期日 | 日本関係 | 期日 | 露清関係 | 期日 | 英米関連 | 期日 | 独仏その他関連 |
2月3日 | 小村大使演説 | 2月6日 | 露都革命党宣言 | 2月2日 | 日本人問題 | 2月7日 | 独逸社会党失敗 |
2月18日 | 日本人待遇一変 | 2月9日 | 阿片禁止上諭 | 2月2日 | 布哇防備理由 | 2月21日 | 佛国政教問題趨勢 |
2月21日 | ハワイ在住日本人抗議 | 2月27日 | 黒鳩将軍抗弁 | 2月4日 | 自ら我が影に吠ゆ | 2月23日 | 南阿の選挙結果 |
2月25日 | 豪州近事 | 2月5日 | 日米事件観測 | ||||
2月28日 | 日本人続々渡米 | 2月7日 | 米国新聞不信用 | ||||
2月13日 | 桑港市長曰 | ||||||
2月14日 | 移民制限問題 | ||||||
2月15日 | 桑港事件解決案 | ||||||
2月16日 | 米国新移民法案 | ||||||
2月19日 | 移民法修正案 | ||||||
2月20日 | 移民法改正案可決 | ||||||
2月22日 | 日米妥協後事 | ||||||
2月27日 | 英国陸軍新計画 | ||||||
2月27日 | 加州尚頑強 |
明治40年2月
2月1日
新議会の情勢 新たに成立予定の帝国議会に於いて、僧侶党及び保守党が優勢を占めるであろう事は、殆ど確実である
桑港事件の成行 サンフランシスコ市の役人は、大統領及び国務卿と会談する為、ワシントンに召還された。
新議会の情勢 31日タイムス社発
伯林来電―総選挙の結果、新たに成立予定の帝国議会に於いて、僧侶党及び保守党が優勢を占めるであろう事は、殆ど確実であるが、政府は尚諸政党に、第2回の選挙に於いても、依然として社会党の成敗を継続するよう要求している。この為に自由党員の中には、今後起こると思われる増税に対する反対運動を恐れる者が多い。
桑港事件の成行 31日ワシントン特派員発
日本学童問題は、多分外交交渉によって終結すると思われる。
サンフランシスコ市の役人は、大統領及び国務卿と会談する為、ワシントンに召還された。
カルフォルニア州選出の議員は、調停が間もなく成立すると信じている。
2月2日
日本人問題 多分日本人労働者を合衆国から排除すると同時に、米国人労働者を日本から排除することを規定した相互条約が締結される様になるのではないか
布哇防備理由 米国陸軍卿タフト氏は、ハワイのピアール港要塞の追加予算の承認を議会に要請
学童問題と加州議会 加州知事は、日本学童問題に関しては、暫く何事も議決しない事を希望
日本人問題 1日タイムス社発
ワシントン来電―太平洋沿岸の日本人問題に関して、大統領ルーズベルト氏がカルフォルニア州選出の国会議員と協議した結果、多分日本人労働者を合衆国から排除すると同時に、米国人労働者を日本から排除することを規定した相互条約が締結される様になるのではないかと一般に信じられている。
大統領は、カルフォルニア州選出議員に対して、カルフォルニア州民の運動の目的は、先ず人種的憎悪を煽って、しかる後に日本人を駆逐することにあるのではないか、然らば条約によって満足にその目的を達する手掛かりを得る事が出来るのではないかと語った。
布哇防備理由 1日上海経由ロイター社発
米国陸軍卿タフト氏は、ハワイのピアール港要塞の追加予算の承認を議会に要請し、これ等要塞の完備は、あらゆる方面から観察して必要であると明言した。
解説:当時既に対日戦略を考えていたと思われ、これが後のオレンジ計画となったと思われる。
学童問題と加州議会 同上
加州知事は、教書を立法部に送り、日本学童問題に関しては、暫く何事も議決しない事を希望して、各派の党首はこれに同意した。
2月3日
大統領非難 ルーズベルト大統領に対する米国上院議員の一部からの攻撃が今尚止まない。攻撃の論拠は、大統領が政府の権力を乱用していると云う点にある。
小村大使演説 日本は英国の諸制度に負う所が非常に多い旨を述べ、感謝の意を表した。
大統領非難 2日タイムス社発
ワシントン来電―ルーズベルト大統領に対する米国上院議員の一部からの攻撃が今尚止まない。攻撃の論拠は、大統領が政府の権力を乱用していると云う点にある。そして国務卿ルウト氏は、連邦政府の権力を拡張することは合衆奥の為に危険であるとの意見を述懐している。
解説:カルフォルニア州の日本人排斥問題に端を発している問題と思われる。
小村大使演説 2日上海経由ロイター社発
小村大使は、リーヅ大学の饗宴に招待され、日本は英国の諸制度に負う所が非常に多い旨を述べ、感謝の意を表した。そして英国に於いて教育された日本人は、財政その他の行政、海軍及び商工業方面に於いて皆赫々たる功績を挙げていると演説した。
解説:小村大使とは小村寿太郎の事で、日本代表として、ポーツマスに於ける日露講和条約を締結した後、イギリス大使として赴任している。
2月4日
自ら我が影に吠ゆ 某米国新聞は、日米両国の間に開戦があるであろうという様な非常に乱暴な記事を掲げ
自ら我が影に吠ゆ 3日上海経由ロイター社発
某米国新聞は、日米両国の間に開戦があるであろうという様な非常に乱暴な記事を掲げ、日本政府は、実際に最後通牒をワシントンに送っていると確言している。但し米国官吏は、この様な開戦談の復活は、全く根拠のないものと認めている。
2月5日
日米事件観測 ルーズベルト大統領は、思慮のないカリフォルニア州立法院の行動に絶え間なく悩まされてきた。大統領は、必ず外交的手段で、日米協商を首尾よく成立させるであろうと期待できる。
日米事件観測 4日タイムス社発
ワシントン来電―日米両国の間に、学童問題の交渉が開始されて以来、ルーズベルト大統領は、思慮のないカリフォルニア州立法院の行動に絶え間なく悩まされてきた。
一旦は消失した日米戦争の風説が、近頃再開したにも拘らず、大統領は、必ず外交的手段で、日米協商を首尾よく成立させるであろうと期待できる。
米国の新聞の中には、若し現在の日米紛争が、充分満足に解決することが出来るとすれば、カナダの関税問題に対するよりも一層融和的な態度を取らなければならないであろうと論じ始めたものもある。
ロンドンタイムスは、常軌を逸した米国人の諸説を猛烈に非難し、日本の外交家は,その特質とも言うべき明確で実行的な方針によって、日米の紛争を立派に解決するであろうと論評した。
2月6日
露都革命党宣言 監獄署長グウデイムは、我が党の戦闘機関の命により殺され
英国上院攻撃 植民省次官チャーチル氏は、上院は、唯地主の代理人に過ぎないと上院を攻撃した。
露都革命党宣言 5日タイムス社発
露都来電―社会革命党は、監獄署長グウデイムは、我が党の戦闘機関の命により殺され、又秘密警察部の数名のスパイは、我が党の事務所を爆破しようとした罪により、逮捕監禁されたと宣言した。
英国上院攻撃 同上
植民省次官チャーチル氏は、マンチェスターに於ける演説で、上院が審判者としての任務にあたると自称している事を嘲って、彼らは、唯地主の代理人に過ぎないと上院を攻撃した。
解説:チャーチル氏とは、第2次世界大戦中の英国の首相
2月7日
米国新聞不信用 日本人600名が、2名の大尉の指揮の下にホノルルに到着したとか米国新聞は、相変わらず途方もない報道のみを伝えている。
独逸社会党失敗 独逸総選挙は、第二回投票を終了し、その結果、遂に社会党の敗北
米国新聞不信用 6日上海経由ロイター社発
「ハワイ在住の日本人は、万一の場合に備える為に立派な団体を組織した」とか「最近の報道によれば、1月15日香港を出発したシベリア号で、日本人600名が、2名の大尉の指揮の下にホノルルに到着し、上陸したが、その中に兵士の制服を着ていたものが少なからず居た。」とか米国新聞は、相変わらず途方もない報道のみを伝えている。
独逸社会党失敗 同上
独逸総選挙は、第二回投票を終了し、その結果、遂に社会党の敗北に帰し、昨日となって同党は、更に11議席を失った。
解説:今回の選挙は、ドイツ領南西アフリカに於けるホッテントット族の反乱鎮圧のための軍事費の増額をめぐる選挙であったが、植民地支配に反対していた社会党は、労働者の票が得られず大敗した。この結果、社会党は植民地政策に賛成するようになった。
2月8日
独逸新議会党勢 独逸の総選挙の結果、社会党は36個の議席を失った。しかしウイスバーデン及びストラスブル等の諸市に於いては、勝利を得た。これは僧侶党の協力の結果である。
独逸新議会党勢 6日ベルリン特約通信社発
独逸の総選挙の結果は、次のとおり。
僧侶党 105、保守党59、国民自由党55、社会党43、その他略
独帝及びビューロ宰相は、宮城及び官庁に集合した民衆に演説し、皇帝は国民の愛国心を称賛された。
昨年日本に赴いた議員の中で、再選されたのはリーベルホーゼン氏一人のみで、その他は皆落選した。
独逸全体を通じて言えば、社会党は36個の議席を失った。しかしウイスバーデン及びストラスブル等の諸市に於いては、勝利を得た。これは僧侶党の協力の結果である。
市民は、皇帝及び宰相に対し、熱心な祝意を表した。
2月9日
開城当時の旅順 要塞司令官であったスミルノフ将軍は、当時旅順にはなお二カ月を支えるに足る糧食と弾薬があった旨公言した。
阿片禁止上諭 アヘン厳禁のため、その原料である芥子の栽培を制限させて、10年以内には完全に弊根を断つ
開城当時の旅順 8日タイムス社発
露都来電―旅順開城の当否を審査する法廷に於いて、要塞司令官であったスミルノフ将軍は、当時旅順にはなお二カ月を支えるに足る糧食と弾薬があった旨公言した。
阿片禁止上諭 8日北京特派員発
アヘン厳禁のため、戒烟会(かいいんかい)の普及を図り、各省の阿片館は新規則を励行する為、その原料である芥子の栽培を制限させて、10年以内には完全に弊根を断つように努めよとの上諭が7日に公布された。
解説:戒烟会は阿片の吸引を止める会と思われる。当時の清では、阿片禁止を司る役所として、戒烟院が設けられていたが、阿片館は戒烟院を指すのではと思われる。
2月10日
露国募債の一策 佛国政府が、佛国の資本金で、露国の二大鉄道を敷設する予定の大会社をパリーに設立する事を許可
学生退去を命ぜらる 独逸総選挙に際し、社会党議員の選挙を援助した外国人学生(主としてロシア人)は、
露国募債の一策 9日タイムス社発
パリー来電ー社会党は、露国公債を佛国市場に売り出そうとする秘密の計画が、間違いなくあると主張しており、これに関する佛国代議院での討論が終了した。社会党党首ジョーレス氏の格言に依れば、佛国政府が、佛国の資本金で、露国の二大鉄道を敷設する予定の大会社をパリーに設立する事を許可しようとしている。これは、仮装した露国公債の募集に外ならない愚かな計略である。大蔵卿は、これに答えて、いかなる外国公債も我が政府の承認を得ることなく、正常に市場に売り出す事は出来ない。但し余は、必ずしもジョーレス氏の所説を否認する訳ではない。
学生退去を命ぜらる 9日上海経由ロイター社発
独逸総選挙に際し、社会党議員の選挙を援助した外国人学生(主としてロシア人)は、間違いなく2週間以内に独逸国を退去すべきとの告示を受けた。
2月11日(火)
日米事件妥協 日米事件に関して、米国大統領と加州選出国会議員及びサンフランシスコ市長と協議の結果、相互の意見が漸く一致した。
日米事件妥協 10日ワシントンロイター通信員発
日米事件に関して、米国大統領と加州選出国会議員及びサンフランシスコ市長と協議の結果、相互の意見が漸く一致した。これによって日米事件も満足に解決されると思われ、日本が現に主張している苦情の原因は除去されるものと確信できる。
2月13日
華盛頓会議現状 日本学童問題は、現在ワシントンに居るサンフランシスコ当局者の意向が変った為に、全く行き悩みの状態である。
桑港市長曰 大統領に余が屈服したとの噂は、全く無根であり、加州人として、余は我が州のために努力する
日本人排斥 白人労働者は、徒党を組み日本人を脅迫し、退去させてしまった。その為会社は、この白人労働者の中の下手人を告訴した。
華盛頓会議現状 12日ワシントン特約通信員発
日本学童問題は、現在ワシントンに居るサンフランシスコ当局者の意向が変った為に、全く行き悩みの状態である。
加州から彼らに対して、強硬な態度を取る事を勧告した電報数は、700通となっている。
桑港市長曰 12日サンフランシスコ特約通信員発
日本人排斥協会の激烈な屈従反対電報に対して、市長は、「未だ何ら決定した事は無い。協定が決定するまで、双方は秘密を守る事になっている。大統領に余が屈服したとの噂は、全く無根であり、加州人として、余は我が州のために努力するであろう」と返電した。
日本人排斥 同上
オレゴン州ポートランド付近に於いて、南太平洋鉄道会社は、白人労働者に代えて日本人を雇ったが、白人労働者は、徒党を組み日本人を脅迫し、退去させてしまった。その為会社は、この白人労働者の中の下手人を告訴した。
解説:日本人排斥運動の原因は、この様に低賃金で働く日本人労働者に依って、白人の仕事が奪われる事にあった。
2月14日
桑港事件交渉頓挫 ワシントンに於ける学校問題会議は、現在非常に停滞しており、、この問題は、90名内外の日本人児童の教育問題ではなく、カルフォルニア州の体面及び州の権限に関する大問題である
移民制限問題 市長がカルフォルニア州方面から受けた電報は、学校問題に関する事は少なく、日本移民の制限に対する要求が多い。
桑港事件交渉頓挫 12日桑港特派員発
ワシントンに於ける学校問題会議は、現在非常に停滞しており、サンフランシスコ市長は、日々カルフォルニア州方面から「屈服してはならない」と述べる電報を3,4百通受け取っており、この問題は、90名内外の日本人児童の教育問題ではなく、カルフォルニア州の体面及び州の権限に関する大問題であると称している。サンフランシスコ市長は、当地への電報で、我らは未だ大統領と日本人排斥事件について、討議していない。我らは、土曜日先方の主張を聞き、昨日月曜日は、先方へ我らの主張を提起した。我らが譲歩するか、大統領が譲歩するのでなければ、一致協力する事は無いであろう。多分木曜日又は金曜日に再び大統領と会見する事になるであろうと述べている。
移民制限問題 同上
市長がカルフォルニア州方面から受けた電報は、学校問題に関する事は少なく、日本移民の制限に対する要求が多い。大統領は、現在、日本に対して、移民相互引揚案を提示する事は出来ず、又約束する事も出来ないと断言したと伝えられている。要するにサンフランシスコ側は、日本移民について、何らかの約束を取り付けたい様である。
解説:日本人排斥問題は、日本人が低賃金で働く優秀な非白人である事に起因するが、1906年のサンフランシスコ大地震で、学校が倒壊した事から、日本学童は東洋学校へ行けとの命令が市長から出された。翌年の1907年これは撤回される事になるがその当時の記事である。そして1908年には、日本政府による渡米の自主規制が始まり、1924年になって排日移民法が成立した。
2月15日
桑港事件解決案 合衆国は、合衆国及びその領土に入ってくる日本人労働者を排斥する事が出来、日本も亦、これと同様に日本に入ってくる米国人労働者を拒絶する権利を有する
独逸海軍協会と政治運動 海軍協会なるものは、その責任者である政府の官吏が、常に非政治的なものであると説明してきたにも拘らず、今やこの有様である。
桑港事件解決案(善後策か悪後策か) 11日タイムス社発(14日延着)
ワシントン来電―サンフランシスコ学童問題に関して、大統領とサンフランシスコ教育当局者との間で協議会が開かれたが、この席には以前、日米戦争説などを撒き散らした不注意な加州の代議士を招かなかった。
この協議の結果、双方は誠実に、最終的には条約となる為の一つの協定案を作るよう努力した。この協定案には、合衆国は、合衆国及びその領土に入ってくる日本人労働者を排斥する事が出来る条項がある。但し日本も亦、これと同様に日本に入ってくる米国人労働者を拒絶する権利を有する事になる為、この協定は、日本に悪感情を与える事は無いであろうと信じられる。これを要するに労働者問題が主であり、学童問題は第二位であるものと認められる。
この協約が一度成立するならば、加州は多分、先に日本学童に加えた束縛を撤去する事になると思われる。
解説:昨日の記事の続きである。
独逸海軍協会と政治運動 同上
ベルリン来電―今回の総選挙に際して、中央党と戦う見込みで政府側にはせ参じたものの中に、海軍協会が、政府側の承認を経て、中央党に対して激しい政治運動を実行した次第を知るに及んで、激怒するものがいた。
元来海軍協会なるものは、その責任者である政府の官吏が、常に非政治的なものであると説明してきたにも拘らず、今やこの有様である。そして同協会が、以前、莫大な経費を必要とする英国海軍対抗策を鼓吹する党派運動に従った事があった。この為にこの協会の行動は、漸く一般の非難を被る様になった。
解説:海軍協会は、1898年に作られたが、当時クルップ砲やクルップ鋼で世界的に有名なドイツのクルップ商会が多額の資金を供給していた。
2月16日
英清阿片問題 清国は、内国産阿片税を輸入阿片税以上として、新たに15テールに引き上げた。
米国新移民法案 移民法を修正する事で纏まった様で、これはハワイから来る日本人を抑止する事を目的とする事は明らかである。
英清阿片問題 15日上海経由ロイター社発
印度事務大臣モーレー氏によれば、清国は、内国産阿片税を輸入阿片税以上として、新たに15テールに引き上げた。そして英国政府は、アヘン輸入税の引き上げに対するその提案について、現在協議中である。
米国新移民法案 (目的はハワイ移民転航禁止?)15日桑港特派員発
ワシントンに於ける交渉は、学校問題を解決する条件として、移民法を修正する事で纏まった様で、両院の委員はこの修正案を各院に報告した。この案の要旨は「米国以外又米国の領地内に於いても島領地若しくは運河地帯行き以外の旅券を持つ外国人については、大統領はこれを排斥する事が出来る」と定める事にあると言われており、これはハワイから来る日本人を抑止する事を目的とする事は明らかである。
サンフランシスコ側は、表面的にはこの案に対する議会の反応を見たいと称しているが、実際は自己の主張を貫徹した事を喜んでおり、大勢としてはこの案が通過する模様である。しかし本案は、大統領に過大な権力を与えるものであるとして上院議員の中には、これに反対する者もいる。本案の成立は、日本人の条約上の旅行権を侵害し、且つ現に既に労働者不足に困難している位なのに、将来在米同胞の発展に非常に大きな打撃を与えるものであるとして当地日本人協会は、大使及び外務大臣に電報で懇願を行った。
解説:2月14日「移民制限問題」に解説記事がある。
2月17日
移民法改正問題 我が政府は、この移民法改正案に満足したのみならず、あまつさえこれに対して助言も行った。在米日本人が既得の条約上の権利さえ奪われなければ労働者排斥を快諾すべしと声明したといわれている。
移民法改正問題 16日桑港特派員発
移民法改正案は、多少の反対があり少しは手間取るかもしれないが、通過する事に疑いはない。我が政府は、この移民法改正案に満足したのみならず、あまつさえこれに対して助言も行った。在米日本人が既得の条約上の権利さえ奪われなければ労働者排斥を快諾すべしと声明したといわれている。
サンフランシスコ市長がワシントンに於いて、最近加州方面から受ける電報で、市民が満足している事が分かると、彼は得意満々である。
日韓人排斥協会長は、日本人も支那人と同様に排斥しなければならないと電報し、コール新聞も、表面的には未だに満足していないと述べている。
2月18日
英独関係 ロンドン駐在ドイツ大使メテルニヒ氏は、通商上の競争は国際の親交を害するとの議論には根拠が無い事を反復論証
日本人待遇一変 ハルピンの日本医師は安全に自由に開業することができ、又ハルピンの開放と共に日本人を優遇すべき旨本国からの訓示
英独関係 16日ベルリン特約通信員発
ロンドン駐在ドイツ大使メテルニヒ氏は、ニューカッスル市に於ける実業家の宴会に出席して演説を行い、通商上の競争は国際の親交を害するとの議論には根拠が無い事を反復論証して、大いに喝采を博した。
日本人待遇一変 16日奉天特派員発
天津駐在の露国領事に転任するボツベー氏が本日16日、当地を通過する際に、ハルピンの日本医師は安全に自由に開業することができ、又ハルピンの開放と共に日本人を優遇すべき旨本国からの訓示があり、この事は一般に発表されるであろう。又撤兵は、3月15日までに必ず完了するであろうと言明した。
2月19日
移民法修正案 移民修正案は、採決の結果、25対45の多数で可決した。なお下院は3月4日に本案を討議する予定である。
日米問題解決 加州は本案の通過後、直ちに日本児童を米国人学校に入る事を承諾しており、これで対日問題は解決される次第である。
移民法修正案(愈上院を通過す) 18日桑港特派員発
移民修正案は昨日17日、上院で議事に付され大討論が行われた。ある議員は、加州は州權問題を弄んだと述べ、ある議員は、加州は本案が通過しても日本人の排斥を止めなくて、今後更に紛争を起こすであろうと述べた。採決の結果、25対45の多数で可決した。なお下院は3月4日に本案を討議する予定である。
日米問題解決 18日上海経由ロイター社発
ワシントン来電―上院は移民法改正案を可決した。加州は本案の通過後、直ちに日本児童を米国人学校に入る事を承諾しており、これで対日問題は解決される次第である。
2月20日
移民法改正案可決 日本移民法改正案は、去る月曜日、殆ど満場一致で下院を通過した。この案はハワイを経て米国に入ろうとする日本人を排斥する事が出来る旨の規定を含んでいる。
佛国内閣危機 政教分離に関する佛国内閣の意見が終に一致せず、明日内閣会議を開く
日韓犯罪人引渡 日本人の犯罪者は全て領事に引き渡すことになり、既に柴田長春領事は3名を引き取り、奉天に送っている。
移民法改正案可決 19日桑港特約通信員発
日本移民法改正案は、去る月曜日、殆ど満場一致で下院を通過した。この案はハワイを経て米国に入ろうとする日本人を排斥する事が出来る旨の規定を含んでいる。
当地の労働組合は、市長シューツツ氏が大統領の策謀に同意した事が不愉快で、市長を排斥すべきであると脅迫している。
佛国内閣危機 18日ベルリン特約通信員発
政教分離に関する佛国内閣の意見が終に一致せず、明日内閣会議を開く事が確定した。激しい意議論が行われるであろうと期待されている。
日韓犯罪人引渡 18日奉天特派員発
露国官憲は、従来ハルピンその他の租借地で日本人や他の外国人に対して、恰も要塞地帯であるかの様な態度をとっていたが、開放声明後はこれを改めて、日本人の犯罪者は全て領事に引き渡すことになり、既に柴田長春領事は3名を引き取り、奉天に送っている。但し朝鮮人は清国の官憲がこれを処分するとの告示が出されたとの事で、我より提議をするようである。
2月21日
佛国政教問題趨勢 神父社会が政教問題の解決を熱望しているにも拘らず、ローマ法王が執拗な態度をとる結果、カトリック教会の上に降りかかる不幸な結果
ハワイ在住日本人抗議 米国における日本移民の排斥は、日本人を永久にハワイ資本家の奴隷とするものであると抗議した。
佛国政教問題趨勢 20日タイムス社発
パリー来電―佛国教務卿ブリアン氏は、代議院に於いて政府の対教会政策についての非難に答え、雄弁にして政治家たるに恥じない演説を行い、首相クレマンソウ氏も教務卿と完全に同一の意見である旨明言した。そして教務卿は、その演説の中で神父社会が政教問題の解決を熱望しているにも拘らず、ローマ法王が執拗な態度をとる結果、カトリック教会の上に降りかかる不幸な結果について詳述した。そして代議員は、33票に対する384票の多数で政府信任案を可決した。
ハワイ在住日本人抗議 20日上海経由ロイター社発
ホノルル在留の日本人会は、大統領ルーズベルト氏に電報を発して、米国における日本移民の排斥は、日本人を永久にハワイ資本家の奴隷とするものであると抗議した。
2月22日
日米妥協後事 大統領ルーズベルト氏は昨日20日正午、両院を通過した移民改正法に署名した。
日米妥協後事 21日桑港特派員発
大統領ルーズベルト氏は昨日20日正午、両院を通過した移民改正法に署名した。
国務卿ルート氏及び青木大使は相互的労働者渡航禁止条約協定に多忙を極めている。
日本の一部に反対があるけれども顧みられず、その成立は疑いなしと云われている。若し大統領ルーズベルト氏とサンフランシスコ市長との会見で満足な解決が得られないならば、日本は青木大使を召還する予定であるとワシントン電報は報道した。
今から一週間後にサンフランシスコ市長が当地に帰着したなら、直ちに日本児童は就学するであろう
労働者渡航禁止条約の締結は、在米同胞の発展を阻害するものであると在留邦人は大いに憂慮し、反対運動を起こそうとしている。日本人が渡米禁止となっても、当地方における同胞の迫害は止まないであろう。
解説:今まで清国人等は、移民禁止の対象となっていたが、日本人は対象外であった。しかし1906年のサンフランシスコ大地震の後、州政府は学校の倒壊を理由として、日本児童の東洋人学校への転校を命じた。これが発端となってこの問題は発生した。この隔離命令はルーズベルト大統領の異例とも言える干渉により翌1907年撤回されたが、その交換条件としてハワイ経由での米本土移民は禁止されるに至った。
其の後1908年、林董外務大臣とオブライエン駐日大使との間で一連の「日米紳士協定」が締結され、米国への移民は日本政府によって自主的制限がされることとなった。
2月23日
日米問題の解決 政府の機関新聞は、今となって初めて日米間の紛争が満足すべき結果を見出した事を信じるようになった。
南阿の選挙結果 議会選挙の結果、ボーア人が実態上の多数となり、英国を代表する進歩党は、議会的能力と経験の於いて、遥かに反対党に勝る堅実な少数党を形成している。
日米問題の解決 22日タイムス社発
ニューヨーク来電―政府の機関新聞は、今となって初めて日米間の紛争が満足すべき結果を見出した事を信じるようになった。但し以前、日米開戦を唱えたものは、今なおこれに対してとかくの評価を下している。一般にこれを非難する者より称賛する者が多い。
南阿の選挙結果 同上
第1期トランスバール議会選挙の結果、ボーア人が実態上の多数となり、英国を代表する進歩党は、議会的能力と経験の於いて、遥かに反対党に勝る堅実な少数党を形成している。
両党は、英国政府が土人労働者で支那労働者の代わりが出来るようになるまで、支那人を排斥する意思が無いことを明らかにした。
2月24日
日米移民談判 青木大使は昨日金曜日、国務卿ルート氏と会見し、移民制限に関して協議した。
吉林省開放問題 吉林将軍は、居留地以外(即ち吉林城内)に日本人その他外人の居住を禁止する旨の告示を行った。
日米移民談判 22日ワシントン特約通信員発
青木大使は昨日金曜日、国務卿ルート氏と会見し、移民制限に関して協議した。
主戦論を唱える日本人の勢力(?)が強大であれあ、日米協議は相当困難になるであろうと当地の某外交家は述べている。
吉林省開放問題 23日奉天特派員発
吉林将軍は、居留地以外(即ち吉林城内)に日本人その他外人の居住を禁止する旨の告示を行った。萩原総領事は、吉林も奉天と同じ様に全市を開放すべきであり、又居留地問題も日清露の協定を待つべきで、将軍が独断で決定すべきものではない旨を電報で抗議した。
2月25日
吉林開放問題 日清条約によれば日本人は居留地以外に居留の権利が無く、我が処置は少しも条約に違反していない
豪州近事 清国の米国排斥運動の余波が治まらず、小麦粉は豪州から輸入しており、
又豪州では、日本の労働者を歓迎しようとする様子がある
吉林開放問題 24日奉天特派員発
萩原総領事の照会に対して吉林将軍から、日清条約によれば日本人は居留地以外に居留の権利が無く、我が処置は少しも条約に違反していないと返電してきた。
解説:昨日の記事にある電報での抗議に対する返電である。
豪州近事(内国電報 長崎)
熊野丸の積荷 本日帰港した熊野丸の乗組員の話では、清国の米国排斥運動の余波が治まらず、小麦粉は豪州から輸入しており、本船は香港に6千俵を陸揚げした。なお注文があったが日本への積荷が多かった為これ以上は全て断った。又豪州では、米国における学童問題の為、日本の労働者を歓迎しようとする様子がある旨語った。
2月26日
独帝社会党 独帝は、今回の総選挙が社会民主党の敗北に帰した事を指摘し、国民がこの事実をよく理解し
李容翊客死 韓国の亡命客である李容翊氏が昨日24日朝、当地で病死した。
独帝社会党 25日上海経由ロイター社発
独帝は帝国議会の議長及び副議長を引見し、今回の総選挙が社会民主党の敗北に帰した事を指摘し、国民がこの事実をよく理解し、長く記憶する事を希望すると述べられた。
李容翊客死 25日ウラジオ特派員発
韓国の亡命客である李容翊氏が昨日24日朝、当地で病死した。
解説:1882年の壬午(イムオ)軍乱で閔妃が殺害を免れ隠れていた時期、李容翊は1日120km走る事のできる飛脚として、閔妃の文書を高宗に届けた。再び閔氏が権力を握った時には度支部大臣(大蔵大臣)にまで上り詰めた。日露戦争後日本が政治改革をするようになり、閔氏一族が排除され、李容翊はウラジオに亡命していた。
2月27日
黒鳩将軍抗弁 クロパトキン将軍は、ポーツマス講和条約は国内の情勢に迫られ止むを得ず承諾した早計な処置であった。そうでなければ露軍は満州に於いて披露困憊した敵兵を撃破する事が出来た
奉天城内居住問題 奉天将軍は支那人側をつついて日本人を城外に追い出そうとこのような告示を出させたものと思われる。
黒鳩将軍抗弁 25日タイムス社発
露都来電―クロパトキン将軍はノウオエ、ウレミヤ新聞に書簡を送り、将軍の日露戦史は総司令官であった自己の地位を擁護する為ではなく、ただ敗戦の理由を分析し、研究しようとしたまでである。満足のいく終結を見るまで戦争を継続する事が出来なかったのは、一つは国内の騒動による。事実有りのままの充分な戦報を公表できなかったのもこの騒動の為である。各軍司令官の失策は、ある場合には、独断専行の権能を許容しない軍制の不備に起因すると論じ、なお露国にとって不面目なポーツマス講和条約は、国内の情勢に迫られ止むを得ず承諾した早計な処置であった。そうでなければ露軍は満州に於いて披露困憊した敵兵を撃破する事が出来たと評し、最後に内政の改革が実行される事になれば露国の軍事的権勢は再び確立されるであろうと確信する旨を告白した。
解説:ロシアの良心ともいえる宰相ウイッテは、皇帝ニコライ二世に対し、極東進出に反対する主張を曲げず罷免され、彼が再び政治に登場したのはポーツマス講和会議であった。ウイッテに比べるとクロバトキン将軍はお粗末な将軍といわざるを得ず、約10年後にロシア革命が発生している。
奉天城内居住問題 26日奉天特派員発
奉天将軍趙ジ巽(ちょうじそん)は巡警局に次の告示を出させた。今後奉天城内で外国人に家屋を貸そうとする者は、全て当局に届け出てその許可を受けなければならない。これは先日各国領事から、趙(ちょう)将軍が奉天全市の開放を承認しなければ開埠会議にも応じる事は難しい旨最後通告を受けたので、もはや再び抗弁する勇気がなく、この上は支那人側をつついて日本人を城外に追い出そうとこのような告示を出させたものと思われる。これに対して近日中に領事会議を開いて強硬な抗議を行うであろうと言われている。
2月27日
英国陸軍新計画 陸軍編成新計画は、第一に6個の大歩兵師団、4個の騎兵師団より成り、戦闘員約16万人を置き、これに訓練した輜重兵隊、その他の非戦闘員を加える
加州尚頑強 「蒙古人種には隔離教育を行うことができる」とあるを「日本人、支那人児童等は隔離教育を行うことができる」と修正する州法改正案
英国陸軍新計画 26日タイムス社発
陸軍大臣が下院に於いて説明した陸軍編成新計画は次の様であった。第一に6個の大歩兵師団、4個の騎兵師団より成り、戦闘員約16万人を置き、これに訓練した輜重兵隊、その他の非戦闘員を加える。第二に30万人の国民軍を14個師団とし、その組織、制度を一様とし、各兵は毎年少なくとも8日間入営して教育を受け、4年間服役する。希望によってはその年限を延長する事が出来る。
加州尚頑強 26日桑港特派員発
「蒙古人種には隔離教育を行うことができる」とあるを「日本人、支那人児童等は隔離教育を行うことができる」と修正する州法改正案の討議は延期されていたが、今回これを通過させようとする運動が始まっており、この目的は、学童問題協定を破棄させることである。
尚土地所有権、その他日本人関係諸議案の議決が延期されているものも、今回全て通過させなければならないと云っている。
解説:2月16日「米国新移民法案」に関連記事がある。
2月28日
日本人続々渡米 昨日月曜日、日本人6百余名が汽船モンゴリア号で当地に到着し、上陸した。政教談判不調 ローマ法王は、佛国カトリック派の神父を引見したが、佛国政府と法王政庁との談判は終に不調に終わってしまった。
日本人続々渡米 26日桑港特約通信員発
昨日月曜日、日本人6百余名が汽船モンゴリア号で当地に到着し、上陸した。移民官の見込みでは、この次ハワイから入港する汽船に乗りこんでいる者に対しては、退去を命じる予定であるという。なおこの程日本丸でホノルルに向け出発した日本人は上陸を許されるかどうか未定である。
政教談判不調 26日ベルリン特約通信員発
ローマ法王は、佛国カトリック派の神父を引見したが、佛国政府と法王政庁との談判は終に不調に終わってしまった。最早相互の間に善良な関係を保ち得る見込みは無いと明言した。