期日 | 日本関係 | 期日 | 露清関係 | 期日 | 英米関連 | 期日 | 独仏その他関連 |
11月14日 | 日米郵便運賃競争 | 11月2日 | 厦門寂寥の反響 | 11月3日 | 印度直轄五十年祭 | 11月1日 | 獨帝談話論評 |
11月17日 | 日本の満州政策 | 11月6日 | 露兵の波斯進軍 | 11月3日 | 獨帝談話余波 | 11月1日 | スラブ民族間の親和 |
11月18日 | 日米関係 | 11月12日 | 波斯問題と露国 | 11月5日 | 英帝詔勅とインド人 | 11月5日 | 露国の態度一変 |
11月22日 | 独逸皇帝談話 | 11月15日 | 清帝崩御、 | 11月5日 | タフト氏当選 | 11月6日 | 露国の通牒と墺太利 |
11月22日 | 海軍兵学校卒業式 | 11月7日 | 米艦隊行先 | 11月7日 | 塞比亜軍器輸送拒絶 | ||
11月26日 | 桑港日本人営業権 | 11月8日 | 英国紡績業紛議解決 | 11月8日 | 墺人の挑戦的態度 | ||
11月30日 | 日米協約 | 11月14日 | 英国海軍政策 | 11月9日 | 獨帝沈黙の希望 | ||
11月27日 | 太平洋岸海軍力増加 | 11月10日 | 波斯憲政廃止 | ||||
11月10日 | 土勃鉄道協議行悩み | ||||||
11月11日 | 英露公使の憲政運動 | ||||||
期日 | 独仏その他関連 | 11月13日 | 独逸宰相の諌奏 | ||||
11月25日 | 波斯憲法廃止 | 11月14日 | ボスニア合併案提出 | ||||
11月26日 | 独逸新聞の激昂 | 11月15日 | 独逸政局動揺 | ||||
11月27日 | 波斯憲政問題 | 11月15日 | 佛国海軍改革論 | ||||
11月28日 | 墺塞戦争風説 | 11月16日 | 獨帝不機嫌 | ||||
11月28日 | 佛国軍備拡張 | 11月19日 | 独逸宰相会見 | ||||
11月29日 | 墺土外交現状 | 11月20日 | 列国対塞比亜 | ||||
11月29日 | 独逸の態度 | 11月21日 | 独逸の軍備拡張案 | ||||
11月30日 | 墺兵の狼狽遁走 | 11月22日 | 墺太利の戦備 |
11月1日
巴爾幹時局 31日タイムス社発
露帝の忠告 セルビア皇太子及び首相は、露帝に拝謁した。露帝は慇懃にこれを迎え、セルビア人の希望に多大の同情的注意を払い、同時に今回の協議に就いて冷静な態度を執る必要を反復忠告した。
解説:10月30日「塞爾比議会の哀訴」の続報
獨帝談話論評 31日上海経由ロイター社発
独逸皇帝の談話が喚起した世上の注意は、減退せず、デイリー、クロニクル紙は、独逸が与えた教訓は一に強大な海軍にあると説き、デイリーニュース紙は、独逸皇帝は無意識に英独の協調は望む事ができない事を証言したと論じた。
解説:10月30日「獨帝談論評」の続報 第一次世界大戦まで6年の情勢である。
巴爾幹時局 31日上海経由ロイター社発
モンテネグロの戦争熱 モンテネグロ人はボスニア国境の山上に大砲を据え付け、全国民が皆武装した。
スラブ民族間の親和 ゼルビア皇太子が露都訪問の結果、スラブ諸民族相互の親情が爆発し、ベオグラードに於いて盛んに親露運動が行われた。
解説:ロシア、モンテネグロ、セルビアは同じスラブ民族である。
11月2日
獨帝談話の責任(ビュロー宰相の辞職) 31日桑港特派員発
独逸宰相ビューロー公は、独逸皇帝との会見に関し、ロンドンの新聞紙上に素破抜かれた記事に対して責任を負い、辞職を申し出た。しかし皇帝は多分辞職を許されないであろうと予想される。
解説:10月30日の記事「獨帝談論評」に関する続報
厦門寂寥の反響 同上
清国アモイに於ける米艦隊の歓迎に関して、米清間に悶着があった。北京に於いては、官民共に米艦隊の清国訪問を知らなかったとの電報が来た。日本に於いて受けた歓迎に比較して、米人間には不愉快な感情も見られ、以前熱心に唱えられた米清同盟等を嘲笑する新聞もある。
11月3日
歓迎と移民問題 2日タイムス社発
ワシントン来電―西部諸州は、日本の艦隊歓迎を感謝すると同時にやや不安の念を持ったようである。カルフォルニア州の一新聞は、移民問題が未だ解決していないのに、今回の歓迎は一層その解決を困難にした。日本人は、今さら日本移民を排斥する政策を執るのは下劣であると考える米人が多いと認識するようになるのではないかと論述した。
解説:10月24日の記事「内国電報」に歓迎ぶりが書かれている。
印度直轄五十年祭 2日上海経由ロイター社発
今年は極東印度会社が管轄していた領土を英国政府の直轄に変更した五十年祭に相当する。英国皇帝は、今回印度人民に対して詔勅を下し、成るべく早く代議政体を同地に布くであろうと予告し、印度兵士の忠誠に対し恩賞を与えると約束し、且つ罪人の恩赦を宣告した。
獨帝談話余波 同上
ベルリン来電―独逸皇帝の談話が引き起こした雨の様な攻撃に晒され、宰相ビューロー公は辞表を提出したが許可されず、又外務大臣も辞職したとの風説がある。
ロンドンタイムス紙は、ドイツ人の多数が英国に友愛でない事を皇帝に依って承認された以上、英国議会は速やかに一層戦艦の建造を行う意志を発表すべきであると言明した。
解説:10月30日の記事「獨帝談論評」に関する続報
西蔵の暴動 支那特電2日上海特派員発
チベットに於いてラマ僧等が清人反対の暴動を起こし、駐チベット大臣帳シ豊の部下の清兵を攻撃し、これを破った。その為清国政府は、四川省から軍隊を派遣し、同時にダライラマに向かって、ラマ僧を説得し、集団を解散し平和を回復するよう命じた。しかしダライラマは、これは自己の勢力の及ばない所であり、その言に従う事は出来ないと返答した。
11月5日
独逸宰相の不評判 3日タイムス社発
ウイーン来電―ベルリンに於いては、政府党の声援に依りビューロー公は、或いは辞職しなくて済むかもしれないが、当地に於いては、ビューロー公の時代は最早過ぎ去ったと一般には考えられ、独逸の国威は、独逸皇帝の談話発表に依って著しく損なわれている。
巴爾幹時局 同上
露国の態度一変 ウイーン来電―露国がボスニア及びヘルチェゴビナの併合を承認しない意志である為に、列国会議は開催されないであろうとの報道が露国よりあった。官憲側に於いては、露国が突然この様な、殆どあり得ないと思われる態度を執るとは信じていないが、一般人民には、不快の念を引き起こしている。又露国の声援は、セルビアの希望を危険なレベルに高めるであろうと信じられ始めている。
巴爾幹時局 4日タイムス社発
土勃協議開始 コンスタンチノープル来電―トルコ及びブルガリアの協議が開始された。
英帝詔勅とインド人 同上
ボンベイ来電―英国皇帝の詔勅は、二三の新聞が異論を差し挟むものを除いて、一般にこれは印度人の知識階級が抱いている希望と理想を寛大に承認したものと認め、極めて深い満足と感謝を以て迎えられた。
解説:11月3日の記事「印度直轄五十年祭」の続報である。東南アジアの植民地で佛領インドシナ(現在のベトナム等)及び蘭領インドネシアと英国の統治するインドには大きな違いが見られる。
タフト氏当選 4日上海経由ロイター社発
タフト氏が遂に大統領に当選した。なお今回の様に選挙投票数の多い事は未曾有うの事である。
両候補の得点 3日紐育特派員発
大統領選挙の結果は、タフト氏325票、ブライアン氏150票である。
ダライラマの尊号 4日北京特派員発
西太后の万寿節を以て、ダライラマに対し更に4字の尊号を加え、誠順賛化西天善自在佛に封じ、毎年1万両を賞賜する事とした。且つチベットへ帰国後は、宗主国の意志を体し、国民を導き、一切の事務を駐チベット大臣に報告して、朝廷のラマ教を保護し、辺境の地を安定させたいとの意に背いてはならないとの御沙汰があった。
11月6日
露兵の波斯進軍 5日タイムス社発
或る信頼すべき筋から聞いた所に依ると、北部ペルシャが無政府状態にある為、露国軍隊が近い内にペルシャに入るであろうと言っている。但し露国からの報道に依れば、露国政府がその行動を誤解される事を望まない為に、愈々危機が迫るか、或いは英国から予め警戒的手段を執る様に注意して来るまでは、なるべく受動的態度を執るであろうと信じられている。但しタブリッツに在留するロシア人はその家族を帰国させ始めている。
解説:ペルシャの北部は露国の勢力圏で、南部は英国の勢力圏となっている。
巴爾幹時局 4日上海経由ロイター社発
露国の通牒と墺太利 バルカンに関する露国通牒は、ウイーンに送られたが、オーストリア官憲側では、同通牒が友好に欠けている事を認め、露都に於いてこれに引き続きどの様な進展をするであろうかと深く憂慮している。
巴爾幹時局 5日上海経由ロイター社発
オーストリアは、セルビアの首都ベルグラードから30マイルのヨヴノに軍隊を集中し、オーストリアとセルビア国境に陣地を築き、ダニューブの島嶼を占領し、大砲6門を備え付けた。その為にベルグラードの市民は非常に驚愕、且つ激昂し、又緒財庫は黄金を内地に送り、又軍器廠は急いで需要品を輸入し始めている。
11月7日
波斯憲政廃止 6日タイムス社発
テヘラン来電―王に仕えている臣下の陰謀の結果、ペルシャ王は遠からず憲政を廃止し、独裁君主として政治を行うであろうと信じられている。又国民一般の不安は日を追って増加している。
独仏衝突事件 6日上海経由ロイター社発
ベルリンからの諸報道によれば、モロッコのカサブランカでの独仏衝突事件に対する同府の態度が極めて冷静である事を示している。又パリーに於いては、同件が決して面倒な事にはならないであろうと半官報的に宣言し明らかにされた。
解説:9月30日の記事「佛獨官吏衝突」にこの事件が報道されているが、佛国官吏が外国軍隊の脱走軍人を捕縛し、且つこの脱走兵を独逸国民であると主張する独逸領事館員を殴打した事件である。
巴爾幹時局 同上
塞比亜軍器輸送拒絶 オーストリア人が経営する鉄道が、トルコのサロニカに陸揚げされたセルビア行きの武器を輸送する事を拒絶した為に、セルビアはトルコに対し訴えを起こした。
米艦隊行先 内国電報6日発(アモイ領事発電)
米国艦隊は今朝8時に出発した。ルイジアナは香港に寄港し、他は戦闘射撃を行い、来月1日マニラ着、同地に1カ月錨泊の予定
11月8日
巴爾幹時局 7日タイムス社発
勃牙利予備兵解隊 ソフィア特報によれば、ブルガリア政府は服役中の予備兵2万2千名に解隊を命じ、同国軍隊を平時の状態に復帰した。
英佛官吏衝突事件 同上
カサブランカ事件の状況には変化が無い。佛国は独逸と互いに事件を遺憾とする意を発表する以外に、一切佛国官吏の行動について謝罪を行わない決心を抱いている。これに反して独逸は、同事件をハーグの仲裁裁判所に付託するに先立ち、同件の重要な諸点に就いて独逸の主張を承認させようと努力中である。なおこの事件に関する露都官憲の態度は、佛国の立場が正当なものと認めている。及び英露両国は、佛国に援助をするであろうと信じられるようになっている。
解説:昨日の記事「独仏衝突事件」の続報
英国紡績業紛議解決 7日上海経由ロイター社発
英国北部の紡績工場紛争は、職工等が来年3月から5%の賃金引下げを実行する事を承諾した結果、終に解決した。工場は来る月曜日から業務を開始する事になっている。
解説:この当時英国では話し合いで争議を解決する事ができた。
巴爾幹時局 同上
墺人の挑戦的態度 オーストリアの武装船数隻は、略奪を行う目的で、ベルグラードとダニューブ河畔を隔てて相対するセムリン市に到着した。その為セルビア人は非常に激昂している。
墺船の射撃練習 オーストリア武装船は射撃練習をベルグラード府付近で行い、その為にセムリン市に向かっていたセルビア汽船の進行を中止させる事になった。
解説:第一次世界大戦は、セルビア系ボスニア人がオーストリアの皇太子を殺した1発の銃声で始まったと言われているが、バルカン情勢は刻一刻と戦争に向かっている。第一次世界大戦まで6年の情勢である。
11月9日
墺国内閣辞職 8日上海経由ロイター社発
オーストリア内閣は、同国内に於ける民族紛争の為に辞職した。しかし外務大臣は留任した。
獨帝沈黙の希望 同上
去る6日、独逸帝国議会に於いて、保守党は皇帝の干渉排斥決議に関する自由党の提案に同意する事を拒否し、皇帝の言行は、しばしば独逸の外交政策を困難とした故に、将来大いに沈黙を守られたしとの希望を宣言した。
解説:11月1日の記事「獨帝談話論評」に関連した記事である。
11月10日
波斯憲政廃止 9日タイムス社発
テヘラン来電―宰相は、各階級の人々に対して、宮廷内謁見室に参集する事を求めたのに対し、これに応じた者は僅かに2百名であった。議論が紛糾する間に、刑罰を是認し、次いで憲政反対請願書に調印する計画があった。宰相はペルシャ王が直ちに再び憲政を布く意がある旨を言明すると、守旧派の僧侶は急に国王の前に突進し、憲政廃止を請願し、国王は慇懃な儀礼を以てこれを聴許し、ここに一喜劇は、祈祷を以て終了した。これについて外国人及び識見あるペルシャ人等は大いに困惑している。
佛獨衝突事件と露紙 同上
露都来電―諸新聞は、佛国がカサブランカ事件に関して、威厳のあるしかも謙虚な態度を執っている事を喜び、同時に独逸の意見を攻撃している。
巴爾幹時局 9日上海経由ロイター社発
土勃鉄道協議行悩み トルコとブルガリア間の鉄道協議は、現在行き悩んでいる。これはブルガリアが二人の相手と協定を行う事を拒んでいるにも拘らず、鉄道会社は、自らこの協議に参加する事を主張している結果である。
11月11日
英露公使の憲政運動 10日タイムス社発
テヘラン来電―英露両国公使は、協同してペルシャ国王に対し、憲政実施の誓約を守る必要を悟らせようとして尽力中である。
解説:昨日の記事の「波斯憲政廃止」続報
英国首相演説 同上
英国首相アスキス氏は、ロンドンのギルドホールの晩餐会の席上で次の演説を行った。
先ず英国の主張である「トルコに影響を及ぼすブルガリア及びオーストリア両国の行動は、トルコ及びその他の関係諸国の同意を得なければ、国際的な効力がない」との本質を痛切に言明した(一部抜粋)
11月12日
波斯問題と露国 11日タイムス社発
露都来電―11月11日付で発表されるであろう露国政府の外交文書で、露国は一切ペルシャに干渉し若しくは何れの土地も占領する様な意志もなく、又外国人を保護する為に少数の軍隊を派遣するのは止むを得ないものの、英国が是認するのでなければ、露国の軍隊がペルシャ国境を超える様な事は一切ないであろうと説き、更に露国が万一、この手段を執る事があるとしても、これはペルシャの内政に干渉しない事を定めている英露協約に少しも違反する意志がない旨を陳述するであろうと言われている。
解説:ペルシャ北部は露国の勢力範囲、南部は英国の勢力範囲であるが連日の様に報道されている通り、ペルシャは内乱状態となっている。
佛獨衝突事件仲裁 11日上海経由ロイター社発
独逸外相代理と駐独佛国大使は、ベルリンに於いて両国が互いにカサブランカに於ける下級官吏の暴行を遺憾とし、且つ事件全部をハーグ仲裁裁判に付する旨を言明する宣言書に調印した。
解説:11月8日の記事「英佛官吏衝突事件」の続報
獨帝権力制限案 10日紐育特派員発
独逸議会に於いて、社会党員は、国民自由党員と結託し、首相ビューロー公に皇帝の権力制限案を提出するよう迫り、国民自由党党首ワステルマン氏は、激烈に皇帝の行動を非難、攻撃した。
解説:11月9日の記事「獨帝沈黙の希望」の続報
11月13日
独逸宰相の諌奏 12日タイムス社発
独逸宰相ビューロー公が、皇帝に対し今少し謹慎する様に求め、これは政策の統一にも、又皇帝の尊厳にも必要である。皇帝が若しこの言を入れなければ、自己も後継者も到底、職責を果たすことができないと諌奏した。この件に対し欧州諸国の政論社会は、非常な満足を表した。
大統領と労働組合 11日紐育特派員発
来る17日、大統領ロ氏は、労働組合首領株をホワイトハウスに招待し、将来の労働問題に関し協議する予定である。然るに中央労働協会長は、その招待に漏れた為に大いに物議を生じている。
解説:米国に於いては、既に労働組合がこの記事に示す様に力を持っており、日本人労働者の排斥はこれらの労働組合のロビー活動に依って行われた。
11月14日
英国海軍政策 13日タイムス社発
英国首相アスキス氏は、下院に於いて政府が考える二国標準の定義は、英国に次ぐ
2カ国の最強海軍国の主要軍艦を合わせてものよりもなお1割の優勢を占める事であると言明し、大いに一般の喝采を博した。
解説:歴史の教科書に英国の二強国標準として登場する海軍政策の定義であり、具体的にはドイツとフランスの海軍勢力より優勢を維持するものであった。
巴爾幹時局 13日上海経由ロイター社発
ボスニア合併案提出 ボスニア及びヘルチェゴビナ併合案は、昨日ウイーンのオーストリア議会及びブタペストのハンガリー議会に於いて批准を得る為に提出された。
日米郵便運賃競争 12日紐育特派員発
太平洋郵船会社は、日本郵船会社に対抗する為、小麦粉の運賃を1トン3ドルに値下げした。その他の運賃も自然に大競争となるであろうと言われている。
11月15日
清帝崩御、皇儲冊立 14日天津特派員発
13日入手した報道に依れば、清国皇帝は崩御され、醇親王の長子であり今年3歳の
溥儀が皇儲に冊立されたとの説がある。その為大官連は不安の念を抱いている者が多く、各国公使は、崩御説に就いて本国政府に打電した。
解説:清帝とは西太后である。
独逸政局動揺 14日タイムス社発
ベルリン来電―宰相ビューロー公は、皇帝に謁見の為に、月曜日にキールに赴く予定
連邦議会は、満場一致で皇帝が予め内閣大臣に相談なく外交問題を論評してはならない事を認めた。
保守党は、宣言書を発表し、仮令ベルリンに於いて内閣大臣の翼賛を受けたとしても、全国民の同情を失う時は、その地位は果たして如何なる事になるかを熟考するよう皇帝に注意した。
佛国海軍改革論 同上
パリー来電―佛国海軍の現状については、非常に憂うべき状況にある様に思える。戦闘艦12隻及び多数の巡洋艦は、その能力が非常に疑わしく、又報知艦及び潜航艇は、乗員が不足しており、なお大砲及び火薬庫の装置に就いては、迅速に完全に改良を要する点があるとの説が伝えられ、佛国の海軍は根本より、一大改革を行う必要があると考えられる。
11月16日
新帝跋祚 15日北京特派員発
只今(午後1時45分)の官報に於いて、皇帝崩御され、溥儀が位を継ぎ、3年の喪を布告した。
獨帝不機嫌 14日桑港特派員発
独逸宰相ビューロー公は、多分月曜日(16日)辞表を差し出し、独帝はこれを受け入れるであろうと予想されている。皇帝は、ビューロー公が帝国議会に於いて、皇帝は今後国務大臣に諮問することなくして、外交案件に直接関係し給わないであろうと公言した事を悦んでおられず、反対に皇帝は如何なる事があっても、朕は朕が適当と信じる行動を取るつもりであり、帝国議会は、朕に命令する権利は無いと力まれた。この行動は非常に全国民を激昂させ、益々危険な状態が発生しようとしている。
亜細亜人制限決議 同上
デンバー市で開会された米国労働同盟大会は、アジア人労働者を制限する必要を認めると決議した。
11月17日
西太后崩御 15日午後北京特派員発
確実な筋の報によれば、西太后は15日午後2時40分崩御あらせられた。
日本の満州政策 16日タイムス社発
ワシントン来電―国務省は、日本が満州に於いて外人に対し偏った取扱をする旨陳述する多数の訴えがある為に熱心に調査中であり、国務卿ルート氏の意向は、出来るだけ開放主義を主張する事にある。尤もこの意味を有する新条約を締結する計画は無いが、満州に関する日本の意向について、今から一層明瞭な協商を見るよう希望している。
巴爾幹時局 16日上海経由ロイター社発
君府の協議 東方問題は、コンスタンチノープル府に於いて協議中である為、現在休眠状態にある。又同府の協議に就いては、いろいろ矛盾する報道もあるが、相応に進捗していると信じられる。
墺兵の国境侵害 モンテネグロは、オーストリア警備隊が去る土曜日、国境を侵害し、内1名が捕えられ、残りは逃走したと述べた。オーストリアは、自国兵士が国境を犯した事実を否認した。現在セツチンエ府の人心は非常に激昂している。
11月18日
独逸国民の希望 17日タイムス社発
ベルリン来電―17日行われる予定の独逸宰相ビューロー公の謁見について、一般にはどう宰相が「自ら国家の運命を支配したい」と言う独逸国民の要求と皇帝がその態度を一変させる事を承諾しない限り、再び危機が発生する憂いがある事を明瞭に皇帝に語るように求めている。
解説:11月16日付獨帝の記事の続報
巴爾幹危機 同上
墺塞益々不和 オーストリア及びセルビア間の関係が不和となっている兆候が増加中であり、これについて駐セルビア列国公使は、ベルグラードに於いて会議を催し、一同異議なく、セルビアの戦争準備継続について、同国に勧告する事が得策であると一致した。
日米関係 16日桑港特派員発
国務省は、米国が日本の満州政策に関し、予め保証を得ようとしているとの報道を完全に否認した。ホワイトハウスから発表された覚書によれば、国務省と日本との間に衝突があったとの説は、全く根拠がなく、却って両国政府の関係は、絶えず密接であり、最も融和している。
11月19日
独逸宰相会見 18日上海経由ロイター社発
公報に依れば、独逸皇帝及び宰相ビューロー公は、約2時間にわたって会見を行い、皇帝は国民の感情に関する宰相の報告を真面目に傾聴した後、自己の第一の任務は、帝国政策の統一を維持するにありと答え、議会におけるビューロー公の陳述を是認し、且つ依然として公を信頼すると確約した。
解説:昨日の記事の続報
巴爾幹時局 同上
排墺同盟不成立 セルビア及びモンテネグロ両国の使節は、コンスタンチノープル府を出発した。彼等はオーストリア反対同盟を成立させる事が出来なかった。
塞比亜の平和政策 セルビアは、国境の武器を撤去し、予備隊を解散した。
11月20日
巴爾幹時局 19日タイムス社発
土耳古の列国会議案
コンスタンチノープル来電―近日中に列国に回付される予定のトルコ側の列国近東問題議題は、トルコが必ずしもベルリン条約にある変更を加える事に反対するものではない事を示すものと思われる。
モンテネグロの戦備
ウイーン来電―カツタクロから到着した電報は、モンテネグロの戦争準備を詳細に報道し、且つこの為にオーストリア官吏の家族は、同市を退去し、公文書記録及び寺院所蔵の宝物等は、他に移された。又モンテネグロの大砲は、今や同市を眼下に見ている旨伝えられた。
巴爾幹時局 19日上海経由ロイター社発
列国対塞比亜 列国は、再びセルビアに対し、平和を維持し、オーストリア国境から兵士を撤退する様勧告したのに対し、セルビアはこれに答えて、オーストリア皇室、新聞、劇業等皆セルビアを侮辱し、又オーストリア自ら戦争準備を行っていると攻撃した。
11月21日
独逸の軍備拡張案 19日桑港特派員発
独逸宰相ビューロー公は、海陸軍の拡張案を議会に提出し、次の様に説明した。
独逸は、欧州各国中で最も不人望であるので、我々の権勢を維持する道は、唯陸海軍力の拡張の一つあるのみ。独逸は大軍備を要し、又これを建設するには大資金を要す。
議会がこれに対し、協賛を与えるか否かは大いに疑問であるが、社会党員以外では、ビューロー公に軍備拡張の自由、手腕を与えるべきとの意見が優勢な様である。
巴爾幹問題形勢 同上
モンテネグロは、ヘルチェゴビナ国境に軍隊を配備し、オーストリアも又セルビア国境の第十五軍団に動員を命じたとの報道があり、欧州諸国は、バルカン半島に一段と危険を感じている。ブルガリも又、活動を始めた。露国に対するオーストリアの覚書は、露国を満足させるに至らず、情勢は一般に不可の模様である。
11月22日
独逸皇帝談話 21日タイムス社発
ニューヨーク来電―ニューヨーク・アメリカン新聞は、以前掲載の差し止めとなった独逸皇帝と米国旅行家ヘール氏との会談の概要なるものを掲載した。ヘール氏は、この記事は真実ではないと公言しているがこの発表された談話は次の通りである。
独逸皇帝は、黄患の危険を切言し、日本はインドに於いて叛乱を教唆中であるが、英国は日本と同盟している為に遂にその二三の植民地を失う事になるであろう。又獨米両国は、清国の親友となり、東方問題を決する事になるであろうと予言し、且つ日露戦争の際、露国は実に白人の戦士として戦った為、余は寧ろ露国に同情していた。これに反し英国は寧ろ叛人であった。今後10年間で日米両国は必ず干戈を交える事になると信ずると公言した。
解説:黄患とは黄色人種の禍であり、日本を指す。日米両国の衝突は時期が遅くなったが予言どおりとなった。
巴爾幹問題 21日上海経由ロイター社発
墺土談判中止 オーストリアは、トルコに於ける排オーストリア的ボイコットが中止となるまでは、トルコとの協議を進行する事を拒絶した。
墺太利の戦備 ベルグラード来電―オーストリアは、多量の弾薬をサフ河の上流に向けて輸送し、又ダニューブ河の下流にある諸市街に兵士を駐屯させ始めている。その為にセルビア政府は、民心を鎮静化させるのに困難を感じている。
海軍兵学校卒業式(江田島) 内国電報21日発
21日午前9時半、東伏見御名代宮は、関野侍従武官その他を随えて、軍艦出雲より御上陸、卒業式に臨まれた。一部生総代佐藤一郎(山口)、二部生澤本頼雄(山口)、三部生坪井政吉(静岡)、四部生小柳喜三郎(佐賀)に證書を授与し、岡野侍従武官は、聖旨を伝達して、佐藤、澤本、坪井3名に御物(双眼鏡)を授与し、第36期卒業式を終わった。
解説:総代の佐藤一郎とは、岸信介、佐藤栄作兄弟の長兄である。
11月23日
巴爾幹時局 22日上海経由ロイター社発
ブタベスト来電―セルビアの軍隊が、セメンドリアに於いて測量に従事中のオーストリアの工兵をダニュウブ河の対岸から射撃した。
獨帝の談話は事実(他の一新聞も掲載 博士の証言) 21日紐育特派員発
21日のニューヨーク・ウオールド新聞もまた独逸皇帝と博士ヘール氏との談を掲載した。大体に於いてニューヨーク・アメリカン新聞の記載したものと大同小異であり、この記事は博士ヘール氏の訂正を経た旨の付記があった。且つこれは、同博士が自分の快速艇で本年、独逸に赴いた時、独逸皇帝がこの快速艇に乗って半日以上遊び、食事も共にされた時に語られたものであり、事実は疑いない様である。
解説:昨日の記事「独逸皇帝談話」の続報
11月25日
波斯憲法廃止 23日タイムス社発
テヘラン来電―守旧派の聖職者が、憲法はイスラム教に反しているので、憲法の廃止をペルシャ国王に請願した。国王は、これを容れて憲法を廃止し、厳密にコーランの教義に則った政治を行う旨を宣言した。これについて英露両国は、憲政維持を熱心に要求するものであることを充分にペルシャ国王に知らせる為に、圧迫を試みようと計画中である。
巴爾幹時局 同上
墺帝の平和主義 ウイーン来電―オーストリア皇帝は、近東危機の平和的解決を熱心に希望する意志を表明し、同意味の訓令を外相エーレンタル男爵に与えた。これに反して政府機関紙は、なお英国攻撃論を恣にしている。
11月26日
独逸新聞の激昂 25日上海経由ロイター社発
独逸新聞は、英国上院がロバーツ元帥の陸軍拡張決議案を可決した事を憤り、或る半官報では、非常に激昂した口調で、独逸は自国の利害を標準として、他国に関係なく今後も引き続き陸海軍を拡張すべきと咆哮した。
解説:第一次世界大戦まで6年
桑港日本人営業権 24日桑港特派員発
サンフランシスコ市には、前市長時代に制定した規則で、市民又は市民となり得る者でなければ、酒類小売許可証を発行しないという規則がある。現市長は、就任後この規則に拘わらず、日本人に対する好意を以て、特に日本人に5か年だけ酒小売許可証を発行していた。今回、例のホプソン海軍大佐が日本人排斥決議案を国会に提出する準備として、日本人の調査を始めたところ、規則に違反して許可している事情が明らかになったとして、騒ぎだしている。諸新聞も又これに応じ、今後一大問題となりそうである。
11月27日
波斯憲政問題 26日タイムス社発
テヘラン来電―英露両国が圧迫を行った結果、ペルシャ国王は後悔し、宮廷は驚愕している模様である。
露都来電―ペルシャ国王を巡る情勢の変化は、露国政府が抱いている不安の念を大いに拭い去った。諸新聞は、英露両国が今後なお圧迫を継続する必要を主張している。
解説:11月25日「波斯憲法廃止」の続報である。
英国国防問題 26日上海経由ロイター社発
独逸に於いては、英国上院の討議に関し論議が行われ、軍事専門家等は、英国に軍隊を上陸させる事が可能か否かについて、種々意見を異にする論文を発表している。
太平洋岸海軍力増加 25日紐育特派員発
カルフォルニア選出の上院議員フリント氏は、太平洋沿岸の国民を代表して、大統領ロ氏に対し、太平洋沿岸に、戦艦を常備するよう懇願し、ロ氏もほぼこれを承諾した。その為現在周航中の艦隊が帰着後、数艦の回航を見る事になると思われる。その隻数は未定である。
解説:太平洋には、今まで艦隊は存在していなかった。
日本人営業権問題 同上
日本人の酒小売許可証の問題について、諸新聞は全く攻撃の記事を止めた。中央政府から何らかの内訓があったのではと言われている。許可書の書き換え時に問題が起こるかもしれない。
解説:昨日の記事の続報
11月28日
巴爾幹時局 27日タイムス社発
墺塞戦争風説 ウインー来電―株式市場が非常な不景気に陥った結果、オーストリア政府は、セルビア人が侵略するとの噂は全く無根である旨宣言した。しかし一般国民は、それでもトルコ、セルビア、モンテネグロの同盟が行われる事を恐れ、又オーストリアと露国との交渉が満足に決着する事を疑っている。オーストリア皇帝は、力を平和維持に尽くしており、。外相エーレンタル男爵は、万一セルビア及びモンテネグロとの衝突が起こったとしても、これを一つの地域に制限する事ができると確信している。
佛国軍備拡張 27日上海経由ロイター社発
佛国陸軍委員会は、砲兵連隊数を現在の40から64に、大隊数を506から634に増加し、又各軍団の大砲数を現在の92から120に増加する政府の案を可決した。
解説:第二次世界大戦まで6年
11月29日
巴爾幹時局 28日タイムス社発
墺土外交現状
コンスタンチノープル来電―オーストリア外相エーレンタール男爵は、ウイーン駐在トルコ大使に対して「余はあくまでもトルコとの親交を維持する事を希望する。しかしトルコがオーストリアに対し、反抗的な態度を採るのであれば、余が不断の尽力をしてもその甲斐がなく、オーストリアはトルコの敵となる事を辞せず」と通告した。
墺国の真意
世論は、オーストリア政府の態度を見て、オーストリアは近東問題の平和的解決を希望していないと考える様になっている。
独逸の態度
ベルリン来電―近東問題について、列国会議を開くのは無益であるとの説が再び持ち上がっている。同時に二三の新聞は、英国に対しても激烈な攻撃を開始した。
巴爾幹時局観測 28日上海経由ロイター社発
佛国外務卿ビション氏は、代議院に於ける外交問題の討議の際、オーストリアは結局トルコとの協商に同意するであろう、その後はセルビア及びモンテネグロに対する報償の手段を見出す事も敢えて不可能ではないであろうと言明した。
11月30日
日米協約 28日桑港特派員発
第1条 太平洋に於ける両国商業の自由、平和的発達を期する両国政府の希望
第2条 太平洋に於ける攻撃的計画に反対、清国に於ける商工業の機会均等
第3条 太平洋に於ける両国の領土を安全に保証
第4条 清国の独立、領土保全及び清国に於ける各国商工業の機会均等
第5条 現状維持又は機会均等を危険に陥れる事件の場合には互いに通知
(要約のみ)
米艦揚子江派遣 29日上海経由ロイター社発
米国軍艦2隻は、過日揚子江を引き揚げた同国軍艦2隻の交代として、マニラを出発し、同地に向かう旨命令された。
巴爾幹時局 同上
墺兵の狼狽遁走
ベルグラード来電―セツネンエからの公報に依れば、モンテネグロ国境のオーストリア兵2万2千人は、交通を遮断されたと信じた為に、大いに狼狽し、弾薬、大砲等の一部を放棄し遁走した。これに対しオーストリアの将官2名が懲戒免職となった。