期日 | 日本関係 | 期日 | 露関係 | 期日 | 英米関連 | 期日 | その他 |
10月7日 | 北満現状一班 | 10月6日 | 猶太人の犠牲 | 10月1日 | 米国干渉宣言 | 10月6日 | 無線電信会議 |
10月9日 | 新任の米国総領事 | 10月11日 | 猶太人迫害 | 10月4日 | 埃土問題落着 | 10月10日 | 独逸外相の墺伊行 |
10月12日 | 最北端まで開通 | 10月5日 | 米国玖馬干渉 | 10月12日 | 軽気球の成功 | ||
10月14日 | 布哇の日本人 | 10月8日 | 最速最良の戦艦 | 10月25日 | 摩洛哥問題 | ||
10月17日 | 鉄道全通後の長春 | 10月11日 | 巴奈馬運河と支那人 | 10月31日 | 摩洛哥又動揺 | ||
10月23日 | 小学児童拒絶問題 | 10月20日 | 米国増派艦隊 | ||||
10月24日 | 東部諸州は反対 | 10月21日 | 英国海相演説 | ||||
10月24日 | 三大新艦天覧 | ||||||
10月25日 | 排日問題抗議無視 | ||||||
10月26日 | 排日問題後報 | ||||||
10月27日 | 米国政府の眞意 | ||||||
10月30日 | 排日問題 | ||||||
10月31日 | 米国大統領の切望 |
明治39年10月
10月1日
前南阿総督警訓 南阿に於いて、憂うべき事は住民の統一を欠く事である。しかしながら之よりもさらに危険なのは、英国に対する非国民的思想の勃興である。
米国干渉宣言 米国は、キューバに仮政府を樹立し、タフト氏自ら同島総督である旨を布告した。
前南阿総督警訓 29日上海経由ロイター社発
前南阿総督ミルナー卿は、喜望峰植民地の英人2万5千名が署名した請願書を受け、これに答えて次の様に述べた。
南阿に於いて、憂うべき事は住民の統一を欠く事である。しかしながら之よりもさらに危険なのは、英国に対する非国民的思想の勃興である。非国民的思想は、帝国の如何なる場所に於いても危害をもたらすに違いが無いが、なかんずく南阿に於いて最も甚だしい。英国政府が一度この恐るべき危険性を悟ったならば、帝国保全の為に、必ず猛然と一大統合を図る様になるであろうと明言した。
米国干渉宣言(仮政府建設される) 米国は、キューバに仮政府を樹立し、タフト氏自ら同島総督である旨を布告した。なお仮政府は、現在の事態に鑑み、恒久的政府が設立されるまで、これに代わって、公共の安全を保持する為に平和の回復を図る事を唯一の目的する旨宣言した。
10月2日
米国と玖馬 米国大統領は、6千の兵に直ちにキューバに向け、出発するよう命じた。
南阿出稼清国人 最後の南阿鉱山が輸入した清国の労働者の一団ハ、ダーバン港に到着した。
米国と玖馬 1日上海経由ロイター社発
タフト氏の措置(新政府措置の事か)は、キューバ議会が大統領パルマ氏の後任者を選挙する事が出来ない結果である。
米国大統領は、6千の兵に直ちにキューバに向け、出発するよう命じた。
タフト氏ハ、キューバの政治犯を釈放した。
キューバ人は、米国の措置に反対せず。
解説:9月28日に関連記事「米国干渉」がある。
南阿出稼清国人 同上
最後の南阿鉱山が輸入した清国の労働者の一団は、ダーバン港に到着した。
解説:9月26日に関連記事「南阿送還清国人」がある。
10月3日
玖馬愈亡滅 米国がキューバを永遠に占領しようとする様子が、日ごとに多く見られる様になり
米国兵続々上陸 ハバナに上陸した米国兵450名は、民心を安堵させるため、シエンツエゴその他の地方に分遣された
玖馬愈亡滅 2日上海経由ロイター社発
米国がキューバを永遠に占領しようとする様子が、日ごとに多く見られる様になり、頻りに英国がエジプトを占領した事例を引きつつある。そしてキューバの官兵は、既に武装を解き始めた。
米国兵続々上陸 同上
ハバナに上陸した米国兵450名は、民心を安堵させるため、シエンツエゴその他の地方に分遣された。尚6千の米国兵は、10日以内に上陸すると思われる。
10月4日
埃土問題落着 エジプトとトルコ間の境界問題に関する協約は、10月1日を以て調印された。
米国干渉の真意 米国がキューバに干渉する唯一の目的は、キューバを助けて、キューバに進歩をもたらす為であると演説した。
埃土問題落着 3日ロンドン特約通信員発
カイロ来電―エジプトとトルコ間の境界問題に関する協約は、10月1日を以て調印された。この協約により、両国の境界は、クラファーからアカバの西3マイルの地点に至るまで、殆ど一直線上にあるとされた。これにより、さしも両国の間に紛糾した争議の原因も完全に除去される事になった。
解説:5月1日に関連記事「埃土境界問題」がある。
米国干渉の真意 3日上海経由ロイター社発
タフト氏は、ハバナ大学の開校式に臨み、米国がキューバに干渉する唯一の目的は、キューバを助けて、再びキューバ人の手で、キューバに進歩をもたらす為であると演説した。
10月5日
米国玖馬干渉 米国大統領は、再び自治の機会をキューバに与えたいと切実に希望している。
タフト氏帰国 タフト氏は、キューバの独立が維持され、又大赦令が発布されるであろうと明言した。
米国玖馬干渉 4日ワシントン特約通信員発
米国大統領は、再び自治の機会をキューバに与えたいと切実に希望している。
マグーン氏は、キューバ臨時政府の首班で、フアンストン将軍は、遠征隊司令官に任じられた。
米国政府は、軍隊及び軍需品を輸送する為に11隻の汽船を借り上げた。
タフト氏帰国 3日ベルリン特約通信社発
米国国務卿代理タフト氏は、帰国の途に就いた。氏は、出発の際、キューバの独立が維持され、又大赦令が発布されるであろうと明言した。
パナマ運河地総督は、キューバの臨時総督に任命された。
10月6日
猶太人の犠牲 最近4カ月間、ワルシャワに於いて殺害されたユダヤ人は164名、負傷者は、59名であった。
無線電信会議 万国無線電信会議が開催され、有名なマルコニー氏も会議に参列した。
猶太人の犠牲 5日上海経由ロイター社発
最近4カ月間、ワルシャワに於いて殺害されたユダヤ人は164名、負傷者は、59名であった。
露都の機械学校その他に於いて、111個の爆裂弾が警官によって押収された。
無線電信会議 4日ベルリン特約通信社発
万国無線電信会議が開催され、独逸逓信大臣クラアエステ氏が列国の委員に対して、歓迎の辞を述べ、有名なマルコニー氏も会議に参列した。しかし会議は公開されなかった。
10月7日
北満現状一班 日本商人は、その後続々と入ってきており、既に百余名に達しているが今だに商業を営んでいる者はいない。
北満現状一班 6日寛城子特派員発
我が最前線である帽家屯(ぼうかとん)に居る憲兵分隊長から寛城子(かんじょうし)露国旅団参謀部へ交渉した日本人の長春入り拒絶の件は、未だ露国側からその理由について回答がない。但し日本商人は、その後続々と入ってきており、既に百余名に達しているが今だ商業を営んでいる者はいない。露兵は、常に市外(城内)を横行しており、ともすれば日本人の行動に妨害を加え、又は不快の念を与える事は戦争前と異なる事無し。
10月8日
最速最良の戦艦 ドレッドノートは、速力21ノット半に達し、予定を半ノットも超過した。実に世界における最高速力の戦闘艦である。
露国の財政弁明 露国政府は、パリー新聞ル、タンの露国財政悲観論に反論して、
最速最良の戦艦 6日上海経由ロイター社発
ドレッドノートは、速力21ノット半に達し、予定を半ノットも超過した。実に世界における最高速力の戦闘艦である。
海軍省は、この艦は運行の具合が非常に良く、操縦回転が容易であり、まれに見る良艦であると述べた。
解説:このドレッドノートは、世界の建艦思想を一変させる新しい戦艦であり、戦艦三笠等の戦艦を旧式なものとしてしまった。そして戦艦大和が超弩級戦艦と言われる所以は、このドレッドーノートを超える戦艦の意味である。
露国の財政弁明 同上
露国政府は、パリー新聞ル、タンの露国財政悲観論に反論して、大蔵大臣コユーツエフ氏の書簡の目的は、単に不当な支出を避ける必要を指示する事にあると述べた。しかしこの弁明は、その実、却ってタンの説を確かめたものと認められる。
10月9日
新任の米国総領事 米国は只、綿布、小麦粉、石油等の商品を主として、雑貨の様なものは、日本の商人に任すのが適当と考えている。
新任の米国総領事(米国の満州貿易)8日奉天特派員発
本日、新任の米国総領事ストレート氏を訪問した。氏の談によれば、満州に於ける米国商品の売れ行きは、戦争前に一旦、長足の進歩をしたが、戦争の為一時止まってしまった。今日から又基礎を固めるつもりである。米国は只、綿布、小麦粉、石油等の商品を主として、雑貨の様なものは、日本の商人に任すのが適当と考えている。現在奉天に居る米国人は、唯一営口の保険代理店のみである。
10月10日
玖馬兵の乱暴 キューバの叛乱兵は、解隊後、ギネス及びチンザル地方に於いて乱暴を働く
独逸外相の墺伊行 独逸外務大臣は、休暇を利用して、両国に行こうとしている。
玖馬兵の乱暴 9日ワシントン特約通信員発
キューバの叛乱兵は、解隊後、ギネス及びチンザル地方に於いて乱暴を働く為、ファンストン将軍は、月曜日からその鎮圧に従事する予定である。
独逸外相の墺伊行 8日ベルリン特約通信員発
独逸外務大臣チルシュキー、ポエケンドルフ氏は、休暇を利用して、オーストリーとイタリア両国の政治家と私的な関係を温める為に、両国に行こうとしている。三国同盟の関係が良好なこの時期に、特別な深い意味があるわけではない。
解説:8年後の1914年に独逸、オーストリー等の同盟国対イギリス、フランス等の連合国との間で第1次世界大戦が始まった。
10月11日
巴奈馬運河と支那人 パナマ運河の工事は、終に契約請負に決定した。しかし支那労働者を使用する事には、何らの影響を及ぼさない。
猶太人迫害 「露人同盟」の会長は、露国に於けるユダヤ人の抹殺を勧告し、且つ余は憲法を望まず、余の求める所は、正義と独裁政治であると放言した。
巴奈馬運河と支那人 9日上海経由ロイター社発
ワシントン来電―パナマ運河の工事は、終に契約請負に決定した。しかし支那労働者を使用する事には、何らの影響を及ぼさない。
解説:39.8.23日支那苦力募集の記事があるが、マラリヤや黄熱病等の苛烈な環境下で労働者が集まらない為、支那人を募集している。日本政府は日本人の応募を禁止した。
猶太人迫害 同上
9月30日以来、百名以上の者が露国に於いて死刑に処せられた。
「露人同盟」の会長は、オデッサに於いて、三百名の暴民に向かい、露国に於けるユダヤ人の抹殺を勧告し、且つ余は憲法を望まず、議会に求めず、余の求める所は、正義と独裁政治であると放言した。この為か、暴民は「ユダヤ人を抹殺せよ」と叫びつつ、市街を横行し、各商店は直ちに店を閉じた。その為ユダヤ人は、暴行の防止をオデッサ知事に要請した。
10月12日
独逸坑夫同盟罷工 独逸の炭山地方に於ける坑夫の運動がますます盛んとなり、全国工業の停止を計画しつつある。
軽気球の成功 10日ベルリン特約通信社発
ツッペリン伯は、2時間でスイスのボーデン湖を首尾よく一周した。
最北端まで開通 日本が領有する最北端の駅の架設工事が完成し、本日11日から一般列車の運転を開始した。
独逸坑夫同盟罷工 10日上海経由ロイター社発
独逸の炭山地方に於ける坑夫の運動がますます盛んとなり、賃金の増加を要求し、全国工業の停止を計画しつつある。同盟罷工者は、英国の坑夫に訴えて、その援助を求めようとしている。
軽気球の成功 10日ベルリン特約通信社発
ツッペリン伯は、自由に操縦できる軽気球に乗り、2時間でスイスのボーデン湖を首尾よく一周した。
最北端まで開通 11日寛城子特派員発
日本が領有する最北端の駅(長春から約3里南方の孟家屯(もうかとん)にある)の架設工事が完成し、本日11日から一般列車の運転を開始した。清国の官民は、開通が意外と早く行われた事を歓喜した。また駅の本工事が完成した上は、連絡の利便を図るために、長春に通じる道路を修理する予定であり、この工事費は人民が負担する様である。
10月13日
露都訪問見合せ 英国の委員が、露国議会に建言書を提出する為に、露国を訪問する計画は、見合わせられる事になった。
伊国前陸相の失言 イタリアの軍備は、アルプスからクワルネーロに至るまでの間に於いて、イタリアの現状が維持される為の最良の保障であると述べた。
露都訪問見合せ 12日上海経由ロイター社発
英国の委員が、露国議会に建言書を提出する為に、露国を訪問する計画は、意思の疎通を欠くところがあり、露国の誤解を招く恐れがある為に見合わせられる事になった。尤も委員の中の一人が、単独で露都に赴き、私的に建言書を提出するのではと言われている。
伊国前陸相の失言 同上
イタリアの元陸軍卿で、現在同国第四軍団司令官であるペダチ将軍は、チューリンに於ける演説で、イタリアの軍備は、アルプスからクワルネーロに至るまでの間に於いて、イタリアの現状が維持される為の最良の保障であると述べた。
元来、クワルネーロは、オーストリアの領土である為、この演説は人心を動揺させ、オーストリアとイタリアの関係に面白くない結果を生じる恐れがある。
10月14日
布哇の日本人 当地の白人は、ハワイに於ける日本人の勢力が、ますます増大する事を憂慮している。
英仏親交と独逸 英佛の親交は、独逸に対する脅威であるとの見方は、一笑に付されるべき愚論であると述べた。
布哇の日本人 ワシントン特約通信員発
ホノルル来電―当地の白人は、ハワイに於ける日本人の勢力が、ますます増大する事を憂慮している。日本人は、今や砂糖耕作地での労働を支配するのみならず、自ら小耕地を経営し、なお小商売に於いても、着々と大きな勢力を占めつつある。
英仏親交と独逸 12日ベルリン特約通信社発
英国植民次官ウインストン、チャーチル氏は、グラスゴー市に於ける演説で、英佛の親交は、独逸に対する脅威であるとの見方は、一笑に付されるべき愚論であると述べた。
10月15日
独逸政界の裏面 欧州の諸新聞は、引き続きホウヘンローヘ公の日記について、論評を戦わしつつある。完全な宮廷における陰謀の結果であると考えられる。
独逸政界の裏面 14日上海経由ロイター社発
欧州の諸新聞は、引き続きホウヘンローヘ公の日記について、論評を戦わしつつある。
この日記の発刊は、独逸に於ける第二流の外交家の間に、激しい論争を引き起こさせ、以て独逸を混乱の中に投じようとする策略から行われたものであり、完全な宮廷における陰謀の結果であると考えられる。そして独逸新聞の多数は、古傷の詮索を始めているが、英国新聞は、独逸に於ける官僚政治の醜態を摘発する事は、独逸国民を強める所以であると論評した。
10月16日
佛国とモロッコ 佛国政府は、アルゼリアのモロッコ国境の不穏を抑える手段を取る事は必然であろう。
佛国とモロッコ 15日ロンドン特約通信員発
パリー来電―佛国政府は、アルゼリアの安全を保証する意味で、そのモロッコ国境の不穏を抑える手段を取る事は必然であろう。
10月17日
戦敗記念碑除幕式 ハンケ元帥は、独帝の命を奉じ、ヒイエナ及びアウエルステッドの古戦場に設立された1806年10月14日の戦争記念碑の除幕式を挙行した。
鉄道全通後の長春 日本人で、その後当地に正業を開始したのは、僅かに薬家が1軒あるのみである。その他は、皆あいまいは旅館等である。
戦敗記念碑除幕式 15日ベルリン特約通信社発
ハンケ元帥は、独帝の命を奉じ、ヒイエナ及びアウエルステッドの古戦場に設立された1806年10月14日の戦争記念碑の除幕式を挙行した。式は、非常に厳粛に行われ、参列者に深い感動を与えた。(記者曰く、これ等の場所は、何れもプロシャの兵がナポレオン一世に敗れた場所である)
鉄道全通後の長春 16日寛城子特派員発
日本人で、その後当地に正業を開始したのは、僅かに薬家が1軒あるのみである。その他は、皆あいまいは旅館等である。
当地の物価は、奉天に比べて2割方高い。孟家屯まで日本の鉄道が開通した為、その乗車に使用する日本の軍票や銀行券の需要が増え、従来はルーブル紙幣より1割安であった軍票も現在は、5分乃至1割高となり、支那札に対して2割高となった。
10月19日
日本人の迷惑 諸外国人に対する支那人の敵愾心は、日を追って激しくなり、
前独逸宰相日記問題 アレキサンドル、ホウヘンローヘ公は、その父の日記を刊行した事に対して責任を負い、
摩洛哥の暴動 佛国新聞は、南部モロッコに起こった暴動の将来を憂慮して、回教徒とキリスト教徒の間に騒動が起こる事を予言している。
日本人の迷惑 17日ワシントン特約通信員発
清国に駐在する米国領事の通報によれば、諸外国人に対する支那人の敵愾心は、日を追って激しくなり、そして米国領事は、その原因を日本人の誘導に起因していると見ている。
解説:清国人の米国への入国制限の為、全国で米製品の不買運動が起こった事がある。
前独逸宰相日記問題 16日上海経由ロイター社発
アレキサンドル、ホウヘンローヘ公は、その父の日記を刊行した事に対して責任を負い、ビュロウ宰相と長時間会談した後、アルサス州副総督の現職を辞任した。
解説:10月15日に関連記事がある。
摩洛哥の暴動 17日ベルリン特約通信社発
佛国新聞は、南部モロッコに起こった暴動の将来を憂慮して、回教徒とキリスト教徒の間に騒動が起こる事を予言している。これについて佛国政府は、現在カピレ族と交渉中である。
10月20日
英仏交歓 ロンドン市長の為に開かれた佛国外務省の宴会にて、佛国外相ブウルジョア氏が次の祝辞を述べた。
ロ提督無罪 ロゼストウエンスキー提督は、無罪の宣告を受けたとの報道が、露都からあった。
米国増派艦隊 米国政府は、米国人の利益を一層有効に保護する為に、更に4隻の有力な装甲巡洋艦を極東に派遣するよう命じた。
英仏交歓 18日上海経由ロイター社発
ロンドン市長の為に開かれた佛国外務省の宴会にて、佛国外相ブウルジョア氏が次の祝辞を述べた。
今やパリーに於いて祝福されつつある英仏両国の暗黙のうちにできた英仏両国の約束は、単に両国政府間の合意の結果に留まらず、長く継続している両国民の与論の接近及び意思共同の結果であり、この事が、実に英仏の親交に重大な意義を付与するものである。
駐佛英国大使バーチル氏は、英国政府の名に於いて答辞を述べ、英仏の親交にも言及した。
散会後ロンドン市長は、観劇に行かれた。
ロ提督無罪 19日ベルリン特約通信社発
ロゼストウエンスキー提督は、無罪の宣告を受けたとの報道が、露都からあった。
米国増派艦隊 内国電報
18日着ロンドン電報によれば、米国政府は、米国人の利益を一層有効に保護する為に、更に4隻の有力な装甲巡洋艦を極東に派遣するよう命じた。これは、米国海軍省が去る7月中に公表した大西洋艦隊装甲巡洋艦の分遣隊の司令官ブラウンロン少将がオイスター祭の観艦式後、直ちにマニラに来る予定の4隻を指したものと思われる。同少将は、到着の後にアジア太平洋艦隊司令長官に任じられるであろうと伝えられる。
解説:米国太平洋艦隊の基地は、マニラにあった。
10月21日
清国税関問題 英国政府は、列国と協議の上、その意見を述べる為に、機敏な処置を取るであろうと声明した。
英国海相演説 海相は、新艦ドレッドノートの備砲は、試射の結果非常な好成績を収めたと明言し、更に将来の海戦は、巨砲を具備した大戦艦の戦争であると述べた
清国税関問題 19日上海経由ロイター社発
英国外相サー、グレーは、ニューカッスルの商業会議所に書簡を送り、清国税関改革の上諭で列挙された改正事項の中には、単に形式のみならず、制度を抜本的に改正するのではと思われる点もある。その為英国政府は、列国と協議の上、その意見を述べる為に、機敏な処置を取るであろうと声明した。
英国海相演説 同上
英国海相ツイード公、リトルトン将軍及び小村大使は、シェツイドルにあるカットラース、ホールの宴会に招待された。その席上で海相は、新艦ドレッドノートの備砲は、試射の結果非常な好成績を収めたと明言し、更に将来の海戦は、巨砲を具備した大戦艦の戦争であると述べた後、海軍縮小の結果についての悲観的予想に反論し、縮小と言う事は、畢竟少額の経費節減に他ならず、如何なる事があっても海軍の効力を減殺する事があってはならないと断言し、最後に長期に亘る海軍計画を否認し、その時の必要に応じて毎年計画を立てることが最良であると結論した。
10月22日
石油会社詐欺事件 オハイオ州のスタンダード石油会社の詐欺事件の陪審員は、同会社が1903年7月6日以来、商業抑制の陰謀を企てていた事を発見した。
現代宗教の衰勢 スペインの宗教の排斥に関する法案は、佛国の宗教分離法に似た断固たる規定を設け
佛艇沈没続報 ビゼルタで沈没した佛国潜航艇リウタンの所在が判明した。
石油会社詐欺事件 20日上海経由ロイター社発
オハイオ州のスタンダード石油会社の詐欺事件の陪審員は、審判の結果、同会社が1903年7月6日以来、商業抑制の陰謀を企てていた事を発見した。これを法律に照らすと、会社の毎日の事業は、格別の犯罪行為として、各々5千ドル以内の罰金に処せられるべきものである。
現代宗教の衰勢 同上
スペインの宗教の排斥に関する法案は、佛国の宗教分離法に似た断固たる規定を設け、宗教団体が、教育事業に当ることを禁じ、且つ団体の数を減少させ、厳重な国家監督の元の置く事とした。
佛艇沈没続報 20日ベルリン特約通信社発
ビゼルタで沈没した佛国潜航艇リウタンの所在が判明した。引揚は困難であろうと言われている。
10月23日
小学児童拒絶問題 小学児童の拒絶問題に関して、領事及び日本人会は、再三教育会に抗議を申し込んでいるが一向に回答がない。
仏領の出師準備 アルゼリア国シチベラベスに居る第1外国連隊は、何時でも南方に向かい、出発できるよう準備を命じられた。
小学児童拒絶問題 22日桑港特約通信員発
居留民の激昂
小学児童の拒絶問題に関して、領事及び日本人会は、再三教育会に抗議を申し込んでいるが一向に回答がない。200名余りの我が児童は、完全に停学しており、その去就に戸惑っている。居留民は、非常に激昂して、訴訟を準備中で、明日23日に居留民大会を開く予定である。
米人も又反対す
オークランドで開会中の加州米人牧師会も、今回に処置に対する反対決議を行った。
仏領の出師準備 22日上海経由ロイター社発
アルゼリア国シチベラベスに居る第1外国連隊は、何時でも南方に向かい、出発できるよう準備を命じられた。リアンティ将軍は、アンセフラにある駐屯地に帰った。
10月24日
東部諸州は反対 東部諸州は、カリフォルニア州に於ける日本人排斥運動に少しも同情を示さず、ニューヨークの新聞は、全てサンフランシスコ市民の行動を不当としている。
露国首相の宣言 政府は、各政党以外の超然とした存在でなければならない為に、議院内閣の様なものは、全く不可能である。
三大新艦天覧 薩摩の進水式の際に、三大新艦が勢ぞろいした壮観を天覧に供すると言われている。
東部諸州は反対 23日ロンドン特約通信員発
ニューヨーク来電―東部諸州は、カリフォルニア州に於ける日本人排斥運動に少しも同情を示さず、ニューヨークの新聞は、全てサンフランシスコ市民の行動を不当としている。サンフランシスコ市民は、先般の地震以来、日本人が市の最良区域を占めようとしているのを見て、嫌悪感を持つ者がいると言われている。
解説:日本人労働者や清国の苦力は、農園経営者や鉄道建設業者に安い労働力として求められていたが、白人労働者の組合は、ロビー活動を通じて苦力排斥と同様に日本人排斥運動も行った。
露国首相の宣言 23日上海経由ロイター社発
露国首相は、今回の国会議員選挙について、次の様な宣言を述べた。
露国に於いては、政府は、各政党以外の超然とした存在でなければならない為に、議院内閣の様なものは、全く不可能である。
三大新艦天覧 内国電報
来月15日、横須賀軍港に於いて、挙行される予定の大戦闘艦薩摩の進水式には、海軍当事者の奏請により、聖上(陛下を敬って呼ぶ言葉)が御臨幸あらせられると内定したとの事である。先日来、同港に於いて艤装工事中である新艦香取も間もなく竣工する予定であり、又呉港に於いて既に竣工を終了した鹿島艦も、舞鶴への回航を見合わせ、今月下旬か或いは来月初旬に再び横須賀軍港に回航して、薩摩の進水式の際に、三大新艦が勢ぞろいした壮観を天覧に供すると言われている。
解説:香取、鹿島は、日本海海戦で活躍した戦艦三笠と同じくイギリスで建造され、日本に回航されたばかりである。薩摩は、日本で初めて建造された戦艦であり、いろいろ欠陥もあったが、やがてこの技術が戦艦大和につながっていった。
10月25日
排日問題抗議無視 当地の教育局から領事に回答があり、抗議は全て無効となった。そして領事は、昨日23日、更に抗議を再提出した。
摩洛哥問題 ロンドンタイムス及び佛国の諸新聞は、モロッコに対し軍事行動を取る事を佛国政府に勧告した。
排日問題抗議無視 24日サンフランシスコ特派員発
昨23日、当地の教育局から領事に回答があり、抗議は全て無効となった。そして領事は、昨日23日、更に抗議を再提出した。
我が政府は、本件について、日本国民を抑圧し、世論を宥めているとの電報があった。
当地の米国人は、一般に日本の反対を軽蔑する傾向があり、クロニクル新聞も昨日23日の社説で、日本は、米国人を排斥する権利があり、然らば米国も又、日本人を排斥する権利があるとして日本の激昂を冷笑し、サンフランシスコの教育局が採った学校政策を是認した。
摩洛哥問題 23日ベルリン特約通信社発
ロンドンタイムス及び佛国の諸新聞は、モロッコに対し軍事行動を取る事を佛国政府に勧告した。しかし独逸新聞は、沈黙を守っている。
10月26日
英露協商 露国新聞ノウオエ、ウレーミヤ紙も露国は、ペルシャ湾に関する一切の権限を放棄して、北部ペルシャの勢力範囲を保持すべきであると勧告した。
排日問題後報 ニューヨークタイムス紙は、この問題を論評して、東部諸州は、この様に偏狭な地方的運動には、一切同意しないと述べている。
英露協商(波斯問題妥協)24日ロンドン特約通信員発
露土来電―ペルシャ湾に関する英露協商の主要な原則については、既に両国政府の意見が一致している。
露国新聞ノウオエ、ウレーミヤ紙も露国は、ペルシャ湾に関する一切の権限を放棄して、北部ペルシャの勢力範囲を保持すべきであると勧告した。
解説:ペルシャ北部はカスピ海に面し、ロシヤの勢力が及んでいた。
排日問題後報 24日上海経由ロイター社発
ニューヨークタイムス紙が日本人激昂の東京電報を受け取るまで、サンフランシスコに於ける排日運動については、ニューヨークに何らの報道も到達していなかった。
今回の騒動は、サンフランシスコの各学校からアジア人の児童を排斥する運動と社会主義労働者の運動が一緒となって勃発したようである。
ニューヨークタイムス紙は、この問題を論評して、東部諸州は、この様に偏狭な地方的運動には、一切同意しないと述べている。
解説:10月25日に関連記事がある。
10月27日
米国政府の眞意 国務卿ルート氏は、速やかにカルフォルニア州に於ける日本人排斥運動の真相を調査するであろうと青木大使に確約した。
摩洛哥近情 佛国政府の機関紙タンは、モロッコとアルゼリアの境界に於ける紛争について、佛国の行動を過大に報道する事を非難した。
米国政府の眞意 26日ロンドン特約通信員発
ニューヨーク来電―国務卿ルート氏は、速やかにカルフォルニア州に於ける日本人排斥運動の真相を調査するであろうと青木大使に確約した。
米国政府は、他の外国人と区別して、日本人の利益を害しようとする計画に反対し、この為、米国の商品が日本に於いて排斥され、且つ日本との親交が損なわれる事を憂慮している。
米国大統領は、日本労働者の排斥を目的とする法案を裁可しないであろう。
摩洛哥近情 25日ベルリン特約通信社発
佛国政府の機関紙タンは、モロッコとアルゼリアの境界に於ける紛争について、佛国の行動を過大に報道する事を非難した。しかし同地方は無論、タンジールの北部に於いてすら外国人の地位は、現在しばしば不安定である。
解説:タンジールは、モロッコの海の玄関である。
10月28日
米国政府の眞情 大統領ルーズベルト氏は、商務労働卿メットカーフ氏に対して、サンフランシスコに出張し、排日問題を審査するよう命令した。
一般米人の憂慮 ワシントンでは、米国の商品は、日本に於いて排斥され、且つ米国は、日本人の友情を失うのではないかと憂慮されつつある。
米国政府の眞情 27日東京直電ロイター社発電
長時間に亘る閣議の後、大統領ルーズベルト氏は、商務労働卿メットカーフ氏に対して、サンフランシスコに出張し、排日問題を審査するよう命令した。
米国大統領は、日本人に条約上の権利を享有させ、且つ排日思想の存在は、サンフランシスコ地方に限っている事を証明する為に、全力を尽くす事を希望している。
解説:白人労働者の組合は、ワシントン政界へのロビー活動を盛んに行い、低賃金の日本人等の労働者の入国禁止を働きかけている。
一般米人の憂慮 同上
ワシントンでは、米国中央政府が日本人に対する敵愾心を打ち消す為に如何に尽力しても、米国の商品は、日本に於いて排斥され、且つ米国は、日本人の友情を失うのではないかと憂慮されつつある。
10月29日
米国政府の苦心 米国大統領は、排日問題を詳細の調査し、条約上の権利を日本人に享有させる為、全力を尽くす事を商務労働長官に訓令した。
制服武官又禁制 露国官憲は、再び制服を着用した日本武官が長春に入る事を禁止する
米国政府の苦心 28日上海経由ロイター社発
米国大統領は、サンフランシスコの排日問題を詳細の調査し、条約上の権利を日本人に享有させる為、全力を尽くす事を商務労働長官メツトカーフ氏に訓令した。
米国に対する日本人の悪感情は、米国政府の尽力により緩和されるであろうと期待される。
制服武官又禁制 27日寛城子特派員発
露国官憲は、再び制服を着用した日本武官が長春に入る事を禁止する旨前線の憲兵隊長に通告した。
10月30日
非常なる誤解 ワシントンに於ける官吏社会の一部では、日本学童の排斥は、日本の傲慢に対する打撃であると考えている。
排日問題 カルフォルニア州教育局長アルトマン氏は、我々のやり方が悪いとするならば、カルフォルニア州憲法が悪い為である。
非常なる誤解 29日ロンドン特約通信員発
ニューヨーク来電―米国大統領ルーズベルト氏は、閣議を招集したが各大臣は、サンフランシスコに於ける排日運動に就いて、非常に憂慮している。
ワシントンに於ける官吏社会の一部では、日本学童の排斥は、日本の傲慢に対する打撃であると考えている。
青木大使がこの程国務卿ルート氏を訪問した際、態度と語調は、極めて異常であったように報道されている。
排日問題(加州教育局長談)29日ニューヨーク特派員発
カルフォルニア州教育局長アルトマン氏は、次の様に述べた。
我々のやり方が悪いとするならば、カルフォルニア州憲法が悪い為である。我々は、カルフォルニア州憲法により、隔離学校を建てるしかない。商務卿メットカーフ氏が来られたならば相談するつもりであり、そうすれば良好な解決策があると思われ、それまで待つより外ない。
メットカーフ氏の出張は、サンフランシスコ市民に学校問題の容易でない事を知らせた。
10月31日
米国大統領の切望 米国高等法院は、ワシントン市は日本児童を排斥する権利が無い事を採決するかもしれない。
排斥の一手段のみ ワシントンからの報道によれば、日本児童は未だかって退校を命じられた事は無いし、又将来も退校を命じられる事は無いであろう。
摩洛哥又動揺 同上
英人1名とスペイン人1名がアルジラに於いて捕らわれた。
米国大統領の切望 29日ワシントン特約通信員発
米国高等法院は、ワシントン市は日本児童を排斥する権利が無い事を採決するかもしれない。米国大統領は、最高の裁判所によって州の権利に関する問題を採決させ、条約に規定された事項について、将来、州と中央政府との間に起こるべき意見の衝突を防ぐ事を切望している。
排斥の一手段のみ 29日上海経由ロイター社発
ワシントンからの報道によれば、日本児童は未だかって退校を命じられた事は無いし、又将来も退校を命じられる事は無いであろう。但し白人の利益の為、法律で東洋人を隔離し、東洋人の為に別に学校を設けるのが得策であろうと考えられているのみと言う。
摩洛哥又動揺 同上
英人1名とスペイン人1名がアルジラに於いて捕らわれた。その結果、佛スペイン両国は、アルゼシラス会議により許可された警察権を行使し、且つ各1隻の軍艦を派遣した。同時に、有名なライスリーは、モロッコ政府の命により、アルジラを占領して、同地の暴動を鎮圧した。そして佛国政府は、モロッコ政府の侵略的行為に対して、何時でも抵抗できるよう準備をして置く事をアルゼシラス駐在武官に訓令した。
11月1日
同盟国の与論 カルフォルニア州住の道理なき偏狭心を痛嘆して、合衆国政府がカルフォルニア州に国際条約を尊重させるための権力がある
阿片貿易の禁止 先に満場一致で英国下院を通過した印清阿片禁止の決議を実行する為、英国政府は如何なる措置を取る事が出来るか
同盟国の与論 30日ロンドン特約通信員発
ロンドンタイムス紙は、「米国における排日運動」と題して、その社説でカルフォルニア州住の道理なき偏狭心を痛嘆して、合衆国政府がカルフォルニア州に国際条約を尊重させるための権力があるのは当然で、同州民が日本人を排斥する事が出来るかどうかは問題にならないと論評した。
阿片貿易の禁止 31日上海経由ロイター社発
先に満場一致で英国下院を通過した印清阿片禁止の決議を実行する為、英国政府は如何なる措置を取る事が出来るかとの質問に対して、インド事務大臣は、アヘンの耕作、輸入及び消費を制限しても、本件に関して、清国からこれに対する返答があれば、あくまで同情の精神を以てこれを考慮しなければならないと答弁した。
駐清英国公使は、この要旨を清国政府に通告せよとの訓令を受けた。