期日 | 日本関係 | 期日 | 露清関係 | 期日 | 英米関連 | 期日 | 独仏その他関連 |
7月7日 | 伯西行日本移民 | 7月1日 | 波斯内乱後報 | 7月6日 | 民主党大会予報 | 7月3日 | 欧州兵独害陰謀 |
7月8日 | 日本人問題討論 | 7月5日 | 波斯政局後報 | 7月9日 | 回航艦隊出発 | 7月4日 | 波斯王の対英抗議 |
7月8日 | 日本人漁夫切望 | 7月8日 | 英露の対波斯助言 | 7月15日 | 英国製艦計画 | 7月5日 | 摩洛哥問題 |
7月10日 | 民主党と日本人排斥 | 7月29日 | 佛大統領着露 | 7月17日 | 南阿印度人排斥 | 7月10日 | 独逸新聞の佛国攻撃 |
7月11日 | 凶暴なる排日論者 | 7月18日 | 米国艦隊布哇着 | 7月14日 | 佛領印度不穏 | ||
7月12日 | 東洋人排斥宣言 | 7月19日 | ボンベイ紡績工場罷工 | 7月15日 | 佛領印度支那守備 | ||
7月16日 | 日本労働者問題 | 7月24日 | 印度革命熱減退 | 7月19日 | 摩洛哥僭王談 | ||
7月23日 | 豪州人の意気込 | 7月24日 | 米国艦隊出発 | 7月21日 | 土耳古陸軍不穏別報 | ||
7月27日 | 孟買紡績罷工蔓延 | 7月23日 | 独逸戦闘艦進水 | ||||
7月30日 | 英獨両国関係論 | 7月26日 | 土耳古憲政論評 | ||||
7月28日 | 青年団の主張 | ||||||
7月31日 | 土耳其憲政確立 |
7月1日
波斯内乱後報 30日タイムス社発
テヘラン来電―露国大佐リアコフに現在よりも一層重大な権力を付与する布告が、今回新たに発令された。又英国公使館は、現在も猶厳重に包囲されている。
民主党の候補者(ブ氏の日本人非排斥) 29日桑港特派員発
7月7日からコロラド州デンバー市で開会する民主党大会に於いては、大統領候補者にブライアン氏を推薦することは争う事の出来ない事実であり、他の候補希望者は自然に隠退の様子である。西部諸州から選出された代議院等は民主党の綱領の中に日本人その他、一切のアジア人を排斥する一項を入れる事をブ氏に要求したが、ブ氏は、今はその時期ではないとの意見を漏らした。
7月2日
英国公使抗議 1日タイムス社発
テヘラン来電―英国公使は、ペルシャが公使館を包囲し、英国に無礼を加えた件に就いて抗議し、同時に近衛騎兵の乱暴を詳細に陳述した公文書を国王に送った。
印度問題討議 同上
英国上院に於いてインド問題の討議が行われた。その際注目すべき出来事は、インド大臣モーレー卿が何者であっても反乱計画者を厳重に処分して、秩序を維持する態度に決して変更は無く、又政府はペンゴールの行政方法を変更する意思が無いと公言したが、議員は一般に深くこれに賛成した。
7月3日
婦人参政権論者騒動 1日上海経由ロイター社発
英国首相アスキス氏が婦人参政権論者総代の接見を拒絶した為、ウエストミンスターに於ける同派の行列は、一揆的な光景を呈し、群衆は突進を試みたが多数の警官等がこれを制し、婦人29名を捕縛した。又その際ダウンング街の首相邸の窓ガラスが破壊された。
加奈陀の阿片問題 同上
オタワ来電―労働次官キング氏は、バンクーバー事件の清人損害賠償に関する報告の中で、この要請者の内には阿片製造所2カ所があって、おのおの膨大な利益を占めている事に言及し、且つカナダに於いて阿片売買禁止の法律を制定する事を提起した。
欧州兵独害陰謀 2日上海経由ロイター社発
サイゴン来電―白人の兵士2百名が突然発病したが、これは海賊達が土民の下士官と結託し、反乱を起こす目的で、同兵士全部を毒殺しようと計画したものと言われている。なおこの事件の調査は既に開始された。
7月4日
佛領印度予算 3日タイムス社発
パリー来電―諸新聞はインドシナに於ける兵力削減を非難しつつある。同予算は今回60万ポンドに減少された。
現在佛国を旅行中の一人のインドシナ官吏は、新任総督クロブコウスキー氏に対し、安南の平和は正義と親切な行為によって回復されるであろうと語り、総督はその言に同意する意味の返答を与えた。
波斯王の対英抗議 2日上海経由ロイター社発
ドイツ人側のテヘラン電報によれば、ペルシャ王は、英国公使館が政治的逃亡者の同館内に避難する事を許可している件に就いて、英国皇帝に苦情を訴えたのに対し、英国皇帝は多数の刑罰が一切の審問を経ずして行われている事実を指摘し、その為公使館の態度を正当とする旨回答を送った。なおこの件に就いて英国外務省は、英国皇帝及びペルシャ国王間の電信往来は事実であるがその内容を発表できないと言明した。
7月5日
波斯政局後報 4日タイムス社発
テヘラン来電―ペルシャ国王は、憲法を維持する意思を発表した。但し来る10月の新議会の総選挙は、到底候補者を得ることが不可能であろうと思われる。
露国銀行は至急に約150万ポンドに上る債権を回収しようとし、債務者である商人は支払いに苦しみ、又もや商店を閉鎖し始めている。
摩洛哥問題 同上
ベルリン来電―モロッコ僭王ムライ、ハツイドの使節等は、武器等の注文を行った後、当地を出発し、ウロンドに向かった。佛将軍がモロッコのアセムル港を占領した件について様々な議論がある。諸新聞はその占領が永久的であろうと想像している。
パリー来電―政府はダマド将軍に打電し、先に与えた権限を越えてはならないとの意味の訓令につき、更に注意を促した。
加奈陀の阿片禁制 4日上海経由ロイター社発
オタワ来電―政府は薬用としての外、一切の阿片の輸入、製造、売買を禁止する議案を議会に提出した。
7月6日
米比自由貿易 7日上海経由ロイター社発
マニラ大会は、米国とフィリピン間の自由貿易を許可する様米国国民に訴える議案を可決した。
民主党大会予報 4日桑港特派員発
ブライアン氏は、来る7日からコロラド州デンバー市で開く民主党大会に於いて、選挙運動費用を公表する法律の制定を政策綱領の中に入れなければ仮令大統領候補者に選挙されたとしても受託しないであろうとの意見をネブラスカ州ブライアン倶楽部に於いて漏らした。民主党の綱領と共和党のそれと異なるのはこの一項を入れるかどうかにあり、他は大差が無い。
カルフォルニア州初め太平洋沿岸を代表する議員達は、是非政策綱領の中に日本人排斥条項を入れるよう盛んに運動中であるが成功しないと思われている。
7月7日
伊国遠征隊派遣 6日上海経由ロイター社発
イタリー外相チットニ氏は、最近のアビシニア境界割定条約に於いて、イタリーに譲渡された地方を占領する為に近々遠征隊を派遣するであろう旨宣言した。
解説:エチオピアは当時アビシニアと呼ばれており、イタリー領のソマリアと国境を接していた。
伯西行日本移民 5日ベルリン特約通信社発特約
4月下旬笠戸丸で横浜を出発し、サン、パウロに向かった第一回の日本移民8百名は、無事その行き先に到着し、大歓迎を受けた。
7月8日
英露の対波斯助言 7日タイムス社発
露都来電―露国政府は、在テヘランの英国公使館に加えられた無礼に関する英国対ペルシャ国王の報復要求を強く応援中であり、又外相イズウオルスキー氏は、ペルシャ国王が英露両国の助言する議会再会及び憲法遵守の件を容れるであろうと確信している。
日本人問題討論 同上
オタワ来電―ヒユフス大佐は、下院に於いて日清両国人の多数が英領コロンビア州に入り込む事に言及し、政府は帰化を許可する人物に就いて十分に注意しなければならず、彼等は英帝国に忠実なものである事が必要である。然るに日清両国人の如きは、一朝事ある場合には、果たして身を帝国に捧げるかどうかは疑わしいと陳述した。そして内閣諸大臣は、これに対して終始沈黙を守っていた。
日本人漁夫切望 6日桑港特派員発
英領コロンビア政府が新たに発布した漁業条例を履行した結果、多くの白人に許可されたけれど、日本人に許可証を交付されたものは僅かに3名に過ぎず、数百名の日本人は許可証を待っていたけれど望みが無くなり、フレザー河に於ける日本人の漁業は全滅しようとしている。
解説:明治41年6月30日「日本漁業家窮伯」に関連記事がある。
米国艦隊西行準備 6日ベルリン特約通信社発
米国大西洋艦隊は、サンフランシスコに於いて、いよいよフィリピンに向け抜錨する準備を行っている。又スパーリー提督は、米国政府からマニラに太平洋常備艦隊を残し、その残余を率いて帰国するよう命じられた。
解説:この艦隊については、本紙に明治40年12月16日バージニア州を出発してから、南米大陸の最南端マゼラン海峡を通峡し、明治41年1月4日サンフランシスコ到着までの記事が掲載されている。(明治40年12月17日「米国艦隊愈出発」、明治41年5月8日「回航艦隊桑港着」等)
7月9日
独逸艦隊回航 8日タイムス社発
ベルリン来電―ドイツ海軍は、常に純粋に国防の為にのみ準備されているとして紹介されているにも拘わらず、今回海軍官憲は、米艦隊回航の教育的価値が深い事を感じた結果、近い内にその前例に倣って戦闘艦17隻、巡洋艦10隻を大西洋のアゾレス諸島及びカナリー諸島に回航させるであろうと伝えられる。
英波談判 8日上海経由ロイター社発
ロンドンタイムスのテヘラン特派員によれば、露国はペルシャが英国公使館に加えた無礼に対する英国の賠償要求を飽く迄も応援中であり、ペルシャ王は十分な謝罪を行うのではと言われている。外相サー、グレーは、下院議員ジロン氏の質問に答えて、在テヘラン英国公使館は、その周囲に兵士を配備してこれを保護している。又この事件は未だ決定していないが満足な解決を希望すると言明した。
回航艦隊出発 7日桑港特派員発
大西洋艦隊戦艦16隻は、愈々7日午後3時ホノルルに向け当港を回覧した。
7月10日
独逸新聞の佛国攻撃 9日タイムス社発
ベルリン来電―佛国のモロッコ政策に対し新聞紙の怒気満々たる反対運動が起こり、盛んに佛人の不信、不正直を攻撃中である。その為に政府の行動も多少邪魔された観がある。
佛国摩洛哥費莫大 9日上海経由ロイター社発
佛国下院の予算委員会は、モロッコに関する費用の為に約9千6百万フランの不足を生ずる恐れがあると報告した。
民主党と日本人排斥 8日桑港特派員発
オレゴン州選出の代議士インマンニ氏から、日本人を含むアジア人排斥条項を民主党の綱領起草委員会に提出された。その要旨は、東洋労働者は、我が国内、特に太平洋沿岸に多く、彼等は合衆国労働者の生活を危うくするものであり、我々は一層厳重にアジア人の入国を禁止する法律を直ちに制定しなければならないと云うにある。同人は又太平洋沿岸を防備する為に太平洋艦隊を留置する必要を主張した。
7月11日
波斯謝罪問題 10日上海経由ロイター社発
英国外相サー、グレーは、下院議員ロンスデール氏(保守派)の質問に対して、先に政府に要求した公使館事件の謝罪は、同政府がこれを行いそうな様子である。又同政府が満足に謝罪するまでは、今回の事件は決して終結するとは言えないと答弁した。
北部波斯形勢 同上
露都来電―ペルシャのタブリラ市に於いては、食糧が欠乏した結果、次第に不穏な情勢となっている。商店は閉鎖し、群衆は礼拝堂に集合し、政府に反対する運動を行いつつある。
凶暴なる排日論者 9日桑港特派員発
米西戦争の時、サンチャゴを閉塞した勇士で、北アラバマ州選出の下院議員であるトムソン大佐は、昨日民主党大会に於いて驚くべき暴言を吐き、議場の混乱を惹起した。
彼は先ず日本は2千万の精兵を備えて、米国との戦争を待っていると喝破し、更に大統領ロ氏は、以前予の面前で日本との戦争を免れる事は出来ないと告白した。若し民主党が次期選挙に成功すれば、その政権中に外国との一大戦争を行わなければならないであろう。故に速やかに日本人を排斥し、海軍の大々的拡張を綱領の中に加えるべしと放言した。
この演説中、終始ノー、ノーと叫び、馬鹿と叫び、満場から終始、怒号と罵声を受けた。この演説は南北戦争以後の党大会に於いて最も人望なき演説と称せられる。(一部抜粋)
7月12日
波斯謝罪 11日タイムス社発
テヘラン来電―ペルシャ王及びペルシャ政府は英国公使館に対する無礼を謝罪した。なおペルシャ王は新たに勅礼を発して、公正な政治と裁判所の設置を公約した。
東洋人排斥宣言 同上
太平洋沿岸の委員は、民主党の綱領の中に、東洋人を排斥する宣言がある事を見て拍手喝采した。単に選挙の目的を達する為にこの様な政策を乱用するのは、日本人として了解に苦しむ所であり、この様な思慮に欠ける挙動は、勢い日米関係を阻害せざるを得ない。しかしこの様な態度は、恐らく民主党の多数の感情を代表したものではないと思われる。
7月13日
英海軍演習 12日上海経由ロイター社発
英国海軍の大演習に関連する一作戦として、昨日水雷艇19隻で編成された一隊が、突然テームス河を遡り、各所に投錨した。内8隻は、ロンドン橋に到着した。この様な前例のない光景で、多数の群衆が付近に参集した。なお今回の演習の重要な目的は、テームス河を占領する事であると伝えられる。
7月14日
波斯謝罪 13日上海経由ロイター社発
テヘラン来電によれば、ペルシャ外務大臣は、軍隊で英国公使館を包囲した件に対して、英国公使に対し謝罪した。
佛領印度不穏 同上
安南国民軍検査官ズパリ氏は、パクニン州に於いて盗賊と戦闘中に殺害された。又某安南人教授及び通訳は、欧州人殺害の暴動を教唆した疑いで、セプトパコダスに於いて捕縛された。
パリーからの報道によれば、印度支那駐屯の普通交代兵は、この際急遽派遣されるであろうと言われている。
7月15日
英国製艦計画 14日上海経由ロイター社発
英国下院議員リー氏(保守派)は、政府の建艦計画を非難し、1912年になると独逸は、ドレッドノート型及びインビンシブル型の軍艦で英国よりも優勢となるであろうと指摘した。
しかし海軍卿マクケナ氏は、これに対し次の答弁を行った。
1911年に於いて、英国は猶三つの型の軍艦全てで優勢を維持し、特に諸旧型の軍艦の優勢は一層大である。又1912年については現在の所はっきりしていないが、来年度の計画を決定する場合には、十分これを研究し、全ての諸外国軍艦の増加を参照して、1912年まで我の安全を維持する為に必要な全ての方法を講じるであろうと言明した。
佛領印度支那守備 13日ベルリン特約通信社発
佛国政府は兵卒2500名、将校470名を印度支那に派遣した。なお引き続き更に5千の軍隊を増派する予定である。
7月16日
日本労働者問題 14日桑港特派員発
ワシントン来電―米国政府の官吏は、日本人が入国後下級の職業に従事する事を発見し、今や米国政府の間に労働者問題の解釈について、更に交渉中である。日本は、国務省の提案を入れたと思われるけれども、商人、学生、その他入国できる資格で渡米し、上陸後直ちに労働者となるけれどもこれを送還する手段がない。唯一の希望は、日本政府が旅行券を発行する際、調査を一層厳重にすることのみである。同時に米国政府は、入国後に於ける日本人の動静を厳重に監視する為、新たに20人の監視人を増加した。
本年度上半期の日本移民 同上
本年度初めより5月31日までの日本移民は、2、699人であり、昨年同期間は4,875人であった。
7月17日
南阿印度人排斥 16日上海経由ロイター社発
ビートルマリツベルグ発―1908年12月31日以後は、一切インド人に営業許可証を発行せず、又同日、インド人には一切の営業許可証を保有する事を許さないと規定した法案は、満場一致で南アのナタル州会の第二議会を通過した。
米国大使の談話 15日桑港特派員発
駐日米国大使オブライエン氏は当地に到着し、次の様に語った。
満州鉄道の行為に関しては、米国の商業を傷つけるとの非難が少なからずある。しかしこの鉄道が日本人に対して運賃を割り引いているのは事実であるが、米国品であるとの理由で我々に対して特殊な不都合があるわけではない。又米国艦隊の来訪は、日本で盛んに話題になっており、艦隊の日本訪問は、両国の関係を一層親密にさせる上で大いに効果があるものと思われる。日本は又移民問題について米国と争議を起こす事を好まず、自ら適切な政策を取りつつあり、林、小村両氏とも米国の友人であるので、内閣の変動も何等我が国に損害をもたらさない。
7月18日
波斯官兵暴行 17日タイムス社発
露都来電―在タブリツ新聞通信員の報道に依れば、秩序回復の任務を帯びて派遣されたペルシャ騎兵隊は、却ってほしいままに暴行を行った為に、露国商人は多大の損害を蒙った。又殺害された者は既に17名に達している。
南阿撤兵及郵便予算 17日上海経由ロイター社発
英国陸軍卿ハルデン氏は、本年7月9日より来年2月6日までに、騎兵1隊、歩兵4個大隊を南アより撤退させる予定である旨宣言し、又郵政総監パクストン氏は郵便予算が約375万ポンドの剰余を生じる見込みである旨言明した。
米国艦隊布哇着 16日桑港特派員発
大西洋艦隊は、16日正午ホノルルに到着し、盛んな歓迎を受け、日本人も熱心にこの歓迎に助力したと良い評判であった。同艦隊中の第三戦隊はホノルルに行かず、ダハイチに向かった。
佛国と摩洛哥 16日ベルリン特約通信社発
佛国は、マアラグスの佛人がモロッコ王アブダル、アジツを援助する事は無いであろう旨非公式に表明し、又モロッコに於ける佛国軍隊の任務は、単に一時的な性質に過ぎない事を痛切に言明した。
7月19日
北部波斯紛櫌 18日タイムス社発
タブリツ来電―情勢は俄然一変し、市民は一致して官軍に反抗する事に決定した。市民が猛烈に官軍の本隊を攻撃した為に、司令官は騎兵隊を市外の村に引上げたが、この際多数の死者が発生した。なお群衆は国王に味方しているものの家宅を襲い、恣に略奪をした。
解説:ペルシャの北部は露国の勢力圏、南部は英国の勢力圏であるが、現在内乱中である。
孟買(ボンベイ)紡績工場罷工 18日上海経由ロイター社発
ボンベイの紡績工場労働者1400名は、昨日同盟罷工を起こし、この罷工に加わらなかった諸工場を襲い、窓ガラスを破壊し、且つ2名の欧州人を商店内に閉じ込めた。その為警官が出動し発砲するに至ったが死傷者数は不明である。
摩洛哥僭王談 同上
モロッコ僭王ムライハフイドは、ポスト新聞のフエツ通信員に対し、自分は欧州人に対し敵意を持たず、むしろ国内の発展の為には欧州人の来訪を希望している。又アルゼシラズ会議の規程は一々これを遵奉するつもりであると語った。
解説:1906年スペインのアルヘシラスで行われた列国が参加した会議で、結果的にモロッコはフランスの保護国となったが現在内乱中であり、僭王側が有利に戦っている。
杜伯の露国政府攻撃 17日ベルリン特約通信社発
露国政府が取っている言論弾圧の政策を攻撃し、且つ自己を禁固とする様要求しているトルストイ伯爵の宣言書に対し、英佛両国の諸新聞は、盛んに論評を行っている。
解説:トルストイ伯爵とは「アンナ・カレーニナ」や「戦争と平和」を書いた文豪トルストイ伯である。
7月20日
佛国大統領外遊 19日上海経由ロイター社発
佛国大統領ファリエル氏と同外相ビション氏は、スエーデン、ノルウエー両国宮廷を訪問し、更にレボールに於いて露国皇帝と謁見する目的をもってパリーを出発した。又大統領はダンケルクを出発の際、今回の旅行の目的は、欧州諸国民の融和と世界平和の基礎である親交と同盟の結束を一層密接とする事にあると言明した。
7月21日
土耳古陸軍不穏別報 20日上海経由ロイター社発
モナスチル司令官オスマン、ヒデエト将軍が兵士に対して、トルコ国王の電報を読み聞かせている中、一人の将校がこれを狙撃し、重傷を負わせた。これは先に捕縛された青年トルコ党員の将校38名を赦免しないならば、マケドニアに居る各司令官を悉く殺害するであろうとの報告を一部将校が、コンスタンチノープル官憲に通知した報告書が、着々と事実として現れたものと考えられる。
チクベシュの軍隊も叛乱を起こした。
7月23日
波斯官兵敗北 22日タイムス社発
タブリツ来電―去る火曜日官軍が新たに援軍を得た結果、一時退いて堡塁を守らざるを得なかった革命軍は、今日、官軍と激しい戦闘の末に遂にこれを敗走させた。
独逸戦闘艦進水 同上
ベルリン来電―1万8千トンの新型戦闘艦が来る8月22日、スゲツチン港に於いて進水式を挙行する予定である。同艦は1907年度海軍計画に基づく最初の新型軍艦であり、僅か1年で竣工した。
解説:当時独逸は、海軍大臣テルピッツの下で英国との間で激しい建艦競争をしており、日本やアメリカを凌ぎ英国に次いで、世界第2位の海軍国であった。
豪州人の意気込 22日上海経由ロイター社発
ウエリントン来電―ニュージーランド首相ワード氏は、米国艦隊の豪州訪問は、決して外国人の訪問として見てはならず、親族の国民として大切に遇さなければならない。豪州及び太平洋諸島の支配権が白人の手に落ちるのか、はたまた東洋人の手に落ちるのかを決定する為に、アングロサクソン民族として戦闘する日が必ず来るであろう。そしてその際、英国と協同して奮戦するものは米国艦隊であると言明した。
解説:ニュージーランドは、明治40年英国の植民地から自治領となっている。
既に大東亜戦争を予言している記事である。
7月24日
印度革命熱減退 23日タイムス社発
インドのカルカッタ府からの報道に依れば、叛乱に対して厳格な手段を取って以来、ベンガルの情勢は大いに改善して来た。
又ロンドンタイムスは、煽動家の首領である新聞記者のチラクが6カ年の流刑に処せられた件を評論し、これは今回計画された鎮圧手段が実行されている事を示すと云う事ができる。これと同時に正直な改革論者の実行可能な希望を容れるために、以前誓約した様に新改革方法を講じるであろうと述べている。
南阿鉱山閉鎖 23日上海経由ロイター社発
南アフリカのデビヤースに於いて、同地鉱山を閉鎖する事に決定した。その結果白人2百名、土民千2百名が解雇されざるを得ない事になった。
米国艦隊出発 22日桑港特派員発
米国大西洋艦隊は、22日午後6時ニュージーランドに向けてホノルルを出港した。
解説:関連記事が次にある。
7月8日「米国艦隊西行準備」、9日「回航艦隊出発」、18日「米国艦隊布哇着」
7月25日
波斯北部櫌亂 24日タイムス社発
タブリツからの特報によれば、今や戦闘は下火となったが、国王の反対党は武力で脅迫しつつ、軍費を募集している。又官兵は遂にテヘランに向け出発したが、旅費に窮して、慈善的寄付金ヲ募集した。
英国軍制問題 同上
英国陸軍卿ハルデン氏は、新軍政に関する演説に於いて、次の様に述べた。
英国は比較的完全な組織を有し、そして遠からず帝国防衛の為に30個師団を有する事になるであろう。又独立の植民地軍隊及び海軍は、1909年に於いて今ここで明言できない二三の理由により、なお依然として優勢を保持するであろう。そして優勢な海軍と強大な予備軍は、相まって必要である。
解説:1914年の第1次世界大戦まで6年
米国大統領演説 23日上海経由ロイター社発
米国大統領ルーズベルト氏は、ニューポートに於いて主要な海軍将校達に対して次の様な演説を行った。
米国が必要とするのは最優秀の海軍であり、そうでなければ持つ必要が無い。純然たる沿岸防衛だけの海軍に至っては何等の価値も無い。又戦闘艦隊の回航は、モンロー主義の実行に対して有益な教訓を与えたものと云うことができる。米国民は他の口出しに対して、何人に入国を許すかを定める自己の権利を守る準備をして置かなければならない。
7月26日
土耳古憲政論評 25日タイムス社発
ロンドンタイムスはトルコ皇帝が青年トルコ党の革命運動が益々軍隊に蔓延し、自己の境遇に危険が迫って来たのを見て、俄かに憲政政治の実施を定めたのは、機敏の極みであると言える。しかし直ちに現れる結果としての現実は、寧ろマケドニア問題を紛糾させるだけであろう。そして新政治が成功するまでには幾多の日期を経過せざるを得ないであろうと言明した。
解説:トルコ皇帝の専制に危機感を強めていた近代教育を受けた青年将校達が、マケドニアで蜂起し、1908年無血革命に成功している。
クエベック三百年祭 24日桑港特派員発
昨日開催されたカナダのケベック三百年紀念祭は、チャンブレン紀念碑の前で行われ、英国皇太子、米国副大統領フエヤバンクス氏等が出席し、極めて盛会であり、皇太子及び副大統領等の演説があった。
7月27日
孟買紡績罷工蔓延 25日上海経由ロイター社発
ボンベイの諸市場は悉く閉鎖し、各紡績工場では昨日罷工が行われた。又同日午後暴動が始まり、官兵と罷工者の間で数回の衝突があり、多数の死傷者が発生した。
日韓人衝突 26日上海特派員発
7千名の朝鮮人は、吉林省と朝鮮の国境に於いて、日本人と戦い、日本兵40名、同将校3名を殺害したとの情報があった。又朝鮮逃亡者は、続々と吉林に入って来ているので、清人は境界の防御に努めている。
7月28日
土国人民狂喜 27日上海経由ロイター社発
コンスタンチノーブルに於いて、群衆が隊を組んで政庁に来て、狂喜して憲法を歓迎し、皇帝万歳を唱えた。新聞紙もまた特に皇帝に対して感謝の辞を電送した。
青年団の主張 同上
トルコ青年団の首領ユーベルベー氏は、サロニカから新聞に寄稿して、サロニカの住民は、トルコ人、ブルガリア人、セルビア人の区別なく、悉く自由な第一日を祝す事に同意した。皇帝が若し我々の要求を入れ給わなければ、我々はコンスタンチノーブルに進入するであろうと述べた。
7月29日
佛大統領着露 28日タイムス社発
レーウエー特電―露国皇帝は、佛国軍艦ウエリテ号の甲板上に於いて、佛国大統領と長時間の密談を行った。その密談の大部分は、独逸と英、仏、露との関係に就いての相談と思われる。
土耳古国民狂喜 27日上海経由ロイター社発
日曜日、1万人の行列がトルコ皇帝の万歳を唱える為にイルジツキオクスに赴いたが、警吏や兵士が出動しないにも拘わらず完全に秩序を維持した。又憲政実施宣言の驚くべき結果の一つは、現在まで互いに敵視していたイスラム教とキリスト教である民族が融和、親愛する様になった事である。
政府が雇っていたスパイ制度を廃止する勅礼が下された。
和蘭の委瑞内拉砲撃 27日桑港特派員発
オランダ政府は、ベネズエラ大統領カストロ氏が、謝罪声明文を出さないならば、同国の沿岸を砲撃するとして、米国領海内に居る同国軍艦に集合するよう命じた。ワシントンでは、オランダの強硬な態度が頑冥なカストロ大統領を反省させる事になるであろうと喜んでいる模様
7月30日
英獨両国関係論 29日タイムス社発
英国外務卿サー、グレーが、英佛露間の親交は決して独逸を孤立させる目的を持たないと言明した。ロンドンタイムスは、これに関する社説に於いて、英国の本当の危険は独逸のある有力な部門に存在する野心にある。故に十分にこれを注意、監視すると同時に又必要な準備を行う事は、英人の国民的義務でなければならないと主張した。
土耳古の親英熱 29日上海経由ロイター社発
コンスタンチノープルの人民が狂喜しているが、その特徴の一つは、親英感情の勃発にある。これは、今回、政治体制の変動をもたらしたのは英国の諸制度の効果であり、それが大きな影響を与えたと信じられている事に起因している。
7月31日
土耳其憲政確立 30日タイムス社発
コンスタンチノープル来電―トルコ皇帝は憲法を順守するとの宣誓を行った旨布告した結果、一般人民は非常に満足した。又改革党員等は政府が難局に当れる事を確認した為に、一般人民の煽動的行為を中止する事を勧告している。
鉄道運賃引上問題 29日紐育特派員発
昨今の大問題は、米国全般の鉄道会社がその運賃を引き上げようとしている問題である。現在、製造業者や貿易業者等は一致して反対運動を行っており、又中央政府の意向も運賃引上げには反対である。然るに29日のヘラルド新聞はシカゴ発の電報を載せているが、9つの大鉄道会社は、東洋の貿易品の取り扱いを中止しても運賃を引き上げるであろうと述べている。これは未だ信じるに足らないと情報と思えるが、とにかく米国産業界及び東洋貿易上の大問題である。