明治43年2月

主要記事

期日

日本関係

期日

露清関係

期日

英米関連

期日

独仏その他関連

22

移民政策問答 

28

英露親和論 

22

米国の印度移民

21

土勃関係険悪

26

日本財政論評 

29

在米清人激怒

210

印度新聞法案可決

24

近東問題再燃

213

排日案可決 

29

英国の対清勧告

211

北極発見彰功 

27

近東問題と列国

214

排日案の反響

211

墺露関係改善 

221

米国海軍現状

215

摩洛哥の謝罪

218

排日案内情 

212

米人の錦愛鉄道観

224

米国罷工暴動 

218

蘇丹土民襲撃

220

日本移民歓迎 

219

英独仏公使質問 

224

極東戦争説

220

佛国の対摩談判 

221

排日案通過内情 

223

清国大学協議 

227

米国海軍拡張 

 

 

224

労働同盟排日運動 

 

 

 

 

 

 

225

前蔵相日本攻撃

 

 

 

 

 

 

226

排日演説真相 

 

 

 

 

 

 

226

加州の日人排斥 

 

 

 

 

 

 

227

戦争説と国務郷

 

 

 

 

 

 

228

前大蔵卿の弁明 

 

 

 

 

 

 

世界情勢

21

獨逸議会騒擾 31日上海経由ロイター社発

ベルリン来電―有力な保守党員オルデンブルヒ氏は、獨逸議会に於いて「獨帝は、何時でも将校に兵士10名を従え、議会を閉鎖せよと命じる事ができる」と公言した。その為に議会は非常に喧噪となり、社会党員、急進主義者、その他は議会に対する侮辱として抗議し、盛んに絶叫した。次いでオ氏はその意は、兵士は大元帥陛下に服従しなければならないと言うにある旨弁明した。

土勃関係険悪 同上

コンスタンチノーブル来電―トルコは、ブルガリアが開戦する意志があるとの説がある為、非常に憂慮し、国境の軍隊は急遽増員中である。

 

22

米国の印度移民 1日タイムス社発

サンフランシスコ来電―印度労働者191名到着した。これについて当地のアジア人排斥協会は一つの警告書を発し、今やカルフォルニア州に於ける印度人は1万人に上り、又毎月約2百名が到着中であると言明した。

解説:当時既に清国人は入国禁止、日本人は日本外務省の政策で、米国への移民禁止している状況であった。

印度回教徒悦服 同上

デイリー来電―印度のイスラム教徒同盟会の会合が開かれた。この集会は、教育及び農工業に関して注目すべき国民的計画を示し、又各社会と協力して、英国の政治に喜んで服従したいと熱心な希望を発表した。

移民政策問答 内国電報(31日発)

午前1040分開会した国会の於いて、大石氏の質問に対し小村外相は次の様に述べた。

我が日本は、日露戦争の結果として一島国より大陸国となった。そして我が国の地位を見ると、西には4億の人民を有する支那と16千万を有する露国がある。東には1億の人口を有する北米合衆国がある。この間に介在して一大飛躍を試みるには、少なくとも1億の人口を有しなければならない。その為に5千万の我が大和民族はこれに集中する必要があり、散逸させてはならない。この大方針の結果として政府はなるべく移民を満韓に集中させる決心である。そしてこの地は、尚2千万、3千万の人口増加に応じるには、十分に余裕がある。その為民族集中の大方針に適すべき方面への移民に対し、政府はこれを幇助するに躊躇しないと答えた。

 

23

希臘憲法修正 2日タイムス社発

アデン来電―ギリシャ皇帝は、陸軍協会が場合によっては宮城を占領すると恫喝した結果、遂に不本意ながら憲法に抵触する国民会議招集を裁可した。現在の憲法によれば、憲法修正を目的とする国民会議の招集は、2個の異なる議会が引き続いて同件を可決した後である事を要し、従って新選挙を行う必要がるとしている。但し皇帝は同意の条件として陸軍協会の解散を要求したが協会はこれを承諾した。

土国新聞激昂 2日上海経由ロイター社発

コンスタンチノーブル来電―トルコの諸新聞は、ギリシャの情勢が危険な事に鑑み、戦備の必要を主張し、クリイトの代表者をギリシャの国民会議に列席させる様な事があれば、これはギリシャとトルコの開戦理由になるであろうと論じている。

解説:クレタ島は、現在ギリシャ領である。当時は、トルコ領であったが人口の1/6のイスラム教徒と5/6のキリスト教徒の間で紛争が絶えず、列強が駐留軍を派遣していた。

 

24

近東問題再燃 3日タイムス社発

コンスタンチノーブル来電―ギリシャ陸軍協会が皇帝を威圧して憲法修正の国民会議を今秋開会させる事となった。この件は非常にトルコの人心を動揺させた。トルコ政府は、クリイト島保護の任にある英露伊沸4カ国に対し「若しクリイト島民がこのギリシャ国民会議に関する新選挙に際し、之に代議員を出すと決定するならば、トルコは止むを得ず自己の主権を守る為に断固たる手段を取るであろう」旨を通知したと信ずべき理由がある。

土勃関係難 同上

ソフイア来電―サロニカの陸軍法定は、8名のブルガリア商人に対し、視学官を殺害したとの罪で死刑を宣告した。この為ブルガリア国民は非常に激昂している。

 

2月5日

希臘の対土誓約 4日タイムス社発

アデン来電―ギリシャ政府は、トルコに対して一つの誓約を与えた。その要旨は、今回開かれる予定の会議はギリシャ人の一般的大会議ではなく、唯憲法の修正を目的とする一つの議会である為、クリイト島より代議員を派遣する機会は無いと述べている。

近東問題困難 同上

コンスタンチノーブル来電―一般公衆及び諸新聞は、ギリシャとトルコの戦争が起こりそうな情勢に非常に驚愕している。彼らは今後発生する事件が、現在アデンの主人公である陸軍協会を圧迫してある行動を執らせる事になるのを憂慮している。但しトルコ政府はクリイト島保護の任にある英露仏伊の4カ国がクリイト島民の挑発的行動を防止する様尽力するであろうと期待し、これを信頼し始めている。

 

2月6日

新印度新聞条例 5日タイムス社発

カルカッタ来電―新新聞法案が印度立法参議院に提出された。同案は地方政庁に対し有害と認められ且つ必ずしも法律上の意義に抵触しなくても謀反的と見なされる新聞の発行を、起訴を待たずに禁止する権限を付与している。又新発行の新聞には保証金を納めさせ、非行がある場合にはこれを没収し、2回目では発行免許をはく奪する事を規定している。

日本財政論評 同上

ロンドンタイムスは、1909年に於ける日本の経済報告を論評し、日本政府は健全な財政政策を行おうと決心しており、その十分な証拠を示したと説き、日本の為政者が行政的に有効な政策を行おうとすると共に経費節減をしている事を称賛している。又南満鉄道の新経費は国民的政策の為であり、健全な財政主義に違反するものではないと言明した。

 

27

近東問題と列国 6日上海経由ロイター社発

沸国外相ビション氏は、トルコとギリシャの紛争を予防する為、関係列国の間で協調が出来た旨を内閣会議に報告し、且つトルコ、ギリシャ両政府の宣言により列国の心配は無くなった事を付け加えて言明した。

解説25日「希臘の対土誓約」の続報

 

28

波斯外相不信任 7日タイムス社発

テヘラン来電―ペルシャ議会に於いて、外務大臣アラ、エス、サルタネ氏に対し、大臣は、未だにペルシャに残留する露兵を退去させる為に、如何なる手段を執ったのかとの質問が起こった。しかるに同大臣は、自己が何もしていない点について、弁明できず、その為議会は満場一致で免職を求める決議を行った。

英露親和論 同上

露都来電―露国半官報ノウオエ、ウレミヤのロンドン通信員ウエスセリトキイ氏は、英露関係について講演を行った。聴衆には多数の有力な官吏がおり、氏は盛んに獨逸派の主張する排英論に反論し、英国の友情が露国にとって莫大な価値がある事を指摘した。英国はボスニア,ヘルチェゴビナ併合問題の難局に於いて、忠実に露国を援助し、又日英同盟は、極東に於ける露国の安全を保障するものであると言明した。

 

29

在米清人激怒 8日タイムス社発

ニューヨーク来電―太平洋沿岸全部に於ける清国人は憤怒のあまり、サンフランシスコに対してボイコットを行い始めている。その理由は同港に於いて東洋移民を虐待したと言っている。

解説:虐待の具体的理由は不明であるが、清国人苦力は数年前から入国禁止となっており、しかも入国官吏は、苦力と商人等の区別が出来ないとの理由で、商人の入国も禁止している。

この為清国内で米国品のボイコット運動が起こっていた。

英国の対清勧告 同上

露都来電―北京駐在英国公使ジョルダン氏は清国政府に対し、錦愛鉄道の敷設を決定するに先立ち、日露両国と協定する必要性を、理由と共に陳述し、注意を求めた。露国官憲側は、この報道に接して大いに満足した。

 

2月10日

印度新聞法案可決 9日タイムス社発

カルカッタ来電―先般インド立法参議院に提出された新聞法案は、終に同院に於いて可決された。同案は必ずしも法律上の意義に合わないが、謀反的と見られる新聞を起訴せずに禁止できる権限を地方政庁に付与し、新発行の新聞に保証金を要求し、非行があればこれを没収し、或は免許を取消す事を規定している。又インド総督は、政府が流刑の宣告を受けた若干の囚人を放免する事に決定した旨宣言した。

阿弗利加と英国 同上

カルカッタ来電―ソマリランド方面に設けていた前線基地を撤退させよとする英国の政策は、土着民の不安を招き、英国保護政策を信頼した土民を離反させる恐れがある。

解説:ソマリランドは英国の植民地で、現在のソマリア共和国の北部でスエズ運河出口に面した地域である。ソマリア共和国の中部には海賊の基地があり、現在も海上自衛隊が艦底、航空機を派遣し、国際的な海賊対処行動に参加している。

 

2月11日

墺露関係改善 10日タイムス社発

露都来電―昨春ボスニア、ヘルチェゴビナ併合以来、疎遠となっていたオーストリアと露国の両国関係は、改善される事になった。両国政府は、共に各々バルカンに於ける現状維持主義を固持し、トルコの新政府に援助し、バルカン諸邦の自由な発達を期すべき旨をそれぞれが宣言し、以てこの双方関係の改善を表明すると思われる。なお英佛両国はこの件に付いて、全面的に賛同した、

解説:明治41年10月9日「巴爾幹時局」の記事にある様に、この頃から露国とオーストリアの関係は悪化していった。オーストリアのボスニア,ヘルチェゴビナ併合に強い危機感を持ったセルビアは、同じスラブ民族である露国に支援を求めた。この問題を巡り、オーストリアと露国は不仲となっていた。

北極発見彰功 10日上海経由ロイター社発

ワシントン来電―米国上院は、北極発見者ベアリー中佐の海軍少将昇任を可決した。

ベ氏功労表彰 同上

ニューヨーク来電―官民が主催する北極探検家ベアリー氏の招待会が行われた。席上、国民的栄誉の証として、氏の北極到着を承認する意味で1万ドルの小切手が氏に贈呈された。ベアリー氏は演説を行い、このお金は我が従兄弟である英人との南極行競争に米国機を以て加わる為の南極探検隊に使用するつもりであると公言し、且つこの世で英人に勝る好敵手は居ないと言明した。

解説:明治42年9月14日 以降連日の様にクック氏とベアリー氏の北極点一番乗り論争が報道されているが、この記事の様にベアリー氏が最初の北極点到達者と認定されている。

 

212

米人の錦愛鉄道観 11日タイムス社発

ワシントン来電―ある方面では、錦愛鉄道は、最も単純に英米両政府の保護下に、最初の計画通りに英米共同事業として、速やかに敷設工事を開始しなければならないと考えている。

解説:錦愛鉄道は、満州南部の愛琿から北部の錦州に至る鉄道で、日本が手に入れた南満州鉄道と平行に走る鉄道である。

第二院廃止論 11日上海経由ロイター社発

英国労働会議は、選挙を経ない第二院は、時世に適しない故、上院を廃止しなければならないと宣言する決議案を満場一致で可決した。但し如何なる第二院にも反対しようとする修正案は否決された。

 

2月13日

佛摩関係険悪 12日タイムス社発

タンジール来電―在ノエタ佛国陸軍特使一行の土人書記が捕縛され、モロッコ王侍従の為に侮辱を受けた。佛国将校連は宮廷より退席した。

パリ―来電―モロッコ王ムライハフィッドは、先にその特使が締結した借款契約の認可を拒絶した。諸新聞は佛国がモロッコに対する佛国債権者を保護する為に断固たる手段を執る様主張した。

波斯人激怒 12日上海経由ロイター社発

本社テヘラン通信によれば、露国が露兵のペルシャ駐屯問題の論議を拒否した件は、テヘラン府の人心を激怒させた。同府に於いては、外国軍隊の占領継続は、全く弁護の余地が無いものと考えている。

排日案可決 11日桑港特派員発

カルフォルニア州選出の下院議員ヘース氏提出の日本人排斥法案は10日満場一致で下院委員会を通過した。同案は日本人と特定していないが、商人、学生、教師又は旅客を除き、現行法で米国市民となり得ない者の入国を拒絶すると言っているのであれば、日本人を指しているのは言うまでもない。そしてこの婉曲な法案が下院を通過する事は殆ど疑いがないと言われているが上院を通過するかどうかは不明である。

 

2月14日

米国外交攻撃(満鉄中立問題) 12日桑港特派員発

11日の下院予算委員会でニューヨーク選出議員ハルリソン氏は、極めて大胆且つ露骨に国務郷ノックス氏の満州問題、ニカラグア問題、中米問題等に関する外交政策の失態及び適当な外交官を得ない点について攻撃を加え、議場の注意を惹いた。しかし外交委員会委員長ベルキンヌ氏は、満鉄問題を弁護し、米国銀行家が支那の起債に関与する事を得たのは、成功ではないかと言い、ハルリッツ氏はマネートラストとして知られた銀行はいざ知らず、他の一般銀行家は少しもこれを関知していないのではないかと皮肉った。

解説:マネートラストとは、ロックフェラーのマネートラストの様に使用され、一部の銀行による独占金融支配の意味と思われる。

排日案の反響 同上

12日のサンフランシスコ、クロニクル紙は下院委員会を通過したヘース氏の日本人排斥案を是非とも通過させなければならないと論じ、且つ通過する事を信じると言っている。同案に対して、日本国民が激昂したとの東京電報は、非常に米国人の注意を惹いた。

解説:米国に於いては、既に労働組合が発達しており、ロビー活動が盛んであった。サンフランシスコの市議会、カルフォルニア州選出の連邦議員は労働組合を無視できなかった様である。現在、同様な現象が韓国系米国人の慰安婦問題にも見られる。

 

215

摩洛哥の謝罪 14日タイムス社発

タンジール来電―モロッコ王ムライハフィドは、在フエツ佛国陸軍のモロッコ人書記を捕縛し、侮辱を与えた件について、これは是認することができないと発表し、この侮辱事件の責任者である官吏に対し佛国将校に謝罪する様命令した。

解説:2月13日「佛摩関係険悪」の続報である。

獨逸社会党運動 14日上海経由ロイター社発

社会民主党員等は、現在人気の無い新選挙法案に反対し、ベルリン市街で多数のデモ行進を行った。そして市の中心に於ける大集会を警吏が阻止した為に、デモ隊と警吏間に衝突が起こり、警吏は空砲を発射し、数名の負傷者が発生した。

 

216

沸獨関税戦争 15日タイムス社発

ベルリン来電―国民自由党は、政府に対し佛国が関税を増加する計画に対し、報復手段を講じる事を勧告した。

獨逸の激昂 14日ベルリン特約通信員

毎日新聞の電報で、獨帝に関する無礼な記事があり、獨逸の至る所で人民を憤怒させた。政府は獨逸諸新聞がこの記事に関連し、排日的暴論をする事を防止する為、大いに尽力中である。

 

2月17

希臘の言論抑圧 16日タイムス社発

アデン来電―ギリシャ陸軍協会は、国民会議招集の意見に反対する諸新聞の発行を禁止し、兵を集めてこの命令を執行しようとするに至った。その為諸新聞記者も必要に迫られ、止む無く異口同音に同会議の招集を主張する事になると思われる。

巴里洪水続報 同上

パリ―来電―セイヌ河は、水嵩が再び増加中であり、南西海岸には激烈な風雨があった。市内進水地区ではポンプをもって水を排水中である。

 

2月18日

蘇丹土民襲撃 17日上海経由ロイター社発

パリ―来電―ダカールよりの公報によれば、沸国の1個分隊は、スーダンのワダイ州アベシュルから旅程3日の地でマサリト蕃賊酋長の為、待伏せ攻撃を受け、土民111名の一隊全部、欧州人大尉1名、中尉2名、軍医2名が虐殺されたとの報告があった。

排日案内情 16日桑港特派員発

ワシントン来電によると、ヘース案に対する日本の世論が激昂した事は少しも驚くには値しない。日本は条約改正の機会に、国民的栄誉を傷つける条項を除こうとしており、若しヘース案に於いてこの件が提出されていないならば、日本は自ら移民に関する協約を破棄し、他の欧州諸国と同一待遇を要求するであろうと信じられていた。日本の激昂は、新条約交渉の進行上、日本が不利になる事があるであろう。しかも時局はカルフォルニア州学校問題紛争の当時よりも悪くなっており、両国政府の衝突が起こるかも知れない。但し一般に信じられているのは、ヘース案が下院委員会を通過したのは、日本の第2条但し書き排除に対する牽制運動であり、到底議会を通過する事は無いであろうと言われている。

希臘陸海軍反目 16日ベルリン特約通信社発

ギリシャ海軍は、陸軍協会に反対し、国王に味方する様になった。その為陸軍軍隊は、驚愕している様である。なお海軍は戦闘準備を整えている。

 

219

英国労働派の態度 18日タイムス社発

英国の政局は、依然として困難である。アイルランド国民党は引き続き政府との提携条件を要求中である。そして政府が国民党の要求に完全に応じる事が出来ないのは明らかである。なお労働派の説明によれば、同派は上院の否認権に対する皇帝の保障なく、又上院の予算否認権にも服従しなくて、首相アスキス氏がその地位を維持する事には反対であると言う。そして急進自由党はこの説に同意している。

英独仏公使質問 18日上海特派員発

英独仏3国公使は、外務部に対し同じ内容の通牒を送った。

イ漢鉄道借款に関する130日の詔勅に対する弁明を求め、三国は清国に最初の約定を履行させようとする旨を通知した。米国は最初の約定には加わっていないのでこの抗議には加えられていない。なお同通牒は、この詔勅を公式に、自然に解釈した結果について考究し、その意味は、清国政府は欧州との間の難問が解決した時には、強硬に道理に背いた大資産家を処分しなければならないと言っている。 

解説:イ漢鉄道とは武漢と香港を結ぶ鉄道であり、列強の利権争奪の舞台となっている。

この記事の大資産家の原文は「紳董」であり、資産家の最上位に位置する大富豪、大資産家を意味する。

 

220

佛国の対摩談判 19日上海経由ロイター社発

佛国はモロッコ王ムライハフィドに対し、48時間以内に借款協約に調印する事を求め、これに応じないならば、断固たる手段を執るであろうと通告した。

日本移民歓迎 18日桑港特派員発

カルフォルニア州ロスアンゼルスの商業会議所では、欧州の移民は劣悪で排除すべきであるが、日本人は全てに良好であるのみならず、カルフォルニア州の農業には非常に必要であるので、大いに歓迎すべきであると決議した。

解説:排日を主張しているのは白人労働者の組合であり、既にカルフォルニア州議会を抑え、連邦議会にも強い影響力を発揮している。

排日案論評 同上

18日朝のサンフランシスコ。クロニクル紙は、日本人排斥案は、日本政府が既に採用し、且つ施行している日本の移民政策を米国の法律上に採用したものに過ぎず、日本に異議ある筈はない旨述べている。

 

221

排日案通過内情 19日紐育特派員発

先般議会に於いて、委員会を通過した日本人及びアジア人排斥案は、現在の情勢では衆議院を通過する模様である。そしてこの裏面には、興味深い魂胆が隠れている。それは最近共和党の内部に軋轢があり、どうかすると現大統領タフト氏の政策に反対しようとする者が多く、特に太平洋岸の選出議員に反対者が多い。同党の幹部は、これ等議員の御機嫌取りとして、衆議院は通過させて、上院では必ず否決する事となっていると確聞する。

米国海軍現状 内国電報(20日発)

日露戦争が世界の海軍国に及ぼした影響は甚大であり、英獨海軍の競争に次いで、佛国海軍の革新となった。米国は更に一層切実に海軍力の増大を感じる様になり、前大統領ルーズベルト氏の主唱により、上下挙って海軍拡張に熱中した。特に新海軍卿マイヤー氏は就任以来、海軍行政組織の改革を実行しようとして、自ら軍港要港を巡視し、要職の将官を欧州に派遣し、海軍制度を視察させ、各軍港の司令長官を集めて、会議を開き、又部内一般から意見を募る等熱心に研究、努力中である。近い将来に於いて著しい発展を示すようになるであろう。単に艦艇数が世界第2位海軍国であるの留まらず、必ず実力がこれに伴うようになるであろう。(一部抜粋)

 

222

駐日武官増派 20日桑港特派員発

米国政府は、日本政府の了承が得られるならば更に2名の大使館付き武官を増すと思われる。その武官は、軍事に関係せず、大使の指導の下に日本の風俗、習慣、言語を研究すると言われている。

加奈陀学童排斥 同上

英領コロンビ州のナナイモ地方の社会党員は、東洋児童隔離教育案の提出を予告し、カナダ政府に東洋児童隔離教育学校の設立を余儀なくさせると公言した。

 

2月23日

清国大学協議 22日上海経由ロイター社発

昨日オックスフォード大学に於いて、清国大学計画期成の為に、6百名の同校関係者が集会を行った。ウイリアム、セシル嚮は清国に於ける同計画を歓迎し、一同に対し資金募集に尽力する様求めた。

解説:精華大学は、1911年米国に依って、義和団の賠償金を基に設立された歴史があるが、この英国の運動がどの様な経過を辿ったか不明

ロ卿上院改革 22日上海経由ロイター社発

ローズベリー嚮は、上院に於いて演説し、予は人民が上院の世襲主義に反対していると信じているので、上院は自らその改革案を定め、以て全国民にこれを判断させなければならないと主張した。

 

2月24日

米国罷工暴動 23日タイムス社発

ニューヨーク来電―フィラデルフィアに於いて、激烈な罷工暴動があり、州兵1万人がいつでも出動できる様に準備を命じられた。3百名が逮捕され、負傷者も3百名となった。

解説:陸軍兵力は8万5千人であるが、既に各州に州兵が居た様である。原文では国民兵となっている。

ダライラマ出奔 23日上海経由ロイター社発

カルカッタ在住の本社通信員の報道によれば、員数不明の支那兵が東方からラッサに侵攻し、ダライラマは大臣数名を従えて、インド方面に向け、ラッカを立ち去った。ラマは26日にカリンボンに到着する予定で、タシラマはシガツエェに居ると信じられている。

解説:この事件は、四川省総督が1905年からチベット制圧を始めた事から起こっている。この記事のとおり19010年にはラサまで制圧しようとしており、この記事のとおりダライラマはインドに脱出している。一方タシラマ(パンチェンラマ)は、仏教界で序列第2位であるがこの時、清国に協力している。1911年の辛亥革命時に、四川省総督が殺害された為、ダライラマはチベットに帰り、清兵を排除し、ラサを挽回している。その結果タシラマは清国の勢力圏に逃れた。

極東戦争説 22日桑港特派員発

米国参謀総長ベル将軍は、21日夜ニュー、ヘブン州兵の集会に於いて、米国は極東問題の為に遠からずして戦争をせざるを得なくなるであろう。その為に至急戦備を整える必要があると言明した。

日本人調査費 同上

米国下院は、太平洋沿岸に於ける日本人の状態及び国境を越えて密かに入国する日本人を調査する費用を、12万5千ドルに増加する案を通過させた。

労働同盟排日運動 同上

サンフランシスコ労働同盟は、ヘース氏の排斥案は不十分であるので、更に厳重な排斥法の制定を望む旨を決議し、且つ先に日本人歓迎を決議したロスアンゼルスに排斥会成立運動を開始した。

解説:2月20日「日本移民歓迎」でロスアンゼルスの商業会議所が日本移民を歓迎する記事がある。

 

2月25日

英国の西蔵問題観 24日タイムス社発

露都来電―清兵のチベット侵攻及び暴行、ダライラマのインド行等は、非常に露人を憂慮させ始めている。そして露都では、英国政府が再びチベットの平和を回復する為、北京政府に対し、圧迫を加える様になることを希望している。

前蔵相日本攻撃 23日桑港特派員発

前大蔵卿シヤウ氏は、ニュー、ゼルシー州モーリス市で開催されたワシントン協会に於いて猛烈に日本を非難し、聴衆は無論、全国民を驚かせた。その発言の一部に、日本は太平洋を支配しようとして、この為に血を流すことを厭わないであろうし、人種的闘争は疑いもなくあり、我々は十分な準備をしなければならないと述べている。

費府街鉄罷業 同上

フィラデルフィアで激烈なバス車掌の同盟罷工が起こり、会社はバスを運転しようとして、同盟者はこれを阻止しようとして、23日3名の死者と千余名の負傷者が発生した。

排日運動 同上

サンフランシスコ労働同盟は、強烈な排日運動を始め、日本人を使用する場所には、白人労働者を働かさないという大運動を起こし、既に衝突を起こしている。

 

2月26

排日演説真相 25日タイムス社発

ニューヨーク来電―前大蔵卿で現在カーネギ信託会社社長ショウ氏がニューゼルシー州モオリス市に於いて太平洋上に於ける日本の野心を説き、戦争説を鼓吹し、陸軍参謀長ベル少将がニューヘブン州兵に対し、排日的演説を行った為、東京の人心に非常な悪感情を与えたとの報道は、大いに米人を驚かせた。前蔵相ショウ氏の演説は、決して米人を代表する意見ではなく、従って又重要ではない。ベル少将の演説は、誤報であり、その演説は決して排日的性質ではないと言われている。

西蔵変乱と英国 29日上海経由ロイター社発

ロンドンタイムスは次の様に述べている。ダライラマは、疑いもなくインドに避難するであろう。しかしラマが有力な援助及び有り難く感じられる同情を得るであろうとは期待する事が出来ない。そして現在チベット問題を再考することは、時期が既に遅いと謂えども英国政府は尚且つ清国政府に対し、友好的に意見を陳述すべき方法がある。(一部抜粋)

加州の日人排斥 24日桑港特派員発

カルフォルニア州アルビソ村会に於いて、先日、市街区域内に日本人に土地、家屋の貸与を禁じる決議を行い、又先般一日本人が家屋新築を願出たが許可せず、紛争中である。

米紙の暴論 同上

24日の夕刊ポスト新聞は、一武官の談話を引用し、日本は貧弱な事に加えて、強敵露国を前に控えているので、如何に排斥しても米国に対し戦争をする事は出来ないと説き、大いに煽動的主張をしていた。

 

2月27

ダライラマ到着 26日上海経由ロイター社発

本社ダルゼリング通信によれば、ダライラマは非常に困難な旅行を行い、カリムボンに到着した。尤も途中、仏教徒やシーク教徒等は喜んでこれを援けたそうである。その到着は非常に人心を激動させている。

戦争説と国務郷 25日桑港特派員発

日米戦争説が日本を驚愕させたとの東京電報に接し、国務郷ノックス氏は、却って驚き、次の様に語った。日米両国の関係は、米国と他の諸国が友好的であると同様に友好的であり、少しも紛争の恐れはない。シャウ氏の演説は、単に航海補助問題を論議したに過ぎず、ベル将軍の演説も、内容を詳らかにしないが、軍備拡張を唱えたに過ぎないと思われる。日米間の移民問題は、誰も知っているとおり完全に満足すべき状態にあるので、如何に扇動者が騒いでもこの問題によって世人を動かす事は出来ないであろう。

解説:シャウ氏の演説は、2月25日、26日の記事にあり、ベル将軍の演説は、2月24日の記事にある。

米国海軍拡張 同上

米国下院委員会は、それぞれ11百万ドルの費用で28千トンの2隻の戦艦を始めとして修繕船1隻、大運送船2隻、潜水艇5隻、駆逐艇3隻を建造することに同意した。

解説:米国海軍は、日露戦争前には世界第5位の海軍国であったが、2010年当時は世界第2位の海軍国となっている。

西蔵変乱に対する上諭(ダライラマを平民に落す) 25日北京特派員発

チベットの僧侶が支那官兵に反抗するとは、昨年来しばしば報じられた所であり、支那政府は、この鎮圧の為に四川省より派兵の議があったが、その真偽は明らかではなかった。しかし25日の上諭は、ダライラマの暴戻専横、あらゆる罪悪を指摘し、今回四川の官兵をチベットに送り討伐することが止むを得ない事情を述べ、更にダライラマの名称を剥奪し、チベットに帰ると否とを問わず、これを平民同様とし、後継者の選定を駐チベット大臣に命じた。(一部抜粋)

解説:2月24日にダライラマがチベットを逃れる記事がある。現在のダライラマも中国から同様の仕打ちを受けている。

 

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前大蔵卿の弁明 仮に日本と戦争した場合 26日桑港特派員発

前大蔵卿シヤウ氏はフィラデルフィアに於いて次の様に語った。予はモーリス市に於いて日本との戦争を予言せず、ただ著名な事実を挙げたのみである。

日本が行おうとすれば、30日以内に20万の軍隊をハワイに送る事が出来るが、我々は運送船を持たない為に10万の軍隊をも送る事は出来ない。戦艦を建造するのも良い。しかし戦艦には運送船や仮想巡洋艦が付かなければ何らの価値もない。

戦争があるとすれば大西洋艦隊をサンフランシスコに回航しようとしても必要な石炭船がないではないか。

予は戦争を予言していない。大戦争の場合、米国が如何なる状態の下に立つであろうかを予言したのみである。(一部抜粋)

 

解説:関連記事が225日「前蔵相日本攻撃」の記事以降、連日報道されている。当時米国陸軍は85千人であったが、海軍は、英国に次いで世界第2位となっていた。しかし大西洋艦隊が主力で太平洋には見るべき艦隊を持っていなかった。