明治40年8月

主要記事

期日 日本関係 期日 露清関係 期日 英米関連 期日 独仏その他関連
8月5日 労働協会の正論     8月1日 クローマー卿 8月2日 摩洛哥紛櫌別報 
8月9日 韓国密使の消息      8月1日 英清阿片貿易  8月3日 摩洛哥近情
8月10日 飽迄日本人排斥      8月2日 艦隊回航反対説 8月4日 摩洛哥危急 
8月12日 韓兵反す     8月2日 英国海軍拡張 8月4日 摩洛哥現情 
8月14日 浪々の韓国密使      8月3日 米国内閣動揺 8月5日 佛西両軍出動
8月15日 日本人問題      8月4日 大統領秘書官の気炎 8月7日 土耳古兵波斯に侵入す
8月17日 日露協約と英国     8月6日 日米関係論評  8月8日 佛国艦隊の砲撃
8月21日 日本人入国抗議     8月6日 英国観艦式別報 8月13日 独逸造艦計画 
8月22日 一道の光明      8月10日 比律賓の近き将来  8月13日 摩洛哥事変 
8月23日 市政着々刷新      8月11日 米国艦隊愈回航 8月13日 比律賓独立の請願
8月24日 桑港市政刷新     8月14日 ベルファーストの暴動 8月19日 摩洛哥兵の暴状
8月26日 洋食店事件裁判     8月14日 回航反対の気勢  8月22日 摩洛哥時局発展
8月28日 加奈陀排日運動     8月18日 阿片禁止問題  8月24日 摩洛哥と列国 
8月29日 日加労働談判      8月21日 フィリピン買収説 8月29日 摩洛哥現状
8月30日 加奈陀と日本人      8月26日 大艦隊回航期  8月30日 摩洛哥新王諭告
8月30日 断じて偏頗を許さず     8月28日 米国艦隊回航     

世界情勢

明治40年8月

8月1日

クローマー卿 英国政府はクローマー卿のエジプト駐在中に於ける功績に対して5万ポンドを贈呈する事を提議し、下院に於いてかなり激しい議論が行われた。

日本人入国防止 米国国務相はメキシコの国境を越えて続々と合衆国に入国する日本人を食い止める目的でメキシコ政府と交渉を開始した。

英清阿片貿易 英国の方針として清国に於ける印度阿片の輸入高を減少させる事に同意すると明言した。

クローマー卿 31日タイムス社発

英国政府はクローマー卿のエジプト駐在中に於ける功績に対して5万ポンドを贈呈する事を提議し、下院に於いてかなり激しい議論が行われた。アイルランド国民党及び社会党は本案に対して激しく反対し、エジプトにおける卿の事業は、非常な失敗であったと非難したが外務大臣サー、エドリード、グレーはこれに答弁し、クローマー卿の外交的手腕によりしばしば重大な危険を免れた事をそれとなく説明した。政府の発議は最終的には254票対107票の多数で可決された。

日本人入国防止 31日上海経由ロイター社発

米国国務相はメキシコの国境を越えて続々と合衆国に入国する日本人を食い止める目的でメキシコ政府と交渉を開始した。

英清阿片貿易 30日ベルリン特約通信社発

英国下院に於いて印度事務大臣モーレー氏は、英国の方針として清国に於ける印度阿片の輸入高を減少させる事に同意すると明言した。

 

8月2日

摩洛哥紛櫌別報 カサブランカの3種族は、港湾の築港及び電車鉄道の敷設を怒って騒動を起こし、この仕事に従事する職工を襲撃し、虐殺した。

艦隊回航反対説 将官連は、何れも艦隊を太平洋に送る事に反対し、艦隊を太平洋に送るべき理由は無く、これはメットカーツ外相が政策を弄んだに過ぎないと非難した

英国海軍拡張 英国政府は更に多数の戦闘艦を新造する計画である旨を上院に告げた。

摩洛哥紛櫌別報 1日上海経由ロイター社発

タンジール来電―カサブランカの3種族は、港湾の築港及び電車鉄道の敷設を怒って騒動を起こし、この仕事に従事する職工を襲撃し、虐殺した。佛国人5名、イタリー人2名及びスペイン人1名が死亡と報道された。独逸軍艦は生存者をタンジールまで運んできた。

解説:英国の保護国エジプトと佛国の保護国モロッコに於いて、時々紛争が発生している。

艦隊回航反対説 31日桑港特派員発

海軍次官ニューベルー氏は、オイスターベイに大統領を訪問した後帰来し、将官会議を開いた結果、戦闘艦隊はガンタナモ湾(キューバ)迄行くが、その後の行動は不明である事を発表した。将官連は、何れも艦隊を太平洋に送る事に反対し、艦隊を太平洋に送るべき理由は無く、これはメットカーツ外相が政策を弄んだに過ぎないと非難した。大統領もこの際艦隊を太平洋に送る事に反対であると言われている。

英国海軍拡張 31日ベルリン特約通信社発

英国政府は更に多数の戦闘艦を新造する計画である旨を上院に告げた。

海軍大将フィネス氏は英国が突然外国の襲撃を受ける事があるのではと憂慮する理由は無いと明言し、且つ根拠なしに徒に民心を扇動する英国の新聞を非難した。

 

83

摩洛哥近情 市民は酋長の指揮に従って欧州人を殺害した。

米国内閣動揺 海軍卿メットカーフ氏が大統領、海軍将官等の意見が未だ一致しないのに大艦隊を太平洋に回航する事を発言する

日本人移入問題 米国政府はメキシコ政府に依頼し、日本人がメキシコ国境から米国に越境する者を防ごうとしているとの説は、国務省によって完全に否認された。

摩洛哥近情 2日上海経由ロイター社発

佛国巡洋艦ガリリーはカサブランカに向けタンジールを出発した。市民は酋長の指揮に従って欧州人を殺害した。

米国内閣動揺 大艦隊回航説の裏側 1日桑港特派員発

海軍卿メットカーフ氏及び郵政総監コーセリュー氏は大統領の怒りに触れ、近く辞職しようとしている。メ氏は鉄道王ハリマン氏と深い関係があるのみならず、全国の新聞紙は氏の海軍政策に反対し、遂に大統領、海軍将官等の意見が未だ一致しないのに大艦隊を太平洋に回航する事を発言する事は出身地であるカルフォルニア州人に媚びようとするもので、国家の利益を損なったと官民上下の非難が強く、到底今の地位を保つ事は出来ない。コ氏は大統領が熱心に推薦するタフト氏を大統領候補とする事に反対の態度を示し、ロ氏の機嫌を損なったので辞職の外ないであろうと信じられている。

解説73日「米国太平洋艦隊増遣」の記事で総計16隻よりなる戦闘艦隊を太平洋に派遣すると報道されて以降この問題は度々報道されてきた。

日本人移入問題 同上

米国政府はメキシコ政府に依頼し、日本人がメキシコ国境から米国に越境する者を防ごうとしているとの説は、国務省によって完全に否認された。国務次官エード氏はこの様な風聞は親交国家間の誤解を起こす基であると悲しんだ。

解説81日「日本人入国防止」の記事でメキシコ政府に依頼したと報道されている。

 

8月4日

摩洛哥危急 佛国内閣はモロッコのカサブランカに於ける欧州人殺害事件を審議した末、この際断固とした処置を取る必要があると閣議で決定した。

大統領秘書官の気炎 大統領秘書官ローブ氏は、戦闘艦を太平洋に回航する計画は少しも変更されず、回航に必要な準備は海軍省に於いて着々と進行中である。

摩洛哥現情 カサブランカ市は叛乱兵によって占領され、欧州人12名が殺害される。この内独逸人は一人も居ない。

摩洛哥危急 3日タイムス社発

パリー来電―佛国内閣はモロッコのカサブランカに於ける欧州人殺害事件を審議した末、この際断固とした処置を取る必要があると閣議で決定した。但し周到な注意をもってアルゼシラス条約の規定を厳守すべきは無論である。

佛、スペイン両国政府は、今回も協同して時局を処理しようとしている。

佛国政府は陸兵2千5百名を至急モロッコに派遣する為に現在ツーロンに於いて準備の最中である。

佛、スペイン、イタリーの三国は既に軍艦を派遣しようとしている。そして英国巡洋艦1隻も又モロッコに出発する準備を命じられた。

解説:フランスは、英佛協商でエジプトをイギリスの保護国と認め、その代わりにイギリスはモロッコをフランスの保護国と認めていた。これに不満を抱くドイツがモロッコの領土保全を求め、1906年スペインのアルヘシラスで会議が開かれた。しかし経済利権に関する門戸開放がうたわれたが警察権はフランスとスペインが握り、事実上モロッコはフランスの勢力圏のままであった。

大統領秘書官の気炎 2日桑港特派員発

大統領秘書官ローブ氏は、戦闘艦を太平洋に回航する計画は少しも変更されず、回航に必要な準備は海軍省に於いて着々と進行中である。大統領は無論回航を是認している。且つ海軍卿メットカーツ氏が辞職を余儀なくされるとの説には何ら根拠が無いと明言した。氏の言によれば、艦隊の回航について米国政府は日本政府から未だ何らの抗議をも受けていないし、又これを予期していない。艦隊が自国の領海に航行する事に関して他国の干渉を受けなければならない理由は無いと。

解説:昨日の記事「米国内閣動揺」と全く逆の報道

摩洛哥現情 2日ベルリン特約通信社発

カサブランカ市は叛乱兵によって占領され、欧州人12名が殺害される。この内独逸人は一人も居ない。

佛、スペイン、イタリー三国の軍艦がモロッコに派遣されようとしている。

佛国新聞は速やかに列国警察隊を組織するよう要求している。

タンジール駐在の独逸代理公使は、佛国公使に対して見舞いの言葉を述べ、且つアルゼシラス条約の列国が強固に団結する事が現在の時局に対し最も必要である旨を言明した。

 

 

 

85

佛西両軍出動 3千のアルジール兵及び南部スペインに駐屯する若干の連隊は、今モロッコに出発しようとしている。

労働協会の正論 加州産業の衰退を救う為に我等は加州に来る他の外国人一切と同数の日本の自由労働者の入国を許される事を懇願すると説いている。

佛西両軍出動 4日上海経由ロイター社発

3千のアルジール兵及び南部スペインに駐屯する若干の連隊は、今モロッコに出発しようとしている。これら軍隊はアルゼラズ条約に規定された8個所お港に、新警察官が任命されるまで同地に留まるものと信じられている。

解説:8月4日の記事「摩洛哥危急」の続き

労働協会の正論 3日桑港特派員発

加州(カルフォルニア州)の万国労働協会は、アジア人労働者の入国について欧州労働者と異なった制限を加える事が無いよう大統領及び移民当局者に請願する事になり、加州サクラメントの有名な果物生産業者ケルミバール氏はワシントンに於いて運動中である。請願書には、この方法に依らなければ我が海外貿易は発展せず、我が国と世界各国との平和を保持する事は難しいと声明し、加州産業の衰退を救う為に我等は加州に来る他の外国人一切と同数の日本の自由労働者の入国を許される事を懇願すると説いている。

 

86

日米関係論評 艦隊の太平洋回航は先ほど来流布されていた日米戦争説に何らの関係も無い。

英国観艦式別報 ソレントに於ける英国本国艦隊の観艦式は極めて壮大な光景で、艦隊は威風堂々として7列に投錨し、ドレッドノートが最前列にいる。

摩洛哥と列国 佛国内閣会議はカサブランカに於いて行動するに当り、アルゼシラス条約の規定を厳守する事を決議した。

満州の新開市 満州外務部は新たに満州の7都市を国際貿易の市場として開く旨を合衆国政府に通知した。

日米関係論評 5日タイムス社発

ニューヨーク来電―大統領ルーズベルト氏の秘書官の明言するところによれば、艦隊の太平洋回航は先ほど来流布されていた日米戦争説に何らの関係も無い。艦隊派遣の目的は単に演習の経験を我が海軍に与える為のみである。

英国新聞リアルド紙は、艦隊の行動に遺憾の意を表し、この為に無知文盲の国民は更に乱行を行うのではと論評した。

解説84日「大統領秘書官の気炎」に関連記事がある。

英国観艦式別報 5日上海経由ロイター社発

ソレントに於ける英国本国艦隊の観艦式は極めて壮大な光景で、艦隊は威風堂々として7列に投錨し、ドレッドノートが最前列にいる。皇帝及び皇后両陛下は各官の間を順次に御巡航された。

皇帝はポーツマス鎮守府司令官ボサンケットその他海軍大将にヴィクトリア勲章を、又艦長等にコンパニオン勲章を授与された。

解説:参加艦艇200隻が11列で投錨し、参加乗組員総数35千人であった。戦艦ドレッドノートは、日本の戦艦三笠クラスの次の世代の世界で最強の戦艦である。超弩級の弩は「ドレッドノート」の「ド」から来ている。

摩洛哥と列国 4日ベルリン特約通信社発

佛国内閣会議はカサブランカに於いて行動するに当り、アルゼシラス条約の規定を厳守する事を決議した。

佛スペイン両国はカサブランカに軍隊を送ろうとしているが、同地を砲撃するようなことはないであろう。

モロッコの諸港湾は平穏である。

英国艦隊は中立の態度をとっている。

ベクリーンは近々釈放されると思われる。

解説:85日「佛西両軍出動」に関連記事がある。

満州の新開市 同上

ワシントン発の報道によれば、満州外務部は新たに満州の7都市を国際貿易の市場として開く旨を合衆国政府に通知した。これによって満州の開放都市は16個となる。

 

87

土耳古兵波斯に侵入す トルコ兵は大砲を率いてウルミヤ付近からペルシャに侵入し、マズチ村落を破壊して土人の男子18名、婦女子60名を殺害した。

摩洛哥と佛国 佛国外務卿ビション氏はパリー駐在独逸大使ツドリン公に対し、カサブランカは永久に占領するものでないと言明した。

土耳古兵波斯に侵入す 6日上海経由ロイター社発

在テヘラン本社通信員からの報道によれば、トルコ兵は大砲を率いてウルミヤ付近からペルシャに侵入し、マズチ村落を破壊して土人の男子18名、婦女子60名を殺害した。その多数はキリスト教徒である。更に進んで付近のペルシャの兵営を占領したと言われている。

摩洛哥と佛国 5日ベルリン特約通信社発

佛国外務卿ビション氏はパリー駐在独逸大使ツドリン公に対し、佛国のモロッコに於ける計画の詳細を知らせ、カサブランカは永久に占領するものでないと言明した。

 

88

平和会議 陸軍軍事費増加に対する決議案の条項について、英獨両国委員の意見は漸く一致した。

露国艦隊の砲撃 モロッコ知事の請求により佛国は海兵を上陸させたがモロッコの軍隊がこれに対し発砲した為に佛兵は直ちに市街に突撃した。

平和会議(軍費膨張と水雷問題) 7日タイムス社発

ハーグ来電―陸軍軍事費増加に対する決議案の条項について、英獨両国委員の意見は漸く一致した。この決議案は、この問題が緊急である事を明記せず、ただ各国政府に於いてこの問題を研究する事を切望する旨を記述するのみ。

調査委員会は、敷設機雷は系止を離れた後2時間で自然に破壊力を喪失しなければならないとの英国の提案を是認した。委員会に於いて同案に反対したのは3カ国で賛成した国は11カ国である。

佛国艦隊の砲撃 同上

タンジール来電―モロッコ知事の請求により佛国は海兵を上陸させたがモロッコの軍隊がこれに対し発砲した為に佛兵は直ちに市街に突撃した。暫くして佛国艦隊も又市街に砲撃を加えた。佛国艦隊の費やした砲弾は25百発であり、モロッコ兵2百名がこれで死去した。

解説85日以降毎日のように報道されている。

 

8月9日

平和会議論評 元来平和会議の討論に付せられる問題はあまりにも多すぎる。前もって会議に提出する諸問題を上手く選定し、

佛国と摩洛哥 佛国政府は列国に、カサブランカに於ける佛国の行動を弁明する通知を行い、

摩洛哥小戦後報 佛国ガリリーの水兵60名は佛国領事の要請とモロッコ官憲の同意により上陸し、佛国領事館に向かって行進の途中

韓国密使の消息 韓国皇帝の密使と称する者は本日7日当地に滞在中である。日韓協商は皇帝も内閣大臣も不承知で、日本が勝手に作ったものである。

摩洛哥の砲火 モロッコ人が佛国兵の上陸に対して発砲した為に、カサブランカ及びその付近の村落に対する砲撃が始まり、

平和会議論評 8日タイムス社発

タイムス紙は平和会議の経過を次の様に論評した。

元来平和会議の討論に付せられる問題はあまりにも多すぎる。前もって会議に提出する諸問題を上手く選定し、これに対する列国の意見を交換する事により、予めその問題の要、不要を決定させておくべきである。現在行われる様な方法では、平和会議の成功を妨げるだけである。

佛国と摩洛哥 8日タイムス社発

パリー来電―佛国政府は列国に、カサブランカに於ける佛国の行動を弁明する通知を行い、同国アモロッコ王の権力とモロッコの現状とを維持しようとする意思を語り、モロッコの現状は一大刷新を行わなければならない事を指摘した。

摩洛哥小戦後報 7日上海経由ロイター社発

佛国ガリリーの水兵60名は佛国領事の要請とモロッコ官憲の同意により上陸し、佛国領事館に向かって行進の途中、モロッコ兵から狙撃された。佛兵は突撃してこれらモロッコ兵を撃退し、ガリリー、デユシェーラの2艦は更に土人の市街を砲撃した。

韓国密使の消息 7日紐育特派員発

韓国皇帝の密使と称する者は本日7日当地に滞在中である。筆者(特派員)は彼に意見を求めたが、日本人は危険であるとして会っていない。しかし米国人には喜んで会見しており、その言によれば、日韓協商は皇帝も内閣大臣も不承知で、日本が勝手に作ったものである。故に私はあくまでも反対せざるを得ず、又殆ど千人に近い米国在留の朝鮮人が熱心に米国人の同情を求める運動を行うであろう。その為かカルフォルニア州のフレスノ地方では朝鮮人の大会を開くとの事である。しかし昨今は誰もこれに耳を傾ける者が無く、彼等は徒に新聞の種を作っているのみである。

摩洛哥の砲火 7日ベルリン特約通信社発

モロッコ人が佛国兵の上陸に対して発砲した為に、カサブランカ及びその付近の村落に対する砲撃が始まり、佛、スペイン海軍は死傷者を出さずにカサブランカを占領した。

 

8月10日

比律賓の近き将来 フィリピンは遠からずして米国の領有を離れる事になると明言した。

摩洛哥事変 カサブランカ市に於いてその後引き続き激烈な戦闘があり、土民は至るところで殺傷、略奪を欲しい侭にし

砲撃48時間 カサブランカの砲撃は48時間もの長時間に亘って行われ

飽迄日本人排斥 日本人の排斥は以前支那人が排斥されたのと同じ事情に基づくものである云々

波斯と土耳古の葛藤 ペルシャ政府は英露両国政府に向かって干渉を要求した。

比律賓の近き将来 9日タイムス社発

ニューヨーク来電―大統領ルーズベルト氏の女婿であるロングウオルス氏はハワイのホノルルに於ける演説で、フィリピンは遠からずして米国の領有を離れる事になると明言した。

解説:1898年   キューバとフリピンのスペイン軍と米国は戦闘を開始

   1898年5月 マニラ湾海戦でスペイン海軍は敗れる。

           米国はフリピン独立軍を支援

   1898年12月 パリー条約でキューバとフィリピンの統治権は米国に移る。

   1899年1月 フィリピン独立宣言

1899年~1902年米国とフィリピンとの戦闘で60万人のフィリピン人死亡

1946年 フィリピン共和国独立

摩洛哥事変 同上

タンジール来電―カサブランカ市に於いてその後引き続き激烈な戦闘があり、土民は至るところで殺傷、略奪を欲しい侭にし、死体は市街の其処かしこに散見される。

佛国艦隊は今尚砲撃を続行し、夜間は探照灯を照らして市街の付近に砲撃を加えている。

砲撃48時間 9日上海経由ロイター社発

カサブランカの砲撃は48時間もの長時間に亘って行われ、モロッコ兵の死傷者は1千余名に達したと言われている。

モロッコ兵は佛国国立銀行を襲撃し6万ペソを強奪した。

飽迄日本人排斥 8日桑港特派員発

当地の移民局員オーダリー氏が数日前、加州(カルフォルニア州)知事に対して、現在如何なる種類の移民を要するかと質問したのに対して、7日貿易委員を通じて回答した知事の意見によると、加州の人口は現在2百万人であり、面積は8百万人を入れる事が出来る。そして白人種は全て歓迎する事が出来る。日本人の排斥は以前支那人が排斥されたのと同じ事情に基づくものである云々

波斯と土耳古の葛藤 8日ベルリン特約通信社発

ペルシャ政府はトルコ兵の為に国境を侵害された事により、英露両国政府に向かって干渉を要求した。

解説:1907年の英露協商により、北部は露国、南部は英国の勢力範囲とし、獨国の進出に対抗している。

 

811

米国艦隊愈回航 海軍省は巡洋艦テネシー及びワシントンの2隻に対し検閲の終了後、太平洋に航行するよう命令した。

摩洛哥事変 カサブランカの英国領事館は非常に多数のモロッコ兵の襲撃を受けたが良く勇敢に防戦した。

米国艦隊愈回航 10日タイムス社発

ニューヨーク来電―海軍省は巡洋艦テネシー及びワシントンの2隻に対し検閲の終了後、太平洋に航行するよう命令した。又巡洋艦コロラド、ウエストバージニア、ペンシルベニア及びメリーランドの4隻は2週間以内に桑港(サンフランシシコ)に回航せよとの命令に接した。尚16隻の巡洋艦は桑港に於いて戦闘艦隊に合流する予定である。商船協会の会員等は、これ等艦隊の移動を冷笑して、16隻の戦闘艦隊を以て現在の太平洋の通商に従事している僅か6隻の商船を保護するとは大袈裟な事であると言っている。

摩洛哥事変 同上

タンジール来電―カサブランカの英国領事館は非常に多数のモロッコ兵の襲撃を受けたが良く勇敢に防戦した。しかし一時は非常に危険な情勢となり領事も万一を考えて、電信の暗号書を焼却した程であった。

 

8月12日

摩洛哥兵撃退 3千のモロッコ人がカサブランカの市外で佛兵を攻撃して撃退され、砲兵の為に多数の死傷者を出した。

韓兵反す 洪州、元州の鎮衛隊が反乱を起こし、日本騎兵が洪州の叛乱兵を撃破し

摩洛哥兵撃退 11日上海経由ロイター社発

タンジール発ロイター電によれば、3千のモロッコ人がカサブランカの市外で佛国のドルード将軍の率いる佛兵を攻撃して撃退され、砲兵の為に多数の死傷者を出した。

韓兵反す 同上

京城来電―洪州、元州の鎮衛隊が反乱を起こし、日本騎兵が洪州の叛乱兵を撃破し、これを追撃した。元州の騒乱は重大な事態であり、更に日本兵を増派した。

 

8月13日

独逸造艦計画 1908年度の独逸海軍予算には新式戦艦2隻及び最大型の巡洋艦1隻の新造費初年度分を計上した。

摩洛哥事変 佛国艦隊司令官フェリペル大将の報告によればモロッコ兵はカサブランカ市に対し夜襲を行おうとしている。

摩洛哥事変 カサブランカに於ける欧州人の家屋はモロッコ兵に略奪された。

比律賓独立の請願 当地に在留するマニラ人が集会を開き、フィリピン独立の請願書を作り北米大統領に提出する件を決議した。

独逸造艦計画 12日タイムス社発

ベルリン来電―1908年度の独逸海軍予算には新式戦艦2隻及び最大型の巡洋艦1隻の新造費初年度分を計上した。そしてこれらの戦闘艦は1910年に竣工する予定である。

摩洛哥事変 12日上海経由ロイター社発

佛国艦隊司令官フェリペル大将の報告によればモロッコ兵はカサブランカ市に対し夜襲を行おうとしている。去る土曜日の午後激烈な襲撃を受けたが見事に撃退したとの事である。

摩洛哥事変 11日ベルリン特約通信社発

カサブランカに於ける欧州人の家屋はモロッコ兵に略奪された。しかし大体に於いて秩序は回復された。

スペイン政府は陸兵5百名を派遣した。

比律賓独立の請願 12日香港特派員発

当地に在留するマニラ人が集会を開き、フィリピン独立の請願書を作り北米大統領に提出する件を決議した。その主動者は以前、日本に留学していた者と言われている。

 

814

ベルファーストの暴動 ベルファーストに再び労働者と軍隊の衝突があり、軍隊は余儀なく2回一斉射撃を行い4名の死亡と多数の負傷者を出した。

摩洛哥のその後 多数の土民は数千の騎兵に混じって去る土曜日カサブランカに於ける佛兵の兵舎を襲撃した。

回航反対の気勢 大艦隊の太平洋回航について上院議員間に強烈な反対者が出て、個々に海軍委員又は海軍省に問合せ中である。

浪々の韓国密使 韓国の皇族チョンと名乗る者(所謂ハーグ密使の一人)が熱心に米人の感情に訴え、我国人は最後の血を流すまで日本に抵抗する。

ベルファーストの暴動 12日タイムス社発

ベルファーストに再び労働者と軍隊の衝突があり、軍隊は余儀なく2回一斉射撃を行い4名の死亡と多数の負傷者を出した。

解説:北アイルランド問題は、現代でも完全に解決されていない。

摩洛哥のその後 同上

タンジール来電―多数の土民は数千の騎兵に混じって去る土曜日カサブランカに於ける佛兵の兵舎を襲撃した。しかしモロッコ兵は佛国の艦隊の激烈な砲撃を受け、莫大な損害を負って逃走した。

回航反対の気勢 12日桑港特派員発

大艦隊の太平洋回航について上院議員間に強烈な反対者が出て、個々に海軍委員又は海軍省に問合せ中である。政府が若し回航を中止しないならば次期議会に大統領の説明を求める決議案を出すべきであると力んでいる。又大西洋艦隊を太平洋の移すことについては大西洋岸各造船所及びその職工の間にも熱心な反対運動が起こっている。

浪々の韓国密使 同上

韓国の皇族チョンと名乗る者(所謂ハーグ密使の一人)が熱心に米人の感情に訴え、我国人は最後の血を流すまで日本に抵抗する。欧米一等国の国民は文明、平和、商業の為韓国の独立を救わなければならないと言っている。

 

815

佛国と摩洛哥 佛国外務卿ビッション氏の言によれば、佛国政府はこの上更に軍隊をモロッコに送る意思は無く、

韓国密使窮状 韓国皇族と称する李某は米国大統領に謁見したいと申し込んだが

摩洛哥事変 モロッコの叛徒は、以前に人質としていたサー、へんりー、マクリー将軍を解放した。

日本人問題 メキシコ国境を越えて米国に入り込む日本人が益々多くなり

佛国と摩洛哥 14日タイムス社発

佛国外務卿ビッション氏の言によれば、佛国政府はこの上更に軍隊をモロッコに送る意思は無く、政府は佛国を促して征服するための行動を採らせるような如何なる口実をも求めない。これは全く佛国の意思に反するものだからである。

韓国密使窮状 13日桑港特派員発

韓国皇族と称する李某は米国大統領に謁見したいと申し込んだが、大統領はその様な時間は無いとして拒絶した。

摩洛哥事変 同上

モロッコの叛徒は、以前に人質としていたサー、へんりー、マクリー将軍を解放した。しかし形勢はなお不穏である。

日本人問題 同上

メキシコ国境を越えて米国に入り込む日本人が益々多くなり、日本人移民問題は全米国の問題となるであろうとのワシントン来電があった。

 

8月16日

ベルファースト後報 ベルファーストの騒乱地域に派遣された警官及び軍隊は昨夜を以て引上げ、牧師及び労働者の代表は何れも闘争を取り締まる事を約束した。

英独両帝会見 英国皇帝は昨日ウイルヘルヌホーヘに到着された。独逸皇帝はビューロ宰相を随えて、英帝を駅に出迎えた。

ベルファースト後報 14日上海経由ロイター社発

ベルファーストの騒乱地域に派遣された警官及び軍隊は昨夜を以て引上げ、牧師及び労働者の代表は何れも闘争を取り締まる事を約束した。昨夜は幸いにして無事であり、マクドナル氏(アイルランド選出議員)は同盟罷工の善後策について現在熱心に尽力中である。

解説:8月14日に関連記事がある。

英独両帝会見 15日上海経由ロイター社発

英国皇帝は昨日ウイルヘルヌホーヘに到着された。独逸皇帝はビューロ宰相を随えて、英帝を駅に出迎えた。両帝は相抱擁して親愛の情を表した後に、市民歓呼の中を馬車で宮城に入られた。

解説:第1次世界大戦は7年後の1914年に始まった。

 

8月17日

日露協約と英国 日露協約の正文の発表は、非常な興味と満足を以てロンドンの政論社会に迎えられた。

日露協約本文 この協約の意は、両国が互いにその領土を保全し、清国の現状維持及び門戸開放を図る事にある。

摩洛哥事件後報 カサブランカに於いては、遭遇戦が依然として継続している。

日露協約と英国 15日タイムス社発

日露協約の正文の発表は、非常な興味と満足を以てロンドンの政論社会に迎えられた。

ロンドンタイムスは日本外交の成功を称賛し、日本がこの様に機会均等主義を明白に熱心に支持する以上は、必ずや満州に関し、外国商人の間に唱えられた苦情の口実を一切排除する措置を施すに違いないと論じた。

日露協約本文 15日上海経由ロイター社発

日露協約の本文が公にされた。この協約の意は、両国が互いにその領土を保全し、清国の現状維持及び門戸開放を図る事にある。

摩洛哥事件後報 同上

カサブランカに於いては、遭遇戦が依然として継続している。騎兵、砲兵が不足している為に土民の鎮圧は思う様に進んでいない様に思われる。

 

8月18日

摩洛哥事件 回教徒である各酋長は敵国に対して宗教戦争を起こす事を遊説中である。

阿片禁止問題 チャーチル氏は植民大臣エルチン卿に代わって、阿片反対同盟会の代表を引見した。

摩洛哥事件 16日タイムス社発

タンジール来電―回教徒である各酋長は敵国に対して宗教戦争を起こす事を遊説中である。モロッコ王はその主張に従わなければ王位を追われるか又は殺害される恐れがあり、憂慮している。

阿片禁止問題 17日上海経由ロイター社発

チャーチル氏は植民大臣エルチン卿に代わって、阿片反対同盟会の代表を引見した。マレーシアから来た同代表は、今や阿片の取引を制限し、最後にこれを禁止する改革を実行すべき時が来たと論じた。チャーチル氏は一同が提出した資料を精査する旨を約束し、本日の現状は到底長く継続させてはならず、諸君は政府がこの点について冷淡であると見てはならないと述べ、セイロンの現状は極めて遺憾であるので、我等は順次インド及び支那に対して採用した新政策を一般英国の植民地に及ぼさなければならないと考えている旨語った。

 

8月19日

摩洛哥兵の暴状 摩洛哥土兵の使者がカサブランカに来て降伏を要求する最後通牒を佛将ブルウド氏に提示した。

邦人移民調査 例の国会議員ハース氏は移民問題調査委員ビンクス教授に会い、日本人を排斥しなければならない事を説明し

摩洛哥兵の暴状 18日上海経由ロイター社発

摩洛哥土兵の使者がカサブランカに来て降伏を要求する最後通牒を佛将ブルウド氏に提示した。若し承諾しないならばカビレの土兵が大挙して佛国人を虐殺するであろうと脅迫した。ブルウド将軍は何らの回答も与えなかった。将軍は佛側の地位は堅固であると認めている。

邦人移民調査 15日桑港特派員発

例の国会議員ハース氏は移民問題調査委員ビンクス教授に会い、日本人を排斥しなければならない事を説明し、若し政府が発案しないならば自ら排斥案を次期議会に提出するであろうと断言した。

移民問題調査委員ゼンクス教授は、同委員加州大学長ホイラー博士と日本移民に関する報告書を作成中であるが、その結果は良好な事が予想される。

 

8月20日

タフト世界漫遊 陸軍卿タフト氏は本日18日世界漫遊の途につく。氏は日本のフィリピン買収説について、米国は同島を売る事はあり得ない。

石井局長談話 長い歴史を有する両国間の関係を無視し、日本人を欧州人と区別し、入国制限を加えようとする事は、日本国民の理解に苦しむ所である。

タフト世界漫遊 18日桑港特派員発

陸軍卿タフト氏は本日18日世界漫遊の途につく。氏は日本のフィリピン買収説について、米国は同島を売る事はあり得ない。現在の急務は同島の秩序を回復する事であると述べた。

石井局長談話 同上

日米戦争談の如きは愚論であり、艦隊が太平洋に回航するか否かによって日本国民は米国の勇気を試そうとはしない。しかし長い歴史を有する両国間の関係を無視し、日本人を欧州人と区別し、入国制限を加えようとする事は、日本国民の理解に苦しむ所である。

この石井局長の談話が新聞紙上に出て、深甚なる感動を米人に与えた。

 

8月21日

日本人入国抗議 多数の日本人が続々とコロンビアに入り込んでくるために、これに関する抗議書類がカナダ政府に到達した。

フィリピン買収説 余が熟知する所は、日本はこれを買収する意図は無く米国もこれを売却するつもりはないことであると述べた。

摩洛哥小戦 モロッコ人は昨日朝、カサブランカを攻撃して、佛軍の一部隊は軍艦の砲火に保護された攻勢を取り、カジール人は弾薬の欠乏の為に剣を抜いて突撃した。

日本人入国抗議 20日タイムス社発

多数の日本人が続々とコロンビアに入り込んでくるために、これに関する抗議書類がカナダ政府に到達した。代議士マクファーソン氏は首相ローリア氏に対し電報を発信し、これに対して早期に何らかの処置を取らなければ面倒が起こるであろうと警告した。

フィリピン買収説 19日上海経由ロイター社発

ニューヨークへラルドの一記者が、日本がフィリピンを買収しようとしているとの報道に関し陸軍卿タフト氏と面談した。タフト氏はこれに答えて、余が熟知する所は、日本はこれを買収する意図は無く米国もこれを売却するつもりはないことであると述べた。

摩洛哥小戦 同上

モロッコ人は昨日朝、カサブランカを攻撃して、佛軍の一部隊は軍艦の砲火に保護された攻勢を取り、カジール人は弾薬の欠乏の為に剣を抜いて突撃した。この戦いに於いて佛兵の死者2名、負傷者3名であったが土人の死傷者は非常に多かったと思われる。

822

摩洛哥時局発展 モロッコ政府はフエズ駐在の列国領事及び欧州人に対し不測の事態が発生する恐れがあるので同地を立ち去る事を要請した。

一道の光明 加州大審院は、新市長テイラー氏を以て市長と認める旨の判決を与え、シュミッツ氏もこの判決に服従する旨明言した。

摩洛哥時局発展 21日タイムス社発

タンジール来電―モロッコ王弟ムレーハビッドを国王の位に付ける旨発布された。

モロッコ政府はフエズ駐在の列国領事及び欧州人に対し不測の事態が発生する恐れがあるので同地を立ち去る事を要請した。これは、同国官憲が到底外国人に対して適切な保護を保障する実力があると自ら思考していないからである。

一道の光明 20日桑港特派員発

加州大審院は、新市長テイラー氏を以て市長と認める旨の判決を与え、シュミッツ氏もこの判決に服従する旨明言した。市政問題はこれにて一段落を告げ、市長テイラー氏は警察署長及び警務委員全体を指名し、責任ある人を任命しようとしている。その結果、労働者斡旋問題も解決するものと予想される。

解説:前市長の時代に、日本人の労働者斡旋所は違法として免許更新がされなかった。

 

823

摩洛哥事件 パリーの諸新聞は、一般に更に多数の軍隊をモロッコに派遣するよう政府に勧告した。佛国政府は足立に9百の粉黛を当地に増派しようとしている。

摩洛哥の風雲 首領ムレイハジトは欧州軍と戦う為に2万騎を率いてカサブランカに進軍中であるとモガドールにて報道された。

百分は一見に若かず 石井通商局長は当地付近を視察し、如何なる困難があっても日本人労働者を渡米させなければならない事に同意した。

市政着々刷新 サンフランシスコ新市長テーラー氏は職業斡旋その他日本人の営業権を侵害した警務委員全員を罷免したが彼等は罷免されるべき理由が無いとして反抗している。摩洛哥事件 22日タイムス社発

佛国首相クレマンソー氏はマリーンバットに於いて英国皇帝と午餐を共にした。英帝も首相も儀式を離れて打ち解けて談話をする中で、一般的な政策について特にモロッコに関する件を協議し、クレマンソー氏は飽く迄も平和を希望する旨を言明した。

パリーの諸新聞は、一般に更に多数の軍隊をモロッコに派遣するよう政府に勧告した。佛国政府は足立に9百の粉黛を当地に増派しようとしている。

摩洛哥の風雲 22日上海経由ロイター社発

首領ムレイハジトは欧州軍と戦う為に2万騎を率いてカサブランカに進軍中であるとモガドールにて報道された。

又カサブランカの土人兵の間では内乱が発生したとの情報がある。

百分は一見に若かず 21日桑港特派員発

石井通商局長は当地付近を視察し、如何なる困難があっても日本人労働者を渡米させなければならない事に同意した。これは日本人の著しい発展が期待される事に依るのみならず、カルフォルニヤ州産業の大勢に鑑みて自然の要求に応じる為である。

22日から1週間、サンフランシスコ付近の地方を視察し、30日夜、市長その他主要な官民を招待して大夜会をフエヤモントホテルに開く予定である。

市政着々刷新 同上

サンフランシスコ新市長テーラー氏は職業斡旋その他日本人の営業権を侵害した警務委員全員を罷免したが彼等は罷免されるべき理由が無いとして反抗している。後任者は弁護士、商人、銀行家であり好都合である。警察署長の更迭がこれに続くであろう。営業権の侵害問題も自然に解決されることに疑いは無い。

 

824

摩洛哥戦報 821日の朝、カサブランカに於いて騎馬のアラブ土人が大勢力で佛軍を攻撃した。

桑港市政刷新 地位が危うくなった当市の警察署長デイナンは、本日22日遂に辞職した。摩洛哥と列国 列国はこの事件に干渉しない事を決議した。

摩洛哥戦報 22日上海経由ロイター社発

821日の朝、カサブランカに於いて騎馬のアラブ土人が大勢力で佛軍を攻撃した。土人は海岸から発射した激烈な砲火を潜って約2マイルの間に密集して馬を操り、約4百歩の距離で佛軍と相対するまで押し寄せたが、終に佛軍の為に撃退された。

桑港市政刷新 22日桑港特派員発

地位が危うくなった当市の警察署長デイナンは、本日22日遂に辞職した。これで停滞していた警察部の改革が容易に行われるであろう。同時に前市長シュミッツ氏も新市長デイラー氏を市長と認めて、市に属する書類、器具等を交付した

摩洛哥と列国 22日ベルリン特約通信社発

佛国政府はカサブランカに居る佛国軍隊を5千人まで増員すべき事に同意した。スペインは別に増援隊を派遣しない。マリーンバッドに於いて英国皇帝は佛国首相クレマンソー氏と会見し、モロッコ問題について協議したが、この会見は極めて穏やかに打ち解けたものであった。

列国はこの事件に干渉しない事を決議した。

英国下院に於ける政府委員の報告によれば、モロッコに於いて英国人の財産は大損害を受けたが政府は軍隊を派遣しないであろう。

 

 

 

525

摩洛哥情報 賊の長ムレイハフイッドが自らモロッコ王と称している為にヨーロッパに於いては一般にその成り行きがどうなるか心配している。

摩洛哥情報 23日ベルリン特約通信社発

佛国政府はカサブランカに居る佛国軍隊が十分に防御出来る事を説明した。

賊の長ムレイハフイッドが自らモロッコ王と称している為にヨーロッパに於いては一般にその成り行きがどうなるか心配している。

 

826

諸帝会見と平和 この会談はヨーロッパ諸国の和平協力を明らかにし、平和に対する一般の希望が未だかってこの会談の様に明確に言明された事は無いと述べている。

摩洛哥情報 821日カサブランカの騒動に於ける佛軍の死傷者は、死者1名、負傷者4名であり、その内将校の負傷者は1名であった。

米国艦隊回航 16隻からなる戦闘艦隊の太平洋回航(来る12月)に関する諸般の事項を協議し決定した。

洋食店事件裁判 洋食店の損害賠償に関する裁判が昨23日カルフォルニア州上級裁判所で開かれ、

大艦隊回航期 16隻から成る艦隊が12月中に太平洋に向け出発する事を明言した。艦隊は航路をマゼラン海峡に取り桑港に来るが或いは

諸帝会見と平和 24日上海経由ロイター社発

ウイーン発行のプリネッツシエ紙は、最近行われた英獨墺露国の諸帝の3回の会見状況を述べた後、マリーンバッドに於けるエドエアード皇帝と佛国のクレバンソー首相との会談に及んで、この会談はヨーロッパ諸国の和平協力を明らかにし、平和に対する一般の希望が未だかってこの会談の様に明確に言明された事は無いと述べている。

摩洛哥情報 同上

821日カサブランカの騒動に於ける佛軍の死傷者は、死者1名、負傷者4名であり、その内将校の負傷者は1名であった。

戦闘後佛軍はその付近を偵察したがモロッコ人は殆ど完全に退却していた。

米国艦隊回航 25日上海経由ロイター社発

米国大統領は、オイスターベイに海軍将官会議を招集し、16隻からなる戦闘艦隊の太平洋回航(来る12月)に関する諸般の事項を協議し決定した。

洋食店事件裁判 24日桑港特派員発

洋食店の損害賠償に関する裁判が昨23日カルフォルニア州上級裁判所で開かれ、被告である市の弁護士は、直接損害高の575ドルを支払うつもりであるが間接損害高の2千ドルを要求する事は不当であると抗弁した。原告代理人は陪審裁判を求める為に一応閉廷し、その後開廷する予定である。

解説:明治407月17日「卑怯なる振舞」の記事に洋食店が破壊された様子が報道されている。

大艦隊回航期 同上

大統領秘書ローブ氏は、昨2316隻から成る艦隊が12月中に太平洋に向け出発する事を明言した。艦隊は航路をマゼラン海峡に取り桑港に来るが或いはヒユービット、サウンドにも寄港するかもしれない。別に駆逐艦隊も太平洋に回航する予定であるが鋼鉄艦隊と同行しない。

解説:マゼラン海峡は、南アメリカ南端にあり、大西洋から太平洋に抜ける近道であるが海の難所として有名である。その為に南米最南端を迂回して、ホーン岬と南極大陸との間のドレーク海峡を通る船が多い。

鋼鉄艦隊とは、防護鋼板で保護された外舷を持つという意味で今回は16隻の艦隊を指す。桑港とはサンフランシスコである。

 

827

英露協商の進捗 英国がこの協議に於いて露国に対して行った譲歩はインド政府の間に大きな非難を巻き起こすものと思われる。

平和会議 平和会議は9月中旬頃までには終了すると思われる。

米国艦隊回航確実 米国は12月に戦闘艦15隻を南米のマゼラン海峡を通過し、サンフランシスコ及びビユゼットサウンドに回航させる

英露協商の進捗 26日タイムス社発

ペテルスブルグ来電―英露両国間の協議は現在着々と進行中である。この間の消息に通じた者の所見によれば、英国がこの協議に於いて露国に対して行った譲歩はインド政府の間に大きな非難を巻き起こすものと思われる。しかしこの譲歩の正当な報酬として、英国側ではインド侵略に対する確実な保証を得る事を要求したと思われる。

平和会議 同上

ハーグ来電―平和会議は9月中旬頃までには終了すると思われる。

英国委員は領海外への機雷敷設問題に関して、機雷の威力を無力化する事の出来る方策が発見されるまで、その使用を禁止するとの修正案を提出した。

解説:海底から離れて、浮遊する機雷により被害が発生している為に、ある一定の期間を経過した機雷を無力化する事を英国は主張している。

米国艦隊回航確実 24日ベルリン特約通信社発

米国は12月に戦闘艦15隻を南米のマゼラン海峡を通過し、サンフランシスコ及びビユゼットサウンドに回航させる事を公報した。

同艦隊には水雷艇も付随するであろう。

解説:戦闘艦の回航問題は毎日の様に報道されてきたが遂に決定した。

 

828

米国艦隊回航 太平洋に回航すべき戦闘艦隊は、昨日戦闘訓練及び演習を実施中であり、多分1215日を期して太平洋に向け出港するものと思われる。

比律賓売却論 米国新聞レラルドはフィリピン群島を日本に売り渡すよう主張している。

加奈陀排日運動 英領カナダのウイニペックに猛烈な排日運動が起こり、大規模な集会

米国艦隊回航 27日タイムス社発

ニューヨーク来電―太平洋に回航すべき戦闘艦隊は、昨日戦闘訓練及び演習を実施中であり、次いで射撃訓練を行って、その後ドックに入り検査を受ける事になっている。多分1215日を期して太平洋に向け出港するものと思われる。

海軍大臣代理はイヴァンス大将が戦闘艦隊の太平洋回航に乗り気でない事を非難している。

しかしヘラルド新聞の報道によれば、最新式白頭機雷の供給については日本に依頼せざるを得ない事情があり、米国は日本が買い入れた白頭機雷千個の中から若干を買い受ける事に関し現在交渉中である。もし米国が日本から買い受けようとするならば、その受け渡しまでになお多くの日数が必要と言われている。

解説:白頭機雷 日本が開発して機雷で、満潮、干潮でも同じ水面下にある係維機雷であり、日露戦争中旅順港を封鎖する為に使用された。

比律賓売却論 同上

米国新聞レラルドはフィリピン群島を日本に売り渡すよう主張している。この議論には多数の、著名な論客の賛成がある。

加奈陀排日運動 26日桑港特派員発

英領カナダのウイニペックに猛烈な排日運動が起こり、大規模な集会の席上にて「我らに銃を携行させ、東洋人を連れてきた汽船に対して、彼等の上陸を妨げさせよ」と檄語する者があった。そして日本人が取り扱っている木材、魚類その他に対し厳重なボイコットを行う事を決議した。

 

829

日加労働談判 カナダ政府は日本人の入国を1年に6百名以内と限り、それ以上は許可しないとする旧条約の復活に関して日本と交渉を開始した。

摩洛哥現状 謀叛王ムレーハビッドはマラケンに於いて内閣大臣を任命した。そして彼はカサブランカに向かって進軍する意思が無いと伝えられる。

日加労働談判 28日上海経由ロイター社発

カナダ政府は日本人の入国を1年に6百名以内と限り、それ以上は許可しないとする旧条約の復活に関して日本と交渉を開始した。

英領コロンビアの労働者は暴力を以て東洋人を脅迫している。

摩洛哥現状 27日ベルリン特約通信社発

謀叛王ムレーハビッドはマラケンに於いて内閣大臣を任命した。そして彼はカサブランカに向かって進軍する意思が無いと伝えられる。しかしフェッツ付近に再び戦闘が起こりそうである。

ビューロ宰相及び駐獨佛国大使カンボン氏は同一内容の文書を新聞に発表して、モロッコ問題に対する意見を明言した。

 

830

摩洛哥新王諭告 今後モロッコが列国と親密な関係を保つ事を希望し、モロッコ国民に対して平穏を保ち、みだりに騒動を起こさない様に諭した。

加奈陀と日本人 カナダ政府は、ハワイからと何れからとを問わず、日本人のカナダへの入国をある数に制限しようと日本政府と交渉中である。

断じて偏頗を許さず 日本人排斥令の実施は、日加英間の国際紛争を引き起こすであろう。日本政府は決してこの不公平な待遇を許さない。

摩洛哥新王諭告 29日タイムス社発

マザガンに於いて新たに国王と宣せられた現モロッコ国王の弟は上諭を発して、今後モロッコが列国と親密な関係を保つ事を希望し、モロッコ国民に対して平穏を保ち、みだりに騒動を起こさない様に諭した。

加奈陀と日本人 28日桑港特派員発

カナダ政府は、ハワイからと何れからとを問わず、日本人のカナダへの入国をある数に制限しようと日本政府と交渉中である。現在の協定は1年間に5百乃至6百人と言っているが昨今の実情は、ハワイから来るだけでもその数倍である。

断じて偏頗を許さず 29日桑港特派員発

英領カナダの排日運動が激烈な事に対し、能勢総領事は次の様に述べた。

昨年の日加条約は日本人に欧州人と同様の入国特権を付与している。日本人排斥令の実施は、日加英間の国際紛争を引き起こすであろう。日本政府は決してこの不公平な待遇を許さない。