期日 |
日本関係 |
期日 |
露清関係 |
期日 |
英米関連 |
期日 |
独仏その他関連 |
8月13日 |
布哇耕主の態度 |
8月5日 |
英仏露の親交 |
8月4日 |
米国の太平洋艦隊巡航 |
8月1日 |
革命運動鎮圧 |
8月14日 |
日本人帰化問題 |
8月6日 |
支那豚肉佳良 |
8月7日 |
川漢借款と米人 |
8月1日 |
欧州驚動 |
8月20日 |
キロル韓国論 |
8月7日 |
タイムス日清関係論 |
8月11日 |
米紙と安奉線論 |
8月3日 |
西班牙の損害高 |
8月20日 |
布哇罷首領有罪 |
8月8日 |
タイムス安奉線論評 |
8月19日 |
米国の対清策 |
8月3日 |
西班牙騒動騒乱別報 |
8月26日 |
日貨排斥煽動 |
8月9日 |
安奉線改築論評 |
8月20日 |
米国新聞の誤解 |
8月6日 |
波斯廃帝年金 |
8月27日 |
日清協約内容 |
8月12日 |
安奉線平穏 |
8月20日 |
米国大艦建造 |
8月11日 |
列国の対土勧告 |
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8月14日 |
露人の波斯悲観 |
8月24日 |
米国大艦建造 |
8月11日 |
西班牙の形勢 |
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8月15日 |
清国政府の主張 |
8月28日 |
日本桜樹寄贈 |
8月12日 |
摩洛哥征伐 |
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8月29日 |
日清締約と獨紙 |
⑧月28日 |
英国植民地防衛 |
8月13日 |
クリイト島民憤怒 |
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8月30日 |
清国鉄道政策 |
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8月14日 |
土希交渉継続 |
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8月15日 |
土耳其第二通牒 |
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8月17日 |
ク島内閣辞職 |
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8月18日 |
クリイト問題 |
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8月18日 |
摩洛哥官軍勝利 |
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8月18日 |
西班牙遠征隊 |
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8月19日 |
列国兵士上陸 |
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8月20日 |
希臘国旗引卸 |
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8月21日 |
列国の希土問題 |
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8月22日 |
クリイト問題小康 |
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8月27日 |
摩洛哥僭王囚わる |
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8月29日 |
摩洛哥僭王護送 |
8月1日
革命運動鎮圧 31日桑港特派員発
バルセロナ軍務知事よりマドリッド参謀本部に達した電報によれば、同地方革命軍は降伏し、その頭領は軍法会議に於いて審議中であり、多分斬首される様である。又カタロニア地方の革命軍は依然として盛んで、リスカヤ地方の革命煽動もますます盛んであると言われている。なおフィケラス地方の秩序は、漸く回復し、多数の反徒を捕縛、投獄した。
欧州驚動 同上
モロッコに於けるスペインの大敗は、非常に欧州諸国を驚かし、且つ憂慮させ始めている。パリのある新聞は、これを以て欧州文明に危険を与えたものなので、モロッコ人に報復すべきであると叫んでいる。しかし多くの新聞は、スペイン政府の腐敗を挙げて、欧州諸国が同国を援け、速やかに時局を解決する必要を説きつつある。
8月3日
西班牙の損害高 2日タイムス社発
7月9日以来モロッコに於けるスペイン軍の損害は、将校以下約1,090名である。ムール人は7月27日の戦いで200名を失った。
西班牙騒動騒乱別報 1日上海経由ロイター社発
バルセロナは平穏となった。市街の至る所が爆弾で破壊された。軍隊及び暴民の死亡者は1,000名、入院者は25,000名と思われる。
8月4日
米国の太平洋艦隊巡航 3日タイムス社発
ワシントン来電―海軍省は、太平洋艦隊に属する8隻の装甲巡洋艦に対し、9月5日サンフランシスコを出発し、ホノルルを経てマニラに航行するよう命令した。内2隻は香港に、2隻は呉淞に、2隻は神戸に、2隻は横浜に、何れも来年正月を以て航行するよう命令した。
米国太平洋艦隊増遣 同上
ニューヨーク来電―ニューヨーク・ヘラルド紙の報道によれば、太平洋沿岸に配置される予定の装甲巡洋艦は16隻で編成され、艦隊は既に組織されたと言われている。
米国の太平洋艦隊巡航 同上
露都来電―ペルシャ派遣隊司令官リアコフ中将、その他の将校は、引き続きテヘランに滞在して、ペルシャ政府の為に尽力すべき旨、その筋から発表された。なおペルシャ政府は、露国と最も親密な関係を保つ為にできる限りの力を尽くしつつある。
8月5日
英仏露の親交 4日タイムス社発
パリ―来電―英露両帝の乾杯時の言葉に対して、仏国新聞は、筆を揃えて非常に満足の意を表している。新聞は、英露協約から受けるであろう仏国の利益を指摘し、且つ害心のあるドイツ人が最初モロッコ問題で英仏親交が破れるであろうと期待し、次にアジアに於ける英露の部分的競争は、決して終止しないであろうと推断したが、今や二つともその観察が外れた事に失望したのを見て、愉快に堪えずと論評した。
西班牙騒乱鎮静 同上
バルセロナ来電―当地は、最早平穏であり、市民はその職に復帰した。今回の騒動で死亡した者百名、負傷者千名と推測される。
8月6日
波斯廃帝年金 5日タイムス社発
テヘラン来電―ペルシャ政府は、先に廃帝モハメッドに対し、年金5千ポンド支給に内定したが、廃帝はこれを不足として抗争していた。しかし今回年金額は、1万5千ポンドに決定したので、廃帝は、この金額に満足し、いよいよ2週間以内に露国に出発すると思われる。
ムール人征伐 同上
スペイン兵達は、モロッコのマリーヤの鉄道建造物に沿って、仮兵営を造り、防御線を構築したが、ムール人によって、この線を破られ、スペイン軍の手に回復されたものは、その一部に過ぎず、ムール人等は、再び盛んに戦闘を開始し始めている。
解説:ムール人は、モロッコ付近の遊牧民であり、何回が報道されている様にスペイン軍が散々な目に会っている。
支那豚肉佳良 5日上海経由ロイター社発
新たにロンドンに到着した冷蔵支那豚肉を検査したロンドン商人は、その肉が良好な状態にあると説明し、又鶏卵等も同じく良好であると述べ、今回の輸送に於ける様な状態と性質を維持する事ができるならば、同貿易の将来は有望であると報告した。
8月7日
川漢借款と米人 6日タイムス社発
ニューヨーク来電―米国人の川漢鉄道(せんかん)借款加入に関する協議は、円滑に進行中である。米国銀行家等は、清国政府が米国の要求が正当であると承認した為、同政府との直接協定に依り、英独仏三国の資本家と均等に、この借款募集に応じる事が出来ると確信した。
解説:川漢鉄道の問題は、6月18日から報道が始まり、22日、23日、24日、7月3日、20日、26日と報道されている。6月18日米国の川漢借款談判によると米国銀行団が英独仏に遅れて談判に参加している。7月26日獨逸銀行の陰謀では、獨逸の利権争いが見える。
タイムス日清関係論 同上
ロンドンタイムスは、日清関係に関する社説を掲げ、両国間の交渉が、不穏な情勢を示し始めており、特に清国の対日態度が変化してきたのを深く遺憾とし、そもそも今回の紛争事件の裏面には、大きな経済的、政治的、軍事的争点が潜んでおり、この点から考えると、両国の紛争は、上手く適切な落着を見なければならない。蓋し日清両国にとって最高の利益は、極東の平和を乱さず、能くこれを維持する事にあると言明した。
解説:当時の韓国情勢 8月6日安奉線と鴨緑江架橋工事の記事によると、「安奉線」の修築は、清国政府の回答があると否とに拘わらず、いよいよ来る9月より全線を起工する事になっており、この問題に関する記事である。
クリート問題 6日上海経由ロイター社発
トルコに於いては、クリート問題に関し、人心が大いに激高している。トルコ政府は、更に4日間待った後、強力に在クリートギリシャ将校の召喚を要求するものと伝えられている。
8月8日
タイムス安奉線論評 7日タイムス社発
ロンドンタイムスは、安奉線に関する日本の措置を論評し、日本が満州鉄道に関する決意については、これを驚く人は誰も居ないであろう。又日本の友人で、恐らくこれを非難する様な事はないであろう。蓋し日本にも多少の過失がないとは言えないが、由来満州に於ける同国の地位は、一大戦役に於ける多大の犠牲に対する二三の確固たる報酬の一つであると記憶しなければならないと喝破し、更に清国に向かい、他の強国と結び日本に反抗しようと企てる事がない様に警告し、この様な事は最も危険な災いを内包するものである。思うに清国が改革を決行するに当たり、その最良の親友であり、指導者であるのは矢張り日本にならざるを得ないであろうと言明した。
解説:昨日の記事「タイムス日清関係論」の続報である。
布哇罷工復業(無条件にて) 6日桑港特派員発
ハワイ日本人同盟罷工者は、いよいよ昨日無条件で復業したとの報があった。
解説:度々報道された数か月にわたる罷工が失敗に終わっている。
8月9日
安奉線改築論評 支那特電8日上海特派員発
「チャイナ、ガゼット」は、昨夕の社説に於いて、安奉線について、次の様に論評した。
日本の決意は重大であり、その結果には大きな影響がある、日本は今回の行動によって、その満州政策を宣言し、明らかにしたと云う事ができる。
日本が詳細な計画を以て改築しようとする同鉄道は、その戦略家が、満州の一時租借を永久の占領と変え、同地を朝鮮同様にしようとする大計画の一部に外ならず、満州は完全に日本の左右する所となり、清国は永久に奉天を失う事になる。(一部抜粋)
解説:昨日の記事の続報
8月10日
安奉線と露国 9日タイムス社発
露都来電―半官報ノウオエ、ウレーミヤ紙は、安奉線の改築に関し論評を行い、清国に対する日本の通牒は、宣戦布告を清国に挑んでいる姿であり、清国が屈服する様な事があれば、速やかに朝鮮と同様な境遇に陥る事になるであろうと説いている。
又プールスガゼット紙は、非常に驚愕した様子で、我々は日本がこの挙を行うに至った背後には、露国の注意を極東に集中させようと希望する外国の勢力が伏在している事を認めると言明した。しかし官憲側は、むしろ希望に満ちており、東京と北京に於いて平和的尽力を試みようとしつつある。
土耳其の要求 9日上海経由ロイター社発
アデン駐在トルコ公使は、ギリシャに対し口頭で、クリイト島に野心がない事を宣言する様要求し、且つこの要求に対する回答を適当な時期に行う様求め、回答がない場合には、公使は永久の休暇を取り、退去する旨言明した。
8月11日
列国の対土勧告 10日タイムス社発
コンスタンチノーブル来電―トルコ政府がギリシャに対し、クリイト島に対して野心が無い旨を宣言すべしと猛烈に要求した件に関し、クリイト保護の任にある露、仏、英、伊4国の駐トルコ大使等は、トルコ政府に対し、今少し温和な態度を執るよう求めた。
解説:昨日の記事の続報
スペインのバルセロナよりの報道によれば、同市に於いて現在一大同盟罷工の準備が行われつつある。これは、先日の動乱に際し、逮捕された面々が、依然として禁固中である為、これに対し抗議する目的である。これに対し陸軍司令官等は、極めて厳格な鎮圧策を執る意志を表明し、略奪行為があるものは、即座に銃殺する旨宣言した。
解説:7月29日「西班牙の非戦党活動」で報道されて以来、連日の様に暴動に就いて報道されていたが軍により鎮圧された。
米紙と安奉線論 9日桑港特派員発
9日朝のサンフランシスコ、クロニクル紙は、満州は清国の領土であるのに日本が自由に鉄道を改築する事は不法であると極論した。
解説:米国は、8月8日「タイムス安奉線論争」の英国の見方と逆の見方をしている事が分かる
8月12日
摩洛哥征伐 11日タイムス社発
マリーヤ来電―モロッコ土民は、依然として非常に騒がしい為、スペイン政府は、更に1個師団の兵士を派遣し、既に当地に来着している。敵情を視察する為に偵察中の気球は、約2万2千の土民が山中に隠れていると報告した。
クリイト問題形勢 11日上海経由ロイター社発
クリイト問題を平和的に解決する見込みが高くなってきている。トルコ政府の行動は、現在戦意を抱き、ギリシャ反対の示威運動を示唆し始めているとの説がある同盟進歩期成委員会の強い圧迫の結果と見られている。
安奉線平穏 満州特電11日大連特派員発
安奉線は、現在3工区に分け、工事中である。清国官民の態度は、極めて平穏で、妨害等の行為もなく、工事は着々と進行中である。清国兵の増派などは全くの虚説である。本線との接続点は蘇家屯である。昨年来沈滞の満州土工界は、初めて活気を帯びて来ている。
8月13日
クリイト島民憤怒 12日タイムス社発
カンジャ来電―クリイト島保護の任にある英露仏伊4国は、トルコ国民が激しくクリイトのギリシャ併合に反対し、トルコ主権の維持を主張し、情勢が容易ならざる事に鑑み、クリイト島に対し、ギリシャ国旗を引き降ろすべき旨を要求し、これが行われない様であれば、再び同島を占領する事に決定した。しかしクリイト島民等は、この決定に対し、非常に憤怒し、異口同音に、例え亡命することになったとしても、これに同意できないと公言し始めている。
解説:連日この問題が報道されている。
布哇耕主の態度 11日桑港特派員発
ハワイの耕主等は、清人、ポルトガル人及び先に雇い入れた「罷工破り」の労働者を使役し、同盟罷工を煽動したと認めた一部日本労働者の復業を拒んでいるとの報道があった。
安奉線と露国 同上
露都来電によれば、同府に於いて、特に安奉線の価値を認識し、日本が急速に同線の改築に着手したとの報道を得て、政治界は、非常に危惧し始めている。又別に日本がご門江の河口に海軍根拠地を設定して、吉林鉄道を連絡するのではないかとの報道も大いに人心を刺激し、これらはポーツマス条約違反であると言われ始めている。
8月14日
露人の波斯悲観 13日タイムス社発
露都来電―ペルシャ廃帝が退去を承諾し、自由主義のカヤル家貴族が摂生となり、国民党の政治がいよいよ行われる事になりそうである。しかし露国の官吏社会に於いては、むしろペルシャの情勢を悲観し、新政府は、秩序の回復を遂行できないのではと観測している。
土希交渉継続 13日上海経由ロイター社発
トルコ政府は、ギリシャ政府に公文を送り、ギリシャ政府の回答には同意し難い旨を告げ、更に両国和親の為、トルコ政府の希望に同意する様ギリシャ政府に勧告した。この公文の用語は、非常に強硬であり、トルコ政府は、適切な期限内に回答を求めているが敢えてその期日を指定していない。
日本人帰化問題 12日桑港特派員発
移民問題について、日本がいわゆる紳士協定を履行している事は疑いない。ただ最恵国条款により、英仏獨伊の諸国民と同様の帰化権を要求するのではと思われるけれど、米国がこれを与えない事は明らかである。しかしタフト氏は、他の外国人に与えているある利権を与える手段を講ずるであろうと思考される。多分条約の義務履行に関して、連邦政府に適当な権利を与える必要を次期議会に送る予定の教書で説く事になるであろう。
8月15日
土耳其第二通牒 14日タイムス社発
アデン来電―トルコ政府は、第2回目の通牒でクリイト及びマセドニアに於けるギリシャの政策について説明を要求し、大いにギリシャ政府を驚かせた。同政府は、トルコがこの様な態度を執るに至った原因は、全くトルコ政府に道理や正義を理解させ様とする列国の努力が非常に欠けている為と確信した。
清国政府の主張 14日桑港特派員発
エキザミ―着ワシントン来電によれば、清国政府は、安奉線鉄道問題に関し、米国政府及び欧州諸政府に哀訴する所があった。その中で、日本の態度についての主要攻撃点は、日本が安奉接道を改築する真の目的は、商業上にあらず、寧ろ清国に対して軍事上必要な交通機関を備えるにある。しかもこの件は、関連列国の為にも亦大いに危険であると述べている。
8月16日
安奉工事進捗(堀満鉄工務課長の談話) 14日安東県特派員発
第二の難工事である福興嶺、鶏冠山両トンネル工事に着手する為、堀満鉄工務課長は14日現場を視察した。一両日中に準備が終わり次第、安東県に来て、鶏冠山との間の工事に着手する予定である。課長曰く、13日現場に奉天総督の使者が来訪し、工事の中止を要求したが、我が政府の命令がない限り之に応じる事はできないので、工事を続行している。(一部抜粋)
8月17日
ク島内閣辞職 16日タイムス社発
カンジャ来電―クリイト保護の任に当たっている英仏露伊4国がトルコの態度に鑑み、クリイト政府に対しギリシャ国旗を降ろす事を要求した結果、同政府は、その言に従い国旗引き降ろしを実行しようと企てた。しかし人民は武装してこれに反対した為に実行する事が出来ず、遂に現内閣は辞職した。
米国の大艦建造 16日上海経由ロイター社発
米国は海軍委員会の主張に基づく3万トンの戦艦建造を研究中である。
クリイト問題 15日ベルリン特約通信社発
英仏露伊4国は、クリイトに於けるギリシャ国旗の引き降ろしを要求した。しかしギリシャはこれに反対し、陸海軍の動員を行うと威嚇し、4国は、むしろトルコに対して適切な行動を取らなければならないと説いた。因みに4国は、在クリイト艦隊を増加中である。
8月18日
摩洛哥官軍勝利 17日タイムス社発
一時廃位となるのではとの風説さえあったモロッコ王ムライ、ハフィドは、大いに勢力を回復した。官軍は、春期以来ベルベル族を率いて奮闘してきた僭王を破り、僭王は逃走し、その勢力は完全に失墜した。
解説:明治41年8月25日の記事「摩洛哥局面一変」に、現在の国王ムライ、ハフィドが王位に就いた時の様子が描かれている。「モロッコ王アブダルアジツが敗北し、その軍隊は全部潰走した。同時に僭王ムライハツイドは、タンジールその他に於いてモロッコ王である旨布告した。」
西班牙遠征隊 17日上海経由ロイター社発
本社マリーヤ特派通信員の通信によれば、スペイン司令官マリナ将軍の軍兵は、歩兵3万、騎兵千5百、野戦砲16門、山砲40門で編成され、士気は高く称賛に値する。ただ同地の地勢は、彼らに対し大きな障害である。
クリイト問題 16日ベルリン特約通信社発
クリイト島カニアに於いては、ギリシャ国旗が再び掲げられ、狂喜した農民がこれを警護している。英仏露伊4国は、ギリシャ国旗の引き降ろしを実行させる為に軍艦8隻をカニアに進めた。ギリシャよりオーストリアと獨逸両国に対し、干渉を要求したが、両国は、今回トルコが平和的宣言を行っているとの理由でこれを拒絶した。
8月19日
列国兵士上陸 18日タイムス社発
クリイト島情勢の急転に鑑み、増派された英国外3国の諸軍艦は、昨日午後カニアに到着した。そして列国の要求したギリシャ国旗の引き降ろしは、クリイト島政府自らがこれを行う事が出来ない為、列国艦隊自ら、これを実行する目的で、本日兵士を上陸させた。
米国の対清策 同上
ニュヨーク来電―米国の対清政策は、英米関係にも影響を及ぼし始めている。ニューヨーク、ヘラルドを代表とする諸新聞の煽動的記事は、米国が清国の親友であり、英国を以て日本を掣肘させているものとしている。なお米国人は、日本の安奉線に関する決意に対して不賛成の様子である。
土耳其艦隊出発 18日上海経由ロイター社発
本社スール通信によれば、12隻で編成されたトルコ艦隊が出発し、カルパソスに向かったと称せられている。又トルコに於いては、ギリシャ排斥運動が起こっている。
8月20日
希臘国旗引卸 19日タイムス社発
英露仏伊4国の軍艦よりクリイト島カニアに上陸した兵士は、別に何らの抵抗を受けず、本日払暁、ギリシャ国旗を掲げたポールを切断した。
解説:連日クリイト島問題が報道されているが、8月13日「クリイト島民憤怒」にあるようにギリシャ国旗が掲揚されていた。
キロル韓国論 同上
先頃極東の情勢を視察して帰国したロンドンタイムスのチロル氏は、韓国が日本の保護国となった結果、物質的利益の増進を見るに至った事は疑いない事実であると説いた。朝鮮人の多数は、日本の政治を好まない痕跡があり、その一部分に対しては日本人の行為によるもので、実にその責任を負わなければならないと論じ、更に一転して伊藤公の執った政策は、着々とその成績を挙げ始めており、ある事業は困難であるがその進捗は確実であると言明した。
米国新聞の誤解 19日上海経由ロイター社発
ロンドンタイムスのニューヨーク通信員の報道によれば、同地に於ける一部の米国新聞は、川漢鉄道借款問題に関する紛争を故意に利用して、日英両国は相提携して清国及び清国の友邦である米国に対抗していると称して、米国の対清政策により英国は非常に失敗したと盛んに書き立てていると述べている。
解説:昨日の記事「米国の対清策」についてと思われる。
布哇罷首領有罪 18日桑港特派員発
ホノルル巡回裁判所陪審会議は、18日増給期成会長牧野、同書記根来、日布時事社長相賀、同記者田坂に対する同盟罷工に関する刑事共謀事件について有罪の決定を与えた。なお共謀事件とは、新聞紙上でハワイ政府転覆密謀共謀罪であるかの様に報道され、人心を惑わしたものであるが、耕主の犬と見なされた千葉某の殺害共謀事件であろうと思われる。
8月21日
希臘の対土回答 20日上海経由ロイター社発
本社の聞知する所によれば、クリイト問題に関するギリシャの回答は、非常に協調的で、十分にトルコ政府を満足させ、両国間の誤解を解く事になるであろうと希望を抱かせるに十分な様である。
列国の希土問題 同上
コンスタンチノーブル来電―列国は、トルコ政府に公文を送り、バルカンの平和を害する迄にギリシャとの関係を極度に悪化させない様に強硬な言辞を以て勧告した。
8月22日
瑞典罷工 21日タイムス社発
ストックホルム来電―スエーデンの罷工者中、社会党に属さない1万人の労働者は、来る月曜日を以て復業すると思われる。8月18日の計算によれば、罷工関係者数は、28万4千4百18人となった。
クリイト問題小康 同上
クリイト問題の危機は、同島ギリシャ国旗の引き降ろしを決行した結果、今や無事終了したと信じられる。又トルコに於けるギリシャボイコット運動は中止となった。
8月23日
希土問題続報 22日上海経由ロイター社発
本社通信員の報道によれば、トルコは多分、列国の通牒に対し、正式な回答を送らないと思われ、又列国もこの通牒に対して、別に回答を求めていない。なおトルコは、公文を以てマケドニアに関し、列国に訴える所があった。
解説:8月21日「列国の希土問題」の続報である。
5月24日
米国大艦建造 23日タイムス社発
ニューヨーク来電―米国海軍省は、2万6千トンの戦艦2隻を建造する事を決め、これに対する入札を開始した。同艦は、それぞれ2百万ポンド以上の費用を要すものと期待されている。又米国はトン数3万トンとなる14インチ砲12門を装備する大戦艦2隻を建造するのではとの噂が再び起こっている。
米国陸軍縮小 同上
米国大統領タフト氏は、陸軍兵士の員数を8万8千より8万に減員する旨を陸軍嚮チツキンソン氏に命令した。これは大統領が、経費節約を断行しようとする意に出たものと信じられている。
解説:5年後に第一次世界大戦が起こる事を考えると8万の陸軍とは信じられない数である。現在の陸上自衛隊は15万人である。但し海軍力は増強している。
クリイト問題 同上
コンスタンチノーブル来電―トルコ内閣会議は、ギリシャの回答を以て満足であるとして、最早ギリシャ政府に対し、直接交渉文書を送らない事に決定した。但しクリイト問題は、今だ解決されていない。
8月26日
波斯紛乱続報 25日タイムス社発
テヘラン来電―イエルド街道付近でケルマン種族が蜂起し、英国人の生命財産危うくなっており、非常に重大な情勢となっている。
獨逸海軍省の気兼 25日上海経由ロイター社発
ドイツ海軍の機密演習の区域は、バルト海に限られている。或るドイツ新聞の報道によれば、これは北海に於ける演習を挙行し、英国の臆病者にあれこれ紛争の口実を与えない為であるとの事である。
日貨排斥煽動 25日漢口特派員発
25日当地発行の新聞に、日本留学中の各種学生連合会の名前で、安奉線問題に対する報復として、清国全体にわたり、日本の死命を制するまで、ボイコットを励行せよとの檄文を掲載した。
8月27日
摩洛哥僭王囚わる 26日タイムス社発
パリ―来電―ザイアのイスラム教寺院に避難中であったモロッコ僭王は、官軍の手に囚えられた。
解説:8月16日に摩洛哥官軍勝利の記事があり、その際僭王は逃走していた。
日清協約内容 25日上海経由ロイター社発
ロンドンタイムスの北京特派員の報道によれば、撫順、烟台両炭鉱に於ける裁判権に関する問題を除く外、主要な満州問題に関しては、去る火曜日(8月24日)、日清両国の間に妥協が成立した。この協約の規定によれば、日本は、間島を清国に還付し、清国は日本の南満線付近及びこれに平行して鉄道を敷設しない事、並びに日本の同意なしに新民屯以北に鉄道を延長しない事を制約した。
解説:撫順と烟台両炭鉱を日本に譲渡し、日本は採掘税を支払う事になっている。
在波斯外人危難 同上
ロンドンタイムスのテヘラン特電によれば、ペルシャ銀行のライト氏及びインド・欧州電話会社のジェームス氏は,カーマンの西方50マイルにある村落に於いて、8百の草族が人民の避難している或る塔を襲撃したとの事である。英国外務省では、救援隊派遣に関して、緊急の措置をとりつつある。
8月28日
日本桜樹寄贈 27日タイムス社発
ニューヨーク来電―永野総領事は、当市長代理を訪問し、ハドソン発見3百年記念祭に対する日本天皇陛下の祝辞を伝え、且つ日本の桜樹3百株を同市に寄贈した。この桜樹は、日本の植木職人の手により公園に植えつけられる事になっている。
解説:桜祭りで有名なのは、ワシントンのポトマック川の桜である。これは1912年に東京市長であった尾崎行雄から寄贈されたものである。
英国植民地防衛 27日上海経由ロイター社発
英国首相アスキス氏は、下院に於ける演説で、陸海国防計画に言及した。極東艦隊の編成は改正される予定であり、3個分隊で編成される太平洋艦隊は、東インド群島、豪州及び支那海に配置され、各分隊は、インドミデブル型巡洋艦1隻、2等巡洋艦3隻、駆逐艦6隻、潜航艇3隻で編成される予定である。そしてニュージーランド分隊は支那に、豪州連邦艦隊は豪州の基地に配備され、カナダは2等巡洋艦数隻と駆逐艦数隻を以て、その海岸を防護する計画であると言明した。
解説:ニュージーランド分隊が支那に配備されるとあるが記者の誤訳ではないか。
8月29日
摩洛哥僭王護送 28日タイムス社発
パリ―来電―モロッコ僭王は、鉄製の檻に入れられ、ラクダの背に乗せられてフエツツに到着し、柵越しにモロッコ王に対面した。
解説:8月18日「摩洛哥官軍勝利」にモロッコ王が勝利した記事がある。なお現在の王は、明治41年8月に前王を破り、王位を奪っている。
摩王の惨虐 27日上海経由ロイター社発
モロッコ王は、役人に命じて、反徒の首領24名の右手を切り取り、その傷口を沸騰する松脂の中に没入させた。中には同様に左足も併せて切られた者もいた。
日清締約と獨紙 27日ベルリン特約通信社発
半官報キヨルニツシエーツアイツング紙は、日清間に満州諸懸案の解決を見たのは、喜ばしい事であり、両国に商業関係を有する諸国は、何れもその恩恵を受けるであろうと言っている。
8月30日
清国鉄道政策 29日上海経由ロイター社発
ロンドンタイムスは、「清国の鉄道」と称する社説に於いて、清国が鉄道を敷設する際、米国と協同の下に英国の資本に依る方針を捨てた事及び鉄道敷設に対する競争阻止を目的とする英仏協約に含まれた主義を無視した事を憤慨し、更に進んで、清国は香港上海銀行をその一員とするシンジケートと契約しながら獨逸人に英国人の優先権を移したのは、甚だしい契約違反であると論評した。(一部抜粋)
ハリマン重者 28日桑港特派員発
鉄道王ハリマン氏は、欧州より帰着以来、病気の為ウオール街の株式に暴落を来した。その病気は、完全に秘密にされ、その真相を知る事は出来ないが、氏はよほどの重体にあると思われ、27日より8人の専門医を病床に治療している。(一部抜粋)
8月31日
波斯国庫空乏 30日タイムス社発
テヘラン来電―ペルシャ政府は、お金を調達する必要性があり、内閣税及び宮廷所蔵の宝物類を抵当として、各銀行に当然借入得る額以上に融通を申し込んだが、各銀行はこれを拒絶した。このためペルシャ政府は、列国の援助を求め外、方法がないと思われる。
ツエ伯着拍 29日ベルリン特約通信社発
ツエ伯の飛行機が遂に拍林(ベルリン)に到着した。全市民及び皇族方一同の大喝采を受け、ベルリン市の上空を飛び回る等、様々な飛行の様子を演じた。
後報―ツエ伯は、テーゲル練兵場にて、皇帝の御前に無事降下した。昨日途中で破損した推進器は、特に修理されなかった。
日貨排斥教唆 30日奉天特派員発
在東京清国留学生の決議に係るボイコット趣意書は、先日来各新聞に掲載されたが、今又彼らは、実行手段として、上海、天津及び東三省の3区に分けて、運動委員を各地に派遣し、各地連合して、ボイコットを実行せよと述べた煽動的文書を各地商務会に送った。これは、各地商務会が連合して、日貨を排斥し、日本人と貿易しない事、安奉線工事には人夫を供給しない事、安奉線一帯の地主に土地を売らせない事を教唆している。