期日 | 日本関係 | 期日 | 露清関係 | 期日 | 英米関連 | 期日 | 独仏その他関連 |
5月1日 | ハリス博士警戒 | 5月24日 | 波斯内閣辞職 | 5月3日 | 太平洋艦隊配備請願 | 5月1日 | 独逸海軍熱高潮 |
5月10日 | 労働次官の排日論 | 5月25日 | 露波国境紛議 | 5月4日 | 回航艦隊桑港に近く | 5月2日 | 極東航路補助案 |
5月13日 | 亜細亜人排斥協会 | 5月5日 | 米国海軍政策標準 | 5月3日 | 独逸野心満々 | ||
5月16日 | 排日煽動檄文 | 5月6日 | 埃及小乱 | 5月3日 | 暹羅の排佛運動 | ||
5月18日 | 米国官人の僻目 | 5月6日 | 印度反乱後報 | 5月3日 | 佛国遠征隊虐殺 | ||
5月18日 | 日本人渡米数減少 | 5月7日 | 印度境界紛擾 | 5月5日 | 阿富汗蠢動 | ||
5月21日 | 米国官吏の醜態 | 5月8日 | 印度移民問題解決 | 5月10日 | 摩洛哥事件発展 | ||
5月22日 | 日米紛議解決 | 5月8日 | 回航艦隊桑港着 | 5月15日 | 摩洛哥警察隊 | ||
5月9日 | 太平洋艦隊常置請願 | 5月15日 | 摩洛哥僭王の密使 | ||||
5月13日 | 印度人殺害者処刑 | 5月17日 | 摩洛哥戦闘公報 | ||||
5月13日 | 英国軍隊不穏 | 5月21日 | 摩洛哥内乱後報 | ||||
5月14日 | 稀有の不景気 | 5月26日 | 摩洛哥僭王入場 | ||||
5月17日 | 阿富汗問題質問 | 5月27日 | 独逸国民の煩悶 | ||||
5月18日 | 太平洋海 | ||||||
5月20日 | 巴奈馬運河工事 | ||||||
5月20日 | 印度国境櫌亂後報 | ||||||
5月20日 | 労働同盟活動 | ||||||
5月23日 | 米国労働同盟跋扈 | ||||||
5月26日 | 欧州移民の帰国 |
5月1日
独逸海軍熱高潮 30日タイムス社発
ベルリン来電―独逸海軍協会の年報によれば、最近の総選挙以降、協会の内部に種々の異論や紛争があったにも拘らず、会員の現在数は百万以上に達した。なお所謂海軍博覧会を契機として同協会は数千の冊子を発行し、且つ海軍の問題に関し七百余題の講演を行ったそうである。
ハリス博士警戒 29日紐育特派員発
米国政府は、ハリス博士を護衛するために金門号を沖に出し、29日朝入港のコレア号からハリス博士を同号に移乗させ、警官が厳重に護衛しながら埠頭に送り、午後6時の汽車で東部に出発させた。
解説:ハリス博士は、メソジスト監督協会宣教師で、日本を愛し、明治期の日本人クリスチャンに大きな影響を与えた人物である。クラーク博士の依頼により札幌農学校で信仰の指導を行い、内村鑑三、新渡戸稲造等も洗礼を受けている。
1904年に日本及び朝鮮の宣教監督となっており、朝鮮の実情にも詳しく、その進歩発展は伊藤統監の統治にあると認めている。
3月25日「スチーブン氏遭難」の記事に書かれているように、日本の統治の成功を認める人物が韓国人テロリストにより襲撃され、その後死去している為にハリス博士は、この記事にある様に韓国人によるテロを防ぐために護衛されている。
5月2日
英国新聞の同情 5月1日タイムス社発
日本軍艦松島の沈没に対し、英国諸新聞、特にロンドンタイムスは同盟国民である日本人に向かって、極めて深い同上を表し、且つ日本海軍軍人が勇敢でであり規律正しい事を称賛した。
解説:練習艦隊の軍艦松島は、30日早朝、多くの海軍兵学校生徒を乗せ台湾の馬公に錨泊中、火薬庫の爆発により沈没した。
極東航路補助案 1日上海経由ロイター社発
独逸帝国議会は、5票対24票の多数で航路補助案を予算委員会に付託した。独逸政府は、独逸の極東貿易の非常な発達を説明し、熱心にこの案の通過を希望し、且つ北独逸ロイド汽船会社は、補助金額の増加がなければ独逸領ニューギニア、日本、豪州間の航路を維持する事が出来ないと説明した。
5月3日
独逸野心満々 2日タイムス社発
ベルリン来電―独逸政府が極東方面に於ける独逸の海運業を保護奨励するのは、英国を凌いで豪州貿易の大部分を独逸が奪おうとしている為と考えられる。そして独逸は昨今、盛んに豪州新聞の御機嫌を取りつつある。
暹羅の排佛運動 2日上海経由ロイター社発
パリー来電―によれば、バタムバン市及び同地方のシャム土民は、佛国に占領された事を憤り、盛んに騒動を起こしつつあり、同地方の欧州人は印度支那銀行内に避難した。
解説:シャムは、現在のタイであり、独立国であったがこの記事の様にフランス領インドシナから領土を侵食されていた。結局このバタンバン市はカンボジャ領となり、現在カンボジャの北西部に位置するバッタンバンである。
太平洋艦隊配備請願 1日桑港特派員発
加州及び布哇を主とし太平洋沿岸諸州の各知事は、艦隊を永遠に太平洋に留める事を希望する請願書(海軍省に提出予定)に署名したが、その要旨は次のとおりである。将来太平洋は、商業の焦点になると思われ、一朝同方面に事があれば、沿岸諸州が被ると思われる損害は莫大になるであろう。それ故少なくとも戦艦12隻、装甲巡洋艦8隻を備える必要がある。
佛国遠征隊虐殺 1日ベルリン特約通信社発
モロッコのモンタニア土民が蜂起し、佛国遠征軍が虐殺され、僅かに1名だけが難を逃れた。
5月4日
土耳古の危惧 2日上海経由ロイター社発
露国はペルシャの動乱に乗じ、秩序回復を名目として、この際ペルシャの領土を占領しようとする情勢にあるのではと、コンスタンチノープルでは危惧を抱いている。そして露国は、コーカサスに於ける軍隊の行動に関して、トルコ政府の質問に答えて、これはトルコを目的とするものではなく、単に露国内の状態に起因するものであると通知した。
阿片禁止協会年会 3日上海経由ロイター社発
駐英清国公使は、阿片禁止協会の年会に出席した。司会者サー、ダツゾウォース氏は、公使の出席に対して歓迎の辞を述べ、且つ清国政府が断固として阿片禁止に尽力する事を慶賀した。当日同会は、清国政府及び人民が阿片禁止を決行しようとする熱心な気力を称賛する決議案を可決した。
回航艦隊桑港に近く 2日桑港特派員発
米艦隊は、当港から百マイルのモンテレー湾に投錨し、盛大な歓迎を受けた。サンフランシスコの市内はイルミネーション、国旗で飾られ、全ての準備が完全に整い、日本人のごときも3千ドル近くを寄付した。1日夜米国海軍卿がオークランドに到着し、一般市民の歓迎を受けた。今後数日間、艦隊の到着の為に大混雑を極めると思われるので、当市は、大いに注意して負傷者を出さないよう警告した。
解説:モントレー湾は、サンフランシスコの南約70マイルにあり、当時の艦隊は約6時間で到着できると思われる。この艦隊は40年12月17日に東海岸を出発しアルゼンチンの南端、マゼラン海峡を通過し間もなくサンフランシスコに到着しようとしている。
12月17日の記事「米国艦隊愈出発」回航艦隊は、いよいよ月曜日(本日)、太平洋に向け出発する予定である。軍艦の隻数53隻、砲数850門、乗組員1万6千人、回航総費用約2千万円である。
5月5日
阿富汗蠢動 3日タイムス社発
シムラ来電―ランジコタルを襲撃した多数のアフガン人の中にはアフガンの正規予備兵がいる。従って現在英国とアフガニスタンの間には不正規の戦争が行われている事になる。そして多数のアフガン官吏は、英国が管轄する領土に対する襲撃を熱心に援助し、アフガン政府も亦熱狂的な土民のこの襲撃を制止しようとする様子が見られない。
モロッコ事件 3日ベルリン特約通信社発
モロッコ事件に関する独逸の外交始末書が発行された。この始末書にはアルゼラス協約に関して、多数の顕著な佛国の宣言を収録してあり、同協約に対する独逸政府の説明が誠実であり、平和的な態度を取っている事を証明している。なお同始末書には、タンジールに於ける列国の外交官が協同一致の歩調を取っている事も証明し、その他同始末書の所々に散見される文書によれば、独逸はモロッコの正僭両王が佛軍追撃の際、その干渉を要請した際にも、これを受け入れず極めて誠実な態度を取っている様である。
米国海軍政策標準 3日紐育特派員発
米国は従来独逸との均衡を保つ事を以て海軍政策の標準とした。そして今回大統領の希望する戦艦4隻建造案は両院で敗れたが、尚独逸に対しては依然優勢を保つ事が出来ると考えられる。
5月6日
埃及小乱 5日タイムス社発
カイロ来電―英国官吏を殺害した熱狂的な土民の一隊と官軍との間に戦闘があった。その結果官軍の将校、下士卒10名が戦死し、23名が負傷した。ブリュナイルの知事も又この負傷者の一人である。但し土民達は今や完全に撃退された。
印度反乱後報 4日上海経由ロイター社発
印度モモズフェルポールに於いて爆発弾を投げた犯人2名が捕縛され、その内1名はその後自殺した。カルカッタの警察は、2個所を捜索して、多量の爆裂弾及び半ば装填した爆裂弾を発見し、約30名の嫌疑者を捕縛した。
阿富汗の形勢 同上
1万乃至2万のアフガン人が隊を組んで境界を越えて、ランジコタルの方面に向かって進行の途中、英兵の屯所を襲ったが撃退された。
5月7日
極東航路補助 6日タイムス社発
ベルリン来電―海洋及び極東における独逸の航海業に対し、是非とも政府の提出する金額を補助する必要があると植民大臣が熱心に主張するにも拘わらず、帝国議会は北独ロイド汽船会社に支給すべき政府要求の補助金を半減した。
印度境界紛擾 5日上海経由ロイター社発
ロイター社が印度西北の国境の形勢に関して、信頼すべき筋から聞いた所によれば、同紛争は決して心配する様な事は無いであろう。又アフガン人の今回の暴挙をもってアフガン王の同意を得たもの、即ち英露協約に対するアフガン王の意見と今回の紛争と関係があるものと信ずべき何らの根拠もない。従って戦闘区域はこの上拡大する事は無いであろうとのことであった。
5月8日
英露協約効果 7日タイムス社発
露都来電―英露両国の疑惑を防止する英露協約の有難味は、今回西インドの国境に起こった騒動によって充分に認識された。ノーウオエ、ウレミヤ紙は、英露両国は領土獲得の目的を以てペルシャとアフガンの境界線上で並進的な行動を採るべきであると評論した。
印度移民問題解決 同上
オタワ来電―印度移民問題は、英国政府と協議の結果、現行移民法の励行を始め、その他印度からの移民を制限するある方法を採用する事に決定し、ここに満足な解決を見たと信じられる。
日米仲裁条約 同上
ニューヨーク来電―今回日米両国間に締結された仲裁条約は、米国と欧州諸国間の仲裁条約を模範とするものであるが、諸新聞はこれを以て日米間に於ける各種紛争問題の解決を意味するものとしている。
回航艦隊桑港着 7日桑港特派員発
回航艦隊は、エバンス提督の統率の下に昨朝9時、モントリ湾を発し、同夜サンフランシスコから9マイルの沖に仮泊し、本朝11時抜錨し、旗艦コネチカットを先頭に戦艦、巡洋艦、水雷駆逐艦、水雷艇、運送船総計43隻がこれに従い、先ず金門湾砲台が礼砲を発射し、旗艦が答礼した。そして艦隊は単縦陣で徐々に金門湾に入り、サンフランシスコ市とオークランド市との間に3列に投錨し、満艦飾を施した。(抜粋)
解説:5月4日の記事「回航艦隊桑港に近く」の続き
5月9日
太平洋艦隊常置請願 8日タイムス社発
桑港来電―米国内の7州及びフィリピンの商業団体は、太平洋が無防備の状態にある事を指摘し、戦闘艦12隻及び巡洋艦7隻を永遠に太平洋に置くよう建議する請願書を海軍卿に際し出した。海軍卿はこれに対して極めて丁重な挨拶を行った。
桑港の艦隊歓迎 同上
米国回航艦隊がサンフランシスコに到着し、熱烈な歓迎受けた。同市は約10日間に亙り同艦隊を歓迎する準備を行った。
阿富汗問題 7日上海経由ロイター社発
英国下院議員リンチ氏は、インド国境の紛争に関連し、英露協約に関するアフガン王と往復した公文があるならば、これを議会に回付する様政府に要求し、又政府はアフガン領土に対し軍兵を動かす場合には、それ以前にアフガン王が印度政府と意見を事にする点を議会に通知するや否やを質問したが、政府委員ブキャナン氏は第一の要求を拒絶し、第二の質問に対しては、現今の情勢に照らし、今日答弁をする事は却って国家の不利であると明言した。
5月10日
摩洛哥事件発展 9日タイムス社発
パリー来電―アルゼリア国境に於けるモロッコ土民の暴動範囲が拡大している事実に鑑み、佛国政府は佛国財務官の指揮の下に、佛人及び土人の混成警察隊を組織し、これで根本的に暴動を鎮圧する事に決定した。但しこれは少しも領土拡張の意図は無く、単に秩序を維持しようとしているのみである。
解説:アルゼリアは佛領であるが、モロッコは佛国の保護国であり、反乱が絶えない。
労働次官の排日論 8日桑港特派員発
新商務労働次官ホイラー氏は、赴任の途中、次の様に語った。
ヨーロッパから移民を輸入する事はカルフォルニア州に於けるアジア人問題を解決する唯一の方法であり、又黄禍の防御手段である。パナマ運河が開通するならばイタリー人等がニューヨークに行かなくてカルフォルニア州に来る者が増加するであろう。私はこれらを農業に導く方針を採るつもりである。
解説:太平洋岸の農園や鉄道の経営者は、日本人等の賃金が安い労働者を欲しがっているが労働組合は大反対している。黄禍とは黄色人種がもたらす禍を意味し、日本が日露戦争に勝利した事により、特に太平洋沿岸の白人は、色人種に対し脅威を感じる様になっている。
5月11日
回教徒討伐 10日上海経由ロイター社発
ウイルコックス少将は、2個連隊を率いて即刻アフガニスタンのイスラム教徒の討伐に向かえと命じられた。
エヴァンズ提督退職 9日桑港特派員発
本日9日朝、エヴァンズ提督はいよいよ正式に大西洋艦隊司令長官の地位を退いた。トーマス少将が代わって司令長官となり、この退任式で辞令書を読み上げ、長官旗を取り換え、13発の礼砲を発射した。なおエヴァンス提督は、本日9日午後の汽車で、家族を同伴しワシントンに帰った。
艦隊乗組員は、9日オークランド市で盛大な歓迎を受けた。
5月13日
阿富汗王答弁 11日タイムス社発
アフガン王は、英政府が印度国境の暴動にアフガン人が加入している件につき抗議した事に対して次の答弁を行った。余はこれらアフガン人に向かって、速やかに引き返す様に命令し、又地方官憲に向かってはこれらアフガン人のインド国境に侵入する事を防止すべきと命令した。
英国海軍教育改革 同上
英国海軍省は、今回重要な訓令を発し、新たに海軍将校教育法を定めた。これは殆ど実際的な性質のものであり、その中には将校は法術、水雷、航海、機関等の専門科に入る前に5年6カ月間引き続き海上勤務をしなければならないとの規定を含んでいる。
5月13日
印度人殺害者処刑 12日上海経由ロイター社発
ロンドンタイムスのワシントン報道通信員の報道によれば、昨年11月オレゴン州に於いてインド人を殺害した両名は終身懲役、1名は懲役6年に処せられた。或いは人種的偏見の為に無罪に終わる恐れがあるのではと思われていたので、この結果は非常に満足できるものと思われる。
亜細亜人排斥協会 11日桑港特派員発
アジア人排斥協会の総会の席上、前役員スタンフォード大学総長ジャルダン博士がある雑誌に日本人を称賛する投書をしたと罵倒し、今後ますます活動する事を申し合わせて解散した。
英国軍隊不穏 同上
英国軍隊からアイルランド人を排斥すべきであるとの議論を怒って、アイルランド人及びスコットランド人等が騒ぎ始め、軍隊は不穏な状態である。
回航艦隊将士歓待 同上
大西洋艦隊乗組み将士は付近の名所に案内されている。
5月14日
印度国境櫌亂 13日タイムス社発
シャブカドル来電―英国の勢力範囲で最も遠く離れているイスラム教徒は、軽蔑的態度を以て英国政務官との会見を拒絶した。ここに於いて野戦隊3個旅団は、即刻その地方に派遣するため集められ、騎兵隊は現在敵情を偵察中である。
稀有の不景気 12日紐育特派員発
昨今市中一般の不景気は、その極に達している。諸新聞は順調である様に報道しているが、その実情はそうではない。株式界及び銀行界も決して順調ではない。しかるに諸新聞が最近は順調であるとする原因は、ハリマン氏が一鉄道会社に向かって現金5百万ドルを投じた事、昨年来米国の債券を売り払っていた独逸及び英国の資本家が今回、ペンシルベニア鉄道会社の社債を引き受けた事、尚第1回の作物報告により豊作の見込みである事による。しかしかの有名なパタソンの様な織物工場で破産するものが多く、ニューヨーク市内のみでも50万の労働者が職を失っている。(抜粋)
解説:米国はここ数年不景気で、これが日本人の移民反対、対日感情の悪化に結びついているようである。
5月15日
摩洛哥警察隊 14日タイムス社発
タンジール来電―完全に訓練を受けたフランス人及びスペイン人の混成警察隊は、いよいよ保安の任務に就くとこになった。その機敏な行動は、従来の襤褸を纏ったモロッコ兵に比較して著しい相違を示した。
摩洛哥僭王の密使 同上
ベルリン来電―独逸外務大臣は、モロッコ僭王が国際法に於いて承認されていない為に、その使節とも何らの交渉を行うことが出来ない旨を使節に通告した。
解説:モロッコはフランスの保護国となっており、独逸はそれに食指を伸ばしている。
5月16日
米国軽気球試験 15日タイムス社発
ニューヨーク来電―ライト兄弟商会の軽気球は、地上を去る4千フィート(?)の空中に上り、3分間3マイルの速力で遊弋した。
解説:ライト兄弟は1903年に有人動力飛行に成功しており、以後改良を重ねているのでこれは気球での飛行試験では無いと思われるが。
排日煽動檄文 14日桑港特派員発
米国労働者同盟会長ゴンバリー氏は、所属労働諸団体に対し、その地選出の国会議員を鞭撻し、アジア人排斥案の成立に尽力させるべしとの檄文を送った。
エヴンズ提督談話 同上
エヴンス提督は帰途シカゴに於いて、米国海軍は大いに拡張されなければならない、されど日米戦争は無いであろう、又艦隊回航は大成功であり、貴重な経験を得ることが出来たと語った。
5月17日
摩洛哥戦闘公報 16日タイムス社発
パリー来電―南部アルゼリア国境で行われた佛兵とモロッコ土民の戦闘に関する公報によれば、多数のモロッコ土民は、佛軍の大砲と騎兵の突撃の為に多数の死者を出して潰走した。この土民達は、一つの砦によって激戦、奮闘したが夜に入り遂に陥落した。佛軍は今や敵の本隊を目がけて着々と前進している。
阿富汗問題質問 15日上海経由ロイター社発
英国下院議員ロンスデール氏(保守派)は、今回のインド国境での動乱にアフガン人が加担した事件に関し、アフガン王はインド政府の詰問に答弁したか、又カイペルに於ける敵意ある示威運動についても何等かの弁明を行ったか否かを質問した。政府委員ホプハウス氏は、アフガン王が全力を尽くしてアフガン人は暴動に参加する事を制止するつもりある旨の満足な制約を行った事及びこの際公文書の詳細を述べる事は国家の利益に反する旨を答えた。
英国海軍政策 16日上海経由ロイター社発
英国外相サー、グレーは、ロンドン市の鉄鋼関係晩餐会に招待され、その席上次の様な演説を行った。一国が軍備を減少させようと望んでも、列強の協力がなければこれを行う事は出来ない。英国政府は軍備、中でも海軍力が重要である事を認識しており、若し我が海軍力がある一国の海軍力に拮抗する事が出来ない地位に凋落する事があるならば、これは単に我が国家の繁栄のみならず、又その独立を危うくするものである。
解説:独逸海相テルピッツの海軍拡張政策を意識した演説である。
5月18日
米国官人の僻目 16日桑港特派員発
朝鮮からロンドンに来た米国の一官吏は、英国新聞記者に対し、日本人が朝鮮人を取り扱う方法が不正で残虐であると非難し、虐殺及び財産の略奪が頻りに公然と行われている様な事を言い、且つ極東に於いては日本の圧政が甚だしく、欧米人は到底、同地方で日本人と共に事業を営む事は難しいと語り、大いに英国人の人心を動かした。
太平洋海権論 同上
例のホプソン大尉が又々熱烈な口調を以て、日本人は遠からず32隻の軍艦を太平洋に備えようとしており、一時たりとも太平洋の制海権を日本に与える事は危険であり、大西洋艦隊は、このまま太平洋に残るべきである。なお米国にとって唯一の安全策は、毎年6隻づつの戦艦を建造し、以て平和を継続する事にある。
日本人渡米数減少 同上
日本政府は約束を無視し、以前として多数の日本人を米国に送り続けているとして、大統領に対して国会議員の間で非常な非難がある由 しかし事実はこれに反して渡米日本人の数は、近来大いに減少している。
5月19日
摩洛哥戦闘 18日タイムス社発
パリー来電―佛軍はアルゼリア国境に於いて再びモロッコ兵と会戦し、激烈な戦闘の後プテニブ駅を占領し、敵の陣営、糧食、弾薬等を捕獲した。モロッコ兵は夥しい死傷者を出したが佛軍の損傷は極めて僅少であった。
印度回教徒討伐 同上
ナハル来電―英軍は印度国境の北方にあるイスラム教徒の居住地域に侵入し、罰を加えてイスラム教徒を数カ所から撃退したが、敵はなお頑強にコセコセ逆襲を行いつつある。
5月20日
巴奈馬運河工事 19日タイムス社発
ワシントン来電―陸軍卿タフト氏は、パナマから帰任した。氏は、同運河開削工事が4年後に完成するであろうと考えている。
解説:パナマ運河は、レセップスの失敗の後ルーズベルト大統領が1902年に始め、結局1914年に開通した。(4年後は1912年である)
印度国境櫌亂後報 18日上海経由ロイター社発
印度国境北部のイスラム教徒は、夜に乗じてドワザグルに駐屯する英軍の前哨を襲撃し、多数の死傷者が発生した。インド歩兵第二十二バンジャビス隊は、約4時間に亙って激しく敵兵を圧迫し、死者9名、負傷者24名を出した。
大西洋艦隊帰航期 18日桑港特派員発
大西洋艦隊は、18日シャトルに向け出発した。来年2月22日大統領はハンプトンローズに於いて戦艦24隻の観艦式を挙行する予定であるので、大西洋艦隊はそれ以前に帰港するであろう。
解説:5月8日の「回航艦隊桑港着」の記事にある様に、5月7日早朝この艦隊は、サンフランシスコの到着し、18日出港している。
労働同盟活動 同上
会長コンバースの訓示に従い、米国の大小労働組合は政治的活動を行う事となった。今後の運動はますます注目する必要がある。
解説:排日運動の中心は労働組合であり、白人労働者の雇用を守る為にロビー活動を行い、加州では略終了し、その運動をワシントンに広げ1924年の移民法案となった。
5月21日
摩洛哥内乱後報 20日タイムス社発
タンジール来電―フェツツよりラバートに向け進軍中であるモロッコ王アブダルアジスの軍隊は、賊の種族に包囲されて進退に窮している。これらの官兵は多分脱走するか、そうでなければ僭王ムレハブネッツドの軍隊に投降するであろうと思われる。
印度国境反乱 同上
ナハキ来電―イスラム教徒討伐隊の前衛は、敵軍の撃破に従事中、熱狂的な抜刀隊に襲撃されたが、これを皆銃剣で突き殺したそうである。
日本洗濯業者威嚇 19日桑港特派員発
サンフランシスコ洗濯同盟職人は、日本人の洗濯業に反対しようとして運動費を集めている。又昨年の洗濯商及び洋食店襲撃の二の舞になるかもしてない。
米国官吏の醜態 19日桑港特派員発
当地移民局留置場の看守2名は、眼病の嫌疑で留置されている日本婦人5名の部屋に、毎晩入り込みあらゆる悪戯に及んだ旨、被害婦人等からある筋に届け出があった。調査の末移民官に移牒したが、同局の狼狽は一方ならず19日の郵船で送還予定であった婦人等を証人として留めて、現在詮議中である。
5月22日
印度人叛立運動 21日タイムス社発
バンクーバー来電―当地滞在のインド人は本国に於ける独立運動費を募集中であり、又ウエストミンスター付近の一学校は、表面上インド人に英語を教授する事を目的としているが、実際は革命思想を同国人に鼓吹する機関となっている。
日米紛議解決(特許商標、意匠保護条約) 20日桑港特派員発
ワシントン来電―日米両国政府は、両国間の紛争を一掃する事に成功した様である。米国議会は、日本に対する好意の表象として日本大博覧会への参加費百五十万ドルを可決した。又日本側では、単に移民制限に就いて更に有効な手段を採るのみならず、両国民間に不平、非難の声があった特許商標及び意匠保護に就いて、相互保護条約を締結し、更に高平大使と代理国務卿ベーコン氏との間に調印を終了した。上院は必ず閉会前にこれを批准するものと思われる。
米国移民官醜態続報 同上
当地移民官の日本婦人侮辱事件は、引き続き移民局で取り調べ中である。該当官吏は多分罷免されるであろう。
解説:前日の記事の続報である。
5月23日
米国労働同盟跋扈 22日タイムス社発
ニューヨーク来電―先頃来各地で数回の暴行が発生しているが、中でもブロンクス河の鉄橋を破壊したのは、二三の労働同盟こそが、実にその責任者であると認められる。これは、鉄道工事請負業者が労働同盟に加入している労働者のみを使用する事を拒否した結果である。
解説:鉄道工事請負業者は、安い賃金で有色人種を雇用する事を望み、労働組合はこれに反対している。そしてこれが反日運動に結びついている。
日米商標条約批准 22日上海経由ロイター社発
米国上院は、清韓両国に於ける商標保護に関する日米協約を批准した。
解説:前日の記事の続報である。
5月24日
波斯内閣辞職 23日タイムス社発
テヘラン来電―露国司令官は、コーカサス国境に於ける露国兵の屯所を攻撃した土民に対し速やかに懲罰する手段を取るよう要求した最終談判書を送ったが、ペルシャ政府は、これを無視して顧みず、又これら土民等は露軍に対する攻撃の準備中であると伝えられる。
ペルシャ内閣は辞職した。
解説:ペルシャ政情は不安定であり、北半分は露国の保護領、南半分は英国の保護領となっている。
米艦隊南洋回航 22日ベルリン特約通信社発
米国太平洋艦隊は、来秋、南洋諸島に回航する筈であり、その際サモア島を訪問すると思われる。
佛紙と摩洛哥事件 同上
一部の佛国新聞は、佛国はカサブランカに於ける軍事行動を終了し、モロッコ王に対して中立の態度を執るべき事を勧奨し、同時に僭王ムレー、ハフイッドも亦モロッコ王と認める事ができる旨を論じた。
解説:現在佛国の保護国モロッコでは内乱が発生しており、5月10日、15日、17日、19日、21日も関連記事がある。
5月25日
露波国境紛議 23日上海経由ロイター社発
駐露ペルシャ代理公使は、露国外務大臣に対し、ペルシャはコーカサス境界の騒乱に関し適切な手段を執る決心であるので、露国官憲が要求した番民の懲罰及び損害賠償に就いての期限を2週間延期するよう求めた。その際露国外相は、従来しばしば番民の取締まりの実行をペルシャに勧告した事に就いて代理公使の注意を促し、若し番民の侵入が依然として継続される場合には、露国が自ら適当な措置を執らなければならず、その措置は今回の要求同様、現場にいる露国官憲により決定されるであろう。そして前記期限延期の要求は、ペルシャ政府の証言もあることであるから、これをコーカサス総督に通達するであろうと答えた。
5月26日
欧州移民の帰国 24日桑港特派員発
米国に於ける欧州移民の帰国熱が再び高まり、最近4日間に1万人が帰国した。過去半年間の帰国者は50万人以上となるであろう。
解説:米国経済が不景気となっており、労働者の不満が高まり、それが反日運動を生む結果となっている。
回航艦隊消息 同上
大西洋艦隊は23日、シャトルに到着し、ここでも盛大な歓迎を受けた。
解説:バルチック艦隊と略同規模の大艦隊が、サンフランシスコを後にして示威運動の為の航海に出発している。艦隊の塗装が白色に近かった為に「グレート、ホワイト、フリート(GFT)」と呼ばれる様になった。
摩洛哥僭王入場 23日ベルリン特約通信社発
モロッコ僭王ムレー、ハツイドは来る月曜日に、威風堂々とフエツ市に乗りこむ筈である。
解説:既に何回も報道されている様にモロッコは佛国の保護国であるが内紛が絶えず、今は僭王側が有力となっている。
5月27日
印度国境小戦 26日タイムス社発
インド国境ウトマンケルからの情報によれば、同地の蕃賊が英国旅団の進軍を妨害した為に、英兵は激しくこれを攻撃し、大量の砲弾を発射し、彼等をその陣地から撤退させ、且つ騎兵は他の一部を斬殺した。
独逸国民の煩悶 同上
ベルリン来電―諸新聞は佛国大統領、英国皇帝及び露国皇帝の間に行われる儀礼の交換を快く思っていない。故ビスマルクの英佛離間策を想起し、同時に佛国のモロッコ政策に対し強烈な反感を高めつつある。
解説:現在1908年、1014年の第1次世界大戦まであと7年
5月28日
印度蕃賊帰順 27日タイムス社発
印度北境からの特電によれば、英国行政管轄地域に於ける国境付近の蕃賊は、終に帰順する事に決まった。今回の遠征は暑気が苛烈な上に、飲料水が乏しい為に非常に困難を極めた。しかも英軍はこの間、昼夜激戦しその行動ぶりは見事と言われている。
清兵間島派遣 27日上海経由ロイター社発
露都来電―ウスリスクからの報道によれば、日本は間島を朝鮮の領土であると主張し、住民から租税を徴収している。その為に清兵5千人が吉林から間島に派遣された。
解説:間島は豆満江以北の朝鮮民族居住地であり、現在は中国領となっている。
南阿印度人反抗 同上
インド人の反抗運動が、再び南アのヨハネスブルグで発生した。インド人の首領ガンジーは文書を政府に送り、その今尚在留インド人の姓名を登記する法律を廃止しない事は1月30日の約束に違反するので、自分たちが先に任意で差し出した登記出願書を返還することを要求した。しかし政府は、登記法を廃止する約束をしたことは無いと主張している。
解説:インド人の首領ガンジーとは、インドの独立運動を指導した「マハトマ、ガンディ」であり、当時南アで弁護士をしており、インド人の権利を擁護する活動をしていた。
5月29日
英佛新通商条約 27日ベルリン特約通信社発
佛国大統領ファリエル氏は、ロンドン滞在中30年間有効な新英佛通商条約を締結する件で協議すると思われる。佛国は将来英国に於いて保護貿易派が勝利を得る場合を予想して、これに備えたいと希望している。
玖馬撤兵問題 同上
米国は現在キューバに駐留する軍隊を撤退させる事は無いと思われる。
摩洛哥問題後報 同上
モロッコ駐屯軍司令官の受けた新訓令は、戦闘中止意味であると理解される。
5月30日
摩洛哥官兵退却 29日タイムス社発
タンジール来電―モロッコ官兵の一部分は、首尾良くラバートに退却する事ができた。官兵の司令官は、軍隊の一部が敵軍に走ったにも拘わらず、僭王ムライ、ハフィドの使節よりの降伏勧告を断固として拒絶した。
印度騒櫌愈鎮静 28日上海経由ロイター社発
ロイター社シムラ特電によれば、インド北部国境の蕃賊征伐は、事実上終了している。今尚頑冥な態度を採っているイスラム教徒は、唯バサイス族のみであり、そして英国軍隊は6月10日に引き揚げる予定である。
回航艦隊桑港出発期 28日桑港特派員発
艦隊の一部は、北方に留まり、所々のドックに於いて艦艇を掃除し、一部はサンフランシスコへ帰って矢張り艦底の手入れを行い、7月3日までにサンフランシスコに集合し、7日ホノルルに向け出発すると思われる。
5月31日
英帝公式訪露反対 30日上海経由ロイター社発
英国下院の労働派議員及び一部の急進派議員は、英帝に奉呈すべき請願書に調印した。その主旨は、露国に於いて前代議士の刑罰その他幾多の残酷な事件がなお決着しない事に鑑み、英帝がこの様な場合に露国を公式に訪問してはいけないと云うにある。
英佛同盟説紛々 29日ベルリン特約通信社発
佛国タン新聞は、熱烈に英仏両国の公式同盟を論議中であるが、独逸諸新聞紙はこれに反し、この点に対して頗る疑惑を差し挟んでいる。そして仏大統領が英国訪問中に英仏親交が一転して同盟となるであろうとの説も、又特に英仏露の三国同盟が成立しようとしているとの説も共に信頼すべき根拠はないとしている。