明治43年4月

主要記事

期日

日本関係

期日

露清関係

期日

英米関連

期日

独仏その他関連

47

日本人追放 

41

芬蘭人の態度

42

労働者の勝利

42

佛国気球問題討議 

48

英帝と日英博 

44

露帝の観劇

413

蘇士運河問題 

43

佛国海軍拡張

413

タイムスの日本美術評 

45

露紙の警告

413

英露対獨方針 

49

獨逸飛行器と佛白 

417

潜航艇沈降 

46

獨逸波斯に割込む 

425

英国飛行機家の手際 

410

土耳其暴乱 

 

 

419

獨露衝突 

427

米国綿作打撃 

410

佛国水夫罷業

 

 

422

清国海関問題 

 

 

413

土耳其反徒休戦

 

 

422

露国の抗議

 

 

414

墺国戦艦進水

 

 

423

清国海関問題

 

 

414

アルバニア沈静

 

 

429

露清協議不成立

 

 

415

獨逸海軍拡張

 

 

430

露国と松花江 

 

 

416

英国政局危機 

 

 

 

 

 

 

424

獨逸飛行隊

 

 

 

 

 

 

427

アルバニア叛乱 

 

 

 

 

 

 

430

アルバニア叛乱 

世界情勢

41

西蔵形勢平穏 31日タイムス社発

カルカッタ来電―チベットのラッサ府の情勢は静穏である。チベット駐在大臣は、仏教徒でない兵士等の暴行を抑制している。

解説:チベットのダライラマは、清国に追い出され、インドに滞在中であり、現在のチベットの同じ状況となっている。

芬蘭案攻撃 同上

露都来電―露国立憲民主党党首ミリウコフは、フィンランド立法権制限案に論及し、これはオーストリアのボスニア,ヘルチェゴビナ併合よりも更に悪いと言えないと言明した。なお同案は、今や国民議会に於いて、委員付託となっている。

芬蘭人の態度 同上

ヘルシンキフォルス来電―フィンランド議会の立法権制限案は、静穏な態度を以て迎えられた。但し一般に同案を目して、フィンランドの自由に対する最終的打撃となり始めている。

解説:フィンランドは、ロシア領としてロシア人の総督の支配下にあり、1917年になってロシアから独立している。なおロシアは、1917年ロシア革命が起こり、1922年ソ連となった。

 

42

佛国気球問題討議 1日タイムス社発

パリ来電―佛国上院に於いて陸軍飛行器に関し、長時間の討議があった。有名な技師レイモン氏は、佛獨両国に於ける飛行器の進歩を比較し、佛国が遥かに劣っている事を示した。佛国が、この問題に注目し始めている者を落胆させる措置を取っているのを攻撃し、この為に専門技術学校を設置するよう主張した。これに対し、陸相ブルン氏は、佛国が1913年になるならば、11隻の操縦式気球及び20の気球庫を所有するであろうと公言した。

解説:飛行機は、まだ飛行器と訳されていたようである。

米国紡績不況 1日上海経由ロイター社発

ボストンに於いて発表された統計によれば、南部地方に於ける紡績会社総錘数の5割は休業中である。

労働者の勝利 1日上海経由ロイター社発

ペンシルベニア州の各鉄道会社は、任意に使用人の賃金を引き上げた。この恩恵に浴する者は、総数199千人であり、その金額は1千ドルに上る。そして製鋼トラストもまた同様に賃金を引き上げた。これは一部同州がますます繁栄している事、一部は労働者の圧力に因る。

 

43

佛国海軍拡張 2日上海経由ロイター社発

佛国代議院は、本年私立造船所に於いて戦艦2隻を起工させる件を可決した。これは3年以内に就役する計画であり、海軍卿ドレベイレール氏は、同艦が各種の点に於いて最新の英獨戦艦に匹敵することを言明した。

米国綿買占応戦 同上

白星線汽船パルチック号は、本日英国リバプールを出発、ニューヨークに向かう予定であるが、これは綿買占めを失敗させる為、米国に送られる予定の多数の荷物の第1回分である。なおリパプールには、米国に送る準備のできた綿が2,3万梱ある。

解説:梱とは、綿の重量を表す単位で、綿糸1梱は400ポンドで181.44Kgである。

 

44

露帝の観劇 3日上海経由ロイター社発

露国皇帝は、数年来オペラを観覧していなかったが、昨夜初めて臨御され、聴衆より熱烈な歓迎を受けられた。

 

45

白耳義関税と佛国 4日タイムス社発

パリ来電―ベルギーの新関税は佛国に於いて激しい非難を引き起こし、一般にこの関税は、主として佛国貿易に対して制定したものとしている。下院関税委員長は、同案が佛国に対する不当な報復と思われる所が多い旨言明した。

露紙の警告 同上

露都来電―半官報ノウオエ、ウレミヤは、その社説に於いて、獨逸がもしペルシャに於いて軍事的便宜を得ようと企てる様な事があれば、これは露国に対し友情を表明中の行動と両立しない所があると言明した。

解説:ペルシャの北半分は露国の勢力圏下であり、南は英国の勢力圏下である

 

46

獨逸波斯に割込む 5日タイムス社発

露都来電―露国外務省及び新聞紙は、もしペルシャが鉄道に関する特権を獨逸の資本家に譲渡する場合、英露の利益は危機に瀕し、その結果ペルシャは列国の確執の舞台となり、危険な状態に陥るであろうと認めている。

解説:昨日の続報

 

4月7日

波斯と獨逸 6日タイムス社発

ベルリン来電―官憲側より出たと思われる記事が諸新聞に掲載されたが、これによると獨逸はペルシャに対し、何らの提議もしなかったと言明している。しかし諸新聞はペルシャの現状が譲与を得る良い機会であると説き、英露両国が他国に与えられる鉄道認可に対して自己の利益に干渉するものとするのは、正統ではないと主張した。

解説:ペルシャは、北半分はロシアの南半分は英国の勢力下であり、ドイツはそこに割込もうとしている。又当時モロッコは沸国の勢力下であるがそこにもドイツが時々手を伸ばしている。

蘇士運河譲与問題 6日上海経由ロイター社発

カイロ来電―エジプト首相は、スエズ運河の譲与期を延長する再約定の件につき、代議院の決議を遵奉する旨宣言し、非常な喝采を受けた。因みに同会委員会は、過般至急、同譲与の再約をする事に反対の報告を行った。

解説1875年英国はエジプトからスエズ運河の株式44%を保有、1882年内乱に軍事介入し、エジプトを保護国としている。この記事の譲与が何を意味するのか不明である。譲与するとすれば英国と思われるが

日本人追放 同上

マニラ来電―スパイとして逮捕された日本人2名は、陸軍嚮の命令により釈放され、台湾に追放された。

解説331日「日本人の間諜」の続報である。

 

48

印度革命運動鎮圧 7日タイムス社発

カルカッタ来電―印度政府は国民党に属する記者アラビンド、ゴスを逮捕する為、令状を発した。

解説:インド独立の父と言われるマハトマ、ガンディは、南アフリカで弁護士として、インド系移民の人種差別に対する権利回復運動を行っていた。

英帝と日英博 同上

英国皇帝は、ネルソン時代の英国海軍に関する各種の資料とネルソン提督が180510月、トラファルガー海戦に於いて殺された弾丸を日英博覧会に出品された。これは、日本人来観者に強い興味を与えるものと信じられた結果と思われる。

佛国海員罷業後報 7日上海経由ロイター社発

マルセイユ来電―沸船モンロンヤの火夫10名は、10日間の禁固となった。政府は、なお550名の火夫を逃亡罪で告発し、同盟役員をも告発した。

 

49

土耳其の内乱 8日タイムス社発

コンスタンチノーブル来電―叛乱を起こしたアルバニア人は、官兵とプリシユチア市外で48時間にわたり戦闘を行い、双方とも気力を失った。トルコ政府は、多数の砲兵隊と共に22個大隊を戦地に派遣中である。

解説:アルバニアは、アドリア海に面した国で、約600年にわたり、オスマントルコの支配下にあったが1912年独立した。

蘇士運河案否決 8日上海経由ロイター社発

カイロ来電―エジプト代議院は、スエズ運河の譲与期延期に関する政府の提案を否決した。

解説:4月7日の記事の続報

獨逸飛行器と佛白 7日巴里特派員発

獨逸のゼツプランド空中飛行器が再び佛国及びベルギー両国を超えて飛行し、主にベルギー人に不安の念を与え始めている。

410

土耳其暴乱 9日タイムス社発

コンスタンチノーブル来電―トルコ軍隊は、リヤブ河畔(アルバニア)に於いてアルバニア人と戦闘し、死傷2百名を出し、大砲1門を失った。

解説:昨日の記事の続報で、2年後アルバニアは独立する事になる。

佛国水夫罷業 同上

パリ―来電―佛国首相ブリアン氏は、マルセーヌの水夫罷業が速やかに落着するものと予想している。海軍次官は、自ら同港に出張し、各大汽船の出港を監督中である。因みに佛国船舶持主及び船長等は、英国船舶の組織、紀律が完全な事を羨望している様である。

蘇士運河案否決 8日ベルリン特約通信社発

スエズ運河会社の譲許期間延長は、エジプトのカイロに於ける立法会議で否決された。人民は大いにこの報道を歓迎した。

解説:英国はスエズ運河の株式44%を保有しており、また当時エジプトを軍事的に支配していた。しかしこの譲許期間延長が何を意味するのか不明である。

 

411

屋外示威の許可 10日上海経由ロイター社発

ベルリン来電―警視庁は、本日選挙に関する3件の街頭運動を許可した。この様な示威運動は、今回初めて行われるものであり、ベルリンの保守党側の新聞は、警視庁がこの運動を許可したのは、やんごとなき辺りの暗示によるものと信じ、憤慨している。

前ダライラマ帰蔵 10日北京特派員発

名号を剥奪された前ダライラマは、帰蔵の意向がある。その処分方法について、清国政府は、駐蔵大臣聯豫(れんよ)氏に向け、ダライラマは、到底復位させる事は出来ないので、五臺山(ごたいざん)に護送し、専心修養させ、民心の動揺を防ぐべしと訓電した。

解説:ダライラマは、現在と同様、4月1日の記事にある様にインドに亡命中である。

 

4月12日

土耳其騒乱形勢 11日タイムス社発

コンスタンチノーブル来電―プリシュチナに於けるアルバニア人反徒は、降伏や解散を拒否し、多数の土民がこれに加わり始めている。

解説:4月10日記事の続報

波斯借款拒絶 同上

テヘラン来電―ペルシャ政府は英露両国公使に対し、両国の共同借款提案に同意する事が出来ない旨回答した。同時に同国の政局が、同案にある抵当及び償還問題に対して、何らの関係もないことを宣明した。

 

4月13日

土耳其反徒休戦 12日タイムス社発

コンスタンチノーブル来電―反乱のアルバニア人等は、ブルシュチナに於けるトルコ司令官と協議中であり、戦闘は中止された。トルコ宰相ハツキ、ベイは、代議院内のアルバニア議員に対し、政府は不必要な事に血を流す様な事は避けたいと思っていると断言した。

解説:昨日の続報

タイムスの日本美術評 同上

ロンドンタイムスは、日英博覧会に於ける美術、特に日本の錦絵を称賛し、その燦爛とした名画の例として北斎、歌麿、広重を挙げた。

蘇士運河問題 12日上海経由ロイター社発

外務次官マクキンノン、ウツド氏は、下院に於いて、議員ホール氏の質問に答えて、スエズ運河に於ける英国政府の利益関係は、2千5百万ポンドの価値があるとされている。しかもエジプト代議院が譲許延長を拒絶した結果、終に終了することになるであろうと言明した。

解説:4月7日記事の続報である。現実には英国が1956年のナセル大統領の国有化宣言まで英国が支配していた。

英露対獨方針 11日ベルリン特約通信社発

英露両国は、ペルシャが第3国の商業的利益を尊重する事が出来るのは無論であるが、両国政府は、唯ペルシャが自国内に於ける両国の政治的、軍事的利権に干渉しない程度に於いて第3国の利権を認める事を希望する旨宣言した。

解説:ペルシャは、北半分は露国の南半分は英国の支配下にあり、そこに獨逸が食指を伸ばしている。

 

4月14日

墺国戦艦進水 13日タイムス社発

ウイーン来電―オーストリアの戦艦ツレニイ号は、トリエストに於いて進水した。なお諸新聞は、一層強大な海軍を備える運動を継続し、ドレッドノート型戦艦を建造する必要性を主張しつつある。

解説:現在のオーストリアは内陸国であるが、当時はアドリア海に港があり、海軍を持っていた。映画「サウンド オブ、ミュウジック」に登場するお父さんはオーストリア海軍大佐であった。

米国共和党不平派の行動 13日上海経由ロイター社発

ワシントン来電―共和党の不平派と民主党と提携した結果、下院に同院議長用自動車費2千5百ドルを111132で否決した。

アルバニア沈静 12日ベルリン特約通信社発

アルバニアは、既にほぼ沈静した。戦地に於けるトルコ兵は、今や非常に多数である為、この上の抵抗は効力がないと思われる。

解説:4月9日土耳其の内乱の続報である。

 

415

獨逸海軍拡張 14日タイムス社発

ベルリン来電―戦艦オジン号の発注が行われ、これで1910年度の建艦計画は完了する予定である。なお獨逸が既に建造を終わり、若しくは建造中のドレッドノート型戦艦は13隻、同インビンシブル型装甲巡洋艦は4隻である。

墺国軍艦建造 同上

ウイーン来電―オーストリア新聞間に於いては、海軍拡張熱が勃興した。政府は1913年までにドレッドノート型戦艦4隻を建造すると伝えられている。

佛国戦艦進水 14日上海経由ロイター社発

ボルドー来電―佛国戦艦ベルニヨ号(183百トン)が進水した。前に進水した5隻と共に最強の艦隊を組織するものである。

 

4月16日

英国政局危機 15日タイムス社発

英国政府は、完全にアイルランド国民党の要求に服従し、首相アスキス氏は、下院に於いて次の演説を行った。上院に於ける否認権廃止法案の通過は、政府が有効に存続する唯一の条件である。上院が若し政府の政策に同意しないか或はこの問題を考慮する事を承諾しない場合には、政府は直ちに法令的効力を政府の政策に与える為に採るべき措置に関し皇帝に奏請するであろう(首相は新たに多数の貴族を作り、上院の反対党を押さえつける裁可を皇帝に奏請する意図)と言明した。(一部抜粋)

解説:上院とは貴族院と思われる。

極東通路短縮 15日上海経由ロイター社発

カナダ大幹鉄道会社総会に於いて、同社長は、今年の秋までには1,361マイルを竣工する計画であると言明した。なおウオルフクリークよりフォートウイリアム、オフ、レイクサテイリオルに至る線路は、カナダを横断する他の鉄道に比し、傾斜面が低く、日本及び清国への距離は、約500マイル短縮されるであろうと報告した。

4月17日

獨逸労働紛争 16日タイムス社発

ベルリン来電―建築業者等は、職工に対し、締出しを決行し始めた。各都市に於ける多数の職工がこの影響を被ると思われる。

墺国軍艦建造 16日上海経由ロイター社発

オーストリアのドレッドノート型戦艦数隻は、議会が現在まで費用の支出を拒絶するにも拘らず建造中である。これは、議会が結局支出するであろうと造船業者等が信じ、財政家の後援を得て、自ら危険を犯して起工し始めているものである。

潜航艇沈降 内国電報16日発

歴山丸は、第一潜水艇隊第六号艇を率いて、広島湾に出動中であったが、15日新港沖合に於いて、第六号艇は母艦を離れて潜水行動中、どうしたのか予定時間になっても浮上しない為、大いに驚き、直ちに当府に無線電信を以てその旨を報告した。潜水艇が浮上してこない時は乗組員全員の死亡を見るのは、英国その他に於いてその例を明らかである。乗組員は艇長佐久間大尉以下十余名である。(一部抜粋)

解説:有名な佐久間艇長の事故を報道する記事である。

 

4月18日

麦は無税 17日上海経由ロイター社発

統一党党首バルフォール氏は、新聞通信員の質問に答えて次のとおり言明した。同僚と共に商議の上に関税改革案を決定したが、これにより断固として植民地より輸入する麦を無税にする事に同意した。各植民地との特恵関税協約成立を援助する為、パンの価格が騰貴するのではとの杞憂があったが、これを霧散させなければならない。

 

4月19日

獨露衝突 17日タイムス社発

露都来電―獨逸の会社は、ペルシャよりウルリア湖(タブリツの西方にあり、英露協約上、露国の勢力圏内に置かれている一つの湖)上の蒸気船交通の独占権を得ようとしているとの情報があり、その為露人は大いに憤怒を示し始めている。

解説:ペルシャは当時、北半分は露国の、南半分は英国の勢力圏下にあった。

土国軍隊集中 同上

サロニカよりの特報によれば、平和回復した旨の発表があったにも拘わらず、北アルバニアに於ける軍隊の集中は、依然として継続し、今や1万7千に上っている。トルコ政府は、先般の暴徒首領株を軍事裁判に附する意があり、又収税及び徴兵の為、人口の登録をする筈と言われている。

 

4月20日

摩洛哥問題遷延 19日タイムス社発

タンジール来電―モロッコ王ムライ、ハフィドは先に佛国政府の強硬な談判に会い、債権者に対する支援、借款契約に同意した。しかも今やこの実行を拒み、例年の慣用手段であった遅延的、阻害的政策を採り始めている。

英国首相動議 19日上海経由ロイター社発

英国下院は、いよいよ今週から重要な時期に入った。傍聴席は立錐の余地なく、首相アスキス氏は、予算決議案について、討論の打ち切りを動議した。昨年、既に長い討論があった事を指摘し、今度の案も殆ど変更する所がないと説き、政府の進退は、一にこの大体において変わらない予算案の通過如何によると言明した。首相の演説は喝采を博した。

 

421

桂冠詩人の日本論 20日タイムス社発

英国の桂冠詩人アルフレッド、オースチン氏は、日本人が有する愛国心の神髄とその力についてタイムスに寄稿し、ローマ人と同様に深く祖先崇拝の宗教を奉じ、且つ往古の神がこの伴侶となって、戦に勝つ事ができると信じている点にあると説いた。

解説:桂冠詩人とは、優れた詩人として英国王室から任命された詩人

 

4月22日

清国海関問題 21日タイムス社発

タイムス紙は、清国政府が条約上の義務を無視し、海関の支配を行おうとしていることを強烈に攻撃し、英国政府は断じて政務処の干渉を許すことは出来ないと主張しなければならないと言明した。

解説:海関とは、清国政府が貿易上の税金を徴収する為に設けた機関であり、どうも条約により、英国が支配しており、徴収した税金を清国政府に収めている様である。これは、清国の役人の不正防止の手段と思われる。

露国の抗議 同上

露都来電―露国政府は、ペルシャのウルミア湖汽船通航譲許を更に獨逸会社に転貸する件に関し、ペルシャ政府に抗議を行った。又獨逸会社に送られようとする機械の運送に関しても異議を唱えている。

解説:4月19日獨露衝突の記事の続報である。

 

4月23日

清国海関問題

ロンドンタイムスは、社説に於いてブレドン氏の税務処員辞職に関連して、清国の海関問題全体について論述し、英国は、清国が借款契約に違反して、海関を支配する事ができる様になることを黙許してはならないと強烈に主張した。サー、ブレドン氏が総税務司署理より税務処に移されたことは、清国が海関行政の独立を覆させようとする運動を始めたものであると説き、政府は清国貿易に従事する各国民の利益の為に、総税務司の独立、特にその昇級問題等に関して、完全な独立を要求しなければならないと主張し、さらにもし清国が明確な制約を破りながら、引続き成功を得させる場合には、その排外的感情は、必ず増長するであろうと付言した。

解説:総税務司とは、清国の税関(海関)行政の長官である。当時は英国人が中国の税関行政を掌握し、北京に総税務司、各税関に税務司が任命されていた。総税務司は、税関収入の管理と支払いを行い、清国の貿易、財政面で大きな力を持っていた。この力を清国が取り戻そうとしている。

 

4月24日

露紙の憤慨 23日タイムス社発

露都来電―半官報ノウオエ、ウレミヤ紙は、ペルシャに於ける獨逸の活動及びペルシャ内閣の態度について、次の様な論評を行った。英露両国は、共に自ら犠牲となってペルシャを援ける政策を捨てて、駐屯中の露兵を撤退させ、同国をペルシャ人自身が意のままにさせる様にしなければならないと主張した。

解説:4月22日「露国の抗議」の続報

獨逸飛行隊 23日上海経由ロイター社発

操舵式飛行器3隻よりなる飛行隊は、本日獨逸コロオンを出発し、ハンブルグに向かう予定である。同港にて獨帝の面前に於いて連合遊弋を試みる事になっている。

解説:当時の新聞では、まだ飛行機3機と書かれてなく、又編隊飛行とも訳されていない。

米国投機商の気焔 同上

投機商パテン氏は、ニューヨークに於いて新聞記者と会見し、予は綿を買い占めた。そして綿の不作に照らして考えるに、欧米紡績工場は、予の要求する代価を支払わなければ8月、9月には休業の外なくなるであろうと言明した。

 

4月25日

長沙暴動再起 24日上海経由ロイター社発

北京駐在英国公使は、英国外務省に打電して、長沙の暴徒が再び蜂起し、在留外国人は、全て2隻の英国船に避難したと報告した。

英国飛行機家の手際 同上

英国飛行機家グラハムホワイト氏は、ロンドンとマンチェスター間で飛行を試み、少しも人目に懸らず、リッチイルドに到着したと言われている。

 

4月26日

波斯対露国 25日タイムス社発

露都来電―テヘランよりの報道によれば、ペルシャの急進派が主張する冒険的政策は阻止された。最も信頼すべき筋の言によれば、カスヴィン(テヘランから西北約90マイル)に駐屯の露兵は撤退する予定

解説:4月24日の記事の続報

飛行中止 25日上海経由ロイター社発

英国飛行家グラハムホワイト氏はマンチェスター行を中止した。風が荒れたために損害を受けた。

解説:昨日の記事の続報

摩洛哥の形勢 同上

タンジール来電―スペインは、スーター(モロッコ内にあるがスペインに属する港)よりモロッコ人居住の一市テツアンまで道路を作り、且つ堡塁を設ける意がある。但し同国がこの様な企図をするならば、モロッコの人心を一般に激高させ、欧州人の安全を危うくするに至るのではと気遣われる。

ダライラマと英露 24日ベルリン特約通信社発

露国半官報ノウオエ、ウレミヤ祇の報道によれば、英露両国は、6月末、ダライラマを露都に来させる事に同意した。

解説:現在と同様に、ダライラマはインドに逃れている。

 

4月27日

アルバニア叛乱 26日タイムス社発

ウイーン来電―広報が伝える所によれば、アルバニアのトルコ陸軍司令官がカチヤニクの狭隘な谷の占領をおざなりにしていた為、アルバニア人等は、ここで列車の進行を停止させ、兵士の武装を解き、補給品を捕獲し、且つ各電信線を切断した。なお反乱したアルバニア人は3万4千に達し、これに反してトルコ軍の人数は2万に過ぎない。

解説49日「土耳其の内乱」で報道され、以後続報があるが。結局アルバニアは2年後独立を達成する。

米国綿作打撃 26日上海経由ロイター社発

米国テネシー、アラバマ、ジョジヤ諸州に於いて風雨があり、ルイジアナ、ミシシッピー、テキサス諸州は気温の低下が激しく、これ等諸州の綿作に障害を及ぼしている。テキサス州の農事委員は、収穫は、平年の半分となる予想で、又綿の種が少ない為に、再植え付けも困難となるであろうと憂慮している。

解説:関連記事が4月24日「米国投機商の気焔」にある。

 

4月28日

土耳其の内乱 27日タイムス社発

コンスタンチノーブル来電―最近トルコ兵がアルバニア人の為に待受け攻撃を受けたテヘルナロワ間道に於いて、激闘の後、遂に叛徒を退散させた。この戦闘に於いてアルバニア人2百名が戦死した。

ウイーン来電―アルバニアに於ける叛乱は非常に世上の注目を惹き、トルコ軍隊がこの征圧に失敗するならば、新立憲政治も危機に瀕する運命に陥るであろうと観測される。

解説:昨日の記事「アルバニア叛乱」の続報

南阿の生駒艦 27日上海経由ロイター社発

ケープタウン来電―生駒艦に乗組み中の日本代議士達は、最も友愛な歓待を受けた。生駒艦は、アルゼンチンのブエノスアイレスに向け出発した。

解説:生駒は世界一周を目指している。

米国綿作打撃 同上

アトランタ来電―数百万エーカーの綿が破滅の危機にある。南部諸州全部の綿作地帯は、寒冷であり湿気が多い。

解説:朔日の記事「米国綿作打撃」の続報

 

4月29日

露清協議不成立 28日タイムス社発

露都来電―ハルピンに於ける露清両国委員会は、松花江通航問題の解決について、完全に失敗した。露国政府は、その委員会に対し、清国があくまでも条約を無視しようとするので、止むを得ずこの協議を中止する様訓令した。多分露国は、今後松花江の課徴金を清国税関に支払う事を拒否するであろうと言われている。

解説:松花江は、アムール川を通じて外海につながる国際河川であり、ハルピン市や吉林市を通っている。

埃及と英国 28日上海経由ロイター社発

外務次官マクキンノン、ウッド氏は質問に答えて、特にエジプト首相ブートロスバーシャ殺害事件に関係ある諸種のエジプト情勢報告は、我々の希望通りの満足なものではない。但し予は英人に侮辱が加えられたとは聞いていないと言明した。

英国飛行家成功 同上

英国家ボルハン氏は、今朝5時30分マンチェスターに到着した。

 

4月30

露国と松花江 29日タイムス社発

露都来電―露国政府は北京駐在露国公使に対し、清国が6月までに松花江問題を解決しないならば、露国は清国の諸規則を無視するであろうと通知する様訓令した。

アルバニア叛乱 29日上海経由ロイター社発

コンスタンチノーブル来電―トルコ兵が、北部アルバニアを通じて優勢な叛徒に出会ったのは、最早疑いがない。叛徒は、カチアニ隘路の両端を占領し、鉄道を食い止め始めている。

公果境界策定 同上

獨逸新聞の報道によれば、コンゴ境界協議はようやく終了し、ドイツはランガ地方全部を獲得し、ベルギーは、境界線としてキヴ湖の西岸を得、又獨逸は、キヴ湖中のキウイスウイ島を領有した。ルウエンゾルは山頂を分界として、英国とベルギーの両国間に分割されたと言われている。

 

解説:列強がアフリカ植民地を分割する状況一端を示している。