期日 | 日本関係 | 期日 | 露清関係 | 期日 | 英米関連 | 期日 | 独仏その他関連 |
1月5日 | 日露談判真相 | 1月1日 | 日露談判現情 | 1月3日 | 日本人の憎き所以 | 1月7日 | 潜航艇頓数増大 |
1月6日 | 在韓日本人評 | 1月1日 | 支那人排斥法改正案 | 1月5日 | 印度の排英運動 | 1月10日 | 独逸植民奨励 |
1月8日 | 朝鮮米輸出絶望 | 1月7日 | 革命派と留学生 | 1月10日 | 途方もなき風説 | 1月11日 | 教院会堂利用策 |
1月9日 | 薩摩艦竣成期 | 1月11日 | 莫斯科の危機 | 1月11日 | 阿片輸入商の哀願 | 1月14日 | 独逸植民政策 |
1月24日 | 西園寺首相演説評 | 1月11日 | 排米運動鎮圧 | 1月12日 | 排日運動 | 1月18日 | 通商条約批准 |
1月24日 | 又復不法処分 | 1月13日 | 邦人帰化拒絶 | 1月19日 | 摩洛哥兵の乱暴 | ||
1月26日 | 移民上陸陸問題 | 1月16 | 正々堂々の論 | 1月19日 | 日加条約批准別報 | ||
1月26日 | 日本人問題多端 | 1月17日 | 学童問題又起訴 | 1月23日 | ジャマイカ事件 | ||
1月30日 | 面白き主張 | 1月18日 | 排日運動の影響 | 1月28日 | 独逸総選挙結果 | ||
1月19日 | 代議士の政論 | ||||||
1月20日 | 桑港事件提訴 | ||||||
1月21日 | 米国関税政策変更別報 | ||||||
1月22日 | 震災地と英本国 | ||||||
1月25日 | チャーチル氏 | ||||||
1月27日 | 又々排日決議案 |
明治40年1月
1月1日
日露談判現情 新条約は、未だ協定の運びに至っていないが、双方の主張は、順当な経過をたどりつつあるものと認めることができる
支那人排斥法改正案 米国大統領は、清国人排斥案の改正を提議し、同案は既に議会に提出されたと広東及び香港に電報があった。
日露談判現情 31日上海経由ロイター社発
日露通商談判の現状に関して、露都に於いて発表された露国政府の文書の中に、新条約は、未だ協定の運びに至っていないが、間違いなく双方の主張は、順当な経過をたどりつつあるものと認めることができると明記されていた。
支那人排斥法改正案 31日上海特派員発
在米清国人から、米国大統領は、清国人排斥案の改正を提議し、同案は既に議会に提出されたと広東及び香港に電報があった。広東の清国人は、このまま見過ごすならば、前年の運動が水泡に帰するとして、先日、米国輸入品の排斥運動を試みたが、昨日30日、この問題について会議を行った。
1月3日
日本人の憎き所以 カフフォルニアの住民は、いずれ日本と戦わざるを得なくなるであろうと確信している。日本は、フィリピン及びハワイをその手に収めようと欲しており、
桑港事件の前途 連邦政府の権利と各州の主権に関する一大論争を含んでいる。しかし米国の善意と日本の機智とでこの問題に関して、必ず満足な解決策を発見するに至るであろう。
日本人の憎き所以 2日ロンドン特約通信員発
タイムス紙に達したワシントン特電によれば、カフフォルニアの住民は、一般的にいずれ日本と戦わざるを得なくなるであろうと確信している。日本は、フィリピン及びハワイをその手に収めようと欲しており、ただ現在、直ちに一撃を試みることができないのは、その財政が不十分な為である。
又日本人が当地で憎悪されるのは、その商工業上に有する才能を嫉妬される為である。彼等は、料理店を開き、食料品店を商い、果実を作り、一つとして成功しないものはない。その為米国の富豪中、到底これと競争する事ができなくて、その仕事のやり方を変えた者まで現れている。
桑港事件の前途 2日ロンドン特約通信員発
タイムス紙は、その社説で次の様に述べている。
現在大統領の解決を待っている問題は、極めて重大なものであり、これを軽視する事はもっての外の誤りである。この問題の中には、連邦政府の権利と各州の主権に関する一大論争を含んでいる。しかし米国の善意と日本の機智とでこの問題に関して、必ず満足な解決策を発見するに至るであろう。
1月5日
印度の排英運動 インドに於いては、英国の頸木を脱する事を目的とする運動が漸く盛んとなり
日露談判真相 日露両国間に於いて解決していないのは、漁業条約のみである。
印度の排英運動 4日サンフランシスコ特派員発
インドに於いては、英国の頸木を脱する事を目的とする運動が漸く盛んとなり、速やかにこれを鎮圧する必要があると伝えられている。
日露談判真相(本野駐露公使の談話)2日ロンドン特約通信員発
パリー来電―本野駐露公使は、タン新聞の記者に次の様に語った。
日露両国間に於いて解決していないのは、漁業条約のみである。議論となっているのは、河川及び入江という文字の解釈についてである。この問題は、両国政府に任命された専門委員の手で、先日から審議中で、調査は既に終了しているので最早何も心配していない。
1月6日
在韓日本人評 佛国新聞タンの京城通信員は、韓国に於ける日本人移住民を称賛している。
独逸政戦 宰相ビューロー公の宣言書に対する独逸諸新聞の論評は、概して政府側に不利である。特に保守党の諸新聞は、急進党との連携を成立させる上で、宰相の宣言に反対している。
在韓日本人評 5日ロンドン特約通信員発
佛国新聞タンの京城通信員は、韓国に於ける日本人移住民を称賛している。日本人は、欧州の諸国民が一度は犯した我利惨忍な闘争を行わない事を取り上げて、その原因を国民的訓練の成果であると指摘している。
解説:我利惨忍の四文字熟語は無いが、自分たちの利害のみ考え、無慈悲な事を平気でする意味と思われる。
独逸政戦 5日ロンドン特約通信員発
宰相ビューロー公の宣言書に対する独逸諸新聞の論評は、概して政府側に不利である。特に保守党の諸新聞は、急進党との連携を成立させる上で、宰相の宣言に反対している。
急進党は、宰相の発表した宣言書の口調が、如何にも講釈的であることを喜ばない。しか
し宰相の目的は、保守党と急進党を提携させる事により、社会党の進出を妨害しようとする事にある。
1月7日
革命派と留学生 革命派が日本に於いて留学生を扇動する事を探知して、取り締まりを厳重にするように監督者に命じた。
潜航艇頓数増大 諸外国の潜航艇に比して、著しく卓越したものを建造する目的で、800トンの潜航艇を4隻建造するよう命じた
革命派と留学生 6日上海特派員発
清国政府は、革命派が日本に於いて留学生を扇動する事を探知して、取り締まりを厳重にするように監督者に命じた。
潜航艇頓数増大 内国電報6日付
佛国海軍卿は、その構造及び兵員の訓練教育等全ての点に於いて、諸外国の潜航艇に比して、著しく卓越したものを建造する目的で、1906年度に竣工した400トン艇の成績を調査中であったが、昨日掲載されたパリー特電によれば、今回いよいよ800トンの潜航艇を4隻建造するよう命じたと報道された。
1月8日
満州列国会議 清国政府は、満州問題に関し列国会議を開催する意思がある。
朝鮮米輸出絶望 最近、米穀の輸出は、全く休止しているが、これは、帝国政府の輸入税の付加と韓国の国民生活程度の向上に原因がある。
満州列国会議 5日ベルリン特約通信社発
清国政府は、満州問題に関し列国会議を開催する意思がある。列国は清国から商務全権の派遣について照会を受けるであろうと天津から報道された。しかし独逸政府は、この事について何らの通知にも接していない。
朝鮮米輸出絶望(某当局者談)内国電報7日発
現在韓国唯一の国産品は、農産物であり、同国輸出額の約8割を占めている。その中で米は、輸出総額に対して4割を占めている。しかし最近、米穀の輸出は、全く休止しているが、これは、帝国政府の輸入税の付加と韓国の国民生活程度の向上に原因がある。
日露戦争中の鉄道工事やその他の邦人の事業に投資するものが多く、従って彼らの財政を潤沢にし、平安や咸鏡の山地にも米を商いし、米飯の美味に慣れた為に米価の騰貴を来し、一方平安北道の様な米食をする人が少ない地方も、各地に兵站部が置かれた為と京義線工事に諸郡の人民を徴募した事により、従来清川江を下って来た米穀も完全に途絶するに至った。又一例をあげれば仁川から大阪に米を輸出する場合には、輸入税の他、輸出税、運賃等一石について3円340銭を科せられ、仁川相場10円40銭位のものも大阪で13円780銭となってします。大阪での相場が12円10銭内外であり、到底この点でも輸出は論外である。
解説:清川江は、平安北道を通り黄海に流れる河川である。
1月9日
薩摩艦竣成期 全部の艤装が終了するのは、41年度末までを要する様であるが、経費の都合上、或いは42年度になるかも知れないと言われている。
薩摩艦竣成期 内国電報8日発
横須賀軍港に於いて進水した戦艦薩摩は、同工廠の手によって全ての艤装が終了後、佐世保鎮守府に引き渡される予定である。現在同艦の工事は、横須賀軍港第一区内に係留のまま行われているが、艦体の傾斜試験を行う為、近々第4ドックに入渠の予定である。又全部の艤装が終了するのは、41年度末までを要する様であるが、経費の都合上、或いは42年度になるかも知れないと言われている。
1月10日
途方もなき風説 日本軍人5百余名がハワイに来たと大評判となっている。
独逸植民奨励 学者、教授、その他著名な人士の賛成を得て、植民を奨励する新運動が起こっている。
途方もなき風説 9日桑港特派員発
日本軍人5百余名がハワイに来たと大評判となっている。又2千の日本人がメキシコ国境を越えて、米国に入ろうとしていると伝える者が居た。
独逸植民奨励 9日ロンドン特約通信員発
ベルリン来電―学者、教授、その他著名な人士の賛成を得て、植民を奨励する新運動が起こっている。その趣意書に述べられている事は、独逸の海外における利害関係が漸く重大な問題となるのは、その国民的思想、貿易航海の発展に伴う自然の結果である。独逸人たるものは、帝国が決してその世界の強国たる地位を捨てるべきでない等である。この趣旨により、植民政策に関する知識を一般社会に普及する為に講演会を開く予定である。
1月11日
莫斯科の危機 モスクワは、今や将に無法地帯の様になろうとしている。
教院会堂利用策 明け渡しとなったカトリック教の教会及び枢機卿住宅等を教育上の目的に使用する
排米運動鎮圧 広東総督は、米国排斥運動を教唆する内容を新聞紙上に掲載することを禁じ
阿片輸入商の哀願 主要な阿片輸入商である英人13名は、自分達が損害を受けない程度に、徐々に実行されるよう
莫斯科の危機 10日ロンドン特約通信員発
モスクワ来電―革命党の兇暴な行為は、非常に農民を動乱させ、モスクワは、今や将に無法地帯の様になろうとしている。
教院会堂利用策 10日上海経由ロイター社発
佛国内閣議長クレマンソー氏は、明け渡しとなったカトリック教の教会及び枢機卿住宅等を教育上の目的に使用する事とし、パリーの有名なサンシュルヒス教会の博物館をルクサンプール博物館の拡張に使用する事に決定した。
解説:明治39年12月にカトリック教は、フランスから排斥された。関連記事が12月16日「佛国政教紛憂」にある。
排米運動鎮圧 10日上海特派員発
広東総督は、米国領事の要求を容れ、米国排斥運動を教唆する内容を新聞紙上に掲載することを禁じ、且つこの運動の首謀者の捕縛を命じ、尚又同様の目的の為に前年集まった醵金は、慈善事業以外に使用することを禁じた。
阿片輸入商の哀願 同上
当地の主要な阿片輸入商である英人13名は、次の上申を英国領事に請願した。
毎年印度から輸入されるアヘンは、5千万テールであり、現在上海及び香港の在荷だけでも約1千万テールある。いよいよ阿片禁止を実行するとしても自分達が損害を受けない程度に、徐々に実行されるよう担当官庁に通知していただきたい。
1月12日
排日運動 サンフランシスコのクロニクル紙は、日本人の土地所有権を奪い、その進路を遮断せよと州議会に勧告した。
昨今の彼得堡 頻発する暗殺に対して、如何に防衛を厳重にしてもその成果が無い為、官吏社会は、名状することのできない混乱状態に陥り
排日運動 11日桑港特派員発
サンフランシスコのクロニクル紙は、日本人の土地所有権を奪い、その進路を遮断せよと州議会に勧告した。即ち外人の土地所有を禁止すれば、実際上日本人の土地所有を禁止する事ができ、日本政府は、これに苦情を言いだす事は出来ないし、他の外人は、米国に帰化すれば、何らの支障もないであろうと云う主張である。
サンフランシスコ州議会議員ゴロン氏は、評判の悪い日本移民制限法案を、カルフォルニア選出の議員から国会に提出しようとしているが、サンフランシスコ選出の他の議員は、不賛成である。これに対して日本人協会は、領事と相談の上、運動を起こした。
昨今の彼得堡 11日ロンドン特約通信員発
最近頻発する暗殺に対して、如何に防衛を厳重にしてもその成果が無い為、官吏社会は、名状することのできない混乱状態に陥り、近々ツアルスコエ宮殿で特別御前会議を開き、従来よりも一層激烈な制圧手段を採る事について協議される予定である。
1月13日
邦人帰化拒絶 テキサス州エトバサに於いて、多数の日本人が帰化を申請したが拒絶された。
独逸植民政策 今や世界中の至る所で、原料品又は製造品の販路を独占しようとする傾向がある。米大陸統一運動及び新強国日本の商業政策の如きは、即ちこれである。
阿片禁止と英国 英国は、今後9年以内に、少しづつ阿片輸入を低減し、最後にこれを停止したいと考える。
邦人帰化拒絶 11日桑港特派員発
テキサス州エトバサに於いて、多数の日本人が帰化を申請したが拒絶された。帰化することのできるのは、白人種及びアフリカ人種のみである。帰化法に関しては、従来判事によって説が異なっていたが今後は、一致すると当局者は語った。
独逸植民政策 11日ベルリン特約通信員発
独逸植民局長テルンブルヒ氏は、商工協会に於いて、独逸植民地の商業について次の演説を行った。
今や世界中の至る所で、原料品又は製造品の販路を独占しようとする傾向がある。米大陸統一運動及び新強国日本の商業政策の如きは、即ちこれである。そして益々植民地に資本を投資することを勧めた後、植民問題は、主として鉄道問題である。独逸人はその信条のなんたるかを問わず、皆協力してこれを解決しなければならないと結論した。
阿片禁止と英国 12日北京特派員発
英国政府は、清国政府の提案する阿片禁止の方法に対して次の回答を送った。
英国は、今後9年以内に、少しづつ阿片輸入を低減し、最後にこれを停止したいと考える。しかし清国が若し阿片禁止を励行しないならば、英国のみがこの方法を採る事は出来ない。
解説:1月11日「阿片輸入商の哀願」に関連記事があり、阿片輸入商が徐々に阿片輸入量を減らすよう訴えている。
1月14日
独逸植民政策 今や英米日の三国は、独逸を凌駕して、着々と世界の商業権を掌握しつつあり、独逸がこれに対抗する途は、唯植民地の発達を奨励することにあるのみ。
満鉄重役視察 中村満鉄副総裁及び野々村、犬塚両理事の一行は、明日14日朝、当地を通過し、撫順に至り、同地を視察し
独逸植民政策 12日上海経由ロイター社発
独逸植民局長デルンベルヒ氏は、商業会議所連合会で次の演説を行った。
植民政策は、労働問題、多数国民の生活問題及び商工業に対する独逸資本の使用法の解決を意味する。又今や英米日の三国は、独逸を凌駕して、着々と世界の商業権を掌握しつつあり、独逸がこれに対抗する途は、唯植民地の発達を奨励することにあるのみ。
満鉄重役視察 13日瀋陽特派員発
中村満鉄副総裁及び野々村、犬塚両理事の一行は、明日14日朝、当地を通過し、撫順に至り、同地を視察し、別れて中村副総裁は営口へ、他の理事は北行して、新民屯を視察し、直ちに大連に引き返す予定である。
11月15日
人種的憎悪 元老院議員チルマン氏の演説は、アメリカ全土を通じて、蒙古人や印度人や黒人である事を問わず、これらに対する人種的憎悪の感情を、疑いなく呼び起こすであろう。
露帝の真意 露帝の希望する所は、畢竟露国議会の助力を得て、官僚政治の頸木を取り除くことにある。
人種的憎悪 14日ロンドン特約通信員発
ワシントン来電―元老院議員チルマン氏は、元老院に於いて悪辣な一つの演説を試みた。
氏は、表面的には、黒人軍隊を解散したルーズベルト大統領の行為を論じると称して、その実は、盛んに人種問題を論じて、結局人種問題の解決の為には、血を見る事になるであろうと予言した。チルマン氏が各所で行ったこの種の酷い演説や講義には、非常に多くの聴衆が参集し、これらの演説は、アメリカ全土を通じて、蒙古人や印度人や黒人である事を問わず、これらに対する人種的憎悪の感情を、疑いなく呼び起こすであろう。
露帝の真意(官僚政治の破壊に在り) 同上
ペテルスブルグ来電― 一大臣は、次の様に厳かに明言した。
露国皇帝及び露国政府は、未だかってクーデターを行おうとした事は無い。露帝の希望する所、目的とする所は、畢竟露国議会の助力を得て、官僚政治の頸木を取り除くことにある。この意味において露帝と露帝の内閣とは、議会と一体となって協力することを求めている。
1月16日
英国新軍制評 陸軍大臣は、徴兵法によらなくて、十分な国民的陸軍を組織することが出来るかについて、多大な疑念を表明している。
正々堂々の論 スタンフォード大学総長は、当地に於いて次の様な演説を行った。
米国は、日本を他の一等国と同様に扱わなければならない。
英国新軍制評 15日タイムス社説
諸新聞は、一般に新陸軍編成計画に対し、陸軍の勢力を十分発揮させる所以であると認めると同時に、如何にして必要な兵員数を徴募し、これを維持することができるかの問題が忘れ去られている事を指摘し、陸軍大臣は、徴兵法によらなくて、十分な国民的陸軍を組織することが出来るかについて、多大な疑念を表明している。
正々堂々の論 15日桑港特派員発
スタンフォード大学総長は、当地に於いて次の様な演説を行った。
日本人を排斥する法律が国会を通過することがあってはならない。又これに署名する大統領もあってはならない。何となれば、これは法を無視した行動であるからである。日本人排斥問題は、制限法や又無法な暴行に訴えるのでなく、外交上の暗黙のルールに従わなければならない。米国は、日本を他の一等国と同様に扱わなければならない。
サンフランシスコ市民は、この演説を聞いた大いに驚いたようである。
1月17日
米国将来の関税政策 国務卿ルウト氏は、最高及び最低の関税を設定する主張に賛成した。学童問題又起訴 カルフォルニア州検事デプリン氏は、正式に日本学童の復学を申し込んだが、予想された様に課長はこれを拒絶した。
米国将来の関税政策 16日タイムス社発
ワシントン来電―国務卿ルウト氏は、国民大会に於いて、外国貿易を盛んにする方法についての演説で、最高及び最低の関税を設定する主張に賛成した。そして国務卿のこの議論は、明らかに合衆国の従来の関税政策と相いれないものである。
学童問題又起訴 16日桑港特派員発
カルフォルニア州検事デプリン氏は、本日16日、学童問題を起訴した。なお同日学務課長と会見し、正式に日本学童の復学を申し込んだが、予想された様に課長はこれを拒絶した。なお数日中には、各小学校をも相手取り、起訴するであろう。
1月18日
通商条約批准 首相は、今回の条約は、両国の通商関係を一層良好にするものである。我々は、英国の文明なる同盟者として、日本を遇しなければならないと明言した。
排日運動の影響 米国の一地方に悲しむべき事件が発生したのは遺憾に堪えない。その地方が日本との貿易で多大な利益を得ているにも拘らず
通商条約批准(加奈陀首相の演説)17日タイムス社発
オタワ来電―日加通商条約批准案は、カナダの下院を通過した。コロンビア州選出の議員は、日本人が続々とカナダに入り込めば、白人は到底彼らと対等に競争することは出来ないとの理由で反対した。しかし首相は、若しカナダが日本との通商を希望しないならば止むを得ないが、希望するならば、今回の条約は、両国の通商関係を一層良好にするものである。我々は、英国の文明なる同盟者として、日本を遇しなければならないと明言した。
排日運動の影響 17日桑港特派員発
新任商務卿ラトラウス氏が、米国貿易協会に於いて行った演説の一節に次の様に述べている。米国の一地方に悲しむべき事件が発生したのは遺憾に堪えない。その地方が日本との貿易で多大な利益を得ているにも拘らず、日本との貿易関係を危うくしようとしていることは嘆かわしい事である。未だ表面的には重大な影響が見られないが、不幸にしてこの事件が円満に解決されなければ、或いは報復を受けるかも知れない。
1月19日
摩洛哥兵の乱暴 モロッコの兵士は、罪のない村落で略奪し、婦女を凌辱し、乱暴を極めている。
日加条約批准別報 日本は一つの文明国家として、又英国の同盟国として優遇しなければならないと告げた。
代議士の政論 中央政府は、憲法上外国人に米国市民同様の取り扱いを与える権利があり、又条約に制定された外人の権利は、州憲法の上に立つものであると述べた。
摩洛哥兵の乱暴 18日タイムス社発
タンジール来電―モロッコの兵士は、罪のない村落で略奪し、婦女を凌辱し、乱暴を極めている。欧州人が所有する牛馬も亦しばしば強奪され、売却される。
日加条約批准別報 18日上海経由ロイター社発
オタワ来電―日本カナダ通商条約批准案がカナダ下院を通過した。首相ローリアー氏は、同案に反対したコロンビア州選出の議員に、日本は一つの文明国家として、又英国の同盟国として優遇しなければならないと告げた。
代議士の政論 18日桑港特派員発
バーモント州選出の代議士バビッド、ジェー、フォスター氏(共和党員)は、昨日17日、下院の演説で、中央政府は、憲法上外国人に米国市民同様の取り扱いを与える権利があり、又条約に制定された外人の権利は、州憲法の上に立つものであると述べた。この演説は、カルフォルニア州議員を非常に驚かせた。
明治40年1月20日
桑港事件提訴 本日米国政府は、遂に2件の訴訟を提起した。その一つは、敬吉が従来通学していた学校長が復学を拒絶した事は不法であり、取消命令を求めるものである。
訴訟のその他の一つは、州裁判所に提起されたもので、カルフォルニア州の法律に、蒙古人は、隔離教育をすることができるとあるが、日本人は蒙古人ではなく、特別人種である。
桑港事件提訴(提訴2件の理由) 19日桑港特派員発
本日米国政府は、遂に2件の訴訟を提起した。その一つは、青木敬吉の父道継及び検事デブリン氏からカルフォルニア州大審院に提出されたものであり、その概要は、敬吉が従来通学していた学校長が復学を拒絶した事は不法であり、取消命令を求めるものである。大審院は、即日命令を発して、来月11日までに復学拒否を取り消すか、そうでなければ抗弁書を提出せよと命じた。
訴訟のその他の一つは、州裁判所に提起されたもので、公立学校から日本児童を排斥する行政權に対する禁止命令訴訟である。その理由は、学校は、米国憲法及び米国主権が締結した全ての条約に準拠する合意の下に、公共用地の払い下げを受けている。又カルフォルニア州の法律に、蒙古人は、隔離教育をすることができるとあるが、日本人は蒙古人ではなく、特別人種である。そして米国が最恵国人と同様な取り扱いを与える日本児童を隔離することは、日本人の条約上の権利を阻害するものである。カルフォルニア州法律は、州の教育家が日本児童に対してとった処置を是認していないとの主張である。
1月21日
独逸汽船会社座礁 ワルデマル号は、ジャマイカの沿岸で座礁した
米国関税政策変更別報 米国下院議長カノン氏は、南米アメリカの通商に対して、最高最低の関税を設定する方針に同意する旨、演説した。
独逸汽船会社座礁 19日ベルリン特約通信社発
漢米(ハンブルグアメリカン)汽船会社プリンツ、ワルデマル号は、ジャマイカの沿岸で座礁したが、乗客は全員無事である。
解説:漢米(ハンブルグアメリカン)汽船会社は、独逸の会社でロシヤのバルチック艦隊に、バルト海から日本まで回航する為の石炭を供給している。
米国関税政策変更別報 同上
米国下院議長カノン氏は、南米アメリカの通商に対して、最高最低の関税を設定する方針に同意する旨、演説した。
解説:最高最低の関税とは、一つの商品に対して、最高率の関税と最低率の関税を設け、自国の商品に対して差別をする国には最高率を適用し、互恵的待遇をする国には最低率の関税を適用する関税制度
明治40年1月22日
佛国軍制改革案 遠からず砲兵を増加しなければならない事が必要となるであろう、又内閣は、死刑廃止案に代えて、軍法会議を廃止する案を可決した。
震災地と英本国 植民地大臣エルチン卿は、ジャマイカに対する英国内の同族的感情に訴えて、同地震災救助義金の助力を要望した。
佛国軍制改革案 (砲兵増加の必要)(軍法会議廃止案)21日タイムス社発
パリー来電―陸軍卿ピカール将軍は、元老院に次の通告を送った。
遠からず砲兵を増加しなければならない事が必要となるであろう、尚騎兵が進出しやすいようにする為にその軍装を軽くしなければならない。
又内閣は、死刑廃止案に代えて、軍法会議を廃止する案を可決した。
震災地と英本国 21日上海経由ロイター社発
新たに入手する諸情報は、次第に震災地の最後の光景の惨状を詳しく説明している。
植民地大臣エルチン卿は、ロンドン市長に書面を送り、ジャマイカに対する英国内の同族的感情に訴えて、同地震災救助義金の助力を是非お願いしたいと要望した。
解説:1月16日上海経由ロイター社発電によれば、月曜日にジャマイカに壊滅的な大地震が発生と報道している。
1月23日
ジャマイカ事件 英領ジャマイカ島に於いて、知事は、救済事業支援の為に上陸した米国水兵の撤退を求め、デイス提督は、憤然として引き揚げた。
ジャマイカ事件 大統領及び閣僚は、ジャマイカ知事が震災を救済する目的で上陸した米国水兵の援助を意外な言動を以て拒絶した事に驚いている。
ジャマイカ事件 22日桑港特派員発
英領ジャマイカ島キングストンに於いて、知事は、秩序維持並びに救済事業支援の為に上陸した米国水兵の撤退を求め、デイス提督は、憤然として引き揚げた。米人は、大いに激昂し、英国新聞も亦、大いに憂いている様子である。撤退要求の理由は、明白でないが、米国水兵に乱暴な行為があった為の様である。
ジャマイカ事件 22日タイムス社発
ワシントン来電―大統領及び閣僚は、ジャマイカ知事が震災を救済する目的で上陸した米国水兵の援助を意外な言動を以て拒絶した事に驚いている。しかし同知事の処置が、英国としての意思や感情を代表していない事は十分承知している。同知事は、以前合衆国に反対する挙動があった人物であり、この事件の為に国際間の誤解が起こるであろうとは思われない。
英国外務大臣は、米国政府に対して、その義侠な助力に対し感謝の意を表し、更なる援助が多分必要となるであろうとも付言している。
1月24日
西園寺首相演説評 ロンドンタイムス紙は、その社説に於いて、西園寺首相の演説について、その内容及び形式を大いに称賛し、有力な海軍が必要であるとする日本政府の意見に同意した
又復不法処分 ハワイから当地に転住する者に対し、従来は検査なしに上陸が許可されていたが、本日入港した300余名に対して、移民官は、上陸を拒否した
西園寺首相演説評 23日タイムス社発
ロンドンタイムス紙は、その社説に於いて、西園寺首相の演説について、その内容及び形式を大いに称賛し、有力な海軍が必要であるとする日本政府の意見に同意した後、進んで日英同盟の主要な目的は、平和の維持にあり、そして平和の維持は、露国との協商により最も容易に、且つ満足に実行されるであろう事を指摘し、更にサンフランシスコ事件に対する日本政府の丁重にして、毅然たる見解に論及し、米国政府は、必ずや一切の困難を排除して、本件の解決に努力するであろうと論評した。
又復不法処分 23日桑港特派員発
ハワイから当地に転住する者に対し、従来は検査なしに上陸が許可されていたが、本日23日に入港した汽船で来た300余名の同胞に対して、移民官は、理由を明示することなく上陸を拒否した。これは理由なき措置であると抗議したが、ワシントンからの命令であると称して、断固として上陸を拒否した。
1月25日
チャーチル氏 文部大臣バールレン氏がアイルランド事務大臣に就任した事は、野心家である植民地次官チャーチル氏の鼻を折った近頃の快心の出来事であると言われている。
チャーチル氏 24日タイムス発
文部大臣バールレン氏がアイルランド事務大臣に、大蔵省次官マツケナ氏が文部大臣に就任した事は、一部の植民地関係者及びユニオニスト党の間で、野心家である植民地次官チャーチル氏の鼻を折った近頃の快心の出来事であると言われている。
氏の南阿に対する政策やチェンバレン、ミルナー氏等に対する不遜の言動が、本国や植民地で非常に忌嫌われている為である。信頼すべき筋の話によれば、氏は、アイルランドの担当になる事を熱望していた。しかしアイルランド選出議員は、氏に反対し、氏が南阿に対する様な行動を、再びアイルランドに対して試みる苦痛には耐えられないとの決心を表明したので遂に意の如くならなかったのである。
1月26日
摩洛哥内乱 モロッコの官兵は、叛徒を襲撃して、数回の激戦を行い、双方に莫大な死傷があった。
移民上陸陸問題 ハワイから来た日本人は、移民官との交渉が纏まり、上陸を許可された。
日本人問題多端 米日本人に対しては、土地所有権及び1年以上の小作權を許可しないと州法を改正する法案が提出
摩洛哥内乱 25日タイムス社発
タンジール来電―モロッコの官兵は、叛徒を襲撃して、数回の激戦を行い、双方に莫大な死傷があった。しかし官兵は、首領ライスリの本拠を攻撃することは出来なかった。
移民上陸陸問題 25日桑港特派員発
ハワイから来た日本人は、当地の日本人協会の斡旋により、移民官との交渉が纏まり、上陸を許可された。
解説:1月24日上陸を禁止された記事がある。
日本人問題多端(土地所有権と小作權) 同上
米国市民でない外国人(すなわち日本人)に対しては、土地所有権及び1年以上の小作權を許可しないと州法を改正する法案が提出されて、委員会の付託となった。この権利は、州議会の権限に属し、形勢は険悪である。州議会は連日、日本人問題の実を議論している。
解説:数か月前から、日本人を排斥する問題が起こっており、1月20日大統領が提訴している。
1月27日
独総選挙形勢 全国各地の情勢は、一般的に国民自由党及び急進党が有利であり、その選出議員はかなり増加すると思われる。
又々排日決議案 東洋人に帰化の権利を与える事には、カルフォルニア州国会議員は絶対に反対と主張している。
独総選挙形勢 26日タイムス社発
ベルリン来電―ベルリン選出の議員は、多分異動は無いと思われるが。全国各地の情勢は、一般的に国民自由党及び急進党が有利であり、その選出議員はかなり増加すると思われる。これに反して社会党は、その勢力を失おうとしている様である。
又々排日決議案 26日桑港特派員発
カルフォルニア州上院で、又々排日決議案が提出された。その趣旨は、ルーズベルト大統領等は、日本人に土地所有権及び帰化權を許す法案を国会に勧告しているが、東洋人に帰化の権利を与える事には、カルフォルニア州国会議員は絶対に反対と主張している。
1月28日
ブライアン来桑 その目的は、日本人問題に対して、当地方の共和党員の弱みに乗じて、民主党の態勢を挽回する為、民主党員を激励することと言われている。
独逸総選挙結果 独逸議会は、今回の選挙の結果、植民地の味方と自由党は非常に増加して、僧侶党は分裂し、社会党は大いに勢力を失った。
ブライアン来桑 27日桑港特派員発
民主党党首ブライアン氏がサンフランシスコを訪問した。その目的は、日本人問題に対して、当地方の共和党員が、大統領に対する遠慮から曖昧模糊とした態度を取っているので、その弱みに乗じて、民主党の態勢を挽回する為、民主党員を激励することと言われている。
独逸総選挙結果(社会党振はず) 26日ベルリン特約通信社発
独逸議会は、今回の選挙の結果、植民地の味方と自由党は非常に増加して、僧侶党は分裂し、社会党は大いに勢力を失った。
独逸皇太子殿下と首相ビュウロー公は、深夜、盛大な歓呼を受け、首相はその場で景気の良い演説を行った。
半官報である北独逸のアルゲマイネ新聞は、総選挙の結果に対して満足の意を表し、独逸国民は、社会党批判の立場に立ち、今や社会党の急激な発達は遂に終わりを告げたと述べた。
1月29日
独逸総選挙結果 第1次投票の結果は、社会民主党が完全に失敗した事を示す。即ちその維持することのできた議席は25、失った議席21、新たに得た議席は1のみである。
独逸総選挙結果 27日タイムス社発
ベルリン来電―第1次投票の結果は、社会民主党が完全に失敗した事を示す。即ちその維持することのできた議席は25、失った議席21、新たに得た議席は1のみである。僧侶党は、89議席を得た。1903年の総選挙の時より、尚一層優勢である。国民自由党及び急進党は、一般に社会党の失った所の議席を手中に収めている。
政府は、選挙が予期以上の好結果を得たことを見て、大いに喜んでいる。
明治40年1月30日
面白き主張 桑港市法律顧問は、日本人は蒙古人であるとの証拠として、エクオットグリツフヒス氏及びサー、エドワード、サトー氏の所見を引用し
英米の親交 親任駐米大使ブライイス氏は、マンチェスターの送別会に於ける演説で、英米の関係は、今日ほど良かった事は無い。
面白き主張 28日ワシントン特約通信員発
桑港市法律顧問は、日本人は蒙古人であるとの証拠として、エクオットグリツフヒス氏(1872年から74年に至るまで日本の大学で講師であり、東洋学者として有名)及びサー、エドワード、サトー氏(前東京駐在英国公使)の所見を引用し、これを用いて米国政府の主張に対抗することができ、又同顧問は、大統領が日本人に与える事を要求している教育及び帰化は、日本が自国に於いて、外国人に与えていない事を指摘している。(記者注、事実に誤りがあるが桑港側の主張の一端が伺えるのでこの記事を掲げる)
解説:桑港とはサンフランシスコ
英米の親交 28日上海経由ロイター社発
親任駐米大使ブライイス氏は、マンチェスターの送別会に於ける演説で、英米の関係は、今日ほど良かった事は無い。その証拠に、スエツテナム事件がある。本件は、以前であれば両国新聞の間で挑戦的な議論を引き起こしていたであろうと述べた。
解説:1月23日の記事「ジャマイカ事件」によると、英領ジャマイカ島に於いて、救済事業支援の為に上陸した米国水兵の撤退を求めた知事の名前がスエツテナム氏である。