明治43年12月

121

飛行会議失敗 30日タイムス社発

巴里来電=飛行に関する会議は、再開の期限を定めず閉会した。英国を始め,二三の強国は必要と認める場合に、別段に理由を説明する義務を負わず、飛行船に対し、国境を閉鎖する権利を保持する事を希望しているようである。

英国選挙運動 30日上海経由路透社発

英国内相チャーチル氏は、コルチェスターに於いて、腐魚、泥土を投げつけられる。

解説:チャーチルは、第1次世界大戦時海相として登場する。

 

122

佛国の罷業禁止 1日上海経由路透社発

巴里来電=鉄道の同盟罷業を制止する法律案が起草された。ここには、暴行をする者は、1カ月乃至5年の禁固、2ポンド乃至8ポンドの罰金に処せられ、罷業者は、半年乃至2年の禁固の処せられるべきと定め、且調停委員、仲裁裁判所を設けている。

解説:鉄道の同盟罷業に対しては、1015日「佛国罷業首領捕縛1016日「佛国罷業蹉跌」の記事に見られる様に、政府は、強引で断固たる処置をして解決しているが、今回、鉄道の同盟罷業を合法的に制止する為の法律案を考えている様である。

獨逸陸軍拡張 30日伯林特約通信社発

平時の獨逸陸軍兵数は、次第に増加し、1915年には515,321名に達する計画であり、その内容は歩兵624大隊、騎兵510中隊、砲兵640中隊よりなる様である。

解説:1914年7月に始まる第1次世界大戦まで3年7カ月、獨逸が着々と準備をしている。

 

123

獨艦攻撃 2日上海経由路透社発

コンスタンティノープル来電=トルコ上院に於いて、政府の獨逸戦闘艦購入について、激烈な攻撃が起こり、これは軽率な取引のであり、この軍艦は無用であるとの攻撃が行われた。宰相のハツキ、パーシャ氏は、これに答えて、戦略上の為に必要になった膨大な海岸線の防備上、この軍艦購入の正当であることを主張した。

加奈陀独立論 1日紐育特派員発

カナダ首相は、先にカナダの独立に関し演説したことがあったが、30日のカナダ議会に於いて、保守党の党首は、これを攻撃したが、自由党の党首はこれに答えて、我々はカナダの独立を望むが、しかしその独立は平和にして立憲的である事を好むと述べ、これより議会は混乱を極め、今尚騒いでいる。

練習艦隊消息 同上

我が練習艦隊は、海路無事に1日午前8時、サン、ペトロ港に入港、在留邦人は9隻の歓迎船を仕立てて、これを港外に出迎えた。

 

124

米国艦隊歓迎 3日上海経由路透社発

ロンドンのギルドホールに於いて、米国艦隊士官の歓迎午餐会が催され、盛大な儀式があった。

造船所と労働時間 同上

去る1日、英国に於いて新造戦闘艦(2万7千トン)2隻の入札を挙行したが、入札者は僅かに一人であった。この様に少ない理由は、先に議会に於いて決議した労働時間8時間を励行する時は、指定された期日までに竣工できない為の様である。

 

125

墨国革命後報 3日桑港特派員発

メキシコ大統領デアス氏は、革命的内乱に対し、平和克服の為に、5名の委員を任命した。そしてこれらの委員は、休戦旗を掲げた特別列車で2日、革命軍の根拠地であるチワワに向かった。

練習艦隊歓迎 同上

ロスアンゼルス市に於ける我が練習艦隊の歓迎会は、2日同北公演内に於いて開かれた。来会者は、下院議長スタンホン氏、商業会議所員、その他日米人5千の多数に達した。艦隊は7日、出発の予定である。

 

126

土国政府の攻撃 5日上海経由路透社発

コンスタンティノープル来電=トルコ議会に於いては、イスラム教徒と非イスラム教徒より成る反対議員等が、激しく政府の内治政策を非難し、議員テウフイク、リザの如きは、政府の行おうとしている事は、遂に専制的政治に終わるであろうと公言した。

 

127

米国海軍官制 5日紐育特派員発

米湖海軍においては、大将、中将という上位階級を新設し、且現在の様に老朽士官が居ないように改正する事にほぼ決した様である。

 

128

大統領教書内容 7日上海経由路透社発

大統領タフト氏は、国会に送った教書に於いて、国際借款に依る錦愛鉄道敷設がなお関係諸国間に於ける友愛的協議の題目となっている事及び米国の対清政策は、独立国として清国が有する正当な権利を侵害せずに、清国の発展の為に米国の資本を用いる事にあると述べ、更にパナマ運河防備費1,900萬ドルの支出を求め、且運河にては開削工事竣工後は、ここを通過する各船舶に対し、1トン1ドルの通行料を課す予定であると述べた。

解説:錦愛鉄道とは、満州の鉄道を国際シンジケートで建設しようとする計画の一つであった。当然日露の反対があった。

伯国移民成功 内国電報 7日発

本邦移民は、米国や豪州等の至る所で排斥され、現在渡航に障害がないのは唯南米方面のみである。そしてあのブラジル移民3千名の契約は、明春5月、本邦を出発する第3回移民1,500名を以って一先ず終わりを告げる次第である。しかしブラジルに於ける日本移民の成績が良好な結果、引続き毎年1,500の移民をブラジルに渡航させる新契約が、竹村移民会社代表者水野龍氏とサンパウロ州との間に締結されて、氏は年内に帰朝の予定である。しかるに外務省は、本邦公使より未だ移民成績に関する報告が無い故をもって躊躇の色があるようである。

解説:移民は、民間の会社が事業として行っていた様である。

 

12月9日

日本関税と首相 8日タイムス社発

英国首相アスキス氏は、現在日本が英国の製造品に対する関税率を6倍に引上げようとしている件につき、政府が如何なる政策を執ろうとしているかとの質問に対し、唯日本との協議が進行中である旨答えた。

教書内容続報 7日紐育特派員発

7日、教書の全文を見ると、満州に於ける日露の協商及び満鉄に関する米国の提議に対し日露両国の反対した理由と韓国併合があるが、全て実現した経過を述べたに過ぎない。

解説:教書とは大統領教書

練習艦隊 7日桑港特派員発

我が練習艦隊は、サンペドロ港に投錨以来、毎日米人より盛んな歓迎を受けつつあったが、本日7日、午後3時抜錨、マサニロに向かった。八代司令官以下、何れも元気旺盛である。

 

1210

印回両教徒衝突 9日タイムス社発

カルカッタ来電=マルワリ人等は、ヒンズー居住区内にあるイスラム教寺院に於いて行われる牝牛殺害に対し、反対運動をおこし、遂に紛争を生じ、マルワリ人等は、イスラム教徒を襲撃した。なおマルワリ人等は、全ヒンズー協会の扇動家に教唆されつつある。

解説牝牛とは、出産していない雌牛

墺国海軍拡張 同上

ウイーン来電=消息通のツアイスト新聞の解説によれば、新海軍計画は、5年間で1,250万ポンドを費やし、ドレッドノート型戦艦4隻、高速巡洋艦3隻を建造し、その他水雷邸3隻以上、潜航艇5隻以上を増加する計画の様である。

解説:当時のオーストリアは、アドリア海に面しており、海軍を持っていた。「サウンド・オブ。ミュージック」に登場するお父さんは、オーストリア海軍の大佐であった。

造船業紛議落着 9日上海経由路透社発

英国造船業の紛争を解決する協約が調印された。但しこれは、なお工夫等の投票に附されると思われる。

 

1211

印度宗教紛議 10日タイムス社発

カルカッタ来電=マルワリ人等は、イスラム教寺院に於いて行われる、宗教的意義のある牝牛殺害に抗議し、商売を休業した為、欧州人の黄麻その他織物貿易は麻痺するに至った。又マルワリ人とカブル人の間に紛争を生じた。印度政府は何人も適法なイスラム教徒の権利に干渉する事を許さないと公言した。

解説:マルワリ人とは、インドのラジャスタン地方出身の商人です。黄麻とは、黄麻と言う植物から作られる繊維

 

1212

土領亜細亜騒乱 11日上海経由路透社発

コンスタンティノープル来電=ドロース人及びベトウイン人より成る乗馬盗賊団はレラア連絡線から南方80マイルのカトナンに於いて、ヘドヤツ鉄道を襲撃し、駅を占領し、鉄道線を破壊した。7個大隊が直ちにイエメンに派遣されたが、なお増派されると思われる。公電に依れば、北イエメンの情勢も容易ならず、2万の反徒はイマミアヤの統率下にあってアジルに侵入したと。

解説:当時トルコから西側、スエズ運河まではトルコ領であり、トルコのシリア総督の支配下にあった。この様な鉄道を襲撃する様子は、小説「アラビアのローレンス」に詳しく書かれている。

 

1213

米国人口激増(総計1億0Ⅰ百万) 12日タイムス社発

ワシントン来電=本年の統計が完成した。これによれば、米国大陸の人口は、10年前に、7千6百万人であったが、今や殆ど9千6百万人となった。又米国旗下にある領地を加えれば、1億01百万人を超えるに至った。

解説:米国の人口は、その後も10年間で2千万人、100年間で2億人増加して、現在3億3千万人となっている。英国の人口は約4千万人から、100年後の現在約6千7百万人となっている。フランスと獨逸も、ほぼ同様のペースで増加している。日本の人口は。4千百萬人から現在12千5百万人で、英国、佛国、獨逸と比較すると非常に増加している。

英国製艦改善意見 同上

英国の海軍専門家は、新ドレッドノート型戦艦の装甲を一層厚くし、且16吋砲を以ってこれを武装する事を提議した。

獨逸宰相演説続報 11日伯林特約通信社発

獨逸宰相ベートマン、ホルウエッヒ氏は、帝国議会に於ける予算討議に際し、獨逸の内外政策に関し演説した。英国は列国の海軍軍備計画を制限し、国際的関係を強固にしたいとの意を伝えたが、何ら明確な提議をしないので獨逸はこれを否認もしくは承諾することはしない。但し獨逸は、武装競争を避ける事を望んでおり、且政治的、経済的利権について打ち明けた協議をするのは、海軍比例についての相互不信を避ける所以であるとの観念に重きを置くものである。獨露両帝間の協議は満足であり、両国共通の利益はペルシャに於ける商業を一層発達する事を求めるものであり、露国の特殊な商業的利益は北部ペルシャにあり、獨逸はペルシャに対する露国の特殊な商業的譲与要求を尊重している。しかし露国もペルシャに於ける獨逸商業の拡張を阻害せず、又全力を尽くして北ペルシャの露国鉄道とバクダット鉄道との連絡を図る事を希望する。(一部抜粋)

解説:北ペルシャは露国の勢力圏下にあるが、露国は、満州と同様に北ペルシャにも鉄道を持っていた様である。

4年後に第1次世界が始まる時の獨逸帝国議会での宰相の演説である。

 

1214

伯国水兵反乱 12日紐育特派員発

ブラジル国巡洋艦は、11日早朝より午後4時頃まで、リオデジャネイロ市の砲撃を続け、多少の死傷者を出した。この暴動は何の為か未だ判然としていない。

鉄道同盟罷業 同上

汽車機関士等がシカゴに於いて会合し、投票の結果、大同盟罷工を行う事を決定した。

米紙の日本攻撃 12日巴里通信社発

多数の佛人が愛読する欧州刊行のニューヨークヘラルド新聞が、本日、日本に関して論文を掲げた。その大要は次のとおりである。

今日本では、恐米熱が流行しており、英国すらその結果に恐れている。それは、日本の政治及び商業的野心が、英国の利害に大いに関係しているからである。さればこの際、日英両国の新聞紙たるものは、日本の野心を奨励する事に努力せずに、この様な野心は持ってはならないと極言、忠告しなければならない。これは日本に対しての忠実な行動と言うことが出来る。特に英国は、清国の君主的主権と領地上の保護を以って自任しているので、日英同盟があるにもかかわらず日本に反対してでも、特にこの点に留意しなければならない。

この議論は一部の植民に熱心な人や政治経済家に不安の念を与えた。

 

1215

印度宗教騒動 14日タイムス社発

カルカッタ来電=ベリアガタ及び市外のヒンズー教徒等は、イスラム教が宗教儀式として行う牝牛殺害を妨げようと企て、ヒンズー教警官50名も反乱的行動を執り、これに合流してイスラム教徒を攻撃した。このヒンズー教警官は、捕縛され、武器を取り上げられ、結局暴動は騎兵の手により鎮圧された。

水兵反乱鎮定 13日桑港特派員発

ブラジル国軍艦の暴挙は鎮定されたが、あの砲撃の為に2百名以上が殺された。

解説:昨日の報道の続き

南洋移民(神戸) 内国電報14日発

琴平丸にて、九州、沖縄、愛知、三重、福島等の男子1千名の移民が、南洋ニューカレドニア島に向かう。ニューカレドニア島は、豪州シドニーの東北に横たわる島で、ニッケル鉱山があり、佛国会社が事業を行っている。明治34年に初めて千人の移民を送り、今回5年の契約年限となり、来年1月に帰国するため、今回の大移民となった。労金は月に16円で、移民給料としては安すぎると非難もあるが、往復船賃、食事及び労働服等は皆会社から支給されるので、労金は殆ど全部貯金できる。今回の移民は、同じ東洋移民会社が行った。(一部抜粋)

 

1216

土領亜細亜騒乱 15日タイムス社発

コンスタンティノープル来電=シリアから来る報道は極めて不満足である。ベドウン蛮族の大勢は、北マンよりアジュールフェルテルウイッシュに至る各鉄道駅を襲撃し、これを占領し、且番兵、鉄道人夫を悉く殺害した。その為トルコ政府は大至急30大隊をエーメン州に派遣した。

解説:当時トルコからスエズ運河に至る地域はトルコ領であり、トルコ総督が支配していた。ここに書かれている鉄道襲撃は、「アラビアのローレンス」で有名なイギリス人ローレンスの活動である。

造船罷業落着 同上

英国造船業組合が,先頃協定違反の汽缶整合業者15千人に対し,工場を閉鎖した事件hじゃ、漸く解決を告げ、労働者は造船業者と労働者委員の会議にて決定した条件を承認した。

解説124日「造船所と労働時間」の記事の通り、ストの為に、造船業者は、一時軍艦建造に応札できなくなっていた。

世界的学術研究所費 14日紐育特派員発

カーネギー氏は、今回、公共の為に2千万ドルを寄付する事となり、その委員として前国務卿ルート氏及び前コロンビア大学総長セス、ロー氏を選んだが、多分これで世界的学術研究所を設置すると思われる

解説:カーネギーホールで有名なアンゴリュー、カーネギー氏の寄付である。

 

1217

米国陸軍拡張 16日タイムス社発

ニューヨーク来電=陸軍卿の秘密報告と称せられるものが発表された為、民心は又々戦争の恐れを抱く事になった。そして思慮ある人々も8万Ⅰ千名の常備軍兵数が少なすぎるとの一点に関しては一致している。但し莫大な増加を見る事はないであろう。

解説:海軍は列国海軍に伍して大艦隊を維持しているが、それに対し陸軍兵力は81千人とすくない。連邦政府の陸軍は少ないが各州には州兵がおり、米西戦争や第1次世界大戦にも州兵が参加していた。

土領蛮族暴乱 16日上海経由路透社発

タイムスのコンスタンティノープル通信員によれば、ベトウイン蛮族の大勢ハ、マンより北方に向け、ドジルフェルデルウイッシュに至る迄の各鉄道駅を占領し、各兵士及び鉄道人夫を殺害した。

解説:アラビアのローレンスが活躍している。

 

1218

露仏同盟鞏固 17日タイムス社発

巴里来電=新任駐佛露国大使イズウオルスキー氏が当地に着任し、直ちに外務卿ビション氏と会見した事は大いに意味がある事と考えられる。尚本日は、大統領フアリエル氏とイズウオルスキー大使との間に、露佛同盟を強固にする事を目的とする会談がある筈である。

解説:第1次大戦まで4年、対獨政策として露仏同盟がある。

英紙の親獨論 16日上海経由路透社発

ロンドンデイリー、ニュースは、社説に於いて政府の第一の事業は、露佛との協商より、国際的敵対分子を排除し、獨米両国と親密な協商を行う事にある。それ故、獨逸宰相ベートマン、ホルウエヒの演説は、新時期を画するものであると言明した。

解説1213日の「獨逸宰相演説続報」で獨逸宰相が「獨逸は、武装競争を避ける事を望んでおり、且政治的、経済的利権について打ち明けた協議をしたい」趣旨の演説をしている。

アルサス新憲法 17日伯林特約通信社発

獨逸連邦会議は、帝国領アルサル及びローレンスに対する新憲法案(新選挙法案を含む)を可決した。その内容によれば獨帝は依然、国権執行の権能を保持し、又宰相の副署を以って総督を任命する。但し総督は帝国の官吏であり、連邦の官吏ではない。帝国領である領州と帝国との関係は変更が無いけれども、両州は内政に関する重大な自治権を得る。(一部抜粋)

解説1871年の獨佛戦争でアルサス=ローレンスは獨領となり、第1次世界大戦後の1919年、佛領となった。

 

1219

アルサスの自治 18日上海経由路透社発

獨逸政府は、帝国領アルサス、ローレンス新憲法を制定した。その内容によれば、総督は皇帝が任命し、又立法部として両院を置き、第1院は議員18名として、大部分は任命される。第2院は議員60名とし、普通選挙権により直接選ばれる事とした。

解説:昨日の「アルサス新憲法」の続報

国防案中止 17日紐育特派員発

陸軍卿の国防案は、大いに物議を生じた為に中止の姿となった。陸軍卿は多くの攻撃に対して、国防の不備を知りながら、国民に告げないのは不忠ではないかと弁解していた。

解説1217日「米国陸軍拡張」の続報

 

1220

駐佛露大使と世評 19日タイムス社発

前露国外相イスウオルスキー氏の駐仏大使任命は、露佛両国の協力を一層親善にするであろうとの意見が至る所に発表されつつあり、佛国大統領ファリエル氏が同大使を引見して述べた歓迎の辞は非常に慇懃を極めていた。

解説:第1次世界大戦まで4年、当時の佛国にとって、獨逸は現在の中国であり、14千人の人口を有する大陸軍国の露国は現在の米国にあたる。

梅毒新薬発明 同上

ロンドンタイムスは、2段を費やしてフランクフルトの獨逸エルリッヒ教授と日本医師

秦氏の発見による梅毒治療に奏効する所謂606号薬につき説明した。

解説:湊氏とは医学博士湊佐八郎であり、我が郷里岡山の第3高等中学校医学部(現岡山大学医学部)を卒業している。

 

1221

愛蘭自治反対 20日上海経由路透社発

モーニング、ポスト及びデイリー、エキスプレスは、アイルランドのウエルスター(統一党の根拠地)に於いては、武力をもってしてもアイルランドの自治に反対しようと準備中である旨を特筆大書して詳報し、政府は果たしてこれに対し、強圧を加えるのか、或いは国民党と統一党が自ら、最後まで闘うままに任せようとするのか問うている。

解説:アイルランド紛争は900年の歴史があり、この当時も紛争があった。

米国国防反対 19日紐育特派員発

陸軍卿の国防案に対しては、昨今、知名人士の反対が多く、しかもその反対者は、海軍を充実すれば足りると主張している。

解説1217日「米国陸軍拡張」の続報

佛紙の満足 19日伯林特約通信社発

佛国新聞は、旧来の佛露同盟政策を維持しなければならないと言う新露国大使イスウオルスキー氏の宣言に対し満足を表わした。

解説:普仏戦争で獨逸に負けたフランスにとって、対獨逸の安全保障上、露国との同盟は極めて重要であった。第1次世界大戦まで後4

 

1222

日本財政論評 21日タイムス社発

タイムスは、日本政府の賢明な事を称賛し、特にその外債償還策は、国家の信用を高める最も有効な方法であると説き、唯この上、増税をする様な事があれば、国民に取って負担が重くなり過ぎるのではないかと疑っている。

日米條約協議(移民制限問題) 20日紐育特派員発

日米條約改正に関するワシントン通信によれば、現在太平洋沿岸選出の上下両院議員は、しきりに日本労働者の入国に反対している。又日本政府が強いてこの事について主張するならば、太平洋沿岸住民より猛烈な反対を受ける事が必然なので、日本政府は、自ら渡米労働者を制限している。国務卿ノックス氏は、日本が米国の意見を受け入れる様に尽力中であり、円滑に交渉が進む様に期待している。尤も国務卿はこの事を秘密にしているが協商の進行しつつあるのは確実である。

 

 

1223

日英博の効果 22日タイムス社発

和田日英博事務官長の為に公式の午餐会が開かれた。氏は日英博覧会が関係者が想像したよりも遥かに大きな効果を挙げた旨言明し、満場の割れんばかりの喝采を浴びた。(一部抜粋)

米紙の條約改正論 21日紐育特派員発

共和党機関紙トリビュン紙は、日米條約改正について、次の様に論評している。互恵条約はある場合に不都合な所があり、又実行上、労働者に関する件については面倒が多く、兎も角も今回の條約改正には日本側より一歩譲らなければ、円満に解決し難いが、幸いに日本より穏やかに出ているので、真に幸福である云々

 

1214

西班牙革命陰謀 23日タイムス社発

スペインに於いて、革命が起きようとする情勢である。この革命を企てようとする一味の中に、同国の現総理大臣も加わっているという事で、同国の議会は大紛争を起こしたが、この陰謀者は、現在オーストリーに滞在すると言う彼のドンカルロを皇帝にしようとしている様である。

解説:スペインは1873年以来共和制で、1975年フランコ総統の死去後、カルロス1世が即位している。

陸軍と飛行機 同上

米国陸軍少将ウッド氏は、最も高く上がる飛行機を陸軍信号兵に使用するべきであると説き、現在の様な飛行機があれば、露国は奉天に於いて日本の為に敗北しなかったであろうと述べ、又海軍にもこれを使用すべきであると主張した。

 

1225

膃肭獣保護会議 24日タイムス社発

ワシントン来電=オットセイ盗猟防止に関する国際会議の開催について、これまで存在した各種障害をほぼ完全に一層することが出来たと考えられる。従って早くは今冬、遅くとも今後1年以内に、この開会を見るのは確実である。この緊急に必要なオットセイ絶滅防止会議に参加する予定の国は、米、英、日、露の4国である。

解説:当時オットセイは、毛皮や漢方薬の材料として珍重され、乱獲により生息数が激減した。

英国飛行器建造 同上

英国の飛行家グラハム、ホワイト氏は、英国に於いてこれまで企てられたよりも一層大型の飛行器を建造しようと準備している。氏は百馬力の機械を備え付けるつもりの様である。

愛蘭自治反対 24日上海経由路透社発

愛蘭アルスターの市民は、ベルファーストに於いて未曽有の自治反対、大示威運動を行おうとしている。又スコットランド、イングランドの諸都市に於いて、合同維持の重要性を主張する運動を開始しようとしている。

解説:アイルランド独立反対の運動である。この運動家は筋金入りのプロテスタントであり、独立運動家は筋金入りのカトリックであった。

 

1226

墨国官軍糧道絶る 24日紐育特派員発

メキシコの反徒は、密かに米国方面より武器を輸入すると同時に、同志の者を引き入れている。昨今、急に勢力を増やし、官軍の糧道を絶ったので、官軍は非常に困難を極めつつある。政府は、汽車にて軍隊、糧食を送ることが出来ず、苦心惨憺中である。

解説:デイアス独裁政権は1911年に打倒される。

西国無事に済む 同上

スペインの革命騒ぎは大事に至らなかった。総理大臣の辞職説は確かではない。

解説1214日「西班牙革命陰謀」の続報

 

1227

阿弗利加政治会議 26日タイムス社発

巴里来電=佛国代議院は、殆ど満場一致で、アフリカ赤道下の行政政策に関する議会開催の件を可決した。数名の弁士が、エジプトをメージ(イスラム教の一種族)の危害から救ったキチナー元帥の事業を称賛し、スーダンに於ける英国の事業を称揚した。

解説:キチナー元帥は英国陸軍軍人で1910年に元帥となり、4年後の第1次世界大戦では陸軍大臣となっている。仏議会が、何故、英国のキチナー元帥を賞賛するのか不明である。

墺国海軍拡張 26日上海経由路透社発

ウイーン来電=オーストリア海軍計画が、1228日、オーストリア代議院会に提出される予定で、同案は、現在トリエステ港に於いて建造中のドレッドノート型戦艦2隻を1913年秋迄に完成し、その姉妹艦2隻を1914年までに、高速力の巡洋艦3隻、水雷艇12隻、潜航艇4隻を1915年迄に、それぞれ完成させる事を定めた。そして費用総額は1,400万ポンドである。

 

1228

英兵蛮族衝突 27日上海経由路透社発

プシール来電=英国巡洋艦ヒヤシンス号は、武器密輸出禁止に関連して、武器捜索を行う為に、ペルシャのリンガ付近のドバイに兵士を上陸させた。しかしアラビア蛮族等はこれに反抗し、約40名の死傷者を出した。そして英人側には水兵3名の外下士官が死亡し、水兵9名負傷した。

八代艦隊歓迎 26日桑港特派員発

現在メキシコのサリナクルル港に投錨中である八代練習艦隊の八代少将以下士官26名と候補生144名及び軍楽隊一行は、25日首府に入り、政府は国賓として盛んに歓迎した。午前大統領ダイアズ氏は、チェバルト公園に一行を迎えて歓談し、午後は闘牛を見物し、夜は我が公使の晩餐会に臨んだ。

 

129

波斯外相辞職 28日タイムス社発

ペルシャ外相が辞表を提出した。原因は主として南部商路の警察に関する英国の意図が判明しない為である。しかし盗賊に対する取締りが、昨今の様に、引続き実行される場合には、秩序の維持に関し、先に英国が指定した期限は延長されると思われる。

解説:ペルシャの南半分は英国の勢力圏下にある。

米人を打殺せ 27日紐育特派員発

我が練習艦隊は、現在メキシコの首都に於いて歓迎されているが、しかし26日有名な闘牛場に我が士官を招き、数千のメキシコ人は、日本の為に万歳を叫び、引続き米国人を打殺せと叫びんだ。日本士官万歳を唱えれば必ず米人を打殺せと叫ぶので、我が士官は大いに迷惑した由であるが、これは我が士官を好餌にして排米感情を漏らしたものである。

 

1230

佛英協商難(武器密輸入問題) 29日タイムス社発

パリー来電=当地に於いて指摘されたところによると、現在、ペルシャ湾の武器輸入防止に関する英佛協商の成立に、最も妨害となっているのは、同密輸入に従事する佛国商人の利益関係と密輸入の根拠地である佛領のジブチ港の利益関係であると言われれている。

波斯外相辞職 28日上海経由路透社発

テヘラン来電=ペルシャ外務大臣が辞職した。これはペルシャ政府が盗賊の鎮圧について、何らの重要な結果を収めることが出来なかったので、英国は1018日に宣言した「自ら鎮圧の任にあたるであろう」との威嚇を実際に行うであろうと信じられるからである。なおペルシャは遠からずこの鎮圧の為に執った手段を詳述した回答を英国に送るものと思われる。

波斯の回答 同上

テヘラン来電=ペルシャは、英国に対し回答を送った。その内容は「ブシル、カスラム、シラスの本道は、現在開かれ、商隊がこれを通過中である。125日以来、略奪は行われていない」との意を言明したと信じられる。

 

1231

波斯公文内容 30日上海経由路透社発

テヘラン来電=今回英国政府に渡されたペルシャ政府の公文には、秩序回復の方法、適任の総督の任命及びブシャイア、カゼルン並びにシラーツ方面に於ける商路の警備、歩騎両隊の派遣及び有効な憲兵隊を迅速に組織する為に外国より適任の将校を招聘することを詳述している。

解説:昨日の「波斯の回答」の続報

巴奈馬防備費要求 29日桑港特派員発

タフト大統領は、いよいよ本議会に向けて、パナマ防備の為に、2千万ドルを要求する事となったが、本年度は7百萬ドルを要求する筈である。