明治43年6月

主要記事

期日

日本関係

期日

露清関係

期日

英米関連

期日

独仏その他関連

64

日本労働者敬遠

61

米貨排斥運動

61

南阿連邦創設祝祭

63

アルバニア征伐

66

満州移民方針

64

芬蘭自治保存請願

62

飛行機条約

63

クリート政府の哀訴

66

北海道新移住地決定 

66

非買同盟と米人

615

埃及問題討議

63

哀れな摩洛哥

610

日本関税反対 

610

芬蘭憲法廃棄 

627

阿片問題交渉 

68

希臘の決心 

617

排日的暴動

611

猶太人迫害

628

英国海軍演習

610

希土関係険悪

618

日本新関税攻撃

619

波蘭の暴行

 

 

612

列国の通帳

618

日本人迫害事件

624

芬蘭と露国首相 

 

 

615

獨逸陸軍演習 

626

日露協約調印近し

624

波斯の廃露熱

 

 

623

クリート屈服

 

 

629

日露協約と米清

 

 

624

西班牙宗教改革

 

 

 

 

 

 

625

土耳其の希臘貨物排斥

 

 

 

 

 

 

626

獨沸関税戦争

世界情勢

6月1日

南阿連邦創設祝祭 31日タイムス社発

ヨハネスブルク来電―31日(火曜)、南阿連邦の創設を祝す為に、トランスバールとケープ植民地、ナータルとオレンジリバー植民地の4州各地に於いて、周到な準備が行われつつある。又当日は、南阿総督グラッドストン子爵、首相ボタ、将軍その他諸大臣が宣誓を行う等荘厳な儀式を挙行する筈である。

米貨排斥運動 同上

サンフランシスコ清人の組織である数個の商業団体は、清国に於ける米貨排斥を開始する運動に着手する事を決定した。その理由は、サンフランシスコ移民国官吏等が不必要に且つ侮辱的な規則を以て清人旅行者を苦しめているとの事である。

解説:日本人労働者の入国は禁止されているが、清人労働者である苦力はそれ以前に入国禁止になっていた。しかもここにある様に苦力以外の旅行者や商人等も苦力と見分がつかないとの理由で、入国管理官が入国禁止にしている。以前も清国全土で米国製品の不買運動が起こっていた。

 

6月2日

墺帝とボスニア訪問 1日タイムス社発

サラゼウス(ボスニア)来電―フランツヨセフ皇帝は、数時間に亘って各宗派の代表者、陸軍将校、諸領事、文官等多数を引見し、一人一人に慇懃にその歓迎に答えられた。午後はローマ教会、イスラム教会、ユダヤ教会等を訪問された。一般大衆は深く感動した様子であった。

解説:オスマントルコの衰退に伴い、オーストリアは1908年ボスニア、ヘルチェゴビナを併合した。バルカン半島で唯一ロシアと同じスラブ民族であるセルビアは、脅威を感じ、そして1914年ボスニア、ヘルチゴビナの首都サラエボで、フランツヨセフ皇帝の皇太子夫妻がボスニア系セルビア人に暗殺され、第1次世界大戦が始まっている。

飛行機条約 1日サンフランシスコ特派員発

合衆国とメキシコ両政府は、急激に進歩中である空中飛行機を利用して、密輸入を計画するものがある事を恐れ、飛行機条約なるものを締結し、飛行機の通過すべき一定の通路を設定しようと、現在協議中である。なお両国政府がこの条約を締結しようとするのは、商品のみならず、移民の潜入をも防ぐ事も目的の一つである。

 

6月3日

日本国税と英国 2日タイムス社発

支那協会の書記ウイルコックス氏は、再びロンドンタイムス紙に投稿し、日本の新関税率が特に英国に不利であるとの議論に対する日本新聞の反論に更に反論した。その要旨は、議論上より言えば、日本新聞の議論は正当かも知れないが、しかし実際の結果はどうか。現に綿糸布の輸入税は、新税法に於いて増加しているではないか。新関税法が英国の貿易に果たして不利益を与えるかどうかを判断すべき正確な比較の基礎は、日本が過去11年間実際に賦課してきた税率と新税率との間にある云々

解説:5月27日の記事「日本関税攻撃」の続報である。

アルバニア征伐 同上

アルバニアから来た特報によれば、トルコ軍隊3個師団は、ドヤコリに向け進軍中である。そしてその内一個師団は、何らの抵抗を受けずにラホワツを占領した。村民は武器を官軍に引渡している。主要な家屋は消失した。

解説:アルバニアは1912年オスマントルコから独立した。

クリート政府の哀訴 2日上海経由ロイター社発

クリート政府は、列国に公文を送り、速やかにギリシャに併合されるよう哀訴した。しかしギリシャの外、列国政府の同意を得るのは難しいと思われる。

解説:5月31日の記事「トルコの決心」の続報

哀れな摩洛哥 同上

公債協約の規定により、佛国監理官はモロッコ関税収入の一割をモロッコ国王に与え、残り9割を自国に取り立てる事に着手した。

 

6月4日

芬蘭自治保存請願 3日上海経由ロイター社発

佛国下院議員百名、同上院議員百50名及びイタリー代議院議員百28名は、文書によって露国国民会議に訴え、フィンランド憲法を保存するよう主張した。

解説:フィンランドはロシア総督の支配下で議会も認められていたが、この記事にある様に憲法が改正されて議会が廃止されようとしている。

日本労働者敬遠 2日ニューヨーク特派員発

カルフォルニア州労働局に於いて、日本労働者を必要とするとの噂があったが、この事に関しスタンフォード大学総長ジョルダン氏は、シカゴに於いて演説し、カルフォルニア州が日本の労働者を容易に入国させるべきとの説は、賛同し難い。例え日本労働者を必要とする状態があるとしても、先ず日本の労働者は渡米しない方が日本の為にも米国の為にも利益になるであろうと述べた。

解説:カルフォルニア州政庁が、日本移民は優秀であり必要との報告書を出しており、これに対する反論の様である。

 

6月5日

米鉄の威嚇 4日タイムス社発

ニューヨーク来電―米国西部の有力な諸鉄道会社は、政府が運賃増加を禁止した事に対抗する意味で、今後各種鉄道改善を中止し、服務人員を減少すると公言した。この様な事は、不実の態度であり、鉄道会社自身の上にも悪影響を及ぼすであろうとは一般に認められる所である。

米獨の衝突 4日上海経由ロイター社発

コンスタンティノープル来電―米人の小アジア鉄道敷設計画は、先般国務会議に於いて是認されたので、鉄務省の会議に附せられた。然るに獨逸の抗議が行われた結果、大障害に合う事になった。因みに米人の計画は8万平方kmの採掘権を含んでいる。

英国の狂喜 同上

飛行家ロールス氏の海峡横断に関して、英国に於いては欣喜に溢れた様相である。ロ氏が使用した双翼飛行機は英国で製造され、その機械は佛国製である。

 

6月6日

クリート問題 5日上海経由ロイター社発

最近、非公式にパリ―を訪問されたギリシャ皇帝は、大統領ファリエル氏及び佛国内閣大臣と会見し、その後同じく非公式にローマに到着した。謂うまでもなく昨今議論沸騰して、険悪な問題となっているクリート事件を協議する為である。そしてギリシャ人もクリート島民も現在の結合関係を解かない決心であり、同時にトルコも又その決心である。

非買同盟と米人 5日サンフランシスコ特派員発

当市清国人の米製品に対するボイコット決議は、米人を非常に狼狽させ、新聞はこれに論評を加え始めている。沿岸連合商業会議所代表者は、支那人側に協議を申し込み、3日当市の商業会議所に於いて、清人委員と会見した。その結果、移民局が移民取扱いについて不法に過激であるかどうかを調べ、若し支那人側の主張に理由があるならば、商業会議所より中央政府に請願することとし、それまでボイコットを一時見合わせることとした。

解説:6月1日の記事「米貨排斥運動」の続報

南京騒乱と欧州人 4日巴里特派員発

清国よりの電報によれば、南京に於いて激烈な騒乱が起こったという報に対して、沈静化を望んでいる欧州人は不安の念を抱いている。

満州移民方針 内国電報5日発

小村外相は、第26議会に於いて従来の北米、南米その他海外移民は最早その余地がない為、今後努めて我が同胞を満韓に集中させる方針であると言明した。

差し当たり東洋拓殖会社の機関により内地人の韓国移住を奨励中の現状であるが、満州方面に於ける邦人移住については、未だ具体的奨励策が無く、従って現在の處、鉄道工事若しくは架橋工事に従事する一部の少数の単独者に限られている。(一部抜粋)

北海道新移住地決定 同上

北海道経営案の実行と共に道庁は、移住民保護政策によって成るべく多数に移住を奨励する目的も以て、先般来各府県に吏員を派遣し、専ら勧誘中であるが、本年度新たに移住地として選定したのは174か所で、この面積は1億4千百95町歩であり、細部は次のとおり。

北見国48か所 5千7百10万町歩、渡島国21か所 7百85万町歩、その他略(一部抜粋)

解説:日露戦争後、北海道への本格的な植民が行われたようである。

 

6月7日

法王回章と獨逸 6日上海経由ロイター社発

イタリーのボロメオ枢機卿聖列3百年祭に当たり、ローマ法王が発した回章は、ボロメオと同時代の宗教改革派を激しく攻撃した為、プロシャの人心を激怒させている。議会に於いては、種々の質問が起こり、政府に対し事件の再発を防止する措置を執るよう要求した。

近東形勢険悪 5日ベルリン特約通信社発

ギリシャ政府は、情勢が容易でない為に、予備兵を招集中であり、トルコ政府は、大いにこれを憂慮しているとの説がある。

 

6月8日

摩洛哥の危機 7日タイムス社発

タンジール来電によれば、フエツ守備隊の一部は、俸給の支払いを受ける事が出来ない結果、脱走した。又現在フエツに向け退却中の一連隊は、引続き叛乱した土蕃に攻撃されたが、遂に脱走した。

希臘の決心 6日ベルリン特約通信社発

アデンよりの報道によれば、ギリシャ政府は、遠からずクリート島をギリシャに併合する宣言を行う意志であり、ギリシャ皇帝はクリート問題を解決する方法が一にその希臘への併合にあることを宣言した。

解説:6月6日クリート問題の続報

前摩洛哥王巡礼 同上

前モロッコ王アブダル、アジスはメッカへの巡礼の途に上った。

解説:現モロッコ王が戦闘に勝利し、前モロッコ王を追放した。

法王失言問題答弁 同上

プロシャ政府は、下院に於ける自由保守両党の質問に答えて、法王が宗教改革家を攻撃したと伝えられたものは、全くローマの新聞が法王の言を曲解した結果であると言明した。

解説:前日の記事の続報

 

6月9日

アルバニア形勢 7日タイムス社発

アルバニアよりの特報によれば、同地の反乱は鎮圧した旨公式に発表された。しかもトルコ政府の楽天的態度に拘わらず同地の難問題が真に解決されたとは信じがたい。因みにトルコ政府は、同地に恒久的守備隊を置き、又人民の武装解除を厳重に実行させる意志があると言われている。

解説:結局アルバニアは2年後独立した。

鉄道問題妥協 7日ニューヨーク特派員発

米国政府と鉄道会社との訴訟事件に関し、6日、26会社の代表者と大統領と会見したが、鉄道会社側よりは一切値上げせずと申しでたので大統領も然らば政府も訴訟を取り下げると容易に妥協が成立したが、これには何か密約があると言われている。

解説:6月5日記事「米鉄の威嚇」の続報

法王と獨逸 同上

ローマ法王は、獨逸巡礼者一行を法王庁に引見し、自己が獨帝、獨逸連邦君主、獨逸人民に対し、至大の尊敬を払っていると言明した。この行動は先般法王の回章の為に、獨逸に於いて喚起した悪感情を和らげる効果があると思われる。

解説:昨日の記事の続報

 

610

日本関税反対 9日タイムス社発

英国マンチェスター市のキャリコ布印染業協会は、タイムスに寄稿し、日本新関税は、大陸の競争者よりも寧ろ英国の印染業者にとって不利であると公言し、且つ比較表を示した。

解説5月27日「日本関税攻撃」にある日本の新関税は主に英国製品に影響するという記事の続報と思われる。印染(しるしぞめ)とは、半纏、のぼりや暖簾(のれん)、旗などに、屋号や家紋などを 染め抜いてある染物のことで、キャリコ布印染業とは、キャラコという生地の印染業と思われる。

芬蘭憲法廃棄 同上

露国国民議会は、僅か7分間で、一世紀間継続して来たフィンランド憲法の廃止を決議した。

希土関係険悪 9日上海経由ロイター社発

コンスタンティノープル来電―ギリシャ公使はトルコに於けるギリシャ製品の排斥に抗議し、宰相ハツキベイと熱烈な会見を行った。宰相は、この国民的愛国的運動が法律に違反しない限りは、自己もこれに干渉する事は出来ない旨公言した。

 

6月11日

猶太人迫害 10日タイムス社発

露都来電―スモレンスクの官憲は、ユダヤ人に迫害を加え、且つ全員の放逐に着手したとの情報があった。

解説:スモレンスクは、ドニエプル河沿いの古都で、ヨーロッパからロシアへの通り道にある為、ナポレオン戦争等で度々戦火を受けた。

希土関係険悪 10日上海経由ロイター社発

トルコに於けるギリシャ排斥の感情は日を追って益々激しくなり、スミルナに於いては、ギリシャの汽船に対するボイコットが起こり、ギリシャ人は商店を閉じた。

法王回章問題 9日ベルリン特約通信社発

法王庁に派遣されているプロシャ使節は政府の命により、法王の回章に抗議する通牒を法王に提出した。因みにロセルヴィトロ、ロマノ新聞は法王が獨逸新教徒の名誉を棄損する意志がなかったこと、又その獨逸新教徒に対し尊敬の念を持っていると言明した。

 

6月12日

芬蘭案可決 11日上海経由ロイター社発

フィンランドを露国議会の立法に殆ど従わせる議案は、激しい討議の末、23対164の大多数を以て下院の第3議会を通過した。

列国の通帳 11日上海経由ロイター社発

列国領事は、昨日クリート政府に最後の連合通牒を送り、若し回教徒議員をクリート議会に復席させなかったならば、列強はこの情勢を処罰する為に断固たる手段をとるであろうと言明した。

 

6月13日

阿片専売と英国 12日上海経由ロイター社発

英国政府は、広東の阿片専売問題に関し、インド政庁と公信を交わしつつあるが、この阿片専売は条約違反であると認められ、そしてボンベイの阿片商人は皆容易ならざる事態であると認めている。印度貿易は既に夥しい影響を受けており、商人は非常な損害を受けつつある。彼らは条約上の権利が励行される迄、阿片の売下げを停止することを政府に勧告した。

 

6月14日

埃及革命党鎮圧案 13日タイムス社発

アレキサンドリアよりの特報によれば、新聞裁判法、秘密団体、学校紀律に関する3個の議案は、エジプト立法参議院に於いて、軽率にも或る法案は完全に否決され、或る法案は散々に修正を加えられた。但しエジプト政府が党派的煽動を許さない決心を有しているのは明瞭である為、結局遠からず原案どおりにて通過を見る事になるであろうと予想される。

解説:エジプトは英国の支配下にある。

キ元帥辞職説 同上

英国政府は、遠からずキッチナー元帥が地中海陸軍司令長官の職を辞する事を希望する旨を発表するであろうと信じられる。蓋し元帥は元々、同職を好まない色を示しており、唯先帝のご希望二より止む無く就任を受託したものである。

解説:キッチナー元帥は、第一次世界大戦に於いて陸軍大臣となった。

6月15日

キ元帥辞職 14日タイムス社発

キッチナー元帥の地中海陸軍総督辞職が英国上院に於いて発表された。

獨逸陸軍演習 同上

獨逸に於いては、従来の25万の陸軍招集兵に代えて、今年度は37万1千を招集し、武装した総兵員数は百万に達する筈である。9月ダンチッヒとケニヒスベルヒ間で演習を挙行する予定で、今回は海軍上陸作戦を含み、且つ陸軍の操舵式飛行機4機、ライト式飛行機10機をも使用する様である。

埃及問題討議 14日上海経由ロイター社発

英国下院に於いて、一団の弁士がエジプトの情勢について注意を促し、政府の自治制度案を攻撃し、今のエジプトの情勢は速やかに断固たる措置を必要とすると主張した。然るに外相サー、グレイ氏はエジプト駐在官ゴルスト氏の事業を称賛し、エジプトの情勢は諸君の言う様に重大ではない。しかし真面目な警告は必要であり、もし不穏な兆候が継続する場合には、自己の権力の存在を明らかにせざるを得ないと言明した。

 

6月16日

近東問題と英国 15日上海経由ロイター社発

英国下院に於いて、外相サー、グレーは、クリート問題に関し次の様に言明した。

英国が他の列国と異なる意見を持っているとの報道は、事実無根である。英国の目的は列国と同一であり、クリート島民が若しこの上、現状の打破を企て、以てトルコを怒らせて近東の平和を危うくし、列国に断固とした手段を取る事を余儀なくさせるならば、これは決して彼らの利益にならない云々

埃及政府の強圧 同上

カイロ来電―エジプト内閣は、新たに制定され、そして立法議会が否決した新聞法案を原案のまま可決した。又秘密結社及び学生教育に関する法律(この2法案は立法議会が修正し、骨抜きにしたもの)を否決した。そして内閣は強い決意で、議会の行動を制圧し、議会の権力を弱めつつ、政治的犯罪の発生を予防している。

解説:当時のエジプトは、英国の高等弁務官の支配下にあり、内閣が立法機能を持っていた様である。英国の新聞に、英国のエジプト統治より日本の韓国統治の方が優れているという記事があった。

法王回章問題落着 14日ベルリン特約通信社発

ローマ法王庁及びプロシャ政府の衝突は、法王庁より不都合を謝する通牒を送って、遂に決着した。又法王庁の教務卿メリー、デル、ワル大僧正はこれに付言して、法王の回章は発表されないと公式に宣明した。なおプロシャ王はこの回章に関し、法王に書簡を送るであろう旨発表した。

解説:しばらく続いていたこの報道もこれで決着した。

6月17日

排日的暴動 15日ニューヨーク特派員発

ダーリントンに於いて暴動があり、日本人が退去した。これは酒屋と公証人等の扇動に基づくとの事であるが、材木会社側の声明によれば、数日前より不穏な形跡があったので、会社より同地の官憲に保護する事を嘆願したが拒絶された。故に14日シャトル駐在帝国領事は、現場に出張して調査中である。又材木会社には、他に労働者が居ないので、日本人を呼び戻そうとして奔走中である。そして両三日中に帰還するとの事であり、会社は今後暴行を防ぐ為に、柵の新築に着手し、番人を置く計画である。

国務郷の親日論 同上

国務郷ノックス氏は、15日ペンシルバニア大学の卒業式に臨み、米国外交方針を発表し、に関し次の様に述べた。

現在見られる様な日本の発展はペルー提督の開国が契機となっており、日本政府の改革も米国政府のやり方に倣う所がある。そして半世紀間日本と親密になったのは米国人の誇りとする所であり、故に今後ますます親密にすることを望む。

西蔵の政教分離 15日北京特派員発

清国政府は外国の干渉を恐れ、チベットの処分策を決定していなかったが、新ダライラマを僭立後のチベットは平和であり、駐蔵大臣の政令が能く行われているので、この度、年来の希望である政教を分離し、新ダライラマは宗教のみを管理し、商務、外交は駐蔵大臣が政府の命を受け折衝の任に当たる事とした。従って将来ダライラマと外国人との間に条約を結んでも清国政府はこれを承認しない事とし、これに関し外務部より北京公使館に通牒したとの事である。

解説:本来のダライラマは、清国の手を逃れている。最近の中国のやり方と似ている事を100年位前にも行っていた様である。

 

6月18日

日本新関税攻撃 17日タイムス社発

ブラッドフォード商業会議所会頭は、ロンドンタイムスに寄稿し、若し日本の新関税法が修正されない場合には、ブラッドフォードの貿易業者は死活的な打撃を被るであろうと断言し、更に英国政府は英国の通商及び航海業の利益を保護する意志である事を日本政府に通告するよう英国政府に勧告し、最後に英国の生産品に対し特別な税率を協定する様要求した。(一部抜粋)

日本人迫害事件 16日ニューヨーク特派員発

日本労働者の迫害事件について、帝国領事は穏便に済まそうとしたが、会社は加害者等を処罰するよう訴え出た。加害者は全村に亘る為に解決が困難な様である。

 

619

波蘭の暴行 18日上海経由ロイター社発

露国のポーランドに於いて再び暴動が発生しており、ラドム(ワルシャワの北60マイル)に於いて憲兵大佐が殺害された。又ワルシャワ市に於いては、警察署長に爆弾を投げた者が居たが、署長は幸いにも負傷しなかった。刺客と従犯者ともに自殺した。

解説:当時はポーランドとフィンランドはロシア領であった。

土国の警戒 同上

コンスタンティノープル来電―トルコ政府はギリシャの軍事的準備に対し、驚いてはいないが警戒的手段として予備旅団を招集する事に決定した旨宣告された。又コンスタンティノープルに於いては、昨日ギリシャ貨物のボイコットが宣言された。

解説:度々報道されている通り、クレタ島を巡り、ギリシャとトルコが対立している。

 

620

クリート問題 19日上海経由ロイター社発

佛国外務卿ロショ氏は、内閣会議の席上でクリート問題に関し次の様に報告した。クリート保護にあたる列国は、同島に関する意見で完全に一致しており、列国はその決意を尊重させ、且つ緩急に応じる為に、今やスーダ湾に於ける海軍力を増加しようとしている。

解説:前日の記事の続報

 

621

ロ氏の将来 20日タイムス社発

ニューヨーク来電―米国前大統領ルーズベルト氏は、ニューヨーク市長ゲイノア氏の歓迎演説に答えて、予は各種国民的問題の解決に助力したいとの念が強いと言明した。この言は、氏が再び公的生活に入り、活発に活動したいとの意思を表したものと一般に認識された。

解説:ルーズベルトは、1912年の大統領選挙に立候補したが敗れた。

獨逸陸軍進歩 20日上海経由ロイター社発

ベルリン来電―獨逸は陸軍の専門分野の能力を増強中であると伝えられる。そしてその実例を挙げれば鉄道、電信、飛行機等の諸分野であると言われている。

 

622

紐育知事強硬 21日タイムス社発

ニューヨーク来電―ニューヨーク州知事ヒユフス氏は、ニューヨーク州立法部議会の終わりに臨んで、同会を通過した総額94万ポンドに上る支出案を否認した。この支出は、政党党首達が、同知事が提出した予選選挙法案(選挙上の腐敗を一掃する目的の法案)を否決した際、自分達を応援して反対票を投じた議員等に報いる必要がある為、これら議員連の利益を図る目的で通過させたものである。この否認の結果、党首達は公金を賄賂に用いる力を失う事になった。

623

クリート屈服 22日タイムス社発

コンスタンティノープル来電―最近クリートより到着した報道によれば、同国官憲は遂に列強に屈服し、同島イスラム教徒代議士にギリシャ皇帝に臣従の宣誓をすること無く、直ちに議会に列席する事を許すような様子である。事ここに到ったのは、主に英国がクリートに加えた圧迫と露国が再び軍隊で同島を占領しようと提議したことに依る。

 

624

芬蘭と露国首相 22日上海経由ロイター社発

露都来電―ロシア帝国参議院は、フィンランド政治案を討議中である。首相ストリイピン氏は、自由派の非難に答えて、フィンランドに於ける露国の主権は無制限である故、同案をフィンランド議会に附して、これを決議させる必要はないと主張した。

波斯の廃露熱 同上

本社テヘラン通信によれば、ペルシャに於いては、再び排露熱が勃興し、露国兵士が駐屯する土地において、意外な出来事がしばしば発生中である。よって露国は要求の一つとしてタフリツ知事の免職を求めている。

解説:ペルシャの北半分は露国の勢力下、南半分は英国の勢力下にあった。

西班牙宗教改革 23日上海経由ロイター社発

スペインに於いては、政府の宗教改革に対し猛烈な反対運動が発生している。カソリック教徒は、強烈な抗議を打電しつつある。政府は、ローマに向け旧教に忠実であると声明する使書を送った。又カソリック教徒でない者は集会を行い、信教上の自由を要求中である。

(備考、スペイン政府は先般、カソリック教会のみを優遇する制度を改め、カソリック以外の宗派にも公に伝道し、宗派の旗、その他の徽章等を外部に現わす事を許したのは既電のとおり)

 

625

土耳其の希臘貨物排斥 24日タイムス社発

コンスタンティノープル来電―ギリシャの海運業、貿易及び諸商店に対するボイコットが急速に且つ広範囲に広がりつつある。

解説623日「クリート屈服」の続報

獨逸飛行機成功別報 24日上海経由ロイター社発

ドイツに於いて空中飛行船ツエッペリン第7号が何らの故障もなく、乗客輸送を遂行した事に対し、社会は非常な満足を表した。当日ツ伯爵は飛行機の全部に座り、操縦の任に就いた。乗客は総計13名で、船室は非常に豪華に装飾されていた。

 

626

獨沸関税戦争 25日タイムス社発

パリ来電―獨逸政府は、外国より輸入するウイスキーとブドウ酒に最高税率を課すつもりである旨宣言した。その為仏国はこれに対し、報復手段を執ろうと準備中である。獨逸外務省は、敢えて佛国の事業に対してのみこの課税をしたいのではないと説き、これは完全に国庫収入の必要からであると言明した。

日露協約調印近し 25日上海経由ロイター社発

デイリー、テレブラフ露都通信によれば、日露条約は数日以内に調印されると思われる。これは日露関係を親密にさせるものであり、将来、結局同盟になるであろうと信じられている。

同条約は、唯満州にのみ関係しているが、その意味する所は、満州の平和が、他の極東地方に平和をもたらす所以であると言っている。そして将来の極東政策の基礎として「現状維持」を完全に是認した。なお同新聞通信員は次の様に付言している。米国が善意からと思われるが、充分に時局に適合しない行動を執った事と清国が露国に対し、友好的でない点が、日露の接近を大いに助けた。

 

627

洪牙利議会開会 26日上海経由ロイター社発                         

オーストリア皇帝は、ハンガリー議会の開会式に臨み、政府党の勝利はハンガリー政府の地位を強固にし、平和的発展の為に喜ばしいことであり、そしてこの議会に普通選挙法の実施と防衛兵力増加に関する法案が提出されるであろうと言明し、最後に欧州の平和がますます恒久的になる事は、本当に喜ばしいと述べられた。

解説:ハプスブルク家は、オーストラリアとハンガリーの皇帝であった。4年後に第1次世界大戦が始まる。

阿片問題交渉 26日北京特派員発

現在英国代理公使と外務部との間で交渉中である阿片問題は、単にインド商人の損害問題ではなく、清国の阿片禁止に重大な関係がある。10カ年を期してインドより阿片輸入を禁止する事になり、清国内では3年間で完全に阿片耕作を禁止する協定を結んだ。しかしその結果、現在、阿片の価格は禁止以前の7倍になり、インド商人は、輸入を毎年十分の一減少させているが、彼らの3年間に受けた利益は莫大なものとなった。しかも価額の高騰の結果、ペルシャ、トルコ、フィリピンより間接輸入を行う者が加わり、昨年、一昨年共に10万ポンドの増加であった。

 

628

英国海軍演習 27日タイムス社発

英国海軍大演習は74日より開始し、3週間に亘り行われる予定である。これに参加する艦艇は、戦艦44隻、装甲及び保護巡洋艦56隻、駆逐艦119隻、潜航艇60隻、水雷艇85隻等の総計401隻である。そして諸艦は既に活動を開始している。

解説:海軍力で世界NO1の英国である。日本海海戦当時の日本の戦艦は4隻であった。

摩洛哥沸兵進軍 同上

タンジール来電―二隊の佛国軍隊は、モロッコのカサブランカより内地に向け約100マイル満足に進軍を遂げ、その間何等の反対も受けなかった。この進軍の目的は排佛運動に対抗し、これを鎮圧する為である。

解説:モロッコは佛国の保護国であった。

クリート問題通牒 27日上海経由ロイター社発

コンスタンティノープル駐箚英国大使サー、ゼラルド、ロサーは、クリート保護の任にある英伊沸露の4国を代表して、通牒をトルコ政府に送り、クリートに於けるトルコの主権が尊重されるべきと述べ、4国は各第2回目の軍艦を派遣しつつある旨言明した。

解説:トルコは、クリートを巡り、ギリシャと紛争中である。

 

6月29

日露協約と米清 26日タイムス社発

露都来電―半官報ノウオエ、ウレミヤ紙は、日露協約の成立が切迫している事が、極東の露国利権に対する米清両国の態度に良好な影響を与えたと述べている。清国が松花江の通航問題について、従来の頑迷な主張を放棄する事に決定した事を歓迎し、清国は露国に対し友好的政策を執る事に決定し、これを後悔する理由はないものと信じると言明している。

解説:日露戦争後、英米の極東進出に対抗する為に、日露間で4次にわたりむすばれた協約で、1910年7月調印された。満州での相互の特殊利益と日本の朝鮮,ロシアの外蒙古に対する特殊利益を相互に承認した。

日本関税反対 同上

バーミンガム商業会議所は、英国商務院に対し日本の新関税が同地方の貿易に重大な衰退を与える旨報告した。

 

630

獨逸外相更迭 29日タイムス社発

ベルリン来電―獨逸外務大臣ディエン男爵は、パリ―駐箚獨逸大使に決定した。シエン男爵の外交の遣り口は常に熱狂的愛国家の不満足を買っていた。当地の預言者達は、この変動の結果、獨逸の外交政策が強硬となると予期している。

解説4年後第1次世界大戦が始まる。

土国議会閉会 29日上海経由ロイター社発

コンスタンティノープル来電―トルコ代議院は111日まで休会する。宰相ハツキー、ペー氏は、クリート保護の責任がある列国の友誼を称揚し、列国のギリシャに対する態度は非難すべき点は無いと明言し、且つトルコ国民が、公正に事を取扱う土廷に対し、厳正な態度を採る様希望した。

 

解説628日の記事「クリート問題通牒」の続報