71日 

東郷大将兵学校訪問 30日タイムス社発

東郷大将は、幼時に在籍したグリンハイズ海軍候補生学校を訪問し、その昔乗り組んでいた練習艦ウースター号を視察した。その後、士官候補生に対し、講話を行い、旧校を訪問し、非常に満足した旨述べ、候補生等は熱心に之を喝采した。

最後の戴冠式 同上

英国皇帝皇后両陛下は、ロンドン市を御巡回された。又セントポール寺院の謝恩祭及びギルドホールに於けるロンドン市の歓迎宴に臨まれ、ここにロンドンに於ける戴冠式祝典は終了を告げた。陛下の行幸の道筋には、大群衆が居り、陛下の万歳を祝した。(一部抜粋)

海員罷業勝利 30日上海経由路透社発

海員同盟罷業の者達は、至る所で勝利し始めている。リバプール港のキューナードその他の有力汽船会社(即ち先日増俸の条件だけを承認したもの)は、同盟を承認する事に同意した。またブリストル、アヴァオンマス、グリムスビー諸港に於いては海員の条件を承諾し、ハウル港に於いては商務院にて仲裁の労を執っている。

72

宮と両大将 30日倫敦特派員発

▽連夜の盛会その帰程 

28日夜、加藤大使の案内にて、東伏見宮殿下、東郷、乃木大将を主賓として晩餐会が行われた。アスキス首相、外務大臣及び文部大臣外百余名の来賓があり、非常に盛会であった。

土耳古政府譲歩 30日伯林特約通信社発

トルコ政府は、平和を維持しようとしてマリゾリ族に対し、更に譲歩する所があるとの報がある。

佛軍フエツ引上げ 同上 

フエツよりの報告によれば、モアニエル将軍は、8月にその軍隊をカサブランカに引き上げる筈であると言われている。

73

英国政府の決心 1日上海経由路透社発

デイリー、メールの報道によれば、英国内閣は、貴族連が上院否認権案第1項に対する修正案を放棄しないならば、速やかに皇帝の大権(貴族新造権)を使用する事に一致、決心した旨を閣員筋より漏れ聞いたそうである。

罷業和約成立延期 同上

英国ハウル港に於いて、水夫同盟罷業者1万2千名が集会したが、波止場人夫の要求が決定するまで、その首脳陣が承諾した解決約定を批准する事を拒否した。

獨艦南モロッコ占領 2日上海経由路透社発 

伯林来電=獨逸政府は、利害関係のある獨逸商会等の要求に基づき、現在、モロッコ海に居る獨逸砲艦バンテル号を南モロッコのアガジルに向かわせる命令を発した。これは同地の獨逸国民とその利益を保護するためであり、政府は、これについて列強に通知した。

74

獨逸の活躍 3日タイムス社発

獨逸はスペインのアルカサル占領に引き続き干渉を試み、その為にモロッコの情勢は紛糾するに至った。獨逸は、獨逸居留民の要求に基づき、これら国民とその利益とを保護する為に、砲艦バンテル号を南部モロッコのアカジア湾に派遣した。獨逸の熱狂的新聞は、喜色満面の姿であるが、多数の新聞は驚愕した。

海員の復業決議 3日上海経由路透社発

英国ハウル海員罷業者の集会に於いて、ある条件の下に直ちに復業する事を可とする決議案が通過した。依って速やかに罷業事件も解決を見るに至るであろうと予期される。

英佛の獨逸攻撃 2日巴里通信社発 

獨逸は自国の砲艦1隻をモロッコに派遣した旨を佛国に通告した。これに対し佛国新聞は、獨逸がこの様は措置を執った為に、モロッコ問題が益々紛糾することになると論じた。ロンドン駐在の通信員は、佛国は衷心より英国を信頼しているが、獨逸の行動は英国が大いに驚愕した所であると述べた。

75

英仏露と対獨策 4日タイムス社発

佛国は、獨逸が南モロッコのアガジルに軍艦を派遣し、同地占領手段を執った件に付き、英露両国と意見を交換中である。

西紙の獨逸評 4日上海経由路透社発

西班牙の諸新聞は、獨逸が今回執った行動を歓迎し、これは西班牙の行動と同じく、佛国がモロッコをチェニスと同様にその保護国をしようとした事に起因すると説明している。

獨艦派遣と佛国 3日伯林特約通信社発 

佛国諸新聞は、獨逸が砲艦バンテル号をアガジルに派遣した件に付いて、大いに驚愕した様子である。獨佛間にこれについての交渉があるであろうと予期している。現在休暇中でパリーに居る駐獨大使が獨逸の首府に帰った後、佛国の公式返答を獨逸政府に送ると思われる。

76

船員罷業形勢 5日タイムス社発

リヴァプール、ハル等に於いては、船員は概して就業した。尤も部分的罷業は尚行われており、マンチェスターに於けるドック人夫及び馬車人足はなお罷業を継続している。警官は罷業者の為に瓦礫で攻撃され、運輸業は、大いに阻害されている。グラスゴーの船主は、船員に譲歩し、賃金の増率を受け入れた。

獨逸の目的 同上

伯林来電=獨逸の執ったモロッコ政策の直接の目的は、仏蘭西及び西班牙に圧力を掛けて、モロッコ問題の商議を開始しよとするにある。獨逸がこの挙に出たのは、英国が獨逸との友好的関係を維持する事を望んでいるが為に、好んでこれと難を構え、自己の主張を通そうとしないと信じるに依る。

佛国騒がず 5日上海経由路透社発

佛国大統領ファリエル氏及び外務大臣ドセルヴィ氏は、オランダに向け、公式訪問の途に就いた。これは佛国がモロッコ事件に関し、平然たる態度を取っている表れである。

英国とモロッコ事件 同上

首相アスキス氏は、反対党党首バルフォア氏に政府は重大な注意をモロッコ事件に払っている。そして既に外交上の通知を出そうとしていると述べた。

北清駐箚軍の撤兵 内国電報 5日発 

北清事変以来、日、英、米、獨、佛、露,伊、墺の各国は北京条約に基づき、北京、天津等の各要地に約3個師団位の兵力を駐屯させ、その後列国は、清国の秩序回復により、その駐屯兵力を減じてきた。清国政府は、現在の警察力又は軍隊の力で安寧秩序を保持し得るとして各国軍隊の撤兵を希望したが、英米2国に於いては、日本の意向如何によって賛否を決めようとして、外務省経由で我が陸軍に問い合わせて来たので、わが国の意向次第でこの問題は解決すると思われる。(一部抜粋)

77

英国の対獨通告 6日タイムス社発

英国政府は、獨逸軍艦のモロッコ、アガジル派遣に関連して、獨逸に対し強硬で明白な言葉を以って下記の諸点を通告したと信ずべき理由がある。

(1)  英国は十分に佛国を支持し、援助する意思がある。

(2)  モロッコには、重大な英国の利益が直接関係を有する次第であるので、英国は自国を除いて行われた何等の協定にも同意する事はできない。

英国罷業暴動 同上

英国マンチェスターに於いては、罷業中の波止場人足、荷馬車御者等が依然として暴動を継続している為、歩兵、騎兵を派遣した。警官達は疲労し、用をなさない。

佛獨軍艦派遣 5日紐育特派員発 

獨逸がモロッコに一軍艦を派遣したので、佛国も又、巡洋艦を派遣した。そして獨逸は5千トンの巡洋艦を送り、更に7千トンの装甲巡洋艦を派遣する準備をしている様だ。

78

英国の佛国援助 7日タイムス社発

パリー来電=英国政府がモロッコ問題に関し、佛国を援助しようとする決心は、至る所で歓迎され始めている。ベルリン政府は、今や佛国の同盟国や同情を有する諸国が一堂に会さない内に、この国々と予備会議を開く希望を持っている様子であるが、佛国はこれを歓迎する様子はない。

東郷大将の栄誉 同上

東郷大将は、全会一致で「ナイト、ラウンド、テーブル」倶楽部(子爵のクラブ)の名誉副総裁に選ばれた。

モ国の弁明 7日上海経由路透社発

コンスタンティノープル来電=モンテネグロ公使は、トルコ政府に対して「モンテネグロ国は動員を企てたが、これは決してトルコに敵対的意思があるのではなく、唯国境に於いて、起こるだろう不快な出来事を未然に防ぐ為のみである。」と言明した。

アルバニア情勢 同上

ウイーンに於いて信じられている所に依れば、トルコは、アルバニア人の降伏期限を延期するであろうと言われている。これは、更に協議を継続する余裕を得ようとする為である。尤も開戦準備は引き続き行われるであろう。

79

佛国の決心 8日タイムス社発

パリー来電=今後、モロッコ問題に関し行われる商議が如何なる決定を行うにせよ、佛国は英国と同様「獨逸に一港、若しくは一領地を譲与し、或いはその譲与を約束する様な事は、全く問題外である」と主張する事に決心した。この意見は佛国公衆も内閣も共に一致する所である。

露国の説明要求 同上

露都来電=露国政府は、獨逸に対し、そのモロッコに関する通牒について、特別の声明を求めた。

アルバニア形勢有望 同上 

コンスタンティノープル来電=モンテネグロ国の動員は、無期限に廃止し、又セッチンエ政府(即ちモンテネグロ国)は、アルバニアの酋長連に対し、アルバニアに帰る様に説得中であるとの報道がある。依ってアルバニア問題が解決するであろうとの信念が一層増加した。

710日 遣英宮御帰朝 8日倫敦特派員発 

東伏見宮、同妃は、8日当地ご出発、帰朝の途に御就きになる。東郷大将は北方に向かった。戸田伯爵は、9日出発、大陸を経て帰朝する予定

711

海員罷業落着 10日タイムス社発

マンチェスター来電=海員同盟罷業紛争は決着した。海員等は10(月曜)より復職する予定

仲裁條約と日英同盟 同上

ロンドンタイムスは、将に成立しようとしている英米仲裁條約を熱心に是認し、更に「日英同盟条約は、戦争の際、日本を助ける義務を英国に負わせるものである。この点は明らかに英国と第三国との一般的仲裁條約とは矛盾する。この不都合な点を除去する為、日英同盟にある変更を加える件を議定する事も決して困難ではないと思う」と述べた。(一部抜粋)

モロッコと獨佛 同上

パリー来電=佛国政府は、モロッコに於ける獨逸の行動に関し、列国との間に行い始めている商議の詳細について、差し当り、公衆に知らせないことに決定した。但し佛国が第一に執る手段は、先ず獨逸より軍艦をアカザルに派遣した件について、その意味及び目的の説明を得る事にある様である。

7月12日

獨逸政府の証言 11日タイムス社発

セントピータスブルグ来電=獨逸は、露国政府に「アガジルには、軍隊を上陸させず、獨逸は土地を占領する様な事は夢想していない」と明言した。

獨逸関係良好 11日上海経由路透社発 

パリーに於いて発表された政府筋よりの言明によれば、アガジルに関する獨佛間の協議は、良好に進行中であり、両国関係の緊張に対する憂慮は取り除かれた。同宣言は、又英露両国の佛国に与える援助に関し述べた所がある。

7月13日

佛獨商議 12日上海経由路透社発

巴里来電=佛獨商議は、友好的に進行中である。但し1909年の佛獨協約に関係すると解されるアガジル事件については、未だ口を切らない様である。

モロッコ国軍隊出動 12日伯林特約通信社発

モロッコ王ムライ、ハフイッドはエルクファイル地方の、現在スペインの軍隊が滞在する場所附近に軍隊を派遣した。この為スペインは、仏蘭西に抗議を申し込んだ。その理由としているのは、モロッコ軍隊とスペイン軍隊との間に衝突の起こる恐れがある事である。

在留民事情紹介 11日桑港特派員発 

当地に於ける在留民の事情を紹介する為に、東京、大阪両地の新聞記者を招待する為に有志が現在熱心に運動中である。

7月14日

アルバニア休戦延期 13日上海経由路透社発

トルコ政府は、又々アルバニア人との休戦期を20日だけ延期した。

北ボルネオ会社成績 同上

リッジウエー氏は、英国北ボルネオ会社の総会に於いて、会長席に着き、次の報告を行った。

会社の昨年度収入は、支出を超過する事、142,642ポンドであり、又前年度の収入を増加する事11,000ポンドである。北ボルネオは非常に鉱物に富んでいる。隠れた富を開発する唯一の手段は科学的調査にある云々

佛獨モロッコ談判 13日紐育特派員発 

佛国軍艦1隻は、新たにモロッコに向け出発した。又獨逸の軍艦数隻もモロッコの沖合で示威的運動を行ったと云う。又佛国大使が獨逸外相を訪問したのは、同国の分割を協議したのではないかとの疑いがある。(一部抜粋)

7月15

東郷大将 14日タイムス社発

東郷大将はグラスゴーに在り、極めて多忙である。昼間は、熱心に造船所の諸工場を訪問し、夜になると、グラスゴー市主催のある饗宴に臨んだ。

西佛関係難 同上

西班牙兵は、又々新たにモロッコのララツヘに上陸した。西班牙と佛蘭西の関係は、アルカサルに於ける西班牙兵の行動が乱暴である為に、やや面倒になっている。

皇儲冊立式別報 14日上海経由路透社発

皇太子ウエールス親王は、13日午後、カアナルウオン城に於いて、皇太子冊立の儀式を行われた。英国皇帝皇后、その他皇族がご臨席あり。首相アスキス氏、大蔵尚書ロイドジョージ氏以下多数の有力者が列した。カーナポンの市街は、祝祭を催し、非常な熱心を示している。

解説:皇太子ウエールス親王とは、後のエドワード8世である。皇位を投げ捨て、人妻シンプソン夫人と結婚した為に、弟であるジョージ6世が即位した。そして父の後を継いで現在のエリザベス女王が即位している。

日英同盟修正 13日紐育特派員発

日英同盟に修正を加えることは事実であるとロンドンタイムスは、13日の紙上に掲載した。今回の修正は、英米平和條約の成立に際し、この條約の主眼である第三者の條約如何に拘わらず仲裁を実行する為である。又この修正と同時に日英同盟の年限が延長されて10年となる予定である。

日英同盟修正について 内国電報 14日朝

△英国提議の内容

一外交官は曰く、

日英同盟條約第2条を修正し、同盟国の一方が他の同盟国と仲裁條約を締結した国民と戦争する場合に、英国が発生を予期した場合には、英国は日米両国間に介在し、その紛争を仲裁しようとするにある。英米仲裁條約に抵触する日英條約第2条の「一国若しは数国」という語句より米国を除外し、日米間に於ける重大な紛争は英国の仲裁に任すべしとの修正提議であると解せられる節がある。

7月16日

日英同盟改定 15日タイムス社発

先に予報した様に、日英同盟の協約は、修正を経て向こう10年間、継続する事となった。その目的、内容は大きく変化する所はないが、唯最も重要な変更があるのは、「両締約国の一方が第三国と一般的仲裁裁判條約を締結した場合には、本協約は右第三国と交戦する義務を前記締約国に負わせる事はない」との新規定を設けた第4条があるのみ。

西班牙兵上陸 15日上海経由路透社発

5百名のスペイン兵士は、又々モロッコのララツヘに上陸した。スペインと佛間の衝突事件は日々起こっている。

故国名士招待縮小 14日桑港特派員発 

13日夜、在米日本人会は、故国の名士招待の件に付き、役員会を開き、経費の点より、東京、大阪の新聞記者招待を中止し、各政党の代表者、国際会、法学者、植民学者の5、6名に止め、他日新聞記者の来米を乞う事に決定した。

7月17日

日英協約歓迎 16日上海経由路透社発

日英同盟協約は、英国に於いて各党派の歓迎を受けた。二三の新聞は、英帝国会議の幸福な結果と切言し、又一般に、これは日本に対する友愛と極東平和維持とを確認すると同時に、英米仲裁條約、その他仲裁主義の一般的延長に道を開くものとして認められる。又朝鮮について、或いは印度領土の防禦方法を講じる英人の権利について、言明を省いたのは、事実上、その必要が無くなった為と見られている。

墨国人心動揺 15日紐育特派員発

メキシコ、ソノラ州知事の長男某は、14日、マデロ政府の為に捕縛された。マデロ政府に反対し、暴民を集めた為である。又佛国に居るマデロ将軍の家族は、今回帰国しようとして、その由をマデロ氏に伝えたが、今暫らく帰国を見合わせよとの返電に接した。これを観ても、マデロ政府の基礎は堅くなく、国内の人心は動揺している事が分かる。

718

埃及統監新任 17日タイムス社発

キッチナー元帥のエジプト統監任命は、至る所で熱心な賛成を得ている。元帥を統監に選んだのは、即ちエジプト国民党にその運動を継続するのは無意味であり、且許容されない旨を訓戒するものである。

波斯の内乱 17日上海経由路透社発

スタンダード新聞に達したテヘラン通信によれば、ペルシャ廃帝の兄弟であるサラルエドダウン公は、廃帝のペルシャ皇帝復位の布告を行い、ハマダン、セナーを占領し、4千の兵を率いて、ケルマンシャに進軍中である。地方知事はこれに抵抗する力が無く、テヘラン政府に向かって、兵士派遣を乞いつつある。

土国官軍敗北 同上 

エデム、パシャの指揮下にあるトルコ軍隊は、イベツク及びドシャコワ間に於いて、回教派アルバニア人の為に、潜伏襲撃を受け、司令官エデム、パシャが負傷し、その他トルコ軍死傷者2百名に上る。

719

アルバニア干渉論 18日タイムス社発

ウイーン来電=列強は、アルバニア紛争に干渉し、トルコによる悲惨な戦争を継続させない様に努めなければならないとの信念が益々加わってきた。叛賊は飢餓が迫り、その状態が益々険悪に陥りつつある。

土軍司令官交代 18日上海経由路透社発

コンスタンティノープル来電=アルバニアに於けるトルコ軍司令官セヴィケット、トルグット将軍は召喚され、アブダラ、パッシャがこれに代わった。氏は温和な手段を執る事で知られるが故に、氏の就任は、問題の決着を容易にするであろうと予期される。

墨国政府不統一 17日紐育特派員発 

メキシコ政府は、益々統一を欠き、各大臣は反目の状態である。政府の首脳がこの様な状態であるので、その他の小官吏は事務に精励せず、郵便局の如きは、書留郵便が紛失するものが頻々であるそうである。

719

アルバニア干渉論 18日タイムス社発

ウイーン来電=列強は、アルバニア紛争に干渉し、トルコによる悲惨な戦争を継続させない様に努めなければならないとの信念が益々加わってきた。叛賊は飢餓が迫り、その状態が益々険悪に陥りつつある。

土軍司令官交代 18日上海経由路透社発

コンスタンティノープル来電=アルバニアに於けるトルコ軍司令官セヴィケット、トルグット将軍は召喚され、アブダラ、パッシャがこれに代わった。氏は温和な手段を執る事で知られるが故に、氏の就任は、問題の決着を容易にするであろうと予期される。

墨国政府不統一 17日紐育特派員発

 

メキシコ政府は、益々統一を欠き、各大臣は反目の状態である。政府の首脳がこの様な状態であるので、その他の小官吏は事務に精励せず、郵便局の如きは、書留郵便が紛失するものが頻々であるそうである。

720

土国叛賊猖獗 18日タイムス社発

コンスタンティノープル来電=広報によれば、最近、アジアトルコのエーメン州に於ける蛮族との戦争に於いて、トルコ軍は、死者1千Ⅰ百名、負傷者5百名を出した。

波斯廃帝陰謀 同上

テヘラン来電=現在,テヘラン府に居る1千2百のバクチアリ兵が、心機一転して、ペルシャ議会の味方を中止する様な事がない限り、皇位を回復しようとする廃帝ムハンマド、アリの計画は多分失敗に帰すと思われる。広く伝えられる所によると、ペルシャ官憲は、露国に於ける廃帝の動静を十分に知っていると言う。又廃帝は、何れにせよペルシャに帰来するならば、先に政府より約束した年金を失う事になるであろう。

佛国新聞激怒 19日上海経由路透社発 

佛国諸新聞は、領事代理ボアセ氏捕縛事件について、大いに激怒した。マタン新聞は、佛国はこれまで、スペイン人の暴行を瑣事として看過していたけれども、今や譴責位ではすまない程になった。断固懲罰の挙に出る必要があると言明した。

721

英佛獨逸要求評 20日タイムス社発

巴里来電によれば、モロッコ問題解決の一つの方法として、獨逸の要求する条件は、非常に不当であり、到底、問題としてなし難いものと認められると言う。英国では、獨逸は英国の利益を毀損し、英佛の親交を破ろうと企てるものとする意見が増加中である。ロンドンタイムスは「国民は首相アスキス氏が有効に英国の利権を保護、主張すると言える宣言を実行する事を期するであろう」と言明した。

西班牙謝罪す 20日上海経由路透社発

巴里来電=スペイン大使は、佛国外相ドセルヴ氏を訪問し、アルカザル事件に関し、謝意を表明し「スペイン政府は、佛国との良関係を持続する事を切望しており、アルカザルに於けるスペインお代表者にもこの赴きを電訓中である」と述べた。

墨国の反乱 19日紐育特派員発 

メキシコ中部地方シラオに於いて蜂起した暴民は、18日夜を徹して官軍と戦ったが負傷者は少なかった。

722

獨外相と摩国事件 21日タイムス社発

ベルリン来電=佛国が獨逸の法外な要求を承認する事を希望し、又は予期しているとは一般に考えられてはいない。

英国罷業形勢 21日上海経由路透社発

バリー港よりの報によれば、同地の波止場人足は、ニューポート、カアジフ等の人足等に同情を表して罷業したそうである。又サンターランドの一海員同盟首脳は、同盟が承認されなければ、西北海岸の航業は休止する事になるであろうと公言した。

清国人迫害 同上 

昨日、英国カ―ジスに於いて、非常なる騒動があり、同盟罷業者等は清人水夫の所有物を略奪し、これを火中に投げ込んだ。夕方になり、5万名の大集会があった後、暴動者は約20名の清人洗濯屋を襲い、多大の損害を与えた。

723

英国外交強硬 22日タイムス社発

市長官舎で催された銀行家晩餐会の席上、大蔵尚書ロイドジョージ氏が、欧州の情勢に関し、次の演説を行い、甚大な注意を引き起こした。「英国は、列強中で、是非とも名誉ある地位を維持しなければならない。卑しくも列国協議会に於いて、無視同然の境遇を英国に与え、その利害に甚大な影響を及ぼそうとする者があれば、平和は、ここに至っては、最早屈辱であり、英国はこの様な屈辱に甘んじる事はできない。」

ロイドジョージ氏は、この演説で一定の国を指定していないが、獨逸のモロッコ事件に関する要求で、権力のバランスに動揺を来そうとする折であり、演説の意味は誤解される事はない。

獨紙の激怒 同上

ベルリン来電=ロンドンタイムが獨逸のモロッコ事件に関する要求の範囲を暴露した為、獨逸の新聞は激怒した。

又々西佛衝突 22日上海経由路透社発 

巴里来電=アルカザルの来電によれば、モロッコ軍隊の佛国教官スリエ中尉がアルカザルに入った際、スペイン兵の為に捕らえられ、打擲された上に、司令官の面前に引き立てられ、司令官は中尉を侮辱した上で、これを解放した。

724

米加仲裁條約 22日紐育特派員発 

タフト大統領の言明によれば、フランスとの平和仲裁條約は、協議が纏まり、ここ10日以内には、上院の討議が行われる予定である。

725

東郷熱 23日紐育特派員発

団体及び個人の東郷大将招待運動が盛んであり、大将招待委員を命じられた米国海軍大佐モッド氏に宛てて、問合せの書面が日々、数通に達し、大佐は回答に窮しているそうである。特にホテルの運動は激しく、その為に今尚、決定していない。日本人側も記念品贈呈やその他歓迎の準備に熱中している。

佛獨談判の進行 22日伯林特約通信社発

モロッコ問題に関する佛獨談判は、着々と好都合に進行している。両国の良好な関係を傷つけようとする外紙の計画は少しも効果が無い。フエツ駐在獨逸領事ヴァサル氏は、ベルリンに召喚されたが、これはモロッコの情勢に関して、諮問し、又獨佛談判に預からそうとする為である。

波斯内乱形勢 同上 

廃帝の味方は、益々増加中である。但し列強は、情勢を見守る態度を取りつつある。

726

英国議会大騒櫌 25日タイムス社発

下院は、未曽有の大騒櫌を極めた。首相アスキス氏が立って、上院強制政策を開陳しようとするや、怒り狂った反対党議員が、恐らく英国議会始まって以来、初めて、首相の口を開かせず「反逆人」と怒鳴り続けた。(一部抜粋)

獨逸対英国 24日伯林特約通信社発 

倫敦より来た公式通告は、大蔵尚書ロイドジョージ氏の演説が決して獨逸に反対して行われたものではなく、又好戦的意味が無い事を公言した。ベルリンに於いては、獨佛協議が満足に進行中のみならず、同談判は、英国の重要な利益に関係を及ぼすものが無いので、一般に頗る冷静な態度を持って、同演説を迎えた。そして獨逸政府は、却って獨佛協議の結果、定められた決定には、英国も同意するであろうことを疑いなしとしている。

727

佛獨協議形勢 26日タイムス社発

巴里通信員の理解によれば、獨佛間のモロッコ問題協議は、佛国が例の法外な獨逸の要求を拒絶した後に、友好的に進行しつつあると言われている。しかしベルリンに於いては、不安の念を示し、株式市場も不況に陥っている。一般公衆は、英国の態度について、大いに感じる所があった様である。又これまで知らぬ振りをしていた諸新聞も、今や態度を一変し、「獨逸はモロッコに於ける佛国勢力の増進に対して、報酬を得なければならない」と提議した。

バ氏の譲歩論 25日上海経由路透社発 

統一党党首バルフォア氏は、ニュートン卿に書簡を送り、上院否認権廃止案の為に生じた危険を論じ、「統一党員に対しては、上院内の議事進行問題については争わず、寧ろ外部に於いて、大戦闘を行う準備をする事を勧告する。蓋し戦闘は今、正に始まったのみ」と説き、上院議員の多数は、宜しく、ランスダウン卿に賛成するであろうと考えると言明した。

728

両領袖の決心 27日上海経由路透社発

二三の統一派新聞の予想によれば、若し統一党がランスダウン卿及びパルフォール氏の助言(即ち政府の貴族新造を防止しなければならないと言う意見)を拒否する場合には、両政治家は、統一党首脳の地位を辞するであろうと言われている。

故国名士招待 26日桑港特派員発

当地日本人会は、その後、各地区の日本人会と連絡、協議中のところ、何れも賛同したので、25日夜、委員会を開き、5名の故国名士を招待し、日米の親交を図ると共に、在留国民の状態を紹介する事に決し、人選を渋沢男爵及びわが社の清瀬規矩雄氏に依頼した。(一部抜粋)

英国の態度 25日伯林特約通信社発 

英国政府は、獨佛間のモロッコ問題協議が、ベルリンに於いて進行する間は、決して同問題に干渉する意思が無い旨を公式に宣明した。

729

波斯廃帝出陣せず 28日タイムス社発

露都来電=外務省に到着した電報の示す所によると、前ペルシャ皇帝ムハンマド、アリはアストラバッド(テヘラン市の東北2百マイル、裏海岸に近い都市)に滞在し、テヘラン市に於いて復位の布告を見る迄静かに待つと思われる。

獨紙の威嚇 同上

伯林来電=一般公衆のモロッコ問題に対する感情は、寧ろ平静に向かっている傾向がある。但し半官報的な性格の新聞は、ごうごうと反英的扇動を行い、英佛両国は、獨逸の実力について、自ら警戒する必要があると警告している。

英国モロッコ政策宣明 同上

英国首相アスキス氏は、下院に於いて英国のモロッコ政策について、英国はこれに関する佛獨協議に仲間入りする事無く、1906年のアルゼシラス協約の調印者として、又1904年の英佛協約の規定に基づいて、又直接的影響を受ける英国の利益を保護する為に、自らその間に立ち入って大いに活動しなければならないと述べた。(一部抜粋)

阿片問題演説 28日上海経由路透社発 

英国下院に於ける印度予算の討議中、エート大佐は、印度人民が阿片に関する損失について、何ら報償を与えられない事を哀訴し、且欧州からの、モルヒネ、コカイン輸出を禁止する事を主張した。

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東郷大将英国出発 29日タイムス社発

東郷大将は、土曜日、合衆国に向かい出発する。ロンドンタイムス社に惜別の辞を送ったが、その中で次の様に述べた。「余は英国より2個の忘れることのできない記念品を持って帰国する。第一は英皇帝戴冠式に参列した甚大な名誉、第二は英国政府及び国民より受けた慇懃な歓待及び温情ある歓迎である。」(一部抜粋)

モロッコ問題形勢 29日上海経由路透社発

一時緊張したモロッコ情勢が一般に緩んだのは、永興首相アスキス氏の対モロッコ政策演説に対する獨佛諸新聞の評論から明らかになった。

波斯内乱と露国 28日伯林特約通信社発 

テヘラン駐在露国公使は、ペルシャ在住の露国居留民に通告を発し、現ペルシャ政府の味方軍に加わり、廃帝に反対する事を禁じた。

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阿片会議決定 30日上海経由路透社発

 

ワシントン来電=列強は、全員、101日のヘーグの於ける阿片会議に参加する事に同意した。