
ドイツ海軍の機密演習の区域は、バルト海に限られている。或るドイツ新聞の報道によれば、これは北海に於ける演習を挙行し、英国の臆病者にあれこれ紛争の口実を与えない為であるとの事である。
日貨排斥煽動 25日漢口特派員発
25日当地発行の新聞に、日本留学中の各種学生連合会の名前で、安奉線問題に対する報復として、清国全体にわたり、日本の死命を制するまで、ボイコットを励行せよとの檄文を掲載した。

 

8月27日
摩洛哥僭王囚わる 26日タイムス社発
パリ―来電―ザイアのイスラム教寺院に避難中であったモロッコ僭王は、官軍の手に囚えられた。
解説:8月16日に摩洛哥官軍勝利の記事があり、その際僭王は逃走していた。
日清協約内容 25日上海経由ロイター社発
ロンドンタイムスの北京特派員の報道によれば、撫順、烟台両炭鉱に於ける裁判権に関する問題を除く外、主要な満州問題に関しては、去る火曜日(8月24日)、日清両国の間に妥協が成立した。この協約の規定によれば、日本は、間島を清国に還付し、清国は日本の南満線付近及びこれに平行して鉄道を敷設しない事、並びに日本の同意なしに新民屯以北に鉄道を延長しない事を制約した。
解説:撫順と烟台両炭鉱を日本に譲渡し、日本は採掘税を支払う事になっている。
在波斯外人危難 同上
ロンドンタイムスのテヘラン特電によれば、ペルシャ銀行のライト氏及びインド・欧州電話会社のジェームス氏は,カーマンの西方50マイルにある村落に於いて、8百の草族が人民の避難している或る塔を襲撃したとの事である。英国外務省では、救援隊派遣に関して、緊急の措置をとりつつある。

 

8月28日
日本桜樹寄贈 27日タイムス社発
ニューヨーク来電―永野総領事は、当市長代理を訪問し、ハドソン発見3百年記念祭に対する日本天皇陛下の祝辞を伝え、且つ日本の桜樹3百株を同市に寄贈した。この桜樹は、日本の植木職人の手により公園に植えつけられる事になっている。
解説:桜祭りで有名なのは、ワシントンのポトマック川の桜である。これは1912年に東京市長であった尾崎行雄から寄贈されたものである。
英国植民地防衛 27日上海経由ロイター社発
英国首相アスキス氏は、下院に於ける演説で、陸海国防計画に言及した。極東艦隊の編成は改正される予定であり、3個分隊で編成される太平洋艦隊は、東インド群島、豪州及び支那海に配置され、各分隊は、インドミデブル型巡洋艦1隻、2等巡洋艦3隻、駆逐艦6隻、潜航艇3隻で編成される予定である。そしてニュージーランド分隊は支那に、豪州連邦艦隊は豪州の基地に配備され、カナダは2等巡洋艦数隻と駆逐艦数隻を以て、その海岸を防護する計画であると言明した。
解説:ニュージーランド分隊が支那に配備されるとあるが記者の誤訳ではないか。

 

8月29日
摩洛哥僭王護送 28日タイムス社発
パリ―来電―モロッコ僭王は、鉄製の檻に入れられ、ラクダの背に乗せられてフエツツに到着し、柵越しにモロッコ王に対面した。
解説:8月18日「摩洛哥官軍勝利」にモロッコ王が勝利した記事がある。なお現在の王は、明治41年8月に前王を破り、王位を奪っている。
摩王の惨虐 27日上海経由ロイター社発
モロッコ王は、役人に命じて、反徒の首領24名の右手を切り取り、その傷口を沸騰する松脂の中に没入させた。中には同様に左足も併せて切られた者もいた。
日清締約と獨紙 27日ベルリン特約通信社発
半官報キヨルニツシエーツアイツング紙は、日清間に満州諸懸案の解決を見たのは、喜ばしい事であり、両国に商業関係を有する諸国は、何れもその恩恵を受けるであろうと言っている。


8月31日
波斯国庫空乏 30日タイムス社発
テヘラン来電―ペルシャ政府は、お金を調達する必要性があり、内閣税及び宮廷所蔵の宝物類を抵当として、各銀行に当然借入得る額以上に融通を申し込んだが、各銀行はこれを拒絶した。このためペルシャ政府は、列国の援助を求め外、方法がないと思われる。
ツエ伯着拍 29日ベルリン特約通信社発
ツエ伯の飛行機が遂に拍林(ベルリン)に到着した。全市民及び皇族方一同の大喝采を受け、ベルリン市の上空を飛び回る等、様々な飛行の様子を演じた。
後報―ツエ伯は、テーゲル練兵場にて、皇帝の御前に無事降下した。昨日途中で破損した推進器は、特に修理されなかった。
日貨排斥教唆 30日奉天特派員発
在東京清国留学生の決議に係るボイコット趣意書は、先日来各新聞に掲載されたが、今又彼らは、実行手段として、上海、天津及び東三省の3区に分けて、運動委員を各地に派遣し、各地連合して、ボイコットを実行せよと述べた煽動的文書を各地商務会に送った。これは、各地商務会が連合して、日貨を排斥し、日本人と貿易しない事、安奉線工事には人夫を供給しない事、安奉線一帯の地主に土地を売らせない事を教唆している。

 

明治42年7月

71

波斯の革命運動 30日タイムス社発

テヘラン来電―革命的バクチアリ蛮族等は、ペルシャの革命を主張し、新帝を擁立しようとし、国民党に味方し始めているペルシャ人2千名と共にテヘランに進撃中である。これについてペルシャ宮廷はやや恐慌の様子である。

クリイト問題 同上

コンスタンチノープル来電―ギリシャ緒新聞は、クリイト問題がますます紛糾し、ギリシャとトルコ両国の主張が衝突する模様を伝えると共に極めて過激な論議を掲げ始めている。但しトルコ政府は、クリイト島に於ける宗主権を飽く迄維持し、間接的でもギリシャの勢力を

解説:昨日の「希土関係又不穏」の続報である。

 

7月2日

露国大兵集合 1日タイムス社発

露都雷電―バクチアリス人等が国民党と共にテヘランに進撃しようとしている為、露国政府は、ペルシャ国境から百余マイルのバク(裏海岸線の市)に大兵力の集合を命じた。愈々テヘランに進撃する時が来た場合には、英国政府に通知するものと思われる。

波斯首都防衛 同上

テヘラン来電―現在進軍中の革命派に対して、首尾良く当市を防衛する件は、一に露国将校の力に依らざるを得ない状況である。露国将校が居ないならば兵士は殆ど価値がない。しかもこれら将校の立場は、決して面白いものではない。露国政府は、彼らの行動に関し全く責任を負わないと言明している。唯ペルシャコサック旅団が忠実であることは疑いないけれども、ペルシャ王自身は、将校に援助を与え、彼らが更に1連隊の兵士を要求したのに対して、僅かに30名を送ったに過ぎない。但しこれら将校は、やはりペルシャ国土の防衛に当たる意志がある。

ペルシャ国王は兵士5千を集めた。

英国の浮船渠 1日上海経由ロイター通信

英国海軍卿マクケナ氏は、下院に於いて演説し、政府は東海岸にドレッドノート型戦艦用の浮ドックを建造することを決定した。なお同ドックは機に応じ、どこにでも送ることができるであろうと言明した。

 

73

摩洛哥内乱 2日タイムス社発

フエツ来電―ベルベル族を指揮して、2月以来猛威をふるっている僭王の軍隊は、官軍と会戦したがなお勝敗を決する事ができなかった。なお官軍に従って奮闘する重要な一種族が、反乱軍の捕虜となり、斬首に処せられ、この為に官軍の士気は非常に沮喪した。

波斯政局続報 同上

テヘラン来電―カズインに居る立憲党は、ペルシャに外国軍隊が入り込んでいる事について責任がある某大臣は間もなく処罰されるであろうと公言し、ペルシャ紛争の責任はペルシャの政変に干渉する某帝国にある事を列国代表者に警告した。

解説:ペルシャの北半分は露国の勢力範囲であり、某帝国とは露国である。

川漢借款解決 2日上海経由ロイター通信

トリビューン社のワシントン通信によれば、米国政府は、数日以内に米国銀行団が川漢鉄道借款の4分の1を引き受ける事になり、英国もこれに同意した旨を公表する事になると思われる。

解説:川漢鉄道については、6月18日、6月22日~24日と度々報道されている。

 

7月4日

米国の露清条約反対 3日タイムス社発

ニューヨーク来電―米国国務省は、東清鉄道付属地帯の諸市街を露清鉄道協約の規定に従わせる件で抗議する意志がある旨清国に通知した。これは、清国が諸市政改革の為に組織された国際委員会の行動を否認する権限を露国鉄道代表者に付与したと考えており、その危険千万である先例となり、将来日本に南満州にこれと同一の権限を要求させることになるであろう事を危惧した結果である。なおこの点については英国も米国と同意見である。

クリイト問題協議 2日ベルリン特約通信員発

クリイト保護の任に当たっている英仏伊露の四か国は、なるべく早くクリイト問題に関する協議を開始する事をギリシャに約束した。

トルコ皇帝は、先に定めたサロニカ行を延期し、ギリシャ皇帝はパリ―行を中止した。

露兵波斯派遣 同上

露国は、ペルシャが無政府的状態に陥った為に兵士を増派しようとしている。

  

75

 会社課税案可決 4日上海経由ロイター通信

 ワシントン来電―米国元老院は、31票対45票の多数で、6月17日に電報した「会社の所得に課税する」案を可決した。

紐育綿市恐慌 同上

 ニューヨーク綿市市場に恐慌が起こっている。政府が公にした見積高によると、ある地方は霧の為、ある地方は干ばつの為に綿花の収穫が予想外に不足する事が判明した事による。総産額は1200万俵(ヘール)を超えないものと予想される。

 

7月6日

 波斯政争後報 5日タイムス社発

 テヘラン来電―ペルシャ官兵と国民党とは、テヘランの東北約3百マイルのシャハバッドに於いて衝突した。これは最近に於ける初めての戦闘であり、勝利は官兵のものになったと報道されている。

 露兵波斯派遣 5日上海経由ロイター社発

 露国は列強に同文通牒を送り、ペルシャに於ける英露両国の改革計画が革命派のテヘラン進撃を阻止する事が出来なかった結果、露国は今回内政に対しては依然無干渉主義を固持するであろうが、在留露人その他外国人を保護する為に、軍隊をバクよりエンツエリに派遣する事に決定した。但しカズウイン以南に進軍させるかどうかは一に今後の情勢によるであろうと通知した。

 

7月7日

 波斯国民党要求 6日タイムス社発

 テヘラン来電―革命の軍を起こした国民党員等は、現内閣を辞職させ、政治団体に於いて新閣員の選定を行わせる事、常備兵でない官兵の武装を解く事及び露兵を撤退させる事を要求した。これに対して公使館側では、ある要求は不道理であるとの理由で、これを皇帝に通じる通知する事はできない旨回答すると思われる。

 仏国関税改正 同上

 パリ―来電―仏国代議員は、春期以来関税改正について審議中であり、特に英領インドその他より輸入する原料品の課税を増加しようとの意見が非常に盛んである。これに対して仏国商務卿は、そもそも仏英両国の市場は互いにその欠陥を補う地位にあり、両国いずれにしてもその経済的関係の発達を妨げる様な税制を定める事があれば、これは取り返しのつかない誤謬に陥るものであると言明した。

 布哇罷工落着 6日ホノルル特派員発

 罷工労働者を復業させようと総領事以下尽力中であるが、アイオア、イバフ両耕地の労働者の決心が固いので、或は希望が入れられるまで復業せず、耕地を荒れ地とするまでになるかも知れない。しかしその他は明日復業し、同盟罷工は一段落するものと思われる。今回の罷工の失敗は、帝国総領事、増給期成会、日本字新聞、商人同志会等の全員に責任があり、現在では無条件に復業するしか策がないまでになってしまった。しかし罷工の為に外人間に悪感情を起こした事実はなく、罷工は失敗に終わったが日本人を侮る事ができない事を示した。

 解説:5月30日から同盟罷工の記事が見られた1か月半位のストが行われた様である。

 

7月8日

 国派兵理由 7日上海経由ロイター社発

 植民大臣グルー氏は英国上院に於いて、ラミントン卿の質問に答え、露国軍隊がテヘランに進入したのは、ただ必要な場合に欧州人を保護する為であると言明した。

 布哇罷工後報 7日ホノルル特派員発

 耕主の手先となって、罷工労働者を誘拐しようとした日本人3名が居たため、罷工者側の者3名がこの日本人3名を連れ出し、日本人として不心得であると諭していた。この事を耕主が探知するところとなり、この3名に対して、暴力を以て不法監禁したと言い立て裁判所に訴えた。且つ同盟罷工に賛成な邦字新聞日布新聞に対し、復業を妨害する様な記事の掲載禁止命令を裁判所より出させた。なお同盟罷工の首領牧野、根来及び日布時事社員相賀、田坂等に復業妨害禁止令を執行した。

 

7月9日

 波斯皇帝廃立問題 8日タイムス社発

 確実な筋からの情報によれば、英国政府は今回露兵のカスヴィ派遣に関する露国の弁明を是認し、露国がペルシャに於いて正直な政策をとっていると確信している。又革命派は、現ペルシャ皇帝を排して新帝を立てる事を希望しているが、英露両政府とも今回の場合に主権者の変更をする事を希望していない。但し将来、或は結果的に現皇帝の廃位が必要となるのではないか予想している。

解説:当時のペルシャは、露国と英国の勢力圏下にあった。

土耳其の同情 同上

コンスタンチノーブル来電―トルコの改革党等はペルシャの自由派に対し、深厚な同情を表し始めて入る。彼らは、又露国がペルシャの領地を占領はするならば、これは東方に於けるトルコの国境を弱くする憂いがあるとして、如何なる形式でもこれに対し干渉を断行する事を主張した。

 解説:ロシアとトルコ間は、歴史的に対立関係にあり、戦争が、10数回行われている。1856年に終わった戦争の結果、オスマン帝国の領土であったバルカン諸国が独立している。

 

710

 露兵波斯進軍 9日タイムス社発

 露都来電―ペルシャに派遣された露国軍隊の本隊は、ペルシャのレシュウト(テヘランの北200マイル)に到着した旨外務省に報告があった。

 半官報のノウオエ、ウレミヤは、又社説に於いて一層多数の兵士をペルシャに派遣するよう主張し、これが即ち時局の解決、鎮定を速やかにし、同時に占領時期の延長を促す様な些細な原因をも除去するものと言明した。

仏国海軍問題討議 同上

パリ来電―仏国代議院に於いて、海軍問題の討議があり、先に同国海軍の欠陥を暴露した調査委員会の一員は、その演説中、現在の海軍が極めて不満足な状況に陥ったのは、目的の統一が欠けている結果に外ならないと言明した。

 

711

英暹条約と馬來半島 10日タイムス社発

シンガポール来電―英国はタイの民刑商諸法の新制定と共に、同国に於ける治外法権を撤去する事に応じ、タイはこれに対して、マレー島ケランタン、ソリンガン、ケダ、ペルリスに於ける自国の宗主権を英国に移す事を承諾した。これらを規定する新英タイ条約は、海峡植民地方面に於いて、一大価値ある協約であると承認され始めている。これらの諸州は、英国の保護国となると共に資本が続々と流入し、極めて急速な発達を見るであろう。又海峡植民地知事と諸州君主等との関係も親密になるものと期待されている。

 解説:当時の東南アジアにおいては、唯一タイが独立を保っていた。

 布哇罷工情勢 10日ホノルル特派員発

 当地米国巡回裁判所の判事長ロビンソン氏は、増給期成会役員、日布時事社員等33名に対し、労働者のワイタフ耕地に復業する事を妨害する全ての言論及び行為を禁止する臨時禁止令を発した。その為上記罷工派領袖等で、少しでも労働者の復業を妨げると認められる言論や行為があれば即座に法廷侮辱罪に問われる事になる。又法廷侮辱罪は上告控訴の道がないので、同盟罷工幹部の一切の活動を抑止したとみる事ができる。(一部抜粋)

 

712

 露帝随行員と仏国 11日上海経由ロイター社発

 露帝の仏国セルボオル訪問時、随行員の一人である国務参事官ハンチントンなる人物は、1989年故露帝アレキサンドル三世に対する所謂爆弾陰謀事件について、バリーに於いて有罪の宣告を受けた露人と同一人物であるとの説は、首相クレマンソー氏もそれが真実であると確認し、その為大いに仏国の人心を動かした。同人はその後、パリ―露国秘密探偵長となっていた事もあったが今度は、仏国上陸を禁止され、且つ叙勲者の列から排除されるであろう。

  

7月13日

 加奈陀移民規則改正 12日タイムス社発

 オタワ来電―清国移民に関する規則は、種々の変更が加えられた。先に労働次官マクケンジー、キング氏は、清人の感情を害するとの理由で、一応清国労働人夫の入国税百ポンドを廃止し、他の方法でこの制限を行う事を主張した。しかし同税は、今回依然としてこれを保存した。又学生、商人及びその子女の入国についても大いに制限を加える規定を設けた。

 米国艦隊極東巡航 12日上海経由ロイター社発

 ワシントン来電―海軍省は来る8月より、明春3月にかけて試験的に太平洋艦隊の第一、第二分隊をアジアの海面に巡航させる事に決定した。

 仏国砲兵拡張 同上

 仏国元老院は休会前に、現在の砲数1,912門を2,536門に増加する砲兵隊拡張案を成立させるため、特に開会するであろうと言われている。因みに獨逸の砲数は現在3,000門である。

 

714

 西班牙兵摩洛哥派遣 13日タイムス社発

 バルセロナ来電―スペイン政府は、モロッコ政府がムール種族の暴行を鎮圧することが出来ない為に、自らこれを膺懲する目的で、軍隊増派を決定し、兵士8千人が現在モロッコ行の準備中である。そして千9百人は既に出発した。

加奈陀清人移民法 13日上海経由ロイター社発

 ロンドンタイムスのオタワ通信によれば、オタワ駐在清国総領事の任命とあたかも同時に、清人移民規則について、重要な変更が行われ、苦力労働者の入国人頭税百ポンドはそのまま維持されたが、学生及び商人の子女に対する制限は大いに変更され、学生はある条件のもとに、入国人頭税を免除された。

 米国艦隊東洋行 12日桑港特派員発

 米国政府は、来る10月、8隻の一等巡洋艦をマニラに送るよう命令した。なお12月に9隻で編成された巡洋艦隊をフィリピン近海に遊弋させる事を決定した。米国が大挙して艦隊を東亜に向かわせる理由は、日米条約の改正について予め備える事にあると説く者がいる。又両艦隊は来年2月、日本、支那を訪問する筈である。

  

7月15日

 極東政策発展 14日タイムス社発

 ニューヨーク来電―ワシントンに於いて報道される所によれば、米国太平洋巡洋艦隊の第1分隊、及び第2分隊は、今秋マニラ、日本及び清国を巡航するであろう。これは極東に勢力を拡張しようとする米国政府の政策に起因するものと言われている。

 波斯形勢危急 同上

 テヘラン来電―数百名の国民党員が城内に入り、戦闘の後市の北部にある国会議事堂を占領した。

 欧州人の権利は尊重され、国民党員達は、その目的とする所、唯憲法回復の保障を得る事を希望するだけである。国王に対しては、あくまで忠誠を表すであろうと宣言した。

 人民の多数は、国民党と結び、既に兵列に加わった者が3千余名である。

 国王は露国公使館に避難するかも知れない。

  

7月16日

 露国の対土要求 14日タイムス社発

 コンスタンチノープル来電―トルコの自由派は、露兵のペルシャ進軍がトルコの東部国境を弱くする事を憂い始めている。又トルコ兵士の数隊は、西ペルシャに向け進軍中である。これについて露国政府は、トルコ政府に通牒し、トルコ兵の進軍が英露協約及びトルコが英露両国に与えた誓約の精神に違反する事を指摘し、トルコ政府に於いて、その進軍を制止する事を要求した。

 布哇罷工形勢 14日桑港特派員発

 領事、商人同志会等は、罷工が破られる事により、我が労働者の将来に非常な不利益を与えるとは思わず、何等の策を施す事もなく、唯傍観している模様である。従って領事は、耕主が司法権を濫用して邦人、罷工者に加える悪意的妨害に対して何等なす所なく労働者の哀願するも捨てて顧みず、その呑気さ加減は驚く他はない。(一部抜粋)

 

717

 波斯王避難 15日上海経由ロイター社発

 テヘラン来電―ペルシャ王は露国公使館に避難された。

 波斯内乱後報 同上

 テヘラン来電―王党と国民党との小銃戦は、砲火の為に事実上既に収束した。国王に属する官兵は、北東の城門を攻撃したが、非常な損傷を受けて撃退された。

 比島と米国艦隊 15日ベルリン特約通信社発

 ニューヨーク新聞の報道によれば、米国政府は、今年海軍大演習後、一戦闘艦隊をフィリピンに常置すると言われている。

 

718

 西班牙対摩洛哥 17日タイムス社発

 マドリード来電―過日ムール人のスペイン労働者襲撃後、メリルラ(モロッコにあるスペイン領)に於けるスペイン人移民は襲撃を受けていない。同地土人はむしろ友愛な態度を示している。但しスペイン政府は既に12千の軍隊を派遣し、更に同数の軍隊を派遣しようとしている。

 波斯新帝選定 同上

テヘラン来電―ペルシャ皇帝は、危難が一身に及ぶ事を恐れ、露国大使館に避難した。英露両国の公使館書記官の斡旋により、ペルシャコサック兵旅団司令官リアコフ大佐(露人)と国民党首脳陣間の会合が開かれ、終に双方が平和を宣言し、露国将校の下にある旅団も、国民党が構成する仮政府の下に服務する事に決定した。又現皇帝を廃し、皇太子アメッド、ミルサを新皇に選定した。新帝は11歳である。

 

7月19日

 連合有志会解散 18日ホノルル特派員発

 同盟罷工の情勢に格別な変化はない。商人同志会、宗教家団体、医師団体以下各県人会で諸団体連合有志会を組織して、同盟罷工の解決に尽くそうとしたが、その内に無条件で復業させ、復業後に増給運動をしようと言う者と多少の条件を得なければ、断じて屈服してはならないと言う両派に分かれ、連合有志会は解散した。なお労働者の決心が固く、且つ各地の耕作地の同胞から後援の寄付金が続々と来ているので、当分容易に無条件で解決させるのは困難と思われる。

  

7月20日

 波斯と露兵 19日タイムス社発

 露都来電―在ペルシャ外人の生命、財産を保護する目的でペルシャに派遣された露国軍隊は、新帝選定が行われ、勝利は全て国民党に帰したにも拘わらず、なお秩序が完全に回復し、欧州人の利権の安全が保障されるまでは、依然ペルシャに留まると思われる。又現在露国公使館に避難中のペルシャ廃帝は、近日露国に出発するであろうと言われている。

 上野総領事器量を下げる 18日ホノルル特派員発

連合有志会の無条件復業運動が不成功に終わった為に、18日朝上野総領事は、井田領事官補を従え、罷工労働者の多数が宿泊する日本小人芝居屋に出張し、労働者に対して、無条件復業の利益を説諭したが、労働者等は非常に激高し、大変な紛争の後、あわや不穏な行動に及ぼうとするのを漸く制止する者が居て、総領事は無事にその場を逃げ去った。

 

721

 波斯猶不穏 20日タイムス社発

テヘラン来電―シラス地方は、殆ど無政府状態である。英国公使館は、仮政府に対し、外人保護の必要を通知した。英国水兵は、現在ブシイルに居り、何時でも進軍できる準備を整えている。

 ケルマシャに於いては、蕃賊等が現在、英国領事館内の避難民を引き渡さなければ、同市を破壊すると脅迫中である。

 布哇罷工問題 19日ホノルル特派員発

 労働者も今となっては、到底有利な条件で解決の希望がない事を了解し、且つ既に疲れてきているので、大体において同盟罷工は、終結期に近づいている。多分1週間以後、無条件で復業するであろう。そしてその形式は、知事フリヤー氏に上野総領事を加えて、労働者に復業を勧告させ、労働者は、知事と総領事との顔に免じて副業するという事になるであろう。(一部抜粋)

  

722

 仏国内閣辞職 21日タイムス社発

 パリー来電―既に前海軍卿をその地位を保つことを出来なくした海軍問題は、端なくも今やクレマンソウ内閣の致命傷となった。海軍特別委員会の報告は、現内閣及び既往数内閣に対する非難の材料を供給した。議会は明らかに現内閣に反対の態度を示し、即時内閣信任案を否決した。そして各大臣は袂を連ねて辞職した。(一部抜粋)

 英国戦艦増建 21日上海経由ロイター社発

 英国政府は、いよいよ1909-1910年度に於いてドレッドノート型戦艦8隻を建造する事に決定したと信じられる。

 クリイトと土耳其 同上

 佛紙ルタンの報道によれば、トルコ陸軍教官長フォン、アル、ゴルツ将軍は、クリイト問題について、平和を保つ事を勧告した。但し青年トルコ党は、これと反対の態度を以て内閣を圧迫し始めている。

 解説:クリート島(クレタ島)は、ギリシャの南方にあり、大部分の住民はギリシャ正教徒であり、一部イスラム教徒がいた。当時列強の圧力で、トルコの宗主権の下で自治権を持ったクレタ州であった。しかしイスラム教徒とギリシャ正教徒との間で紛争が絶えす、列強の軍隊が駐留し、治安の維持に努めていた。

 関連記事が6月22日、30日、7月1日にある。

 西班牙兵損傷 同上

 モロッコのメリルラの土民とスペイン兵との間に新たに戦闘が行われ、スペイン軍に多大の死傷者を生じた。

 解説:7月18日の記事の続報

 

723

 米清鉄道借款 22日タイムス社発

 ワシントン来電―先に米国政府が1903年に於ける清国政府の誓約を根拠として、米人の川漢鉄道借款加入の承諾を迫った事件は、漸く解決した。清国は米国資本家が、英仏獨銀行家と均等の条件を以て同鉄道借款に加入する事を承諾し、且つ条件は大統領タフト氏と摂生王淳親王との間に、電報を交換してますますこれを堅固にした。但しその経過内容については未だ発表されていない。

 ムール人征伐続報 22日上海経由ロイター社発

 スペイン軍は、昨日メリルラの戦闘で、非常に困難な戦闘であったが、その陣地を維持することが出来た。ムール人等は、交信を絶つ目的を以て、頑固に激烈な攻撃を継続中である。なおスペイン軍は、10名乃至20名の死傷者を出した。

 土耳其の回答 同上

 トルコ政府は、クリイト島保護の任にある英露佛伊4国の通牒に答えて、クリイト島問題の解決遅延に反対し、又4国の通牒中にトルコ帝の主権という文字を用いず、最高権という言葉を用いた事に不同意である事を説き、更にクリイト島に対するギリシャの干渉を許すことは出来ないと言明した。

  

7月24日

 英国外相演説 23日タイムス社発

 英国外相サー、グレーは、露帝の英国訪問に関し、下院に於いて次の様な演説を行った。

 英国は条約によって権利がある場合の外、他国の内政に干渉すべきではない。下院は露国の政治犯罪人の取扱いに関する某議員の所説を全部事実として聞き取ってはならず、露国の政治犯罪者中には凶暴な殺人犯罪者もいる。アイルランド国民党及び労働派の議員が歓迎したくない露国皇帝は、既に国民に憲法を許與している事、及び英国政府は欧州大陸の君主として露帝を歓迎する事を記憶しなければならないと語気を強めて言明した。

 南阿連邦法案 23日上海経由ロイター社発

 南阿連邦法案は、英国上院の第一議会を通過した。英国議会に於ける同案の通過に関する用務を帯びてロンドンに滞在中の南ア4植民地首相の代理者は、アジア人問題を各植民地立法会議の所管に置かず、南阿総督の所管とすべきであるとの英国植民地大臣クルウ氏の発案に同意した。

 

7月25日

 ムール人征伐 24日タイムス社発

 マドリード来電―スペイン軍隊のムール人征伐は、困難な状況であり、征伐軍司令官マリヤ将軍は、兵士の増派を要求した。なおスペイン政府の政策は、ムール人の反抗を完全に破るまで、メリルラに続々と兵士を派遣する事の様である。

 川漢鉄道借款 同上

 北京来電―米国大統領タフト氏は、先般慶親王に対し、米国人が清国鉄道借款に加入する権利がある事を強硬に主張する電報を送ったが、この直接の原因は、獨亜銀行の陰謀である。同銀行が陰謀を欲しいままにし、又現在香港上海銀行の上にも勢力を及ぼしている為、清国に於ける英国利権は損害を蒙り始めている。

 日米条約改正 23日桑港特派員発

 日本は、現行日米条約より蒙る貿易上の不利を認め、2年の後でなければ、改正の期限に達しないにも拘わらず、速やかに改正交渉を開始する事を米国政府に申し込んだ。

 日本は、最恵国条約によって英国、獨逸、フランスと同一な税率を得たいと望んでいる。もしこれによる場合には、現在の税率より6割乃至8割の低減となる貨物が多いと思われる。(一部抜粋)

 

7月26日

 獨逸銀行の陰謀 25日上海経由ロイター社発

ロンドンタイムスの北京特電によれば、米国大統領タフト氏は、米国が川漢鉄道借款に加入する権利を友好的に主張した電報を送った。摂政王は、外務省の高官を全員招集し、この電報の結果について、非常に当惑の色を示した。この大統領の電報は、獨逸アジア鉄道の仕組んだ謀略の結果であり、香港上海銀行も獨逸アジア銀行の勢力に圧迫され、その為英国の利益は、非常な損害を受け始めている。北京に在留する多数の英国人は、英国政府が前記ドイツ銀行の陰謀と関係を断つよう、強圧を香港上海銀行に加えるよう希望している。

  

727

 クリイト撤兵 26日タイムス社発

 カンジャ来電―トルコ政府は、先に露英仏伊4国のクリイト撤兵延期を希望する態度を示したが、4国は撤兵に決心を変更しなかった。その為トルコも態度を一変し、撤兵後クリイトの平和維持を図る方法に関し協議中である。英国軍隊は、いよいよ仏伊露3国軍隊と同時にクリイト島を撤退した。同島の住民は、英国に対し深甚なる謝意を表明した。

 西班牙のムール征伐 26日上海経由ロイター社発

 去る金曜日、モロッコのメリルラに於いて激戦があり、スペイン軍は、将校7名戦死し、20名が負傷した。兵士の戦死者数は不明であるが、負傷者は260名に上った。ムール人等の死傷者数は約1千名である。

  

7月28日

 露国の土民征伐 27日タイムス社発

 露都来電―露国政府は、自国内に避難してくると思われる前ペルシャ皇帝に金銭類を支給する意向はないとの事である。

 ペルシャ及びコーカサスに於けるシャセワン種族は、盛んに略奪をほしいままに行い、止める気配がないので、露国政府は、これに対し、鎮圧の為に遠征隊を派遣しようと協議中である。

 英国海軍拡張 同上

 英国政府は、下院に於いて追加ドレッドノート型鮮下院4隻の建造を決定し、1912年3月に竣工させる旨発表した。首相アスキス氏は、独伊墺諸国の建造計画の増大を引用して、この建造決議の正当である事を説き、且つ各種の危難に対して、自ら守らなければならない事を主張した。又軍備制限を主張する修正案が議場に提出されたが、保守党も政府側に立った為、大多数を以て秘訣された。

 波斯廃帝の年金 27日上海経由ロイター社発

 ロイター社テヘラン通信によれば、ペルシャ政府は、廃帝が直ちにペルシャを退去する場合に、5千ポンドの年金を支給する意志がある様である。

729

ペルシャ廃帝年金 28日タイムス社発

テヘラン来電―ペルシャ政府が前皇帝のペルシャ退去を条件として、年金5000ポンドを供給する事を内定した件について、前ペルシャ皇帝は、この年金額は不十分であるとして反対した。ちなみにペルシャ政府は、現在国庫が欠乏し、財政困難に悩んでいる。

阿片問題 28日上海経由ロイター社発

英国下院の植民省予算討議中、議員レイドロウ氏は、各植民地が阿片問題につき、その政策を統一する事を主張し、香港政府に対し、阿片窟を一掃するよう圧迫を加えるべきであると勧告した。植民次官シーリー氏は、これに対し、香港の阿片窟は、来年2月末までに全て閉鎖する予定であり、政府は規定の政策を放棄するつもりはなく、大いに清国を助け、又植民地の阿片消費を減少したいと焦慮中であると言明した。

西班牙の非戦党活動 同上

スペインのバルセロナに於いて、戦争反対の暴動が発生した。暴徒は学校、教会を焼き、電信線を切断した。其の為他国との交信が遮断された。又バルセロナ及びタルラゴナに於いて、戒厳令が施行された。 


730

 西班牙の暴動 29日タイムス社発

 マドリッド来電―北アフリカに於けるスペイン軍隊の行動を非難し、バルセロナに猛烈な暴動が発生し、同地の無政府党は、これを導火とし、各地に檄を飛ばして活動しよとしている模様である。その為スペイン政府は、全国に戒厳令を施行したが、あくまで武力をもって暴動を鎮圧する決心である。

 西班牙軍大損害 28日上海経由ロイター社発

 去る火曜日、メリラに又戦闘があり、ヒントス将軍他多数の将校が戦死した。なお木曜の戦闘詳報によれば、スペイン軍の一支隊は、山間に於いて不意に襲撃され、完全にムール族の術中に嵌ってしまった。スペイン軍の損失は、戦死者80名、負傷者330名である。

 解説727日の記事の続報である。

 土希国交改善 28日ベルリン特約通信社発

 トルコ政府は、クリートに於ける諸保護国に対し、首府カンジアにギリシャ国旗を掲揚した件に関し、その意見を要求した。しかしトルコとギリシャの国交は、次第に改善の途に就き始めている。

  

731

西班牙動乱後報 30日上海経由ロイター社発

 マドリードのスペイン皇帝の宮殿門外に於いて、非戦党と兵士及び官吏の衝突が起こった。なおマドリッドに於いて発表された公報によれば、バルセロナに於ける暴徒の主力は、騎兵の為に市の一隅に押し込められ上、砲兵に砲撃されて進退窮まって終に降伏した。暴徒の死傷者は非常に多く、しかし少数の暴徒は、なお付近の村落に籠って抵抗を続けている。


 

 



明治42年6月

61

阿富汗武器密輸入 31日タイムス社発

インドのシムラ通信員は、武器がマスカットを経てアフガニスタンに盛んに密輸入されている現状に注意を促した。過去2年間に辺境に届いた鉄砲は1万挺に達し、蛮賊及び無頼漢等は、益々勢力を高めている状況である。又国民兵駐屯地間を連絡する道路は、安全でないと明言した。

瓜生中将日米関係談 30日サンフランシスコ特派員発

瓜生中将は、昨日ワシントンに於いて、次の様に語った。若し戦争があるとすれば、

私は、他の列強に対し日英米三国が結束するであろうと信じて疑わず、三国の結束は、文明の進歩の為に非常に喜ばしい。日本に於ける文明の進歩は、米国に負っており、両国には親交関係があり、両国が戦争をする事は出来ない云々と 中将の言は日本政府の許可なくして語る事が出来ないと信じられる故、米国はこれに最も重きを措くであろう。

米西戦争紀念行列と我艦隊 同上

伊地知少将以下、士官候補生及び水兵は、米国太平洋艦隊司令官スペリー少将以下、米国水兵と共に、昨日タコマで開催された米西戦争紀念パレードに加わったが、市民は心からこれを喜んだ。

 

62

獨逸海軍拡張形勢 1日上海経由ロイター社発

英国海軍政務官ラムバート氏は、ブショブスニムトンに於いて演説し、今や獨逸が19117月までに、ドレッドノート型戦艦17隻を完成させられなくなった事が確実となり、獨逸が既に注文したものは11隻のみと言明した。

練習艦隊シャトル着 31日サンフランシスコ特派員発

練習艦隊は、30日午後シャトルに到着した。日米両国人は雨を冒して歓迎し、艦隊は停泊中の米艦と礼砲を交換して投錨した。太平洋艦隊司令官スペリー少将、ヒュゼットサウンド鎮守府司令官ロツジヤース少将以下シャトル博覧会役員及び同市代表歓迎委員等が来訪した。この内ロジャース少将は、提督ペリーの孫であり、伊地知少将は、特にこの会見を喜んでいた。又明日午前は、我が艦隊から水兵150人を、米艦隊から同900人を出して、博覧会の開会式パレードを行う予定である。午後は日本人会主催の歓迎園遊会がある筈

英米協約説冷評 同上

サンフランシスコ・コール紙は、1日の社説に於いて、英米海軍協約説を論じ、これは英国が獨逸海軍の膨張に恐れを抱き、案出した一つの策略に過ぎない。米国は責任が重いが、自ら処理しなければならないと説き、クロニクル紙も又、妥協的説を冷評した後、英国は寧ろ米国と協力して各国の軍備の縮小に努力すべきと主張した。

 

63

タイムスの日米同盟観 2日タイムス社発

タイムスの東京特派員が、日本の満州政策について、日本人は、英人の友愛が非常に価値あるものとし、一般に、日英同盟維持の必要な事を信じる点に就いて、十分な証拠を得たと論じた電報を送ってきた。これに対しタイムスの社説は、特派員の電報が法庫門鉄道に関して起こった日本の対清政策に就いての誤解を消滅させ、且つ日本の戦友であろうとするものを衷心から喜ばせるものであると説き、日英同盟は、清人側の分かり切った運動によって、真に影響を受けるものでないと言明した。

解説:法庫門鉄道は、満鉄と並行する鉄道で清国がその敷設権をアメリカに与えようとした事があった。

印度爆裂弾事件 2日上海経由ロイター社発

カルカッタ来電―昨年5月の爆裂弾事件に関連して、去る7日禁固の判決を受けたミドナブル土民3名は、高等控訴院に於いて、無罪の宣告を受けた。この宣告は大いに人心を動かせた。

布哇罷業失敗 1日サンフランシスコ特派員発

ハワイに於ける日本人労働者の同盟罷業は、その後罷業者等俸給増加の初志を翻して、多数は、従前通りの給料で業に復したとの説がある。労働者をお客とする日本人商人は、多大の打撃を受け、借財を残して逃げ出す者も続いている。なお先日同盟罷業に関して日本労働者間に闘争が起こり、1名の即死者あり、当局者は、これを以って罷業鎮圧手段として厳重な制裁を加えようとし、関係者を厳重に捜索中であり、既に20名の嫌疑者を出している。

沖縄の秀才(長崎) 内国電報

軍艦宗谷航海長漢那憲和(かんなけんわ)氏は、旧琉球藩主尚泰(しようたい)候の養子となり、家督相続の約束がある。同氏は秀才の誉れが高く、沖縄知事が抜擢して海軍兵学校に入学させた。

解説漢那憲和は、海兵27期卒であり、大正時代に皇太子(昭和天皇)が欧州遊学に行かれた際、御召艦である香取艦長を務めた。恵龍之介氏の「昭和天皇の艦長 沖縄出身提督漢那憲和の生涯」に詳しい。阿川弘之が文芸春秋の巻頭随筆で昭和天皇がこの本を読まれたと書いていた。

 

6月4日

法庫門鉄道論評 3日上海経由ロイター社発

ロンドンタイムス東洋通信員は、日本が法庫門鉄道問題をヘーグ仲裁裁判所に付す事を拒絶した件に関して説明を受けた。この為仲裁に適当な時期が今将に到来したとの信念を持った。

タイムスは、社説に於いて同説明は種々の誤解を正すべく、日英同盟の友人が皆心から喜んでこれを読まなければならない。南満鉄道は、我が同盟国が長期の戦争に鮮血を流して得たものであり、彼等が他の競争の為に、その価値を損じたくないと思うのは、決して不自然な事ではいないと言明した。(一部抜粋)

ニューヨークの瓜生中将歓迎 2日ニューヨーク特派員発

 瓜生中将及び夫人は、昨1日午後7時到着し、直ちにホテルアスダーで催されたニューヨーク日本協会の歓迎会に臨席した。同夜の来会者は、当市上流階級の3百名で、宴たけなわとなった頃、水野総領事の発声で大統領の万歳を唱え、次に日本協会会頭ラッセル氏の発声で我陛下の万歳を唱え、トムソン大佐は瓜生中将を紹介し、中将が演説をした。次にスペリー将軍外二三氏の演説が行われ、非常な盛会であった。中将は同夜11時、トムソン大佐と再びアナポリスに向かった。


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 瓜生中将歓迎 4日タイムス社発

 ニューヨーク来電―ワシントン・メトロポリタンクラブで催された瓜生中将の歓迎会に於いて、大統領タフト氏は、日本皇帝陛下及び国民に対する米国人の深い個人的友好を表明した。瓜生中将は、各地に於いて饗応を受け、至る所で日米両国の親交についての証明を得ている。なお前記歓迎会の席上に於いて、大統領は、その乾杯時に、心より日本皇帝の万歳を唱え、以て米国政府の態度を明らかにした。

 清国政府醒覚 4日上海経由ロイター社発

 本紙が入手した情報によれば、清国政府は、法庫門鉄道に関する紛争をハーグの仲裁裁判所に付すという提議を完全に撤回し、更に交渉の開始を切望する旨申し出たそうである。そして日本政府は、これに同意するであろうと信じられる理由がある。

 布哇罷業失敗 3日サンフランシスコ特派員発

 ハワイ耕地の日本人同盟罷工者は、増給の要求に対する耕主の決心の固さに失望し、その一部分は日本に帰ろうとし、他の一部は南米に移住する準備をおこなっている。又耕主は、従来日本人に払っていたよりも高い給料で、他の労働者を永久に使用する準備を行っている。

 

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 米国小麦欠乏 5日タイムス社発

 ニューヨーク来電―小麦は、続々西部に向け、同地人民の消費に充てる為に、送り戻され始めている。これは一般に小麦が欠乏した結果であるが、この様な現象は未曾有の事と言われている。

 摩洛哥と英国 同上

 フエツ来電―英国公使一行が6週間滞在した結果として、今や同国公使は、モロッコ王の個人的尊敬と全政府の友愛とを得る様になった。

 佛国罷業者暴行 同上

 パリー来電―電信電話線を切断する悪風が依然として永続し、少しも衰える気配が無い。又これらの犯罪者等は、自動車を使用している。

  

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 自慢的歓迎 5日サンフランシスコ特派員発

 瓜生中将に対する米国人の歓迎は尋常でなく、しかも自国の学校出身者として、自慢する様な歓迎である。

 中将は、今日明日中にナイヤガラ瀑布の見物に赴き、その後当市に滞在し、各所の大会に臨む予定

 日本海軍歓迎 5日サンフランシスコ特派員発

 昨日のアラスカ、ユーコン太平洋博覧会には、多数の日本海軍下士官、兵が会場に行ったが、全ての米国人が非常に親切であり、無料で場内の催しものを見物させた。台湾喫茶店にて、午餐の饗応があり、午後は陸軍競技会に列席した。

 日本人罷工失敗 同上

 ハワイ日本人の同盟罷工は、完全な失敗に終わり、エーワ及びワイアルワ両耕地に於ける日本人労働者は、来る8日迄に就業するか、或いは立退くのかの何れかに決める事を迫られている。内山という同盟罷工煽動者は、耕主の手先となり盟罷工を妨害したハワイ新報に、開封のまま不穏な手紙を送ったとして、郵便条例違反に問われ捕縛された。ハワイの耕主は、日本人の紛争が多いのに困り、日本人に変えて1万人のポルトガル人を雇う様に計画中である。

  

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 露国戦艦新造 7日タイムス社発

 露都来電―露国は、英国技師監督の下に、617日ドレッドノート型戦艦4隻の建造に着手する予定

獨逸海軍協会総会 同上

 ベルリン来電―キールで開催された獨逸海軍協会の本年度総会は、累進的海軍拡張の主唱で注目を惹いている。同協会幹事長ウエベル将軍は、現行海軍法は、解釈上伸縮自在であり、能く幾多の新インビンシブル型戦艦の建造をも含ませる事が出来るであろうと指摘した。

 ロ卿の海軍拡張論 7日上海経由ロイター社発

 英帝国新聞会議が開会し、ロオズベリー卿は、開会式祝宴の席上で演説し、帝国国防に言及した。昨今の欧州の情勢は、前途の凶兆を示し、未曾有の状況である。余は英国が諸外国の相応な連合に敵対する能力を有すると信じているが、余は、この様な諸国海軍の拡張に将来の結果を危惧している。我々は、1シリングであってもドレッドノート型戦艦の為に費やす事の出来るお金があり、又1名でもこれに乗せる事の出来る水兵がいる限り、同艦を建造する事ができ、又建造したいと欲すると言明した。

  

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 仏国海軍拡張案 8日タイムス社発

 パリー来電―佛国海軍委員会は、1等装甲巡洋艦の隻数を45とし、1919年に於いて諸艦の艦令20歳を超えない事とし、第一艦隊は、戦艦12隻、巡洋艦4隻で組織する建議を行う事に決定した。前記巡洋艦の建造費は、12千万ポンドであり、これを10年間に割り当て支出する計画である。

 布哇罷業終了 7日桑港特派員発

 ハワイのエワ、ワイアル及びカフタの3砂糖耕地に於ける日本人同盟罷工者は、今後罷業継続の可否について投票を行った結果、7日朝より従来と同じ給料で復帰する事に決定した。因みにエワ耕地では罷工継続を主張するもの1500名中90名のみであった。

 ポ政府歓迎 同上

 伊地知司令官、佐藤石井両艦長は、士官候補生9名を伴い、太平洋艦隊司令官セブレー少将と共に6日夜、ポートランドに到着した。日米両国人の歓待を受けており、9日夜は、同市長主催の晩餐会がある予定

  

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 豪州戦艦寄付 9日上海経由ロイター社発

 英国政府は、豪州政府のドレッドノート型戦艦1隻の寄付申込を受託した。

 獨逸海軍新計画 同上

 ベルリン来電―ターゲブラット新聞の報道に依れば、来年度の獨逸海軍予算は、予備艦隊の維持及び快速力の戦艦竣工時期を繰り上げ、1911年に竣工させる新計画書等の為に非常に増額となるであろうと言われている。

 瓜生中将ヴツサル大学行 8日紐育特派員発

 8日瓜生中将夫妻は、水野総領事夫妻と共に、中将夫人の母校ヴツサル女子大学校に赴いた。10日ニューヨークに帰り、11日日本クラブの歓迎会に臨む予定

 解説:瓜生中将夫人(旧姓永井繁子)は、津田梅子(津田塾の創設者)、山川捨松(後大山巌元帥夫人)と共にアメリカに留学していた。

 布哇罷業再燃説 8日桑港特派員発

 ハワイのエワ耕地罷業者全員及びワイアルワ耕地罷業者の一部は、昨日から以前と同じ給料で復業したが、新たにカウツリ耕地の労働者が同盟罷工する気配がある。

 瓜生中将歓迎 同上

 アナポリス海軍兵学校の同窓会会長トムソン大佐は、昨夜瓜生中将及び英国海軍大佐ペリー氏をニューヨーク・シェリーに招き、晩餐会を開いた。

 解説:瓜生中将は、アナポリス海軍兵学校を卒業している。

 

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 露国借款調印拒否 10日タイムス社発

 テヘラン来電―ベルシャ国諸大臣の多数は、議会の同意無くては憲法違反であるとの理由で、露国借款に関する文書に調印する事を拒絶した。

 解説:ベルシャの北半分は露国の勢力下、南半分は英国の勢力下にある。現在内乱が発生している。

 英国新造戦艦 10日上海経由ロイター社発

 ポーツマス鎮守府所管となった第4ドレッドノート型戦艦スパープ号は、スピッドヘッド海峡に於いて、内国艦隊に加わる予定

 練習艦隊消息 9日サンフランシスコ特派員発

 伊地知少将以下練習艦隊将校、候補生は、昨日ポートランドのお祭に列席し、日米両国民の熱狂的な歓迎を受け、今朝シャトルに帰り、午後旗艦阿蘇に於いて居留日本人を饗応した。

 米博と日本国旗 同上

 シャトル博覧会場内の人力車展示場に、米国国旗の下に日本国旗を掲げてあり、艦隊日本人候補生が事務局に抗議を行った。事務局内では、種々の議論の末、遂に日本国旗を取り下げる事になった。練習艦隊乗組員の行動は、同地米人の感情を非常に害したと伝えられている。

  

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 波斯の排露運動 11日タイムス社発

 テヘラン来電―ペルシャのメシエツド市に於ける排露的示威運動は、遂に闘争を引き起こした。同市は現在無政府状態である。

 解説:昨日の記事の続報であり、露国兵がペルシャに入っている。

 米国の清国鉄道熱 11日上海経由ロイター社発

 幾つかの大きな米国財政団体は、清国に投資する利益の可能性を調査する為に、代理人を極東に送り始めている。ワシントン来電によれば、米国シンジケートは、政府の賛同を得て、川漢鉄道の投資に加入しようとしている。但し政府は自ら実際上の協議に関係する事を避けている。

 解説:川漢線(せんかんせん)は、最初成都から漢口まで計画されたが、最終的には成都から重慶間が開通した。

 クリート問題 同上

 トルコ政府は、クリートを保護する任にある列国に対して、7月に行うと定めた同時撤兵の件を再考する様要求した。

 

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米人対清投資運動 12日上海経由ロイター社発

 ロンドンタイムスのワシントン通信によれば、昨日の報道のとおり米国資本家達が清国に投資を計画しているが、奉天米国総領事ストレイト氏は、その代表者となる為に退職するであろうと信じられている。

 解説:昨日の記事「米国の清国鉄道熱」の続報

 英暹条約発表 同上

 英暹条約は、英国公使及びタイ国外務大臣間の往復文書と共に発表された。タイ国外務大臣は、英国に対し、タイ国はマレー半島内タイ国領土の何れの部分も、外国陸海軍の目的に使用させる事により英国の利権を危うくさせる事を許さず、又南の方境界線に至るまでは、付近の島嶼を含む全て何れの土地をも、直接若しくは間接に外国に租借させる事なく、又石炭貯蔵地を租借し、造船或いは修繕用ドックを建造、或いは所有するを許さず、更に軍略上英国の利益を損じるであろう場合には、何れの港も外国に占有させない事を約した。

 布哇罷業派捕縛 12日桑港特派員発

 日本人同盟罷工領袖「日布時事」記者相賀保太郎氏外2名は、最近の紛争に関し、取り調べの必要があるとして、逮捕状なしに拘引された。罷工の再燃を防ごうとして、司法權を乱用したものと思われる。相賀氏等は、連邦裁判所に人身保護法により訴訟を起こした。

  

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 練習艦隊帰途に上る 12日シャトル特派員発

 練習艦隊は、午前8時出港した。石炭積み込みの為にハワイに寄港する予定である。汽船2隻が港外まで見送った。

 日本人罷工情勢 12日桑港特派員発

 現在ハワイに於いて罷工中の労働者は、五六千人であり、なかなか屈服せず、かえって広がろうとする情勢である。耕主等は、司法權、行政權を利用して、飽く迄も屈服させようとし、容易ならざる状態である。警吏はホノルルにある増給期成同盟会及び日布時事社の家宅捜索を行ったが、日本人が多数の勢力を頼んで、全てハワイを支配しよとする計画の文書を発見したとする仰々しい電報を当地の諸新聞に打電して、大いに人心を動かした。この報道は新聞を利用して日本人に対する悪感を高めようとする魂胆に外ならないと思われる。

 布哇移民調査 同上

 ワシントン来電―移民調査委員会は、集会を開いて、上院議員デリガム及び前商務次官ホイラー両氏を、来る9月ハワイに派遣する事に決定した。これは日本人とハワイの関係を研究するに止まらず、一般ハワイ移民問題を調査させる為であり、適当な欧州移民を輸入しようとする耕主の希望に依ると言われている。

  

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 布哇罷工騒動 14日タイムス社発

 ニューヨーク来電―国務省は、ハワイ在住の日本人が同地の砂糖業を支配しようとする運動を起こしたとの説については否定した様である。

 現在罷業中の砂糖園日本人労働者5千人の首領17名は、秩序擾乱の密謀を行った疑いで告発された。

 伊地知少将謝辞 13日桑港特派員発

 伊地知少将は、12日シャトル出発に臨んで、国務卿に打電して、太平洋沿岸に於ける練習艦隊歓待の行為を感謝し、帰国の上は、これを陛下に奏し、国民に告げるであろうと述べた。

 

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 米国政府の決心 15日上海経由ロイター社発

 ワシントンにて発表された公の通信によれば、米国政府は、米人の川漢鉄道借款加入要求を強硬に補助する意思がある事を示した。

 解説612日「米国の清国鉄道熱」の続報

 布哇罷工騒動 14日桑港特派員発

 罷工派首領の罪名 一昨日ホノルルで逮捕された日本人の内12名は暴徒煽動の疑いで、3名は謀殺未遂罪で共に公判に付される。

 戒厳令は布かず ハワイは一時軍隊の干渉を見るのではと予期されたが、同政庁の臨機の処置により戒厳令施行にはならなかったと言われている。

 裁判傍聴禁止 昨日裁判中は、日本人の傍聴を禁じ、且つ何れの所に於いても徒党集合する事を禁止する旨布告した。

 罷業と総領事 ハワイ総領事は、最初より同盟罷工に不賛成で、煽動者の捕縛を是認していると言われている。

 米国学者の排日論 同上

 アメリア大学(?)総長ベントン氏は、同校卒業式に於いて、宗教上の理由より日本人が不道徳である事を論じ、西部諸州に日本人排斥が行はれるのは当然であると述べた。

 

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布哇罷工後報 15日桑港特派員発

 日本人の激昂 ホノルルに於いて、罷工煽動者を不法監禁し、令状なくして家宅捜索を行った事実は、益々日本人を激昂させている状況である。

 高平大使に打電 拘引された根来等は、上野総領事が同盟罷工に賛成しない為に、無法拘禁、家宅捜索をも是認したとして、電報で高平大使に救助を要請した。そして日布時事記者、増給期成会役員が令状なくして逮捕され、帳簿書類を没収され、警吏は、商店を破壊し、金庫を破り、生命財産は危険であり、至急の調査を望む旨申請した。

  

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 米国の川漢借款談判 17日上海経由ロイター社発

 駐英米国大使は、川漢鉄道借款加入の件に就いて、公式の交渉を開始した。但しロンドンにては、1905年借款協議の際、米国がこれに加入したいとの希望を少しも示さなかった事実に鑑み、将来は米国資本の加入を歓迎するが、現在同国が激しくその要求を主張しない事を希望している。

 解説:関連記事が612日、13日、16日にある。

 同盟罷工形勢 16日桑港特派員発

 官憲圧制の反動 同盟罷工領袖に対し、乱暴狼藉を極めたハワイ官憲の措置は、確かに藪蛇の姿となった。日本人をますます激昂させ、今日までに復業の勧告をしていた日本人小売人組合でさえも、断然罷工継続の勧告決議を行った。

 罷工者の態度 罷工者の態度は、静粛であり、罷工にありがちな乱暴が無い事は、米人といえども賞賛している。

 上野総領事の態度 上野総領事は、罷工領袖を毛嫌いする為、無法の拘禁と家宅捜索をも是認し、且つその厳罰にされる事を望んでいたと同胞は非常に憤慨している。

 調査請願と高平大使 

 不法監禁及び家宅捜索に関する在留同胞の調査請願に対しては、高平大使は何等返答をしていないそうである。

 罷工区域拡大せん 

 ホノルルに集合した罷工者は3千人に及び、全ての耕地が罷工に応じる情勢であると言われている。耕主に使われる官憲の圧迫は、実際非常に激しいものであった様である。

  

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 波斯の新選挙法 18日タイムス社発

 テヘラン来電―ペルシャ皇帝は、従来選挙人の資格から財産上の制限を撤去し、又階級を基準とせず人口を基準とする等種々の改正を加えた新選挙法に対し、反対してきたが、今回まったくその主張を放棄した。そして各州がいよいよ同法の規定に賛同する場合には、これに調印する決心であると言われている。

 摩洛哥の内乱 同上

 フエツ来電―3月及び4月中、猖嗽を極め、しばしば官兵を敗走させたモロッコ僭王の軍隊は、再び活動を始め、且つ多大な援兵がこれに加わって、官軍味方の土民を略奪し始めている。モロッコ王ムライ、ハブイッドの兄弟も新たに叛旗を掲げた。

 解説:モロッコ王ムライ、ハブイッドは、明治41914日「摩洛哥王即位」の記事にある様に、僭王として反乱を起こし王位を奪っている。

  

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 露獨両帝会見の結果 19日タイムス社発

 露都来電―17日ブヨルカ島付近の露獨両帝の会見には、露国首相、外相、独逸外相も随行し長時間の協議を行った。獨逸側では、自国がオーストリアのボスニア、ヘルチェゴビナ両州の併合に際し、露国の利益を謀った事を極力説明しようと努め、しかもこの運動の顕著なるは、その露国との間に「仲直り」以上の何物かを得ようとする希望がある事を示したが、これらは見事に失敗したと伝えている。

 解説:露土戦争により、オスマン帝国が敗れてボスニア、ヘルチエゴビナは露国のものとなろうとした。しかし露国の南下政策に反対する列強により開かれた1878年のベルリン会議により、ボスニア、ヘルチェゴビナはオスマン帝国の主権下で、オーストリアが施政權を持つ事になった。その後オーストリアは、獨逸の支援を受け1908年ボスニア、ヘルチェゴビナを併合