期日 | 日本関係 | 期日 | 露関係 | 期日 | 英米関連 | 期日 | その他 |
8月3日 | 虚構虚傳 | 8月5日 | 樺太降伏 | 8月1日 | 英国艦隊と独逸 | 8月2日 | 和蘭の南洋暴徒征伐 |
8月3日 | パナマ運河の不好望 | 8月5日 | 媾和条件予想 | 8月6日 | 英佛新協約 | 8月9日 | 排米運動と外商 |
8月6日 | 全権会同順序 | 8月15日 | 媾和特報 | 8月8日 | 平和の祝杯挙がる | ||
8月17日 | 媾和特報 | 8月10日 | ポーツマス談判場 | ||||
8月18日 | 媾和別報 | 8月13日 | 商務卿、大統領に反対する | ||||
8月19日 | 媾和特報 | ||||||
8月20日 | 媾和特報 | ||||||
8月21日 | 18日会見別報 | ||||||
8月22日 | 媾和続報 | ||||||
8月23日 | 露全権の主張 | ||||||
8月29日 | 媾和特報 | ||||||
8月31日 | 媾和特報 |
明治38年8月
東京朝日新聞明治三十八年八月一日(火)
大統領の周旋 媾和談判で問題が生じても、大統領ルーズベルト氏はこれを進捗させるであろう
英国艦隊と独逸 英国海峡艦隊必ず友情ある歓待を受けるであろう
大統領の周旋 31日ワシントン特約通信員発
欧州外交家の予想によれば、もし戦争の紛糾と継続との間に媾和談判で問題が生じても、大統領ルーズベルト氏はその間を周旋してこれを進捗させるであろう。
英国艦隊と独逸 30日ベルリン特約通信社発
英国海峡艦隊がバルト海沿岸の独逸諸港を歴訪するであろうとの報道は、独逸新聞紙上に於いて冷静に之を迎えた。同艦隊は必ず友情ある歓待を受けるであろうと。
東京朝日新聞明治三十八年八月二日(水)
和蘭の南洋暴徒征伐 和蘭軍は南セレベスのバッツに上陸した
米国武官 東京米国公使館付海軍大尉が本日午前当鎮守府を訪問した
和蘭の南洋暴徒征伐 1日上海経由ロンドン特約通信員発
和蘭(オランダ)軍はセレベス島(ボルネオの東)で暴徒から激しい抵抗を受けた後、南セレベスのバッツに上陸した。敵は死体256を遺棄して、逃走した。味方は3人殺され、26人負傷した。
米国武官(佐世保)
東京米国公使館付海軍大尉フラングマーフル、ボンシートホースの両氏は昨日来保し、本日午前当鎮守府を訪問し、更に病院にロ提督以下の露将校を見舞い、午後二時八分発の列車で長崎に向かった。
東京朝日新聞明治三十八年8月三日(木)
虚構虚傳 日本全権随員佐藤愛麿氏はまったく媾和条件については知らない
パナマ運河の不好望 同地の気候は到底日本人に適せず、百人中九十人は熱病者となる
虚構虚傳 1日上海経由ロンドンルータス社発
日本全権随員佐藤愛麿氏が語った所によると、米国新聞に日本の媾和条件なるものが掲載され、大いに世間の耳目を引いた事について、この新聞の報道は、虚構でなければ虚傳であり、自分はまったく媾和条件については知らない事を世間に知らせるよう求めた。
パナマ運河の不好望
パナマ運河開削に要する労働者の移民事業に関して、その見込みいかんによっては多数が渡航する事が考えられるので、当局に於いて田中内務省衛生技師及び桑港(サンフランシスコ)駐在領事が出張して調査した結果、同地の気候は到底日本人に適せず、強いてこれを行えば百人中九十人は熱病者となる結果を見る事になるので遂にこの契約は不成立となった次第である。
東京朝日新聞明治三十八年八月四日(金)
ウイッテ ウイッテは本日ニューヨークに到着した
露帝の傲語 露帝は、露国は土地、償金を敵に与えないと宣言した
日本の要求と大統領 ルーズベルト大統領はこれを(露帝の傲語)過大であると考えている
ウイッテ 3日ロンドン特約通信員発
ウイッテは本日ニューヨークに到着した。
彼はこれまでその語る所として伝えられている悲観的な予想を否認する旨を語り、時局の終了に対して多少の希望を持っている事を公言した。
露帝の傲語 3日ワシントン特約通信員発
露帝は、露国は土地、償金、その何れも敵に与える事は無い宣言した。
日本の要求と大統領 同上
日本の媾和条件を聞知しているルーズベルト大統領はこれを以て過大であると考えている。
東京朝日新聞明治三十八年八月五日(土)
樺太降伏 30日午前五時敵の軍使が軍務知事リヤブノフ中将の書簡をもたらした
媾和条件予想
パリ―発行新聞は日本の申し出る媾和条件と露国のこれに対する申出を報道した
樺太降伏 8月3日夜大本営着電
30日午前五時敵の軍使がタウランに来て、軍務知事リヤブノフ中将の書簡をもたらしたが、その要旨は次のとおり。
包帯材料及び医薬品の欠乏並びに負傷者に対する治療の不可能は人道上の問題があり、余をして閣下に向かい、戦闘の中止を申し込むを得ざるに至れり。
媾和条件予想
パリ―発行エクレール新聞の露都通信員は6月11日発電報を以て日本の申し出る媾和条件と露国のこれに対する申出とがおおよそ次のようになる由報道したと言われている。
日本より申し出ると思われる条件(略)
露国のこれに対する申出
一、 償金は一切拒絶する事、日本が若しこの要求に固執するならば露国はあくまでも戦争
を継続する。
二、 南部及び中央満州(ハルピンまで)を清国に還付し、日本の民政及び軍政的保護の下に置く事
三、 韓国を日本の保護国とし、その港湾に軍事的占領を行う事、但し韓国皇帝を現帝位に存し置く事
四、 旅順の割譲
五、 東清鉄道の割譲
六、 シベリア鉄道を世界貿易の為に開放する事
七、 ウラジオを自由港とする事
八、 樺太の割譲
九、 中立国に居る軍艦の割譲は拒絶する事
十、 25年間極東に軍艦を置かない事は拒絶する事
東京朝日新聞明治三十八年八月六日(日)
英佛新協約 川漢鉄道に関し、佛国との協約が成立したので、遠からず条約締結の運びになるであろう
全権会同順序 日露両国の全権委員及び随員は八月五日午前九時ニューヨークを出発し、オイスターベイに赴き
英佛新協約(支那り権問題) 4日ベルリン特約通信社発
英国衆議院に於いて外務次官ベルシイ伯は、次の宣言を行った。
川漢鉄道に関し、佛国との協約が成立したので、遠からず条約締結の運びになるであろう。又山東省に於ける利権を独占しているとの独逸の非難は無根であり、門戸開放主義を破棄している証拠は何一つとしてなかった。
全権会同順序 (外務省着電)
日露両国の全権委員及び随員は八月五日午前九時ニューヨークを出発し、オイスターベイに赴き、同所にて日本全権委員及び随員は先ず大統領の座乗している軍艦メーフラワー号に至り、大統領に謁見し、露国全権委員も又等しくメーフラワー号に至り、謁見し、次に大統領は両国の全権委員を紹介し、終わって日本全権委員一行は軍艦ドルフィン号にて、露国全権委員一行はメーフラワー号にてポーツマスに向け出帆し、来る七日午前十時に同港に到着の予定である。
東京朝日新聞明治三十八年八月七日(金)
談判開始の劈頭 ウイッテは、談判開始の劈頭に必ず我が要求条件の全部を聞く事を求めるであろう
大統領と両国全権 大統領ルーズベルト氏は本日(五日)日本全権委員及び随員合計五名を謁見した
談判開始の劈頭 5日ポーツマス特派員発
ウイッテは、談判開始の劈頭に必ず我が要求条件の全部を聞く事を求めるであろうと彼らの随員は語った。彼らは我が要求は過大であると推測しているがその程度はどれほどであるか早くこれを聞きたいと思っている事はウイッテも語っている。故に開会の初めにこの事があれば談判の成否が決まるのは早くなるのではと思われる。
大統領と両国全権 5日ワシントン特約通信員発
大統領ルーズベルト氏は本日(五日)日本全権委員及び随員合計五名を謁見した。
彼らの米国到着が露国全権委員よりも早かった為であり、露国委員より三十分前に迎接したのである。
尤も大統領はその前日(四日)に一応形式的にウイッテを謁見していた。
東京朝日新聞明治三十八年八月八日(土)
平和の祝杯挙がる この時ルーズベルト大統領は杯を挙げて、永久の平和の新たに成るべき事を希望しつつ、両国国民の繁栄を祝した
平和の祝杯挙がる 6日ワシントン特約通信員発
ルーズベルト大統領の快走艦メイ、フラワー号に於いて、先ず日本の小村男爵、高平氏一行を延見(えんけん)した。この時19発の礼砲が発射された。小村全権は米国人民が一行に対して表した好意に対して大統領に感謝した。
次いで軍艦チヤツタヌウガ号も又露国全権を乗せて到着し、礼砲は前に同じ。
小村、ウイッテ両首席全権及び随員一行は大統領の催した午餐会の席上に於いて、互いに紹介され、懇親を結んだ。
この時ルーズベルト大統領は杯を挙げて、永久の平和の新たに成るべき事を希望しつつ、両国国民の繁栄を祝した。
会見は火曜日(8日)に開始される予定である。
東京朝日新聞明治三十八年八月九日(日)
談判地到着延引 ウイッテ氏はボストンからの知らせによると氏は、同夜到着せず7日夜到着する
排米運動と外商 支那と商業関係が厚い列国が互いに連合して支那政府を諭すべき時期が既に来ていると信じられる
談判地到着延引 7日ポーツマス特派員発
ウイッテ氏は風浪の為船に酔い、6日ボストンの南ロードアイランド州ニューポートに上陸し、汽車にてボストンに到着し、一泊する予定であったがボストンからの知らせによると氏は、同夜到着せず7日夜到着するとの事で、その為全権のポーツマス着は8日の晩か9日の朝と思われる。
排米運動と外商 8日上海特派員発
排米団結がますます強大になるに従い、露国機関新聞紙等は声を高くして、排外的性質があるものと見做して、熱心に之を主張する為、居留外人も幾分か影響され、英国人は英公使に対して、又外人の商業会議所は首席公使に電報して、支那政府に忠告する事を建議した。
今日までには排米運動は決して、一般的排外の兆候は無く、単に米国に対する復讐に外ならないが、支那と商業関係が厚い列国が互いに連合して支那政府を諭すべき時期が既に来ていると信じられる。
東京朝日新聞明治三十八年八月十日(月)
ポーツマス談判場 日露媾和談判地として両国全権が会合する家屋は、米国海軍鎮守府内の将校集会所である
ポーツマス談判場 7月16日ポーツマス特派員発
既電の様に平和談判地は北米合衆国ニューハンプシャー州ポーツマスに決定した旨去る十日国務省秘書官ピーアス氏の名で発表された。同地は大西洋に面し、夏期は避暑地として知られた所である。日露媾和談判地として両国全権が会合する家屋は、米国海軍鎮守府内の将校集会所であるが、この家屋は先日落成したばかりの最も新しい建物で、三階建てである。
両国全権は、毎日対岸のホテルより船にて談判場まで通う筈である。
談判場は全て政府の建物であり、平素でも番兵を配置しており、その筋の許可なくては出入する事が出来ず、両国委員が静かに国家の大事を協議するには最良の地と言う事が出来る。
東京朝日新聞明治三十八年八月十一日(水)
露国の態度如何 戦争の勃発前に露国が領有していた土地については、露国全権が絶対にその割譲を拒絶するであろう
露国の態度如何 9日ロンドン特約通信員発
ロンドンのデーリー、テレグラフ紙特派員は露国の態度について、官紙以外から入手した各種の報道を電報しているが、その内最も注意すべきは、戦争の勃発前に露国が領有していた土地については、露国全権が絶対にその割譲を拒絶するであろうという事である。樺太も又これに含まれるが、日本が若し樺太の割譲を主張するならば、戦争を継続する事になるであろう。露国は償金に付いても同様の意見を持っており、若し償金の支払いを受け入れるならば、自ら己の全敗を認める事となるとしている。
東京朝日新聞明治三十八年八月十二日(木)
九日の会見 本日(9日)日露全権の非公式会見があり、双方の全権委任状は妥当なものと認められた
媾和条件開示 日本の媾和条件は今朝(10日)正式にウイッテに交付された
開示条件と続戦 アーリー、テレグラフの特派員は日本の条件によっては、露国は戦争を継続する
九日の会見 9日ワシントン特約通信員発
本日(9日)日露全権の非公式会見があり、双方の全権委任状は妥当なものと認められた。
談判には英仏の両国語を併せて使用し、又仏語を以て永久の記録を作成する事に決定した。次の会見は木曜日(10日)である。
媾和条件開示 10日ロンドン特約通信員発
日本の媾和条件は今朝(10日)正式にウイッテに交付された。その内容は未だ明らかでない。
開示条件と続戦 同上
ロンドン、アーリー、テレグラフの談判地特派員は日本の条件が、若し露国が承諾する事が出来ないものであるならば、露国は日本が疲弊に陥るまで戦争を継続するであろうと電報している。
東京朝日新聞明治三十八年八月十三日(金)
商務卿、大統領に反対する 大統領ルーズベルト氏は、支那人排斥法が極東における米国の商業上の利益を著しく害する事を認め、労働者階級に属しない支那人に対しては、その渡米入国を妨げない方針を明らかにした
商務卿、大統領に反対する (支那人排斥問題について)
大統領ルーズベルト氏は、支那人排斥法が極東における米国の商業上の利益を著しく害する事を認め、移民官及び在清米国領事に訓令して、労働者階級に属しない支那人に対しては、その渡米入国を妨げない方針を明らかにした。
移民問題に関して直接の責任者である商務卿メトカフ氏は、ルーズベツト氏に反対である事は紛れもない事実である。
学生、旅客、官吏、実業家に属する支那人と苦力を区別する事が極めて困難な場合が多く、この様な場合に入国を拒絶する方針を取らなければ、支那苦力は続々と合衆国に入り、その結果は全く移民法の精神を無視する事になる。これがメトカフ氏の主張である。氏はカルフォルニヤ州の出身で、支那人排斥の中心とも称すべきカルフォルニヤ州民の歓心を買うのに汲汲とした結果でもある。
東京朝日新聞明治三十八年八月十四日(土)
独逸の媾和観 独逸政府は再三、媾和談判は大いに望みがあるとの報告に接している
英艦隊北航の件 英国政府は英独両国間の関係を改善させる望みがあると考えている
独逸の媾和観 13日ベルリン特約通信社発
独逸政府は再三、媾和談判は大いに望みがあるとの報告に接している。日本全権の強硬な態度は大いに世間の注意を惹起している。
英艦隊北航の件 同上
英国政府は海峡艦隊がバルチック海を巡航することによって、英独両国間の関係を改善させる望みがあると考えている。
東京朝日新聞明治三十八年八月十五日(日)
媾和特報ウイッテは、日本全権が提出した条件に対する回答を日本全権に送ったが、償金の支払い及び樺太の割譲を拒絶した。
媾和特報 ワシントン特電
12日ウイッテは、日本全権が提出した条件に対する回答を日本全権に送ったが、償金の支払い及び樺太の割譲を拒絶した。その他の条件は、これを談判の基礎とする為に条件付きで了承した。次回の会見は月曜日(14日)である。
媾和の成否は、或いはこの日を以て決定するかも知れない。両国全権は媾和談判の不調に終わる事を信じている。
露都にては、日本の条件を苛酷であるとして、主戦論が再び起こり、戦争を継続す意思が見られる。
東京朝日新聞明治三十八年八月十六日(月)
媾和特報 我々の親友である在ポーツマス通信員は媾和の前途に対して悲観的な見込みを立てている。
媾和特報 14日ロンドン特約通信員発
我々の親友である在ポーツマス通信員は媾和の前途に対して悲観的な見込みを立てている。
両国全権は土曜日(12日)に条件の討議に着手した。逐条で順次審議されると思われるが但し樺太割譲及び償金の問題は後回しとする事に決定した。
第一の問題は朝鮮に関するものである。
露国は朝鮮における日本の優越権を承認するが露国と朝鮮の国境付近に要塞を築造する事に反対する。
ウイッテは談判の進行を公にする事を提議したが小村はこれに反対した。
東京朝日新聞明治三十八年八月十七日(水)
媾和特報 公報(露国全権側のもの)の言う所によれば、日露両国全権は既に媾和条件の初めの三カ条について合意した。
媾和特報 15日ワシントン特約通信員発
公報(露国全権側のもの)の言う所によれば、日露両国全権は既に媾和条件の初めの三カ条について合意した。
その第一条に於いて、露国は韓国における日本の優越な地位と日本の韓国政治幇助の特権と認め、且つ韓国が全く露国の勢力圏外である事を承認し、第二条に於いて日露両国は互いに満州から撤兵し、両国共に同地方に於ける特権を放棄し、且つ清国領土保全の主義を尊重する事並びに列国に対して、同地方の門戸を開放すべき事を約し第三条に於いて露国はハルピン以南の鉄道を日本に割譲する事を承諾した。
東京朝日新聞明治三十八年八月十八日()
媾和別報 信頼できるポーツマス電報によれば、媾和談判の前途は暗澹としている。
韓国、満州、旅順、遼東半島に関する箇条だけは既に確定された。
媾和進行別報 ポーツマス来電によると日露媾和条件第二条及び第三条は昨日議定された。
媾和別報 16日ロンドン特約通信員発
信頼できるポーツマス電報によれば、媾和談判の前途は暗澹としている。
韓国、満州、旅順、遼東半島に関する箇条だけは既に確定された。
次の課題は、露国の極東海軍力を制限する件、及び中立国に逃走した軍艦の引渡の件であるが露国はこの二件については日本の要求を受け入れない決心であると呼号している。
媾和進行別報 16日上海経由ロンドンルータス社発
ポーツマス来電によると日露媾和条件第二条及び第三条は昨日議定された。これは満州撤兵及ぶ同地方に於ける露国特権の放棄、並びにハルピン以南の東清鉄道譲渡に関するものである。
東京朝日新聞明治三十八年八月十九日()
媾和特報 第七条の討議を開始し漸く午後四時となってまず第七条を終わり、直ちに第八条に移り、午後七時となって決定された
同上別報 第七条はハルピン以南の鉄道の割譲に関するもので、又第八条は露国のウラジオ幹線鉄道の保有に関する条件を規定するものである。
談判の迅速な進行は大いに媾和成立の希望を増加させた。
媾和特報 16日ポーツマス特派員発
本日(16日)は定刻より会見があり、第七条の討議を開始し漸く午後四時となってまず第七条を終わり、直ちに第八条に移り、午後七時となって決定された。但し第七条は取り調べる所があり、今少し決定に至らないが明朝これを確定し第九条に移る予定である。
我が全権小村男爵はこの会見を終わり、ピアス秘書官の園遊会に赴き八時ホテルに帰った。
同上別報 16日ワシントン特約通信員発
第七条はハルピン以南の鉄道の割譲に関するもので、一部分協定され、又第八条は全部協定された。同条は露国のウラジオ幹線鉄道の保有に関する条件を規定するものである。
談判の迅速な進行は大いに媾和成立の希望を増加させた。
月曜日の会見で形勢が切迫していると報道したのは、露国が樺太の割譲を樺太の租借に留め、その代わり償金の額に於いて譲ろうとした事に原因があると信じられている。
露国が満州への新派兵を延期した事は望ましい徴候と信じられる。
東京朝日新聞明治三十八年八月二十日()
媾和特報 償金に関する商談は、完全に協定不調に陥ってしまった
露国は金銭の支払いを拒絶し、日本は熱心に之に固執する
媾和特報 18日ワシントン特約通信員発
償金に関する商談は、完全に協定不調に陥ってしまった。
露国は金銭の支払いを拒絶し、日本は熱心に之に固執する。
逃避した軍艦の引渡の件は未だ解決されていないようである。
談判は来月曜日(21日)をもって或いは破裂になるかもしれないと言われている。
露国側に於いては談判の前途に望みを持っていない。この際に於ける唯一の道は、日本が償金を譲り、露国が樺太の割譲を譲る外は無いとの声がある。
ロンドン、デーリーニュースは日本が償金の義務を免除するように勧告している。
東京朝日新聞明治三十八年八月二十一日(月)
18日会見別報 媾和談判は来る火曜日(22日)まで休会し、同日午後再び相会して議定書に調印する予定である。
18日会見別報 20日上海経由ロンドンルータス社発
媾和談判は来る火曜日(22日)まで休会する事となった。同日午後再び相会して議定書に調印する予定である。両国全権はその時までに各本国政府と協議を行い、最後の決定は東京及びセントピータスブルグ政府に於いて与えられる。
談判は要求条件第十一条に於いて不調となり、第十二条日本に対してシベリア沿岸に於ける漁業権許可の件は露国に於いて同意した。
東京朝日新聞明治三十八年八月二十二日(火)
媾和続報 昨日の電報の様に、米国大統領は金子男爵を通じて我が国に譲歩を求めてきたけれど、我が態度は頗る強硬であり、一歩も譲らず又大統領はローゼン男爵に向かい、露国は今日の様な態度を棄てて、大いに譲歩する必要があると勧告
媾和続報 20日午前8時ポーツマス特派員発
昨日の電報の様に、米国大統領は金子男爵を通じて我が国に譲歩を求めてきたけれど、我が態度は頗る強硬であり、一歩も譲らず若し譲るとしても極僅かであり、単に申し訳程度である為、大統領も我が態度の動かす事が出来ない事を認め、遂に勧告を中止した。
又一方ローゼン男爵は昨日大統領を訪問した。当日大統領はローゼン男爵に向かい、露国は今日の様な態度を棄てて、大いに譲歩する必要があると勧告し、且若し今日の様な態度で、いささかも変わる事が無いようであれば、余は、余の意見を発表し、我は温和な干渉的方法を講ずる事もあるかもしてないと述べた。
これに対してローゼン男爵は、我が皇帝に電奏し、御返事を待ち、その後我々の態度を決定すると語ったとの風説が盛んである。
東京朝日新聞明治三十八年八月二十三日(水)
媾和特報
日本強硬の伝言
ローゼン男爵が大統領を表敬した際、大統領は我国の態度は強硬であると語った様である
敵師の声言
又頻りにリネウイッチ将軍から露軍の有望を報じて来ており
露全権の主張
償金は一文も支払わないが、東清鉄道を清国に売り渡したその代金及び中立港に於いて武装を解除した軍艦を代償に見積り、その他俘虜の費用等を日本に与える
26日迄
平和談判は来る26日迄には必ず善悪何れとも落着を見る
媾和特報 21日午前八時ポーツマス特派員発
日本強硬の伝言
一般に伝えられる所によれば、ローゼン男爵が大統領を表敬した際、大統領は我国の態度は強硬であり、ある程度までは譲歩するかも知れないが、それは僅かである事を語った様である。
敵師の声言
又頻りにリネウイッチ将軍から露軍の有望を報じて来ており、昨今ウイッテは、露軍は決して戦いを厭うものでなく、若し談判が決裂したならば、必ず花々しい戦闘を行うと言っている。
露全権の主張
又露国側より漏れてきた説によれば、償金は一文も支払わないが、東清鉄道を清国に売り渡したその代金及び中立港に於いて武装を解除した軍艦を代償に見積り、その他俘虜の費用等を日本に与えるときは合計五億円位となると思われので、従って償金は支払わない。
この伝聞は確かにウイッテ等の唱える所であり、露国は如何にもこの位の程度で負担を免れようとしていると思われる。
26日迄
又余が信ずべき人の説によれば、平和談判は来る26日迄には必ず善悪何れとも落着を見るであろう。
東京朝日新聞明治三十八年八月二十四日(木)
媾和特報 ローゼン男爵が大統領に面会した時、男爵の答弁は大統領を満足させたとの説があると同時に明日22日午後3時からの会見に於いて破裂を見る様な事は無く、無事に談判は継続されるであろうとの意見が多い。
媾和特報 21日午後8時ポーツマス特派員発
ローゼン男爵が大統領に面会した時、男爵の答弁は大統領を満足させたとの説があると同時に明日22日午後3時からの会見に於いて破裂を見る様な事は無く、無事に談判は継続されるであろうとの意見が多い。
既に22日の会見に必要な書類その他の準備は双方とも、完全に終わりただ明日の午後3時を待つのみとなっている。
この様な状況なので我が全権も本日は各特派員と共にホテルの前面に於いて記念撮影を行った。そして今日まで悲観説を唱えていた新聞も、大統領とローゼン男爵との会談後は楽天主義に変わったものが多いには注意すべきである。
東京朝日新聞明治三十八年八月二十五日(金)
媾和特報 またまた来る26日迄会見が延期となった。
タフト乗船帰航 汽船マンチュリヤ号がマニラより帰港したが、フィリピン土人の男女学生36名(内女3名)が米国留学の途中で乗船していた。
媾和特報 23日午後4時ポーツマス特派員発
午後2時から会見が行われ、またまた来る26日迄会見が延期となった。
タフト乗船帰航[長崎]
汽船マンチュリヤ号がマニラより帰港したが、フィリピン土人の男女学生36名(内女3名)が米国留学の途中で乗船していた。この船はタフト氏一行を乗せ、マニラに送り、当市長宛て歓待の謝礼の信書を託し、又来るフィリピン統治策の一環として今後数回、土人の学生を米国に送ると船員は語った。
解説:タフト氏は1901年から1904年までフィリピンの初代知事を成功裡に務め、1904年には、ルーズベルト大統領がタフトを陸軍長官に指名、1908年には第27代米国大統領となった。
東京朝日新聞明治三十八年八月二十六日(土)
講和特報 本日午前9時半から会見が予定されていたが、正午12時に達する頃まで何の音沙汰もなく、ただ諸説が紛々たるのみであった。
米国の激震 合衆国中部及び東部一帯に1886年以来の激震があり、テニシー州ナッシュビル市では家屋の崩壊や人畜の死傷が甚だしい。
講和特報 23日午後1時ポーツマス発
本日午前9時半から会見が予定され、実に本日の会見は大切であるので人々待ち構えていたのに、正午12時に達する頃まで何の音沙汰もなく、ただ諸説が紛々たるのみであった。
12時を1、2分過ぎる頃、又会見は来る26日迄延期するであろうとの噂が流れた。或いはこれ程までの延期は無く、昼食後更に午後2時から会見し、これまで決定した分だけの議定書に調印するとの説もあり、要するに難題の解決が未だ成らず、現在の所和戦何れとも判定し難い。
米国の激震 24日ワシントン特約通信員発
合衆国中部及び東部一帯に1886年以来の激震ガアリ、テニシー州ナッシュビル市、メンフィス市、アルカンサス州リツル、ロツク地方の被害が最も多く家屋の崩壊や人畜の死傷が甚だしい。
東京朝日新聞明治三十八年八月二十七日(日)
媾和別報 ロンドン、モオーニング、ポスト掲載のポーツマス電報は平和の見込みが十分あると繰り返し、露国が償金五億円を支払う意思がある事を確信している。
媾和別報 26日上海経由ロンドンルータス社発
(五億の償金)、(露帝の責任)
ロンドン、モオーニング、ポスト掲載のポーツマス電報は平和の見込みが十分あると繰り返し、露国が償金五億円を支払う意思がある事を確信している。
又タイムス掲載のニューヨーク電報によれば、米国人は日本の要求を以て正常であるとし、若し露帝が尚戦闘を継続することに決定するならば、米国人は彼を以て、此の上の人命亡失に対する絶対的責任を負うべき者と認めなければならない。
東京朝日新聞明治三十八年八月二十八日(月)
媾和特報 樺太に関する交譲提議は、その方向に関しては双方が既に之を承諾しており、ただその程度をどうするか未だ決定していないのみと報じられている。
償金論 タイムスは社説では、日本は裁判に勝った人の様に、その費用を要求する権利がある
媾和特報 26日ワシントン特約通信員発
其の一 樺太分割
樺太に関する交譲提議は、多少の変更が考えられるが、その方向に関しては双方が既に之を承諾しており、ただその程度をどうするか未だ決定していないのみと報じられている。
其の二 大統領と全権
大統領ルースベルト氏は現在両全権と交渉に努めている。
其の三 露帝の譲歩
ウイッテが新たに本国政府から受けた訓令は、露帝が譲歩すべき徴候を示し、望みを繋ぐに足るものである。
償金論 26日上海経由ロンドン特約通信員発
タイムスは社説に於いて次の様に論じている。
日本は裁判に勝った人の様に、その費用を要求する権利がある。そしてこれを放棄せざるを得ない理由は無い。日本はこの談判を以て日露の態度を世界の裁判に訴えており、英国が如何なる判決を与えるかは吾輩の言説を待つまでもない。
東京朝日新聞明治三十八年八月二十九日(水)
媾和特報
(露帝の訓電)(捕虜収容費) 別電のごとく今朝露帝からウイッテに宛てた電報は、捕虜に対しては何程でも多くの金額を支払う事を辞せずとあるのみ
(26日の会見) 本日26日樺太問題について再度議論されたが、決定するに至っていない
媾和特報
(露帝の訓電)(捕虜収容費) 26日午後4時ポーツマス特派員発
別電のごとく今朝露帝からウイッテに宛てた電報は、捕虜に対しては何程でも多くの金額を支払う事を辞せずとあるのみ。
(26日の会見) 26日午後5時ポーツマス特派員発
本日26日樺太問題について再度議論されたが、決定するに至っていない。又二八日午後三時迄談判は延期となった。本日の談判の主題は樺太問題であり、二八日には是非これらが決定されると思われる。
東京朝日新聞明治三十八年八月三十日(木)
媾和特報
(調停余地の有無)
米国大統領は非常に尽力しているが、我が国の要求する諸件との間には大きな隔たりがあり、調停の余地の存在は疑わしい
(破裂は十中の九)
我が国の要求は露国に於いて到底応じ難いというに外ならず、然るに我が国も又到底露国の望みに応じ難いので談判破裂は十中の九迄確実である。
媾和特報 26日ポーツマス特派員発
(調停余地の有無)
米国大統領は非常に尽力しており、今日までに二回露国に向かって、この際媾和を成立させる事が出来る方法に関して勧告したが、第一回目は満足な回答を得る事が出来ず、漸く二回目要領を得た回答があったそうである。けれども我が国の要求する諸件との間には大きな隔たりがあり、調停の余地の存在は疑わしい。
(破裂は十中の九)
今朝露国皇帝からウイッテへの訓電が到着した。この訓電によれば我が国の要求は露国に於いて到底応じ難いというに外ならず、然るに我が国も又到底露国の望みに応じ難いので談判破裂は十中の九迄確実である。
東京朝日新聞明治三十八年八月三十一日(金)
媾和特報
(平和成立説) 本日の会見によって平和への望みが確実となった。しかし我が国がある物を譲歩したとの説が高い。
媾和特報
(平和成立説) 29日正午ポーツマス特派員発
本日の会見によって平和への望みが確実となった。しかし我が国がある物を譲歩したとの説が高い。
只今正午十二時をもって平和談判は継続される事となった。条約締結の議定書に調印を終わり、会見が継続する事と決まった。
同上続報
(日本譲歩説)
償金は無く樺太の半分を露国に渡す事に決定した。