期日 | 日本関係 | 期日 | 露清関係 | 期日 | 英米関連 | 期日 | 独仏その他関連 |
10月4日 | 排日党の巨魁 | 10月8日 | 米国品排斥影響 | 10月1日 | 加奈陀首相演説別報 | 10月3日 | 摩洛哥騒乱後報 |
10月9日 | 日本移民と英米 | 10月12日 | 阿片禁止励行 | 10月1日 | 艦隊回航反対論 | 10月8日 | 摩洛哥事件 |
10月9日 | 日本人帰化權疑惑 | 10月13日 | 禁煙令違犯 | 10月2日 | 非日加条約廃棄決議 | 10月11日 | 波斯の騒乱 |
10月14日 | 日加移民談判 | 10月16日 | 支那人入国税廃止論 | 10月4日 | 印度形勢不穏 | 10月11日 | 佛国態度一変 |
10月18日 | 又日本店舗破壊 | 10月5日 | 米国艦隊と太平洋 | 10月18日 | 摩洛哥騒動後報 | ||
10月19日 | 戦闘準備必要論 | 10月7日 | 印度人避難 | ||||
10月22日 | 日加労働談判 | 10月9日 | 愛蘭不穏を加う | ||||
10月25日 | 日加移民問題評 | 10月13日 | 印度労働者窮状 | ||||
10月28日 | 日本教育勅語の価値 | 10月15日 | 比律賓の将来 | ||||
10月28日 | バンクーバー暴動損害問題 | 10月16日 | 米国艦隊一部先発 | ||||
10月29日 | 乱暴なる決議 | 10月20日 | 米国の真意不明 | ||||
10月29日 | 艦隊回航と国務卿 | 10月21日 | 大西洋無線電信 | ||||
10月23日 | 対印度政策 | ||||||
10月25日 | 紐育財界慌乱 | ||||||
10月30日 | 紐育財界現情 |
10月1日
加奈陀首相演説別報 にコロンビア州沿岸に紛争が起こったのである者が条約を破棄すべきであると要求しているが、いやしくも責任を知る者は、決してこの要求に賛成しないであろうと信じる。
艦隊回航反対論 30日タイムス社発
ニューヨーク来電―ニューヨーク、サン紙の社説は、戦闘艦隊の太平洋回航は、結局日本に向かって戦争を挑むものであり、大統領の企図は狂乱の沙汰である。そして議会も敢てこれに反対出来る様には思われないと論評した。
タフト卿談話 30日上海経由ロイター社発
米国陸軍卿タフト氏は、ある訪問客に対し日本と米国とは常に親愛の友邦でなければならない。余が日本に来たのは何らかの使命がある為ではなく、ただマニラに行く途中、旧友を訪問し、旧交を温める為だけであると明言した。
タフト氏は米国がフィリピンを売却する意思があるとの風評を否定した。
加奈陀首相演説別報 29日桑港特派員発
本日29日カナダ首相ラウリール氏はトロントで開かれた製造業者大会に於いて次の演説を行った。
日本人は印度に於ける我が貿易上の強敵である。彼等は条約上大きな便宜を受けており、現行の日加条約は元来製造業者商人の熱望により成立したのである。又日本に対するカナダの貿易は日を追って益々増加しつつある。然るにコロンビア州沿岸に紛争が起こったのである者が条約を破棄すべきであると要求しているが、いやしくも責任を知る者は、決してこの要求に賛成しないであろうと信じる。
10月2日
非日加条約廃棄決議 30日桑港特派員発
オタワ来電―首相ラウリール氏はカナダの産業関係者全体を代表する製造業者協会の決議を受け取った。この決議はカナダの太平洋貿易を発達させなければならないが故に、カナダ全体の利害に鑑みて、日加条約を破棄する様な行動を執ってはならないと記述し、且つ政府に対して軽率な行動を執らない様に勧告したものである。
米国海軍拡張案 30日ベルリン特約通信社発
米国海軍省は更に快速巡洋艦5隻と戦闘艦4隻を新造する計画があり、大統領ルーズベルト氏もこの計画に賛成である。
10月3日
日本移民問題 2日タイムス社発
オタワ来電―カナダ政府は、バンクーバーの移民事務官ミュンロウ氏に対して、日本人に向かって旅行券(内地旅行券?)を要求する事は条約違反である為、これを中止すべき旨命令した。
摩洛哥騒乱後報 1日ベルリン特約通信社発
摩洛哥僭王ムレー、ハビツトは軍隊を率いて、モロッコ王の所在地であるラバートに向けて進軍中である。佛国武官は現在全てフェツツからラバートに集合している。佛国公使レナール氏及びカザランカに停泊中である佛国艦隊の司令官チリベール氏も亦同地に赴く予定である。
独逸は通商の自由を妨害しない事を条件として、佛スペイン両国の軍艦に兵器密輸入を取り締まる為に船舶を臨検する権限を付与しようとする佛国政府の提案に同意した。
10月4日
大統領と回航 米国海軍の将士は、今ニューヨーク、ルイジアナ、テキサス沿岸の海洋と同じ米国内の海洋に向かおうとしている。太平洋への回航は、これら海洋の軍事上の特性を経験させ、その訓練をさせる為に必要なのである。
印度形勢不穏(下院議員の扇動、英国民心の激動) 2日タイムス社発
インドに於ける暴動の実情を調査する為に、現在ベンガル地方を旅行中である英国下院の労働党議員キール、ハルディー氏はインドの現状は露国の現状よりもなお一層悪く、アルメニアの虐殺事件よりも更に残虐であると明言し、更に進んでインドにもカナダ同様の自治を許さなければならないと公言したと報道された。
英国諸新聞はハルディー氏のインド旅行は英帝国の利益に害を与えるとして、氏の言動を非難した。
排日党の巨魁(ノールウエー出身の刑状持)3日タイムス社発
ニューヨーク来電―サンフランシスコに於ける排日運動の首領は
ノールウエー人であり、彼は労働組合評議員の一員で、如何にも労働組合の運動員として似つかわしい男である。彼は1893年ミネソタの偽造事件で有罪の判決を受け、共犯者の中で最も重い禁固刑に処せられた位のしたたか者である。太平洋沿岸に於ける排日的感情は一に彼の扇動に係っている。
大統領と回航 3日上海経由ロイター社発
米国大統領は、米国の現在の戦闘艦隊が常に一か所に止まらなければならないと言う事は、この上更に戦闘艦隊を建造して置く必要があると言うのと同じである。米国海軍の将士は、今ニューヨーク、ルイジアナ、テキサス沿岸の海洋と同じ米国内の海洋に向かおうとしている。太平洋への回航は、これら海洋の軍事上の特性を経験させ、その訓練をさせる為に必要なのである。
10月5日
米国艦隊と太平洋 4日タイムス社発
ニューヨーク来電―大統領はカイロに於いて演説し、戦闘艦隊の太平洋回航は戦争を意味するとの議論を否定し、太平洋の沿岸も大西洋の沿岸と同じく米国領土の一部である。そして艦隊は平時に於いて十分訓練しておかなければならないと明言した。
米国大統領演説別報 3日ベルリン特約通信社発
米国大統領はその演説に於いて、パナマ運河は1913年竣工する予定である、海軍は今一層拡張されるべきである及び営利会社に対する連邦政府の管理権を更に増大する必要がある旨を公言した。
10月6日
摩洛哥騒乱後報 4日ベルリン特約通信社発
モロッコ僭王ムラー、ハビットは佛軍に好意を有するマザガン県知事の逮捕を命じた。又同僭王の使者と称する者が英国に向かった出発した。
独逸植民地懐柔 同上
独領東アフリカのサダニに滞在中である独逸植民地大臣は、土民に重税を賦課してはならないとし、独逸植民地の官憲は十分土民を保護する義務がある事を忘れてはならないと言明した。
米国大統領演説別報 同上
米国大統領は、イリノイ州に於ける演説で、米国艦隊は将来太平洋と大西洋の海面を代わる代わる遊弋する様になるであろう事を期待すると明言した。
10月7日
日本人排斥 5日タイムス社発
オタワ来電―反対党の党首ボルダー氏は日本労働者の排斥に賛成し、コロンビアその他各州共に、白人の労働者に優位な地位を占めさせる為に十分は考慮を払わなければならないと言明した。
米国海軍拡張 同上
ニューヨーク来電―大統領は更に数隻の軍艦を新造する事を発議し、海軍卿は大統領の発議に対し国会は3隻の戦艦を新造する事に同意するであろうと答えた。そして今回提出される予算には3種類の異なる型で快速の駆逐艦を建造する為に、かなり多額の費用をも計上されるとの事である。
印度人避難 5日上海経由ロイター社発
カナダから逃げてきた若干の印度人はワシントン州ダンネルに避難した。これは暴徒の為にカナダ国境から追い払われたもので、彼等は石を投げられ、又小銃も発射された者も居た。但し負傷者は居ない様である。
米国商務卿警告 6日上海経由ロイター社発
ワシントン来電―商務卿ストラウス氏は綿糸製造業者大会に於いて演説した際、いわゆる黄色人種と米国との通商関係が日を追って益々重要となるであろうと警告し、過度に高い関税の障壁を築かない事を勧告した。
10月8日
米国海相の回航談(出発は12月) 7日タイムス社発
ニューヨーク来電―米国海軍卿メットカーフ氏がタイムス通信員に語った所によると、戦闘艦隊が太平洋に回航する目的は、一に只戦時に於ける米国艦隊の実力と真価を決定しようとする事にあるのみである。艦隊の主要な部分は12月に出発する予定であり、この様に出発期日が延期したのは、諸種の準備の為に必要であり、已むを得ない事であった。
摩洛哥事件 7日上海経由ロイター社発
モーニング、ポストに届いたタンジール特電によると、首領ライセリーはマクリーン将軍の釈放条件を2件に減らし、一つは自己及び家族を英国の保護に委ねる事、二つは賠償金3万ポンドを請求する事とした。英国政府は請求通りの保護を同人に与え、又後日モロッコ王から返済するとの保障を得て、その賠償金を支払う意がある。
米国品排斥影響 6日ベルリン特約通信社発
米国政府は東亜に於ける綿花貿易の重要である事を説明し、米国品排斥の結果、米国の綿花輸出貿易は2千万ドルの損害を受けたと明言した。
解説:清国人の入国禁止の結果、清国では米国製品の排斥運動が起こっている。
10月9日
日本移民と英米 8日タイムス社発
ロンドンタイムスは、英米両国は、日本移民問題に対して同一の地位にあるとの米国人の断定に反対し、移民問題を解決する上に於いて英国は米国の伴侶であると考えている一部の米国人に向かって、日本は英国の同盟国である。故に英国は米国と同一の地位にいる事はあり得ないと反論した。
日本人帰化權疑惑 6日桑港特派員発
ペンシルヴァニア州ジュニアタに於いて10年間居住し、帰化權を得た勝沼という日本人医師は、ハワイに於いて官有地払い下げ競争入札に加わり落札した。しかし同地知事フルール氏は、日本人は市民に非ずとして土地の引渡を拒否した。その結果帰化の効力について試験的訴訟を起こそうとしている。
10月10日
愛蘭不穏を加う 9日タイムス社発
アイルランドに於ける農民の暴動や騒動は次第に激しさを加えており、アイルランド議会党は、何よりも先に満足すべき新土地法案が次期議会に提出されなければ、アイルランドの施政は到底不可能となるであろうと報じている。
解説:北アイルランド紛争は9百年の歴史があり、現在も完全には解決していない。
印度又もや飢饉 9日上海経由ロイター社発
シムラ発ロイター電によれば、インドに於ける収穫の見込みは極めて悪く、至る所で困窮の声があり、大規模な救援を行う必要に迫られるとの声がある。
今日からブログ形式を廃止する。
10月11日
波斯の騒乱 9日上海経由ロイター社発がーウエー、ウレーミヤ紙に送った電報によると、全部の鉄道が暴徒のものとなり、商業は停止状態となっているが官憲は無力であり、如何ともする事が出来ない。聖職者は至る所で外国商品の排斥を唱え、商人は熱心に援助を求めている。
佛国態度一変 9日上海経由ロイター社発
モロッコ駐在佛国公使レノール氏は信任状を国王に奉呈し、その際レジオン、ドノール第十字勲章を国王に贈呈した。又正当なモロッコ王と僭王に対する佛国の態度が完全に一変した事が分かる。
僭王ムレーハビットの特使はロンドンに於いて一私人としての扱いを受けている。
10月12日
佛国非軍備主義
パリー来電―新聞記者の非軍備主義に対し、政府はいよいよ訴訟の手続きを始めた。
佛国軍隊の中で謀叛を起こした者がいる。数種の刊行物が差し押さえられた。
阿片禁止励行 11日北京特派員発
本日11日付で上諭があった。
昨年官吏が阿片を吸う事を禁止し、その癖に染まっている者は自ら率先して期日を定めて禁断せよと諭した。しかし叡親王等は直ちに禁煙したが今だに禁煙しない者がおり、厳罰に処しなければならない所であるが、多年の労を思い、その職務を停止し、他の人を派遣して代理させる事にし、その間に迅速に禁断するならば旧職に復帰させる事が出来る。
地方管理は更に3カ月間猶予を与え、上官はこれを監督して禁断を実行しなければならない云々
10月13日
印度労働者窮状 12日タイムス社発
オタワ来電―印度政府が警告を発しているにも拘らず、多数の印度人労働者がバンクーバーに入り込み、その中には市街で乞食となっている者が少なからず居る。
禁煙令違犯 12日北京特派員発
叡(はい)親王、陸寶中(りくほうちゅう)、陳名侃(ちんめいかん)等は吸煙中、職務を停止され、各代理者が任命された。
解説:昨日の新聞では、叡(はい)親王は禁煙したとあったが誤りの様である。
10月14日
日加移民談判 12日上海経由ロイター社発
カナダ労働大臣ルーユウ氏及び委員キンダ氏は排日的暴行に対する損害賠償問題を処置する為に至急バンクーバーに赴く予定である。一切の問題は公正に取り扱われる事になるであろう。なお又国務次官ボープ氏も労働大臣と同行する旨オタワに於いて発表された。
10月15日
回航艦隊愈出発 14日タイムス社発
ワシントン来電―エヴァンス提督の率いる太平洋艦隊の先駆けとして装甲巡洋艦テネシー及びワシントン(共に1万4千5百トン)の両艦は愈々バージニア州のハンプトンローズを出発した。但し来春2月以前にはサンスランシスコに到着しないと思われる。
比律賓の将来 同上
ニューヨーク来電―フィリピンの行政機関は今回タフト卿の訪問により完備されるであろう。かくして米国政府はフィリピンの土民に自治の責任を負わせ様としている。同島を売却する事は土民の利益のみならず、又米国にも不名誉である。
印度鎮圧処分 同上
インド事務大臣モーレー氏は、急いで新たな法律を制定して、謀反を扇動する様な集会を禁止する必要を認めている。そして政府は叛乱扇動者にこの上何等の権利をも認める意思が無いと信じるべき確固たる理由がある。
10月16日
米国艦隊一部先発 14日上海経由ロイター社発
米国巡洋艦テネシー、ワシントンの2隻は回航艦隊の先発として太平洋に向けハンプトンロードを出発した。同艦隊は南アメリカを迂回してマグダレナ湾に出て、同方面に於いてカリフォルニア、サウスダコタの巡洋艦と会合して、演習を行う予定である。
支那人入国税廃止論 14日桑港特派員発
オタワ来電―来月開会のカナダ議会には従来支那人に賦課されていた一人5百ドルと云う禁止税同様の入国税を撤廃する案が出ると思われる。その理由は東洋人問題解決の最良方法は多数の東洋人を入れる事である。支那人に重税を課してその入国を拒絶しなかった以前は日本人及び印度人に対して反抗運動が無かった事を考えれば、この国法は東洋人排斥熱を徴発するものと知らなければならない。無尽蔵のコロンビア州の富源はこれら多数の東洋の労働者を急いで必要としていると言っている。
10月17日
又日本店舗破壊 16日タイムス社発
ニューヨーク来電―又もやサンフランシスコに於いて反日暴動が発生した。事の起こりはある日本人クリーニング店の店主が、酩酊して該店の窓を打ち壊した一白人を取り押さえた事で始まった。この事を知った暴徒はクリーニング店を襲撃したのである。この騒動の為日本人12名、白人20名が負傷した。尤も白人側の負傷の大部分は、必死に働いた巡査の棍棒に当てられた結果である。そして暴徒は漸く解散させられた。
モロッコ王は僭王が欧州に派遣した特使の財産を始め、その妻子を逮捕した。そして夫人と子供等は極めて惨憺とした取扱を受けている。
解説:10月8日の記事「摩洛哥事件」に英国との交渉内容について書かれている。
10月19日
戦闘準備必要論 17日ニューヨーク特派員発
米国新聞界の傑物ハースト氏は15日の新聞で署名入りの大論文を掲載し、その論文で次の様に述べている。
「戦争の準備を怠れば米国は他日一大国難に遭遇する事になるであろう。故に絶えず準備をする必要がある。そしてこの問題は国家問題であり、党派問題ではない。日本は米国が大変な金満国であると思っており、若し米国と開戦すれば多大な利益が得られると信じていると思われ、日本は戦争の好機を待って、米国から多大な利益を得る事を希望している。東西文明の違いは到底戦争を免れる事は出来ない。戦争を避ける方法は唯一つあり、他になし。フィリピン、ハワイを保護するに足る十分な艦隊、即ち日本の艦隊を威圧する事の出来る大艦隊を派遣するのみである。」(長文の為に一部抜粋)
10月20日
平和会議成果 18日上海経由ロイター社発
ハーグ来電―平和会議は最終の議事を終わり、本日調印されたのは条約13種、宣言3個及び決議5通である。
米国の真意不明 18日ニュヨーク特派員発
米国の東洋政策には確かに一つの暗流がある。即ち艦隊の回航が確定しているにも拘らず上流人士の中でこれを妨げようとする者及び有力な新聞でありながら反対を唱えるものがあり、これらは必ず何らかの原因があるに違いない。
ニュヨークサンの報道によれば、米国陸海軍部内の多忙さは尋常ではないが、その理由は推測する事が出来る。それは最近フィリピンや太平洋岸の施設の整備及び新兵訓練に忙しい等で意外な事が少なからずある。米国参謀部も日本が最近欧州で頻りに兵器を購入している事を怪しんでいる様であり、又米国の前海軍卿ロング氏は、大統領ルーズベルト氏が現在執っている政策は、あたかも米西戦争前の政策に似ていると述べている。
解説:この様な流れが1919年の米海軍の対日戦争計画であるオレンジプランに結びついた。
10月21日
大西洋無線電信 20日上海経由ロイター社発
大西洋無線電信開通の当日、取扱数数は総計1万4千語であった。
英国皇帝はカナダ総督グレー伯と当日無線電信を交換した。総督は大西洋の無線電信の開通は、カナダと母国との結びつきを一層するであろうと今回の成功を祝した。
綿花需要者の警告 同上
シカゴ来電―欧州綿花組合委員の宴会に於いて、マカラ氏は米国の綿花栽培業者に次の様な警告を行った。
綿花の価格が高すぎる時は、米国の輸出は減少し、英仏その他の諸国は勢い自国の植民地に於いて綿花を栽培する事を考えるようになるであろう。
最近暴行事件成行 18日桑港特派員発
当地における最近のクリーニング店に対する暴行事件に対する嫌疑で更に2名が逮捕された。当時、現場で逮捕された暴漢の裁判判決は、明日19日判決がある予定であるが、裁判官は、選挙前なので労働者に媚びている為に正当な判決が行われるかどうか疑問である。
10月22日
桑港暴行損害 20日桑港特派員発
洋食店の損害賠償事件について、原告の要求した間接損害額2千ドルは判事から撤回を命じられた。今やただ直接損害額8千5百75ドルの争いとなったがサンフランシスコ市法律顧問は被告を代表して、最初の損害は被害者の不注意の為に生じ、且つ暴動中、市に対し何ら急報をしなかった為であり、市は直接損害の責任は無いと弁護書を提出した。
日加労働談判 同上
オタワ来電―若し日本が移民制限を承知しなければカナダは日加条約を改定する為に労働大臣シュミュクス氏に日本で粘り強く交渉させるつもりである。その為労働大臣シュミュクス氏は、英国政府の信任状を得ようとしてモントリオールを出発した。
10月23日
対印度政策 22日タイムス社発
インド事務大臣モーレー氏はインドの問題に関して、一大演説を行った。英国政府は空論家の意見に動かされて、軽率に改革案を提出せず、又極端な制圧論者の主張に従って無益な抑圧手段をも採らない決心である。第一の急務は秩序を回復し、暴動を取り鎮める事であると明言し、熱心に公明正大な主義を主張した後、現在の情勢は決して危険という程ではないと断言し、最後に印度騒乱の根源は人種的問題である事に深く注意する事を希望した。
10月24日
平和会議効果 22日桑港特派員発
国務卿ルート氏は、ハーグ平和会議の成果を評して次の様に述べた。
余が成功を予想していたものは全て成功した。第一回平和会議に比べて、如何に進歩したか見てもらいたい。世界永遠の平和に貢献する上で重大な意義がある。最も注目すべきは文明各国が相互に悪感情を去り世界の公論に耳を傾けた事にある等
解説:7年後に第一次世界大戦が始まった。
米国艦隊回航問題 22日ベルリン特約通信社発
米国新聞「サン」は艦隊の太平洋回航を強烈に批判した。又英国新聞モーニングポストに届いたワシントン通信によると、大統領ルーズベルト氏は艦隊回航の件について関係列国の意向を問い合わせたと言っているがしかし独逸政府は、かってその様な照会に接した事は無い様である。
10月25日
日加移民問題評 24日タイムス社発
ロンドンタイムスは、カナダ労働大臣レ―ユー氏の使命に就いて次の様に論評している。
日本国民は日露戦争の戦役の為に被った財政困難を救済する上で、既に多くの仕事を有している。現に韓国に日本人の移住を奨励中である事はその一つの証左である。今差し迫って必要の無いカナダ移住に就いてあれこれ論評をする必要を認めていない。
紐育財界慌乱 23日桑港特派員発
預金6千万ドルを有し、ニューヨーク第2の大金融機関である「ニッカーポッカー」トラスト会社は、昨22日猛烈な取付を喰い、1分間に4千4百44ドルの割合で約3時間支払いを継続の後に、終に支払いを停止した。その影響を受けて3つの株式取引所が破産し、全ての株券が5ドル乃至9ドル暴落した。大蔵卿ニューテリュー氏はワシントンからニューヨークに急行してモルガン氏を始めとする主要な銀行家と善後策を協議中である。
10月26日
紐育財界形勢 24日タイムス社発
華盛頓来電―その後又ニューヨークに於いては一つの銀行が破たんしたにも拘らず、大蔵省は財界の情勢を楽観視している。現在の恐慌は理事が不信用の行為を行った23会社の状態とニューヨーク市債の基礎となり得る或る株券及び担保品の価格が近年割安となった事に起因するものである。しかし各地方の景気は好況であるので遠からずして地方の過剰資金がニューヨークに回り、金融ひっ迫を回復する様になるであろう。
日加親交曙光 24日上海経由ロイター社発
モントリオール来電―レミュー大臣は日本に向けて出発の前夜、送別会の席上で次の様な演説を行った。
余の日本訪問は日加両国民の親交の曙光となるであろう。英帝国の保護の下で極めて民主的な政策をとるカナダは、非常に古く、且つ卓越した歴史を有する日本に対し、両国相互の利益を図るのに最も適切な措置に関し速やかに協議する為、腹蔵なくその意見を呈示する事になるであろう。
10月27日
佛国軍備問題論戦 26日タイムス社発
パリー来電―代議院は国防問題を討議したが、陸軍予算委員長の報告によれば、東洋各地の要塞に対しては既に充分な軍需品及び糧食を供給してあるとの事である。
国民党議員2名は軍隊組織の不備を指摘したが、陸軍卿は軍備悲観論者の主張に反論して、その根拠の無い旨を言明した。
かくして代議院は現在の陸軍に信頼し且つ内閣を信任する旨を議決した。
艦隊回航と国会 25日桑港特派員発
華盛頓来電―大西洋艦隊が太平洋に止まる期間は、国会の決議に因って決定されるであろう。大統領ルーズベルト氏は2~3カ月間止まらせる意見であるが国会の決定する経費の支給額によってはその期間に長短があるのは免れない。回航は海軍部内では歓迎されつつあり、準備は遅滞なく進行中である。
桑港市長選挙形勢 同上
当市長候補者テーラー氏は声望が高く、当選は間違いない。反対派は同氏が日本人に好意を有し、当地の日本人一同が同氏の再選を希望するのみならず日本の諸新聞も亦同氏の再選を希望していると、労働者の感情に訴えて当選を妨げる様に努めつつある。
10月28日
日本人排斥法案 26日桑港特派員発
サンフランシスコの日韓人排斥協会幹事は、両院議員との間で密かに協定が整っているので、次期議会では日本人排斥法は、確実に通過すると思うと述べた。
日本教育勅語の価値 同上
シカゴの教育会長シュナイデル氏は、相当以前から我が国の教育勅語を敬愛していたが、この度我が政府に要請し、写本1本を受け取り、同地小学校の倫理教科書とする事を提案した。多分採用されるものと思われる。
バンクーバー暴動損害問題 同上
オタワから派遣されたキング氏は、調査結果を次の様に述べた。
日本人の要求した暴動損害賠償額は、4分の1に削減さえるべきと思われる。日本人は家主ではないのに家屋の損害額を要求した。もし日本人が家主であれば連邦政府が支払う義務があるが、借家人に対して家屋の損害を支払う義務は無い。
10月29日
乱暴なる決議亜細亜人排斥と日加条約廃棄の要求 28日タイムス社発
バンクーバーの我が社の特派通信員の電報によると、バンクーバー市会の財政委員会は兎に角、一時アジア人を退去させる事を要求し、一方連邦政府に対して日本との条約を廃棄する事を要求した。なお同通信員はこれに付記して、当地に於ける神経過敏なある一派はカナダが今にもアジアに併合されようとしていると杞憂し、印度人の如きは甚だしい虐待を受けていると述べている。
紐育財界沈静 28日上海経由ロイター社発
ニューヨークの資本家はヨーロッパ及び南米から正金が輸入される見込みがある事により次第に楽観的となってきた。
昨日は重要な支払い停止は一か所もなかった。
艦隊回航と国務卿 27日桑港特派員発
昨26日青木大使が国務卿ルート氏と会見の後、艦隊の太平洋回航に就いて日本として何か異議があるかと質問した者に対して、ルート氏は日米の関係は米国艦隊の太平洋回航により害される様な事は無い。これは英米及び佛米の関係が大西洋に米国艦隊がある為に何らの不都合が無いのと同じであると述べた。
10月30日
紐育財界現情 28日紐育特派員発
現在恐慌は沈静化しているがある種類の株券は依然として下落の傾向を持続し、未だ回復の状況ではない。その為大衆の疑惑は容易に解けていない。28日には大雨にも拘わらずアトラストラスト会社の門前には取付人が山を成している。ある専門家の説によれば大恐慌の火元とも云うべきニッカー、ポッカー銀行が当初7百万ドルを支払ったのみで直ちに支払いを停止して閉店した事は、同銀行は平素信用があっただけに一層大衆に非常な驚きを与えたものである。若し当初、アメリカトラスト会社が現在2千万ドルの預金を全て払い出しているのと同じ様な処置をしていたならば決して今回の様な大恐慌を来さなかったと言える。
10月31日
日加移民問題(加奈陀労働大臣出発) 30日タイムス社発
バンクーバー来電―郵政兼労働大臣ルミユウ氏は昨日火曜日、日本に向け出発した。そして移民問題解決の方法については成案があると思われる。
紐育財界回復 同上
ニューヨークの財界は着々と通常に復帰中であり、支払いを停止した各トラスト会社及び銀行は次の月曜から再び業務を開始するものと思われる。
米国の救急策 29日ベルリン特約通信社発
米国大蔵大臣及び大統領は、財政上の危急を救う為に止むを得なければパナマ運河開削費を銀行預金とする事を協議中である。