期日 | 日本関係 | 期日 | 露清関係 | 期日 | 英米関連 | 期日 | 独仏その他関連 |
1月4日 | 満州と門戸開放 | 1月17日 | 拳匪賠償金減額 | 1月10日 | 愛蘭形勢不穏 | 1月5日 | 独仏外交関係論評 |
1月5日 | 日本人移民愈々制限 | 1月21日 | 間島問題と満州 | 1月11日 | 日米開戦説否定 | 1月8日 | 印度支那亦動く |
1月6日 | 日本移民趨勢 | 1月22日 | 日清関係論評 | 1月15日 | 太平洋艦隊消息 | 1月12日 | ヨハネスブルグ事件 |
1月6日 | 日本人を殺せ | 1月17日 | 英国海軍政策 | 1月12日 | アビシニア土人の侵入 | ||
1月7日 | 青木大使所説 | 1月19日 | 凶暴な婦人団体 | 1月14日 | 摩洛哥の二王 | ||
1月8日 | 加奈陀新移民法 | 1月23日 | 日米戦争夢物語 | 1月14日 | アビシニアと伊太利 | ||
1月10日 | 移民問題趨勢 | 1月25日 | 英独海軍拡張競争 | 1月15日 | 摩洛哥騒乱発展 | ||
1月11日 | 日本移民転航禁止策 | 1月25日 | 南阿印度人の決心 | 1月17日 | 米国財界動乱の影響 | ||
1月13日 | 日米移民談判 | 1月26日 | 米国東洋学者の日本評 | 1月29日 | 佛国外務卿演説 | ||
1月16日 | 日米移民問題 | 1月28日 | 南阿の亜人登録問題 | 1月30日 | 摩洛哥問題と佛国 | ||
1月18日 | 日本人排斥益激烈 | 1月29日 | 南阿の亜人登録問題 | ||||
1月22日 | 日加移民問題 | ||||||
1月23日 | 移民談判報告 | ||||||
1月24日 | 新移民法適用 | ||||||
1月25日 | 布哇渡航制限 |
1月1日
門戸開放と日本 31日タイムス社発
ローオー汽船会社の書記がロンドンタイムスに寄稿した記事によると、世間で問題となっている同汽船会社社長スザランド氏の演説は次の内容であった。
ローオー汽船会社は、厳重なモノポリーの下で営業する日本汽船の航海回数が増加する為、綿花運輸業に於いて損失を蒙っており、この事実はたまたま綿花運輸業に関して日本が門戸開放主義を取っていない事を証明している。
カサブランカ撤兵 30日ベルリン特約通信社発
佛国外務大臣セション氏は、佛国駐在のスペイン大使に対し、カスバ、メチンナ(カサブランカの西海岸)の占領と同時にカサブランカから撤兵する予定である旨明言した。
解説:モロッコで反乱は起こっており、佛国が兵力を派出している。
1月3日
隈伯とタイムス 1月3日
「タイムス」は大隈伯のインドに関する演説が世論の動揺を招いた事を紹介し、その責任はこの様な人心を動揺させる報道を伝えた日本の新聞にあり、現に世間の問題となっている事に関しては、なるべく細心の注意を払った演説となる様に、相互の自制心が必要であると論じている。
解説:昨年12月25日大隈伯の演説がインド独立を示唆するものと報道され、それを否定する続報が12月28日に紹介されている。
満州と門戸開放 2日タイムス社発
ニューヨーク来電―「サン」新聞は満州における各国貿易商会に就いて問い合わせた事実であるとして、次の報道をしている。満州に在住の貿易業者は、皆日本が表面的には門戸開放を装いながら、その実、特殊な利益を占有し、日露戦争前と全く同じ状態で、単に日本と露国がその地位を異にしたに過ぎないと明言している。因みに米国の満州貿易は以前に比較して5割減少している。
日加移民問題 1日上海経由ロイター社発
本社の調査によると、日加両国の友好は、移民交渉に於いて遺憾なく示され、これと云う程の異論は終に起こらなかった。英国外務省はこの問題について寧ろ第二の地位あり、万事日本とカナダとの直接交渉に任せられている。尚現在詳細については明らにされていない。
1月5日
摩洛哥のその後 3日タイムス社発
摩洛哥に対するアルゼリア国境付近での戦闘は佛軍の勝利に帰し、叛徒は罰金を支払い、又短銃を提出した。
タンジール来電によれば、モロッコは至る所で無警察状態となり、モロッコ政府は治安を回復する能力を有していない。
独仏外交関係論評 4日タイムス社発
パリー来電―前陸軍卿ツウルリンデン氏は、将来の佛獨関係を論評し、既に独逸がモロッコに於いてあの様な反抗的政策を採った以上佛獨の友好は困難であり、そして佛国の採るべき唯一の方針は、熱心に国民を武装させる事にあると明言した。
晩香坡新衝突 2日桑港特派員発
英領バンクーバーに於いて、1日朝3名の消防夫が誤って或る日本人商店の窓ガラスを破った。数十名の日本人は、再び暴動が起こったと思い、刃物を持って加害者を取り巻き、喧嘩の後に1名の消防夫に重傷、2名に軽傷を負わせた。警察官が出動し、4名の同胞を拘引した。
日本人移民愈々制限 3日桑港特派員発
米国国務省の言明によれば、米国政府は、太平洋海岸に渡来する日本移民の員数を制限するよう日本政府に対し要求していたが、オブライエン大使からこれに対する返答があったとの電報があった。その要旨は米国の満足すべきもので、即ち日本は一層労働者旅券の発行を制限し、カナダやメキシコからの移動を防ごうとしている。
1月6日
日本移民趨勢(米国大統領の決意) 4日上海経由ロイター社発
トリビュン紙のワシントン通信員の報道によれば、米国大統領ルーズベルト氏は、国務卿ルート氏に対し若し米国議会が日本移民排斥法案を通過させようとも、大統領はこれを拒否するつもりである旨を日本に通達する権限を与えた。
なお又トリビュン紙のバンクーバー通信員の報道によれば、ホノルルから入国する日本移民の数は引き続き非常に増加中である。
日本人を殺せ 同上
南太平洋鉄道会社は、順次白人を日本人に代える傾向があるが、ユタ州オグデンに於いて1週間前、30名の白人労働者を解雇し、日本人を入れた。これに対し、昨夜150名の白人暴徒はジャップを殺せと叫び、日本人街を襲撃し、数名に軽傷を負わせた。警察は全力を尽くし、鎮圧に努め、暴徒数名を逮捕し、激しい大事件に至らず治まった。
1月7日
日米外交関係(前駐日佛国公使の批評) 同上
前東京駐在佛国公使アルマン氏は、日米の関係を批評して、次の様に述べている。
日本人はポーツマス条約の際、一杯喰わされた事を忘れていない。そしてアメリカ人がカルフォルニアに於いて、黒人よりもなお酷き待遇を日本人に与える限り、ポーツマスの恥辱はアメリカ人に責任があるとの感想を日本人は決して放棄しないであろう。
解説:日露戦争を終了させたポーツマス条約はアメリカのルーズベルト大統領の仲介で結ばれたが、日本の国民は、戦争を遂行する国力が限界であった事実を知らず、賠償金が無かった等日本側に著しく不利であるとして日比谷の焼討事件等の暴動を起こした。
青木大使所説 5日桑港特派員発
青木大使はサンフランシスコ商業会議所の招待会に於いて、日米両国の関係は常に親密であると述べ、一般に安心を与えた。なお新聞記者等に対して、米国の労働者と日本の労働者とは、事実上提携する事は困難であるので、日本は移民を制限すると断言した。この事については過激な議論を述べる者も居るが、両国政府は平和維持に努め、戦争談のごときもしばしば繰り返されるが、その理由を理解する事はできないと語った。
1月8日
印度支那亦動く 7日タイムス社発
パリー来電―最近英領インドに於いて土人が、精神上、道徳上不穏な情勢であり、その影響が仏領インドシナに及んでいる。同地に於いては、土人の諮問会議が創設されているが、更に一歩を進めて、自治の政治を実施したいとの希望や要求が盛んに土人間で起こっている。当地の新聞は土人の要求を聞かなければ更に一層危険な運動を見るようになるのではと憂慮している。
解説:仏領インドシナとは、ベトナム、ラオス及びカンボジヤであり、これらの国は、ベトナム共産党軍が1954年のディエンビエンフーの戦いでフランス軍を敗北させた後独立した。
加奈陀新移民法 7日上海経由ロイター社発
ロンドンスタンダード紙のオタワ来電によると、新移民条例の草案が作成された。この草案によると、一切の移民はその生誕地から直接に来航しなければならない事になるので、これによって日本人がハワイから転航して来る事を防止する事ができる。
1月9日
摩洛哥事件後報 7日ベルリン特約通信社発
アルゼリアからモロッコに侵攻したリアンテー将軍は、ベニー、ハッサン種族に対する作戦は既に終結した旨を佛国政府に報告し、その為指揮下軍隊は最早アルゼリアに引上げても差し支えない旨報告した。
日本移民問題大勢 7日桑港特派員発
今朝のクロニクル紙は次の様に勧告している。青木大使の談によっても或いは東京電報によっても日本が自ら移民を制限するであろう事は疑う余地がないので、今回排斥法を制定して追及する様な事は得策ではない。将来、東洋人排斥法案制定の必要があるかもしれないが、現在では、日本人排斥法の通過を見合わせるべきである。
1月10日
愛蘭形勢不穏 9日タイムス社発
アイルランドの情勢は、ますます紛争が激しくなる様子である。その為英王皇帝陛下及び皇太子並びにコンノート両殿下は、ダブリンにある故ヴィクトリア女皇の銅像除幕式に御参列する事が難しくなったと仰せられている。
解説:アイルランド紛争は、第1次世界大戦中も第2次世界大戦中も継続していた。
移民問題趨勢 8日桑港特派員発
ワシントン来電―政府部内では日本と条約を締結して、移民問題を解決しようとしているのに反し、カルフォルニア選出議員は、依然として反対意見である。例の代議士ヘース及びハーン氏等は最早沈黙を守らないであろう。彼等は条約に満足せず米国の法律で正面から排斥すべきであり、それは、日本は我が国内法の制定に干渉する権利は無いからであるとの意見に固執している。なお当局者は、日本と黙契成立したと言っているが今だにその詳細を語らず、詳細の説明があるまで反対運動は止まないと思われる。
摩洛哥問題とスペイン 8日ベルリン特約通信社発
スペインの諸新聞は、モロッコ問題の協議の為にマドリッドに向けて出発した佛国外務卿ビション氏に対し、歓迎の論説を掲げた。しかし皆筆を揃えて、この上更にモロッコに於いて軍事的行動を採る事には反対であると論告した。
1月11日
日米開戦説否定(米国大統領、栗野大使及びロンドン新聞の社説)10日タイムス社発
パリー来電―マタン新聞は米国大統領ルーズベルト氏がワシントン駐在の某国外交官に語った話として次の様に伝えている。
日米両国の間に存在する一切の事件は最も満足な解決をする事になるであろう。両国の衝突する様な事はあり得ない事である。
栗野大使も亦日米開戦説に関して、戦争は日本に於いては一般に非常に嫌悪されている事であり、私は戦争が決して行われないと確信していると述べた。
ロンドンスタンダード紙も亦日米開戦説を嘲って、次の様に述べている。
現在、日本にとって大事な事は、韓国に於ける帝国的な発展と満州に於ける商業的な経営に努力する事によって、できるだけ財源の発達を期する事である。
日本移民転航禁止策 9日桑港特派員発
カナダ内務省には、日本移民を制限する一つの策として、全ての移民は、その生国又は国籍のある国から直接来なければならないと移民法を改正しようとの意見がある。そうすればハワイから英領コロンビアに来る日本移民を拒絶する事ができる。日本政府はルミュ大臣に向かって、直接日本から旅行する者以外は如何なる制限を加えられても差し支えないと明言したとの事であるので、制定されても異議は無い筈である。
1月12日
東京(トンキン)土兵の紛糾 11日上海経由ロイター社発
佛国新聞の報道によれば、仏領トンキンの土民兵の間で重大な紛争が発生したが、当地の郵便局長の言明によると英人の北京宛て郵便は延着しない様に相当な手段を執っているとの事である。
解説:トンキンとはベトナム北部を指し、中心はハノイである。なおベトナムは仏領インドシナの一部であった。
ヨハネスブルグ事件 11日上海経由ロイター社発
ヨハネスブルグ来電―退去命令違反の嫌疑でガンジー外5名は2カ月の軽禁固及びブレトリアに於ける7名のインド人は3カ月の重禁固に処せられた。
ヨハネスブルグ及びブレトリアに於けるインド人は残酷な宣言を受けたにも拘わらず闘争を継続する事に決定した。
ヨハネスブルに於ける支那人の会合は北京政府の裁断を仰ぐ為に、その旨同政府に打電した。
解説:南アフリカでもアメリカ太平洋岸と同様に、鉱山で大量の支那人とインド人が働いており、白人労働者との対立が深刻化している。
ブレトリアは、高原にあり現在は南アに於ける行政上の首都となっている。
ガンジーは、インド独立運動で有名なマハトマ、ガンジーであり、南アフリカで弁護士をしながらインド人の権利を守る運動の中心となって活動しており、今回逮捕されている。12月30日「南阿移民法紛議」に関連記事がある。
アビシニア土人の侵入 10日ベルリン特約通信社発
優勢なアビシニア土人の一隊が、イタリア領ソマリア地方に侵入し、イタリア兵との間で激しい闘争が発生した。これに対しイタリア政府はメネリク王に対して十分な賠償を要求するつもりであり、もし要求が容れられない場合には重大な結果となると思われる。
解説:エチオピアは当時ヨーロッパ人にアビシニアと呼ばれていた。
1月13日
日米移民談判 11日桑港特派員発
ワシントン来電―日本の移民制限について、米国は日本に文章による協定を要求した事は無く、又今後も要求しないであろう。しかしオブライエン大使が提供した覚書は、日本が従来誠実に移民を制限しなかった事を攻撃する性質を帯びている。大使は、林外相に対し統計を示して、改めて日本が制限する保証を得なければ排日運動は止まないと述べた。林外相は今後必ず日本移民を有効に制限する旨断言し、米国議会に於いて日本人排斥法案の通過しない保証得たいと要求した。
布哇転航禁止 同上
ビクトリアの移民官は、カナダ政府から生国又は国籍を有する国土を出発する前に旅行券の交付を受け、直接渡航する移民に限り上陸を許可せよとの訓令を受けた。これでハワイから来る日本人を排斥しようとしている。
1月14日
摩洛哥の二王 13日タイムス社発
タンジール来電―僭王ムライ、ハフイッド「はフエズの王になると宣言したが、ラバット以東は依然としてアブズル、アジズ王の支配下にある。尤も南方の海岸の各都市は今猶佛国軍艦の威嚇の下にあり、又佛国陸軍は欧州人保護のためにラバットに向かって進軍中である。
解説:モロッコは佛国の保護国であり、数年前から継続的に反乱が起こっている。
アビシニアと伊太利 同上
ローマ来電―アビシニア人がイタリー領ソマリランドに侵入した一件は、その後アビシニア王メネリクが暴行に加わった酋長の行動を遺憾として、被害者に対し十分な補償を行うと約束した事によって、全て解決する事になった。
解説:1月12日の記事「アビシニア土人の侵入」の続報である。
1月15日
摩洛哥騒乱と佛国 14日タイムス社発
パリー来電―僭王ムライ、ハフイッドの即位布告に起因するモロッコの騒乱はますます激しくなっているにも拘わらず、佛国政府はアルゼシラス会議の結果としてその責任に属する国際的義務を従来通りに履行する事に決定した。
アイフェルタワーとカサブランカの間に無線電信機が設置された。
太平洋艦隊消息 13日桑港特派員発
回航艦隊は12日午後、無事リオデジャネイロに到着、両国官憲の会見があり、盛んな歓迎であった。
解説:この艦隊は、米国海軍の示威運動であり、その後日本にも来訪する。
排日法拒否 同上
英領コロンビア州(カナダ)知事ダンスノーヤ氏は、昨年来地方議会を通過した日本人排斥日の批准を拒否した後、ある会社の社長として数百の日本人を雇用する契約書に署名した。知事が排斥法の批准を拒否したのは、日本人労働者を自ら使用する為であるとしてある一派からオタワ政府に処置を迫っているが未だに何らの処分がないので、アジア人排斥協会、社会党員その他同氏に反対する者を糾合し、木曜日に開会するコロンビア地方議会の冒頭に知事を弾劾する決議案を準備中である。
摩洛哥騒乱発展 12日ベルリン特約通信社発
モロッコ王アブダル、アジスはフェッズに於いて王位を奪われ、僭王ムレイ、ハツイッドが代わって王位についた。
ムレイ、ハツイッドは同時に宗教戦争を布告し、且つ外国人に敵対する宣言を発して援助をトルコ求めた。パリーの民心はこの報道に接して非常に驚いたが、諸新聞は依然として従来の態度を持続している。
1月16日
日本人に対する誤解 15日タイムス社発
サンフランシスコ来電―バンクーバー市会は日本人の武器を取り上げる事を希望し、これについて法律上の意見を市弁護士会に諮問した。
排日運動の主謀者及びバンクーバー市助役は、日本人は立派な軍隊組織の団体を作り、平和な市民の動静を探っていると公言している。
又諸新聞は、日本が台湾に一大海軍根拠地を造りつつある等意味ありげに報道した。
日米移民問題 14日桑港特派員発
ワシントン来電―日本はあくまでも労働者渡航禁止協定の締結を受け入れず、米国政府も結局口頭の約束で満足する事になるであろう。なお国務省は本件に関する日米交渉の内容を公表する事を拒否した。
ヘース氏が提出した日本人排斥法案は、2月上旬下院に提出されるであろう。大統領がこれに対し如何なる態度を採るか注目すべきである。
解説:人種差別の強い時代に、米国西海岸やカナダバンクーバーに移住してくる有能で逞しい日本人に接し、職を奪われる白人労働者は強い反感を持つようになり、労働組合のロビー活動の結果、最終的にはその力が連邦政府にまで及ぶようになった。ここにアジアで日米両勢力が激突した大東亜戦争の源流が見える様な気がする。
疑心暗鬼 同上
日本は近頃、港湾に砲台を増築し、海軍基地の新設、武器弾薬の購入に熱心であるとの報道が大袈裟に吹聴されている。
解説:日露戦争でロシアに勝利した日本は、太平洋を挟んだカルフォルニア州の白人にとって新たな脅威となったものと思われる。当時の日本海軍に対抗できる海軍は、英国海軍の他に、急速に海軍力を整備した米海軍のみであった。次の記事にある様にその大西洋艦隊が、今太平洋に向け回航中である。
米国回航艦隊消息 14日ベルリン特約通信社発
米国大西洋艦隊は、リオ、デジャネイロに於いて非常に盛大な歓迎を受けた。軍艦は途中、大暴風雨に遭遇したが左程の損害も蒙らなかった。
1月17日
英国海軍政策 16日タイムス社発
英国外相サー、エドワード、グレーは国際政局の現状を論評し、最近列国がいずれも海軍を拡張する傾向にある事を指摘して、英国人はこれら列国の海軍拡張計画に対し、細心の注意を払わなければならず、そしてもしこれらの計画が実行に移された場合には、英国の海軍も更に拡張する必要があるのは無論であると言明した。
解説:独逸は海軍大臣テルピッツにより大海軍建設中であり、第1次世界大戦時には英国に次ぐ海軍力となった。第1次世界大戦まで6年
米国財界動乱の影響 同上
ヨハネスブルグ来電―米国金融が逼迫の結果として、ダイヤモンドの売れ行きが非常に悪くなった為、その採掘量を制限しようとして現在協議中である。そしてその結果ダイヤモンド業界に於いて有力な地位を占める当植民地の財界は非常な影響を受けている。
解説:英国の植民地南アフリカはダイヤモンドの産地であった。
拳匪賠償金減額 16日上海経由ロイター社発
米国議会は、上下両院の連合決議によって、拳匪事件によって清国から受けるべき償金金額を1,165万5千円に減じた。
解説:1900年から1年間続いた義和団の乱(日本では北清事変)の結果、清国の賠償金総額は4億5千万両で利息を含めると9億8千万両という巨額となった。当時の清国の歳入は8千8百満了で、あまりにも巨額な賠償金に対し国際社会から批判と反省が起こった。この記事の減額がその一つの表れであり、やがて米国は賠償金によって北京に清華大学を創設している。現在中国で北京大学と共に有名であり、習近平国家主席は1979年にアメリカの創設した清華大学を卒業している。
1月18日
日加移民問題論評 17日タイムス社発
ロンドンタイムスは、移民問題の解釈について熱心に称賛し次の様に論評している。
日本人は今回も亦勇敢に事件を処理する大変な才覚を有する事を証明した。日本人が現行条約の変更を拒んだのは元よりこの点である。これらの行為は、日本人がバンクーバーに於いて一時的な侮辱を忍んでも、前途を見通す才能がある事を明確に証明している証拠である。そして我々は同時にカナダの同胞が非常な困難の立場に立っている事も認める云々
亜細亜人排斥運動 17日上海経由ロイター社発
ヨハネスブルグ来電―当地の商業会議所は、南ア政府の対アジア人政策を援助する事をロンドンの英国商業組合に要請した。
日本人排斥益激烈 16日桑港特派員発
サンタクルズで開会したカルフォルニア州労働者大会は、日本人排斥について益々激しく有効な運動を行うように申し合わせ、海軍の拡張及び太平洋沿岸の防備を完成する事を請願する決議を行った。
解説:太平洋に於ける日米対立の原点はこの白人労働者の運動にあり、この運動が連邦議会を動かし、米国の日本を仮想敵国としたオレンジ計画の源流となっている。
1月19日
英露協約と阿富幹王 18日タイムス社発
カルカッタ来電―アフガン王はアフガンに関する英露協約に対し、英露両国に送るべき回答について考慮中と言われている。この協約の条項は既にカブールに知れ渡っているが、アフガン王及び王の諸大臣が果たして同協約を承認する事ができるかどうかに関して全く不明である。
婦人参政権論者は、昨日の閣議を契機として、隊を組んで首相バンナーマン氏の邸宅を襲撃し、無理やりに屋内に侵入しようとした。内1人は終に突入したがその他は追い出されて、屋外で警官に挑みあった末、警官は余儀なく2人の婦人を鎖で縛り、向う側の家に押し込めた。この騒動で5名の婦人が拘引されたが皆保釈金を出す事を拒否し、3週間の拘留に処せられた。
解説:英国の婦人参政権運動で、当時婦人の団体は戦闘的な団体(NSPU)、温和な団体(NUWSS)とその中間の団体(WFL)があり、多分NSPUの活動と思われる。
米国艦隊の使命 17日ベルリン特約通信社発
米国大統領ルーズベルト氏は大西洋艦隊がブラジルに於いて受けた歓迎に対し同国大統領に感謝の意を表した。なおルーズベルト大統領は、大西洋艦隊は若し平和と正義が威嚇される事があれば、この二つを保護する目的を有する事及び同艦隊は両共和国を結合する友情の使命者となる事を確保した。
1月20日
満鉄平行線と日本 19日上海経由ロイター社発
日本は北京協約の違反を理由として、飽く迄も清国が計画する南満鉄道の平行線を敷設する事に反対し、若し清国が工事に着手するならばこれを中止させる気勢をしめした。
1月21日
間島問題と満州 20日タイムス社発
ロンドンタイムスは間島(かんとう)に関するに清韓の争議に言及し、同地方は日清人住民の多少を標準として、大まかにこれを日清間に分割するか、又は全問題を公平な仲裁裁判に付す外は無いと論評した。なお同紙は日本が満州に於いて全世界に寄与した功績を指摘して、清国が今さら同地方に於ける日本の行動に対し苦情を言うのは無理であると論断した。
解説:間島は満州の豆満江以北にある朝鮮族居住地 満州における日本の功績とは、日露戦争の結果、占領していた露国を満州から追い出した事と思われる。
ソマリー事件の後報 19日ベルリン特約通信社発
イタリー政府はその領土であるソマリー、ランドの西方のイユーバー河岸のロフガが今なお包囲されている事を英国政府に通知した。
解説:海賊事件で有名なソマリアは当時イタリア領であった。
1月22日
米国官紀紊乱 21日タイムス社発
ニューヨーク来電―工務長官の報告によれば、2千万ポンドの経費を投じて実施中である運河工事は、監督が非常に不十分であり、又技師にも相応しい人が居ない。現に4百万ポンドは無茶苦茶に浪費され、工事請負業者の契約に於いても皆政治的に関係がある御用商人が落札している。
解説:パナマ運河の開削工事は、黄熱病のために難渋を極めており1879年工事を開始したフランスのレセップスが失敗している。アメリカは1902年工事を開始し、結局1914年完成している。
日本移民減少 21日上海経由ロイター社発
ワシントン来電―移民局の報告によれば、昨年12月現在の在米日本移民の総数は、一昨年の同時期に比較して2234名の減少となっている。
日加移民問題 同上
オタワ来電―先頃コロンビアに出張を命じられた副労働大臣キング氏は次の様に述べた。
日本政府は、ハワイからの転航移民に就いて何らの責任もない。日本に労働入国禁止政策を破らせているのは、実は、カナダの各移民会社である。その為もし現行の諸条例を励行すれば日本移民問題はカナダに於いて格別の面倒を引き起こす事は無いであろう。
日清関係論評 同上
ロンドンタイムスは、日清両国の紛争を次の様に論評している。
清国の頑迷な態度は、他国に漁夫の利を示させる事になるであろう。若し日本の尽力がなければ、清国は満州に於いて寸毫の立場も残すことができなかったであろう。又英国の遠征が無かったならチベットに於いても寸毫の立場をも留めなかった。しかし清国は当然受ける資格が無い尊敬を受けていないと言って、今や種々の難題を持ち出している。清国が若し同国の利益の為に尽くした他の列国の努力に対して尊敬を表し、且つ自ら約束を守ったならば、昨今提出中の難題についても一層多くの他国の同情を博したであろう。
1月23日
移民談判報告 22日タイムス社発
オタワ来電―労働大臣ルミュー氏は議会に於いて、日加移民交渉について次の様な演説を行った。日本移民が続々とカナダに渡来する事に就いては、カナダの移民会社こそ主として責任を負うべき理由があるが、日本政府は何らの責任もない事を念入りに明言した。そして言葉を極めて日本人の美徳を称賛した末、林外務大臣はカナダの親友であり、将来における日本移民の渡航制限に関し文書を以て証言を与えられたと吹聴した。
日米戦争夢物語 22日ニューヨーク特派員発
日米戦争談は未だにその跡を絶たず、米国新聞は引き続き日本人排斥論を鼓吹している。比較的識見があると言われている某米国人は次の様に述べている。
日米戦争問題は時期の問題であり、移民問題の様な小さい問題の為に破裂の恐れはないが、清国問題は必ず日米衝突の原因となるであろう。そして人種問題も亦日米葛藤を必ず引き起こす原因となるであろう。
又ある新聞は次の様な笑うべき記事を掲げた。日本艦隊の一部は現在行方不明である。恐らく我が回航艦隊を遊撃する為にハワイ若しくは南米方面に向かったものと思われる。
解説:この比較的識見がある米国人は、30数年後の大東亜戦争を見通していたように思える。
1月24日
桑港日本人近情 23日タイムス社発
桑港来電―当地日本人は、昨今神経過敏の状態であり、多数の日本人が財産を売り払い、その金を以て主に拳銃を買入中である。
日加移民談判終結論評 同上
ロンドンタイムスは、今回発表された日加移民問題の解決を以て、両国ともに国威を損なう事なくてその希望を貫徹した誠に慶賀すべき解決であると論評した。
新移民法適用 23日ヴィクトリア発横浜着電
メキシコから当地に来た31名の日本人は、新移民法により上陸を拒絶された。
1月25日
非陸軍運動後報 23日タイムス社発
パリー来電―佛国軍法会議は、軍人排斥運動に加担したものを容赦なく厳罰に処している。この為に当地弁護士社会に非常な異論を巻き起こしている。
英独海軍拡張競争 同上
ロンドンタイムスは、独逸の海軍拡張案を詳細に解説し、英国政府も亦主として独逸の将来の海軍拡張に対抗する為に、現在の追加予算に満足せず、一層規模を拡大した海軍拡張案を編成しなければならないと主張した。
解説:独逸海相テルピッツは英国に対抗できる海軍を建設しようとしている。それにしてもフランスでは、第1次世界大戦が迫っているこの時期に非陸軍運動が起こっている。
布哇渡航制限 23日上海経由ロイター社発
日本は既に渡航している者の近親者を除く外、日本移民のハワイ渡航を禁止した。
南阿印度人の決心 同上
ヨハネスブルグの印度人は大会を開いて、如何なる状況になろうと、飽く迄も白人との闘争を継続する事を決議した。欧州人も亦同地、その他各所で集会し、政府を援けて何処までも強硬な政策を執る事を決議した。
解説:1月12日「ヨハネスブルグ事件」の続報であり、インドの無抵抗主義で有名なマハトマ・ガンディーが逮捕され、2カ月の軽禁固刑を受けている。
英国新聞と日加移民問題 同上
ロンドンタイムスを始め英国諸新聞は、日加移民紛争の落着に就いて、日本の政治家の能力を称賛した。
1月26日
摩洛哥問題 25日タイムス社発
パリー来電―佛国内閣に於いて摩洛哥事件に関する討議が行われた。ドイツの恫喝によって、その職を解かれた前外相デルカッセ氏は、モロッコに於ける佛国の特殊な利害関係を指摘し、佛国社会党がともすれば、モロッコに関する佛国の一切の行動を排斥させようとする事を攻撃した。彼が以前取っていた政策は佛国に多数の良友を得させた。この際逡巡したり、躊躇したりして、モロッコの問題を解決すべき現在の好機を決して逃してはならないと述べた。
解説:モロッコはフランスの保護国であるがドイツはそれが不満である。
米国東洋学者の日本評 24日桑港特派員発
スタンフォード大学教授ストリート氏は東洋に関する研究の結果を発表し、日本人の忠君愛国、精励敢為の気象を大いに讃美し、日本の進歩は英国の発達に酷似しているとし、日本は将来、太平洋の主人となるであろうと断言した。
解説:敢為とは「やりとおす」こと
1月27日
土耳古司令官の脅迫 26日上海経由ロイター社発
露国人の手で発信されたタブリッツ電報によれば、トルコ司令官はペルシャの地方総督に対し、スジュブラークはトルコの領土であるので、速やかに同地を立ち退くよう通告した。
解説:ペルシャの北半分はロシア、南半分はイギリスの勢力下である。
摩洛哥事件の質問 25日ベルリン特約通信社発
佛国議会に於いて、モロッコ問題に関する質問書が朗読された。社会党党首ジョーレス氏は、この程死去した医師マーシャン氏と僭王ムレイ、ハツイッドとの関係を暴露し、モロッコ分割に関してスペイン政府と密約が存在するのではと質問した。又代議士リボー氏も佛国軍隊のフェツツに向かって進撃した事を攻撃した。前外相デルカッセ氏は、これに対して2時間に亙る長い演説を行い、彼が在職中に取った対モロッコ政策を弁護した。現外相ビッション氏は、この質問に対して27日に答弁する予定である。
アビシニア戦報 同上
アビシニアのロック市付近の戦闘は、尚継続している。この戦闘中イタリー軍のモリナリ大尉は戦死した。
解説:アビシニアとはエチオピアであり、イタリー領ソマリアにエチオピアからゲリラが侵入している。関連記事が1月14日「アビシニアと伊太利」 同上、1月21日「ソマリー事件後報」にある。
1月28日
移民禁止と米国 27日タイムス社発
ニューヨーク来電―日本政府がハワイ移民を禁止したとの報道は、ワシントンに於いて大満足を以て迎えられた。
佛国前外相演説の反響 同上
ベルリン来電―デルカッセ氏のモロッコ問題に関する演説に就いて、独逸の当局者間では、これによって既に過ぎ去った佛独間の紛争を再現させない事を望み、氏の政策は山師的であり、その用語は不親切であると評した。
摩洛哥問題とデルカッセ 27日上海経由ロイター社発
モロッコ問題に関する前外務卿デルカッセ氏の演説は、佛国議会内に於ける議論で唯一の話題となり、佛国の政論社会の与論は、氏の演説が国民多数の意志を正確に言明したものであると認めている。その中で独りデパー新聞は、他と異なった見解を取り前外務卿の演説は時期を得ないものであると論評した。そして一方ドイツの諸新聞は、皆沈黙の態度を採り、未だ何らの評論も下していない。
解説:前日の記事の続報
南阿の亜人登録問題 同上
デイリーテレグラフ掲載のヨハネスブルグ来電によれば、トランスバール政府は、事態が容易ならざる状態である事を察して、アジア人に対する態度を完全に改め、法官によって登録法に関する異議を精査し、インド人の気に障らない新制度を立案させる高等法院を開く事を決定した。必要な改正案は、次期議会に於いて制定される予定であり、それまでは現行法律の施行を停止し、これに関する一切の公訴は中止されるであろうと言われている。
解説:この法律によりインド独立の父と言われる「マハトマ、カンディー」は2カ月の軽禁固刑を受けている。事件についての関連記事が12月30日「南阿移民法紛議」、1月12日「ヨハネスブルグ事件」にある。
1月29日
南阿の亜人登録問題 28日上海経由ロイター社発
ブレトリア来電―トランスバール植民大臣スマツツ氏はデイリーテレグラフの報道(昨紙参照)を悉く無根の内容であると宣言した。
解説:昨日の記事を否定している。
佛国外務卿演説 同上
パリー来電―代議院に於いてモロッコ問題を討議する際、外務卿ビション氏は、佛国は僭王ムレーハフィドの即位布告を承認する事は出来ないと断言し、更に前外務卿デルカッセ氏の演説に言及し、佛国はある一国を目的として、何れの国とも同盟若しくは親交を結んだ事は無いと言明した。
解説:1月27日以来佛国議会で論戦が続いている。
佛国外相演説影響 27日ベルリン特約通信社発
佛国新聞は前外相デルカッセ氏の演説を猛烈に非難した。又前外相ルヴィエール氏及び現外相及び元首相クレマンソウー氏もデルカッセ氏の演説に対して答弁を行った。
1月30日
波斯政争のその後 29日タイムス社発
テヘラン来電―タブリッツに於いて又もや政党の闘争があり、死亡20名を出した。
摩洛哥問題と佛国 同上
パリー来電―代議院に於けるモロッコ問題の討議は、結局51票対436票の多数で政府信任決議に落着した。外務卿ビション氏の演説は、徹頭徹尾平和的であり、氏はモロッコの内乱に対しては何処までも中立の態度を採り、同時にモロッコ問題をこの上列国争議の渦中に入れる事に同意する事は出来ないと言明した。
北米国立銀行 29日上海経由ロイター社発
北米国立銀行は、営業上で大変な失敗を招いた為に資本2百万ドルの保管を銀行監査官に委託した。