期日 |
日本関係 |
期日 |
露清関係 |
期日 |
英米関連 |
期日 |
独仏その他関連 |
12月12日 |
沸国羽二重課税 |
12月20日 |
安奉線整備 |
12月1日 |
米国対ニカラグア |
12月2日 |
波斯近情 |
12月28日 |
日本人の満韓策と獨逸 |
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12月1日 |
米人処刑は正当 |
12月3日 |
獨逸海軍予算 |
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12月4日 |
米尼国交断絶 |
12月13日 |
白耳義公果及び沸国 |
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12月5日 |
米国の海軍計画 |
12月18日 |
沸摩談判順潮 |
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12月5日 |
尼国革命軍優性 |
12月29日 |
沸国外相演説 |
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12月6日 |
尼国大統領危し |
12月31日 |
土耳其内閣辞職 |
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12月9日 |
米国大統領教書 |
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12月11日 |
クックの化けの皮 |
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12月12日 |
売春婦の渡米 |
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12月18日 |
尼国大統領辞職 |
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12月19日 |
米兵増派 |
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12月19日 |
クック氏発見愈虚偽 |
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12月22日 |
英国軍艦建造 |
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12月27日 |
クックの不名誉 |
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12月1日
米国対ニカラグア 30日タイムス社発
ニューヨーク来電―ニカラグアに於ける現大統領ゼラヤと革命軍司令官エストラダとの対立状態が今尚続いている。米国国務省に於いては、同国に干渉する意志がない為に、最近盛んである「米国は断固たる手段に出るべし」との風説も大いに下火となった。これは反乱に味方した米国人2名の処刑事件が干渉の理由を与えなかったことによると言われている。
英獨境界協約 30日上海経由ロイター社発
本社ベルリン通信によれば、英領ウガンダと獨領東アフリカ及びコンゴ間の境界を決定した英獨協約が調印された。但しコンゴとの協議が残っているので、その内容は現在秘密にされている。
米人処刑は正当 29日桑港特派員発
ニカラグア議会は、12月1日開会の予定であるが、大統領ゼラヤ氏が退職するであろうとの声が高く、その他に種々の風説があるが同国政府が反乱に加わった2名の米国人を処刑した事は適切であると見做されている。
12月2日
波斯近情 1日タイムス社発
テヘラン来電―シラーツとプシヤイア間の道路は、土賊の為に交通を遮断された。ペルシャ大蔵大臣は、3万5千の軍隊と国内の秩序を維持する為の外債募集を希望している。
実業団帰国 30日桑港特派員発
実業団は、30日朝、一行に随伴し、国内を旅行した各地商業会議所代表者及びサンフランシスコの主要な実業家30余名を地洋丸に招待して、送別朝食会を催した。渋沢男爵の熱意溢れる熱誠ある感謝と別離の言葉があり、サンフランシスコのコナブ、シャトルのローマン両商工会議所会頭等の痛切な送別の辞があった。
尚米国商工会議所と日本商工会議所代表者は、両国実業の調査機関を設置し、日本より米国に輸出する絹織物、米国から日本に輸入する機械類等が他国輸入額より劣る場合には、その理由を研究し、両国貿易の発展を図る内談が整った。
12月3日
獨逸海軍予算 2日タイムス社発
ベルリン来電―獨逸海軍予算は、全て前年度より高額となっている。潜航艇費及び大砲費は、それぞれ約50万ポンド増加し、又海軍将校、兵士数は、57,170名である。前年に比して3,401名増加した。
解説:この潜航艇とは、海戦史上有名なUボートである。
ダライラマの談話 3日タイムス社発な
露都来電―ダライラマは、清国はその頑固な態度を和らげた。チベット人は、同地方の商業を一手に握っている英国人と親善関係を結ぶ事が出来ると明言し、なおチベットと露国との間に永久的な外交関係を結ぶ事を希望している旨を仄めかしているとブリア、ドルチイフ紙は報道している。
米尼国交断絶 3日上海経由ロイター社発
ワシントン来電―米国政府は、国務郷の書簡と共に旅券を駐米ニカラグア代理公使に交付した。この国務郷の書簡は、大統領ゼラヤがニカラグア国内及び国際の平和を侵害した事を非難し、且つ大統領は、結局革命を承認するであろうが、革命党及び非革命党は、米国の利益を害した事に対する責任があると付言した。
なお米国軍艦3隻は、既にニカラグアに向け出発するよう命じられた。
12月5日
米国の海軍計画 4日タイムス社発
ワシントン来電―米国大統領タフト氏は、明後日に開会される議会に送る教書に於いて、国民兵の例に倣った海軍予備兵の新設を主張し、太平洋と大西洋に戦艦に対する設備を設ける計画を述べている。特に太平洋に於いて最新の戦艦に対する設備のある乾ドックは、唯一か所である事を指摘し、更にキュウバのガンタナの軍港完成を主張している。
尼国革命軍優性 3日桑港特派員発
ラマに於けるニカラグア官軍と革命軍との戦闘は、2日間続いているが未だ勝敗が決していない。しかし革命軍が優勢であり、大統領ゼラヤが敗北するであろうとの情報がる。又米国新聞は、ゼラヤによって処刑されたカンノン、グレース2名の死体は寸断され、焼き捨てられたと報じ、且つこの蛮行はゼラヤの命令によると言われており、非常に国民の感情を刺激し始めている。
解説:数日来報道されているニカラグア内乱の続報である。
12月6日
尼国大統領危し 4日桑港特派員発
ニカラグワ陸軍大佐グワデムズ氏は、手兵百名を率いて革命軍に投降した。ラマ付近に居る大統領ゼラヤ氏の軍隊は千4百に過ぎず、壊滅するのは間もなくと言われている。又ゼラヤ氏は、国務郷ロックス氏の最後の通牒を認めず、代表者をワシントンに送り、政府当局者間に運動させ、国会も動かし、両国の関係を回復させようと努力している様である。
鉄道大罷業 同上
大北鉄道その他の見張番人同盟罷業は、最後まで争う事となったが、他の鉄道労働者全体も同情し、罷業に加わろうとする情勢である。全国の鉄道全体が休業する様になるかも知れないと言われている。
12月7日
希定の時局観 6日タイムス社発
アデン来電―ギリシャ皇帝は、タイムス通信員に対し、同国内外の情勢について非常に楽天的な意見を述べた。朕はトルコと親密になる事を希望し、トルコ大使に向かい、平和の意志について、明確な約束を与えたと言明した。
解説:クレタ島は、ギリシャとトルコの間で領有権争いがあるが、この当時はオスマン帝国領であった。
西班牙暴民無罪 同上
バルセロナ来電―去る7月バルセロナに於いて、革命運動を起こし、学校寺院を破壊した暴動事件の被告人870名は無罪放免された。又50名は将に審問に付されようとしている。
12月8日
米国鉄道大罷工 7日タイムス社発
ニューヨーク来電―全国製造業者協会は、米国が好況な状態にある旨を言明した報告書を発した。これと同時に高給を要求する鉄道工夫の大規模な罷工が起ころうとしている。
新駐清公使の経歴 6日桑港特派員発
国務省は、シカゴのウイリアム、カルフォーン氏を駐清公使に任命した事を発表した。氏は米西戦争前に特使としてキューバに赴き、又ベネズエラ事件の際に、英米の葛藤を生じた時も、ベネズエラに出張した経験がある。
12月9日
ソマリランド総督 7日上海経由ロイター社発
英国陸軍少将デブラス氏は、コルドオ大佐の後を継ぎ、英国アフリカ、ソマリランド政務官兼陸軍司令官に任命された。但しこれは政策の変更を意味するものではない。
解説:海賊で有名となっているソマリアの北半分は英国領、南半分はイタリア領であった。
米国大統領教書 7日桑港特派員発
7日午後議会に於いて大統領の教書が朗読された。
極東問題については、多年の政策を変更せず、米国資本を他国と共に清国鉄道建設に投資する事を説いた。
日清関係に就いては、9月4日の日清協約の中に、南満及び安泰両鉄道に沿った鉱山採掘の特権を独占する様に疑われる節があり、調査の結果その様な企画はない事が解った。念の為に日清両国政府の説明を求めたが、各自正式に機会均等主義に違反しない旨の保障を与えたと述べた。
日本との関係を論じ、日本との国交は親密に継続中であり、日本の代表者として久邇宮殿下はハドソン、フルトン記念祭に列席され、又日本実業団は、太平洋沿岸商業会議所の賓客として来訪し、発展している太平洋貿易上に非常に貢献すると思われる。そして日本人労働者の入国禁止は、昨年の協定に従い満足に行われている。(一部抜粋)
12月10日
運河紀念博覧会 8日桑港特派員発
8日サンフランシスコ実業者大会が催され、1915年を期してパナマ運河開通世界博覧会を開く事を決定し、委員を選び調査に着手した。
解説:パナマ運河は、予定より早く1914年8月に開通した。
中米擾乱 同上
ホンジュラス政府は、前大統領ボリルラ氏が再び勢力を回復する事を恐れ、国内に戒厳令を発令した。ボ氏は、ニカラグア大統領ゼラヤに援助を受けた現ホンジュラス大統領ダビルラ氏により駆逐された人物であり、その権勢を縛る事になったのは、ニカラグア内乱に関係がある事は無論である。尚両国の反徒は気脈を通じているとの説がある。
解説:12月6日の記事「尼国大統領危し」によると、ニカラグア大統領の立場は危うくなっている。
12月11日
英国戦艦新造 10日上海経由ロイター社発
新型戦艦ドレッドノート型1隻をアームストロング造船所に於いて建造する事が決定した。同艦は、1896年以来の最大戦艦であり、この工事の為に失業者は大いに助かると喜ぶべき報道が伝えられる。
クックの化けの皮 同上
ニューヨークタイムス紙は、既に隠退した航海者キャプテン、ルース及び保険会社代理人ドンクル両氏の自白書を発表した。これによれば、この両人は先にクックが如何にも北陸探検旅行を行ったと思わせる航海及び天文観測を作為し、これをクックに与えたが、クックは約束の金員を支払わずに姿を消した。
解説:9月13日「北極占領」の記事があり、これがベアリー氏とクック氏の北極探検論争の始まりである。
クリート問題 同上
クリート保護問題に関し、列国はトルコに公文を送り、現在はクリート島の制度確立に関し、商議すべき適切な時期ではないと通告した。
解説:11月14日、16日の記事の続報である。クリート島ではトルコとギリシャの間で紛争が起きている。
12月12日
売春婦の渡米 11日タイムス社発
ワシントン来電―米国移民官は、毎年数千の婦人が売春の目的で米国に移住している旨を報告し、これは実に米国の文明を辱めるものであり、この様な条約違反の行為を防止する事に関し、諸外国協力の必要性を説いた。
解説:欧州からの移民により、米国の人口は日露戦争当時(1905年)7千5百万人、第2次世界大戦当時(1945年)1億3千万人と毎年百万人以上の増加している。
米国綿花予想外 11日上海経由ロイター社発
米国綿花局の報告によれば、今年の綿花収穫は、相場師が楽観的に予想したよりも20万俵の減収であり、ニューヨーク及びリバプールに於ける人気は、未曽有の光景を呈し、相場は非常な狂いを生じた。
沸国羽二重課税 内国電報(11日)
外電によると沸国代議院に於いて、日本羽二重に輸入税を課する案が通過した。従来の沸国関税法では、欧州貨物と東洋貨物の輸入品に区別をし、東洋貨物には最高税率を課していた。我国より沸国に輸出する練羽二重には、100キロ9百ドルの重税となるが、然るに原料品は無税とされ、そして我国の生羽二重は原料品として取り扱われ、リヨンあたりで練羽二重に精製して市場に出されていた。今回生羽二重にも課税する事になれば、我が羽二重業者にとって一大打撃となる。しかし栗野大使よりの電報によれば、生羽二重に課税する代わりに、練羽二重に対しては、東洋品であっても最低課税を課する事となっているとの事である。
(一部抜粋)
12月13日
白耳義公果及び沸国 11日上海経由ロイター社発
沸国政府は、ベルギー政府のコンゴ改革案を是認し、若し同案が忠実に実行されるならば、全てのコンゴ土人間に、自由貿易の途を開き、土人等に多大の幸福を与えるであろうと述べた。
解説:コンゴは、ベルギー王室領であり、その植民地政策は苛烈で、ゴム、象牙等の収穫物が規定量に達しない土人の手を切り落とし、列強から非難された。その為その領地を政府が買い上げて、コンゴの改革案を列強に示したものである。
12月14日
沸獨関係小康 13日タイムス社発
パリ―来電―獨逸宰相ベニトマン、ホルウエヒ及び外相シエン両氏が議会に於いて平和的演説を行い、モロッコに関して明確な宣言を行った事は、大いに仏国新聞の満足を買った。これで獨沸利益の衝突の事態は、これを避ける事ができると一般に信じられている。
解説:モロッコは沸の保護国であり、度々獨逸が手を出している。
米国愈々派兵 13日上海経由ロイター社発
ニカラグア暴動の巨魁エストラダは、大統領ゼラヤに反抗して、米国の援助を求めた。大統領は、この巨魁を圧伏しよとして頻りに威嚇手段を用いている。
米国巡洋艦タコマは、海兵7百をコロンまで輸送する様命じられ旨ワシントンに於いて報道された。
12月15日
尼国征伐案 14日タイムス社発
ニューヨーク来電―ニカラグア大統領ゼラヤ氏は、専制者、僭王、殺人者であるとして米国政府の手によって、同大統領に正当な裁判を受けさせる件を許可する一決議案は、一議員の手により米国上院に提出された。
解説:12月1日の記事以降度々、関連記事が報道されているが2名のアメリカ人が処刑されている。
沸国の対獨憂懼 同上
パリ―来電ー仏国の政治的世論は、獨逸の財政が各種事業保護の傾向を示す事に対し、非常に懸念し始めており、そのバクダット鉄道によって沸国の近東政策を阻害するのではないかと憂慮している。
12月16日
米国使命論 15日タイムス社発
ニューヨーク来電―米国大統領タフト氏は、世界的強国としての米国の地位に言及し、ワシントン将軍は「周囲の海洋以外に目を注いではならない」と述べているが、最近時世は一変しており、我国の富強は、今や絶大なものがあり、若し我々が隣国の利益の為にこの力を用いないならば、遂に国際社会の一員である義務を履行しないと言う罪を負う事になるであろうと言明した。
12月17日
日英人接近論 16日タイムス社発
タイムス軍事通信員は、日本に於いて未知の友人より、「大和魂」(?)と言う雑誌の第1号数冊を送られた。タイムスはその内容及び目的を充分に記載し、その贈呈を謝し、同時にこの様な稀有の出版を見るだけでは、今だ各人願望を満足させるに足らずと説き、日英両軍隊間に一層密接な連絡がなければならないと論じた。(一部抜粋)
米国労働紛議 同上
ニューヨーク来電―米国労働同盟は、鋼鉄トラストに対し、事実上の戦争を宣言した。その主張は、同トラストは労働者に低賃金を支払い、同盟組織計画を妨害すると言っている。
12月18日
沸摩談判順潮 17日タイムス社発
パリ―来電―沸国政府は、先にモロッコ国王ムライ、ハフイッドに対し、沸国債権者に支払いをするよう要求し、同時にその財源は、これを公債に求めても構わないとし、若し沸国に於いて募集する場合には後援者となる旨通告した。これについてモロッコ王は長い間曖昧な態度を執ってきたが、再三交渉した結果、遂に大筋に於いて沸国の要求する債権者仕様の為の募債協議を行う件及び外人の不満を抱ける事項について、匡正策を講じる件を承諾した。
解説:この当時世界の列強では、殆ど全てが皇帝を頂いていた。その中で、モロッコでは、先王が追放され国王ムライが国王になったばかりである。その不安定は国でありながらモロッコは現在でも王制を維持している。又当時モロッコは沸国の保護国であった。
韓国合併協議無根 17日上海経由ロイター社発
露国半官報ノウオエ、ウレミヤは、政府の意を受けて、日露両国が日本の朝鮮合併について協議を始めたとの報道を否認した。
尼国大統領辞職 同上
ニカラグア大統領ゼラヤ氏は辞職した。
解説:12月1日ニカラグアに関する記事から、度々内乱に関する記事が報道されていたが大統領が敗れた様である。
12月19日
米兵増派 18日タイムス社発
ニューヨーク来電―ニカラグアに対する米国の干渉は、再び避けられないものと考えられる。7百名の米兵は、米国人保護の目的を持ってコリントオに派遣された。
クック氏発見愈虚偽 18日上海経由ロイター社発
先にクック氏の北極発見が虚構である旨を証言した船長ルース氏は、その後賄賂によってこの証言の取り消しを勧誘されたが、取り消す事は無いと言明した。
解説:有名なベアリー氏とクック氏の北極点到達論争の記事であり、9月13日「北極占領」以降報道されていた。結局ベアリー氏が勝利し、クック氏は詐欺罪で収監された。しかし現在ではベアリー氏がクック氏側の証人を買収した事が解っており、どちらが正しいのか不明と言われている。
ゼラヤ氏の広言 17日桑港特派員発
ニカラグア大統領ゼラヤ氏は、国務郷ノックス氏に次の電報を打電してきた。
閣下の報告は誤解を含んでいると信じる。調査の為に合衆国が委員を派遣する様希望する。若し予の執政の為に中米諸国の平和を攪乱したとすれば、予は辞職する必要があり、又予は米国との友好が継続される事を望む故に、国会に辞表を提出した。予は国家に忠誠を表する為、国を去るつもりである。しかし予は予の施政が誤っていたとは思っていない。
解説:12月の初めから連日の様に報道されていたニカラグアの内乱が一応の結末を迎えた様である。
12月20日
安奉線整備 19日奉天特派員発
関東都督府は、安奉線の警備の為に19日より、本渓湖及び鶏冠山に警務支所を設置した。
12月21日
伯国鉄道工事難 20日タイムス社発
ベルリン来電―西部ブラジルのマモレ鉄道で労働に従事していた多数の獨逸人が帰国した。これは同地の事情、境遇が忍び難いものである結果である。
12月22日
英国軍艦建造 21日上海経由ロイター社発
英国海軍省は、土曜日スーパードレッドノート型戦艦2隻及び装甲巡洋艦1隻を発注した。これは直ちに起工し、1912年に竣工させると思われる。
解説:第1次世界大戦まで5年、英国は、獨逸と建艦競争を行っている。
尼国叛将の懇訴 20日桑港特派員発
ニカラグア革命党の首領エストラダは、国務郷ノックス氏に次の電報を送った。
我が国の平和を期する途は、ゼラヤとその一味をことごとく排除する事にある。我々はこの保障を得るまで、戦争を継続する。自由と正義の名を以て貴国が我々の政府を承認することを切望する。
一方に於いてニカラグア議会は、ゼラヤの推薦によりマドリヅ氏を大統領にイリアス氏を元帥に推薦しようとしている。内乱はまだ終わらないと思われる。
解説:昨日の記事の続報であり、ゼラヤとは前大統領である。
12月23日
加奈陀海軍反対 22日タイムス社発
オタワ来電―カナダ海軍の設置に反対するフランス系カナダ人一派の首領は、若しカナダ人に対して、英帝国の為に血と黄金を差し出す事を求めるのであれば、カナダ人に外交政策に対する発言権を付与しなければならないと主張した。
クック発見の否認 22日上海経由ロイター社発
デンマークのコペンハーゲン大学は、クック氏の記録を審査した結果、氏が北極に到着した証拠は無いと宣言した。
解説:12月19日「クック氏発見愈虚偽」の続報である。 この記事によるとクックの発見は学術的に否定された事になる。
12月24日
アデン来電―ギリシャ陸相の失言問題に起因する政治的難局が、依然として今も続いている。
陸軍協会は、あくまでも現内閣を維持する様主張し、これに対し2党派から成る反対派は、陸相が辞職しないならば、代議院に出席しないと決議した。これについて、ギリシャ皇帝は平和の為に調停に努力中である。
12月25日
英国官吏殺害 24日タイムス社発
ボンベイ来電―インド人の青年がナスクに於いて英国官吏を殺害した。これはブラヒムが反乱罪によって終身流刑に処せられた事に対する復讐であるが同時に政治的犯罪を意味し、刺客は、疑いなく他人に雇われていたと言われている。
沸獨関係改善 同上
パリ―来電―沸国代議院に於いて、外交上の討議があり、国民党員ミュウオイ氏は、沸獨関係の改善を称賛し、復讐談の様な話は、これを止めなければならないと主張した。
解説:第一次世界大戦の5年前である。
12月26日
沸人損害賠償 25日タイムス社発
パリ―来電―沸国外務大臣ビシヨン氏は、この夏スペインのバルセロナ暴動の際、沸人が蒙った損害に言及し、この暴徒は無一文の面々であるので、スペインの現行法律の下にあっては、損害賠償を請求する途は無いと説き、同時に唯スペイン政府の公正な精神に訴え中である旨を表明した。
12月27日
クックの不名誉 26日上海経由ロイター社発
ニューヨークの保険クラブは、マッキンレー登頂に関するクック博士の報告を審査中であったが、その結果報告は信用できないと決定し、クック博士は同クラブより除名された。
解説:クック博士とは、度々この欄の記事で報道されている通り北極探検一番乗りでビアリー氏と争った医師のクック博士である。ウイッキペデアによるとこのマッキンレー登頂では、ベアリー氏が当時のお金で5,000ドルもの大金(現在の日本円で1,000万円相当とも)を払ってクックのマッキンレー初登頂時の証人を買収したことがわかっており、いずれの探検家が先に北極点に到達したか(あるいはどちらも到達していないか)は大きな議論の対象であり、はっきりしない。
沸獨と摩洛哥 同上
沸国議会に於いて、対外政策を討論中、対外硬派の闘将であるムルボア氏は、モロッコ協約により、沸獨の関係が漸次改善されつつあり事に満足する旨を述べ、復讐の事はもはや討議する必要が無いと述べた。
解説:モロッコは沸国の保護国であり、獨逸がモロッコに手を出した事がある。
12月28日
タイムス満州鉄道論 27日タイムス社発
ロンドンタイムスは、その社説に於いて満州の鉄道問題解決が困難である原因は、主に清国の儒者が無能である事であるとしている。日露両国の友好的な協力が極めて重要であることを主張し、現在他の強国は温和な態度を守りつつある。しかも同時に英米の対清外交は、宜しく一般的意見交換をさせるよう努めざるを得ない。日本は、また宜しくその要求の範囲及び性質を一層明らかに限定しなければならないと言明した。
日本人の満韓策と獨逸 24日ベルリン特約通信社発
フランフルチル、ツアイツングは社説に於いて、獨逸は、その商業的利益に損害を与える事が無ければ、満韓に於ける日本の前進について抗議しなければならないものは無いと言明した。
12月29日
沸国外相演説 28日タイムス社発
パリー来電―沸国代議院は、終日に亘って外交上の討論を行い、外相ビション氏は次の演説を行った。
沸国政府は至る所で平和、協調の増進に尽力した。仏露同盟は、現在の様に強固であった事はない。英露間或は露伊の友情は、これも平和に対する新しい保障である。又モロッコ問題に対する沸獨間の難問題は今や排除されて跡形もない。そして欧州諸国の勢力は、正に堅固な均衡を保っている。
解説:第一次世界大戦の5年前の沸国の状況である。英獨は海上覇権を目指し、建艦競争を行っており、ドイツの参謀本部は、ドイツ軍のフランス侵攻作戦計画(シェリフーン計画)を作っていた。こんな状況では、フランスがドイツに侮られるのは止むを得ないであろう。
12月30日
土耳其内閣危機 29日タイムス社発
コンスタンチノーブル来電―トルコ内閣の危機が再び起こった。青年トルコ党の代表である統一進歩期成委員は、宰相ヒルー、パーシャの辞職を要求し、宰相はこれに応じた。
解説:1908年、軍人の青年トルコ党が革命を起こし、トルコ皇帝の専制政治を放棄させている。
12月31日
土耳其内閣辞職 30日タイムス社発
コンスタンチノーブル来電-トルコ宰相ヒルー、パーシャは、同盟進歩期成委員等より辞職を要求され、内閣総辞職を行い、トルコ皇帝はこれを聴許した。
摩洛哥借款決定 29日上海経由ロイター社発
タンジールの商民社会は、新モロッコ借款の決定について、非常に満足している。又主にドイツの資本によるララシェ築港の件は今回発表された。