明治39年3月

主要記事

  期日 日本関係    期日 露関係    期日 英米関連    期日 その他
3月31日 竹島観察談 3月7日 露国革命党暴行 3月2日 米国大統領と軍備 3月1日 佛国委員の宣言
    3月25日 内乱の予想  3月4日 ロンドン市長の同情 3月3日 南昌事変の佛国
        3月5日 米清談判  3月4日 南昌事件続報
        3月7日 英国の凶作義損 3月6日 モロッコ会議 
        3月12日 婦人選挙権運動 3月8日 モロッコ会議別報
        3月18日 米兵蛮行問題 3月9日 モロッコ問題
        3月19日 南阿支那人問題 3月11日 モロッコ会議 
        3月23日 南阿労働者問題 3月12日 炭鉱大爆発
        3月28日 最も熱烈な歓迎 3月14日 膠州湾の守備 
            3月16日 清廷の同情
            3月17日 南阿清人問題
            3月20日 独逸の現在人口 
            3月24日 南阿坑夫問題
            3月27日 独逸議会と遠征費
            3月29日 独逸皇帝の勧告
            3月30日 モロッコ会議

世界情勢

31

モロッコ警察問題 佛国委員は、独逸の代表者にモロッコ警察問題は、公開の会議に於いて決定されなければならないと告げた。

大使信任状の提出 日本大使林子爵は、昨日王室から差し遣わされた馬車で参内

佛国委員の宣言 佛国委員の提言は決して通商及び経済上の均等主義並びに門戸開放を排除するものではない。

モロッコ警察問題 27日ロンドン特約通信員発

アルゼシラス来電―モロッコ会議に於ける佛国委員は、独逸の代表者に次の様に告げた。モロッコ警察問題は、公開の会議に於いて決定されなければならない。下調整の段階は既に、完全に終了しており、この上話合いの余地は無い。

大使信任状の提出 28日上海経由ロンドンロイター社発

日本大使林子爵は、昨日王室から差し遣わされた馬車で、館員を従え参内し、大使の信任状を奉呈した。王は最高の儀礼を以て大使を接見された。

佛国委員の宣言 同上

アルセシラス来電によれば、佛国委員レバール氏は、佛国委員の提言は決して通商及び経済上の均等主義並びに門戸開放を排除するものではない。これらの問題は十分に今回の会議で討議されるべきものであると考えると宣言した公文を独逸委員ラドウイッツ氏に送付した。

 

32

米国大統領と軍備 米国大統領は平和な時に陸海軍の戦力を最高のレベルに維持する必要を述べた書簡を陸軍卿に送り、陸軍卿は一般布令としてこれを部内に配布し、且つこれに添えた書簡で、東郷大将の功績を引用

米国大統領と軍備 1日上海経由ロンドンロイター社発

米国大統領ルーズベルト氏は、予め戦争に備える為に、平和な時に陸海軍の戦力を最高のレベルに維持する必要を述べた書簡を陸軍卿に送り、陸軍卿は一般布令としてこれを部内に配布し、且つこれに添えた書簡で、東郷大将の功績を引用し、又米国軍隊の参考とすべきものとして、東郷大将が戦役終了の際、部下に示した連合艦隊解散の辞を掲げた。

 

33

モロッコ会議の昨今 露帝は両国の関係が平和でなければ、必要とする外債を佛国に、到底求める事が出来ない。その為会議が無事に解決することを望んでいる。

南昌事変の佛国 佛国公使は、巡撫(じゅんぶ)の免職と損害賠償を要求した。

モロッコ会議の昨今 2日上海経由ロンドンロイター社発

アルビンノスに於いては、一般に有望な感情が見られるが、しかしモロッコ会議は一向に進展しない。

現在各種の勢力を利用して、頻りに佛独両国を接近させようとする者がいる。その顕著な一例は露帝であり、露帝は両国の関係が平和でなければ、必要とする外債を佛国に、到底求める事が出来ない。その為会議が無事に解決することを望んでいる。

南昌事変の佛国 2日北京特派員発

佛国公使が先月23日、南昌地方の民心が不穏であると警告した際に、外務部は外国人を十分に保護すべしと警告したにも拘らず、25日に暴動が発生した。そのため佛国公使は、巡撫(じゅんぶ)の免職と損害賠償を要求した。

 

34

ロンドン市長の同情 日本の凶作地を救済する義援金の募集を開始した。

南昌事件続報 江西(こうせい)巡撫は、佛国軍艦が九江に留まって、南昌に入らない事を懇願し

ロンドン市長の同情 3日ロンドン特約通信員発

ロンドン市長は、日本の凶作地を救済する義援金の募集を開始した。

南昌事件続報 3日上海特派員発

江西(こうせい)巡撫は、佛国軍艦が九江に留まって、南昌に入らない事を懇願し、又発砲して人心を騒がせ事がない様に電報にて要請してきた。

米国の砲艦エルカノとベルラロボスの2隻が九江に停泊している。

九江に駐在の米国領事は、懸案を交渉する命を受けて、去る1日砲艦スナイフにて南昌に向かった。

 

35

米清談判 清廷が即刻、排米運動を厳禁する声明を発するべきである

米清談判 4日上海特派員発

米国公使ロックヒル氏は、清廷が即刻、排米運動を厳禁する声明を発するべきであるとの本国政府からの訓令に接して、外務部に対して交渉したと思われる。

 

36

モロッコ会議 わざと会議の進行を妨げる様な独逸の術策は、列国委員の不満を買っている。

モロッコ会議(終局愈々近し) モロッコ会議は、遂に英国委員ニコルソン氏の警察問題に関する提案を可決した。

モロッコ会議 5日ロンドン特約通信員発

アルセシラス来電―英国委員の警察問題に関する提案は、月曜日に討議され、可決される予定である。わざと会議の進行を妨げる様な独逸の術策は、列国委員の不満を買っている。

モロッコ会議(終局愈々近し) 5日上海経由ロンドンロイター社発

モロッコ会議は、遂に英国委員ニコルソン氏の警察問題に関する提案を可決した。従って速やかに本会議の決議が行われる予定である為に、最早終局に近づいたものと思われる。

 

37

露国革命党暴行 露国の革命党は、郵便局、郵便馬車、銀行等を襲撃し、金品を強奪した。

英国の凶作義損 ロンドン取引所は、1万ポンド(10万円)を東北飢饉救済金として支出した。

教案と排外熱 外交社会の一部には、南昌の事件を実際の事実とするならば、宣教師の罪は実に大きいとの説がある。

露国革命党暴行 6日ロンドン特約通信員発

露国の革命党は、しばしば白昼に郵便局、郵便馬車、銀行等を襲撃し、短銃で役員を脅迫して金品を強奪した。これらの騒動はもっぱらキエフ、リガ等で発生している。

英国の凶作義損 5日上海経由ロンドンロイター社発

ロンドン取引所は、1万ポンド(10万円)を東北飢饉救済金として支出した。

教案と排外熱 6日北京特派員発

外交社会の一部には、最近教会事件が続出する事を見て、唯支那人の排外熱とのみ見るべきではなく、南昌の事件を実際の事実とするならば、宣教師の罪は実に大きいとの説がある。清国側に於いては、この機会に乗じて天主教の神父の野蛮を唱えて、教会事件の予防策を講じようとする強硬な意見を懐いている。

 

38

モロッコ会議別報 露国委員は唯一の解決手段して、モロッコ警察の管理をフランスとスペインの両国に委任する事を提議した。

モロッコ会議別報 7日上海経由ロンドンロイター社発

アルゼシラス来電―露国委員は唯一の解決手段して、モロッコ警察の管理をフランスとスペインの両国に委任する事を提議した。佛国委員レボーアル氏はこの提議に同意し、佛国は、モロッコの主要都市八か所に、2000名のモロッコ人で組織した警察隊を配置する意見である旨を明言した。これに対して独逸委員ラドイツフ氏は、警察組織には列国も参加して、且つ経済上均等の権利を獲得する事を主張したがスペイン及びポルトガルの委員は、何れも佛国委員の意見に同意した。

 

39

佛国内閣危機 佛国議会に於ける政教分離法案の討議は、政府の負けとなり、政府は辞職せざるを得ないであろう。

モロッコ問題 タンジールのモロッコ官憲は、アルゼシラス会議の議決を受託する意思はないと公言した。

佛国内閣危機 8日ロンドン特約通信員発

パリ―来電―佛国議会に於ける政教分離法案の討議は、政府の負けとなり、政府は辞職せざるを得ないであろう。右翼の全員、進歩共和党の半数、社会党の大部分及び多数の急進社会党が政府に反対した。首相のルーネー氏は微笑しつつ議会を去った。

解説:フランスの政教分離政策とは、国家とカトリック教会との関係を分かち、国家の宗教的中立を定めた法律で、1905年に施行された。「信教の自由と自由な宗教活動を国家が保障」するとともに「国家は宗教に対し、認証したり、賃金を支払ったりして助成してはならない」と規定している。

モロッコ問題 8日上海経由ロンドンロイター社発

タンジールのモロッコ官憲は、アルゼシラス会議の議決に拘束されず、又その採用を欲しない条項は全てこれを受託する意思はないと公言した。

 

310

英国議員手当問題 首相パンナマン氏は、議員に手当を支給する事を主義として賛成する

英国議員手当問題 9日上海経由ロンドンロイター社発

首相パンナマン氏は、議員に手当を支給する事を主義として賛成するが、しかし政府はこれを実行する為に必要な時と金を有しないと下院に於いて明言した。

 

311

モロッコ会議 オーストリーは、警察問題に関して調停案を提出し、採用され、可決された。

モロッコ会議 9日ベルリン特約通信員発

アルゼシラス会議に於いて、銀行問題は既に解決し、残っているのはその資本配分の問題のみである。

オーストリーは、警察問題に関して調停案を提出し、採用され、可決された。同案の要旨は、モロッコの四港に佛国将校を置き、三港にはスペイン将校を置き、そしてカサブランカに列国総監府を置くことである。

 

312

婦人選挙権運動 婦人選挙権の獲得を希望する婦人の群衆が昨日(9)、首相カメルパナマン氏の邸宅を包囲して、首相に面会するよう求めた

炭鉱大爆発 クーリエ炭鉱に於いて、大爆発が起こり、死者の数は膨大になると予測される。

婦人選挙権運動 (首相邸を包囲)11日上海経由ロンドンロイター社発

婦人選挙権の獲得を希望する婦人の群衆が昨日(9)、首相カメルパナマン氏の邸宅を包囲して、首相に面会するよう求めたたが容れられず、警察官によって解散を命じられた。この騒動によって3名が捕縛されたが、再度行わないよう注意の上釈放された。

炭鉱大爆発 同上

北部フランスのリーユ付近にあるクーリエ炭鉱に於いて、炭化水素ガスが発生した為に大爆発が起こり、就業中の炭坑夫1800名の内、救助されたのは若干名に過ぎず、死者の数は膨大になると予測される。

 

313

炭坑爆発惨状 クーリエ炭坑の爆発は、鉱山採掘史上に於ける空前の惨状であり、1219人が死亡したものと思われる。

炭坑爆発惨状 11日上海経由ロンドンロイター社発

クーリエ炭坑の爆発は、鉱山採掘史上に於ける空前の惨状であり、1219人が死亡したものと思われる。2万5千人余りの炭坑夫の家族等が坑道に群がり、その生死いかんを知ろうとしてひしめきあっている。坑道が陥落し、有毒ガスが充満している為に遭難者の救助作業は困難で、且つ危険を極めている。死者数百は既に搬出されている。

遭難者救助義援金が続々と集まり、又五十万フランの救助費支出案が議会に提出される予定である。

 

314

日英米協同 英米両国は、日本が支那の警察権を持つ事に対して援助を与え、米国は陸兵を派遣し、英国は海軍を使用して協同するであろう。

膠州湾の守備 独逸海相テルピッツ大将は、政府は決して交戦を目的とする要塞を青島(せいとう)に築造せず

日英米協同 12日ワシントン特約通信員発

英米両国は、日本が支那の警察権を持つ事に対して援助を与え、そして一朝事が起った時には、米国は陸兵を派遣し、英国は海軍を使用して協同するであろう。なお英国は砲兵を以て今後北京の公使館を守備するようになると思われると某外交家は語った。

膠州湾の守備 12日ベルリン特約通信社発

独逸海相テルピッツ大将は、帝国議会の予算委員会に於いて演説し、政府は決して交戦を目的とする要塞を青島(せいとう)に築造せず、ただ膠州湾の中立を保持する為に必要なだけの設備を備える為のみであると述べた。

 

315

クレマンソウ氏 サリアン氏を首相とする佛国の新内閣の組織が愈々成立した。そしてクレマンソウ氏の内務卿就任は極めて明白な事実

クレマンソウ氏 14日上海経由ロンドンロイター社発

サリアン氏を首相とする佛国の新内閣の組織が愈々成立した。プウルシオア氏は外務卿ニ、ポアンカレー氏は大蔵卿に、プリアン氏は陸軍卿に選任された。そしてクレマンソウ氏

の内務卿就任は極めて明白な事実であって、氏は来るべき総選挙に於いて、その手腕を発揮すると思われる。

 

316

佛国政府の訓令 代表者レベオワル氏は、一部を譲歩すべき旨の訓令をパリ―から受けた。

清国の制度調査委員 清国政府は、制度調査の為に委員を独逸に派遣しようとしており

清廷の同情 我が東北地方飢饉の惨状をお聞きになり、御手許金十万両を寄付される

佛国政府の訓令 14日ベルリン特約通信員発

モロッコ会議に於ける佛国の代表者レベオワル氏は、一部を譲歩すべき旨の訓令をパリ―から受けた。

清国の制度調査委員 同上

清国政府は、制度調査の為に委員を独逸に派遣しようとしており、上海の独逸総領事ドクトルクナッペ氏がその案内者の予定である。

清廷の同情(西太后の東北救恤義損) 14日北京特派員発

西太后(せいたいこう)には、我が東北地方飢饉の惨状をお聞きになり、被災民の救助として、御手許金十万両を寄付される旨、本日外務部から内田公使に照会があった。これは先例のない特殊な思召しである。

 

317

南阿清人問題 次官のウインストン・チャーチル氏は、トランスバールへの支那人の輸出を止めさせる考えがある事を鮮明にして、併せて鉱山所有者に向かって、支那人に代わるべき今少し自然に近いものを発見する方に全力を傾注する旨を勧告した。

在野党の警告 自治植民地の死活問題に干渉するような危険な政略を避けるべきである

南阿清人問題 18日上海経由ロンドンロイター社発

英国下院に於いて、次官のウインストン・チャーチル氏は、第一、清国駐在の領事に訓令して、清国政府の協力を止めさせる。第二、帝国政府が自由と真摯という民主主義の根本に反すると思われる提案をトランスバールの自治政府から出された時は、これを裁可しない事により、現在の特例が廃止される事になれば、トランスバールへの支那人の輸出を止めさせる考えがある事を鮮明にして、併せて鉱山所有者に向かって、支那人に代わるべき今少し自然に近いものを発見する方に全力を傾注するべきである旨を勧告した。

解説:トランスバール共和国では、大規模な金鉱が開発されていたが、1899年からこれに目を付けたイギリスによってボーア戦争が開始された。ボーア人は各地でゲリラ的抵抗を続けイギリスを苦しめたが、1902年に敗戦するとイギリスの「直轄植民地」とされた。その後イギリスはボーア人との関係改善を図り、1905年にはボーア人農民を勢力基盤とする人民党の成立を認め、1906年にトランスバール自治政府が樹立されている。

在野党の警告 同上

バルフォ氏及びチェンバレン氏は、自治植民地の死活問題に干渉するような危険な政略を避けるべきであると政府に警告することに一致した。

 

318

虐殺の教唆 露都に於いてユダヤ人の虐殺を教唆する文意の冊子を刊行、配布

米兵蛮行問題 米兵の蛮行に関する元老院の質問に対して、ウード将軍のフィリピン戦闘報告書が同院に提出された。

虐殺の教唆 17日ロンドン特約通信員発

セント・ピータスブルグ来電―露都に於いてユダヤ人の虐殺を教唆する文意の冊子を刊行、配布した者がいる。その筆者は2名の内務省高等官である。

米兵蛮行問題 17日上海経由ロンドンロイター社発

ワシントン来電―米兵の蛮行に関する元老院の質問に対して、ウード将軍のフィリピン戦闘報告書が同院に提出された。元老院に於いては、これに関して激烈な討論が行われた。虐殺を攻撃する声が、又もや盛んに起こった。

解説:1898年米西戦争の結果、米国の支援でフィリピンは独立した。しかし米国の植民地化に抵抗して米比戦争が起こり約60万人のフィリピン人が虐殺され、鎮圧されている。

 

819

南阿支那人問題 支那人を輸入禁止にする意をもらした氏の演説は、南阿の民心を激昂させている。

教会堂破壊 教会堂が迎神会費を払わなかった為に会堂が破壊された。

南阿支那人問題 18日上海経由ロンドンロイター社発

英国植民次官チャーチル氏の下院に於ける演説、特に支那人を輸入禁止にする意をもらした氏の演説は、南阿の民心を激昂させている。

教会堂破壊 17日上海特派員発

杭州来電―鎭海の小港地方に於いて、教会堂が迎神会費を払わなかった為に人民と衝突して、会堂が破壊された。

 

320

モロッコ会議 独墺(どくおう)両国の委員が、スイス人を警察総監に任用する事を提議した

独逸の現在人口 6605千百83名である。

モロッコ会議 19日上海経由ロンドンロイター社発

モロッコ会議は依然として行き悩みの中にある。

独墺(どくおう)両国の委員が、予めスイス政府に協議することなく、スイス人を警察総監に任用する事を提議した為に、スイス政府は非常に迷惑を感じている。

独逸の現在人口 同上

最近の統計によれば、独逸帝国の人口は、6605千百83名である。

解説:当時の日本の人口は4千3百万人であった。

 

321

南阿支那人問題 チェンバレン氏は、植民次官チャーチル氏に対する反論をロンドンタイムスに投書して

鴨緑江森林事業 直隷総督である袁世凱(えんせいがい)氏は、天津の豪商等を勧誘して金50万両を以て木材会社を起こし

南阿支那人問題 20日上海経由ロンドン特約通信員発

チェンバレン氏は、植民次官チャーチル氏に対する反論をロンドンタイムスに投書して、支那人労働問題に対する政府の態度を非難して、本件に付トランスバール政府の決定を禁じようとする企図は取り返しのつかない反動を招く事になると述べた。

鴨緑江森林事業 20日北京特派員発

直隷総督である袁世凱(えんせいがい)氏は、天津の豪商等を勧誘して金50万両を以て木材会社を起こし、将来は日本と協同して、鴨緑江の森林経営に当らせようとしている。

 

323

モロッコ問題 カサブランカ警察問題に付、もし中立国の警察を以て、この監視に当らせるのであれば、独逸は最後には譲歩する

南阿労働者問題 チェンバレン氏は勅撰委員会を組織して、トランスバールに於ける支那人労働者問題を調査させるべきであるとの動議を提出

モロッコ問題 22日ロンドン特約通信員発

アルゼシラス来電によれば、調停が行われるのではと一般に思われている。又官辺から漏れたと思われるベルリン来電によれば、カサブランカ警察問題に付、もし中立国の警察を以て、この監視に当らせるのであれば、独逸は最後には譲歩するであろうと述べている。

南阿労働者問題 同上

英国下院に於いて、特別用途費問題に関する討議中、チェンバレン氏は勅撰委員会を組織して、トランスバールに於ける支那人労働者問題を調査させるべきであるとの動議を提出した。しかし植民次官チャーチル氏は、これに反対して、この様な委員会は不必要で無用であり、一方的にどの様な決議をしようとも、一般の納得を得る事は出来ないと演説した。

採決の結果、この動議は378に対して、110票の少数で否決された。

解説:支那人労働者問題とは、過酷な条件で支那人労働者を鉱山労働に従事させている事

 

 

 

324

南阿坑夫問題 支那人の代わりに印度人を坑夫として南阿に輸入しようとする議案がある

新民屯鉄道 、新民屯と奉天間の鉄道線路の敷設に着手する必要がある

南阿坑夫問題 23日上海経由ロンドンロイター社発

支那人の代わりに印度人を坑夫として南阿に輸入しようとする議案があるが、気候の関係で多数の死者が派生する恐れがあり、結局この計画は実行し難いものと考えられている。

新民屯鉄道 23日北京特派員発

直隷(ちょくれい)総督である袁世凱(えんせいがい)氏は、新民屯と奉天間の鉄道線路を調査する為に、役人を派遣していたが、既にその調査が終了した為、速やかに日本と交渉して、敷設に着手する必要があると商務部に建議した。

解説:直隷総督とは首都北京を総括する長官

 

325

内乱の予想 露国政府は、来月中に罷工者が再び暴動を起こす恐れがある為に、その対策に努力している。

亜細亜土耳古境界問題 トルコ政府は、タバーブ地方はトルコ本来の領土であり、アカバ州に属すると主張

内乱の予想 24日上海経由ロンドン特約通信員発

露国政府は、来月中に罷工者が再び暴動を起こす恐れがある為に、その対策に努力している。

武装した列車が各鉄道に準備され、マルコニー式無線電信が備えられ、総督、知事等は学校に行かない生徒を容赦なく捕縛する命令を受けている。

亜細亜土耳古境界問題 24日上海経由ロンドンロイター社発

トルコ政府は、タバーブ地方はトルコ本来の領土であり、アカバ州に属すると主張して、その陸軍官憲は、シナイ半島の境界を示すために駐屯地を建設中である。

英国政府は、トルコがその地位を再考する事を希望して、トルコの意見を承認せず、英国巡洋艦ジアナは、その付近に停泊している。

 

3月26日

独逸の敗退 モロッコ会議に於ける独逸の立場に関して、独逸新聞は、益々不満を高めつつあり

独逸の敗退 25日上海経由ロンドンロイター社発

モロッコ会議に於ける独逸の立場に関して、独逸新聞は、益々不満を高めつつあり、宰相ビューロー公の地位が盛んに論議されている。

独逸政府は、露国外相ラムスドルフ伯の書簡を理由として、現在の難局から手を引くのではないかと思われている。

327

独逸議会と遠征費 独逸帝国議会は、独逸領ダマランドへ派遣する増援隊の為に1525万マルクを支出する事に同意した。

北満州自営運動 黒竜江省及び吉林省の財界の有志が大会を開いて、鉄道、鉱山、森林及び航運事業を両省民の資本を以て経営すべきであるとの決議を行い

独逸議会と遠征費 26日上海経由ロンドンロイター社発

独逸帝国議会は、予算委員会の議決どおり、独逸領ダマランドへ派遣する増援隊の為に1525万マルクを支出する事に同意した。なお委員会は、出来得る限り速やかに軍隊を撤兵する必要性を勧告した。

解説:ダマランドは、当時は独逸領南西アフリカであったナンビアにある。

北満州自営運動 26日北京特派員発

黒竜江省及び吉林省の財界の有志が大会を開いて、これら2省の鉄道、鉱山、森林及び航運事業を両省民の資本を以て経営すべきであるとの決議を行い、25日外務部及び商務部に対して、この決議を電報し、且つ露国は無論その他の列国からこれら2省の利権を要求する者がいるならば、断固として拒絶されたい、尚この事業に対する資本は、決して他国の助力を借りなくても、十分に調達する見込みがあり、本件については既に委員を上京させたので、詳細は委員から聴取されたいと電報をしてきた。

 

3月28日

モロッコ会議 アルセシラス会議は、約2週間、本会議を中止した後に昨日初めて開会した。

最も熱烈な歓迎 同上

英皇后の令旨 英国皇后陛下には、内外海員協会に電報を発せられ「最も熱心に歓迎の意を表する事を、彼の勇敢なものどもに伝えよ」と仰せられた。

市長の招宴

ロンドン市長は、市長官邸に於いて午餐会を開き

モロッコ会議 27日上海経由ロンドンロイター社発

アルセシラス会議は、約2週間、本会議を中止した後に昨日初めて開会した。今は、同会の前途は、明るいので今後は、多分連日開会される事となるであろう。

最も熱烈な歓迎 同上

英皇后の令旨

現在、サンドリンガム宮殿に在らせられる英国皇后陛下には、日本水兵招待の行事を担当している内外海員協会に電報を発せられ「我が英国の海岸に来たれる日本水兵に対して、最も熱心に歓迎の意を表する事を、彼の勇敢なものどもに伝えよ」と仰せられた。

市長の招宴

ロンドン市長は、市長官邸に於いて午餐会を開き、日本士官、日本大使館員及び英国海軍高級士官の多数を招待した。

解説:イギリスで建造された戦艦「香取」「鹿島」の受取の為、多くの士官、水兵が英国を訪れている。

 

329

独逸皇帝の勧告 貴国は諸々の事を必ずしも他国の施政(日本を意味しているのか)に倣ってはならないと語った

露清協商のその後 露公使は、満州軍と連絡して、探検隊を派遣して、北満州の鉱山を調査している

独逸皇帝の勧告 27日北京特派員発

独逸皇帝は、支那公使を謁見の際、現情勢は軍備の増強を必要としていると説き、貴国は特に必要であると論じ、且つ国家にはその国の主義があるべきで、貴国は諸々の事を必ずしも他国の施政(日本を意味しているのか)に倣ってはならないと語ったと遣外大使から26日、来電があった。或いは独逸が清国に対して、軍事上相当の助言を与えると宣言したと述べる者もいるが、この事情を誇張しているものと想像できる。

露清協商のその後 同上

露清協商は、依然として中断されたままである。外務部は、数回談判の開始を催促したけれども、露公使は、風邪との口実により、会議を拒絶している。その実彼が元気である事は、世人の知っている事である。彼が満州軍と連絡して、探検隊を派遣して、北満州の鉱山を調査している事は事実であり、会議の延期は、これに関係ありと思われる。

 

330

モロッコ会議 佛国は、アルゼシラス会議に於いて、従来から反対していた次の法案を承諾した。

モロッコ会議(独仏妥協なる)28日ベルリン特約通信社発

佛国は、アルゼシラス会議に於いて、従来から反対していた次の法案を承諾した。

一 モロッコ警察総監にオランダ人、又はスイス人を選任する件

二 この総監は、外交団の監督を受け、毎年検閲の為に国内を巡回する義務を有し、特別

な場合には、調査を行う権限を有する。

又銀行問題については、銀行監督官の任命をモロッコ国王に一任して、これに政府の官吏としての資格を与えるべきとの独逸の主張を貫徹した。

この様な次第で、会議の問題は既に解決されたので、キリスト教の復活祭の前に、閉会されると思われる。

 

331

モロッコ問題と英仏新聞 英国新聞の多数は、独逸はモロッコ問題について、その目的を達成したと報道している。

竹島観察談 視察委員の一行は記念として、松50本を植え付けた。

モロッコ問題と英仏新聞 29日ベルリン特約通信社発

英国新聞の多数は、独逸はモロッコ問題について、その目的を達成したと報道している。

佛国の諸新聞は、佛国将校が指揮するモロッコ警察を、列国で監理する提案が、列国会議で賛成された事に非常に不満を持っている。デパ新聞は、佛独両国の関係が一層親密である事を希望している。

竹島観察談(隠岐西郷)

 

視察委員の一行は、去る26日夜当港を出発して、27日朝竹島に到着した。同島は、二つの小島から成り、その一つの周囲は15町で、一つは10町であり、共に断崖である。平地は無く人の住居にも適しないが、飲料水があり、同島にはアシカが夥しく群生している。槍や小銃で9頭を捕獲し、1頭は生け捕りにした。一行は記念として、松50本を植え付けた。