期日 | 日本関係 | 期日 | 露関係 | 期日 | 英米関連 | 期日 | その他 |
5月9日 | 鴨緑江伐材の件 | 5月3日 | 露清談判決定事項 | 5月2日 | 埃及問題 | 5月1日 | 埃及問題 |
5月4日 | 露国政変別法 | 5月5日 | 英土境界問題 | 5月6日 | 支那労働者問題 | ||
5月11日 | 露国憲法発布 | 5月6日 | 満州解放と米国 | 5月8日 | 暴動頻々 | ||
5月12日 | 開会式の光景 | 5月7日 | 埃及問題 | 5月15日 | 独逸兵の領域侵犯 | ||
5月17日 | 露国議会の脅威 | 5月10日 | 非常手段警告 | 5月25日 | 英露協商 | ||
5月18日 | 露国議会強硬 | 5月14日 | 英土事件 | 5月30日 | 独逸議会の波乱 | ||
5月29日 | 露国政府弾劾 | 5月16日 | 英土事件落着 | ||||
5月20日 | 平和の臣僕 | ||||||
5月20日 | 労働派議員激昂 | ||||||
5月24日 | 是も回収運動 | ||||||
5月25日 | 独逸外相演説 | ||||||
5月27日 | タイムス軍備論 | ||||||
5月28日 | 英国と軍備緊縮 | ||||||
5月31日 | 英露協商 |
明治39年5月
5月1日
埃及問題 トルコ政府は、最近密かに砲兵を増派して、スエズに接している境界沿いの兵力を増加しつつある。
埃及問題 20日ロンドン特約通信員発
コンスタンチノープル来電―英国がエジプトの守備兵を増加する事を決定したにも拘わらず、トルコ政府は、今なおエジプトとトルコ間の国境に関する主張を放棄していない。
カイロ府からの来電によれば、トルコ政府は、最近密かに砲兵を増派して、スエズに接している境界沿いの兵力を増加しつつある。
解説:エジプトは埃及、トルコは土耳其と表現されている。
5月2日
五月一日(社会党に対する警戒) 社会党の暴動を警戒して、佛国政府は、5月1日、軍隊によってパリー市街を警備すると思われる。
埃及問題 英艦ミネルバーは、既にモロッコのラレーシュに到着している。
又砲兵一個大隊は、5月第二週にエジプトへ向け、出発する事になっている。
埃及問題 北独新聞は、トルコ政府が強硬な態度を採って、英国の要求に応じないのは、独逸の示唆によるとの議論を排除し
五月一日(社会党に対する警戒) 30日ワシントン特約通信員発
パリー来電―社会党の暴動を警戒して、佛国政府は、5月1日、軍隊によってパリー市街を警備すると思われる。
5月1日は、世界を通じて社会党の記念日であり、従って社会党の勢力が強い国では、万一を気遣い、厳重に警戒するのは毎年の事である。特に今年は、露国に社会党の革命運動があり、又昨今、佛国には、石炭坑夫の激しい同盟罷業が行われ、その勢いは激烈であり、先般既に軍隊と衝突している。そのため佛国政府は、特に今年の5月1日を厳重に警戒している。
埃及問題 1日上海経由ロンドンロイター社発
エジプトへ航行の途中である英艦ミネルバーは、既にモロッコのラレーシュに到着している。
又砲兵一個大隊は、5月第二週にエジプトへ向け、出発する事になっている。
埃及問題 と独逸 同上
北独新聞は、トルコ政府が強硬な態度を採って、英国の要求に応じないのは、独逸の示唆によるとの議論を排除し、独逸はエジプトに於ける英国の地位を凌駕する事を希望していないと述べている。
なお又、ベルリンのポスト紙は、独逸は英国がエジプトの現状を変更する事を見過ごす事は出来ず、トルコ政府は、独逸の決心を一日も早く了解する事が望ましいと論評している。
5月3日
露清談判決定事項 露清談判中、次の事項が本日までに決定したと伝えられる。
露清談判決定事項 2日上海特派員発
露清談判中、次の事項が本日までに決定したと伝えられる。
一、清国は露国の支出した費用の一部を支払う事により、黒竜江省の金鉱を清国に返還すべきこと
二、鉄道保護兵の他は、ポーツマス条約によって撤兵すること
三、露国は満州から全部隊の撤兵が終了したならば吉林、黒龍、江南省の電信局を清国に返還すること
四、南部満州に於いて、日本と同等の条件で、吉林、黒龍、江南省の材木伐採を露清共同会社にて経営すること
その他略
5月4日
5月1日 5月1日は、欧州の各地を通じて、幸いにも特別な騒動が発生しなかった。
露国政変別法 露国首相ウイッテ伯は、辞表を皇帝に提出した。
雲南鉄道 英国は清国と合同して敷設することを要求したが、
5月1日 2日ベルリン特約通信社発
5月1日は、欧州の各地を通じて、幸いにも特別な騒動が発生しなかった。独逸に於いては、極めて静穏にこの日を送り、又露国に於いても、何らの暴動も起こらなかったがパリーに於いては、騒動の結果、捕縛された者が非常に多かった。
露国政変別法(半藤派の再挙) 同上
内相ダルノフが、強烈な反動政策を採った結果、露国首相ウイッテ伯は、辞表を皇帝に提出した。皇帝は未だ許否を決定されていない。
ヴォルガ州のサマラ及びサラトウに於いて、農民の間に暴動が発生した。
雲南鉄道 3日香港特派員発
ビルマから雲南に至る鉄道に対して、英国は清国と合同して敷設することを要求したが、雲南省の紳商は、利権の保全の為に自国資金での敷設を商務部に電報した。
5月5日
英土境界問題 トルコ軍の態度は極めて危険なものがある。
奉天開市と清国 支那政府は、我が国の希望する期限で奉天を解放することを拒否した
英土境界問題 4日ロンドン特約通信員発
パリー来電ートルコとエジプト間の境界問題は、今なお決着していないがトルコ軍の態度は極めて危険なものがある。その司令官は、トルコ領シリアの一部分としてラファアスを占領する様命じられたと公言している。
奉天開市と清国 4日北京特派員発
支那政府は、我が国の希望する期限で奉天を解放することを拒否したが、来月上旬には、開放する事になりそうである。
5月6日
英土紛議と独逸 英国とトルコ両国の間に紛争が起こる場合にトルコ帝が、ドイツの援助を期待する謂われが無い
支那労働者問題 帰国を希望する支那人労働者に対して、金銭上の援助を与える
満州解放と米国 奉天府並びに安東懸は、米清条約により解放予定の地方である
長江航路と佛国 重慶と宣昌間の曳船航行権を佛国人に許可されたい
英土紛議と独逸 5日上海経由ロンドンロイター社発
スタンダード新聞の報道によれば、駐英ドイツ大使メテルニッヒ男爵は、英国とトルコ両国の間に紛争が起こる場合にトルコ帝が、ドイツの援助を期待する謂われが無い旨を英国外相サアー、グレイに通告した。
支那労働者問題 同上
帰国を希望する支那人労働者に対して、一定の条件のもとに、金銭上の援助を与える旨の布告が、南アの鉱業地に於いてなされた。
解説:1月12日の新聞に「南ア支那人問題」と題する関連記事があり、1万4千人の支那人労働者が足止めとなっている。
満州解放と米国 4日北京特派員発
米国公使ロックヒル氏は、奉天府並びに安東懸は、米清条約により解放予定の地方である為、その期日についての協議をされたく、又居留地以外にも外国人の居住を許可されたいと外務部に照会した。
長江航路と佛国 同上
佛国代理公使は、内水航路汽船規則により、重慶と宣昌間の曳船航行権を佛国人に許可されたい旨を外務部に要求した。
5月7日
埃及問題 英国は、エジプト境界問題に関し、公文をトルコ政府に交付した。この公文は、実際に最後通牒と見做されるべきものであり、
埃及問題(最後通牒交付) 5日上海経由ロンドンロイター社発
英国は、エジプト境界問題に関し、公文をトルコ政府に交付した。この公文は、実際に最後通牒と見做されるべきものであり、エジプトの境界に駐屯するトルコ兵の撤去を要求している。
カイロ政府からの来電によれば、エラリツシに於ける境界柵が取り去られた事は、確実であり、トルコの分遣隊は、エジプトの領地を占領し、その態度は、非常に高圧的である。
5月8日
支那人放逐論 支那人放逐論は、益々その勢力を増大する傾向にある。
暴動頻々 暴動が各省に蜂起した。即ち江西省九江府星子懸には、又もや教案に関する暴動が発生し、道臺(どうだい)は、軍隊を派遣して鎮圧中である。
支那人放逐論 7日上海経由ロンドンロイター社発
支那人放逐論は、米国に於いて益々その勢力を増大する傾向にある。
暴動頻々(米国公使の警告) 7日北京特派員発
暴動が各省に蜂起した。即ち江西省九江府星子懸には、又もや教案に関する暴動が発生し、道臺(どうだい)は、軍隊を派遣して鎮圧中である。
又河南省南陽府下鄧州にも仁義回匪が蜂起し、衛門を焼き払ったが暴徒は軍隊の到着と同時に消え去った。
又浙江省杭州府に於いては、無頼漢が教会に対して騒動を起こそうとする計画があるとして米国政府は、教案の発生を予防する事を外務部に警告した。
解説:教案とは、19世紀末以降の清国において、西洋から伝わったキリスト教に対する排撃運動を背景に発生した衝突事件である
5月9日
鴨緑江伐材の件 鴨緑江岸の森林伐採に関して、日本政府と材木商との相談が調うまでは、日本人の材木伐採を禁止する
奉天将軍の注文 本官は、日本が文官を派遣して、交渉の任にあたるよう希望した
鴨緑江伐材の件 8日北京特派員発
直隷総督袁世凱氏は、鴨緑江岸の森林伐採に関して、日本政府と天津に於ける材木商との相談が調うまでは、日本人の材木伐採を禁止する様、日本公使に交渉されたいと申請した。
奉天将軍の注文 同上
奉天将軍趙璽巽(ちょうじそん)氏は、外務部に対して若槻次官、山座政務局長等一行と会見した事を電報し、本官は、日本が文官を派遣して、交渉の任にあたるよう希望したが、一行は、我が意を了解したと打電した。
5月10日
非常手段警告 若し期限内に満足のいく回答を得る事が出来ないならば、非常手段を執る
英艦増派 英国巡洋艦アロガント及びアメシストの2隻は、突然ジブラルタルの出発
埃及問題と独逸 独逸が、英トルコ事件に全く関係が無い
非常手段警告 8日上海経由通信員発
英国大使が、トルコ政府に交付した最後通牒には、若し期限内に満足のいく回答を得る事が出来ないならば、非常手段を執るであろう旨を説明している。
英艦増派(エジプト問題関係) 同上
英国巡洋艦アロガント及びアメシストの2隻は、突然ジブラルタルの出発を命じられた。行き先は、トルコ方面と思われる。
埃及問題と独逸 8日ベルリン特約通信員発
英国外相サー、エドワルド、グレーは、独逸が、英トルコ事件に全く関係が無い旨、下院で言明した。
本件は、結局トルコ帝の譲歩に落ち着くのではと期待されている。
5月11日
露国憲法発布 露国人民は言うに及ばず、外国に於いても、非常に評判が悪い。
露国憲法発布 9日ベルリン特約通信社発
所謂露国憲法なるものが、公式に発布されたが、その内容は、昨年10月に露帝の詔勅で公約されたものとは異なり、極めて保守的なものである。その為露国人民は言うに及ばず、外国に於いても、非常に評判が悪い。
5月12日
開会式の光景 露帝が勅語を下された折、陛下に対して敬意を表する事をどうやら忘れ去った
争端既に啓く 議会は、直ちに大赦問題及び立法発議権の問題に関する議事
独墺両帝会見 独帝が、英仏露三国間の新協約の成立を予想し、この場合に於けるオーストリア国の友情を確かめる
開会式の光景 11日ロンドン特約通信員発
露都来電―国会の開会式に於いて、露帝が勅語を下された折、議員は皆、沈黙し、石の様にこれを清聴し、陛下に対して敬意を表する事をどうやら忘れ去ったかの様であった。
争端既に啓く 同上
議会は、直ちに露帝が不問に付した大赦問題及び立法発議権の問題に関する議事に入る事に決した。
独墺両帝会見 11日上海経由ロンドンロイター社発
独逸皇帝が、将にオーストリア皇帝を訪問されようとする件に付いて、世評にはいろんな事が言われている。そしてこれは実に独帝が、英仏露三国間の新協約の成立を予想し、この場合に於けるオーストリア国の友情を確かめる決意を有する証拠であると観察される。
5月13日
英土事件の後報 駐トルコ英国大使は、トルコ外相の提案を拒絶し、完全に英国の要求を承諾するよう主張し
英土事件の後報 12日上海経由ロンドンロイター社発
トルコの外務大臣ネイフイツク氏は、昨日、駐トルコ英国大使を訪問した。同大使は、トルコ外相の提案を拒絶し、完全に英国の要求を承諾するよう主張し、且つ談判の成否が決定されるべき猶予期間に付いて、同外相に注意を促した。
5月14日
英土事件 英国政府がトルコ帝に送った最後通牒に於いて、指定された回答期限は、日曜(13日)の夜半である。
英土事件 13日上海経由ロンドンロイター社発
英国政府がトルコ帝に送った最後通牒に於いて、指定された回答期限は、日曜(13日)の夜半である。この時期を経過するならば、英国艦隊は、即刻行動を開始するであろう。
英国艦隊司令官ランプトンは、ポートサイドに於いて命令を待っている。
しかし英土紛争は、落着の見込みがあると信ずるべき様々な理由があると聞いている。
5月15日
露国外相交迭評 イズウオルスキーが露国外相に任命されたとの報道は、佛国の人心に良好な感想を与えた。
土耳格屈服す トルコはサイナイ半島からその軍隊を引き揚げた。
独逸兵の領域侵犯 同上
南西アフリカに於いて、独逸軍隊は、酋長メレンガを追討して、英国の領域に侵入した。
露国外相交迭評 14日ロンドン特約通信員発
パリー来電―イズウオルスキーが露国外相に任命されたとの報道は、佛国の人心に良好な感想を与えた。
新外相は、温和な非侵略主義の外交政策を露帝に進言し、且つ英露の関係改善を企画するであろうと一般に信じられている。
土耳格屈服す 12日ベルリン特約通信社発
トルコはサイナイ半島からその軍隊を引き揚げた。英国との紛争は、これで落着した。
独逸兵の領域侵犯 同上
南西アフリカに於いて、独逸軍隊は、酋長メレンガを追討して、英国の領域に侵入した。英国政府は、この報に接するや、直ちに抗議を提出したが独逸は、英国の抗議を承認した。
解説:南西アフリカは、南アフリカの北にあった独逸の植民地であり、植民地政権に対するナマクワ族の反乱が、1908年まで行われた。
5月16日
佛国海軍計画案 1907年度の佛国海軍計画案によれば、第1及び第2艦隊の組織を、戦艦12隻、巡洋艦6隻並びに駆逐艦12隻
英土事件落着 トルコは遂に英国の要求を承諾した。英国外相サー、エドワルド、グレーは、下院に於ける議員の質問に答えて次の演説を行った。
佛国海軍計画案 15日ロンドン特約通信員発
パリー来電―1907年度の佛国海軍計画案によれば、第1及び第2艦隊の組織を、戦艦12隻、巡洋艦6隻並びに駆逐艦12隻とし、第3艦隊にやや旧式の戦艦3隻及び最良の巡洋艦3隻を増加し、又極東艦隊は、巡洋艦4隻と6隻の駆逐艦を以て編成する計画である。
解説:当時日本海軍は、戦艦を4隻保有し、英国で2隻を建造中であった。
英土事件落着 15日上海経由ロンドンロイター社発
トルコは遂に英国の要求を承諾した。英国外相サー、エドワルド、グレーは、下院に於ける議員の質問に答えて次の演説を行った。
境界を制定し、且つ係争地の現状を維持する為に、混合委員会を選任する事に決定した事は、まことに喜ばしい。境界線は、ラフェーを起点として、アカバの南東3マイル余りの地点に定められるであろう。そして本件は、極めて満足のいく結果となると思われる種々の理由がある。
5月17日
英土事件評論 トルコが完全に英国の要求に譲歩したのは、英国の新聞が、強硬な政策を主張した結果であると認められる。
露国議会の脅威 大赦が許されるまで議事を中止するとして露帝を脅迫する
黒竜江省鉱山 黒竜江沿岸一帯の鉱山は、露人が採掘中である事を発見し、その事を詰問したが、
英土事件評論 16日ロンドン特約通信員発
トルコが完全に英国の要求に譲歩したのは、英国の新聞が、強硬な政策を主張した結果であると認められる。即ちグレイ外相は、世論の希望を実現した事に他ならない。
露国議会の脅威 16日上海経由ロンドン電報
露国議会に於いて、大赦が許されるまで議事を中止するとして露帝を脅迫する過激な動議が提出されたが、遂に否決された。
黒竜江省鉱山 16日北京特派員発
黒竜江将軍は、以前から調査委員を派遣して、各鉱山を調査中であったが、黒竜江沿岸一帯の鉱山は、露人が採掘中である事を発見し、その事を詰問したが、露人は様々な口実を設けて退去をしないため、結局外務部に、詳細な事情を電報し、政府がこの件に関して、露公使と強硬に談判する事を要請した。
5月18日
日露英独 佛国前海軍大臣ラネツサン氏は、露国に対して、ドイツに唆されて再び極東に於いて日本と戦端を開いてはならない
露国議会強硬 国民は、国事犯罪人が一人も漏れなく大赦を与えられん事を渇望する。
日本視察 約30名の新任提學使は、来月10日、日本に赴き、学務を視察の上、各々その任地に赴く予定である。
日露英独 17日ロンドン特約通信員発
パリー来電―佛国前海軍大臣ラネツサン氏は、次の様な意見を公にした。
露国に対して、ドイツに唆されて再び極東に於いて日本と戦端を開いてはならないと戒め、日本は露国が同方面に手を伸ばす事を黙認せず、且つ英露両国の利害は独逸のそれと概して相反していると述べた。
露国議会強硬 17日上海経由ロンドンロイター社発
露国議会に於ける、勅語に対する奉答案は、徹頭徹尾、強行、不屈の言葉で奏せられている。その結末では、国民は、国事犯罪人が一人も漏れなく大赦を与えられん事を渇望する。この際、この事は決して避けることのできない事である。
日本視察 17日北京特派員発
各部から上奏した提學使(各省の教育を掌る視學官であり、従来の學政使に代わる者)の視察の上奏は、裁可され、約30名の新任提學使は、来月10日(清暦)当地を出発して、日本に赴き、学務を視察の上、各々その任地に赴く予定である。
5月19日
独逸と清国海関 独逸政府は、清国に対する英国の詰問に賛同しようとしている。
露国議会の要求 婦人参政権、同スラブ民族の統一及び国際平和の保持を要求した。
パナマ運河設計 水平式運河の設計を取る事に決議した。
独逸と清国海関 17日ベルリン特約通信社発
清国が海関税制度を変更する問題に関して、独逸政府は、清国に対する英国の詰問に賛同しようとしている。
露国議会の要求 同上
露国議会に於いて、更に過激な動議が提出され、婦人参政権、同スラブ民族の統一及び国際平和の保持を要求した。
パナマ運河設計 同上
米国上院のパナマ運河委員会は、水平式運河の設計を取る事に決議した。
5月20日
平和の臣僕 ドイツの市会議員代表者の為に、盛大な歓迎会を催し、植民次官チャーチル氏が、極めて丁重な歓迎の言葉を述べた。
労働派議員激昂 英国上院は、外国人労働者の英国入国を禁止する労働法案を否決した。
平和の臣僕 18日上海経由ロンドンロイター社発
訪英中であるドイツの市会議員代表者の為に、80のクラブが連合して、ツイードマス市に於いて、盛大な歓迎会を催した。植民次官チャーチル氏が、次の様な極めて丁重な歓迎の言葉を述べた。
我ら英国人は、偉大な独逸国民に対して、本当に親愛の情を有し、且つ忠実な平和の僕を以て自任するウイルヘルム陛下の帝業に敬意を表する。
解説:ドイツは8年後の1914年第一次世界大戦を始め、その時チャーチルは海軍大臣であった。
労働派議員激昂 同上
英国上院は、外国人労働者の英国入国を禁止する労働法案を否決した。その中には、討議なく下院を通過した同盟罷業に関する規定もあり、労働派議員は非常に激昂して、上院は何時まで国家に対して、全く無責任な地位に立つのかとの質問を下院に提出した。
5月21日
鉄道賃金法案 米国元老院は、鉄道賃金法案を修正、可決した。
鉄道賃金法案 20日上海経由ロイター社発
米国元老院は、鉄道賃金法案を修正、可決した。この法案の主旨は、米国各州の商業委員の議決は、裁判所の認可を得て初めて有効である旨規定したものである。大統領ルーズベルトは、久しくこの主義に反対してきたが、今やこの法案は、両院協議会に付議された。
5月22日
南昌事件行悩 外務部は、譲歩の方針であるが軍機処及び大官等は、絶対に佛国の要求に反対し、
南昌事件行悩 21日北京特派員発
南昌事件に対して、外務部は、譲歩の方針であるが軍機処及び大官等は、絶対に佛国の要求に反対し、何回か決定しようとしたが、なお決定せず、各省の督撫(とくぶ)及び御史(ぎょし)等も又強硬な意見を主張している。
又伍廷芳(ごていほう)はその顛末を世界に発表し、世論に訴えてその是非を決定するべきであると主張している。
5月23日
露帝奉答文拒絶 露帝に提出した奉答文が、露帝の受領する所とならなかった
婦人選挙権問題 政府がなお一層一致するまで機会を待つ必要がある
露帝奉答文拒絶 22日ロンドン特約通信員発
露都来電―露国議会は、その決議を経て議長から露帝に提出した奉答文が、露帝の受領する所とならなかった旨を報告した。
この奉答文の重要な点は、その文案の事実にあって、その奉呈の手続き如何にあるのではない。
婦人選挙権問題 22日上海特派員転電
英国首相は、婦人選挙権主唱者委員を接見し、余自身は、この案に対して同意を表するけれども、政府がなお一層一致するまで機会を待つ必要があると論示した。
5月24日
露国議会の態度 露国の議会は、奉答文は、提出の形式よりもその主旨こそ重要であるとの説に直ちに同意した
是も回収運動 英国は、威海衛を清国に還付し、その代償として津鎭(しんちん)鉄道敷設権を確定する事を交渉中である
露国議会の態度 23日上海経由ロイター社発
露国の議会は、予定の決心に関する議長の通知(内閣大臣を経由しなければ、奉答文を受け取らないとの沙汰を言う)を受け取った。しかし奉答文は、提出の形式よりもその主旨こそ重要であるとの説に直ちに同意した。
是も回収運動 23日北京特派員発
英国は、威海衛を清国に還付し、その代償として津鎭(しんちん)鉄道敷設権を確定する事を山東巡撫(さんとうじゅんぶ)と交渉中であるとの説が当地に伝えられた為、在京の山東、江蘇出身者は、例により反対運動を開始し、且つ仮契約の廃棄を主張している。
解説:山東巡撫とは山東省を管轄する地方官
5月25日
英露協商(独逸の地位) 英露協約の交渉が進行しつつあるとの報道は、早計に失する。
独逸外相演説 独逸外相は、仮令、アジアに関して、英露間の協約が成立したとしても、独逸の利益は、この為に少しも影響を受けない
英露協商(独逸の地位) 24日ロンドン特約通信員発
英露協約の交渉が進行しつつあるとの報道は、早計に失する。パリ―の政論社会に於いては、この報道の出所はドイツであり、その目的はロシアの国論をこの協約に反対させる為であると考えられている。そして佛国の政論家は、独逸が英露協商の成立を希望しない事を見抜いている。
独逸外相演説 24日上海経由ロイター社発
独逸外相は、帝国議会に於いて、次の演説を行った。
仮令、アジアに関して、英露間の協約が成立したとしても、独逸の利益は、この為に少しも影響を受けないと確信するだけの強固な根拠がある。
曰く三国同盟は、依然として強固な基礎の上に立っている。
曰く独逸皇帝のオーストリア皇帝の訪問は、決して伊国皇帝や英国皇帝に対する示威運動ではない。独逸各地の市長が、滞英中に英国の政治家から受けた盛大な歓迎演説は、独逸政府や一般独逸国民に英国に対する本当の友愛感情を起こさせた。
5月26日
宗教と教育 余は、全ての有力者が現在の宗教的偏見を持たない事を望む。
露国政府と大赦令 政治的暗殺未遂が止まない為、現在の大赦令の発布を行う事が出来ない
敗将免職される ロジェストウェンスキー提督は、その職を免じられた。
宗教と教育 25日ロンドン特約通信員発
エジプト総督クローマー卿は、アレキサンドリアに於いて、次の演説を行った。
余は、全ての有力者が現在の宗教的偏見を持たない事を望む。宗教的な不一致は、実に教育上の進歩に大きな妨害を加えるものである。
露国政府と大赦令 25日上海経由ロイター社発
露国政府は、人心動揺の結果、政治的暗殺未遂が止まない為、現在の大赦令の発布、非常取締法の廃止を行う事が出来ない旨を公にした。
敗将免職される 27日ベルリン特約通信社発
露国のロジェストウェンスキー提督は、その職を免じられた。
5月27日
タイムス軍備論 日英同盟の必要性が極めて重要な事を引用して、世界の平和は、この様にしてようやく平和を維持する事が出来る。
排外熱勃興 最近、支那人の排外熱が益々勃興しており、各所に様々な排外的な張り紙を見る。
タイムス軍備論 26日ロンドン特約通信員発
ロンドンタイムスは、平和の保障として、日英同盟の必要性が極めて重要な事を引用して、世界の平和は、この様にしてようやく平和を維持する事が出来る。所謂、軍備制限論のごときは、強大な軍備を有する二,三の大国がこれに着手するまで、到底実行する事が出来ない事であると論じている。
排外熱勃興 26北京特派員発
最近、支那人の排外熱が益々勃興しており、各所に様々な排外的な張り紙を見る。現在北京の現状は、義和団事件以前の状況と同様であり、巡警部は、厳重に嫌疑者を逮捕している。
5月28日
英国と軍備緊縮 各国の間で、公平な一般的協約が成立するのでなければ、その軍備を縮小する事は不可能である
英国と軍備緊縮 27日上海経由ロイター社発
上院に於いて、軍備緊縮問題を討議中、尚璽官(しょうじかん)リボン候は、軍備緊縮と経費削減の同じでない事を説明し、政府は、軍備の節約に対して十分その力を尽くすべきであるが、国家の安全を確保する義務がある為に、各国の間で、公平な一般的協約が成立するのでなければ、その軍備を縮小する事は不可能であると述べた。
5月29日
露国政府弾劾 露国政府は、従来の騒動鎮圧手段を続行する意思を表明した宣言文を、国民議会で発表した。
税関問題の前途 税関問題に付、英国の抗議に対する清国政府の回答は、以前と大同小異であり、英国は大いに不満である。
露国政府弾劾 28日ロンドン特約通信員発
露都来電―露国政府は、従来の騒動鎮圧手段を続行する意思を表明した宣言文を、国民議会で発表した。
国民議会は、非常に激昂して、現政府は、国政を処理するのに適していない旨を決議した。
税関問題の前途 28日北京特派員発
税関問題に付、英国の抗議に対する清国政府の回答は、以前と大同小異であり、英国は大いに不満である。更に公使間会議を開いて、各国も英国と一致の行動を取ると思われ、従って同問題は、益々紛糾するであろうと予測される。
5月30日
独逸議会の波乱 独逸帝国議会は、事実上独逸領南西アフリカに関する追加予算の全部を否決し、次いで植民省の開設費を否決した。
露国議会別報 露国議会は、国民私権の不可侵に関する議会提出案を討議した。
独逸議会の波乱 19日上海経由ロイター社発
独逸帝国議会は、事実上独逸領南西アフリカに関する追加予算の全部を否決し、次いで植民省の開設費を否決した。
独逸政府がこの様な苦々しい失敗を招いた原因は、今回南阿駐屯軍の司令官に任じられたダイムリング大佐の演説にある。大佐は、あたかも練兵場に於いて、軍隊を訓練するような、割れんばかりの大声で、議会で演説を試み、余は皇帝の命令が無い限り、予算委員の発議した提案は、これを顧みない決心である。可否を採決するのは、独り一人、皇帝の大権に属すと言い放った。これに対して議場は、非常に喧騒を極めた。
露国議会別報 28日パリー特約通信社発
露国議会は、国民私権の不可侵に関する議会提出案を討議した。
露国政府は、議会が、上奏案を以て要求している殆ど全ての改革を拒絶する宣言を議会で朗読させた。その為議会は、閣員の辞職を要求する決議案を、多数で可決した。この際議場は、非常な喧騒を極めた。露国の諸新聞は、この勢いはやむを得ないものとして、内閣に辞職を勧告した。
5月31日
英露協商 英国外務次官フイッモーリス卿は、英露両国は、トルコとペルシャ間の境界問題について、協同運動をするであろう。
雲貴総督弾劾 雲貴(うんき)総督丁振鐸(ていしんたく)氏は、老朽、無能であり、佛国人によって籠絡され、利権を失う虞がある。
英露協商 29日ベルリン特約通信社発
英露協商の件は、外交会やその他に於いて、様々な評論を惹起している。パリ―新聞エクレールは、露国外相は協商を可とする人であると述べている。
英国外務次官フイッモーリス卿は、上院に於いて次の演説を行った。英露両国は、トルコとペルシャ間の境界問題について、協同運動をするであろう。バクダット鉄道は、この為に何らの脅迫を受けず、又鉄道問題については、別に差し迫った事は無い。同鉄道は、多分、タウラス山を通過すると思われるが、未だ決定されたわけではなく、調査中である。
雲貴総督弾劾 30日香港特派員発
雲貴(うんき)総督丁振鐸(ていしんたく)氏は、老朽、無能であり、佛国人によって籠絡され、利権を失う虞がある。現に佛国安南総督は、着々と境界の線引きを考えている。清越鉄道が完成した場合に、雲南は、佛国の食い物となるであろう。至急その職を免じるべきであると駐佛清国公使から、弾劾する電報の上奏があった。その為清国政府は、四川総督錫良(しゃくりょう)氏に調査を命じた。