期日 | 日本関係 | 期日 | 露清関係 | 期日 | 英米関連 | 期日 | 独仏その他関連 |
10月1日 | 日貨排斥熄まず | 10月3日 | 阿片禁止問題 | 10月1日 | 英国失業者救助策 | 10月1日 | 北部波斯形勢 |
10月19日 | 米艦来鵬程2万9千哩 | 10月26日 | 露軍の波斯侵入 | 10月4日 | 米国艦隊麻尼拉着 | 10月2日 | 土耳古紛議楽観 |
10月22日 | 首相邸晩餐会 | 10月28日 | 露国軍隊波斯侵入問題 | 10月7日 | 巴爾幹問題と獨英 | 10月6日 | 巴爾幹形勢危殆 |
10月23日 | 日本の歓迎と米国民 | 10月31日 | 米国艦隊厦門着 | 10月8日 | 英国政府の態度 | 10月7日 | 勃牙利独立宣言 |
10月23日 | 英国失業者救済案 | 10月7日 | 列国と巴爾幹 | ||||
10月9日 | 塞比亜憤怒の理由 | ||||||
10月10日 | 墺国首相談話 | ||||||
10月11日 | 勃牙利の独立通牒 | ||||||
10月12日 | 墺太利の戦備 | ||||||
10月13日 | 開戦不可能 | ||||||
10月14日 | 列国の意嚮 | ||||||
10月15日 | 勃牙利の決心 | ||||||
10月16日 | 露国の意嚮 | ||||||
10月17日 | 土耳古の通牒 | ||||||
10月18日 | 独逸皇帝の態度 | ||||||
10月20日 | 土勃関係改善 | ||||||
10月21日 | 勃牙利の意嚮 | ||||||
10月21日 | 土耳古の動員令取消 | ||||||
10月22日 | 土勃協議好望 | ||||||
10月23日 | 墺太利と列国会議 | ||||||
10月24日 | 塞爾比の主張 | ||||||
10月25日 | 英墺獨外交関係 | ||||||
10月27日 | 塞爾比太子露国行 | ||||||
10月28日 | 墺国の意向 | ||||||
10月29日 | 列国の勃牙利助言 | ||||||
10月30日 | 勃牙利の同意 | ||||||
10月31日 | 露国民心の帰嚮 |
10月1日
北部波斯形勢 30日タイムス社発
タブリツ来電―当市は、ペルシャ国王に反抗する事ほとんど5カ月間に及んでいる。又官軍の名目を用いて市外に集合する匪賊等は、厳冬の接近と資金の不足の為に解散する事になるであろう。
英国失業者救助策 29日上海経由ロイター社発
1万7千人の失業者を特別予備軍に入隊させる事に依って、冬期を通過させる事が出来ると言う陸相ハルデン氏の提案は、諸新聞に於いて重要問題として掲載されつつある。そして一部の労働派はこの提案に賛成し、一部はこれに反対し、寧ろ徴兵制度に賛成する模様である。
日貨排斥熄まず 30日桑港特派員発
シンガポールの支那商人クオグタルソは、日本品を輸入した為に、広東人と汕頭人(スワートじん)が連合して、同商会を排斥し、付近の同志へ排斥の檄文を飛ばした。同商会は、止むを得ず、錯誤で輸入した事にして、千5百ドルの罰金を提出する旨申出て漸く落着した。なお最近およそ一万ドルの日本貨物を積んで来たけれど、荷受け人が一人も現れないそうである。
解説:汕頭は広東省の東部に位置する港で、歴史的に華僑を多く輩出している。
10月2日
勃牙利動員説 1日タイムス社発
コンスタンチノープル来電―ブルガリアは、現在密かに独立運動に着手し始めているかも知れないと、当地に於いては次第に不安な兆候を呈し始めている。ブルガリアは、間もなく東ルーメリアに於いて催される陸軍演習の為に、大部隊を動員するものと信じられている。
解説:9月29日勃牙利独立説の続報
土耳古紛議楽観 同上
ソフィア来電―ブルガリア政府は、東洋鉄道の運転上の権利買収に関し、慎重に同会社と協議するつもりであると正式に列国に保証する筈である。もっとも同鉄道に対するトルコの所有権は、これを承認するであろう。この問題に関する諸新聞の論調は穏やかであり、結局平和的に解決する為にトルコも、敢て何処までも条約上の権利を主張する様な事はないと思われる。
10月3日
巴爾幹紛議と列国 2日タイムス社発
パリー来電―佛国政府は、トルコとブルガリア間の紛議をベルリン条約調印諸国の協議、採決に委ねようとする露国の提案に同意する事に決定した。但しオーストリー、ハンガリーはこの提議を歓迎せず、これはむしろ同問題の解決を遅らせるに過ぎないと言っている。
土勃紛議後報 1日上海経由ロイター社発
ソフィア来電―ブルガリア政府は、列国に送る予定の通牒を起草したが、同書は、鉄道占領の動機を説明し、且つ再び現状維持の政策を取る事は不可能であると言明している。
コンスタンチノープル来電―官憲側に於いては、ブルガリアとの衝突が公明な決定を見るであろうと信じている。
阿片禁止問題 同上
ロンドンタイムスは、社説に於いて、若し英国人に阿片の売買を中止させようとするならば、清国人もケシの栽培を放棄しなければならないと痛烈に清人の注意を促した。
解説:清国の阿片は、インドからの輸入と国内で生産されたものとがあった。
10月4日
巴爾幹問題会議 3日タイムス社発
露都来電―信頼すべき筋からの情報によれば、トルコ、ブルガリア間の鉄道紛争を解決する為の列国会議を開こうとする露国の提議は、佛、伊、独諸国の賛成を得るに至った。これは、列国が悉くブルガリアの独立運動を喜んでいなので、露国は、この会議で多分この重大な紛争を単にベルリン条約中の2、3条項の法律的解釈論として処理する事ができると思考している。
結核病とコッホ 同上
ワシントン来電―コッホ博士が、背部隆肉結核に関する重要案件に付いて、反対論者と論争した。大会に列席した学者60名は、今回非公式の会合を開き、その結果、多数の発見について、コッホ博士が自己の学説を論証する事が出来なかったと認めたものと了解された。
解説:コッホ博士とは、ドイツ人のロベルト・コッホと思われる。多くの学者が反対している理由が判然としないがコッホ博士は、明治38年(1905年)に結核に関する研究により、ノーベル生理学・医学賞を受賞している。
米国艦隊麻尼拉着 2日桑港特派員発
大西洋艦隊は、本日午後3時マニラ湾に到着した。数千の市民が海岸に集まり、歓呼の声でこれを迎えた。但し悪疫が流行している為、水兵の上陸は許さず、又一切の歓迎を延期し、明日水上観閲式を挙行する事になった。
解説:9月30日「米国艦隊と虎病」にあるようにフィリピンでコレラが流行している。
米国艦隊の風紀 同上
大西洋艦隊前司令官エヴァンズ少将の令息中佐フランク、エヴァンズ氏は、戦艦リジアナ号に乗組み、マニラに航行中、職務怠慢、上官反抗、酒乱の三罪に問われ、軍法会議に掛けられた。この外乗組員中、不行跡者が非常に多いとの評判が高い。
10月5日
欧州移民減少 3日紐育特派員発
本年9月までの欧州移民は、例年に比べて非常に減少しており、一度に5百人の移民が来た事は殆どない。イタリアから去る8月中に渡米した移民は4,262人であるが同月帰国した者は20,582人である。
解説:8月21日「米国不景気影響」にも見られる様に、不景気の為に白人の移民は減少している。そしてプアーホワイトの排日運動が激しくなっている。
10月6日
巴爾幹形勢危殆 5日タイムス社発
パリー来電―ブルガリアは、来る月曜日を以て独立を宣言し、オーストリアは、翌火曜日を以てボスニア、ヘルチェゴビナの合併を宣言するであとう。
オーストリア皇帝は、昨日親書を佛国大統領に送り、オーストリアの今回の行動は、一にボスニア人が憲政の実施を要求した事に起因している旨を宣言している。ドイツ、ロシア、イタリアは、既にこのベルリン条約違反の行動に同意しているが、唯佛、英両国のみ反対側に立っている様である。
なおトルコは、ボスニアを失う事に反対はしないが、ブルガリアの行動は、戦争を引き起こす事になるかも知れないと言っている。
解説:9月29日勃牙利独立説の続報
巴爾幹問題別報 5日上海経由ロイター社発
英国は、鉄道問題の解決の為にトルコ、ブルガリアに提案を行い、トルコは、ブルガリアが完全に鉄道を会社に引き渡すならば、トルコ帝の権利を保証する事を条件として、同鉄道をブルガリアに租借させる事に同意した。
そして英国は、ベルリン条約の調印列国に対し、ブルガリアに前記の方法に依る解決を勧告するよう求め、列国はこれを行う事に同意した様である。
10月7日
勃牙利独立宣言 6日タイムス社発
ソフィア来電―ブルガリアは、古都チルノブヴォに於いて、独立王国の宣言を行い、人民は非常に歓喜している。ブルガリア公は、同国が労苦30年、ここに文明国の列に加わるに足る発達を遂げたと説き、且つトルコとの関係も今や親密なものと信じると宣言した布告文を朗読した。
巴爾幹問題と獨英 6日上海経由ロイター社発
最近の情勢が益々重大となっているとは一般の認識している所である。
ロンドンの諸新聞は、ブルガリアが傲慢な行動を執り、又オーストリアがボスニア、ヘルツエゴビナ2州の併合を企て、共にベルリン条約を無視している点を一致して攻撃している。
ロイター社が官憲筋から聞いたところに依ると、英国は、ベルリン条約を調印した列国の同意を得ない以上、一切ベルリン条約の変更に同意しない。又ベルリンの有力な説によれば、ドイツは、オーストリア公の親書に回答して、ブルガリア問題と全く別のボスニア合併に賛成する事を確約し、又同国は、現在ブルガリアの戦備が整っているのに反して、トルコ軍隊は、戦争準備ができていない為に、ブルガリアに警告する行動をとる事は出来ないと主張するであろうと言っている。
列国と巴爾幹 5日桑港特派員発
ブルガリアは5日独立を宣言し、同国軍隊は国境に向け進軍中である。トルコも又国境に軍隊を集中し、オーストリアとハンガリーは、2個軍団の動員令を発令した。トルコは、オーストリアがドイツの後援を得て、ブルガリアに独立を教唆したものと見なしている。トルコの態度は不明であるが、列国会議を開いて全体の解決を希望していると思われる。
10月8日
巴爾幹時局 6日タイムス社発
英国政府の態度
英国政府は、ブルガリアの独立、オーストリアのボスニア、ヘルチェゴビナ両州の併合に関して、何れの国と言えども、列国の同意を得ずにベルリン条約を変更する権利を修していないので、列国の意見が明瞭となるまでは、既成の事件を承認する事を拒み、又トルコに対しては、トルコ政府がこれに対して自ら報復手段を取らない様希望している。
トルコの回答
コンスタンチノープル来電―トルコ皇帝は、民論に従いここに独立を宣言せざるを得なくなった旨を陳述したブルガリア公フェルナンドの電報を受領し、大臣会議は、これに対し、ブルガリアの独立を承認する事は出来ず、又これはベルリン条約に調印した列国の利害に関係する旨回答することに決定した。
タイムスの意見
ロンドンタイムスは、ブルガリアの独立宣言は、不法で大胆なベルリン条約違反事件であり、又ブルガリアとオーストリアの行動は、トルコの自由派に反対する協同的密謀の一部であると論評した。
10月9日
巴爾幹時局 7日上海経由ロイター社発
塞比亜憤怒の理由
ロンドン駐在セルビア大使代理は、ロイター社員と会見し、セルビアの憤慨について説明を行った。ボスニア住民の多数は、先にオーストリアの一時的占領に対し、激烈に反抗したセルビア人であり、セルビア国も同地の為に2回の戦闘を行った関係がある。特に今回の同地併合は、オーストリアがサロニカ占領を最終的な目標に一歩進める所以であり、又サロニカ占領は、実に政治上、通商上セルビアを黙殺するものである。そして今回セルビア人の憤慨が如何なる事態を生ずるか予言し難いけれども、これは民論が政府に及ぼす結果如何に依ると説明した。
解説:「セルビア人の憤慨が如何なる事態を生ずるか予言し難いけれども」とあるが、第1次世界大戦は、オーストリア・ハンガリー帝国の皇太子夫妻がボスニア系セルビア人によって暗殺された事に依って生起している。
10月10日
米国陸海軍の飛行器 9日タイムス社発
米国政府は、悪天候にも耐えうる空中飛行器を陸軍にも海軍にも供給しようと検討中である。
解説:飛行機の名称について初めて飛行器と表現されている。ライト兄弟の飛行器は、5月16日の記事「米国軽気球試験」に見られる様に当初は軽気球と呼ばれていた。
巴爾幹時局 8日上海経由ロイター社発
塞比亜の宣言
セルビアの首都ベオグラードに於いて、列国に対し正義を旨としてセルビアを保護する様に訴え、ボスニアの現状維持を要求し、若しこれが難しいのであれば、セルビアの独立的存在に必要な賠償を与える事を望んだ布告文を発した。又首都では、オーストリアに対する反対運動が引き続き行われ、オーストリア公使館の窓ガラスが破壊された。
英国の意見
英国外相サー、グレーはウーラーに於いて、同首相アスキス氏はレヴェンに於いて演説し、英国は、列国の協議が終わるまではベルリン条約の変更を承諾しないと明言した。又外相は、この問題について平和を攪乱する恐れがあると考えていないと言明した。
墺国首相談話
ブタペスト来電―オーストリア首相は、ブタペストの代議員連に対して、ボスニア及びヘルチェゴビナを正式にオーストリア領土に編入する事は、自然の結果である。又オーストリアの行動は、ベルリン条約の精神と一致していると語った。
10月11日
巴爾幹時局 10日タイムス社発
英露佛通牒 コンスタンチノープル駐在英、露、佛の3国大使は、各本国政府がベルリン条約の規定は調印各国の同意なくして変更する事は出来ないと思考している事をトルコ政府に通牒すべき旨訓令された。イタリアも多分この運動に加勢する事になるであろう。
巴爾幹時局 10日上海経由ロイター社発
独逸の空惚 ドイツはトルコに対し、ブルガリアの独立宣言及びオーストリアのボスニア併合に付いて、その事実が現れる迄何事も知らなかった事及びブルガリアの行動は、ただ驚愕の外ない旨を明言した。
塞比亜の地位 オーストリア政府は、ボスニア併合に対し、セルビアは干渉する権利が無いと同国の抗議を突き返した。
英国軍艦出港 4隻の英国戦艦及び4隻の巡洋艦は、ベッテンベルグ提督の指揮の下に昨日、マルタ港を抜錨した。多分レムノス島に向かうものと信じられている。その他の軍艦も急遽ドックに入り、修理中である。その筋に於いては、これら軍艦は、近東に於ける動静監視の為に派遣されたものと言明している。
巴爾幹時局 9日ベルリン特約通信社発
勃牙利の独立通牒 オーストリアへ派遣のブルガリア特使は、ブルガリアの独立を認められたいとの要求を列強に発送した旨オーストリア首相に通牒した。
墺国動員無根 オーストリアが軍事行動を起こしたとの風説は無根である。
解説:10月7日「列国と巴爾幹」にオーストリアとハンガリーは、2個軍団の動員令を発令したとの記事がある。
10月12日
巴爾幹時局 10日桑港特派員発
塞比亜民心の沸騰 ベルグラード来電―今や官辺に於いても、戦争を避ける事ができないと見なす様になっている。陸軍大臣パシッチ氏は、米国連合通信社員に対し、時局は最も危険な状態にあり、衝突は避ける事ができないと述べた。今朝市民大会が開かれ、戦争、戦争と盛んに叫ばれ、市民は今や狂気の様である。
墺太利の戦備 ウイーン来電―オーストリア第十一及び第十三軍団はセビリア国境に急行を命じられ、病院船、車が準備された。
独逸の空惚 トルコ駐在独逸大使エーベルスタイン男爵は、トルコ首相を訪問し、独逸皇帝の命令であるとして、今回の事件が独逸とオーストリアとの黙約に基づくとの風評を否認した。
10月13日
巴爾幹時局 12日上海経由ロイター社発
開戦不可能 セルビア議会は、昨日5時間に亙って秘密議会を開いた。議事の模様に付いて議員は沈黙を守っているが、会議は非常に喧騒を極めたと伝えられている。なおこの秘密会議は、外務大臣が戦闘を開始出来ない理由の一つを説明した後に開かれているが、それは、弾薬及び新式大砲の不足であり、これらの武器は、セルビアに輸送の途中、オーストリア国境に於いて差し押さえられている。
モンテネグロの親英熱 モンテネグロ国セツテンエ府に於いて、親英運動が行われ、住民が大行列を行い、イギリス、モンテニグロ及びセルビアの3国旗を掲げて、宮廷に集合した。モンテニグロ国王ニコラス一世は、これに対してセルビア民族を防衛する為には、如何なる犠牲を辞せずと声明した。
墺塞両国談判 セルビア政府は、一般大衆の示威運動と異なった極めて賢明な態度を以て、オーストリアの談判に答えて、今回予備軍の召集を行ったのは、国内の鎮静の為であると言明した。
解説: 1914年、オーストリア皇太子夫妻がボスニア系セルビア人によって暗殺され、オーストリアがセルビアに宣戦布告をした事を契機に第一次世界大戦は始まった。第一次世界大戦まで後6年の情勢である。
10月14日
巴爾幹時局 13日タイムス社発
列国の意嚮 コンスタンチノープル来電―オーストリア以外の列強は、今回の事件がベルリン条約違反である事を承認し、且つ主義に於いて列国会議に同意するつもりである旨トルコに通知した。
巴爾幹時局 12日上海経由ロイター社発
塞比亜議会の決議 ベルグラード来電―セルビア議会は、満場一致で政府の信任を決議し、又特別軍事費として1千6百萬フランの支出を可決した。
英露と列国会議 英国外相サー、グレー及び露国外相イズウオルスキー氏は、今や列国会議が必要であるとの点についてお互いに一致した。猶同会議は、多分ボスニア及びハンガリー以外の諸問題も討議されると思われる。
10月15日
巴爾幹時局 14日上海経由ロイター社発
土耳古の排墺熱 トルコに於いては至る所で、オーストリア製品の排斥運動が盛んとなり、多数の国民は、赤色のオーストリア製帽子を脱ぎ棄て、その代わりに白色のトルコ製帽子を被っている。
勃牙利の決心 佛国新聞マタンのソフィア通信員の報道によれば、ブルガリアは、同国の独立の件を列国会議に委ねる事に決心した。同国はトルコ政府に向かって、即時その独立を承認する様要求し、若し3日以内に回答が無ければ宣戦を布告するものと思われる。
モンテネグロの戦備 モンテネグロ議会は、秘密会議を開き、政府の要求した軍費を全て可決した。
解説:モンテネグロはオスマントルコと度々闘っており、日露戦争ではロシアと共に日本と戦っている。現在の人口は約60万人
米国人の感情 13日桑港特派員発
日本に於いて米国実業家が歓迎を受けた報道は、一般米国人に非常な好感情を与え、13日朝のクロニクル新聞は、その社説で日露戦争中の様な日米親交を回復する事ができるであろうと論評している。
巴爾幹問題と英露 同上
露国外相イズウォルスキー氏は、英国外相グレー氏に列国会議を開く事を承諾させた。議題は、単にブルガリアの独立とオーストリアのボスニア、ヘルチェゴビナ併合に止まらず、近東諸問題に関係するであろう。これは露国外交の成功と称されている。
10月16日
巴爾幹時局 15日タイムス社発
露国の意嚮 最も信頼できる筋から得た報道に依れば、露国政府は、オーストリア及びブルガリア両国とトルコ間の問題については、欧州列国の協議に依り決定すべき事項であるとしている。又オーストリア及びブルガリアが、既に遂行した所は、今さらこれを旧態に復する事は出来ないが、ブルガリアは、トルコ政府に賠償を支払い、オーストリアは、セルビア及びモンテネグロの利益を保護する点に付いて、列国会議の裁断に従うべきであるとの意見を有している。
トルコの墺品排斥 コンスタンチノープル来電―オーストリア貨物の排斥運動の結果、多分オーストリアの汽船は、航海を中止せざるを得なくなるものと思われる。
巴爾幹時局 15日上海経由ロイター社発
最後通牒説否認 ブルガリア政府が、トルコ政府に最後通牒を送ったとの報道は、ソフィアに於いて強く否認された。
解説:昨日の「勃牙利の決心」に最後通牒の記事がある。
独逸の勧告 ケルニッヒツアイツングのフォフィア通信に依れば、ドイツ公使は、ブルガリアに向かって、同国が鉄道を放棄するか、若しくは1日1万5千フランの賠償金を支払うまでは、同国の独立問題を討議する事は出来ないと通知した。
10月17日
巴爾幹時局 16日上海経由ロイター社発
英露外相妥協 露国外相イズキ―氏は、ダータネルス海峡問題について妥協する為に、英国外相グレー氏との会見を、日一日と延期した。この問題は、ロシア、トルコ別々に英佛の好意的な支援によって解決されるであろう。なおジュネーブ委員の許可を得て、領土保証の形で、セルビアに幾分の損害賠償をする事になると思われる。
勃牙利の決心
ブルガリアは、佛国新聞マタンの記者を引見し、何回も平和を尊重する意思を明らかにした。しかし不幸にして再び独立を買うことができない事態となったならば、生命と血を掛けて、又今回の様にするであろうと語った。ちなみにオーストリアの汽船は、ベイルントに入港する事を禁止された。
解説:数年前、ブルガリアから防大に留学している学生と話す機会があった。琴欧州の様に美丈夫な彼は海上要員で、ブルガリアは黒海に面し、海軍を持っているとの事であった。
土耳古の通牒 トルコは列強に覚書を発送し、ブルガリアの軍事的行為について注意を促し、もしブルガリアが執拗にトルコに対し、悪意ある態度を固辞するならば、トルコは、不本意であるがこれに対する予防的手段を取らざるを得ないであろう。そしてトルコは、ブルガリアとの衝突に付いて、責任を負わない旨を通告した。
10月18日
巴爾幹時局 17日タイムス社発
独逸皇帝の態度 ウィーン来電―ドイツ皇帝は、オーストリアのボスニア及びヘルチェゴビナの併合に成功した事を祝し、且つ十分な援助を約束する親書をオーストリア皇帝に送ったと言われている。
巴爾幹時局 17日上海経由ロイター社発
ブルガリア新聞の憤激 トルコの公文に接し、ブルガリアの諸新聞は、非常に不穏な語調で情勢を論評している。
解説:トルコの公文とは、昨日の記事「土耳古の通牒」と思われる。
独逸新聞の態度 独逸新聞は、列国会議の提案に極めて冷淡な態度を採り、オーストリアとトルコ両国の利益を無視して、賠償を支払わせる事には反対であると主張している。
ブルガリアの回答 ブルガリアは、去る15日報道されたオーストリアとトルコ両国の提言に同意する事を拒否した。
10月19日
米艦来鵬程2万9千哩 破天荒の壮挙
そもそもこの艦隊が北米ハンプトンリーズを出発して、太平洋回航の途に上ったのは昨年12月16日であり、桑港から再び大航海を開始したのは7月7日で、横浜着は本日(18日)であった。航程は、前後実に2万9千マイルであり、日数は308日であった。これは未曾有の大航海であり、その行動は実に破天荒と言う他ない。
雄姿堂々16隻波を蹴て進む
来航艦隊は、一小隊毎におよそ5百メートルの距離を隔て、各艦毎に3百5十メートルの間隔をとり、司令長官スペリー少将の座乗する戦艦コネチカットを先頭にして、16隻の戦艦は雄姿堂々、単従陣を組み、波を蹴って進むその壮観は譬えようもない。
愈々横浜入港 見事なる一斉投錨
四小隊及び通報艦で編成された軍艦三笠、富士、朝日、相模、吾妻、八雲、日進、春日、香取、鹿島、筑波、生駒、音羽、新高、対馬、淀の16隻は、防波堤外の予定錨地に錨泊して、今や遅しと待ちうけていたが、午前8時30分頃、泰山の様な来航艦隊は、威風堂々と静かに港内に進み来た。予定錨地内に入ると旗艦コネチカットには、第二小隊を合わせて8隻の軍艦を1列とし、我が旗艦列の北方に相対して平行となり、他の第三小隊は第四小隊を合わせてこれも8隻の軍艦を一列として、小隊毎に見事な一斉投錨を行った。
禮砲の交換 乾坤覆らんとす
彼我艦隊の登舷礼式が形式どおりに終了すると、ズドンとばかりに一発の砲声が先ず海から海、山から山に響き渡った。これは来航艦隊の旗艦から発せられた禮砲の第一声であると知られた。その数21発、我が旗艦はこれに答えて又21発の答礼砲を行えば、彼は更に我が司令官長官に対して15発の礼砲を行う。ここに我また彼の司令長官に対して同数の礼砲を発射した。
禮砲の交換が終了すると山下参謀長は来航艦隊旗艦コネチカットに赴き、その来訪を祝し、諸般の打合せを終わり、三笠に帰還した。午前10時半司令長官スペリー少将は、ウエンライト、エモーリ、シュローダー三少将と共に、その幕僚を従えて我が伊集院司令長官を旗艦三笠を訪問した。公式の訪問を終わり帰還しようとするその刹那、我が艦は少将に対する13発の規定禮砲を発射し敬意を表した。これが終わり、スペリー少将が旗艦するや我が伊集院司令長官もまたその幕僚を従え、スペリー司令長官をその旗艦コネチカットに訪問して、堅い握手の交換及び親交の意を表する挨拶を行った。その際同旗艦はまた我が中将に対する15発の規定の礼砲を行い、敬意を表した。
解説:米国ルーズベルトは、1904年から1907年にかけて11隻の戦艦を建造したが、その海軍力を誇示する為に大西洋艦隊に配属された戦艦16隻を基幹とし兵員14,000人の艦隊を編成し世界一周の航海を行っている。日本海軍も三笠を含む16隻の艦隊を横浜沖に投錨させて歓迎している。21発の礼砲は国家に対する禮砲
10月20日
米艦隊歓迎論評 19日タイムス社発
ワシントン来電―米国艦隊の日本訪問に関する諸新聞の論評は、慇懃を極め、且つ希望をもって満ち溢れている。トリビューン新聞は、日本が太平洋上で最強の海軍競争相手に対して備えようと希望するのは、これは全く自然な事であると説き、ポストその他の有力紙は、皆戦争談は終了したと言明し、日本人の米国艦隊歓迎に付いて、華やか記事を掲載している。
巴爾幹時局 同上
土勃関係改善 近東に於ける情勢は、明らかに平和に向かっている。前週は危険な状態に陥っていたトルコとブルガリアの関係も、ブルガリアが予備招集を中止した結果、大いに改善した。トルコも又、自らその戦争準備を中止した旨を宣言した。
巴爾幹時局 19日上海経由ロイター社発
獨帝の返簡 駐オーストリア独逸大使は、ボスニア併合に関する書簡に答えた独逸皇帝の書簡をオーストリア皇帝に奉呈した。
ベルリン来電―外務省は、独逸皇帝の書簡が極めて友愛な言葉を用いたものであるが、オーストリアに軍事援助を約束したとの説を事実無根である旨を発表した。
10月21日
巴爾幹時局 20日タイムス社発
勃牙利の意嚮 パリー来電―佛国大統領は、ブルガリアがトルコと平和に時局を解決しようと決心した旨を宣言し、且つトルコに賠償を支払う事が正当であると承認したブルガリア公の書簡を受領した。
墺国と列国会議 ウイーン来電―オーストリア半官報が暗示する所に依れば、オーストリアは、列国会議の開催を好まず、首相エレンタク男爵は、むしろオーストリア単独でトルコと協議する事を希望している由
巴爾幹時局 19日上海経由ロイター社発
セルビアの排墺熱 ベルグラード来電―暴民等は、昨夜オーストリア人の商店の窓ガラスを破壊したが、憲兵は干渉しなかった。
土耳古の動員令取消 去る土曜日に発令されたトルコのアナトリアン軍団の動員令は、同夜直ちに取り消された。これはトルコがブルガリアから平和の証言を得た結果である。
10月22日
波斯内政危機 21日タイムス社発
露都来電―テヘランからの報道に依れば、ペルシャ王は必死の地位に陥っており、外務大臣は直ちに国会召集を行うよう主張している。又ノーウォエ、ウレーミヤ紙のタブリツ通信員は、露国は秩序維持の為に軍隊を派遣せざるを得ないと宣言したと伝えている。
巴爾幹時局 21日上海経由ロイター社発
モンテネグロ特使拘留
オグラムのオーストリア官憲は、モンテネグロ公がセルビアに派遣した特使ヴコネチ将軍を7時間拘留し、種々の探索を行い、次いで首相エーレンタル男爵の特別命令により、開放した。又ヴコネチ将軍は、ベオグラードに於いて熱心な歓迎を受け、市民は愛国的な歌を歌いながら、将軍の馬車を宮廷に導き入れた。
土勃協議好望 トルコの代表者は、トルコ、ブルガリア両国協約の基礎を定める事ができたので、ソフィアを出発した。又コンスタンチノープルのブルガリア代表者は、トルコ宰相及び外相を訪問し、両国間の問題を解決する条件について協議を行った。
巴爾幹時局 20日ベルリン特約通信社発
勃牙利賠償問題 東ルーメリアに関するブルガリアの賠償について、ソフィアに於いて更に協議を重ねている。
塞爾比の示威運動 その筋の同意を得て、最も熱心な示威運動がベルグラードに起こった。オーストリアはこれに対して抗議を申し込んだ。
内国電報
首相邸晩餐会 桂首相は、昨日午後7時半から米国艦隊司令長官スペリー提督を主賓として、同艦隊司令官、艦長、参謀、副官、米国大使、同館員並びに我が大勲位、各大臣、陸海軍大将を永田町の官邸に招き晩餐会を催した。9時頃散会した。(一部抜粋)
桂首相の夜会
既報のとおり、桂首相は、昨夜9時半から永田町の官邸に於いて、回航艦隊の将校及び現在在京中の実業家を主賓として、更に内外の文武官、有力実業家等およそ1,300人を招待して盛大な夜会を催した。首相はこの夜会に備え、10日前から準備に取り掛かり、一昨夜漸く完成した。散会したのは今朝零時半となった。(一部抜粋)
陸相午餐会
寺内陸軍大臣の米国艦隊歓迎午餐会は、21日正午から小石川後楽園に於いて開催された。(一部抜粋)
10月23日
巴爾幹時局 22日上海経由ロイター社発
墺太利と列国会議 コンスタンチノープル来電―信頼すべき筋より聞いた所に依れば、オーストリアは、トルコがボスニア及びヘルチェゴビナの併合に対し、何らの異議申し立てをしない事を認めないならば、列国会議に同意しないと思われる。
土耳古と列国会議 トルコは、今や列国会議を避ける事ができないと認め、これに関する反対を中止し、列国に向けて自国の要求を列記した通牒を送付した。
墺太利の謝罪 オーストリアは悲しむべき誤解の為に、モンテネグロ使節ヴィコネチを拘留した件について、モンテネグロに謝罪した。
解説:昨日の記事「モンテネグロ特使拘留」に細部がある。
英国失業者救済案 同上
英国アスキス氏は、議会に於いて失業者救済に対する政府の案を詳述した。即ち政府は、救済費として30万ポンドを支出する予定で、海軍省は水雷艇及び巡洋艦の建造の為に3百万ポンドを費やし、陸軍省は2万4千名を特別予備兵に招集し、又郵便局に於いてはキリスト降誕祭の際に、8千名の郵便配達夫を失業者中から雇う予定であると述べた。但し労働党員は、これでは不完全であると考えている。
日本の歓迎と米国民 21日紐育特派員発
日本の米艦歓迎に関し、ニューヨーク市の諸新聞、特にヘラルドは熱心に、歓喜を込めてこれを特筆大書した為に、一般に日本人の親切さを感じる者が多く、大いに過去の悪夢を払った観がある。特に小学生徒が米国国歌を歌ったとの報は、痛く米人を驚かし、新聞紙中でも社説に於いて特にこの事を激賞したものがある。
解説:昨日の記事「陸相午餐会」で省略したが、スペリー提督一行を待ち構えて「小石川高等小学校男女生徒の一隊は、一斉に米国国歌を唱和し、両国国旗を打振り」の記事がある。
10月24日
巴爾幹時局 23日タイムス社発
塞爾比の主張 ベオグアード特信によればセルビアは、ボスニア及びヘルチェゴビナ両州をオーストリアに併合し、これに自治を与える場合には、自国にも相当の報酬を払わなければならない事をトルコに対して主張するであろう。そしてこれが受け入れられない場合には戦争は避け難いであろうと言われている。
解説:このボスニア危機と呼ばれるオーストリア・ハンガリー帝国とセルビアとの戦争の危機を時系列で整理する。
1 豚戦争
オーストリアは、1906年セルビアが兵器購入先をオーストリアからフランスに変えた事からセルビアの豚肉等農産物の輸入禁止とした。
セルビアは、オスマン帝国のサロニカ港経由でヨーロッパ諸国に販路を求め成功し、オーストリアからの経済的独立を達成した。これは「豚戦争」と呼ばれ、セルビアの反オーストリア・ハンガリーへの民族意識が高まった。
2 併合
オーストリアは、オスマン帝国領であったボスニア、ヘルチェゴビナの行政權を獲得していたが、1908年トルコに青年トルコ革命が起こると、バルカン半島進出を企て、ロシアにボスポラス=ダーダネルス海峡の通航権を承認する事に依り、ロシアと密約し、2州を併合した。
一方セルビアもアドリア海への進出を企ており、セルビア人が多数居住する2州を狙っており、オーストリアとの対立は決定的となった。
3 ロシアの変心
しかし、オーストリアにとって意外だったことに、英仏がロシアのボスポラス=ダーダネルス海峡の通航権を承認しなかったのでオーストリアとの密約が画餅に帰したロシアでは、セルビアに同情的な世論が高まり、オーストリアに対し強硬な態度をとることを余儀なくされたのである。
4 ボスニア危機
こうしてセルビア側には主権を侵害されたオスマン帝国やフランスに加えてロシアが加担することとなり、併合宣言後の約半年間にわたって開戦が危ぶまれる外交危機(ボスニア危機)が続いた。
5 戦争危機の回避
しかしオーストリアは、開戦準備が十分でないことを理由に開戦を断念し、オーストリアの同盟国であるドイツがロシアに最後通牒を突きつけてセルビアへの圧力をかけさせたため、同年セルビアは併合を承認し、戦争の危機は回避された。
内国電報
ス提督退京 新橋駅の見送り
19日入京以来、特に宮中から心の籠った御接待を受け、又東京市、その他各個人団体の熱心な歓迎に忙殺された回航艦隊司令長官スペリー提督は、昨23日新橋発の汽車で退京した。
19日、提督の入京の際、同駅にて米国国歌を合唱し、深く入京の将校を感動させた各区の小学校生徒千余名は、プラットホームの南端に整列して提督の来るのを待っていたが、今や市民の歓声に送られて構内に入り、楽隊の奏楽に連れて一斉に米国国歌を合唱した。(一部抜粋)
接伴艦隊の盛筵
富士艦上の晩餐
23日午後7時30分、食堂を開き、スペリー少将を首席として各司令官、各艦長及び主人役である伊集院中将、並びに東郷軍令部長、伊東元帥、井上大将、米国大使、日本各艦長等が定めの席に着いた。
9時宴を終了し、一同三笠艦上に於ける夜会に赴いた。(一部抜粋)
三笠艦上の夜会
軍艦富士の宴を終わると、奏楽の間に主客一同はランチに乗って三笠艦上へと移動した。そして三笠の夜会は、9時20分に開始された。
来賓一同は、11時を以て艦を辞した。この夜会中、防波堤の辺りでは、イルミネーションの外に花火を打ち上げ、仕掛け花火を点じ、非常な美観を呈した。(一部抜粋)
12月25日
巴爾幹時局 24日上海経由ロイター社発
鉄道問題賠償金 リフィアに帰着しブルガリアの使節は、トルコへの支払い金に付いて何等の協定にも応じなかった。しかし鉄道問題の難点は、トルコとブルガリア両国委員の手で解決する事に協議は一致したが、トルコは、支払い金の期限が経過した為に、ブルガリアから支払われるべき金額を1千万ポンドとした。
墺土交渉行悩 オーストリアとトルコ間の商議は行き悩みの状態であり、トルコはオーストリアのボスニア及びヘルチェゴビナ併合に関し、欧州列強の採決を仰ごうとし、オーストリアはトルコと直接に問題を解決する事を希望している。
塞爾比の要求 セルビア政府の大臣ノワコネクス氏は、コンスタンチノープルへ向かって出発した。セルビアの特使は、ボスニア州ドリア川に沿うセルビアの境界を延長し、モンテネグロと接続する事を要求した。
英墺獨外交関係 ウイーン来電―オーストリア新聞は、オーストリアとトルコ間の交渉は、英国に責任があると論じている。且つオーストリアとの2州併合を既成事実として承認する条件で、列国会議に参加する事をオーストリアに勧めたのは独りドイツのみであると報道した。
10月26日
露軍の波斯侵入 25日上海経由ロイター社発
ロイター社コンスタンチノープル通信員の報道によれば、露国軍隊がペルシャのアラス河を渡り、アレルバヤン州に入ってきた。その目的は、タブリッツの占領であると信じられている為に、同市に於いては大変な恐慌を来していると知らせが首都に届いている様である。
解説:ペルシャは北半分は露国の、南半分は英国の勢力圏かであるが、現在内乱状態となっている。
両相の参内伏奏 内国電報
齋藤海軍大臣は昨日午前10時15分、小村外務大臣は同30分参内し、米国艦隊が無事25日に出港した旨を逐一伏奏し、11時過ぎに退出した。
10月27日
土墺勃談判中止 26日タイムス社発
ベルリン来電―トルコ及びオーストリア間、トルコ及びブルガリア間の直接協議の中止は、当地に於いて歓迎されず、これは主に英国の勢力に基づいたものと見なされつつある。
露軍波斯侵入否認 26日上海経由ロイター社発
露国軍隊がペルシャ国境を越えたとの件は、露都に於いて否認された。
解説:昨日の記事を否定している。
巴爾幹時局 同上
墺太利の排英熱 ウイーン来電―諸新聞は盛んに排英的評論を継続し、特に半官報ウイエンネルツアイツングは、英国はトルコがオーストリアとの協議を中止し、列国会議に同意する場合には、万一守旧派が蜂起しても5千万ポンドを融資し、且つ軍艦を送ってこれに声援するつもりと申し出たとさえ言明するに至った。
塞爾比太子露国行 セルビア国太子は、露帝に宛てた父王ピーター親筆の書簡を携えて、露都に向け出発した。
解説:10月24日の解説にある様に結局ロシアはセルビアの支援者となった。
土耳古の懇請 トルコ政府は、今回独逸に対して、オーストリアを列国会議に参加させる様に尽力するよう懇請した。
10月28日
巴爾幹時局 27日タイムス社発
独逸の態度 ベルリン来電―独逸政府は、オーストリアが反対中である諸点を除いて、ロンドン及びパリーで起草された近東問題解決案に同意した。
墺国の意向 オーストリアは、ボスニア及びヘルチェゴビナ両州の併合が既成の事実として承認されるのであれば、列国会議加入の件を承認すると思われる。
露国軍隊波斯侵入問題 26日上海経由ロイター社発
ロイター社のテヘラン通信に依れば、露国のコーカサス兵2個連隊がラルツア方面に集まり、万一タブリッツに於ける露人の利益が危険な場合には、断然進軍すると恐喝している。但し実際にはペルシャ国境を犯したとの報道は未だ無い。
10月29日
巴爾幹時局 28日タイムス社発
列国の勃牙利助言 ソフィア来電―英、仏、露の3国はブルガリアに対し、それぞれ同一の通牒を送り、その軍隊を動かす様な行動を取らずに、寧ろトルコに対して、正当な報酬を与える事を希望し、更に同国が使節をコンスタンチノープルに派遣する様助言した。そしてこの通牒には、独、伊両国も同意したとの事である。
巴爾幹時局 27日上海経由ロイター社発
独逸の態度 巴爾幹問題は益々紛糾し、危険な状態を示している。今後の情勢は、独逸がオーストリアに与える助言如何に依る所が多いと思われる。ベルリン官憲の言によれば、独逸は、根本に於いて列国会議に反対しないが、オーストリアが反対する問題を討議しようとする意見には同意する事は出来ないと言っている。なおこれらの点は、今後協議を要する所であり、独逸及びロシアは、堅忍を以て平和で正当な解決をしようと尽力中である。
英国の干渉否認 英国外務省は、トルコとオーストリアとの協議が中止となったのは、英国政府の助言と勢力に基づいているとの説を否認し、英国政府の意見は、むしろ直接協議が一般的解決を容易にさせる所以であると言うにある。但しトルコの利益を最も良く判断するのは、トルコ自身にあると宣言した。
10月30日
獨帝談論評 29日タイムス社発
独逸皇帝の談話と言われるものが発表され、大いに人心を驚かした。その内容は次のとおりである。
独逸は南阿戦争の際に、露佛両国の排英運動に加わる事を拒否した。又独逸は、太平洋に於ける日本の勢力と将来国民的覚醒のあり得る清国とに鑑み、強大な海軍を有しなければならない。
パリーに於いては、この談話は欧州に不和を生じさせる為に発表されたものであると考えられている。
ロンドンタイムス紙は、これに関する論評に於いて、独逸の海軍が果たして太平洋で使用する目的であるとするならば、何故その軍艦の多数が少量の石炭庫を持つ様に建造されているのか質問した。
解説:ドイツのテルピッツ海相は、いわゆる危険艦隊思想と言われる構想の下に、英国と建艦競争をしている。第一次世界大戦まで6年
巴爾幹時局 28日上海経由ロイター社発
勃牙利の同意 英露佛3国は、ブルガリア政府に送った同文の通牒に於いて、使節をコンスタンチノープルに派遣し、且つ正当な賠償支払う様勧告した。ブルガリア政府は、列国が要求する件等を承諾する旨回答し、予備兵7万5千の解隊に同意した。
塞爾比議会の哀訴 セルビア議会は、露国議会に哀訴し、オーストリアのボスニア略取を防止する為に援助を与えるよう求めた。
解説:10月24日の解説にある様に、ロシアはセルビアに同情的であった。
10月31日
巴爾幹時局 30日タイムス社発
勃牙利の誓約 ソフィア特報によれば、ブルガリアは、英露佛3国に対し、予備兵を招集せず、又トルコと協定を結ぶ為に全力を尽くすであろうと誓約した。
露国民心の帰嚮 露都来電―バルカンのスラブ民族に対する露国民の同情は、各方面で広まりつつある。セルビア皇太子及び首相は、露国がオーストリアのボスニア併合を承諾しないであろうと確信している。
解説:昨日の記事「セルビア議会の哀訴」に関連
獨帝談話反嚮 ベルリン来電―ドイツ皇帝の対英政策に関する談話は、激しい非難を喚起している。
解説:昨日の記事の続報
米国艦隊厦門着 30日上海特派員発
米国艦隊は、本日薩提督の指揮する清国軍艦4隻に案内され、アモイに到着した。なおアモイの愚民間には、米国艦隊は、清国艦隊と協同して台湾を清国の手に取り戻す為に来たとの説が行われている。
解説:米国艦隊は25日横浜港を出港している。