期日 | 日本関係 | 期日 | 露清関係 | 期日 | 英米関連 | 期日 | 独仏その他関連 |
1月1日 | 移民制限協約改締 | 1月8日 | 米国の新提議 | 1月3日 | 亜細亜艦隊創設 | 1月2日 | 獨逸海軍協会檄文 |
1月5日 | ハルバートの日韓合邦論 | 1月9日 | 米国提議の内容 | 1月6日 | 英国首相の海軍論 | 1月11日 | 土耳其の抗議 |
1月17日 | 安奉線工事現状 | 1月9日 | 獨清露英の態度 | 1月7日 | 印度革命党捕縛 | 1月21日 | 沸国正教問題 |
1月31日 | 東京より寄贈した桜に虫 | 1月10日 | 満州中立論評 | 1月21日 | 米国関税布告 | 1月21日 | 佛国政教分離問題 |
1月11日 | 米紙の意見 | 1月27日 | 布哇砲台費可決 | 1月26日 | 沸国教育法案 | ||
1月11日 | 日本の態度と米人 | 1月28日 | 米獨関税問題 | 1月26日 | 膠州貿易増加 | ||
1月12日 | 露紙の米国提案反対 | 1月29日 | 米獨沸関税問題 | 1月27日 | 印度叛乱鎮圧策 | ||
1月13日 | 米紙の提案反対 | 1月30日 | 米国リベリア | ||||
1月13日 | 満州当路所見 | ||||||
1月14日 | 米国提案の内情 | ||||||
1月16日 | タイムス米国提案評 | ||||||
1月19日 | 満州鉄道中立反対 | ||||||
1月20日 | 提案拒絶と米国 | ||||||
1月22日 | 露国拒絶理由 | ||||||
1月26日 | 錦愛鉄道論評 |
1月1日
印度綿作収益 31日タイムス社発
ボンベイ来電―綿貿易は、例年の収穫状況よりはるかに豊作である。綿業者等は、1年間で4年分の収益を得つつある。
移民制限協約改締 30日桑港特派員発
ワシントン来電によれば、内田大使は、就任第1番目の仕事として、日本移民を制限することを米国政府に提案するものと伝えられている。しかも日本がいかに改正しようとしているのかは知ることが出来ない。
1月2日
獨逸海軍協会檄文 1日タイムス社発
ベルリン来電―獨逸海軍協会の新年の檄文は、獨逸国民に対し、獨逸海軍の拡張政策を支持する様熱望し、英国煽動家の排獨的演説のごときは、これは選挙運動に過ぎないと言明した。
1月3日
英国の海軍力 1日上海経由ロイター社発
ペレスフォード郷は、グリムスピーに於いて、次の演説を行った。海軍省は、海軍先任将校より、現在の英国海軍力が実際の必要に適応していない事を指摘した書簡をしばしば受け取っているとの報道を耳にしたが、これは果たして事実であるかどうかを首相アスキス氏に質問した。
亜細亜艦隊創設 同上
ワシントン来電―極東に於ける米国の利益が次第に増加するにつれ、現在の組織のまま全艦隊を管理することが困難となった為、太平洋艦隊をアジア艦隊と太平洋艦隊とに分ける事に決定した。
1月4日
希臘内相辞職 3日タイムス社発
アデン来電―ギリシャ陸軍協会は、去る1日、内務大臣の辞職を要求した。これについて内閣は、一旦総辞職を決定したが、皇帝の優渥な御意に依って中止した。内相の辞職は、2日付で発表された。
英国蔵相演説 3日上海経由ロイター社発
英国大蔵尚書ロイドジョージ氏は、イングランドの都市レツデングに於いて演説し、政府は、社会改良の為に1千8百万ポンドを使用する事を定めた。しかし無責任な世襲的妨害物(貴族の意)を亡ぼすまでは、その利益を受ける事ができないと言明した。
1月5日
希臘危機落着 4日タイムス社発
アデン来電―ギリシャ政界の危機は、落着した。内務大臣は、その職を免じられた。武器を執って威嚇的態度を示していた陸軍の将校は、首相マウローハリス氏に対し、陸軍協会は、政府を信任する旨通知した。
ハルバートの日韓合邦論 3日紐育特派員発
一両日前、ニューヨークに到着し、現在ワシントンに滞在中であるハルバート氏が次の様に公言した。
日韓合邦は、明らかにポーツマス条約に違反しており、これ程非理、不当なものはない。韓人は決して合邦を認めず、若しこれを決行するならば、国内の暴動は絶える事が無いであろう。予は韓人の為に、十分に力を尽くす事が出来なかったので、愛国心に富む韓人の中には、予を恨み、予に危害を加えようとする者もいた。その為予が京城から大連に赴く際は、日本の保護下にあった。然るに日本の紳士が、その保護下にあった予を見て、秘密探偵であるとしたのは、誤解である云々
解説:ハルバート氏とは、米国の神学者H・B・ハルバートであり、1906年に「朝鮮滅亡」を出版しており、キリスト教至上主義者で、朝鮮に比べキリスト教が普及しない日本を野蛮視している。
1905年、日本の第二次日韓協約を妨害する為、皇帝高宗の密書を米国の政府要人に渡そうとした、又1907年7月のハーグ事件でも高宗の密使を列強諸国の代表と会わせようとして失敗している。
1月6日
英国首相の海軍論 4日上海経由ロイター社発
自由党は、海軍に関し益々猛烈に主張し始めている。首相アスキス氏は、バツジントンに於いて演説し、いずれの政府も我が政府以上に、海軍の優勢に注意を払うものはない。我が政府が責任を持つ現在及び今後数年間に於いては、英国の地位は、攻撃の余地が無い優勢を保つと言明した。その他の閣員も同一の演説を行い始めている。
解説:英国は獨逸と建艦競争をしており、2強国標準という政策をとっている。即ち獨逸と仏国との海軍力を合わせてものより、優勢な海軍力を持とうとしている。
1月7日
印度革命党捕縛 6日タイムス社発
ボンベイ来電―インド政府は、デカン殺人密謀が発覚した結果、ついに国事犯人の審問期を短縮し、不法団体禁止法律を適用した。そして37名は既に捕縛された。
米国航海補助案 6日上海経由ロイター社発
米国下院議員ハムフレー氏は、米国政府の同意を得て、航海補助法案を下院に提出した。その内容は、極東及び豪州へ郵便物を輸送する第2等級の米国汽船に対する補助を1マイル4ドルに増加し、遠洋通商船のトン税を増加し、且つ外国建造の汽船を外国貿易の為、米国の船籍に移す事を許す件等である。
1月8日
米国の新提議(満州鉄道買収問題) 6日桑港特派員発
米国政府は、満州問題解決に関し、露国政府に覚書を提出した。その内容は、各国の共同出資により、そのお金で、満州に於ける諸鉄道を清国政府に買収させ、支配権を出資した各国の共同支配に委ね、中立の位置に置き、完全に商業鉄道とし、政治的軍事的使用を禁止すると述べている。
露国の態度は、英米資本家にアイホンから錦州府までの鉄道敷設権を与える事は露国政府の最も好まない事で、絶対に反対すると言われている。
1月9日
米国提議の内容 8日上海経由ロイター社発
米国は、満州の諸鉄道を清国へ売却させ、これを中立とさせようとする覚書を列国に送った。米国の案によれば、この費用は列国より支給し、従って列国は同鉄道を純粋に商業的、非政治的基礎の上に活用する様監督するべく、又同計画は、ハルピンから大連に至る日露両鉄道線を含むものであり、一方同線は、兵士弾薬の輸送に対して閉鎖すると共に、他方永久的衝突を避け、機会均等主義を安全にする所以の緊急的措置であると言っている。
獨清露英の態度 同上
獨清両国は、米国の満州鉄道中立提議について、好意的な回答を行い、露国は現在慎重に考究中である。また英国は、根本に於いて同意したが、同時に今後何等の行動を執る以前に、先ず日露両国の意見を確かめなければならないと指摘した。
1月10日
満州中立論評 9日上海経由ロイター社発
ロンドンタイムスは、米国国務郷ノックス氏の満州中立案が、財政上、政治上のトラブルを生じる恐れがあると切言し、この案を提出したノックス氏の心情や純粋さは、察するに余りあるけれども、あまりにも坦懐過ぎて、却って満州の現状に関する切実な実情を見過ごした嫌いがあると論じた。
解説:連日続報されている満州問題である。坦懐とは物事にこだわらない事である。
1月11日
米紙の意見 10日タイムス社発
ニューヨーク来電―諸新聞は、国務郷の提議した満州鉄道を清国に返し、その費用を列強より貸与し、これによって鉄道の中立を図ろうとする案を歓迎し、同提議によって、関係諸国は、止むを得ず公然と満州の将来に関する意志を発表せざるを得ない様になるであろうと指摘した。
土耳其の抗議 10日上海経由ロイター社発
トルコ政府は、クリート内閣がギリシャ皇帝に対し、臣従の宣誓を行い、又同島議会がギリシャ法典を実施する決議を行い、以て新たに甚だしくトルコ皇帝の主権を冒した件に付き、抗議する通牒を列強に送った。
日本の態度と米人 9日桑港特派員発
国務郷ノックス氏の提議した満州鉄道中立案に関し、日本の反対が激しいとの来電があり、米人の感情を激しく動かした。米人は一般にノックス氏提議の成功を望んでいるからである。
1月12日
満州提案論評 11日タイムス社発
ニューヨーク、イブニングポスト紙は、満州中立提案は、日本が戦争で得た二三の重大な結果の一つを放棄し、且つ開放主義と清国税関法を破った事を白日の下に晒す事になると言明した。
露紙の米国提案反対 11日上海経由ロイター社発
露国半官報ノーウエ、ウレミヤは、米国国務郷ノックス氏の満州鉄道中立提案を否認し、これは空想の奇怪な産物に過ぎないとし、露国は少しも権利を放棄するべき理由を持たないと論評した。
1月13日
米紙の提案反対 11日桑港特派員発
満州問題に関する国務郷ノックス氏の提案に就いては、国内で漸く反対の声が高くなった。サンフランシスコ、ニクルス紙は、今朝の社説において、モンロー主義を破って満州問題に干渉する非を論じ、日露政府がキューバの門戸開放を要求する時は、如何にするのか。米国が満州に関与する事は、日露がキューバに関与する事と同じであると論じた。
満州当路所見(米国の提議に対して) 11日北京特派員発
米国が提議した満州中立問題に対して、清国関係者の議論はまちまちである。有識者は、余りにも突飛は議論であり、到底実行されないのみならず、万一実行される時は、列国が合同して清国の政治に干渉する端緒の第一歩となり、清国の為に悲しむべき結果をもたらすであろう。所謂前門に狼を防いで、後門に虎を招く事になると述べている。
1月14日
米国国務郷の意見 13日タイムス社発
ニューヨーク来電―米国国務郷ノックス氏は、日露両国が現状維持よりも寧ろ鉄道中立によって、一層大きな利益を得る事になるであろうと信じると称している。
国務郷は、満州に於いて門戸開放主義を維持すると共にこれを最善の経済的利益を生むよう発達させることを希望し、そして日露両国は同地に近いので、その迅速な発達から受ける利益も一層大きいであろうと考えている。又若し両国がこの提案を拒絶するならば、必ず鉄道競争という伏兵に遭遇するであろうと確信している。
米国提案の内情 12日桑港特派員発
満州鉄道問題に関する米国の提議は、故鉄道王ハリマン氏の意志であり、後継者がこれを継承し、政府を動かしたものとの説がある。
解説:鉄道王ハリマンは一時「満州鉄道日米共同管理に関する予備覚書」を桂首相と交換した事がある。しかしポーツマス条約を結ぶ為に渡米していた外相小村が帰国し、猛反対の結果中止されている。
満州中立案と露紙 14日タイムス社発
露都来電―露国新聞の多数は、米国国務郷の提案した満州鉄道を中立とする件に反対した。
西蔵人の不満 同上
ロンドンタイムスの入手した情報によれば、チベットの情勢は非常に危機的である。清国官憲とチベット人の確執は絶えまなく、清帝は、チベット人の不満を抱く原因を除く様求める上奏に接した。現在のままで推移するならば戦乱の恐れがあると言われている。
獨逸の回答 14日上海経由ロイター社発
本社ベルリン通信員の関知した所によれば、獨逸は米国国務郷ノックス氏の満州中立提案について、英国と同一の意味で、概ね同意する声明を行う様である。又ベルリン政府筋に於いては、同件が決定を見る迄には、なお長期日を要すると信じられている。
1月16日
墺紙の米国提案評 15日タイムス社発
ウイーン来電―フレムデンブラット紙は、米国の満州鉄道中立提案を評して、これは実にほとんど、専ら日本が抱いている大志に反して行われたものであると説き、同提案の成立する見込みは少ないと言明した。
タイムス米国提案評 同上
タイムスは先ず日露両国の意見を聞かなくて行われた米国の満州鉄道中立提議の実行が困難な事は、列国の認識する所であると説き、英国もこれを承認しないであろうと言明した。
1月17日
露領の冷静(米国提案に対して)ウラジオ特電
米国の提案に対し、当地方の各新聞紙は非常に冷静であり、露人間には話題にすら上がっていない。
安奉線工事現状 内国電報(16日発)
昨年9月より急遽工事に着手した安奉線は、結氷期間中の事であり、各区工事が振るわず、来る3、4月頃の解氷期を待って、人夫を増して大工事に着手する筈であり、現在は、唯沿線の土地収用に努めているのみである。大石橋(だいせききょう)と陳相屯(ちんそうとん)間以外の土地収用は終わる予定であるが、積雪、風害等の障害によって延期していると言われている。
解説:列国で南満州鉄道を整備、管理しようと言う米国の提案があるが、日本は着々と工事を進めている。中国旅行で旅順から瀋陽(旧奉天)に行く際に利用するのが安奉線であり、途中大石橋を通過する。
1月18日
日露協約主張 17日タイムス社発
露都来電―半官報ノウウオエ、ウレミヤ紙及びビルテヴィヤ紙の両新聞は、露国政府が日本と鉄道協約を締結するよう主張し始めている。
露国の拒絶 16日ベルリン特約通信社発
露国は公式に米国の満州鉄道中立提議の承諾を拒絶した。(上記電報に就いて、我が外務当局に質したが、当局者は少しもこの様な報道に接してなく、多分間違いであろうと語った)
1月19日
満州鉄道中立反対 17日ベルリン特約通信社発
露国大蔵大臣の機関紙である一露都新聞は、露国が東清鉄道中立をはじめ、米国の提案を承諾する事はできない旨を報道した。
1月20日
印度革命運動 19日タイムス社発
カルカッタ来電―1印度人、連隊の兵士10名が、数名の犯罪陰謀者を連隊内に連れて来たとの疑いで、現在審問が行われている。但し同連隊そのものが英国に対し忠実である事は疑いないと言われている。
提案拒絶と米国 18日桑港特派員発
ワシントン来電によると、国務省は現在でも、ノックス氏が提議した満州鉄道中立構想が完全に失敗に終わったものとは認めていない。しかし18日午後流布された日本が提議を拒絶するであろうとの報は、少し驚愕を以て迎えられた。実際日本の態度が風説の通りであるとするならば、少なくとも現在の所、同提議を放棄しなければならないが、政府当局は、日露両当局者が十分な考慮を費やすことなく拒絶したとは信じていない。故に回答は数か月後になるのではと期待している。(一部抜粋)
解説:この鉄道問題が将来の大東亜戦争の源流と思われる。
1月21日
沸国正教問題 20日タイムス社発
パリ―来電―沸国代議院に於いて、学校問題に関する討論が行われた。公立学校の組織に功績のあった一人ビュイゾン氏は、学校に於いては、常識ある人物より反対を受ける様な事項は一切教育してはならず、教師は生徒の前に神を論じてはならないと公言した。
解説:明治39年12月13日沸国に於ける政教分離の記事があり、以後沸国では政教分離が重視されている。
「佛国政教分離問題 12日上海経由ロイター社発」
パリーに於ける法王使節モンタクニキ神父は、家宅捜査を受けた上に逮捕された。国境まで護送される筈である。
佛国内閣会議は、早速、寺院財産の清算を行い、且つ5500名の神父に対して、兵役に就く事を求める決定を行った。
「法王亦甚強硬 同上」
佛国政教分離法がいよいよ実施されることになった為、法王庁は大変激昂している様子である。法王は、この問題の情勢について、自らも断固たる手段を採らざるを得なくなってしまった事を悲しみ、迫害に会おうとも、殉教者を出そうとも、私は、宗教と我が神の道を防護する事を辞せずと述べた。」
獨逸関税難 同上
ベルリン来電―獨逸は、3カ国との間に関税上の難問題が発生する情勢にある。即ち第一米国は多分ペイン関税法中最高税率を獨逸製品に適用するであろう。第二ポルトガルとの通商条約は、危機的な状態である。第三沸国関税改正は、獨逸人に不安を起こさせる内容がある。
米国関税布告 20日上海経由ロイター社発
米国大統領タフト氏は、イギリス(植民地を除く)、イタリア、ロシア、スペイン(植民地を含む)、トルコ(エジプトを除く)にペイン法の最低税率を適用する布告を発した。そして米国に不利な関税を掛ける獨、沸両国に対しては、イタリアが大いに厚遇されるであろう旨を述べる事により、高い税率を暗示した。
1月22日
露国の公式拒絶 20日ベルリン特約通信社発
露国政府は、米国国務郷ノックス氏に対し、米国の満州鉄道中立提案は、露国が承諾する事の出来ない提案である旨公式に通知した。
露国拒絶理由 21日上海特派員発
清国政府は米国政府の提議を拒絶した露国政府の回答を参考として受け取ったとの事である。この拒絶の理由は三つあり、第一 清国の主権と満州の門戸開放は、現在の状況により、決して毀損されないと思考される。第二 米国の提議を承諾すれば、満州に於ける露国の企業を妨害する。第三 シベリアとウラジオを連絡する唯一の鉄道を管理する事は露国にとって、死活問題である云々
1月23日
露国の提案拒否(愈米国政府に通知する) 22日タイムス社発
露都来電―露国政府は、米国の満州鉄道中立提案を拒絶した。しかも同時にワシントン政府に向け、露国領土の安全を冒さない新鉄道の提案ならば歓んで同案及びその含有する長所等を考究したいと考える旨通知した。
仏英の態度 同上
露都来電―沸国政府は満州鉄道中立問題につき、露国と同一の立場をとると考えられる。又半官報ノウオエ、ウレミヤ及びブーズガゼットは、英国が露国に同意するであろうと確信している。
1月24日
米国今後の態度 22日桑港特派員発
国務省は、満州鉄道中立問題に関する日露両国の拒絶公文に接して、非常に失望した。本件がこの拒絶に依って完全に放棄されるか否やは未定であるが、国務省は別に考える所があると思われる。兎に角同省が英国その他と連携した錦齊鉄道(きんさいてつどう)借款問題に特別な注意を払う事になるのは間違いないであろう。そして同件に関しては、日露両国とも異議が無いであろうと信じている。
解説:連日の様に報道されてきた満州鉄道問題は、ひとまず終焉を迎えたが、結局満州問題が、大東亜戦争発生の源流となったと思われる。
沸国の回答 同上
パリ―来電によると、英沸両国も内閣会議の結果、満州鉄道の中立問題に関し、日露両国の拒絶は正当であると是認し、米国に対しては不同意であると答弁する事に決定したと言われている。
解説:獨逸の脅威を受けているフランスは、露国と協調しており、英国も日英同盟を結んでいるので当然の結末とも言える。
1月25日
米国新聞の余憤 24日タイムス社発
ニューヨーク来電―米国諸新聞は、満州中立提案の拒絶に関して、排日的態度を示し、日本は米国に対して、満州で行われ始めている事を監視する特権を拒否する事は出来ないと警告した。
タイムス通信員の日米韓 同上
タイムス通信員は、満州鉄道中立提案を拒絶する事は、日米間の紛争が大きくなるであろうと考えている。
タイムスの論評 同上
ロンドンタイムスは、日露両国の満州鉄道中立案拒絶に賛成し、米国国務郷が外交家らしからぬ楽天主義を執った事を遺憾とし、又清国政府が深く考えず、英米資本家、請負業者に錦愛鉄道敷設を許さんと企てた事を攻撃した。
1月26日
沸国教育法案 25日タイムス社発
パリ―来電―沸国代議院は、学校教育に宗教趣味を加える事を許すべきかどうかの問題について討議を行い、政府側ではあくまで宗教排斥を主張した。そして討論の結果、145対421の大差で政府の信任案が可決され、速やかに新教育法案を施行する必要が是認された。
解説:1月21日「沸国正教問題」の記事の続報であり、そこで政教分離について詳しく解説している。沸国では、現在もイスラム教徒のスカーフを認めていないがこの政教分離の思想の影響ではないかと思われる。
錦愛鉄道論評 25日上海経由ロイター社発
タイムス紙は、清国が錦愛鉄道の敷設を許可するのに、今日の時期を選んだ事を悲しみ、これは、列強間を激しく隔離させ、そして争議を発生させる短見、浅慮の計画であると述べた。
解説:錦愛鉄道とは、南満州鉄道(日本が得た)と平行に走る錦州と愛琿を結ぶ鉄道である。これはアメリカの鉄道王ハリマンの構想であった。
膠州貿易増加 同上
ベルリン来電―獨逸植民省の報告書によれば、膠州の貿易は、1909年度に3割増加した。又炭鉱の産出額も増加した。
解説:膠州湾一帯はドイツの租借地で、獨逸東洋艦隊の基地となっていた。青島でビールの生産を行い、青島ビールとして有名である。
1月27日
印度叛乱鎮圧策 26日タイムス社発
カルカッタ来電―法律無視の精神を煽り、青年を無政府主義に傾けさせる責任は、主として叛乱を煽動する新聞にある。印度政府は、これ等新聞の処分に関する法案を近々提出する様である。従来の法律は、現状では、十分な効果が無い。そして政府の方針に関する印度総督の所見は、一般の公衆より、至極もっともであると認められている。
解説:当時無抵抗主義で有名な「ガンジー」は、英国の植民地である南アで少壮弁護士としてインド人の権利擁護に活躍していた。
ベレスフォード嚮の演説 26日上海経由ロイター社発
ベレスフォード嚮は、ダートマスに於いて演説し、政府の海軍政策を攻撃し、戦艦インポシブルは、その備砲12インチを発射する事が出来ない。従って用をなさないと断言した。
解説:ベレスフォード嚮は1月3日「英国の海軍力」の記事に於いて英国海軍力の不適応を指摘している。
布哇砲台費可決 25日桑港特派員発
米国上院は、既に下院で可決したハワイその他の砲台建設費6百万ドル及び同島維持費百万ドルの支出案を25日通過した。同案の討議中、ネバダ州選出議員ニューランド氏が太平洋権力争いの為、日米間の衝突は免れる事が出来ないと極めて強く且つ露骨に説いた事が最も議員を動かした。
解説:パールハーバーの米海軍基地の誕生であり、日米海軍の衝突のスタートでもある。
1月28日
巴里の洪水 27日タイムス社発
パリ―来電―セーヌ河は益々水量が増加し、外務省所在地の地面も非常に弱まっている。下水道は用をなさず、熱病、疫病が発生する恐れがある。これについて、救済費の募集が開始された。なお同海岸の工場は休業し、3万人が住居を失った。
米獨関税問題 26日ベルリン特約通信社発
米獨関税戦争は多分発生する事は無いと思われる。米国では、この様な戦争に反対する世論が次第に高まり始めており、難しい牛肉税問題についても解決しそうである。しかし両国の妥協は、多分現協約が終了する期日である2月8日前には成立しないであろう。
1月29日
米獨沸関税問題 28日タイムス社発
ワシントン来電―獨逸と米国との関税問題に関する争議は、程なく解決するであろうと期待されている。しかし沸国とは意見の一致を見る事は困難な模様である。沸国側では、米国人は値段の高さには頓着なく、現在沸国から米国に輸入する品種の大部分を占める贅沢品を依然買い入れるものと思考している。そして沸国よりの輸入品の価格は日を追って高騰中である。
希臘政局危機 28日上海経由ロイター社発
アデン来電―陸軍軍人同盟はラリ、セオロキス氏の主導により解散する事に一致した。氏は国民議会の招集、憲法の改正を以て、この同盟を解散する条件としたが、危急な情勢と思われる。
1月30日
米国リベリア 29日タイムス社発
ワシントン来電―米国政府は、アフリカのリベリア共和国(アメリカで解放された黒人が組織したもの)を以て、サントドミンゴ同様の財政的保護国とするよう計画中である。
解説:1822年、開放された奴隷が初めてリベリアに到着している。サントドミンゴはドミニカ共和国の首都
英国選挙の結果 同上
英国選挙は、最早殆ど開票が終わり、その宣告を与えた。統一党は、大いに勢力を増加し、政府も自由党の外、労働党、国民党に依頼せざるを得ず、情勢は国民が両党の主張する大変動を実行させる意思が無い事を示した。なおロンドンタイムスは、今正に上院の有効な改革を行う時期であるとし、在野党も貴族も道理のある改革案には同意、協力するであろうと言明している。
1月31日
沸国洪水原因 30日上海経由ロイター社発
沸国に於ける今回の洪水の原因は、当初に非常な豪雨で河川が増水した事が原因で、その後降雪が解けた為にその水量が増加した為である。
日英米三国同盟論(菊池博士招待会) 29日ニューヨーク特派員発
高峰博士は、28日夜菊池男爵を主賓とし、日米人2百名を招待した。又山崎総領事代理もその前夜、盛大な歓迎会を開いた。その席上にてアウトルック雑誌主筆アボット博士は、最も痛快に日英米三国同盟の必要を論じ、世界の平和は、かくしてこそ初めて保障することができるであろうと述べた。
東京より寄贈した桜に虫がつく 同上
先般東京からワシントンに送った桜の樹に悪い虫が発生した。その為ワシントン公園の官吏は、これを植えると他の樹木に害虫が伝搬するのは必然であるとして、植え付けをしない事を政府に要求した。或は焼却するのではとの説もある。