明治39年11月

主要記事

  期日 日本関係   期日 露関係   期日 英米関連   期日 その他
11月1日 同盟国の与論 11月8日 露国の戦費  11月1日 阿片貿易の禁止 11月16日 英独佛情誼
11月2日 排日気勢現状 11月23日 西比利亜鉄道複線論 11月11日 英国陸相の陸軍論 11月17日 独逸の孤立
11月12日 小村大使の演説 11月25日 露国新聞の盲論  11月13日 清国阿片問題 11月21日 佛国海軍予算
11月16日 日本学童排斥問題  11月28日 黒龍鉄道敷設      11月25日 佛国海軍拡張案可決
11月22日 鉄道沿線の警察 11月28日 猶太人問題         
11月26日 鉄道談判終了 11月29日 黒龍鉄道頓挫         
11月29日 米国大統領の意思            

世界情勢

111

同盟国の与論 カルフォルニア州住の道理なき偏狭心を痛嘆して、合衆国政府がカルフォルニア州に国際条約を尊重させるための権力がある

阿片貿易の禁止 先に満場一致で英国下院を通過した印清阿片禁止の決議を実行する為、英国政府は如何なる措置を取る事が出来るか

同盟国の与論 30日ロンドン特約通信員発

ロンドンタイムス紙は、「米国における排日運動」と題して、その社説でカルフォルニア州民の道理なき偏狭心を痛嘆して、合衆国政府がカルフォルニア州に国際条約を尊重させるための権力があるのは当然で、同州民が日本人を排斥する事が出来るかどうかは問題にならないと論評した。

阿片貿易の禁止 31日上海経由ロイター社発

先に満場一致で英国下院を通過した印清阿片禁止の決議を実行する為、英国政府は如何なる措置を取る事が出来るかとの質問に対して、インド事務大臣は、アヘンの耕作、輸入及び消費を制限しても、本件に関して、清国からこれに対する返答があれば、あくまで同情の精神を以てこれを考慮しなければならないと答弁した。

駐清英国公使は、この要旨を清国政府に通告せよとの訓令を受けた。

 

112

排日気勢現状 サンフランシスコでは、日本料理店に対するボイコット運動が組織的に進行中であり

清国演習評 タイムス北京特派員は、清国の大演習を評して、将校は能力不足、士卒は教連不完全であるが、

排日気勢現状 1日上海経由ロイター社発

ニューヨーク来報によれば、サンフランシスコでは、日本料理店に対するボイコット運動が組織的に進行中であり、又若し合衆国法院が、日本学童を排斥する問題の裁判で、地方官憲に対し不法と決定する様な事がある場合には、日本人を迫害する暴動が起こる恐れがある。

清国演習評 同上

タイムス北京特派員は、清国の大演習を評して、将校は能力不足、士卒は教連不完全であるが、兵器は精良であり、軍紀も申し分が無いと言える。南北両軍の兵数は24千を超えていた。

 

113

商務長官の奔走 商務卿労働長官メットカーフ氏は、日米条約を楯とする日本政府の抗議に同情を表し、今回の問題を満足に解決する為、十分尽力する旨を声明した。

 

清国海賊問題 駐清英国公使ジョルダン氏は、広東(かんとん)沿岸の海賊を掃討し、且つ水上警察の改良について、清国政府に意見を述べる権利を付与されている

商務長官の奔走 2日サンフランシスコ特派員発

商務卿労働長官メットカーフ氏は、昨夜当地に到着し、本日2日、我が領事を訪問した。同長官は米国政府及び大統領ルーズベルト氏を代表して、日米条約を楯とする日本政府の抗議に同情を表し、今回の問題を満足に解決する為、十分尽力する旨を声明した。同長官は、本日2日教育局長と会見し、明日重ねて我が領事と正式に会見する予定である。

市大学長ジョルダン博士、及び加州大学のホイラー博士は、日本人の為に最も熱心に尽力中である。

清国海賊問題 2日上海経由ロイター社発

駐清英国公使ジョルダン氏は、広東(かんとん)沿岸の海賊を掃討し、且つ水上警察の改良について、清国政府に意見を述べる権利を付与されている旨、英国外相サー、グレーは明言した。

 

115

排日問題解決 当地の教育家の感情もようやく融和し、いかなる形式で解決すべきかについて、ワシントンの訓電を待っている。

排日問題解決 3日ワシントン特派員発

本日3日、上野領事は、商務労働長官に会見した。ワシントンからの訓電が到着した後でなければ確定しないけれども、当地の教育家の感情もようやく融和し、いかなる形式で解決すべきかについて、ワシントンの訓電を待っている。我が領事は、明後5日再会の予定である。

 

116

天長節祝賀会 カナダ首相ローリエー氏は、数年の後には、カナダと東洋間の貿易は、カナダと英本国のそれに劣らない様になるであろうと述べた。

ブルガリアと希臘 ブルガリア政府は、先般のギリシャ人排斥暴動に対して、ギリシャ人の損害を賠償する事を拒絶した

天長節祝賀会(加奈陀政府首相の演説)ロンドン特約通信員発

カナダオタワ来電―日本領事の能勢氏は、天長節の奉賀と日加通商条約締結の奉賀を兼ねて、著名な政治家、実業家を招待して宴会を開いた。席上、カナダ首相ローリエー氏は、最近の日本の進歩に言及し、日加間の新条約は、両国通商の発達に大いに資する所があるので、数年の後には、カナダと東洋間の貿易は、カナダと英本国のそれに劣らない様になるであろうと述べた。

ブルガリアと希臘 5日上海経由ロイター社発

ブルガリア政府は、先般のギリシャ人排斥暴動に対して、ギリシャ人の損害を賠償する事を拒絶した為、ギリシャ公使は、ブルガリア首府ソフィヤを退去し、再び同地に帰らないであろう。

 

117

佛国新首相の施政方針 佛国政府は、露佛同盟を維持し、露国との貴重な友好関係を持続すると同時に、防衛的兵力を以てその地位を維持する方針である

疑わしき報道 極東に於ける将来の戦争に際して、佛国の地位を強固にする為、海南島及びその他清国の土地を占領して置くべきである

佛国新首相の施政方針 5日上海経由ロイター社発

佛国首相クレマンソウ氏は、代議院に於ける演説の中で、佛国政府は、露佛同盟を維持し、露国との貴重な友好関係を持続すると同時に、佛国が今日の様に1等国の地位に進むことの出来た公正な政策を続行し、防衛的兵力を以てその地位を維持する方針であると言明し、更に政教分離法は、強圧的な手段を用いずこれを必ず実施すると述べ、更に所得税及び恩給制度に多大な改正を加えると断言した。

疑わしき報道 5日ベルリン特約通信社発

佛国植民新聞の報道によれば、佛国政府委員は、極東に於ける将来の戦争に際して、佛国の地位を強固にする為、海南島及びその他清国の土地を占領して置くべきであると主張する文書を元老院及び大議員の連合協議会に提出したと言われている。

 

11月8日

露国の戦費 日露戦闘の為、露国が実際に費やした額は、17億5千万円になるであろう。

佛国施政方針別報 佛国新内閣の施政方針は、軍備縮小に反対し、共和主義を拡充し

露国の戦費 7日ロンドン特約通信員発

露都来電―日露戦闘の為、露国の国庫が支出した戦費総額は、15億7千万円とされている。但しこれは、国庫から支出した金額であり、実際に費やした額は、17億5千万円になるであろう。

佛国施政方針別報 6日ベルリン特約通信員発

佛国新内閣の施政方針は、軍備縮小に反対し、共和主義を拡充し、且つ露国同盟を固守する事にある。

 

119

共和党依然優勢 合衆国におけるこの度の知事選挙は、各州を通算すると共和党の勝利に帰した。

佛国新内閣 新首相の発表した方針は、一般の平和には直接支障を生じないと信じられている。

共和党依然優勢 7日サンフランシスコ特派員発

合衆国におけるこの度の知事選挙は、各州を通算すると共和党の勝利に帰した。多分次期の国会議員選挙においても、共和党は優に過半数を制する事が出来るであろう。

ニューヨーク州に於いては、農民は民主党の候補者ハースト氏を援け、市部は皆共和党の候補ヒユウス氏に投票した。

佛国新内閣 7日ベルリン特約通信社発

佛国新首相クレマンソウ氏がこの度発表した施政方針の中で、明瞭を欠く部分について、昨今、非常に論評が盛んである。しかし新首相の発表した方針は、一般の平和には直接支障を生じないと信じられている。

 

1110

露国の課税と剥権 露国政府は、300万ポンドの収入を得る為、親所得税法を制定中である。

海峡植民地弗銀 政府は海峡植民地の弗銀の純分を減じる事を承認したのかとの質問を行った

露国の課税と剥権 9日上海経由ロイター社発

露国政府は、300万ポンドの収入を得る為、親所得税法を制定中である。

新選挙法によれば、前回の国会議員選挙の際、選挙権を有した階級で、今回それを失うものが多くなる。諸新聞は、多数の議員選挙権を、欲しいままに剥奪する事を鋭く攻撃する。

海峡植民地弗銀 同上

下院に於いて、政府は海峡植民地の弗銀の純分を減じる事を承認したのかとの質問を行った者がいた。植民次官チャーチル氏はこれに対して、然りと答弁した。

解説:海峡植民地とは、マレー半島に置かれたイギリスの植民地の総称で、ペナン、マラッカ及びシンガポールからなる。

 

1111

伊国財政 イタリーは、今後10ヵ年間で16万ポンドづつ、軍事費を増加する計画である。

英国陸相の陸軍論 私は、あくまで英国式の最良、最有力な陸軍を得たいと思っている。

伊国財政 10日上海経由ロイター社発

イタリーは、本年度、250萬ポンドの剰余を生じた。又同政府は、今後10ヵ年間で16万ポンドづつ、軍事費を増加する計画である。これは主として銃砲を新たに購入する費用に充てる為である。

英国陸相の陸軍論 同上

ロンドン市長官官舎の宴席で、陸相ホルジーン氏は、乾杯の辞に答えて、次の様に述べた。

我が英国海軍の実力は、実に世界に於ける最良の仕組みである。陸軍のみ、独り最良ではない。私は、大陸式の陸軍を必要としていない。あくまで英国式の最良、最有力な陸軍を得たいと思っている。政府は、この陸軍によって、貿易の発達、争議の解決、及び民間人の安全を確保すべき責任を感じるものである。

1112

南阿復動揺 トランスバール人のフエレラ及び他のボーア人数名が、喜望峰植民地の西北地域に入り込み、反乱を起こそうと計画中である。

小村大使の演説 小村大使は、日本人の希望は、両国が相互に、十分同盟を維持する事にあると確信する旨述べ、大喝采を博した。

南阿復動揺 11日上海経由ロイター社発

ケープタウンからの公電によれば、トランスバール人のフエレラ及び他のボーア人数名が、喜望峰植民地の西北地域に入り込み、反乱を起こそうと計画中である。既に2カ所の警察官舎を襲い、武器及び弾薬を奪った。軍隊は、鎮圧に向かい、警官150名も又直ちに、プリエスカに向かって出発した。

解説:オランダ系移民であるボーア人が、イギリスの植民地との武力闘争の結果、南アフリカの北部にトランスバール国を建国している。

小村大使の演説 同上

小村大使は、ギルド、ホールに於けるロンドン市長の夜会に於ける答辞で、日英両国間に和協親睦の関係を深める為に、一層の外交上の尽力を尽くすと主張し、日本は英国との同盟に熱心で、日本人の希望は、両国が相互に、十分同盟を維持する事にあると確信する旨述べ、大喝采を博した。

 

11月13日

清国阿片問題 カンタベリー僧正は、阿片問題に対するインド政庁の方針に対し、英国政府に抗議した在清米国宣教師の覚書を、外相サー、デドワード、グレー氏に送付した。

清国阿片問題 12日上海経由ロイター社発

カンタベリー僧正は、阿片問題に対するインド政庁の方針に対し、英国政府に抗議した在清米国宣教師の覚書を、外相サー、デドワード、グレー氏に送付した。外相は、これに対して、5月31日のインド事務大臣モーレー氏の演説を引用して、英国政府は、未だ阿片飲用禁止の上諭及び阿片官業について、清国政府から何ら公式の通知を受けていない旨を回答した。

 

11月14日

英領南阿近状 ケープ植民地知事は、独領南阿知事に、協同して盗賊を捕縛し、且つ境界を越えて独領に入った強盗殺人の犯罪者を英国に引き渡すことを請求した。

日清条約改定稟議 現行の日清通商条約の中で、利益均等の規定が無い為、清国臣民は、諸外国に比べて、不利益を被っている。

英領南阿近状 13日上海経由ロイター社発

ケープ植民地知事は、独領南阿知事に、電報を発信し、協同して盗賊を捕縛し、且つ境界を越えて独領に入った強盗殺人の犯罪者を英国に引き渡すことを請求した。

南阿土人の暴動は、一般土民の支援を受けていないと思われる。

日清条約改定稟議 13日上海特派員発

長崎駐在の清国領事は、この頃外務部に対して、次の稟議を行ったと言われている。

現行の日清通商条約は、本年7月を以て有効期限を経過した。この条約の中で、利益均等の規定が無い為、清国臣民は、諸外国に比べて、不利益を被っている。今後6カ月以内に改訂しなければ、この条約は、更に10年間継続する条項があるので、至急にこの不利益の点を改訂するよう公使に電命して頂きたい旨稟議した。

 

1115

独国農相辞職 将軍は、独領アフリカのタマランド軍需品に関する醜聞に関係したと伝えられ、又外国の牛馬肉を厳しく排斥して、牛馬肉の大欠乏を来したため、市民の大不評を招いたと言われている。

太平洋艦隊発遣の真意 英国大西洋艦隊がモロッコに向かったのは、示威運動の為ではなく

独国農相辞職 14日上海経由ロイター社発

独帝は、久しく躊躇された後、遂に農務大臣ポドピエルスキ将軍の辞職を受理された。

将軍は、独領アフリカのタマランド軍需品に関する醜聞に関係したと伝えられ、又外国の牛馬肉を厳しく排斥して、牛馬肉の大欠乏を来したため、市民の大不評を招いたと言われている。

将軍の辞職は、本日再び開かれる帝国議会に於いて、反対党の有力な政府攻撃材料を奪う事になり、その結果宰相ビューロー公の勢力を強める事になるであろう。

太平洋艦隊発遣の真意 同上

公報によれば、英国大西洋艦隊がモロッコに向かったのは、示威運動の為ではなく、唯予め計画された巡洋航海に出発したに過ぎないと言われている。

 

11月16日

日本学童排斥問題 商務労働長官メットカーフ氏は、日米条約に基づいて、日本の学童葉、他の最恵国人民と同等の地位に立って、教育を受ける権利がある旨を言明した。

英独佛情誼 独逸帝国議会に於いて、ビュロウ宰相は、独仏同盟は、佛国が過去の事実について抱く感情から考えると、到底実現する事は無い

日本学童排斥問題 15日上海経由ロイター社発

商務労働長官メットカーフ氏は、訪問者の質問に対して、日米条約に基づいて、日本の学童は、他の最恵国人民と同等の地位に立って、教育を受ける権利がある旨を言明した。従ってカルフォルニア州の法律は、違憲と判決されると思われる。

英独佛情誼 同上

独逸帝国議会に於いて「独逸がますます孤立の状態に陥る」事に関して、ある議員の質問に対して、ビュロウ宰相は、独仏同盟は、佛国が過去の事実について抱く感情から考えると、到底実現する事は無い、しかしモロッコ事件は、独仏両国民が平和を希望する事を証明している。現時点で、両国の間には、別段重大な政治上の意見の相違は無い。なお又、英独両国は、従来、兎角一致する事が無かった。これについては、両国共に責任があり、独逸は、海軍を以て英国と競争する意図は無いと言明した。

解説:第1次世界大戦の開始まで8年の独逸の情勢である。

 

11月17日

独逸の孤立 独逸宰相ビュロウ公は、独逸は、日本との関係を親密にするよう注意しなければならない。

独逸宰相演説評 独逸帝国議会の各派は、社会民主党を除いて、全てビュロウ宰相の外交演説を称賛した。

独逸の孤立 15日上海経由ロイター社発

独逸宰相ビュロウ公は、帝国議会における演説に於いて、独逸は、日本との関係を親密にするよう注意しなければならない。極東における独逸の目的は、全く通商的であり、平和を維持する必要を説き、最後に独逸が若し鋭利な剣を握っているならば、孤立する事は恐れる必要は無いと明言した。

独逸宰相演説評 15日ベルリン特約通信社発

独逸帝国議会の各派は、社会民主党を除いて、全てビュロウ宰相の外交演説を称賛した。

諸新聞も又、論評に忙しく、一般に独逸政府が議会に多数を制している事を認めている。

佛国に関する宰相の演説は、直ちに電報でパリーに伝えられ、同地の与論は概して宰相の所見に一致している。

 

1118

独逸宰相演説の反響 欧州の諸新聞は、ビュロウ宰相の外交演説は、平和の堅実を意味するものであると論評した。

摩洛哥問題と佛西 モロッコ問題について、佛スペイン両国は、タンジール及びその付近に於ける秩序を維持することを希望しているのみであると述べた。

独逸宰相演説の反響 16日ベルリン特約通信社発

欧州の諸新聞は、ビュロウ宰相の外交演説は、平和の堅実を意味するものであると論評した。

米国新聞も亦、宰相の演説を歓迎した。

摩洛哥問題と佛西 同上

英国外相サー、エドエアード、グレーは、下院に於ける演説で、モロッコ問題について、佛スペイン両国は、タンジール及びその付近に於ける秩序を維持することを希望しているのみであると述べた。

 

1119

九龍鉄道約款 広東九龍鉄路契約の主要な条項は、次の通りである。

(1)   借款総額は、150億ポンドであり、鉄道を担保とする。

九龍鉄道約款 18日上海特派員発

広東九龍鉄路契約の主要な条項は、次の通りである。

(2)   借款総額は、150億ポンドであり、鉄道を担保とする。

(3)   額面100ポンドに付94ポンドを払い込む。

(4)   利息は、年5分、期間は50年とし、12年後から元利を支払い、それまでは利子のみを支払う。

(5)   始めは単線とし、順次複線とする。

(6)   8か月以内に起工しない場合には、契約を無効とする。

(7)   総督は、総辦を派遣して、英国の技師長、支配人を補佐する。

解説:中国の広州と香港の九龍を結ぶ鉄道であり、英国が1895年清国から鉄道敷設権を取得し、1911年に開通した。

 

1120

労働者保護条例記念 昨日は、ヴィルヘルム一世が、労働者保険保護条例を発布した第25回記念日であった。

今後の独仏関係 同上

佛国社会党の党首ジョウレー氏は、佛独の関係は、次第に現在よりも親密になるであろうと観察している。

労働者保護条例記念 18日ベルリン特約通信社発

昨日は、ヴィルヘルム一世が、労働者保険保護条例を発布した第25回記念日であった。独帝は当日の官報によって、この条約の効果を称揚し、且つ又現帝自身は、あくまでも故老帝の労働者に対する政策を継承する決心である旨を宣言された。

今後の独仏関係 同上

佛国社会党の党首ジョウレー氏は、「ヒューマニティー」新聞で、ビュロウ宰相の外交演説を論評して、佛独の関係は、次第に現在よりも親密になるであろうと観察している。

 

1121

玖馬復不穏 キューバの情勢は、極めて険悪である。

佛国海軍予算 佛国は、建造費とその工事進捗の速度に於いて、到底英国と競争する事は出来ない。その為比較的戦闘艦を少なくし、潜水艦を多くする方針を取ったと言われている。

玖馬復不穏 20日ワシントン特約通信員発

キューバの情勢は、極めて険悪である。タフト氏の計画は、選挙(キューバ大統領の?)前に騒乱が再発する恐れがある為に、着手に至っていない。

解説:米国がキューバからスペインを追い出したが反乱が続いている。関連記事が827日、928日等にある。

佛国海軍予算 20日ロンドン特約通信員発

パリー来電―下院は6隻の戦闘艦を建造しようとする政府案並びに3隻の通報艦を建造すべきであるとする予算委員会の案について討議した。海軍予算に関する政府の説明によれば、政府の計画は、英仏が開戦する事もあり得ると認められた時のものである。しかし佛国は、建造費とその工事進捗の速度に於いて、到底英国と競争する事は出来ない。その為比較的戦闘艦を少なくし、潜水艦を多くする方針を取ったと言われている。

討議は中止された。

 

1122

佛国政府の好意 佛国政府は、北洋大学軍医科生徒の留学を支援する事を提案し

鉄道沿線の警察 鉄道沿線に巡査300人を配置する予定であり

佛国政府の好意 21日上海特派員発

佛国政府は、毎年3千フランを支出して、北洋大学軍医科生徒の留学を支援する事を提案し、袁世凱氏は、既に2名を派遣している。

鉄道沿線の警察 20日大連特派員発

関東州外の警察、即ち鉄道沿線に巡査300人を配置する予定であり、既に一部で配置を終わり、今月中には全部完了するであろう。

 

1123

西比利亜鉄道複線論 露国参謀本部顧問オルコンスキー公は、日清両国艦隊の勢力に対して、極東に於ける露国の領土が危険な状態にある事を指摘

佛国政教問題後報 、首相クレマンソー氏は、1212日までに教会財産の引渡を行う必要がある為、財産調査を行う事は正当であると弁明した。

西比利亜鉄道複線論 21日ロンドン特約通信員発

露国参謀本部顧問オルコンスキー公は、日清両国艦隊の勢力に対して、極東に於ける露国の領土が危険な状態にある事を指摘し、シベリア鉄道を複線にすべきであると痛論した意見書を発表した。

佛国政教問題後報 22日上海経由ロイター社発

保守党のダンカン、ド、ヴィヤン氏は、元老院に於いて、首相クレマンソー氏が再び寺院の財産調査を始めた事を非難した。クレマンソウ氏は、これに答えて、1212日までに教会財産の引渡を行う必要がある為、財産調査を行う事は正当であると弁明した。ここで元老院は、政府の信任投票を行ったが、その結果32に対し213の多数で、政府の勝利に帰した。

 

 

 

1125

露国新聞の盲論 日米の紛争が平和的に解決できるかどうかを疑い、両国の関係は、日露の開戦前の情勢に類似していると説き

英清阿片協商 清国はインドの利益を害して、単に自国の歳入入増加を図る為に阿片の禁止を口実に利用しない明確な証拠を提供しなければならない。

佛国海軍拡張案可決 政府提出の海軍拡張案を可決し、本年度に戦艦6隻の新造に着手することを是認した前期議会の議決通りに確定した

露国新聞の盲論 24日ロンドン特約通信員発

露都来電―ノーオエ、ウレミヤ紙は、 駐日露国公使パクメチエフ氏が、テゲレンに於ける漁業会社の利益を保護できない事を非難した。

又同紙は、日米の紛争が平和的に解決できるかどうかを疑い、両国の関係は、日露の開戦前の情勢に類似していると説き、なお更にフィリピン群島は、列強に加わった日本の獲物になるだろうと論評した。

解説:この見方は、現在からみると必ずしも盲論ではなかった。アメリカは、スペインとの戦争を終え、フィリピンを領有すると日本が潜在的な脅威となり、その後対日戦争計画の研究を開始している。

英清阿片協商 24日上海経由ロイター社発

ロンドンタイムスは、清国に於ける阿片禁止問題を論評して、次の様に述べた。

清国はインドの利益を害して、単に自国の歳入入増加を図る為に阿片の禁止を口実に利用しない明確な証拠を提供しなければならない。万一この様な不都合が事実として証明される場合には、英国は協商を拒絶すべきである。

佛国海軍拡張案可決 24日上海経由ロイター社発

佛国代議員は、112票対393票の多数を以て、政府提出の海軍拡張案を可決し、本年度に戦艦6隻の新造に着手することを是認した前期議会の議決通りに確定した。本案を討議の際に、海軍卿は、遠洋艦隊を設置する必要を主張し、もし日本が防御艦隊のみを有していたならば、その地位は、実に絶望的であっただろうと述べ、又潜航艇は、未だ実験の段階であると言明した。

 

1126

佛国艦隊の警戒 佛国地中海艦隊の一部は、ツーロンに於いて糧食を積み込み中である。

鉄道談判終了 日露両国の鉄道談判は、更に回を重ねて、本日25日終了の予定である。

佛国艦隊の警戒 25日上海経由ロイター社発

佛国地中海艦隊の一部は、ツーロンに於いて糧食を積み込み中である。これは、モロッコに於いて騒動が発生した場合に備える為である。

鉄道談判終了 25日寛城子特派員発

日露両国の鉄道談判は、更に回を重ねて、本日25日終了の予定である。会合の回数は、全てで14回となった。停車場の敷地は、軌道を中心として、縦500サーゼン、横400サーゼンの長方形である。2627両日は、お互いに招宴を交換し、28日、両国委員は、共に帰国の予定である。

解説:これは、満州鉄道に関する記事である。サーゼンとは、長さの単位で、1サーゼンは約2.2mである。

 

1127日 

佛西とモロッコ 佛とスペインの活動は、タンジール付近に限られるであろう。

希伊元首交歓 イタリア皇帝は、美術、詩、学問の淵源であるローマ及びギリシャの名誉は、今に至ってもなお滅びず、両者の歴史が将来、互いに結合する様になる事を望むと述べた。

佛西とモロッコ 26日上海経由ロイター社発

佛とスペインの活動は、タンジール付近に限られるであろう。その目的は、強力な反乱者ラシェリーによって奪い取られたモロッコ国王の権力を回復する事を主とすべきと公表された。

希伊元首交歓 同上

ギリシャ王は、キリナル宮に於いて、イタリア皇帝の饗応を受けた。イタリア皇帝は、ギリシャ王の為に、乾杯の演説を行い、美術、詩、学問の淵源であるローマ及びギリシャの名誉は、今に至ってもなお滅びず、両者の歴史が将来、互いに結合する様になる事を望むと述べた。これに対してギリシャ王は、答辞を述べ、ギリシャのイタリア人民に対する好意、友情の深い事を熱心に述べた。この宴会には、ルーマニア、セルビア、ブルガリアの代表者も案内されたが皆出席しなかった。

 

1128

黒龍鉄道敷設 政府は、ニコラーエフスからハバロフスクを経て、ウラジオストックに至る幹線式軍事鉄道に着手する事に決定した。

独逸と海軍根拠地 独逸が海軍根拠地として、タイ国の沿岸の島を取得する意思を持っている

猶太人問題 ユダヤ人制圧を目的とする各警察規則及びユダヤ人に対する通商上の制限は、一切排除されるであろう。

黒龍鉄道敷設 26日ペテルスブルグ特約通信員発

露国政府は、いよいよ明春から、ニコラーエフスからハバロフスクを経て、ウラジオストックに至る幹線式軍事鉄道に着手する事に決定した。そしてストレチンスクとハバロフスクとの間に、仮工事を行い、シベリア鉄道に接続させる計画である。

独逸と海軍根拠地 26日ベルリン特約通信社発

英国新聞グローブスは、独逸が海軍根拠地として、タイ国の沿岸の島を取得する意思を持っていると報道するが、独逸外務省は、これを否定している。

猶太人問題 同上

露国政府は、ユダヤ人問題に関し、断固たる措置を取る決心であり、ユダヤ人制圧を目的とする各警察規則及びユダヤ人に対する通商上の制限は、一切排除されるであろう。又、ユダヤ人に土地の所有権を付与するか否かの問題は、次期の国民会議に於いて決定される予定である。

 

1129

黒龍鉄道頓挫 黒竜江に沿って黒龍鉄道を建設する請負契約は破棄された。

米国大統領の意思 大統領ルーズベルト氏は、加州に於ける日本人の排斥運動に、少しも同情を持っていないと信じられる。

黒龍鉄道頓挫 27日ペテルスブルグ特約通信員発

露国の請負業者等は、本日、政府が希望する清国国境に近い黒竜江に沿って黒龍鉄道を建設する事に一致せず、この為この請負契約は破棄された。

米国大統領の意思 28日ロンドン特約通信員発

ワシントン来電―大統領ルーズベルト氏は、加州に於ける日本人の排斥運動に、少しも同情を持っていないと信じられる。

なお大統領は、次期の国会に提出する予定の教書に於いて、米国の市民となる事を希望する日本人に帰化を認める意見を発表し、且つ現在の連邦政府が持っていない権力、即ち条約に規定された外国人の権利を強行させる権力を要求するであろう。