期日 | 日本関係 | 期日 | 露清関係 | 期日 | 英米関連 | 期日 | 独仏その他関連 |
4月14日 | 日本人入国勧誘 | 4月13日 | 露国鉄工所閉鎖 | 4月5日 | 英国艦隊演習 | 4月1日 | ウジダ占領 |
4月15日 | 日本人通航拒絶 | 4月30日 | 露国愈危殆 | 4月9日 | 入国訴願却下 | 4月1日 | 政教問題秘密 |
4月18日 | 日本通行問題解決 | 4月10日 | 中原の鹿 | 4月3日 | 独逸外交の失敗 | ||
4月18日 | カナダの排日運動 | 4月11日 | 独米外交関係 | 4月4日 | 独墺伊会商 | ||
4月22日 | 排日熱の反動 | 4月12日 | 英植民地知事移動 | 4月6日 | 海軍制限案 | ||
4月22日 | 太平洋の将来 | 4月19日 | 英伊両帝会見論評 | 4月8日 | 摩洛哥官吏の腐敗 | ||
4月28日 | 排日法案不認可 | 4月20日 | 英国海軍の将来 | 4月12日 | 独帝と佛国大使 | ||
4月28日 | 大統領と日本人 | 4月21日 | 米国海軍力標準 | 4月17日 | ジャンダーク祝典 | ||
4月23日 | カイロ市の騒動 | 4月17日 | 膠州湾経営報告 | ||||
4月23日 | 英帝露国訪問説 | 4月20日 | 独逸の煩悶 | ||||
4月24日 | カイロ騒動後報 | 4月22日 | 英独和協策 | ||||
4月25日 | 全英国防問題 | 4月23日 | 英独制海権競争 | ||||
4月26日 | 造兵職工説諭 | 4月25日 | 英露独と波斯 | ||||
4月30日 | 印度暴動警戒 | 4月30日 | 英仏親交と独逸 |
明治40年4月
4月1日
ウジダ占領 佛国軍隊のウジダ市占領は何事もなく速やかに行われた。土人はこれに対し何らの敵意も表しなかった。
ウジダ占領 30日ベルリン特約通信員発
佛国軍隊のウジダ市占領は何事もなく速やかに行われた。土人はこれに対し何らの敵意も表しなかった。
解説:佛国の医師が殺害された事に対する報復行動であり、3月26日、27日に関連記事がある。
4月2日
政教問題秘密 モンタニニ監督の家宅で差し押さえた文書を発表して、大いに世間の耳目を驚かした。
平和会議と独逸 英国が軍備縮小の提案を撤回しなければ独逸はハーグの平和会議に参列しないであろうとの電報を掲げた。
政教問題秘密 1日タイムス社発
パリー来電― 「フィガロ」紙は近頃までローマ法王の代表者としてパリーに滞在していたモンタニニ監督の家宅で差し押さえた文書を発表して、大いに世間の耳目を驚かした。同監督はその当時に元老院議員であったクレマンソー氏(現在の首相)は、買収する事のできる見込みがある旨をこの文書の一つに仄めかしている。
解説:仏政府は、教会財産を没収し、神父を国外に追放している。
平和会議と独逸 1日上海経由ロイター社発
英国新聞トリビュンは、英国が軍備縮小の提案を撤回しなければ独逸はハーグの平和会議に参列しないであろうとの電報を掲げた。独逸外相サチルスキー氏はこの事について種々の質問を受けたが、決してその様な事は無いと打ち消した。
解説:独逸は建艦競争をイギリスに仕掛けている。
4月3日
羅馬尼暴動現状 暴動地に於ける軍隊の行動は着々と好結果を挙げつつある。羅馬尼政府が現在暴動鎮圧に充てている兵員は13万6千人であり
独逸外交の失敗 独逸は、事実上モロッコの金融を支配する佛国に対して到底対等の競争を行う事は出来ないであろう。
独墺伊会商 三国同盟を一層有力なものとし、特に墺、伊両国が乖離の為三国同盟を危険に陥らせる事を避けようとしているのは間違いない。
羅馬尼暴動現状 2日タイムス社発
ブカレスト来電―暴動地に於ける軍隊の行動は着々と好結果を挙げつつある。羅馬尼政府が現在暴動鎮圧に充てている兵員は13万6千人であり、英国が以前南阿で実施した掃討の方法をそのまま実施している。そして農民は皆家屋に銃眼を開け、官兵を狙撃している。これらの農民は皆捕えられて銃殺される。
独逸外交の失敗 同上
モロッコ政府は今回の事件を口実として行政改革の実施を見合わせた為、佛独両国に対する土人の反抗運動はその気勢を弱めた。
独逸は、事実上モロッコの金融を支配する佛国に対して到底対等の競争を行う事は出来ないであろう。モロッコに於ける佛国の通商的利害ははるかに独逸の上に在り、そしてモロッコの官民は今日に至るまで、独逸が欧州人排斥運動を援助し、且つ現在における国際的地位の変動を黙過しないであろうとの確信していたのに、案に相違してウジダを佛軍に占領された為、モロッコに対する独逸の威厳は全く地に落ちた。
ロンドンタイムスは、モロッコ事件を論評する序に、独逸は実に危険な政策を遂行しようとしていると指摘し、進んで佛国と妥協するよう熱心に勧告している。
独墺伊会商 2日桑港特派員発
独逸宰相ビューロウ公及び伊国外相チェットニ氏は伊国ラボラにて会見した。会見の内容はなお秘密であるが、三国同盟を一層有力なものとし、特に墺、伊両国が乖離の為三国同盟を危険に陥らせる事を避けようとしているのは間違いない。なお引き続きビューロー公とチツトニ外相は墺国外相エーレンタール氏とも会見すると思われる。
解説:第1次世界大戦まで後7年 イギリス、フランス、ロシアを中心とする連合国対ドイツ、オーストリア、トルコの中央同盟国との戦いとなった。イタリアはオーストリアとの領土問題があり、後に連合国側に加わり、日本も連合国側に加わった。
4月5日
英国艦隊演習 無銭電信の非常な進歩により、司令官はかって12隻の軍艦を指揮する時よりも一層容易に且つ迅速に、現在は50隻の軍艦を指揮し得る事を実験できた。
埃及の政情 エジプト駐在官クローメル卿は、、エジプト人の人材を行政各部に採用する事には同意し、なお混合立法会議を起こす事を主張した。
英国艦隊演習(非常なる実験) 3日タイムス社発
英国の海峡艦隊、大西洋艦隊及び地中海艦隊が巡洋艦隊を従えて、今回ポルトガルのラーゴス港に集合した件について、政府の秘密は厳重に保たれた。そして今回の演習は、過去数回の演習に比較して、一層有益であり満足な成績を得ることができたと信ずべき相当な理由がある。即ち無線電信の非常な進歩は、巡洋艦の任務を一層有効にする上に於いて、一つの新生面を開き、同時に信号を省略し得るのみならず、司令官はかって12隻の軍艦を指揮する時よりも一層容易に且つ迅速に、現在は50隻の軍艦を指揮し得る事を実験できた。
埃及の政情 4日タイムス社発
エジプト駐在官クローメル卿は、その年報で国民党の運動はフィフィ教の排斥と密接な関係があり、その結果として人種的及び宗教的な怨恨を再発し、且つ奴隷制度の復興を促すであろうと論じ、更に庶民院の解説、責任内閣樹立の要求を一笑に付し、エジプト人の人材を行政各部に採用する事には同意し、なお混合立法会議を起こす事を主張した。
解説:明治38年5月1日の記事「朝鮮経営讃評」 でロンドンタイムスの北京通信員モリソン博士は、朝鮮に於ける日本の活動の結果について、英国のエジプト経営に比較して、これは近年において一番成功を収めたもので、如何なる国民でも之を誇りとすることが出来ると論評している。
明治40年4月6日
羅馬尼暴動鎮圧 農民の暴動は事実上、既に完全に鎮圧された。軍隊は遊撃的に各地で活動しその任務を立派に遂行した。
埃及現状変革案 エジプト駐在官クローノル卿は、現存する協定に対する長文の修正意見を発表した
海軍制限案 イタリア政府は海軍制限案をハーグの平和会議に提出する事について、現在考慮中である。
羅馬尼暴動鎮圧 5日タイムス社発
ブカレスト来電―農民の暴動は事実上、既に完全に鎮圧された。軍隊は遊撃的に各地で活動しその任務を立派に遂行した。厳重な戒飭的な措置を採った結果、その兆しを見せ始めていた兵士の不平は今や消滅してしまった。
外国人の扇動者も今は何処かに姿を隠した。要するに今回の策動は囚人が張本人であった。
埃及現状変革案 4日上海経由ロイター社発
エジプト駐在官クローノル卿は、その年報で英エジプト両国の間に現存する協定に対する長文の修正意見を発表したが卿の意見の大要は次のとおりである。
36名の各国委員で地方立法会議を創設し、その議決に対し英エジプト両国政府は拒否権を保有する事、地方立法会議を通過した法律を施行する為、混合裁判所を設置し、その採決に対して不服がある時は、ハーグの仲裁裁判所に訴える事とし同時に現在の領事裁判制度を廃止すべきである
海軍制限案 同上
イタリア政府は海軍制限案をハーグの平和会議に提出する事について、現在考慮中である。イタリアがこの問題を発議すれば英美両国が発議する程に某国の感情を害する事にはならないであろう。
解説:ドイツは英国海軍に対抗するため海軍を整備中であり、海軍軍縮に反対している。またイタリアは、ドイツ、オーストリアと同盟関係にあり、4月3日「独墺伊会商」に 三国同盟に関する記事がある。
4月7日
英国兵制改革 国民兵役協会の宣言書は陸軍大臣ハルデーン氏の国民兵役主義を歓迎する米国富豪の陰謀 米国屈指の富豪であるハースト、ロックフェラー及びハリマンの三氏が結託して大統領ルーズベルト氏の政策を破滅させようと企てている
ルーズベルト氏 大統領ルーズベルトが必ず第3回の選挙を戦う事になるであろう
大隈伯の大学総長 英米の初大学が当代の傑出した人物を名誉総長に推戴する様に早稲田大学は今回、いよいよ大隈伯爵を総長に推戴することとなった、
英国兵制改革 6日上海経由ロイター社発
ロバート元帥を始めウエリントン、ミルナー、リース及びラグラス等の諸名士が署名する
国民兵役協会の宣言書が発表された。この宣言書は陸軍大臣ハルデーン氏の国民兵役主義を歓迎すると同時に各属領地の兵隊に施行されるであろう6カ月間の教練制度は、必ずしも強制するものでない旨を極力勧奨している。
米国富豪の陰謀 5日桑港特約通信員発
米国屈指の富豪であるハースト、ロックフェラー及びハリマンの三氏が結託して大統領ルーズベルト氏の政策を破滅させようと企てている手紙が何者かに盗まれた為に発覚し、大いに世間を騒がせている。
ルーズベルト氏 5日桑港特派員発
ワシントンに於いて報道されたところによれば、次の共和党国民大会の運動費として既に5百万ドルの寄付金があり、大統領ルーズベルト氏の友人達はこれにより、ロ氏が必ず第3回の選挙を戦う事になるであろうと公言している。
大隈伯の大学総長 6日付内国電報
英米の諸大学が当代の傑出した人物を名誉総長に推戴する様に早稲田大学は今回、いよいよ大隈伯爵を総長に推戴することとなった、これと同時に校長及び学監の職制を廃止し、その代わりに学長を置き、高田早苗氏が就任する事を決め、前鳩山校長は維持員の一人として、依然として同校の為に尽力するとの事である。
4月8日
海員同盟罷業 明日の日曜を期して、海軍補充隊に籍を有する水夫が、各方面に亙ってストライキを起こそうとする気配がある。
摩洛哥官吏の腐敗 今回官有地の払い下げを行った際、その収益金の大半が陸軍将官の腹を肥やした。
佛独妥協 無線電信の問題に関して、モロッコ駐在の佛独両国公使の意見は友好的に一致した。
海員同盟罷業 6日タイムス社発
パリー来電―各地からの電報を総合して考察すると明日の日曜を期して、海軍補充隊に籍を有する水夫が、各方面に亙ってストライキを起こそうとする気配がある。その原因は恩給制度に関する不満である。
佛国政府は労働組合に加入したいと主張する官吏に対して、断固たる処置を採る事に決定し、70名の官吏は既に処罰を受けた。
摩洛哥官吏の腐敗 同上
タンジール来電―枢要の地位にあるモロッコ官吏の腐敗が非常に激しく、今回官有地の払い下げを行った際、その収益金の大半が陸軍将官の腹を肥やした。これらの将官は、実際は居ない下士官、兵の俸給を搾取してその富を増やしつつ、一方で国家財産の窮乏の理由で、宝玉等の買い入れについて国王に諫言を行っている。
佛独妥協 7日上海経由ロイター社発
無線電信の問題に関して、モロッコ駐在の佛独両国公使の意見は友好的に一致した。佛独の意見がこの様に一致した事は、国際的見地から見て非常に喜ぶべき事であると思考される。
4月9日
入国訴願却下 米国商務労働省は、メキシコ宛ての旅行券を携帯して、メキシコのエルパソ市から米国に入ろうとした日本人の願いを却下した。
佛独妥協説論評 佛国新聞のある者は、仏独両国の間に妥協が成立し、結局独逸はモロッコに於いて佛国に譲歩し、その代わりに佛国はバクダット問題に関して独逸に譲歩する
入国訴願却下 8日桑港特約通信員発
米国商務労働省は、東京で公布されたメキシコ宛ての旅行券を携帯して、メキシコのエルパソ市から米国に入ろうとした日本人の願いを却下した。
近頃5百名の日本人が米国入る目的でメキシコに上陸したとの情報を入手し、米国政府はメキシコとの国境に探偵を配置して厳重な警戒を行っている。
佛独妥協説論評 7日ベルリン特約通信社発
佛国新聞のある者は、仏独両国の間に妥協が成立し、結局独逸はモロッコに於いて佛国に譲歩し、その代わりに佛国はバクダット問題に関して独逸に譲歩する事になるであろうと論評している。しかし独逸はモロッコに関し、専決の権利を持たないと同様に佛国はバクダット問題を勝手に専決する権利を持っていない。故に佛国新聞のこの報道は無意義である。
4月10日
英国植民地会議 大英帝国の統一は同等の条件を以て植民地に協同会議の権利を付与する事により初めて維持できるであろう。
中原の鹿 ニューヨークのへラルド新聞は全国民の意識調査の結果、ハリマン氏との紛争があった後ルーズベルト氏の名声が高まった
英国植民地会議 9日タイムス社発
英本国と植民地との間に現存する関係が、眼前に迫っている植民地会議の問題となるであろう事は英国人民の一般に認知するところである。勢力の無い二,三の新聞はこの問題を党略に利用しようとして企てた。しかしロンドンタイムスは、信頼すべき通信員の見解を掲載し、大英帝国の統一は同等の条件を以て植民地に協同会議の権利を付与する事により初めて維持できるであろう。多数が認めている、現在の情勢に適合しないと思われる行政機関については、今回の会議で全てについて、意見を求められるであろう。なお各植民地は決して謂われ無き論争を今の本国政府に挑む意思が無いと喝破している。そして首相バンナーマン氏の方針は各方面に於いて熱誠な賛同を博す情勢と思われる。
中原の鹿 9日桑港特派員発
ニューヨークのへラルド新聞は全国民の意識調査の結果、ハリマン氏との紛争があった後ルーズベルト氏の名声が高まった事、全国の過半数の諸州はル氏が第3回大統領候補者たる事を望んでいる事、及びル氏以外の人が候補者であれば民主党は必ず勝利を得る見込みであると確認できた。これは南部諸州を除いている。又ル氏に次いではタフト氏の人望が最も高く、その次に推されるのはフエアバンダス氏である。
4月11日
摩洛哥問題 カサブランカ知事の免職を請求したがモロッコ王は漠然とした不満足の回答を与えた。
米国富豪と教育 カーネギー氏は、来る木曜日に開かれる予定のピツブルグ市技芸学校に340万ポンドを寄付する予定である。
独米外交関係 米独の関係が親密であるのは、余の大いに喜ぶ所である。米国も独逸も世界の平和を維持する事を希望し、清国に於いては機会均等及び門戸開放の二大主義を採っている。
摩洛哥問題 10日タイムス社発
タンジール来電―モロッコ駐在佛国公使は、カサブランカ知事の免職を請求したがモロッコ王は漠然とした不満足の回答を与えた。
米国富豪と教育 同上
ニューヨーク来電―カーネギー氏は、来る木曜日に開かれる予定のピツブルグ市技芸学校に340万ポンドを寄付する予定である。そして学校が必要な場合に引き出し得る資金は、140万ポンドの約束である。カーネギー氏が現在までに米国及びヨーロッパの諸学校に寄付した総額は、既に3,300万ポンドの巨額に達している。
独米外交関係 9日ベルリン特約通信社発
米国政府は独逸及びカナダと仮通商条約を締結しようとしている。現在ニューヨークに滞在中である駐独米国大使シャーレマン、タワー氏はその為に催された歓迎会の席上で次の演説を行った。
米独の関係が親密であるのは、余の大いに喜ぶ所である。米国も独逸も世界の平和を維持する事を希望し、清国に於いては機会均等及び門戸開放の二大主義を採っている。独逸と米国の間には関税戦争が起こる様な事は到底あり得ない事である。大統領ルーズベルト氏が独逸に関税協議委員を派遣する事に決心したのは、米国合衆国が成立して以来、独逸にたいして採った最も賢明な外交的措置の一つに数えられるであろう。独逸の富力と繁栄は年一年に増進中である。そして余は世界の平和及び進歩の為に独米の親交を維持する事を希望する。
4月12日
英植民地知事移動 ナタル知事メツカラム氏はセイロン知事に、香港知事ナサン氏はナタル知事に、又ルガルド氏は香港知事に任命された。
合衆国と玖馬 米国は明年7月を以てキューバに対する統治権を放棄する予定
佛国対羅馬法王庁 10日ベルリン特約通信社発
ローマ法王庁の大臣であるメリー、デル、ウエル枢機卿は、辞職すると思われる。
独帝と佛国大使 独仏の接近は多年希望してやまざる所であるとの意味を双方で話し合い、皇帝も大使もこの目的を達する上に於いて互いに助力する事を約束したと言われている。
英植民地知事移動 10日上海経由ロイター社発
ナタル知事メツカラム氏はセイロン知事に、香港知事ナサン氏はナタル知事に、又ルガルド氏は香港知事に任命された。
解説:ナタルは南アにある。
合衆国と玖馬 10日桑港特派員発
米国は明年7月を以てキューバに対する統治権を放棄する予定で、陸軍卿タフト氏は現在その細目について調査中である。
佛国対羅馬法王庁 10日ベルリン特約通信社発
ローマ法王庁の大臣であるメリー、デル、ウエル枢機卿は、パリーに在住で法王の代表者であるモンタニュ枢機卿との往復書簡が世間に漏えいしたため辞職すると思われる。その後任は多分、数年間法王庁の大臣であったランボラ枢機卿であろう。
解説:4月2日の記事に、モンタニュ枢機卿の邸宅が差し押さえられた際に押収された書簡に、元老院議員クレマンソー氏(現在の首相)は買収する事ができると書かれていた。また3月25日に政教分離問題について関連記事がある。
独帝と佛国大使 同上
駐独新任佛国大使カンボン氏がこの程初めて独帝に謁見した際、皇帝と大使の間に種々の談話があり、独仏の接近は多年希望してやまざる所であるとの意味を双方で話し合い、皇帝も大使もこの目的を達する上に於いて互いに助力する事を約束したと言われている。
解説:7年後第1次世界大戦が始まった。
4月13日
露国鉄工所閉鎖 有名な露国のブリアンスク鉄鋼所は、職工に不穏な様子があるので休業する事に決めた為、5千人の失業者を出し
クローメル卿辞職 余の辞職は全く病気の為であり、少しも政治上の意義を含まない事を御理解下さるよう切望する。
露国鉄工所閉鎖 11日上海経由ロイター社発
有名な露国のブリアンスク鉄鋼所は、職工に不穏な様子があるので休業する事に決めた為、5千人の失業者を出し、尚他に生計の道を失った者が2万人いる。また同鉄鋼所の副支配人は、職工の為に殺害されている。
クローメル卿辞職 12日上海経由ロイター社発
エジプト駐在官クローメル卿が辞職し、サー、エルドム、ゴルストが後任を命じられた。外相サー、エドワード、グレーは深く遺憾の意を表して、卿の辞職を下院に報告し且つ「余の辞職は全く病気の為であり、少しも政治上の意義を含まない事を御理解下さるよう切望する。余は今の内閣から極めて有力な援助を存分に受けていた」と記述した卿の書簡を朗読した。
同上後報―外相サー、グレーは満腔の誠意を表して、クローメル卿の功績を称賛し、自由党も統一党も皆拍手を以て外相の演説を歓迎した。当日は溢れるばかりの多数の議員が出席し、パルフォーア氏もまた熱誠溢れる演説を行った。
4月14日
ク卿辞職論評 本日の英国新聞は何れもスエズ駐在官クローメル卿が辞職した記事で満たされ、諸新聞が筆を揃えて卿の功績を称賛している。
日本人入国勧誘 メキシコに於ける1万人の日本人中8千人が6週間前米国に入った。
ク卿辞職論評 13日上海経由ロイター社発
本日の英国新聞は何れもスエズ駐在官クローメル卿が辞職した記事で満たされ、諸新聞が筆を揃えて卿の功績を称賛している。
ロンドンタイムス紙は次の様に述べている。
クローメル卿の辞職は英国民にとって打撃には相違ないが、昨日の下院での光景によれば在野党と政府党の間には、卿の施政を称賛する事について十分な打ち合わせがあった事は明白であり、そしてサー、ゴルストがその後任に挙げられた一事は、卿の政策が踏襲される事を保証している。
日本人入国勧誘 13日桑港特派員発
メキシコからテキサス州ガルベストンへ帰った移民官ブラウン氏の話としての報道によれば、メキシコに於ける1万人の日本人中8千人が6週間前米国に入った。これは太平洋沿岸の鉄道その他大会社が頻りに勧誘した結果であり、大会社では今尚盛んに日本人の入国を勧誘していると言われている。
4月15日
日本人通航拒絶 ハワイ行きの旅券を有する日本人299名が英領カナダを迂回して米国に入る目的で、バンクーバーに向かおうとしていた
大統領改選運動 同上
大統領ルーズベルト氏は熱心にタフト氏を共和党の大統領候補にしようとしている
日本人通航拒絶 14日桑港特派員発
ハワイ行きの旅券を有する日本人299名が英領カナダを迂回して米国に入る目的で、バンクーバーに向かおうとしていたが、当地移民官は移民規則14条「合衆国を経由して他の外国に赴かんとする外国人は、検査の上排斥すべき階級に属する事を発見した時は通過を拒絶する事ができる」との規定により、この日本人に対してバンクーバー行き汽船に便乗を許すか否かに就いて商務省に問合せたが今だ何らの回答がない。
大統領改選運動 同上
大統領ルーズベルト氏は先日上院議員フォレーカー氏のカントンに於ける演説は思ったよりも温和であると評し、タフト氏の為には、反対者が寧ろ一層猛烈な演説を行う事を望んだという。要するにル氏が、熱心にタフト氏を共和党の大統領候補にしようとしている事は疑う事の出来ない事実である。
4月16日
独逸社会政策 ドイツ農務大臣ポサドウスキー氏は、氏の社会政策が宰相ビュロー公と意見を異にするとの風説を熱心に打消し、
排日熱の反動 カルフォルニア州人の多数は、大いに日本労働者を要求し、日本人の排斥に反対の傾向を示す様になっている。
日本人通航問題 ハワイから英領カナダへ移動している日本人の処分については到底これら日本人の通航を阻止する訳には行かないであろう。
独逸社会政策 15日タイムス社発
ベルリン来電―ドイツ農務大臣ポサドウスキー氏は、氏の社会政策が宰相ビュロー公と意見を異にするとの風説を熱心に打消し、ドイツの社会政策は進歩主義を眼目とするが各連邦政府の提議は邦により、時に従って一様ではない。故に遅々として進歩しないのはやむを得ない事であると弁明した。
排日熱の反動 15日桑港特派員発
ニューヨーク来電―米国における労働者の不足は著しい。そして産業の発達に非常に大きな影響を及ぼしつつある。ことにカルフォルニア州人の多数は、大いに日本労働者を要求し、日本人の排斥に反対の傾向を示す様になっている。
日本人通航問題 同上
ハワイから英領カナダへ移動している日本人の処分については、ワシントン政府から未だに何らの訓令も来ていないが、到底これら日本人の通航を阻止する訳には行かないであろう。
解説:昨日の記事「日本人通航拒絶」の続きである。
4月17日
ジャンダーク祝典 佛国政府はジャンダーク記念祝典の宗教的饗宴には参加しないが宗教に関係がない普通の同祝典は従来より一層盛大に挙行するよう希望する
膠州湾経営報告 独逸植民局は、膠州湾に於いて長足の進歩を遂げた状況を記述した報告書を帝国議会に提出した。
ジャンダーク祝典 16日タイムス社発
パリー来電―佛国政府はジャンダーク記念祝典の宗教的饗宴には参加しないが宗教に関係がない普通の同祝典は従来より一層盛大に挙行するよう希望する旨を首相クレマンソウ氏は明言したと半官的に報道された。
解説:ジャンヌダルクは、神の啓示を受け、兵士を鼓舞し、イングランド軍に占領されていたランス地方等を取り戻し、1429年7月シャルル7世はノートルダム大聖堂で戴冠式を挙げる事ができた。そしてジャンヌダルクはイングランド軍に捕えられ、異端審問の結果1431年5月火刑にされた。
膠州湾経営報告 15日ベルリン特約通信員発
独逸植民局は、膠州湾に於いて長足の進歩を遂げた状況を記述した報告書を帝国議会に提出した。この報告書によればこの租借地(記者注、英訳の原文には保護国とある)に於ける官憲と居留民代表者の共同は政府の希望する通りに実行され、歳入総額も前年度に比較して、3割7分の増加を示し、出入船舶も5万6千トンばかり増加した。又山東鉄道の敷設は独り清国内地の人民に非常に良好な影響を与えたのみならず、諸外国の利益も亦これによって非常に増進した。そして政府は幣制に関して特別な措置を施す意思を持たないが、独逸アジア銀行から発行する紙幣は必ず好結果を得るであろうと確信している。なお又政府は同地植民地に特別法を施行する方針であり、膠州湾政庁と清国政府との関係は極めて親密であると述べている。
4月18日
日本通行問題解決 日本人295名の処分に対する訓令が商務省から到着し、当地の移民官の疑いが晴れ、一同は本日17日の便船でバンクーバーに赴いた。
カナダの排日運動 英領コロンビア州議会に、英語を読み、英文で自身の姓名を書く事のできる者でなければ上陸させる事ができないという日本人を排斥する事を目的とする議案が提出された。
日本通行問題解決 17日桑港特派員発
ハワイから当地に寄港して、英領カナダに赴く日本人295名の処分に対する訓令が商務省から到着し、当地の移民官の疑いが晴れ、一同は本日17日の便船でバンクーバーに赴いた。トラブルの原因はカナダを経由して米国に入国する事を恐れた外、この旅行者の中でハワイの帝国領事が発行した旅券を所持しているものが居り、領事が旅券を発行する権限があるかどうかについて疑問を抱いた為である。しかし帝国領事が発行したカナダ行き旅券は外務大臣の発行したものと同様の効力がある事が判明して、通行は差し支えなしと決定されたものである。
解説:4月16日に問題が発生して報道されている。
カナダの排日運動 同上
英領コロンビア州議会に、英語を読み、英文で自身の姓名を書く事のできる者でなければ上陸させる事ができないという日本人を排斥する事を目的とする議案が提出された。カナダ連邦政府がこれを認可しない事は無論であるが、連邦政府に送致されるまでには5,6カ月を要すると思われ、それまでの間排日熱の影響を受けない訳には行かないであろう。州議会がこの議案を可決する事には疑いがないので、森川バンクーバー領事は、極力抗争中であるとの事である。これはカナダを経由して米国に入る日本人の上陸に関して重大な関係があるので当国の商務省は熱心にその成り行きに注目している。
4月19日
カーネギーの夢 世界の平和を維持する為に主だった国々を結合し、列国の混合軍を設置すべきであるとの米国富豪カーネギー氏の夢の様な計画
英伊両帝会見論評 独墺)両国の新聞は、英帝が今回イタリア皇帝を訪問する大体の目的は、独逸を孤立させる為であると断定し、非常な疑惑と不快の感情を表明した。
カーネギーの夢 18日タイムス社発
ロンドンタイムスは、世界の平和を維持する為に主だった国々を結合し、列国の混合軍を設置すべきであるとの米国富豪カーネギー氏の夢の様な計画を冷笑する社説を掲載した。
英伊両帝会見論評 18日上海経由ロイター社発
英国皇帝及び皇后陛下は、ケーターに向けマルタを出発された。独墺(ドイツとオーストリア)両国の新聞は、英帝が今回イタリア皇帝を訪問する大体の目的は、独逸を孤立させる為であると断定し、非常な疑惑と不快の感情を表明した。しかしイタリアの諸新聞は、英国皇帝及び皇后陛下を衷心から歓迎すると同時にイタリアに対する英国の慇懃な親交を表示するものとして英帝の今回の訪問に重きを置きつつも、近頃の政治問題には全く関係がない旨を表明した。
解説:第1次世界大戦は、7年後の1914年に始まるがイタリアは1882年に独逸、オーストリアと三国同盟を結んでいた。これは独逸とフランスが交戦した場合には、イタリアは軍団をライイン地域に派遣するというものであったが、オーストリアとの間に領土問題を抱えるイタリアは、結局中立を表明し、1915年には英、仏、米を中心とする連合国として参戦した。
4月20日
独逸の煩悶 一部の独逸政論家及び新聞は、英国並びに英国皇帝は紛れも無き独逸の敵であると思わせようと必死に努力している。
英国海軍の将来 英国海軍次官ロバートソン氏は、列国がそれぞれその海軍を拡張する場合には、英国も更に海軍を拡張するであろうと明言した。
独逸の煩悶 19日タイムス社発
一部の独逸政論家及び新聞は、英国並びに英国皇帝は紛れも無き独逸の敵であると思わせようと必死に努力している。彼らは英国皇帝が地中海旅行に成功する事を妬み且つ独逸がますます孤立の地位に陥る事を憂えるあまり、大いにその神経を悩まし或いは演説に或いは新聞の社説に暴論を吐いてそのうっ憤を漏らし、次の様に述べている。英国は各方面に於いて政局を我が物顔に支配する。英国は独逸に不利な政策を遂行しようとしている。佛国は英国との親交を頼んで傲慢な振る舞いを行い、これは大いに憂うべき事である等
独逸政論社会の一部がこの様に英国に向かって敵愾心を表示しつつある時にあたり、ロンドンタイムスのベルリン通信員は、今の独逸政府の内外に対する政策が益々国民の間に不評になると、独逸政府と有名な中央党との意見が一致しなくなる事及び政府の立脚地が極めて薄弱不定である事を指摘している。
英国海軍の将来 18日上海経由ロイター社発
英国海軍次官ロバートソン氏は、下院に於いてベルライ氏に答えて海軍省の方針を弁護し、英国政府は現在に於ける海軍の優勢な地位を維持する決心である。そしてもしハーグの平和会議の結果が不首尾に終わり、列国がそれぞれその海軍を拡張する場合には、英国政府は亦これに匹敵する地位を保持する為、更に海軍を拡張するであろうと明言した。
4月21日
埃及人の敵愾心 土人の市会議員は、前エジプト駐在官に敬意を表す方法を協議する会議に出席しなかった。
米国海軍力標準 20日桑港特派員発
米国の大西洋、太平洋両艦隊共に16隻の戦闘艦を準備しなければならない
埃及人の敵愾心 20日上海経由ロイター社発
アレキサンドリアに於ける土人の市会議員は、前エジプト駐在官クローマー卿に敬意を表す方法を協議する為招集された会議に出席しなかった。
米国海軍力標準 20日桑港特派員発
米国大西洋艦隊司令長官イブアンス少将は、米国の大西洋、太平洋両艦隊共に16隻の戦闘艦を準備しなければならないとの意見を発表した。
4月22日
英独和協策 ベルリン市長は5月の末を期して、ロンドン市長及び行政官がベルリンを訪問するよう要請し
排日熱の反動 ポートランド商業組合は、強硬な日本人排斥反対決議を行った。
太平洋の将来 英国が将来、独逸又は日本と太平洋の主権を争うようになるに違いない
英独和協策 21日上海経由ロイター社発
ベルリン市長は5月の末を期して、ロンドン市長及び行政官がベルリンを訪問するよう要請し、同時にドイツの新聞記者もまた英国の新聞記者をベルリン及びその他の地方に招待するものと思われる。
排日熱の反動 21日桑港特派員発
ポートランド商業組合は、強硬な日本人排斥反対決議を行った。当地方に於いても日本人歓迎決議文に署名した米国人が多く、陳情委員は、来る25日この決議文を携え、ワシントンに赴き、青木大使に訴える予定である。
太平洋の将来 同上
英国植民地首相会議に参列中の豪州連邦首相デイキン氏は、英国が将来、独逸又は日本と太平洋の主権を争うようになるに違いないとの演説を行った。
4月23日
英独制海権競争 独逸は何時までも甘んじて英国に海軍の優勢権を掌握させるものに非ずと息巻いた。
カイロ市の騒動 カイロ市の電車、鉄道が同盟罷工を起こし、続いて激しい騒動を引き起こして加盟してない電車は襲撃を受け、下等社会は多大の損害を受けている。
英帝露国訪問説 英国皇帝はこの次にはペテルスブルグに旅行されるであろう、又伊国皇帝はロンドンを訪問され
英独制海権競争 22日タイムス社発
ベルリン来電―英国海軍大臣ツウイドマス氏が最近英国議会に於いて行った演説の中で、英国は如何なる代償を払っても列国の海軍に対して、今の優勢な地位を保持すべき決心であるとの一言は独逸新聞の激烈な攻撃を買った。中でもコロンガゼット紙の如きは、この演説が酷く癪に障るものと見て、独逸は何時までも甘んじて英国に海軍の優勢権を掌握させるものに非ずと息巻いた。
解説:独逸は、英国に対し建艦競争を行っている。
カイロ市の騒動 22日上海経由ロイター社発
カイロ市の電車、鉄道が同盟罷工を起こし、続いて激しい騒動を引き起こして加盟してない電車は襲撃を受け、下等社会は多大の損害を受けている。英国兵は万一の場合に備える様命令され、厳重に市内を巡回中である旨スタンダード紙が報道した。
解説:英国はエジプトの経営に苦労しており、明治38年5月8日の記事「朝鮮経営讃評」で、タイムスは日本の朝鮮経営を英国のエジプト経営に比較して、これは近年において一番成功を収めたものと論評している。
英帝露国訪問説 21日ベルリン特約通信員発
英国皇帝はこの次にはペテルスブルグに旅行されるであろう、又伊国皇帝はロンドンを訪問され、これに次いで英国皇帝は皇后同伴で伊国皇后を訪問の為ローマに微行されるであろうと英国新聞は報道した。
解説:英国は独逸の挑戦に対しフランス、ロシアと連合して対抗しようとしている。
4月24日
カイロ市の騒動 平生から粗暴な一派が機会を逃してはならないと過激な態度を示した結果である。
摩洛哥問題と佛独 モロッコに於ける独逸の代表者も最近はその態度を改め、以前ほど無理な議論を主張しない様になった。
カイロ騒動後報 同盟罷業を始めたのは電車ではなく、貸馬車であった。そしてそれも既に終了している。
カイロ市の騒動 23日タイムス社発
エジプトのカイロ市の暴動は、国民党の新聞が政府に反対する運動を扇動する矢先に、平生から粗暴な一派が機会を逃してはならないと過激な態度を示した結果である。英国兵は万一を考えて月曜日以来市中の各部を巡回している。
解説:4月23日に関連記事がある。
摩洛哥問題と佛独 同上
パリー来電―モロッコに於ける特権譲渡に関する佛独の意見の相違は重大な外交上の困難を引き起こすほどには至らないであろうと考えられる。モロッコに於ける独逸の代表者も最近はその態度を改め、以前ほど無理な議論を主張しない様になった。
カイロ騒動後報 23日上海経由ロイター社発
本社のカイロ通信員が報道する所によれば、同盟罷業を始めたのは電車ではなく、貸馬車であった。そしてそれも既に終了している。同盟罷業に加盟した貸馬車の御者はならず者の援助を頼んで電車を破壊した。
4月25日
全英国防問題 英国陸相ハルデーン氏は、帝国の結びつきを強化する為、陸軍省の組織を改革し、軍隊を改良し、且つ海軍は2国連合の勢力より一層強大な海軍を保有する必要英露独と波斯 英露両国政府はペルシャに対する各国の計画を全て独逸政府に通知し
全英国防問題 24日タイムス社発
英国陸相ハルデーン氏は植民地会議に於いて次の様な演説を行った。
英国政府は準備なくして南阿戦争を行った後、帝国の結びつきを強化する為、陸軍省の組織を改革し、軍隊を改良し、且つ海軍は2国連合の勢力より一層強大な海軍を保有する必要を悟った。遠征隊も常備兵も植民地兵も参謀本部も皆帝国という概念を基本としなければならない。そして本国と各植民地の官吏とは国防問題の解決について協力して事に当たる事を希望すると明言し、なお帝国全体を通じて軍隊を統一すべきであるとの議案がある旨を公言した。各植民地首相は陸相のこの演説を歓迎して何れもこの考えに賛成した。
解説:海軍が2国連合の勢力よりも強力な海軍を保有するとは、例えば独逸と仏との海軍力を合わせたものよりも強力な海軍を保有するとの意味であった。
英露独と波斯 23日ベルリン特約通信員発
英露両国政府はペルシャに対する各国の計画を全て独逸政府に通知し、独逸政府も又ペルシャに対して計画する所を英露政府に通知した。
解説:当時のイランは、1905年のイラン立憲革命により第一議会が招集され、立憲君主国となっていた。
独逸皇帝のヴィルヘルム二世は、ベルリン、トルコのイズタンブールとイラクのバクダットを結ぶ鉄道を建設し、近東を自国の経済圏としようと考えていた。
これに対抗する為、イギリスはイランの北部をロシア、南部をイギリスの勢力範囲とする英露協商を結び、既に成立していた露佛同盟、英仏協商と合わせて三国協商という。
第1次世界大戦まで7年
4月26日
佛国国民論の傾向 佛国陸海軍人社会は、軍人に反抗する気風が次第に蔓延する風潮にある事を憂慮している。
造兵職工説諭 英国首相及び陸相は、政府が老年の役員や技術に長じた職工を解雇せざるを得ない様になった止むを得ない事情について深く遺憾の意を表する
佛国国民論の傾向 25日タイムス社発
パリー来電―佛国陸海軍人社会は、軍人に反抗する気風が次第に蔓延する風潮にある事を憂慮している。これは完全に、人心を扇動する文学書類を勝手に頒布させている結果であると考えられる。そして社会一般に政府が民心の攪乱を職業とするものに対し迅速に予防手段を採る事を希望している。
造兵職工説諭 24日上海経由ロイター社発
英国首相及び陸相は、ウルネッチ造兵廠職工の代表を引見し、政府が老年の役員や技術に長じた職工を解雇せざるを得ない様になった止むを得ない事情について深く遺憾の意を表すると同時に、政府は納税者に対する責任上、個人の都合のみを考慮する事ができない事及び造兵廠に於ける仕事の供給については及ぶ限り、政府に於いて尽力する予定であるが到底削減は免れないと明言した。
4月27日
米国労働問題 米国の与論は同盟罷工と示威運動を企てる運動家に対する大統領ルーズベルトの攻撃を是認している。
タフト氏の決心 陸軍卿タフト氏は、如何なる困難を排しても候補者として打って出る決心であるとの事である。
米国労働問題 26日タイムス社発
ニューヨーク来電―米国の与論は一般にややもすれば労働者を扇動して、同盟罷工と示威運動を企てる運動家に対する大統領ルーズベルトの攻撃を是認している。
タフト氏の決心 25日桑港特派員発
陸軍卿タフト氏は、大統領候補となる事を断念し、大審院判事となるであろうとの風説があるが、これは反対党の中傷であり、氏は如何なる困難を排しても候補者として打って出る決心であるとの事である。
4月28日
排日法案不認可 英領コロンビア知事は、日本人及び印度人の入国を阻止する事を目的とする新移民法案に対する承認を拒否した
米国植民記念博覧会 米国大統領は本日ジェムスタウン上陸300年を記念する博覧会の開会式に親臨し
大統領と日本人 日本は西洋から学び、今や却って甚だ多くを西洋諸国に供給している云々と述べた。
排日法案不認可 27日タイムス社発
オタワ来電―英領コロンビア知事は州会を閉会するにあたり異常な処置を断行した。即ち、アジア人特に日本人及び印度人の入国を阻止する事を目的とする新移民法案は、日英条約の規定に違反するとの理由を以て、知事は議案に対する承認を拒否した。当地の市民は知事のこの措置に対して非常な満足を表した。同時に日本人及び印度人にも多大な感想を与えた。
解説:英領コロンビアは現在のカナダのコロンビア州
米国植民記念博覧会 同上
米国大統領は本日ジェムスタウン上陸300年を記念する博覧会の開会式に親臨し、歴史を回想して愛国の熱誠に満ちる雄大な演説を行い、祝典に参列し列国の艦隊を巡閲した。
日本、佛国及びイタリアの艦隊も近々到着の予定である。
解説:ジェムスタウン(バージニア州)は、英国が北アメリカに建設した最初の植民地であり、1607年105名の植民団が送り込まれている。
尚有名なメイフラワー号が到着したのは1620年である。
大統領と日本人 26日桑港特派員発
本日ジェムスタウン博覧会の開会式に際して、大統領ルーズベルト氏はその祝辞の中で、各国代表者に向かって歓迎の意を表した。日本人に対しては、特に兄弟である日本帝国の代表者に誠実な歓迎の辞を述べ、日本は西洋から学び、今や却って甚だ多くを西洋諸国に供給している云々と述べた。
4月29日
米国大統領演説内容 大統領は、英国人に向かって米人の国民的性格は主としてその根源を英人の血脈に求められる事を指摘した。更に日本島帝国の代表者を歓迎し、日本は今や却って欧州に教訓を与える地位に進んだと言明した。
米国大統領演説内容 27日上海経由ロイター社発
大統領ルーズベルト氏はジェムスタウン植民記念博覧会開会式を祝する演説の末尾に於いて、建国の由来及び現在までの歴史の概要を述べ、米国人に向かい現在の繁栄の裡に生息しつつある放縦無謀な行動を戒め、なお語気を強めて富を公益に使用するよう勧告した。大統領はこの演説中、英国人に向かって特別な挨拶を述べ、米人の国民的性格は主としてその根源を英人の血脈に求められる事を指摘した。更に熱誠を披露しアジア諸国の代表者、とりわけ強大な日本島帝国の代表者を歓迎し、欧州の教訓を受けた日本は今や却って欧州に教訓を与える地位に進んだと言明した。
解説:28日の記事「米国植民記念博覧会」の続き
4月30日
露国愈危殆 軍隊内に於ける革命思想の伝搬が激しく、その為当地及びソルサウに於いて捕縛された者が若干いる。
英仏親交と独逸 独逸新聞の多数が英、仏、伊三国に対して頻りに攻撃を加え
キール運河拡張 新式戦艦が通行できる様にキール運河を拡張する
印度暴動警戒 印度のラホールに於ける本社通信員の報道によれば、同地方の民心に不穏な様子が見られる。
露国愈危殆 29日タイムス社発
露都来電―軍隊内に於ける革命思想の伝搬が激しく、その為当地及びソルサウに於いて捕縛された者が若干いる。又将校で止むを得ず辞職した者が少なからず居る。
クロンシュタット要塞兵の行動について同司令部が非常に心配している事は覆うべからざる事実である。
英仏親交と独逸 同上
パリー来電―独逸新聞の多数が英、仏、伊三国に対して頻りに攻撃を加え、甚だしいのは国民自由党の首脳の一人が独逸議会に於いて「英仏協商は独逸を脅かすものであり、独逸は英国の術中に陥り、片隅に押し込められた」と公言した事を称賛したのに拘わらず佛国新聞は極めて平静な態度を取っている。
解説:ヨーロッパ社会における独逸の強引な振る舞いは、何か中国を連想させるものがある。
キール運河拡張 29日上海経由ロイター社発
独逸政府は新式戦艦が通行できる様にキール運河を拡張する為の経費その他の予算を帝国議会に提出した。
印度暴動警戒 同上
印度のラホールに於ける本社通信員の報道によれば、同地方の民心に不穏な様子が見られる。義勇兵は万一の場合に備える為に軍需品倉庫にある小銃、銃弾その他の軍需品を引き出す許可を与えられた。裁判官5名を始め、多数の官吏、大学校教授、技師及び銀行員等が皆この義勇兵団に加盟した。