期日 |
日本関係 |
期日 |
露清関係 |
期日 |
英米関連 |
期日 |
独仏その他関連 |
2月1日 |
商工業者一致親日決議 |
2月10日 |
清人の苦情 |
2月2日 |
公果の大改革 |
2月3日 |
露国の仲裁案 |
2月2日 |
日本学生乱打 |
2月12日 |
在米清人請願 |
2月5日 |
艦隊派遣請願 |
2月11日 |
独仏協約成立 |
2月2日 |
大統領の書簡 |
2月27日 |
墺塞関係論評 |
2月10日 |
阿片問題と印度 |
2月12日 |
勃牙利軍隊退去 |
2月3日 |
新土地所有禁止案 |
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2月13日 |
印度革命派暴行 |
2月16日 |
塞国の挑戦的態度 |
2月4日 |
メバダ排日決議 |
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2月13日 |
太平洋艦隊拡張論 |
2月16日 |
土国紛争後報 |
2月4日 |
グ博士の戦争談 |
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2月14日 |
英独関係論評 |
2月18日 |
波斯財政欠乏 |
2月5日 |
ネバダ土地所有禁止案 |
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2月16日 |
印度革命派征伐 |
2月20日 |
東欧形勢暗澹 |
2月5日 |
土地所有禁止案否決 |
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2月18日 |
太平洋と米国海軍 |
2月21日 |
勃牙利独立承認 |
2月6日 |
大統領の排日問題談 |
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2月19日 |
パナマ運河竣工期 |
2月23日 |
土耳古抗議 |
2月6日 |
ネバダ排日問題 |
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2月19日 |
米国太平洋防備 |
2月25日 |
墺塞関係険悪 |
2月6日 |
学童排斥案通過 |
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2月19日 |
米国太平洋防備 |
2月28日 |
巴爾幹時局 |
2月7日 |
学童排斥と大統領 |
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2月23日 |
米国艦隊帰着 |
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2月7日 |
排日議員の暴言 |
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2月24日 |
大統領の艦隊歓迎 |
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2月8日 |
大統領の警告 |
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2月25日 |
太平洋防備論 |
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2月8日 |
大統領の決心 |
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2月27日 |
日米戦争論冷罵 |
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2月9日 |
加州州会形勢 |
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2月10日 |
加州日本学童数 |
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2月11日 |
大統領の訓電 |
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2月12日 |
学童排斥案否決 |
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2月12日 |
スタンフォード大学総長 |
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2月13日 |
大統領の謝電 |
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2月14日 |
排日問題終了 |
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2月21日 |
足利の決議の反響 |
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2月28日 |
日清人排斥請願 |
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2月1日
商工業者一致親日決議 30日桑港特派員発
日本の文明進歩は世界に認識され、且つ尊敬されている。さらに米国との貿易関係が非常に重大であるにも拘わらず、カルフォルニア州市民は、絶えず日本人に対し反抗的な態度を示している。ニューヨーク商業協会運輸部委員会は、カルフォルニア州市民を圧服させる為に、全国商工業者が一致した態度をとるべきであるとの決議を行った。この決議は非常に重大なものと見なされ、大いにカルフォルニア州市民の感情を動かした。
日本学生乱打さる 同上
30日、カルフォルニア州立大学院内に於いて、米人学生5名が州議会の排日問題を論議中に、通りがかった1人の日本人学生を乱打し、重傷を負わせ、大問題となっている。
巴爾幹時局 31日上海経由ロイター社発
勃牙利の強硬 コンスタンチノープル来電―信頼すべきソフィア府通信によれば、ブルガリアは極めて頑強な態度を執っており、トルコへの報償として8200万フラン以上の支払いを拒否している。且つ現在の8200万フランの支払いを根本としての解決が、今後なお遅延する事があるならば、断然その立場を変更するであろうと宣言した。
2月2日
日本学生乱打 1日横浜直通ロイター社発
バークレー来電―カルフォルニア州立大の学生である東京帝国大学卒業生金子健二という学生が、大学構内に於いて白人学生の襲撃を受け、殴り倒され、構外に追われた。学生等は更に追及したが、金子は現在警官の保護下にある。この事件は、自分が挑発したものでは決してないと公言しており、事件は日本領事に申告された。
大統領の書簡 同上
サクラメント来電―大統領ル氏は、カルフォルニア州知事ギルレット氏に書簡を送り、各外人を同等に取り扱う法律を制定する事には反対しないが、憲法に抵触しないようにしなければならない。又外国と米国間の条約で保障される権利は、同法案から除外する旨を規定して置く事が必要であると言明した。
公果の大改革 同上
英国がベルギーに対し、コンゴの悪弊を一掃するよう圧力を掛けた為に、ベルギー政府は、2大会社に向け、今後1年間、コンゴに於ける ゴムの収集を禁止し、その後は絶対に商業上の自由を確立しなければならない旨を通知した。ちなみにこの内の一会社は、払込資本9240ポンドであるのに、既に150万ポンドの利益配当を行っている様である。又コンゴに於いては、司法、行政上の改革を断行すると思われる。
解説:当初コンゴは、国王の私有地であり、象牙やゴムの採集が不足した現地住民の手足を切断する等の圧政が欧州諸国の非難の的となった。その為1908年ベルギー政府が国王からコンゴを買い取っている。
2月3日
巴爾幹時局 2日タイムス社発
露国の仲裁案 露都来電―露国政府は、トルコの宗主権放棄に対する報償として、ブルガリアの申し出た金額とトルコの要求額との差を無事に処理し、以てトルコとブルガリア間の難局を解決しようとしている。即ち露国は、露土戦争の償金年払い額残余からトルコのブルガリアに要求した額、即ち5百万ポンドを全額取消して、同時にブルガリアは3百28万ポンドだけを露国に償還する約束をし、且つその元利に対し毎年20万ポンドを支払う事である。ブルガリアは、既にこれに同意したがトルコも必ず同意するものと信じられている。
解説:1877年のロシアとオスマントルコとの戦争の結果、トルコは敗れ、ブルガリアはオスマン帝国内の自治領となった。又償金も支払う事になった。
新土地所有禁止案 1日桑港特派員発
市民以外の全ての外国人に適用するよう上院委員会で修正されたドリュウ氏の
土地所有禁止法案は、1日本会議に報告され、3日の日程に上る事になった。日本人に同情を持つ議員は、同案を修正案と認めず、新議案と見なし、普通の手続きを踏まなければならないと動議したが、17票の小差で敗れた。
加州上院の形勢 同上
カルフォルニア州上院の形勢は、日本人にとって有利であるので、多分新土地所有禁止案を食い止める事が出来ると思われるが、万一上院を通過しても知事は、この際日本人に関係がある議案は、断じて署名しないであろうとの説がある。
2月4日
巴奈馬運河好成績 3日上海経由ロイター社発
パナマに赴いたタフト氏一行は、同運河の進行に対し十分に満足したので、従来からの開削計画を継続すると思われる。又同運河の技師長は、同運河は、愈々1915年1月1日より通航できる旨言明した。
解説:パナマ運河は、1879年スエズ運河を作ったレセップスが着手し、失敗したが1902年ルーズベツト大統領が再び開削に乗り出し、結局1914年2月に完成した。
メバダ排日決議 2日桑港特派員発
ネバダ州議会の下院委員会で、下院委員長キツフェン氏が提出した極端な排日決議案が通過した。決議案の要旨は、先ず大統領のカルフォルニア州議会に対する干渉は、州の権限を甚だしく犯すものである。故に我々はカルフォルニア州議会が大統領の干渉を考慮せず、絶対に日本人の入国を拒否し、且つその上で米国の立脚地を作る様に望む。我々は、日米戦争がないと信じているが、若し早晩戦わなければならないとするならば、あくまでも同国を屈服させ、その傲慢な国民に、米国民の権利は、これに圧迫を加える事が出来ない事を教え諭すには、現在が好機であると信じる。
解説:ネバダ州は、カルフォルニアの西隣にあり、ゴールドラッシュ時に多くの清国人が労働者として入ってきたが、ゴールドラッシュが終わった後も彼等が住み着いていた。
グ博士の戦争談 同上
「ミカド帝国」の著者であるグリツフィス博士は、フィラデルフィアに於いて、日米戦争談は、米国の至る所で行われ始めている。日本は米国に対し、最大の好意を有しているが、日本人に対等の待遇を与えなければ、何れの国であるかを問わず、戦争する事になるであろうと言明した。
解説:日米戦争の源流を指摘している様に思える。
日本児童隔離案通過 2日桑港特派員発
カルフォルニア州下院司法委員会は、ジョンソン氏が提出に係る日本児童を支那及び印度児童と同様に公立学校から排斥する議案を可決した。
2月5日
ネバダ土地所有禁止案 3日桑港特派員発
ネバダ州議会の下院議長キツフェン氏は、更に外国人土地所有禁止案を提出し、その第一条に於いて、日本と支那両国人を除いた他の外国人は、州内に居住しなくても市民と同一条件で、土地を所有する事が出来ると規定している。故に外国人土地所有禁止案と言っても、その実は日清人のみを目的としている事は明白である。同案は下院司法委員会に付託される。
解説:昨日の記事の続報
艦隊派遣請願 同上
ネバダ州下院共和党の党首ドック氏は、戦闘艦隊を太平洋に常設する請願越議案を下院に提出した。その理由は、我々と同居する事の出来ないアジア諸国民が、我々の平和安泰を阻害すると言うにある。
解説:当時の米海軍は大西洋艦隊のみで、太平洋岸には基地を持っていなかった。
土地所有禁止案否決 同上
ドリュウ氏が提出した外人土地所有禁止法案は、3日午前11時、カルフォルニア州議会下院本会議に上程され、先ずドリュウ氏が提出者として日本人の土地所有を禁止しなければならない必要性を説き、且つその法案には、大統領ル氏も賛成であると大気炎を吐いた。これに対して議員メルロ氏は、カルフォルニア州の農業は、労働者を必要とする。日本人の土地所有者は少数であると盛んに反対した。議長スクントン氏もまた議席に立って、日本人の為に極力援護した。午後2時、再び会議を開き、賛否両派とも30分づつ激烈な討論を戦わし、午後6時採決したが、賛否28人で同数となり、議長は否決を宣告し閉会した。又ジョンソン氏が提出した3議案は時間が無い為に延期となった。
2月6日
大統領の排日問題談 5日タイムス社発
ワシントン来電―大統領ル氏は、タイムス通信員を引見し、今や排日運動は、殆ど鎮圧する事が出来たと信じる。外人反対の諸案がカルフォルニア州議会で敗れた事は、ワシントン政府を大いに安心させた。但しアジア移民の問題は、政府が十分な考慮を払う必要があると言明した。
大統領の訓電 5日横浜直通ロイター社発
サクラメント来電―大統領ルーズベルト氏は、カルフォルニア州知事に打電し、日本人学校排斥案は、各日本人排斥案の中で最も強烈なもので、且つ明らかに憲法に抵触していると説き、議会内に於いてか、或いは裁可拒絶の手段によってこれを阻止する事が出来ないかと質問した。
ネバダ排日問題 4日桑港特派員発
大統領ル氏は、最初ネバダ州の議会の行動に関与しないであろうと伝えられていたが、3日同州選出の上院議員ニクソン氏、ニューランド氏及びアイダホ州選出上院議員某氏と懇談の結果、ニクソン氏は、電報を両院議長に送り、日本人反対は不可ではないが大統領の心配もあるので、この際過激な行動にでない事を希望した。又ネバダ州知事ネッカーゾン氏も亦書面を上院に送り、予は一人残らず日本人を送還する事を望む。予は彼等を悪魔と見なし、支那人よりも更に危険であると信じるけれど、この際過激な決議を行うと、中央政府を困惑させる事になるので見合わせてもらいたいと説いた。
学童排斥案通過 同上
カルフォルニア州議会下院は、4日朝10時開会し、3日に引続き排日議案を討議した。
第一の議題は、日本人の会社重役禁止案で、提出者ジョンソン氏が激烈な口調で、日本人の事業を絶滅させる為にその会社の重役である事を禁止しなければならない所以を説明し、賛否両派の討論の末、15名に対する55名の大多数で否決した。
次に日本人居住区域制限法案の討議に移り、採決の結果賛否がそれぞれ37名となったが議事規則で下院議員総数80名の過半数に達しない為に不成立に決した。
続いて3日否決したドリュー氏の土地所有禁止案を再討議すべしとの動議が委員会に是認されていた為に再討議すべきか本会議に諮ったが、36対36で再討議しない事になり、同案は最終的に確定された。
邦人児童公立学校通学禁止案は、土地法案を再討議しない事の交換条件として通過させたものとの事である。日本人居住区請願法案は、更に明日再討議されると思われる。
2月7日
加州知事の教書 6日タイムス社発
カルフォルニア州知事ギレット氏は、州議会に特別教書を送り、公立学校日本人隔離案を取り消すことを主張し、自己は同案を裁可しないつもりである旨言明した。
学童排斥と大統領 5日桑港特派員発
大統領ル氏は、カルフォルニア州知事ギレット氏に次の様な打電をした。カルフォルニア州議会が日本児童の公立学校通学禁止案を可決したとの風説があるが事実かどうか。同案は、諸案の中で最も無礼な議案である。予の判断によれば、明らかに憲法違反である為に、政府は直ちにこれを法廷で争うであろう。州議会に思い止まらせるか、又は裁可を拒絶できないかと。
知事は、大統領の電報を添えて極めて熱心に条理を尽くした教書を5日朝、両院に送って、決議前にその反省を促した。
土地案否決裏面 同上
4日の下院議会に於いて、土地所有案を再討議に付さない交換条件として学校問題を可決した。これは、土地案の情勢が危険で、実に2名の差で再討議に付さない事に決定した程である為、日本人同情者側では、先ずこれを可決に終わらせ、その後学校問題は、大統領その他国民の同情を引き易く、大勢を廻らせやすいのでこれを後にする作戦計画であると言われている。
排日議員の暴言 同上
ジョンソン氏は、その提出案を説明する中で、日本国民に偲び難い侮辱を加えた。日本児童は、不潔、不道徳であり、畜生に等しく、我等の子弟は、これらの者と席を同じくして教育を受けさせるべきでないと述べた。又禽獣と同一である日本人を一定の区域以内に押し込める為に、予は懲役に行くのも苦しくないと述べ、その他あらゆる罵詈雑言を恣にした。
日本移民排斥 同上
オレゴン州議会上院議員ベレー氏は、現行の清人排斥法案を修正し、一般的移民制限法案を設け、同法の励行は無論、これを拡張し日本人をも含む全ての亜細亜人排斥法を設定する事を同議会に請願するとの議案を提出した。同案は、同州議会司法委員会に付せられた。
解説:オレゴン州は、カルフォルニア州の北側に位置する。
2月8日
大統領の警告 6日桑港特派員発
大統領が時局を重大と見なし、苦心しているのはその顔色でも読む事が出来る。氏は6日カルフォルニア州選出上院議員フリント及びネバダ州選出議員ニクソン両氏を招き、両州議会が現在の態度を改めなければ、米国を危機に陥れる恐れがある。日本人は大変な侮辱を加えられて黙視するものでない事を知ってもらいたいと両氏の尽力を求めた。両氏は、大統領の苦心を諒として尽力を誓い、ホワイトハウスを辞すると同時にそれぞれ長文の電報を両州議会議長に送った。
朝日新聞と排日問題 同上
邦人児童の公立学校通学禁止案通過に関する朝日新聞の社説及び国民激昂の模様を報道する詳しい電報が届き、米人の注意を引いた。
大統領の決心 6日紐育特派員発
大統領の意見では、両州に於いて飽く迄も日本学童の排斥を実行するならば、直ちに高等裁判所に提訴し、是非を決する事になるであろう。高等裁判所は、日本人が条約上最恵国民として米国人と同じく保護を受けなければならないと知るならば、必ず日本の勝利に帰すであろう。しかし彼等が頑冥でこの判決にも従わないならば、ここで初めて最後の手段をもって、兵力や警察力にあらゆる手段を講じて日本人を保護するであろう。しかも予にこの決心をさせるのは、米国の為に誠に遺憾である。
2月9日
排日問題形勢 8日タイムス社発
ニューヨーク来電―米国政府は、太平洋岸の情勢が変動し、カルフォルニア州以外の諸州さえアジア人反対運動に加わったとの報道がある為、大いに心痛している。若し米政府がアジア人移民問題を解決しないならば、太平洋岸の諸州は、他の憤怒を刺激するような戦略を継続し、遂に日本人の悪感情を高める恐れがある。日本との紛争を避けようとする大統領の尽力に対し、深く日本人を嫌悪する太平洋岸選出上下両院の議員等は、殆ど援助を与えない様子である。
解説:この流れが1924年の排日移民法となり、この法律で白人以外の全ての有色人種の移民が禁止され、また大東亜戦争の遠因となっている。
英国海軍計画 8日上海経由ロイター社発
デイリー、クロニクル紙の報道によれば、英国海軍に関する異論は解決し、海軍省はその建造計画の可能である事を明らかにしたが、同時に新造ドレッドノート型戦艦が不適当な速力を有する必要が無いと認識した。よってその予算の増加は250万ポンドを超過しないであろう。尚諸新聞は、一般に6隻のドレッドノート型戦艦が建造されるものと予想している。
加州州会形勢 7日桑港特派員発
大統領ル氏は、カルフォルニア州知事及び州議会下院議長スタントン氏に秘密電報を送ってきた。その内容は知る事ができないけれども、一昨日の議論にスタントン議長が声を励まして、日本児童の排斥案が通過するならば、余は重大な事件が起こるであろうと信じる。余は或る事を知っている。諸君はこの一些事の為に国家を誤らせようとするのか。余はそれが何であるか今ここで公言する事はできないが、諸君がもしこれを知るならば、必ず余と同じ意見となるであろうと熱心に説いた。議長のこの演説は大いに議場を動かしたが、議員の多くは、それが何事であるか知りたいと思い、明白に発表しないならば、排日議案を通過させると息巻く者も居た。中には今にも戦争が起こるかのように言いふらす者すら居
2月10日
阿片問題と印度 9日上海経由ロイター社発
フランク、スウエツテンハム氏は、長文の投書をロンドンタイムス紙に寄せ、他国民に対して英国人が守るべき道徳を詳しく述べ、帝国が特にインドの財政について責任がある限り、若しインドに於いて阿片の栽培を禁止し、そしてインドの為に主要な財源を失う事になるならば、帝国政府は、インドに対し多大な賠償金を支払わなければならないであろうと論評した。
加州上院の排日案延期 8日桑港特派員発
カルフォルニア州議会上院の情勢は、以前と同じであるので、明後日もし下院が学校案を可決するならば、上院はこれに修正を加えて、多分日本児童は年長であるとの非難をなくす為と共に、日本にも悪感情を懐かせない方法として10歳以上の者は小学校に入る事が出来ない、16歳以上は同じく高等学校に入る事が出来ない事にするであろうと述べた。
加州日本学童数 同上
カルフォルニア州内の重要都市に於いて、公立学校に通学中である我が児童数は526人であり、サンフランシスコでは128人と言われている。
ネブラスカの排日案 同上
ネブラスカ州議会下院議員ホワード氏は、州内の箱詰め会社で、日本人と白人労働者との働き場所を区別する法律案を同州の議会に提出する準備をしていると言われている。
オレゴン州の排日運動 同上
オレゴン州の於ける排日感情が最近特に高くなり、排日決議の他に日本人土地所有禁止案をも州議会に提出しようとする者がいる。若し提出されたならば、造作なく通過すると思われる。
清人の苦情 同上
サンフランシスコ在住の清国人は、大統領ル氏に対し、日本児童の隔離教育に反対しながら、何故清国児童隔離教育を黙認するのか、何故日本人の自由旅行を許すのか等の数ヶ条を挙げて質問する長文の電報を送った。
2月11日
大統領の訓電 9日桑港特派員発
大統領ル氏は、日本人問題に関する各州政府の誤解が無い様にする為、更に州下院議長
スタントン氏に電報を送った。我々の苦心は、カルフォルニア州及び西部諸州の利益を擁護しようとしているのに外ならずと説き、日本との協約の結果、日本移民が減少している事実を挙げ、学校案の如きは単に日本人を憤怒させ、且つ条約違反である為に中央政府に訴訟を起こさせる面倒を掛ける以外に何等の効果がない。ここ1両年間、東亜移民の結果が予期した様にならない時は、カルフォルニア州が捨て於いても、政府及び国会は捨て於かない事を了解せられよと陳述した。
ネブラスカの排日 同上
ネブラスカ州議会に排日案が提出される。
排日案否決 同上
オレゴン州議会上院は、5対22の大差で、本日排日議案を否決した。
クロニクルの態度 同上
サンフランシスコのクロニックル紙は、9日の社説で州議会の排日議案を無用、無法のものであると称した。
独仏協約成立 9日ベルリン特約通信社発
モロッコ問題に関する佛獨協約は、英帝のベルリン来訪と同時に、独逸外務省にて調印された。佛国は同協約に於いて、モロッコに於ける独逸の商業的利益に反対しない事を約し、独逸はこれに対し、モロッコに於ける佛国の政治的利益に反対しない事を約した。
2月12日
巴爾幹時局 11日タイムス社発
勃牙利軍隊退去 ソフィア来電―先日来、国境に集結していたブルガリア軍が全て撤退し、後備兵の諸部隊も解散した。ブルガリアはトルコがブルガリアを新王国として承認する事を期待している。
学童排斥案否決 同上
ニューヨーク来電―大統領が「最悪である」と呼んだ日本学童隔離案は、カルフォルニア州下院に於いて37対41票を以て否決された。
在米清人請願 11日上海経由ロイター社発
米国内の全ての清人を代表する団体が大統領に対し電報を送り、清人は日本人に比べ一層不当な偏った取扱を受けていると抗議し、移民官は、清人移民を罪人扱いにしたと公言し、大統領がカルフォルニア州の学校、法律その他の害毒を矯正するよう要求した。
排日問題意見 10日桑港特派員発
オレゴン州知事チェンバレン氏は、予は主義として、日清人の排斥に賛成するが、その手段に至っては、これを両国政府の協定に任すべきであり、この際各州議会が過激で、無分別な行動を行う事は非常に不利益である。もっとも学童の隔離問題に関しては、同案を制定する権利は、無論州の権限であると述べた。
ネバダ州知事ジツカーソン氏は、ネバダ州の排日問題は、最早終了し、予は同問題が再び起こる事は無いと信じていると述べた。
ワシントン州知事ヘー氏は、カルフォルニア州人の行動は、大いに誤っており、予は大統領と同感で、大統領はカルフォルニア州人の為に不利な事はしないと述べた。
スタンフォード大学総長ジョルダン氏は、日本人は貧しく、戦争は起こらないと見て、州議会議員は傍観者を喜ばす悪戯を行ったに過ぎない。予はカルフォルニア州が世界の嘲笑を招いたのが恥ずかしいと述べた。
2月13日
印度革命派暴行 12日タイムス社発
カルカッタ特信によれば、アリバーの殺人事件及び鉄道爆破事件は、新たに革命派が暴行をする時期が来た事を印度総督に警告したものと信じられる。インド官憲は、無政府主義者が既報よりも一層広大な範囲に亙っている事を認め、英国政府もまたロンドン及びパリーに居るインド革命派の新首領等を成敗する準備をしなければならないと考えている。
大統領の謝電 12日上海経由ロイター社発
米国大統領ル氏は、カルフォルニア州知事ギルレット氏に打電して、排日案否決を喜び、今回カルフォルニア州が国家の為に正道を執った事は、国家がカルフォルニア州の利益を擁護する益々大きな義務を負った事を意味する。余はこの為に全力を尽くすと言明した。
一段落 11日桑港特派員発
カルフォルニア州議会上院では、民主党員及びサンフランシスコ選出共和党員等は、なお排日運動を継続しているが固より大勢を動かすに至らず、州議会の排日案は完全に大段落を告げた。ただ下院議長スタントン氏が知事の意を受けて提出した「1万ドルの経費を支出し、労働委員に日本人の状態を調査させる」との議題だけは多分成立すると思われる。
なおサンフランシスコ労働同盟役員等は、排日運動を休止するものではないと公言しているので、排日運動は、これで止むものではないであろう。
太平洋艦隊拡張論 同上
エバンス海軍少将は、最近国事多難の様子があり、その為我々は48隻の第1級戦闘艦を太平洋、大西洋の両洋に均等にする必要があると信じていると述べた。
解説:この当時、米国海軍は太平洋には海軍を持っていなかった。しかし日本海軍が1905年の日本海海戦でバルチック艦隊を破った為に、米国太平洋岸の市民は日本に脅威を感じ始めている。
2月14日
英独関係論評 13日タイムス社発
ロンドンタイムスは、英帝のベルリン訪問を次の様に論評した。ドイツの政治家は、ドイツが平和の代償として、欧州列国を凌駕しようと企図したので生じた英国の反感を消し去る力があり、又独仏間で締結されたモロッコ協約は、ドイツが英国の政策を承認した証と言う事が出来る。但し英独の新しい関係は、佛獨間の関係に依るものが大きい為に、直ちに過大な希望を持たない事が望ましい等。
排日問題終了(日本人調査案通過) 12日桑港特派員発
カルフォルニア州議会上院は、先に同院政務委員会が報告した日本人に関する一切の議案を成立させないとの決議案を12票対22票の多数で可決した。上下両院ともに民主党員、サンフランシスコ選出共和党員から種々の議案が提出され、且つ提出される模様であるが、既に報道された様に日本人調査議案以外は一つも成立させない事が確実である。同調査案は両院を通過した。
モンタナの学童案 同上
モンタナ州議会議員モルトン氏は、日本児童公立学校通学禁止案を同州議会に提出した。
2月15日
英独外交関係 15日上海経由ロイター社発
ベルリン来電―ビュロウ宰相は、英帝のベルリン訪問について次の様に言明した。英帝のベルリン訪問は、ドイツに真実の満足を与え、且つ両国の間に政治的黙約の成立を期待すべき正当な理由がある。かくして両国の関係は強固になるであろう。他のバルカン問題で行われている商議に関して、平和を維持する事について英独の意見がよく一致している事を発見した。余は両国の人民が平和的に目的を遂行する上に於いて、両国の主権者及び政治家の意を対する事を希望する。
解説:第1次世界大戦まで5年、両国は戦争回避の為に努力していた。なお英帝と独逸皇帝は、従兄関係にある。
モンタナ州の排日決議 13日紐育特派員発
モンタナ州の下院議員ノートン氏は、州議会へ日本人排斥案を提出した。又同州両議院は、中央議会に於いて、アジア人排斥案を拡張し、日本人排斥の実を挙げる事を決議し、知事は13日同決議案を大統領、副大統領及び下院議長に送付した。
排日運動不人気 同上
12日リンコルンクラブの晩餐会に於いて、例のカルフォルニア州排日議員カーン氏が盛んに日本排斥の演説を行ったが、場所をわきまえない行いであると新聞紙の愚弄を買った。一般新聞紙は、最早一時程には排日問題の記事を掲載しないようになった。
2月16日
印度革命派征伐 15日タイムス社発
カルカッタ来電―今後、インドに於いて、なお革命派の暴行がある場合には、別に新刑法を実施し、暴行者は1日目に尋問し、翌日には直ちに刑を執行する様になるのではないであろうか。
土国の紛争 13日ベルリン特約通信社発
トルコ宰相と青年トルコ党は、コンスタンチノープルに於いて公然と衝突し、宰相は青年トルコ党がトルコ皇帝に対して陰謀を企てたと面責している。
塞国の挑戦的態度 同上
セルビアが絶えず挑戦的態度を執っている為に、オーストリアとセルビア間の時局は、益々危険となっている。新聞紙は、セルビア政府は、遠からず破産するであろうと威嚇し始めている。
土国紛争後報 14日ベルリン特約通信社発
トルコ議会は、宰相の不信任を決議した。
トルコ皇帝は、青年トルコ党に加担しているので、宰相の辞職は明らかであり、青年トルコ党の内閣が組織されるであろう。又陸海軍は、共に議会を擁護して非常に強硬な抗議を提出しようとしている。しかしコンスタンチノープルは現在平穏である。
2月17日
印度革命派征伐 16日タイムス社発
カルカッタ来電―デカン特信によれば、種々の探索の結果、無政府派の団体は、上流階級の印度人で構成され、一切イスラム教徒を交えない秘密団体と連絡している事が判明した。これらの団体は、露国の秘密団体に倣っているとの事である。これらの為に欧州人警察官を増加する必要が生じた。
塞国の挑戦的態度 15日ベルリン特約通信社発
オーストリア政府は、セルビア事件を欧州列強に委任する事を望まず、セルビアの挑戦的態度に対してむしろ、自由行動の保留を希望している。なおセルビアは、セルビアとブルガリアとの境界にあるベルグラードの対岸セムリン河の鉄道に爆弾を設置した。
2月18日
波斯財政欠乏 17日タイムス社発
テヘラン特報によれば、ペルシャ王は、現金を調達する必要性を切に感じ始めている。兵士達は、未払いの給料が支払われなければ反乱を起こす恐れがある。諸商店の一部は閉鎖している。
英国議会開院式勅語 17日上海経由ロイター社発
英国皇帝は、議会に親臨して開院式を挙行された。皇帝の勅語は「朕はベルリンに於いて受けた熱誠な歓迎に深く感激し、満足した。今回朕の受けた歓迎が、英獨相互の幸福及び平和の維持に必要な両国の親密な感情を強くする効果がある事は朕の信じて疑わない所である。」(一部抜粋)
太平洋と米国海軍 17日横浜直通紐育発
米国上院の委員会は、「大統領が若し必要と認めるならば、米国艦隊の半分を実行され得る限り太平洋海面に置く」との海軍法案修正動議を可決した。
2月19日
パナマ運河竣工期 18日タイムス社発
ニューヨーク来電―パナマ運河技師局は、同運河が1915年1月に竣工する予定で、その費用は3億6千万ドルを要する旨を発表した。なお水関式運河に反対する海平式運河を主張者等は、上院に於いて組織的行為を執らんとする模様がある。
米国太平洋防備 18日上海経由ロイター社発
ワシントン来電―米国上院委員会は、「大統領が必要と認める場合には、実行され得る限り、米国海軍の一部を太平洋に置く事が出来る」との修正案を可決した。その後は、大統領がこの権限を有しているが、とにかくこの決議は上院がこの点に賛成であるとの意志表示と認められる。
又々別途の排斥案 17日桑港特派員発
各市町村学務委員に、不潔不道徳学生が公立学校に通学する事を禁止する権力を与えようとする議案がカルフォルニア州議会下院に提出された。日本人を目的とする事は無論である。日本がマレー人種であると自称するならば、支那人、インド人と共にマレー人児童も排斥すべしとの修正案は否決された。
恐日感情昴進 同上
州議会に於ける排日議案は、一段落を告げたが、最近当地方では、排日感情よりむしろ恐日感情の方が非常に高まり始めている。或る州議会議員の如きは、予は大統領と知事ギレット氏、議長スタントン氏との交換文書を見たが、諸君がこれを一見すれば、太平洋では二大海軍国の衝突が近い事を知るであろうと演説した位である。一般にも日米戦争の避け難い事を信じている有様である。同時にこの地に一人でも日本人がいる間は、反日運動は止まない模様である。諸新聞は連日排日記事を掲載中である。
解説:日米戦争の源流を見る思いがする。
2月20日
東欧形勢暗澹 19日タイムス社発
露都来電―臨時内閣会議が開かれた。オーストリアとセルビアの関係が非常に面倒になった様である。オーストリアは、近々最後通牒を送りそうであり、同時にセルビアは、国境に展開するオーストリア軍の撤退を要求中と報じられている。そして冷静な露国人はオーストリアの行動は、欧州の戦争を引き起こすのではと気遣っている。
解説:このオーストリアとセルビアの対立感情が第一次世界大戦の原因となっている。1916年6月にオーストリア・ハンガリーの皇太子夫妻がボスニア系セルビア人に暗殺された事により、第一次世界大戦は起こった。
英独海軍協約 19日上海経由ロイター社発
英国下院に於いて、英独海軍協約の成否に関し質問が行われた。首相アスキス氏は、これに答えて次の様に言明した。
予の知れる限り、ドイツ政府は以前英国政府に通告された意見を固執し、英国が必要と認める計画に応じた海軍計画を遂行する方針であり、決して英国を凌駕する艦隊を作る意志は無い。そして英国は、当然のことながら英国の利益を防護するに必要であると考える計画を遂行しており、従って英独両国の間に海軍協約を締結する理由は無い。
波斯形勢不穏 同上
在テヘラン本社通信員の報道によれば、同地の情勢は、益々不穏となり、秩序が全く無くなり、人心は恐恐としている。そして某国公使館では、その居留民に向かって、万一の場合に対する心構えを注意した。
米国艦隊帰着 18日紐育特派員発
世界一周米国大艦隊は、17日漸くサンプトンローズから5百マイルの所に来たとの無線電信があった。22日サンプトンローズに到着する予定である。
2月21日
勃牙利独立承認 20日タイムス社発
ソフア来電―英仏露三国は、遂にブルガリアの独立を承認したと言われている。
亜細亜人排斥案形勢 19日桑港特派員発
支那人排斥法を拡張して、全てのアジア人を含む排斥法案の制定を国会に請願するという決議案は、カルフォルニア州議会上院委員会に握られているが、提出者から頻りに報告を求め、来週水曜日の議題に上る予定であるが無論否決されるであろう。
足利の決議の反響 同上
足利織物業組合が太平洋沿岸に於ける排日運動に激昂して、シャトル博覧会への出品を拒絶したとの東京電報は、非常に米国人の注意を引いている。
2月22日
墺塞土関係改善 21日上海経由ロイター社発
ウイーン来電―セルビアに対するオーストリアの最後の措置は、一時見合わせられたと言われている。又オーストリアとトルコとの協約も近々成立するのではと期待されている。
勃牙利王承認 同上
間もなく露国を訪問しようとしているブルガリア王は、国王の資格で待遇されるであろう。露国新聞は一致して、ブルガリア公を正式に国王と承認する事に賛成している。なおオーストリアも露国と同じくブルガリア公の国王である事を承認しようとしている。
2月23日
露国の弁明 22日タイムス社発
コンスタンチノープル来電―駐トルコ露国大使は、露都に於いてブルガリアのフェルジナンド公が国王の儀礼で歓迎された事は、決してブルガリアの独立を意味するものではないと弁明した。
トルコの諸新聞は、露国がトルコに対し友好的であると確言した事に対し、何等の価値もないと主張し始めている。
加藤大使談 22日上海経由ロイター社発
加藤駐英大使は、本社社員と会見し、日本は太平洋上の有力な国家の一つである事を望んでいるが、あえて他国の権利を侵害しようとはしていない。ハワイ、フィリピンには何等の利益関係も持っていない。又米国と戦う意志も無いと言明した。
土耳古抗議 同上
我が社のコンスタンチノープル特信によれば、トルコ政府は、ブルガリアが独立するには、先ずトルコの承認を得なければならないとの黙約を今回露国が無視し、国王としての儀礼でブルガリア公フェルジナンドを歓迎した事実を指摘する書簡を列国に送付した。
米国艦隊帰着 同上
米国戦闘艦隊は、ニューヨークのハンプトンローズに帰着した。大統領は、本日観艦式を挙行する筈である。
布哇排日案否決 21日桑港特派員発
ハワイ上院は、日本人を目的とする外人漁業禁止案を否決した。
戦争説と米人 同上
戦争説が高まっているという朝日新聞に掲載された特電が非常に日本国民を驚かせたとの東京電報が来て、米人に深い驚きを与えた。
2月24日
大統領の艦隊歓迎 23日タイムス社発
ニューヨーク来電―大統領ル氏は、帰着した回航艦隊水兵に対し、歓迎演説を行った。彼等は、平和の大使若しくは伝令使であり、又今回の回航は、戦艦及び将卒を一層有力な地位に進ませたと言明した。
タイムス通信員は、諸軍艦は些細な錆びと汚れを生じた点を除き、完全な状態であり、回航費用は2千万ドルで、内石炭の消費額40万320トンで、その代価は107万3千994ドルであると報道した。
布哇排日案握潰 23日上海経由ロイター社発
ホノルル来電―ハワイ上院は外人漁業禁止案を握り潰した。
巴爾幹問題現状 同上
オーストリア半官報が、オーストリアとセルビアの関係は、依然として変化なしと報道しているに拘わらず、オーストリア政府は、明らかに平和的政策を探っている。そして諸新聞は、列国がオーストリア政府に対し何事か意見を提示しているとの風説について、激昂し始めている。同時にセルビアの諸新聞は、露国が支援を与えない事を責めている。なお又ベルリンの新聞は、ドイツ政府は、オーストリア政府の意見に同意しないと報道した。
解説:セルビアは、露国と同じスラブ民族であり、露国の支援を期待していた。
2月25日
墺塞関係険悪 24日タイムス社発
オーストリアとセルビア間の関係が、依然として不仲であり、欧州の諸首府に於いては、非常に不安な念が生じ始めている。ボスニア及びヘルチェゴビナに関するオーストリアとトルコとの協約は、今やオーストリア首相エーレンタル男爵の承諾を経ている。男爵は、いよいよ自由にセルビア問題を処理できるものと信じ、且つセルビアは、自由に放言するのを止め、その許容する事の出来ない要求を放棄しなければならないと考えている。なお皇太子は、弱者に対し安直に十分な勝利を得る事のできる戦争を行う機会を得たいと希望しているとの説があるが、この政策は、皇太子の支援を受けているものと思われる。
解説:この記事には第一次世界大戦突発のキーワードが二つ含まれており、その一つはオーストリア皇太子であり、もう一つはセルビアである。即ちこの皇太子は、セルビア系ボスニア人に暗殺され、それが契機となってセルビアと同じスラブ民族のロシアの動員、それに反応したドイツの動員が起こり、1914年に第一次世界大戦は始まった。(この記事から5年後)
太平洋防備論 23日ベルリン特約通信社発
米国海軍少将シュレー氏は、アメリカン紙上に、太平洋沿岸防備に関する意見を発表した。その要点は、日本との戦争は多分無いと思われるが、若し我々がさらに多くの軍艦と陸軍を有しているとするならば、戦争説を少なくする事が出来るであろう。我が太平洋沿岸は、全く無防備である。ある国と海戦するならば、一時でその馬蹄に蹂躙される事になるであろう。予の意見では、太平洋に及ぶだけの軍艦を常備し、これに対する軍港を設備し、陸上の防備を完成される事が現在の最大の急務である。
独逸対塞爾比 23日ベルリン特約通信社発
独逸は、セルビア問題に対するオーストリア政府の態度について、オーストリアに勧告することなく、むしろ却ってセルビア政府に対し動員中止の実行を勧告するであろう。なお新セルビア内閣は、一層平和的であると考えられる。
2月26日
墺国戦準備 25日タイムス社発
ウイーン来電―オーストリアは、戦備の為に毎日4万ポンドを費やしている。この重荷は、無限に負担する事が出来るものではない。全国民は、平和的解決に依るか、或いは軍事的行動により時局を速やかに解決する事を希望し始めている。
対墺勧告と獨英 同上
ドイツ政府は、英帝がドイツを訪問した際、英国の平和維持運動に協力する旨を熱心に宣言したにも拘わらず、今回英、仏、露三国がオーストリアに向かって行おうとしている平和的勧告に加入する事を拒否しており、その為英国外務省は非常に困惑したと信じられる。
日本人調査 同上
カルフォルニア州議会は、日本人の人口調査案を可決し、現在アジア人の一般的排斥を要求するべきかどうかの問題を討議中である。
カルフォルニア州知事ギレット氏は、人口調査案を裁可し、労働委員は直ちに人口統計に着手する筈である。
巴爾幹形勢 25日上海経由ロイター社発
オーストリアとセルビア間の和戦が何れになるかは、一に列国がセルビア政府に加える圧迫の程度如何による状況である。ある方面の意見に依れば、セルビア政府は、喜んでこの機会を利用し、苦境を逃れるであろうと言われている。本社が入手した情報によると、他方面で言われている様なバルカン情勢に関する危惧は、ロンドンに於いて見る事が出来ない。
2月27日
墺塞関係論評 26日タイムス社発
露都来電―諸新聞は、オーストリアの侵略的政策を攻撃し、露国はスラブ民族を保護しなければならない義務があると論じ、若しオーストリアの軍隊が一歩でもセルビアの領域に侵入するならば、戦争は否応なしに始まるであろうと気遣っている。
解説:2月25日の解説にあるように、5年後に始まる第一次世界大戦は、セルビア支援するロシアの動員で始まった。
土耳古民心猶不安 同上
コンスタンチノープル来電―下院は、浮浪人取締法案を討議中であり、各地の騒乱の為に首都に逃れてきたもの9千人、住居及び職業を失った者は1万人に達し、盗賊やその他の暴行が日を追って益々激しくなっている。
日米戦争論冷罵 25日紐育特派員発
エール大学教授ラッド博士は、ニューヨークで開かれた同校同窓会に出席し、日米戦争談を打ち消す唯一の手段は、ホプソン大佐を艦長として、排日議員派の黄色新聞記者を乗組員として、一つの軍艦を出し、日本からも同一の軍艦を出して太平洋上で開戦させ、生存者を絶海の孤島に流す外は無いと信じると言い、大喝采を博した。
解説:黄色新聞記者とは、ウィリアム・ランドルフ・ハーストの経営する新聞社の新聞記者である。彼の新聞経営方針は発行部数第一主義で、新聞を一枚でも多く売るという目的のためだけで排日を唱導している。
墺塞紛議仲裁承諾 同上
セルビア政府は、オーストリアとの紛争を欧州諸国の裁断に委ねる事を承諾した。
2月28日
墺国の平和主義 27日タイムス社発
露都来電―オーストリア政府は、露国政府に対し、セルビアを相手に攻撃的な行動をとる意志が無く、又現在の近東情勢は、寧ろ一層有望であると通知した。
巴爾幹時局 同上
バルカンに関する驚愕は霧散し始めている。トルコとオーストリアとの協約が調印されたと同時に、露国は列国と一致して、セルビアに領土上の賠償を主張しない様に勧告するであろうと報道された。又トルコの排オーストリア・ボイコット運動は止み、株式市場は騰貴している。
日清人排斥請願 26日桑港特派員発
清人排斥法を拡張して、新たに日本人その他全てのアジア人を含む排斥法の制定を国会に請願すべしとの決議案は、7票対26票の大多数でカルフォルニア州上院を通過した。