明治40年5月

主要記事

期日 日本関係 期日 露清関係 期日 英米関連 期日 独仏その他関連
5月1日 加奈陀と日本人  5月3日 露都の五月一日 5月5日 英国外相演説  5月2日 独逸宰相外交演説
5月6日 前大蔵大臣の放言 5月7日 阿片貿易と英国 5月6日 南米紛議続出  5月3日 独逸宰相演説別報
5月8日 遣米艦隊到着  5月17日 英清阿片問題 5月11日 印度不穏 5月4日 駐清独逸軍隊と海軍 
5月10日 日佛協商反響  5月19日 無政府の状態 5月12日 英独宰相応酬 5月14日 独逸と海軍 
5月11日 新三国同盟 5月25日 露国農民救済策  5月14日 印度人集会禁止    
5月13日 日英同盟と列国 5月31日 英清阿片問題  5月15日 英国下院と印度問題    
5月17日 日本労働者排斥      5月17日 印度の形勢    
5月18日 遣米陸海軍歓迎     5月26日 南阿櫌乱観察     
5月18日 日本人帰化權             
5月20日 日本の満州政策             
5月21日 遣米艦隊廻欧            
5月23日 米国暴民の狼藉            
5月25日 奇怪千萬            
5月27日 桑港狼藉のその後            
5月28日 ロンドンタイムスの激昂            
5月28日 日本政府の苦情             
5月29日 日本領事の説明             

世界情勢

明治405

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軍人排斥運動 先日来事を好む一派が扇動した軍人排斥運動は、民主的思想に満ちた軍隊に格別の影響を及ぼしていない。

加奈陀と日本人 カナダは日英条約に加盟したので同国における移住民に関する制限は既に取り除かれていると通告した

軍人排斥運動 30日タイムス社発

パリー来電―陸軍卿の明言する所によれば、先日来事を好む一派が扇動した軍人排斥運動は、民主的思想に満ちた軍隊に格別の影響を及ぼしていない。只将校の中に若干規律を無視した行為を敢て行う者が居るのみである。そしてこれらの違反者を処分する為に陸軍卿は更にある権能を要請する必要があると述べた。

加奈陀と日本人 30日上海経由ロイター社発

ロンドンタイムスのオタワ通信員の報道によれば、最近日本人の英領コロンビアに入国する者が非常に多く、日本政府は日本に在る各移民会社に対して、カナダは日英条約に加盟したので同国における移住民に関する制限は既に取り除かれていると通告したと言われている。

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英伊両帝再会見 伊国皇帝はローマの城外にて10分間列車で御会談があったのみ

独逸宰相外交演説 独逸は未だかって兵力を害用した事は無いし、今後もこれを害用するつもりはない。独逸の陸軍はただ平和の維持を唯一の目的としている。

そして必要な場合に国家を防衛するに足るだけの国力を養う為に全力を国内に集中するつもりである。

英伊両帝再会見 1日上海経由ロイター社発

英国皇帝はパリーに向け、ネーブルスを出発された。ローマにはお立ちよりされない。伊国皇帝はローマの城外にて10分間列車で御会談があったのみで、但しローマの政論社会はこの会見は英伊両国の親密な関係を表示するものであると認めている。

独逸宰相外交演説 30日ベルリン特約通信社発

宰相ビュウロー公は帝国議会に於いて、国際問題に係る独逸の地位を弁明した。その中で軍備縮小問題はこれを実行する方法を得て、その後討議を始める事が出来るのであって、現在は未だその時期に至っていない。故にこれを討議すればその結果、だだ列国の感情を傷つけるのみに過ぎない。独逸は未だかって兵力を害用した事は無いし、今後もこれを害用するつもりはない。独逸の陸軍はただ平和の維持を唯一の目的としている。

又英伊両国の親交は、単に三国同盟と両立しえるのみならず、又三国同盟の為に必要である。独逸は他国の戦争に乗じて利益を掴む意思は無い。又現在英独両国の間には親密な関係を破る不和の原因は一つも無い。故に独逸は英露協約の締結に対しても冷淡な態度でこれに臨むであろう。独逸の熱心に希望する事は三国同盟の維持にあり、そして必要な場合に国家を防衛するに足るだけの国力を養う為に全力を国内に集中するつもりである。

解説:独逸の陸軍は平和の維持を唯一の目的としているとの言葉は、中国の人民解放軍の主張に似ている。三国同盟は独逸、オストリア、伊の同盟であったが第一次世界大戦では、伊は結局連合国側で戦った。

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露都の五月一日 パリーの5月1日は静穏に経過した。しかし露都に於いては騎兵の一隊が1名の露人を目がけて短銃を発射した事が動機となり、非常な騒動を引き起こし

独逸宰相演説別報 平和会議に於いて軍備縮小問題を討議する事は危険であり、到底実行し得る結果を見る事ができないとの理由で、独逸はその討議には参加しないであろう。

露都の五月一日 2日タイムス社発

パリーの5月1日は静穏に経過した。しかし露都に於いては騎兵の一隊が1名の露人を目がけて短銃を発射した事が動機となり、非常な騒動を引き起こし、猛り狂った民衆が散々に騎兵を悩ました。この為に一時捕縛された者は数百名に及んだ。その多くは市中に於いて革命歌を歌い若しくは革命を鼓吹する小冊子を売り歩く者であった。

独逸宰相演説別報 1日上海経由ロイター社発

独逸宰相ビューロ公は帝国議会に於いて次の演説を行った。

平和会議に於いて軍備縮小問題を討議する事は危険であり、到底実行し得る結果を見る事ができないとの理由で、独逸はその討議には参加しないであろう。英伊両帝の会見は当然の事であり、英伊の親交は唯三国同盟と両立し得るのみならず、又有益であり願わしい事である。現在英独両国の間には何らの論争も無い。

解説:独逸はオーストリア、イタリーと三国同盟を結んでおり、海軍大臣テルピッツは建艦競争で英海軍に挑戦している。

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駐清独逸軍隊と海軍 公使館の警備、在留独逸臣民の生命財産に対する保護等があり、駐清軍隊の任務は尚未だに終了できる状況に至っていないと明言した。

茶税軽減案否決 大蔵大臣アスキス氏は、若し財政の都合が減税を許すならば茶よりも寧ろ砂糖税を軽減しなければならない。

駐清独逸軍隊と海軍 3日タイムス社発

ベルリン来電―帝国議会に於いて、清国に駐在する独逸の軍隊は何時頃撤退の見込みであるかとの質問が起こり、政府はこれに対して、公使館の警備、在留独逸臣民の生命財産に対する保護及び交通を便利にする道路の整備等があり、駐清軍隊の任務は尚未だに終了できる状況に至っていないと明言した。

又海軍大臣は技術及び財政の都合で、未だタービン式機関を多数の艦艇に装備する事は出来ないが新造の小型巡洋艦には皆これを装備する方針であると言明した。

茶税軽減案否決 2日上海経由ロイター社発

英国上院議員フレッチャー氏は、茶税の1ペンス軽減案を提出したが、大蔵大臣アスキス氏は、若し財政の都合が減税を許すならば茶よりも寧ろ砂糖税を軽減しなければならない。且つ又貿易の状況に照らし当分は茶税の1ペンス軽減案を実行しない方が却って消費者に有利であろうと答え、上院は、終に146票対250票の多数を以て同案を否決した。

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露独の関係 独逸は親露主義者の仮面を被り、露国を教唆してアジアの隣邦に対して、反目、疾視(憎しみの目で見る)の外交政策を行わせ、

駐清独逸軍隊費可決 独逸帝国議会の予算委員会は、清国駐兵費を可決した。

英国外相演説 英国皇帝がカルタジェナを訪問されたのは、儀礼的は返訪に過ぎず、又ケータに於ける伊国皇帝との会見は、全く個人的な性質の会見である。

露独の関係 4日タイムス社発

露都来電―ノーウエー、ヴィレミヤ紙は独逸議会におけるビューロ宰相の演説を罵倒して次の様に述べている。

独逸は親露主義者の仮面を被り、露国を教唆してアジアの隣邦に対して、反目、疾視(憎しみの目で見る)の外交政策を行わせ、そして日露戦争に対する真の勝利者は独逸である。何故ならば露国にとって最も不利な通商条約の形式で借金を露国に課したのは独逸であるからである。

駐清独逸軍隊費可決 4日上海経由ロイター社発

独逸帝国議会の予算委員会は、清国駐兵費を可決した。政府は同委員会に向かって駐清軍隊の任務が未だ終了しない旨を明言した。

解説:昨日の記事に駐清軍隊についての記事がある。

英国外相演説 3日ベルリン特約通信社発

英国外相サー、エドワード、グレーは下院に於いて次の様な宣言を行った。

英国皇帝がカルタジェナを訪問されたのは、儀礼的な返訪に過ぎず、又ケータに於ける伊国皇帝との会見は、全く個人的な性質の会見である。国際の政治的商議に対する憲法上の慣行及び国務大臣の責任は昔と同じである。外相は更に進んで英国艦隊がクロンシュタットを訪問するとの風説があるが事実無根であると明言した。最後に英国政府は西インドの属領地に対する保護に就いて現在考慮中であると告白した。

解説:英国皇帝がイタリア、スペインの皇帝を訪問し、独逸が神経を尖らせている事に就いての反論である。

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前大蔵大臣の放言 前大蔵大臣シヨウ氏は、太平洋における覇権を争う大戦争は到底免れぬ事は出来ない。我等は血をもってその地位を守護しなければならないと大言した。

南米紛議続出 米国の黒人を殴打した嫌疑で、米国砲艦ザドカーの水兵は、同地警察署長及び巡査数名を捕縛し、軍艦に収容

前大蔵大臣の放言 5日サンフランシスコ特派員発

前大蔵大臣シヨウ氏は、マサチュセットで開催された商業大会に於いて、太平洋における覇権を争う大戦争は到底免れぬ事は出来ない。現在太平洋に於いて覇権を狙っている二国があり、我等は血をもってその地位を守護しなければならないと大言した。ショウ氏は二国を明示しなかったけれども、日獨両国を暗示していると一般に了解している。

解説:現在から考えると極めて正しく将来を見通している。日露戦争後中国問題で日米の対立が始まり、米海軍では、対日海軍戦略オレンジプランの研究が開始されている。

南米紛議続出 同上

ホンジュラスのプエルト、コルテッツに於いて米国の黒人を殴打した嫌疑で、米国砲艦ザドカーの水兵は、同地警察署長及び巡査数名を捕縛し、軍艦に収容した為に重大な事件となりそうである。

5月7日

摩洛哥王廃位 諸大臣は無能な現在の国王を廃し、その弟ヲマラケスから迎えて、王位に就けようと決し、その旨を宣旨した。

阿片貿易と英国 若し清国政府が自国に於ける阿片の耕作を禁止する必要を自覚する前に、英国政府が印度に於ける阿片の生産に干渉する様な事があれば、実に愚の極みである

摩洛哥政変 新王は同時に佛国医師マウシャン氏を殺害した犯人を赦免し、又既に罷免された知事を復職させた。

欧州外交近情 オーストリア外相エーレンタール男爵とビューロ宰相との会談の結果、更にオーストリアと伊国両国外相の間に商議を開く事になった。

摩洛哥王廃位 6日タイムス社発

タンジール来電―チエシト地方が無政府状態に陥った結果、諸大臣は無能な現在の国王を廃し、その弟をマラケスから迎えて、王位に就けようと決し、その旨を宣旨した。

阿片貿易と英国 6日上海経由ロイター社発

約50年間という長い間、清国に於いて貿易事業に従事したアーチバルト、ジョン、リツトル氏が今回英国に帰省した。氏は、訪問した本社員に対して次の様に明言した。

清国の利益の為に、阿片の輸出を減少させる事をインドに要求する事は寧ろ滑稽である。印度の阿片は僅かに清国沿岸の都市で使用されているに過ぎず、清国に於いて使用されている阿片の総額からすれば実に言うに足らざる程の少量である。若し清国政府が自国に於ける阿片の耕作を禁止する必要を自覚する前に、英国政府が印度に於ける阿片の生産に干渉する様な事があれば、実に愚の極みであると考える。

摩洛哥政変 同上

マラケス市民は、先月27日、ムレーハビットをモロッコ王に仰ぐ旨宣言し、新王は同時に佛国医師マウシャン氏を殺害した犯人を赦免し、又既に罷免された知事を復職させた。

解説:佛国はモロッコを保護国としており、3月26日の新聞に佛国医師が殺害された記事がある。

欧州外交近情(三国同盟と英国皇帝) 5日ベルリン特約通信社発

オーストリア外相エーレンタール男爵とビューロ宰相との会談の結果、更にオーストリアと伊国両国外相の間に商議を開く事になった。これは英国皇帝の地中海旅行に対する対抗措置であり、皇帝の旅行に就いて独逸議会は政府と一致団結し、社会民主党すら政府及び軍隊に対する攻撃を緩めた。

解説:独逸、オーストリア及び伊国は三国同盟を結んでいるが、7年後の第1次世界大戦では、伊国はオーストリアとの間に領土問題があり、結局連合国側に立った。

5月8日

日佛及び日露協商 日佛両国政府は、極東に於ける各自領土拡張の不侵害を保障する協約の締結に就いて、現在交渉中である。

排日運動善後策 青木大使は、カルフォルニア州と日本居留民との親密な関係を確立する為の方法を求め、

遣米艦隊到着 帝国艦隊の筑波及び千歳は本日6日午後5時10分、当地に到着すると砲台と軍艦が祝砲を交換

日佛及び日露協商 6日上海経由ロイター社発

日佛両国政府は、極東に於ける各自領土拡張の不侵害を保障する協約の締結に就いて、現在交渉中である。この協約は日英協約と同じ系統のものであり、日本は露国とも同種の協約に就いて協議中である。

排日運動善後策 7日桑港特派員発

青木大使は、カルフォルニア州と日本居留民との親密な関係を確立する為の方法を求め、当地に来訪する予定である。大使のこの旅行は将来に重大な影響を与えると考えられる。

遣米艦隊到着 6日ハンブトンローブ特派員発

帝国艦隊の筑波及び千歳は本日6日午後5時10分、当地に到着すると砲台と軍艦が祝砲を交換し、筑波は米国旗艦コネチカットと並んで錨泊した。

5月9日

日佛協商の動機 極東における領土の現状維持を目的とする日佛協商は、佛国がこれまで採ってきた絶対的な平和主義の論理的な帰結

印度政庁の訓告 各地の学校教師が生徒と団結して政治運動に関係しようとする傾向があり、この文書は、これに伴う危険から印度の高等教育を救済する

佛国新聞の論調 佛国諸新聞は仏領インドシナに於ける佛国の権利を確保し、且つアジアの平和を強固にする事を目的とする日佛協商を歓迎した。

日佛協商の動機 極東における領土の現状維持を目的とする日佛協商は、佛国がこれまで採ってきた絶対的な平和主義の論理的な帰結であり

印度政庁の訓告 7日上海経由ロイター社発

印度政庁は、今回印度の各地方政府に対して重要な文書を送付した。各地の学校教師が生徒と団結して政治運動に関係しようとする傾向があり、この文書は、これに伴う危険から印度の高等教育を救済する目的から行われたものである。印度政庁がこの様な措置を採る様になったのは、言うまでもなく先頃ラホール、ラワルビニその他各地で発生した紛争が著しい不安な感情を惹起した事に起因している。

佛国新聞の論調 同上

佛国諸新聞は仏領インドシナに於ける佛国の権利を確保し、且つアジアの平和を強固にする事を目的とする日佛協商を歓迎した。

510

日佛協商反響 日佛協商は何れの国をも目指したものでなく、佛国が印度支那に於ける利権を防護する強固な取り決めを希望するのは当然の事である

南米葛藤調停 ガアテマラ共和国の大統領が辞職さえすれば、問題は平和的に解決される見込みがある

日佛協商反響 9日タイムス社発

タイムス社評論―ロンドンタイムスは日佛の協商を大いに歓迎し、パリー駐在の栗野大使及び佛国外務卿が明言した様に、日佛協商は何れの国をも目指したものでなく、佛国が印度支那に於ける利権を防護する強固な取り決めを希望するのは当然の事であると論評した。

独逸の煩悶―日仏の協商は独逸の政論社会に非常な驚愕を与えた。諸新聞は独逸が膠州湾の地位に就いて何らかの協議を受けたかどうか政府に質問した。そしてある新聞は日本と何か交渉中であるかの様に仄めかし、又ある新聞は政府の政策を強烈に攻撃した。その中にフォッシュシェツアイツング紙はビュウロー宰相の言を借り、米国とロシアは国際社会の片隅に押し込められようとしていると嫌味を吐いた。

南米葛藤調停 8日ベルリン特約通信社発

独逸を始め欧米列国は、メキシコ及びグアテマラの両共和国間で発生した紛争の調停に努力中である。ガアテマラ共和国の大統領が辞職さえすれば、問題は平和的に解決される見込みがある様である。

511

新三国同盟 日佛協約が締結されるならば日英佛の関係は、新たに三国同盟を締結したのと同様であり、

印度不穏 英国政府は最近印度の不穏な情勢に鑑み、暴動の首謀者を逮捕して国外に追放した。

新三国同盟 10日タイムス社発

ウイン来電―親獨派の新聞ノイエフライエプレツスは、若し日佛協約が締結されるならば日英佛の関係は新たに三国同盟を締結したのと同様であり、支那の通商諸問題は全て三国の随意に決定され、その他の競争列国は彼らの残飯を食する事に派かならない。そしてこの情勢は言うまでも無く独逸に不利である。

印度不穏 9日上海経由ロイター社発

英国政府は最近印度の不穏な情勢に鑑み、暴動の首謀者を逮捕して国外に追放した。

本社のラホール通信員の報道によれば、軍隊は皆武装を整えて万一の事態に備えている。そして屈強な土民は隊を組んで市中を徘徊して、無頼の徒は皆兵器を執って首魁の下に集合している。

明治40512

日佛協商と露国 日佛協商の結果は欧州に於いて露佛英三国の提携を誘致し、独逸の陰謀に逆らって平和を確実に維持する事が出来る

英独宰相応酬 英国首相バンナーマン氏は、軍備縮小問題に対するビュウロー宰相の演説は公明にして友好的であると批評した。

日佛協商と露国 11日タイムス社発

露都来電―眼識がある露人は非常な満足を以て日佛協商を歓迎している。「ルス」新聞は、日佛協商の結果は欧州に於いて露佛英三国の提携を誘致し、独逸の陰謀に逆らって平和を確実に維持する事が出来るであろうと論評している。

解説7年後の1914年に発生した第1次世界大戦では、独逸は82日露国に対して宣戦布告し、83日佛国に対し宣戦布告した。英国は84日独逸に対し宣戦布告した。

英独宰相応酬 10日ベルリン特約通信社発

英国首相バンナーマン氏はマンチェスターに於ける演説で、軍備縮小問題に対するビュウロー宰相の演説は公明にして友好的であると批評した。

解説52日に関連記事「独逸宰相外交演説」がある。 

513

遣米艦隊消息 今回の海陸軍祝典会なるものは、遂に公式には挙行されず、426日もその式が行われず、又明後13日の祝典も予想された程には盛大に行われないと思われる。日英同盟と列国 日英両国の目的は、他国の利益を侵害する為ではなく、唯平和の基礎を強固にする事にある。

遣米艦隊消息 11日ゼイムスタウン特派員発 

今回の海陸軍祝典会なるものは、遂に公式には挙行されず、426日もその式が行われず、又明後13日の祝典も予想された程には盛大に行われないと思われる。英国及び独逸の軍艦が予定より早くこの地を去ったのはこの為であり、我が艦隊の将士も大いに失望し、13日を過ぎたならば14日この地を出発してニューヨークに行く事に決まっている。

日英同盟と列国 11日上海経由ロイター社発

英国外相サー、エドワード、グレーは伏見特使宮の為に外務省に於いて盛大な饗宴を催した。外相は殿下の健康を祝し、且つ日本人の愛国心と公共心を称賛した後、日英両国の関係に言及し2年前改訂された同盟協約の目的は、他国の利益を侵害する為ではなく、唯平和の基礎を強固にする事にある。そしてこの目的は今や極東に利害関係を有する列国の等しく認識する様になるであろうと信じていると明言し、伏見の宮は之に対して謝辞を述べ、日英両国の親交に言及された。

 

 

 

514

日佛協商と露紙 現在進行中の日露協商は、日佛協商と同じく東洋の平和と東洋における列国の均勢を一層確実にさせるものであり

独逸と海軍 独逸海軍協会大会に於いて、各演説者全員が、独逸海軍に対する英国の嫉妬や怨根を理由にして海軍を拡張する必要を説き

摩洛哥益々不穏 在留欧州人は軍隊の護衛の下で同地を引き払った。

印度人集会禁止 1週間前に文書による申出をしない限り土民の集会を許可しない旨を布告した。

日佛協商と露紙 12日ベルリン特約通信社発

露国新聞ロシア紙によると、現在進行中の日露協商は、日佛協商と同じく東洋の平和と東洋における列国の均勢を一層確実にさせるものであり、日佛協商はこの日露協商に付帯して、自然に生まれるべきものである。露国はこの協商が印度支那に対する危険を一掃した点に於いて非常に歓喜する者である。

独逸と海軍 13日タイムス社発

ベルリン来電―コロン市で開かれた独逸海軍協会大会に於いて、各演説者全員が、独逸海軍に対する英国の嫉妬や怨根を理由にして海軍を拡張する必要を説き、独逸の現在の建艦計画は遅緩であり、海軍拡張は今後ますます緊要であると主張した。

摩洛哥益々不穏 13日上海経由ロイター社発

モロッコのマラケス地方の情勢は益々不穏となり、在留欧州人は軍隊の護衛の下で同地を引き払った。

印度人集会禁止 同上

シムラ来電―印度政庁は官報号外を発行し、東部ベンカン及びホンジャの或る地方に限って、1週間前に文書による申出をしない限り土民の集会を許可しない旨を布告した。

日佛協商と露紙 12日ベルリン特約通信社発

露国新聞ロシア紙によると、現在進行中の日露協商は、日佛協商と同じく東洋の平和と東洋における列国の均勢を一層確実にさせるものであり、日佛協商はこの日露協商に付帯して、自然に生まれべきものである。露国はこの協商が印度支那に対する危険を一掃した点に於いて非常に歓喜する者である。

515

英国下院と印度問題 印度事務大臣モーレー氏は、若し騒乱が他の地方に蔓延する様な事になれば政府は行政上の改革を中止するかもしれないと明言した。

露国捕虜収容費 露国政府は日本に支払うべき捕虜収容費として46百萬ルーブルの光彩を募集する

摩洛哥の内乱 モロッコのマラケスに於いて、カビレ―土民は外国領事及び居留民を襲撃した。

 

英国下院と印度問題 14日タイムス社発

印度事務大臣モーレー氏は下院に於いて印度の不穏な情勢に就いて、次の様な演説を行った。

この問題については、行政府の行動に干渉する事を容認しないし又ボンジャ地方に施行されつつある条例の改廃を拒絶するが、若し騒乱が他の地方に蔓延する様な事になれば政府は行政上の改革を中止するかもしれないと明言した。

極端な急進的議員の多数は政府の弁明を手緩いと思い、扇動者を追放する事に関して政府の措置を激しく攻撃した。

露国捕虜収容費 14日上海経由ロイター社発

露国政府は日本に支払うべき捕虜収容費として46百萬ルーブルの光彩を募集する事について同意を求める法案を国民議会に提出した。

摩洛哥の内乱 13日ベルリン特約通信社発

モロッコのマラケスに於いて、カビレ―土民は外国領事及び居留民を襲撃した。英佛両国の領事は既に同地を引き払ったが独逸の領事は尚留まっている。

モロッコの官兵は王位を狙っている者の率いる賊軍と戦い、これを破った。

明治40516

摩洛哥騒乱後報 モロッコのマラケスの情勢は依然として不穏である。独逸領事は居留民と共に同地を引き揚げた。

蓋平事件要求 日本総領事代理は、蓋平殺害事件に関し、清人高景賢(こうけいけん)の死因は謀殺と認められる

摩洛哥騒乱後報 14日ベルリン特約通信社発

モロッコのマラケスの情勢は依然として不穏である。独逸領事は居留民と共に同地を引き揚げた。

解説:前日の記事の続き

蓋平事件要求 15日奉天特派員発

日本総領事代理は、趙(ちょう)将軍に面会し、蓋平殺害事件に関し、清人高景賢(こうけいけん)の死因は謀殺と認められるので我が要求条件を承認すべきであると申し込んだ。

解説:明治4047日、奉天省蓋平の清国漁業公司に於いて、関東州水産組合の清国人高景賢が殺害された事件である。高が日本の租借地内の住民であった為に日本が抗議し、最終的に黄総辦の免職と賠償金2千円の支払いで解決した。

517

墺国議会形勢一変 第1回普通選挙の結果、オーストリア議会に於いて最も高い地位を占めたのは社会民主党であった。

印度の形勢 政府が印度の情勢について非常に憂慮していることは紛れもない事実である。しかし事実を誇大にして政府を攻撃しないよう希望する。

日本労働者排斥 最近、バンクーバー付近の鉱山に日本人が多く入り込んだとして白人の工夫の間に恐慌を引き起こしている。

英清阿片問題 阿片の輸入禁止を来年に延期してもらいた。そうでなければ本年の阿片は販路を失い、印度の農民は非常に困惑する事になる。

墺国議会形勢一変 16日タイムス社発

ウイーン来電―第1回普通選挙の結果、オーストリア議会に於いて最も高い地位を占めたのは社会民主党であった。キリスト教主義の社会党がこれに次、その他の各政党は殆ど全滅の姿であった。

解説:この結果は、独逸派の敗北を示している。

印度の形勢 16日上海経由ロイター社発

陸相ハルデーン氏はロンドンに於いて次の様な演説を行った。

政府が印度の情勢について非常に憂慮していることは紛れもない事実である。しかし事実を誇大にして政府を攻撃しないよう希望する。必要な場合には仮令50年前ほど事ではないが、在インドの軍隊は十分勇猛に行動できると思われる云々

日本労働者排斥 15日桑港特派員発

最近、バンクーバー付近の鉱山に日本人が多く入り込んだとして白人の工夫の間に恐慌を引き起こしている。彼らは日本人が速やかに退去しないならば暴行を加えるであろうと脅迫している旨急報があった。同所に於ける同胞労働者3百名の地位が非常に危険である。

英清阿片問題 16日北京特派員発

英国公使は外務部に次の照会を行った。

本年は、既に印度に於いて阿片の収穫を終了している。その為阿片の輸入禁止を来年に延期してもらいた。そうでなければ本年の阿片は販路を失い、印度の農民は非常に困惑する事になる。

解説:阿片禁止に関する記事が今年度1月11日、2月9日、2月16日にある。

5月18日

遣米陸海軍歓迎 在留邦人は、陸海軍を歓迎して、6百名の海軍将校及び兵士を自動車に乗せニューヨーク市内の観光を行い、更に陸軍兵営に於いて昼食を行い、

日本人帰化權 他の外国人と同様に米国に帰化する権利があると述べた。

伊国の態度 イタリーは今度も依然として三国同盟を順守するつもりであり、英伊間の親交といえども、イタリーのこの態度を変更させる事はできない

遣米陸海軍歓迎 17日ニューヨーク特派員発

黒木大将一行は昨16日午前9時、ウエストポイント陸軍士官学校を訪問した。在留邦人は、陸海軍を歓迎して、6百名の海軍将校及び兵士を自動車に乗せニューヨーク市内の観光を行い、更に陸軍兵営に於いて昼食を行い、午後2時、世界第1のヒッポドロームという演劇を鑑賞した。司令官、艦長、参謀等は市庁及びブルックリン海軍鎮守府を訪問した。本日17日も又6百人を自動車に乗せ、見物を行った。明日18日、司令官は米国名士千5百名を筑波艦に招待してパーティを開く。

日本人帰化權 同上

カルフォルニア州の検事ダーレー氏は、日本人は昨年新たに制定された帰化法により、他の外国人と同様に米国に帰化する権利があると述べた。

伊国の態度 16日ベルリン特約通信社発

伊国外相チトニ氏は、同国議会に於いて長時間にわたる演説を行い、イタリーは今度も依然として三国同盟を順守するつもりであり、英伊間の親交といえども、イタリーのこの態度を変更させる事はできない。ラバロ、ガエタ、カルタヘナの於ける会合の性質は、決して矛盾せず、却って欧州の平和を一層強固にさせるべく融合根和しつつあると言える。

解説:イタリーは獨、オーストリアと三国同盟を結んでいたが、第1次世界大戦では結局イギリス側で参戦した。

519

日佛協商進捗 日佛協商は至極順調に進行中であり、多分今後1週間か遅くとも10日以内には交渉が完全に終了しそうである。

南阿の同盟罷工 ブレトリアからランド鉱業地に組合外の労働者が入り込んだ為、同地に於いて危険な同盟罷工が起こり、

無政府の状態 露国に於いては、現在も毎日のように強盗や略奪が行われており、現にロップに於いて郵便馬車を襲撃した一隊の強盗が居た。

日佛協商進捗 18日タイムス社発

パリー来電 当地の外交社会に於いて、専らの噂によれば日佛協商は至極順調に進行中であり、多分今後1週間か遅くとも10日以内には交渉が完全に終了しそうである。

南阿の同盟罷工 17日上海経由ロイター社発

ブレトリアからランド鉱業地に組合外の労働者が入り込んだ為、同地に於いて危険な同盟罷工が起こり、下町は交通が遮断され、組合外の労働者は石で打たれ、銃弾も一発発射された。鉱業組合は同盟罷工が地方に波及しつつあると述べている。

無政府の状態 18日上海経由ロイター社発

露国に於いては、現在も毎日のように強盗や略奪が行われており、現にロップに於いて郵便馬車を襲撃した一隊の強盗が居た。コサックの騎兵が来た時には、既にコサック及び巡査4名を殺したり、或いは傷つけ、2千ルーブルを奪い逃走した。これらの賊はその後、更に付近の紡績工場に侵入し、職工を銃殺しその他無差別に15名を殺し、30余名を傷つけた。

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日本の満州政策 満州における門戸開放の実行、版権の侵害等について日本公使館の注意を促し

遣米陸海軍歓迎 ニューヨーク市民が主催する我が遣米陸海軍の歓迎会があり、青木大使、黒木大将、伊集院中将以下各将校が打ち揃って列席した。

日本の満州政策 18日上海経由ロイター社発

ロンドンタイムスの北京通信員は、次の通信を行った。

満州における門戸開放の実行、英国及びその他諸外国の摸造商標が一般に使用されている事、並びに版権の侵害等について日本公使館の注意を促し、これ等の諸問題は日英両国民の友好関係を侵害する恐れがある旨付記した。

遣米陸海軍歓迎(商務卿と桑港事件) 18日桑港特派員発

17日夜、ニューヨーク市民が主催する我が遣米陸海軍の歓迎会があり、青木大使、黒木大将、伊集院中将以下各将校が打ち揃って列席した。商務卿ストラウス氏は、日米両国の歴史的友好を説き、更に米国の文明を理解している日本人は、無知から始まり不正に広まった桑港事件(注:サンフランシスコでの日本人排斥事件)を許して頂けるものと思うと述べた。

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遣米艦隊廻欧 我が筑波、千歳の2艦は本日19日午前9時30分、当地を出発し英国に向かった。英国から直ちに佛独何れに寄港するかはなお未定との事である。

遣米艦隊廻欧 19日紐育特派員発

我が筑波、千歳の2艦は本日19日午前9時30分、当地を出発し英国に向かった。私(特派員)の確聞した所によれば、英国から直ちに佛独何れに寄港するかはなお未定との事である。独逸は皇帝の名前で特に筑波、千歳2艦の同国に寄港する事を希望する旨我が政府に照会があった。我が政府はこれを承認したとの事であり、必ず約束どおり訪問するに違いないが、我が政府が今回佛国と協約し更に親交を深めようとしているので、この関係からすれば英国より直ちに佛国に赴き、その後独逸に回るのが至当と思われる。

 

5月22日 

日本艦隊独逸訪問の意義 日本政府が独逸の要請に応じたのは、日佛協約が独逸を敵視するものではない事を独逸に納得させる為である

英仏盆親密 この様に英仏両国の人々がお互いに往来する事は、世界の平和を保障する両国の親交をますます強くする効果がある。

阿片問題と列国 阿片排斥運動は益々その勢いを強くし、北京の阿片倉庫は去る金曜日をもって閉鎖された。

日本艦隊独逸訪問の意義 21日タイムス社発

佛国新聞マタンのニューヨーク通信員の報道によれば、伊集院中将の率いる日本艦隊は、独逸皇帝の御希望に応じ、独逸に回航する事になった。日本政府が独逸の要請に応じたのは、今回新たに締結される予定の日佛協約が独逸を敵視するものではない事を独逸に納得させる為であると考えられる。

英仏盆親密 20日上海経由ロイター社発

イングランド及びスコットランドの市会議員がリヨン市を訪問し、佛国の大統領ファリエル氏は、国務大臣と共に同地に来着した。大統領は、6百名という多数が出席した歓迎会の席上で次の様な演説を行った。この様に英仏両国の人々がお互いに往来する事は、相互の信用を強固にし、且つ現在の不安な状態に対応して世界の平和を保障する両国の親交をますます強くする効果がある。

阿片問題と列国 21日上海経由ロイター社発

ロンドンタイムスの北京通信員によれば、阿片排斥運動は益々その勢いを強くし、北京の阿片倉庫は去る金曜日をもって閉鎖された。

日独両国を除き他の阿片生産国は皆医薬用の阿片の他、輸入禁止に同意した。

 

5月23日

愛蘭法案撤回 アイルランド国民党の大会に於いて、レッドモンド氏はビレル大臣の提出した新アイルランド法案を排斥する事を提議し、満場一致でこの動議を可決した。

米国暴民の狼藉 本日20日夜7時頃、150余名の暴徒が突然日本人の洋食店に押し寄せ、器具を破壊し警備員を傷つけ、狼藉を極めた。

暗殺陰謀露顕 露国皇帝、皇太子、各大公及び首相を暗殺しようとする容易ならぬ陰謀が発覚した旨を議会に於いて公言した

愛蘭法案撤回 22日上海経由ロイター社発

ダブリン市で開かれたアイルランド国民党の大会に於いて、レッドモンド氏はビレル大臣の提出した新アイルランド法案を排斥する事を提議し、満場一致でこの動議を可決した。

急進党及び統一派の機関紙は皆この決議により政府は一大打撃を受けたと認めている。そして政府は多分アイルランド法案を撤回する事になるものと考えられる。

米国暴民の狼藉(日本人の店を襲う) 21日桑港特派員発

本日20日夜7時頃、150余名の暴徒が突然日本人の洋食店に押し寄せ、器具を破壊し警備員を傷つけ、狼藉を極めた。それより更に向かい側の風呂屋を襲い、乱暴した。今晩(21日)更に他の洋食店をも襲う計画があると密告して来た者が居たので警察に保護を申請した。

暗殺陰謀露顕 21日ベルリン特約通信社発

露国首相スチルピン氏は、露国皇帝、皇太子、各大公及び首相を暗殺しようとする容易ならぬ陰謀が発覚した旨を議会に於いて公言した。議会はこの報告に接して非常に激昂し首相の無事を祝したが革命党、民主党及び労働派の議員はこの議会に欠席した。

解説:ロシア革命は1917年起こり、退位後監禁されていたニコライ二世は翌年1918年7月に銃殺された。

5月24日

南阿工夫の同盟罷業 南阿ランド地方に於ける43カ所の鉱山の白人労働者が同盟罷業を起こした。

漁業紛議後報 要は蓋平事件を協定し、進んで日本人大倉と清人の合資で行う本渓湖炭坑の開掘許可を取り消す事にあると言える。

南阿工夫の同盟罷業 23日上海経由ロイター社発

南阿ランド地方に於ける43カ所の鉱山の白人労働者が同盟罷業を起こした。理事者は之を補充する為ボーア土人を募集中である。

解説:ボーア人とはイギリスより先に入植していたオランダ系白人の子孫

漁業紛議後報 23日北京特派員発

趙(ちょう)将軍は大連漁業組合の暴状と日本官兼の無策について外務部に対し、日本総領事は組合員に退去を命じたと言うがその事実は無い電報した。

今回の事件に比較すれば蓋平事件は取るに足らない事件であり、要は蓋平事件を協定し、進んで日本人大倉と清人の合資で行う本渓湖炭坑の開掘許可を取り消す事にあると言える。外務部は直ちに林公使に通知し、日本政府が大連漁業組合へ保護船引揚を命令する様尽力を要請した。そして日本政府は只今東京から本件に関する命令を受けたと言われている。

解説:5月16日の記事に蓋平事件が書かれている。要は漁業権について日本と清国の争いである。大連漁業組合の保護船とは、清国漁民と契約し、有料で海賊から清国の漁船を保護するための船であった。

5月25日

露国農民救済策 売り物に出た土地の全てを政府が買い上げ、これに皇帝の新領地を加えて、土地基本財産を作った上で農民に土地を取得させ

奇怪千萬 領事は本日23日、日本人への営業妨害に対し、再び強硬な抗議を市長に提出した。

林公使の忠告 日本は好意的に蓋平事件その他の交渉案件を処理中であり、これらの問題は速やかに解決する方が貴国の利益である。

露国農民救済策 24日タイムス社発

露都来電―露国政府が農民の窮状を解決する為に実行しようとする新計画の概要は、売り物に出た土地の全てを政府が買い上げ、これに皇帝の新領地を加えて、土地基本財産を作った上で農民に土地を取得させ、同時に国民の負担すべき租税の不同を減じようとする事である。

奇怪千萬 23日桑港特派員発

当地の日本商店は、昨22日夜またしても強烈な迫害を受けた。暴徒はお客を店舗外に連れ出し、暴行を加えたが店舗には危害を加えなかった。警察の保護が全く行き届かないので領事は本日23日、日本人への営業妨害に対し、再び強硬な抗議を市長に提出した。警察官は贈賄をするならば保護してやる等と声明しており、実に奇怪千万である。在留邦人の間には自衛の為に武装するべきであるとの議論もある。

林公使の忠告 24日北京特派員発

林公使は外務部に対し、大連水産組合の暴状は我が政府がこれを制止するつもりである。しかし趙将軍がこれを口実にして他の交渉事件(蓋平事件及び本渓湖炭坑問題)をも無視しようとするのは不当である。日本は好意的に蓋平事件その他の交渉案件を処理中であり、これらの問題は速やかに解決する方が貴国の利益である。

 

5月26日

南阿櫌乱観察 南阿ランド鉱業地に於ける暴動はますます険悪となり、政治上の論争を引き起こす情勢である。

露国農民救済問題 農民状態の改善は急激な改善ではなく、漸進的なものでなければならない

南阿櫌乱観察 25日上海経由ロイター社発

南阿ランド鉱業地に於ける暴動はますます険悪となり、政治上の論争を引き起こす情勢である。ロンドンに於ける保守党の諸新聞はこの同盟罷業に同情を示さず、却ってオランダ政府の意を受けて運動する英人を襲撃した英国騎兵を称賛した。しかるに自由派の新聞は之に反して、南阿の工夫は帝国の自由を擁護する為、英国富豪の政権と戦いつつあると論評した。

露国農民救済問題 24日ベルリン特約通信社発

露国首相ストリピン氏は農民問題に関して議会に於いて、農民状態の改善は急激な改善ではなく、漸進的なものでなければならないと演説した。

5月27日

日佛協商終結 佛国外務卿ピシヨン氏は協約に対する日仏両国の意見は今や完全に一致し、交渉は将に終了しようとしていると報告した。

桑港狼藉のその後 大統領ルーズベルト氏はサンフランシスコの日本人洋食店破壊事件の始末を至急、詳細に調査する様司法省に命令した。

日佛協商終結 26日上海経由ロイター社発

佛国外務卿ピシヨン氏は内閣会議に於いて、東京駐在佛国大使ゼラール氏の電報を朗読し、協約に対する日仏両国の意見は今や完全に一致し、交渉は将に終了しようとしていると報告した。

解説:5月8日の記事「日佛及び日露協商」以降之に関連した記事があり、又これに対する独逸の反応についても書かれており、独逸の姿には現在の中国の振る舞いを感じさせるものがある。

桑港狼藉のその後(大統領の命令) 25日桑港特派員発

本日25日青木大使の通告により、大統領ルーズベルト氏はサンフランシスコの日本人洋食店破壊事件の始末を至急、詳細に調査する様司法省に命令した。

ある巡査は被害者に対し、若し金子(きんす)を出すならば保護するがそうでなければ暴徒が来ても我関せずと放言した。破壊した洋食店の器具は悉く何者かが持ち去った。警官はその警戒を行わなかった職務怠慢の罪を隠す為、初め日本人が出刃包丁を振り回した為に大事件となり、子供らが石を投げて破壊したと強弁している。しかし実際は酷い暴行が行われ、遂に殺害されるものと思い悲憤のあまり死を覚悟して出ようとした事を他の者が留めたのである。当地警察の保護が不安であるので日本人で特別に巡査を雇い警戒しているので、その後は時々群衆が集まるのみで暴行は発生していない。

解説:5月25日の記事「奇怪千萬」に発生について報道されている。

5月28日

ロンドンタイムスの激昂 強大な文明国の臣民に対する米国人の暴行を憤慨し、サンフランシスコ官憲に対しては、早速その義務を思い知らせなければならない

日本政府の苦情 日本政府は、サンフランシスコに於いて日本人の料理店が受けた暴行に就いて、米国政府に対し苦情訴えた。

桑港狼藉顛末 加州知事テレット氏は本件に対する十分な調査と日本人に対する保護を約束した。

ロンドンタイムスの激昂 27日タイムス社発

ロンドンタイムスは強大な文明国の臣民に対する米国人の暴行を憤慨し、サンフランシスコ官憲に対しては、早速その義務を思い知らせなければならないと非難し、なお更に今や種々の事情を総合して観察すると、日本人に対し公正な待遇を与える為に是非連邦政府に新たな権利を付与する必要があると論評した。

日本政府の苦情 27日上海経由ロイター社発

日本政府は、サンフランシスコに於いて日本人の料理店が受けた暴行に就いて、米国政府に対し苦情訴えた。その為国務卿ルート氏は至急事実を調査し報告すべき旨を当該官憲に命令した。

桑港狼藉顛末 27日桑港特約通信員発

暴民が当市に於ける日本人の料理店及び風呂屋を破壊したのは、警官が市街鉄道車掌の同盟罷業に対する警戒を解いて結果である。初め日本料理店に入って居た2名の職工が道路に引き出されると、暴徒はこれを見て日本人の店舗に乱入し乱暴を働いた。加州知事テレット氏は本件に対する十分な調査と日本人に対する保護を約束した。

5月29日

摩洛哥事件 佛国外務卿ビション氏は、佛国政府の要求を悉く承認する旨記述されているモロッコ政府の回答書を内閣会議に披露した。

盈清阿片問題 英国政府は、この問題について何時頃までに確固たる返答をする事が出来るか明白に回答していなくて、

日本領事の説明 松原代理領事は検事デヴリン氏の要求により同検事を訪ね、日本人洋食店の破壊事件の顛末を詳細に説明し、

在留同胞の憤慨 2名の白人が2名の日本人に対し暴行を加えようとしたので、他の日本人がこれを助けようとして、憤激の余り白人を半死半生の目に遇わして、

摩洛哥事件 27日上海経由ロイター社発

佛国外務卿ビション氏は、佛国政府の要求を悉く承認する旨記述されているモロッコ政府の回答書を内閣会議に披露した。同時にタンジール駐在佛国公使に向かってモロッコ政府にこの約束を間違いなく履行させるよう訓令した。

盈清阿片問題 同上

支那に於ける阿片輸入禁止に関する書類が本日議会に提出される予定である。英国政府は、この問題について何時頃までに確固たる返答をする事が出来るか明白に回答していなくて、昨年11月支那政府が印度の阿片に関して英国政府に申し込んだ提議に就いて、政府はなお熟考中である。尤も間もなく政府もこの事に就いて答弁する機会があると思われる。

日本領事の説明 27日桑港特派員発

松原代理領事は検事デヴリン氏の要求により同検事を訪ね、日本人洋食店の破壊事件の顛末を詳細に説明し、警察側から提出された虚偽の始末書に反論した。警察は子供達が悪戯で投石して破壊した様に言っているが、事実は現に食事中の白人を連れ出して強打したものであり、これはこの白人被害者が証明している。この加害者は労働同盟組合員ではなく、下等の市民である事が明白となっている。奪い去られた洋食店の家具は付近の空き地に持ち出されて捨てられた。又被害洋食店の主人も本日27日検事デヴリン氏の取り調べを受けた。

解説:今週はこの問題が連日報道されている。

在留同胞の憤慨 同上

昨26日夜、2名の白人が2名の日本人に対し暴行を加えようとしたので、他の日本人がこれを助けようとして、憤激の余り白人を半死半生の目に遇わして、彼らは危篤状態になったと思われる。この加害者である日本人は直ちに捕縛されたが現在の状況であればこの種の騒動は今後も絶えないであろう。

5月30日

桑港狼藉取調 カルフォルニア州知事は、サンフランシスコに於ける排日的騒動の顛末調査に着手し、

阿片解毒剤調査 英国下院に於いて一人の議員が、今回マレー半島のセランゴルに於いて発見されたとの説がある阿片解毒剤に関し質問した。

桑港狼藉取調 28日タイムス社発

ニューヨーク来電―カルフォルニア州知事は、サンフランシスコに於ける排日的騒動の顛末調査に着手し、同時に現在の乱脈な同市の状態は政治運動に無関係な実業家の希望しない事態であるとして事態の収拾を図っている。諸新聞も又国法と秩序の維持を主張している。

阿片解毒剤調査 28日上海経由ロイター社発

英国下院に於いて一人の議員が、今回マレー半島のセランゴルに於いて発見されたとの説がある阿片解毒剤に関し、政府は調査委員を任命する考えがあるかどうかと質問した。これに対し植民次官チャーチル氏は、海峡植民地に居る薬剤官が未だその植物に何ら特殊な成分を含有する事を発見できていない。従って現在王立研究所に於いて更に分析中であり、この結果が判明しない内に調査委員を任命する事は早計であると明言した。

531

摩洛哥問題経過 モロッコ王も遂に佛国の要求条件を友好的に解決する希望を表示し様になった。

同盟罷工中の南阿金鉱 白人の坑夫が同盟罷工を起こした結果、至る所で青年の南ア土人を以て補充し

英清阿片問題 外国産阿片の輸入制限に関する支那政府の提議に対して取るべき英国政府の行動を今報告する事は出来ない

桑港事件報告 直ちにサンフランシスコ警察署長に全力を尽くして市民を保護すべき旨を命じた。

摩洛哥問題経過 30日タイムス社発

パリー来電―モロッコ問題に対し佛国が我慢強く臨機応変な処置をした結果、モロッコ王も遂に佛国の要求条件を友好的に解決する希望を表示し様になった。

解説:イギリスの保護国エジプトとフランスの保護国モロッコが様々な問題を起こしている。

同盟罷工中の南阿金鉱 同上

ヨハネスブルグ来電―白人の坑夫が同盟罷工を起こした結果、至る所で青年の南ア土人を以て補充し、なお引き続きボア人が次々に鉱山に入り込んでいる。

英清阿片問題 29日上海経由ロイター社発

植民次官チャーチル氏は、下院に於いて議員の質問に答えて次の様に述べた。

政府は4月中、上海在住の印度阿片販売業者に向かって、外国産阿片の輸入制限に関する支那政府の提議に対して取るべき英国政府の行動を今報告する事は出来ない。しかし出来る限り早く通知を希望するとの彼らの申請は委細承知した旨通告した等

桑港事件報告 29日桑港特派員発

28日内閣会議に於いて検事総長は、サンフランシスコ暴行事件に関する検事デブリン氏の報告を披露し、国務卿ルート氏もまたカルフォルニア州知事の返電を報告した。これによると貴電により直ちにサンフランシスコ警察署長に全力を尽くして市民を保護すべき旨を命じた。今回の暴行は現存する労働問題争議の余波と思われる等