期日 | 日本関係 | 期日 | 露清関係 | 期日 | 英米関連 | 期日 | 独仏その他関連 |
11月6日 | 又復日本学童排斥 | 11月3日 | 露都の大陰謀発覚 | 11月1日 | 桑港の経済界 | 11月3日 | 肥沃砂漠たらんとす |
11月9日 | 新桑港市長 | 11月2日 | 巴奈馬運河幅員拡張大案 | 11月8日 | 獨帝訪英旅程 | ||
11月13日 | 亜人排斥の大運動 | 11月5日 | 印度内政現状 | 11月9日 | 摩洛哥事件黄書 | ||
11月15日 | 日米関係趨勢 | 11月6日 | 又復米国の暴漢 | 11月10日 | 恐慌の余波 | ||
11月15日 | 晩香坡暴動損害査定 | 11月6日 | 英米金融界動乱 | 11月12日 | 英独関係の改善 | ||
11月18日 | 排日暴動要償談判 | 11月19日 | 米国陸海軍繁忙 | 11月14日 | 独逸の秋波 | ||
11月21日 | 日本人追返される | 11月21日 | 英国海軍政策 | 11月16日 | 独帝の訪問論評 | ||
11月25日 | 日本人排斥法案否決 | 11月22日 | 回航艦隊航程 | 11月17日 | 独逸植民地補助 | ||
11月30日 | 桑港検事の日本人観 | 11月23日 | 英国海軍の整備 | 11月19日 | 摩洛哥内乱 | ||
11月25日 | 婦人参政権要求 | 11月20日 | 独逸海軍拡張案 | ||||
11月26日 | 独逸海軍費の膨張 | ||||||
11月28日 | 佛国海軍紊乱 | ||||||
11月29日 | 佛国海軍の非境 | ||||||
11月30日 | 摩洛哥戦報 |
11月1日
ニューヨーク財界救済後報 10日上海経由ロイター社発
ワシントン特派員発―米国政府は、国庫金7千万ドルを国立銀行に預け入れた。恐慌が起こった時にこの様な巨額の国庫金を国立銀行に預け入れたのは未曾有の事である。
桑港の経済界 30日桑港特派員発
この程來、ニューヨークの経済界の動揺の為、小切手取扱までも困難を感じたが、サンフランシスコの銀行は堅実との事である。又サンフランシスコの造幣局はワシントンから千五百万ドルの地金を直ちに金貨に鋳造するようにと、去る25日命令された。
11月2日
艦隊回航後報 31日桑港特派員発
海軍卿メットカーフ氏は次の様に述べた。水兵不足の為に艦隊の太平洋回航次期が遅らせるべきであるという者が居るが、水兵を得る事は特別に困難な問題ではない。この為に出発時期が遅れる様な事は無いものと信じている。又米国軍艦は全て良好な状態であり、何れの海軍にも劣っていない。
巴奈馬運河幅員拡張大案 1日桑港特派員発
海軍卿メットカーフ氏は、次期議会にパナマ運河の幅員を34mから60mに拡大する議案を提出する予定であり、これは戦闘艦の艦型が次第に大きくなった結果である。
11月3日
回航艦隊の給炭 2日タイムス社発
太平洋に回航予定の米国艦隊に石炭を運送する為、21隻のグラスゴー汽船が雇い入れられた。給炭総額は20万トンである。
肥沃砂漠たらんとす 同上
一時は土地の肥沃な事で天下に聞こえたメソポタミヤは、その後次第に荒れ地と化し、間もなく砂漠にならうとしている。トルコ政府は急に灌漑の必要を感じ、莫大な費用を投じて水道を開削することになった。
解説:1640年頃からこの地域はオスマン帝国の領土となっていた。
露都の大陰謀発覚 1日上海経由ロイター社発
数名の陸軍書記官がペテルスブルグに於いて逮捕された。これは軍事参議院の週次会議に於いて、陸軍大臣を始め同院の議員一同を爆弾で爆殺しようとする陰謀が発覚した為である。
11月4日
英国鉄道の危機 4日タイムス社発
英国鉄道会社と工夫との間で長い間紛糾していた賃金値上げ問題は危機に陥っている。工夫が投票を行った結果、ストライキに賛成した者は7万6千9百25票、反対した者僅かに8千7百73票であった。
印度内政現状 2日上海経由ロイター社発
シムラの立法議会は、3名のインド人議員の反対があったにも拘らず、政府の許可を得ない集会を禁止する法案を可決した。
印度総督ミントウ氏は、最近数週間に於ける印度人の暴動、欧州人に対する侮辱及び軍隊を攪乱しようとする運動に対しては、現在もなお少しも油断する事は出来ない。政府はインド兵が冷然としてこれらの誘惑に動かされない事についてインド兵に感謝する事をキッチナー将軍に依頼したと明言した。最後に政府はインド人が有する政治上の希望及び名誉心を阻害する事を望まず、これらは教育の自然な結果であり、却って歓迎すべきものであると言明した。
解説:キッチナー将軍は、第2次ボーア戦争の指揮官(1899年~1902年)、インド軍の指揮官(1902年~1909年)、1910年元帥となり、1914年伯爵、第1次世界大戦では陸軍大臣を務めた。
11月6日
又復米国の暴漢 5日タイムス社発
ワシントン州エベレットに於いて労働党を主体とした暴徒は、41名のインド人が居住する地区を攻撃し、これを破壊した。警官はこれらインド人を監獄に収容して保護した。
英米金融界動乱 5日上海経由ロイター社発
ロンドンの金利は終に6分に高騰した。その後ロンドンに於いて締結されたニューヨークに送付する正貨の総数は3百万ドルに達した。この為当地の株式の価格は、諸株を平均すると3割2分4分の1下落した。若しこの不況が持続するならばロンドンの金利はさらに8分位に高騰する事が予想される。
米国の金融界は非常にひっ迫しており、ニューヨーク市役所では、その職員に対し小切手によって支払いを行っている。
又復日本学童排斥 4日桑港特派員発
ジョージヤ州サブアンナ市の教育会は当地の夜学に通学する由上と云う日本児童に退校を命じる決議をおこなった。同人は2週間前に当地教育課長の不在中に通学を許されたが、課長が帰来して、これは人種差別を破る行為であり、南部諸州に於いて許されない事であると述べた。この退校処分は表面的には学齢超過を理由としている。
解説:元米国国務省日本部長ケビン・メアは文芸春秋11月号で「私は南部カロライナ州出身で、中学生の頃まで、人種差別が残っており、白人と黒人の学校は分けられていた。」と述べている。(105p)
11月7日
タフト氏帰還説 5日桑港特派員発
現在マニラに滞在中であるタフト氏は、世界漫遊を中止して同地から引き返すであろうとの風説がある。その主な理由は米国の政治上の要求であるが、一つは最近のウラジオストックに於ける騒動も関係していると言われている。タフト氏は叛乱を恐れている訳ではないが、尚露国の不穏な情勢を不愉快に感じている為である。
摩洛哥問題と佛西 5日ベルリン特約通信社発
モロッコ問題に関し、佛とスペイン政府との間で最近意見の一致をみないことがあったが、これは今回解決し、アルゼシラス条約の精神に基づいた妥協が成立した。
11月8日
英国鉄道紛議落着 7日上海経由ロイター社発
鉄道会社と労働者との紛争は、鉄道委員長ロイドジョージ氏と関係者が幾度も会見を重ねた末、ようやく解決した。この交渉に深い注意を払われていた英帝に奏上した後、昨夜遅く発表された。
解説:ロイドジョージは自由党の議員で、第1次世界大戦時英国の首相となり戦争指導を行った。
獨帝訪英旅程 6日ベルリン特約通信社発
獨帝は予定の日に出発、英帝と会見の後保養の為に3週間、ワイト島に御滞在し、帰国の途中にオランダを訪問される予定である。なおオックスフォード大学は獨帝に名誉学位を贈呈する事になっている。
解説:欧州の緊張緩和の為の努力が様々な形で行われていたが、この獨帝の英国訪問もその一つと思われる。しかし誰も望まなかった第一次世界大戦は7年後に起こる。
摩洛哥静穏 同上
モロッコの情勢は次第に静穏となり、佛国も既に数隻の軍艦を同地から引き揚げたとの情報がある。
11月9日
摩洛哥事件黄書 8日タイムス社発
パリー来電―佛国政府はモロッコ事件の経過に関する黄書を代議院で発表した。この黄書によれば、佛国政府は終始一貫、温和主義に固執すると同時に、断固とし列国から委任された権限外に逸脱しないように努力した様である。この黄書によりモロッコに於ける最近の騒乱で重要な責任を有する独逸の政策の曖昧な事が暴露されている。
解説:黄書とはフランスの外交文書と思われる。イギリスやドイツの外交文書は白書、ロシアはオレンジ
海軍根拠地 7日桑港特派員発
陸海軍参謀会議の結果、フィリピンの海軍基地をマニラからスビック湾に移す事に決定した。元来基地をマニラにしたのはタフト氏及びウード将軍の主張であり、デュウエー将軍は最初からスビック湾を主張していた。そして今回参謀会議の意見はデュウエー将軍の勝利に帰したけれど、大統領ルーズベルト氏がどちらを採るかはなお疑問である。
新桑港市長 同上
大多数の票で桑港市長に再選されたテイラー氏に対し、日本人団体の代表が当選の祝辞を述べ、且つ選挙前に同氏は日本人の市長であると反対派の新聞に書かれた為に迷惑されたのではと述べたのに対し、市長は少しも御心配に及ばず、私は日本人であると他国人であるとを問わず、正義に組みすると挨拶をした。
今回の選挙まで延期された桂庵事件の様なものは直ぐに解決すると思われる。
解説:桂庵とは、ここでは仕事の斡旋の意味で、日本人がこの事業をしていたが市役所から更新の許可が下りなかった事件があった。
11月10日
恐慌の余波 9日タイムス社発
独逸銀行の利子が7分5厘と高くなったが、これは従来なかった事である。
又ウタント株式取引所に於いては、オーストリア及びハンガリーの主要な公債、株券は何れも大暴落を報じた。
摩洛哥黄書評 同上
巴里来電―パリの諸新聞は佛国が公にしたモロッコ事件黄書が英佛協約の利益を実証し、且つ独逸の佛国に対する態度の実態を明らかにしたものと主張している。
解説:この記事は昨日の摩洛哥事件黄書の関連記事である。
11月11日
欧州金融警戒 9日上海経由ロイター社発
独逸各銀行の銀行員は利子引上げを予想して、その前に手形の割引を受けようと、昨日早朝から独逸帝国銀行の門前に参集していた。しかし重役は午前11時まで評議に評議を重ねて、その間門を開かなかった。やがて利子引上げが掲示されると、一時非常な混雑を極めた。
10月15日以来独逸帝国銀行が取り付けられた総額は5千万マルクである。
欧州諸国の銀行も皆利子を引き上げた。
東洋移民問題調査 同上
カナダ労働大臣代理キング氏は来る11日からバンクーバーに於ける東洋移民問題の調査に着手する予定
米国大統領候補 9日紐育特派員発
共和党の次期大統領候補者は現在に至るまで決定していなかったが昨今確かな筋から伝わってきた所では、いよいよ疑いなくタフト氏を推薦する様である。最近ニューヨーク地方の党員は、既に候補運動に着手している現ニューヨーク州知事ヒューズ氏に対し不賛成の意を漏らしている。
11月12日
英独関係の改善 11日タイムス社発
ベルリン来電―独逸皇帝の英国訪問に関し独逸の諸新聞は、何れも英独両国関係の改善が現在の様に継続する事を希望している。現在独逸に於いて盛んに行われている最近の英国政治の正当な解釈と称せられるものは、偏見や誤った解釈に過ぎないと一般に認識された。
桑港金融逼迫 10日桑港特派員発
当地方金融界は、表面上は平穏であるがその実非常に逼迫しており、現在納税時期が迫り、その額は1千万ドルに過ぎないが納税が困難であるとして臨時集会を開き、徴税延期を知事に要求している程である。
11月13日
英国における獨帝 12日上海経由ロイター社発
独逸皇帝はポーツマス及びウインブルに於いて大歓迎を受けた。皇后は23日中に英国を去り、17日にオランダ女王を訪問される予定である。
亜人排斥の大運動 11日桑港特派員発
アジア人排斥協会は、本日11日夜役員会を開き、行政と立法両部の注意を引く為に州民の大多数が署名したアジア人排斥請願書を取り纏め、次期国会に提出する事を決議した。尚大統領が教書を発表後、直ちに排斥大会を当地で開き、来年2月を期して全国排斥大会をシャトルに開く由
11月14日
独逸の秋波 12日タイムス社発
ベルリン来電―諸新聞は、英国の官民が獨帝を心から歓迎した事を喜び、特にフォツシラシェ、ツアイツング紙は、英国は独逸と海軍及び通商の競争をするよりも日米両国と海軍及び通商の競争をする方がはるかに厳しい事を知っているのではないかと論評した。
波斯王と帝国議会 13日タイムス社発
テヘラン来電―ペルシャ王は議会に親臨して、誠実に憲法を順守する旨を誓い、有力な議員の一人は議会を代表して国王に尽くすと言明した。
解説:ガージャール朝のペルシャは、1905年12月から開始されたイラン立憲革命運動の結果、1906年12月に憲法が発布されている。しかしペルシャの北部はロシア、南部は英国の勢力圏となっていた。
チモル島の反乱 12日ベルリン特約通信社発
チモール島の土人は又オランダの守備隊を襲撃した。
解説:チモール島はオランダ領インドネシアの東端、オーストラリアの隣にある島で、大東亜戦争初期に海軍落下傘部隊が降下した。
11月15日
日米関係趨勢 13日桑港特派員発
ワシントン来電―今や日米間に戦争が起こるだろうと信じている人は誰も居ず、表面上は非常に穏やかであるが、米国政府部内には移民問題やその他両国の懸案の解決に失望し、一種の暗流が流れている。そして一切の問題を国会開会前に解決する事が大統領ルーズベルト氏の希望であり、タフト氏が日本に着いた時、それとなく日本の外交家に説明したが不成功に終わっている。太平洋沿岸の国会議員は、次期議会に於いてアジア人排斥法案の為に必死に運動する事が予想され、大統領は同案の討議に際して、日本の感情を害すると思われる答弁を避ける事が出来ないのではと憂慮している。
晩香坡暴動損害査定 同上
オタワ来電―バンクーバーに於ける移民官キング氏から国務省に着電した電報によれば、同地暴動事件に関する賠償の損害額が確定した。56件の要求額1万3千5百ドルであったが削減して1千7百75ドルと決定し、日本人も満足した。この賠償金は大蔵省から送付され、直ちに支払われると思われる。
米国属領地防備費 同上
米国陸軍省は次年度の米国本土、ハワイ、キューバ、フィリピン及びプエルトルコの防備守備隊費用として2千3百余万ドルを要求する事に決定した。
11月16日
独帝の訪問論評 15日タイムス社発
パリー来電―佛国新聞及び国民一般の与論は、獨帝の英国訪問が世界平和の為に尽力している英国皇帝の功績に光彩を添え、その目的を完全に達成したものと認めている。
回航艦隊横浜帰港説 14日桑港特派員発
艦隊回航について、大統領は来る18日ボルチモア州ハンプトンローズに赴き、観艦式を行う事が決定した。そして艦隊がサンフランシスコに到着するのは明年4月頃の予定である。又帰路、横浜に帰港するであろうと言われている。
11月17日
独逸植民地補助 16日タイムス社発
ベルリン来電―独逸の歳出入予算によれば、同国の各植民地に支給する補助金の総額は3百万ポンド(3千万円)以上であり、その内膠州湾に対しては53万ポンド(5百30万円)である。
日本人検挙説 15日桑港特派員発
本日16日のバンクーバー来電によれば、カナダ政府の調査委員キング氏は暴動事件及び移民問題の調査に於いて虚偽の申告をしたとして、日本人実業家の主要な者を告発する様オタワ政府に申告しようとしている事が判明し、その日本人は非常に驚いている。なおキング氏は昨日15日夕、突然数軒の日本人商店、会社に赴き、帳簿類を押収して帰った。移民に関する著名な日本人の不正行為が発覚するのではと予想している様である。
摩洛哥問題と独逸 15日ベルリン特約通信社発
佛国政府が若しカサブランカに派遣された独逸委員を承認するならば、独逸は同地での騒乱によって被った列国の損害を調査する委員会に参加する用意がある。そしてこの独逸委員は既に在留独逸人の損害調査を終了している。
11月18日
排日暴動要償談判 16日桑港特派員発
バンクーバー暴動の損害賠償額についてカナダ連邦政府の調査委員キング氏と森川領事との間で論争が起こり、森川領事は日本政府を代表して削減に反対している。両者の間で頻繁に公信が取り交わされているが公表されていず、交渉は何れオタワに移されると思われる。
解説:11月15日、賠償額についての記事があり、要求額よりも相当減額されている。
11月19日
米国陸海軍繁忙 18日タイムス社発
ニュヨーク来電―太平洋に回航する予定の大西洋艦隊は大統領の検閲を受けた後、12月16日いよいよハンプトンローズを出港する予定で、諸般の準備は今や着々と進行中である。
又約6カ月で戦闘艦3隻、装甲巡洋艦2隻、通報艦3隻、潜航艇4隻で編成される予定の第2艦隊を組織する準備も迅速に進行中である。
なお又陸軍省はフィリピン、キューバ、ハワイを始め沿岸各所の基地建設費として2千3百万ドルを要求中である。
摩洛哥内乱 同上
タンジール来電―モロッコ王の軍隊は、王位を狙うその兄ムレーハフネッドの兵をモガドルの付近で破った。賊は多数の死傷者を出し、兵器及び輜重を遺棄して逃走した。
独逸海軍予算 17日上海経由ロイター社発
独逸の海軍予算案は3千万円の増加となっている。但しこの中には最初2隻の筈であった戦艦が3隻、大型巡洋艦1隻、小型巡洋艦2隻及び清国に派遣される予定の河川用砲艦1隻の第1期払込金及び潜航艇の経費350万円を含んでいる。
11月20日
独逸海軍拡張案 18日タイムス社発
ベルリン来電―1908年より1917年度までに独逸海軍の拡張計画表に記載されている新造艦艇の種類は、戦艦17隻、大型巡洋艦7隻、小型巡洋艦19隻である。そして極端な海軍拡張論者は、政府の計画に満足せず、英国の海軍と均衡を保つ為に特に努力するよう政府に勧告した。
米国財救済 19日桑港特派員発
大蔵卿コルテリオン氏は、大統領の承認を受け、経済界救済の為、パナマ運河公債5千万ドル及び大蔵証券1億ドルを発行する旨、昨18日夜正式に発表した。大蔵証券は額面50ドルで3歩利付、銀行紙幣と同様に通用できる。
11月21日
英国海軍政策 20日タイムス社発
ロンドンタイムス紙は、独逸海軍力の拡張計画に対し、英国は2国標準の海軍政策を維持しなければならないと主張し、独逸皇帝が今回我が英国の皇室を訪問されたにも拘わらず、独逸は少しもその政策を変更する意思が無い事を記憶しておかなければならない。必要な場合には英国政府は海軍追加予算を提出すべきであると論評した。
解説:英国の2国標準とは、他の2カ国の海軍力を合わせたものと対抗できる海軍力を維持すべきとする海軍政策である。
日本人追返される 20日上海経由ロイター社発
英領コロンビアから合衆国の国境内に入り込んだ10名の日本人はワシントン州内で逮捕され、追放の為にシャトルに送られた。両国国境40マイルの間は現在厳重に警戒されている。
11月22日
移民問題論評 21日タイムス社発
オタワ来電―移民問題に関する各新聞の論評が盛んである。カナダに到着した今年の移民は、その品質が従来の移民と比較して劣っており、糊口の途にありつけないものが非常に多い。
印度経済危機 20日上海経由ロイター社発
機関士のストライキの結果、東部インド地方の鉄道は全て運転を中止した。その上石炭が非常に不足している為に麻製造業及び海運業も停止の危機に瀕している。
回航艦隊航程 20日桑港特派員発
海軍卿メットカーフ氏は、大西洋艦隊は5月1日頃サンフランシスコに到着の予定であると語った。同艦隊は帰途、スエズ運河を経由するかと問われたのに対し、サンフランシスコ到着後の行動については未だ考えていないと答えた。
解説:この艦隊はGWF(「グレート、ホワイト、フリート」と呼ばれ、戦艦16隻の大艦隊で、1908年10月横浜へ帰港している。フィリピンを領有するアメリカの太平洋に於ける戦力誇示が目的であった。
11月23日
独逸の海軍拡張と佛国 22日タイムス社発
パリー来電―以前佛国首相クレマンソー氏が編集していた新聞ロール紙は、独逸の海軍拡張は主として英国に対抗する為であると言明した。
英国海軍の整備 22日上海経由ロイター社発
ペレスフォード卿は、製塩業会社の大会に於いて英国海軍の整備に関して、次の様な注目すべき演説を行った。
如何なる国であっても若し英国に向かって戦端を開く様な事があるならば、英国海軍は一挙にこれを粉砕する準備が十分に整っている。
解説:これは独逸を意識しての発言である。やがて7年後に第1次世界大戦が始まったが結局ドイツ海軍は潜水艦を除いて顕著な成果を上げられなかった。
米国海軍拡張案 21日桑港特派員発
国会に要求すると思われる新戦艦建造費については未だ公表されていない。しかし主要な海軍当局者は、少なくとも2万2千5百トンの戦艦4隻の建造費4千万ドルが国会を通過する様希望している。
回航艦隊消息 同上
12月16日、大西洋艦隊が出発する際、大統領ルーズベルト氏は観艦式を行う事を公報で発表した。日本が同艦隊の寄港を望んでいる事に就いて、その希望に応ずるかどうかは未定であるが、もしフィリピンに寄港するならば、多分日本にも寄港する様になると思われる。現在はフィリピンへの寄港は未定であるが、多分寄港すると思われ、同艦隊の一部をスビック湾に残して、他はスエズを経由して帰国する事になるであろうと言われている。
11月25日
英国海軍政策 23日タイムス社発
英国海軍大臣は、次の様に明言した。
今後3、4年間、英国の海軍はなお十分安全な地位にある。英国海軍省は細心の注意を列国の海軍に払っており、そして当局者は英国の国防を安心できるような状態にしようと熱心に希望しており、飽く迄その目的を達成する決心である云々
婦人参政権要求 24日上海経由ロイター社発
婦人参政権論者は、その後引き続き内閣大臣に対して熱心に運動しているが、昨日グラッドストーン及びリーヅに於いて催された集会に於いて、その熱度は殆ど頂点に達し、終に解散を命じられた。
婦人は隊伍を組んで、ロンドン及びその他の警察署を襲撃し、選挙権を与えられない婦人が裁判所に於いて裁判を受ける事に反対した。
日本人排斥法案否決 22日紐育特派員発
サクラメント労働同盟は、商工労働同盟から配布された日本人排斥案について討議の結果、現在の状態に於いて日本人を排斥する事は、労働同盟自身の為に極めて不利益であるとの理由によって大多数の反対でこれを否決した。
11月26日
愛蘭刷新策 25日タイムス社発
アイルランド事務大臣ピレル氏はアイルランドの紛争について次の様に述べている。
この紛争を本当に解決する為には、自治政治について、基本で、又最も単純な責任を人民に負わさなければならない。そうでなければ到底解決の見込みは無いであろう。この際プロテスタントであろうとカソリックであろうとを問わず、アイルランドの刷新の為に心を一つにして十分な協力をさせる必要がある。
解説:この対立には800年の歴史があり、カソリック側の政党フェンシン党、軍事組織IRAとも現在やっと解決の緒に就いたばかりである。
独逸海軍費の膨張 25日上海経由ロイター社発
ベルリン来電―独逸の海軍予算案に添付している覚書には、1908年から1917年の10年間の継続事業費は2億08百60万ポンドの増額を示している。1906年の予算からは4千9百30万ポンドの増額であり、この内3千5百90万ポンドは艦船の建造費である。
解説:11月25日の「英国海軍政策」が示す英国が最も注意を払っているのは独逸の海軍である。
11月27日
生活費問題と社会党 25日タイムス社発
ベルリン来電―帝国議会に於いて、生活費増加の問題の討議に際し、社会党の議員は、食物の価格が非常に高騰し、経済的危機が眼前に迫っている事を指摘して、穀物の輸入税を廃止し、外国の生肉輸入に関する規定を今少し緩やかにするよう政府に要求した。社会党のこの議論に対して内務大臣は、物価が高騰しているのは事実であるが労働賃金も同様に上昇していると反論し、穀物輸入税の軽減に反対した。
国際経済関係と米国 26日タイムス社発
ニューヨーク来電―前大蔵卿ショウ氏の意見によると、米国がその財政運用の手段に就いて世界列国の不安を解消するには、今後20年が必要となる見込みである。しかし列国の不安は今回の恐慌により一層その不安感を高めた。
摩洛哥内乱後報 25日ベルリン特約通信社発
モロッコの官兵は、反乱を企てたマザガン市を占領した。
11月28日
佛国海軍紊乱 27日タイムス社発
パリー来電―佛国海軍は今や各部を通じて規律が弛緩し、殆ど無規律の状態である。将校も士卒も団結して国家に忠節を尽くす観念が乏しく、絶えず反目し、蔑視するばかりである。この際根本的に一大改革を断行する必要があると海軍予算委員は、特別な改革委員会を設けるよう政府に要求したとの説がある。
摩洛哥騒乱後報 26日ベルリン特約通信社発
モロッコに於いて2日間にわたる戦闘が行われ、佛軍は8名の、土民は1千2百の死者の死者が発生した。
11月29日
波斯の形勢不穏 28日タイムス社発
テヘラン来電―騒乱が徐々に加わり、テヘラン及びタブリッツ地方の情勢は不穏である。内閣は辞職し、議会の議は少しも入れられず国民党間に重大な騒動が起こる様子があり、兵器の準備さえ行われている様である。
佛国軍制不備 同上
パリー来電―2年兵役制は約5千人の兵員不足を生じ、一方独逸では有力な兵員が頻りに増加する傾向であり、その為佛国に於いて陸軍組織の改正が絶対に必要と見なされている。
解説:第1次世界大戦まで7年
佛国海軍の非境 28日上海経由ロイター社発
海軍予算に関するパリーの報道は、佛国海軍部内の無政府的状態について憤慨して、水兵、機関兵、砲兵並びに管理者等は、お互いに非常に反目し、いがみ合っていると述べている。佛国の海軍は今や世界の海軍の第3位に落ち、この後更に第4位に落ちるのもやむを得ないと報道している。
解説:この新聞の言わんとする所は、英国海軍に次いで第2位であったのが独逸海軍に抜かれ、更に米海軍にも抜かれて第4位になろうとしている。
11月30日
摩洛哥トアルゼリア 29日タイムス社発
パリー来電―モロッコ人がアルゼリアの国境内に進入した為に戦闘が行われた事に関して、佛国陸軍卿は議会に於ける演説で、佛国は国際条約によって、国境付近に於いて自由に行動しうる事を議会が記憶するよう希望し、且つ速やかに軍隊を増援するであろうと報告した。
解説:当時モロッコはフランスの保護国であったが、アルゼリアはフランス領であり、1962年に独立している。
独逸の海軍計画 29日上海経由ロイター社発
独逸海軍大臣テェルピッツ氏は、帝国議会に於いて海軍予算を説明し、ドイツ艦隊は列国に劣らない高い地位に永く立たなければならないと演説した。
摩洛哥戦報 同上
6千のモロッコ人が去る火曜日にパペラッサの佛軍を攻撃し、6時間の戦闘の後に撃退された。この戦いで佛軍の戦死者12名、その内中尉1名を含んでいる。現在増援部隊を急派中である。
桑港検事の日本人観 26日桑港特派員発
当市の腐敗事件告訴人として有名なサンフランシスコ市検事ランゴン氏はニューヨークに於いて次の様に語った。
日本人問題に関して大統領ルーズベルト氏の態度は根本から誤っている。日本人は望ましからざる人種であり、若し支那人と日本人の何れを選ぶかと言えばカルフォルニア人は無論支那人を選ぶであろう。
摩洛哥戦報 28日ベルリン特約通信社発
モロッコに於いて正王アブズール、アシズの軍隊と僭王ムレー、ハツイドの軍隊との間で激烈な戦闘が行われたが、結局正王軍の敗北に帰した。佛国の各新聞は佛国がアルゼリア方面から攻勢を取るべき事を要求した。