明治43年11月

111

ウルゲイ内乱 31日タイムス社発

モンテビデオ来電=ウルガイ国内乱は、いよいよ容易ならざる情勢になろうとしている。約1万の武装した革命党員が集合中である。

解説1030日「ウルゲイ内乱」の続報

土国軍艦代金支払 31日上海経由路透社発

伯林来電=ジーボーストの報道に依れば、トルコは先般購入したドイツ軍艦2隻の代金18百萬マルクを支払った。

解説1031日「獨逸と土国公債」に見られるように、財政的にトルコは厳しい中、支払った様である。

波斯形勢不穏 同上

ブシャイア来電=リンガー港に3千の暴徒が侵襲しそうな危急の情勢である。同地方の官憲は到底外国人を保護する力が無い為、英国軍艦フォックスは水兵百名を上陸させた。

解説1018日「英国政府の警告」~1025日「土耳其の排英熱」の記事に見られるように、ペルシャに内乱が又発生している。

 

112

土紙の勃牙利攻撃 1日タイムス社発

コンスタンティノープル来電=青年トルコ党の機関新聞は、激しくブルガリアを攻撃する論文を掲載した。

解説:ブルガリアは、500年間、オスマン帝国の領土であったが、露土戦争の結果トルコはロシアに敗れ、ブルガリアは、列強の協議でブルガリア自治公国となっていた。

しかし明治41年トルコで青年党の革命が起こると、その機に乗じて独立を宣言している。

英兵波斯上陸 1日上海経由路透社発

英国3等巡洋艦フォックス号は、ペルシャのリンガに100名乃至160名の水兵及び大砲4門を上陸させた。これは同地の知事代理及び英国副領事が、略奪が行われる危険がある為、これに対し純民を保護するよう要求した事に依る。ペルシャ政府は、これについて英国公使に対し、直ちに水兵を引き上げる事を要求したが、公使は秩序が回復したら直ちに引き揚げるつもりであると回答した。

波斯廃帝年金 同上

テヘラン来電=ペルシャ政府は、英露両国が通牒を送り、支払いを要求した結果、前ペルシャ皇帝に対する前払い年金3ケ月分を支払った。

解説:前ペルシャ皇帝は、年金を貰う約束で退位し、露国に亡命している。

 

113

西蔵問題後報 2日タイムス社発

ポンペイ来電=チベットに派遣された清国使節は、ダライラマと会見したが要領を得ず、ラマの配下の高僧は同使節と交渉中であるが、使節の官位がこの任に適していない様である。

日本関税反対 3日上海経由路透社発

ノッチンガム来電=マンチェスター商業会議所の委員は、日本の新関税は英国の貿易に非常な打撃を与えるものであるとして、外相サーグレーに抗議を提出しようとしているが、当地の製造業者は、この運動を共にする事に決定した。

波斯政府の抗弁 同上

テヘラン来電=ペルシャ外務大臣は、111日報道の英露両国政府の公文に対し、廃帝の年金支給遅延は、英露両国がペルシャの金員調達を妨害した結果であると抗弁した。

解説112日「波斯廃帝年金」の関連記事である。

波斯の暴乱 1日伯林特約通信社発

ペルシャのシラスに於いて、又々騒乱があり、その為露国内閣会議は露兵を撤退させないことに決定した。

関税改正不可認 内国電報2日発

▽鳩山和夫

退譲的外交 対米移民に関し、一地方の労働者階級及び一種の政策家の輿論を盾に、これを国家の外交問題として我が政府に迫った結果、我が政府はこれに譲歩して、一種の秘密的協約を與へ、事実上対米移民を厳禁するに至った。我が政府は国内の輿論及び利益を顧みず、外国の一地方の輿論に屈したのである。

▲屈譲の続出 今回もまた日露協約、韓国合併などで、随分英国に気兼ねをした上に、又々国税問題について、彼に膝を屈して、この改正案を議会に提出しようとしている。この様なことは、実に屈譲的外交の続出で、国家の威信を失墜するものと言わざるを得ない。

▲日英同盟と関税 又世人は日英同盟の為に譲歩は止むを得ないと説く人もいるが、日英同盟は日英両国の利益が一致するが故に成立し存続するもので、日英同盟と関税問題は別個に観察するのが当然と信じる。

(一部抜粋)

解説:鳩山和夫の長男は一郎、孫に威一郎、曽孫に由紀夫と邦夫がいる。

 

114

土耳其の譲歩 3日タイムス社発

ウイ-ン来電=モンテネグロ国境に於ける紛争を終止させる為、トルコはモンテネグロ国境内に逃亡したキリスト教徒及びイスラム教徒のアルバニア人に大赦を与える旨の約束をした。

解説:モンテネグロとその南にあるアルバニア共にオスマントルコ領であったが、この当時モンテネグロは1878年モンテネグロ公国として独立していた。

佛国内閣改造 3日上海経由路透社発

佛国内閣は辞職した。首相ブリアン氏と社会党員の労働大臣との間に意見の衝突があった様である。しかし総辞職にはならないと思われ、首相ブリアン氏は既に内閣改造に同意している。留任者は多分外務及び陸海軍の両大臣のみと思われる。

米国艦隊欧州巡航 2日紐育特派員発

米国常備艦隊戦闘艦16隻は、2日出港し、英国及び佛国を訪問する途に就いた。

 

115

英艦巨砲の影響 4日上海経由路透社発

ウイーン来電=英国海軍で今回13吋半砲を採用するに至った為、オーストリアは、非常に苦しい破目に陥っている。すなわちオーストリアで新造中ドレッドノート型戦闘艦は進水前にその造船計画を廃棄するか、しからざれば建造費を非常に増額せざるを得なくなるであろうとノイエ、フィエブツスは論評した。

罷業益大ならんとす 3日紐育特派員発

ニューヨーク市運送業人夫の同盟罷業は、3日を以って最も重大な危機となす。即ち調停が失敗する恐れがある為である。もし失敗すれば、全ての荷車業者が同じく加担し、大々的な罷業が起こると言われている。

練習艦隊ホノルル着 3日桑港特派員発

練習艦隊浅間、笠置の両艦は、2日無事ホノルルに到着、在留日本人の歓迎を受けた。

解説:練習艦隊は1016日横須賀を出港している。

 

116

露獨両帝会見失敗 5日タイムス社発

露都来電=露国新聞は、露帝のポツダム訪問について、今回の両帝会見は、獨逸が露国外交方針の一変を気遣い、獨露親交の利益を露国に自覚させようと切望している証拠であると論評している。

又獨逸に於いても、世間一般は、今回の露帝の訪問に対し、左程に注意を払わず、そしてベルリンには、多数の社会党が集合しているけれど、同党の党首等はこの機会に運動を行う事を希望していないようである。

解説4年後の1918年に第1次世界大戦が始まる。ドイツは、先にロシアを叩いた後、反転しフランスを攻撃している。

同盟罷工解決 4日紐育特派員発

同盟罷工は、4日中に解決しようとしているが、会社側の言動がはなはだ強硬である。

解説:昨日の記事「罷業益大ならんとす」の続報である。

117

英獨兵器競争 6日上海経由路透社発

工業新聞の報道によれば、独逸人は英国に於いて13吋半砲を作っている事を昨年より知っていた。そして相当以前からこれに打ち勝つ大砲を作ろうと焦っているのみならず、非常に破壊力のある新式砲弾を工夫している。

孫逸仙の演説 6日同上

本社のシンガポール通信員の報道によれば、孫逸仙はピーナンに於いて演説し、清国の反乱を頻りに煽り、且今後、由々しき大事件が起こるであろうと警告した。その筋では、孫逸仙のこの演説を非常に非難した。

解説:孫逸仙とは、中国革命の父として国父と呼ばれている孫文である。漢民族として独立しようとした広州での武装蜂起が頓挫し、日本に亡命している。頭山満を通じ平岡幸太郎から東京での活動費、生活費の支援を受け、又広大な住居は犬養毅に斡旋されている。そして、19111010日、武昌で起きた武装蜂起が各省に伝搬し、辛亥革命に発展した。この演説はその1年前に行われたものである。

 

108

獨逸官憲攻撃 7日タイムス社発

ベルリン来電=佛国官憲が同盟罷業を処置するのに、非常に迅速、敏活を極めた点と獨逸官憲がベルリン暴動参加者に対する方法が非常に遅延であった点とは盛んに対照比較されつつある。

解説1016日「佛国罷業蹉跌」に見られるように、首相は、鉄道のストに対し、鉄道人夫を予備兵として招集するという強硬手段を執り、迅速に収拾している。

波斯廃帝旅行 7日上海経由路透社発

ペルシャ前皇帝及び全皇后は、オデッサを出発した。前皇帝はリベイラ浴場に於いて、2か月療養した後オデッサに帰る予定である。前皇后はメッカに向かった。

解説:112日「波斯廃帝年金」に見られる様に、退位させられ、露国に亡命した波斯前皇帝は英露の圧力で年金を受け取ることが出来た。

 

109

巴奈馬運河工事進捗 8日タイムス社発

パナマ特派員が、大西洋より太平洋に至る迄のパナマ運河工事を視察した。開削工事の3分の2は終了し、ガツン湖堤防の半分、大西洋に面した水路工事の4割、太平洋方面に面した水路工事の2割は完成した。運河技師長ゲータル大佐の言によれば、同運河が実際に完成するのは1914年の始めになる予定で、万事計画の通りに、些細な錯誤もなく、又効果的な方法で進行している。そして一般大衆は運河に砲台を築造する事に賛成している。

解説:パナマ運河は、1880年、スエズ運河を作ったフランスのレセップスが工事を開始したが黄熱病等で1889年、会社が倒産した。1903年米国の陸軍が中心となって工事を開始し、1914年8月15日完成した。

土獨借款約定 7日伯林特約通信社発

4分利付きのトルコ借款1千百万ポンド引受契約は、トルコ大蔵大臣及び獨逸銀行団の間で締結され、調印を終わった。この金額の内、6百万ポンドは、本年前払いされる予定で、残額は明年支払われることになっている。

 

1110

大統領の巴奈馬行 8日紐育特派員発

タフト大統領のパナマ行は、未だ決定されていないが、随行員は随員5名と新聞記者6名であり、軍艦テンチラシー号に搭乗する予定である。

加奈陀の軍艦 同上

カナダに於いて、7日、初めてカナダ国旗を翻した軍艦を太平洋に浮かべた。

 

1111

佛国内閣信任 10日タイムス社発

巴里来電=佛国代議院に於ける同盟罷業問題の討論は、極左と極右の両派が激烈な政府攻撃を行った後に終了した。首相ブリアン氏は立ち、「若し代議院が鉄道同盟罷業に際し、政府が効果的な手を打たなかったと宣言するならば、内閣は辞職するであろう」と繰り返したが、結局信任投票は通過した。但し政府側の多数は87票に減少した。

解説1014日「佛国鉄道罷業と陸相」、1016日「佛国罷業蹉跌」に、ストに対する政府の強硬手段の記事がある。

英国労働者強硬 10日上海経由路透社発

英国汽缶製造職工等は、5,650票対15,563票の多数を以って、雇主との協定を否決した。

 

11月12日

米国同盟罷業落着 11日タイムス社発

ニューヨーク来電=運送人夫の同盟罷業は人夫の勝利に帰した。市長が調停の労を執り、諸会社は暴行者に対する訴訟を取り下げる事に同意した。

解説:11月5日「罷業益大ならんとす」の続報である。 

米墨紛議起こらん(原因は米人の野蛮的行為) 10日紐育特派員発

米国テキサス地方に於いて、一人のメキシコ人が殺人罪を犯した。同地方住民が、無法にも同人を木の枝に吊るし、石油を注いで焼き殺した。この報道がメキシコに達すると市民の激昂がその極に達し、在メキシコ公使館に石を投げ、米国国旗を引き下ろして、これを踏みにじり、米国人と見れば、石を投げ、容易ならざる事態となってしまった。その為、在米メキシコ公使は、ワシントン政府と協議を行い、次いで米国政府よりメキシコに対し公式に謝罪させるよう求めるに至った。しかしメキシコ人民の激昂が非常に激しく、現在のところ容易ならざる情勢である。

 

11月13日

トルストイ隠遁 12日タイムス社発

モスクワ来電=露国文豪トルストイ翁は、他人に知られざるある目的地に赴いた。これ完全に引退し、その年末を終わらせようとするためである。

解説:トルストイは「戦争と平和」「アンナカレニーナ」等で知られる文豪で、11月10日頃、夫人との不和が原因で家出をし、鉄道で移動中、悪寒を感じ下車、11月20日死去している。

印度反乱鎮定 同上

ラングン来電=サイゴンの暴動に加わった反徒3名は殺され、125名捕虜となった。警官は首領を追求中である。

解説:当時は、ベトナム、ラオス、カンボジャはフランスの植民地で、佛領印度支那と呼ばれていた。

墨人憤怒の結果 11日紐育特派員発

メキシコ人の激昂事件は、未だ沈静していないが、国力の差が甚だしい為、大事には至らないと思われる。しかし今回の事件を契機に、米国内、特にメキシコに近い所に住むメキシコ人は、米国人と物議が起こり、帰国し去る者が多い。国務卿ノックス氏は、決して大事に至らずと言っている。

解説:昨日の記事「米墨紛議起こらん」の続報

 

11月14日

米国領事館襲撃 12日紐育特派員発

メキシコのテオタート市(米国境付近)の米国領事館が、メキシコ人によって窓、その他を破壊された。しかし首都メキシコは、比較的平穏と言われている。

墨国人保護 同上

テキサス地方にては、メキシコ人に危害を加える者が居る為、同州知事は、非常な注意を以って、同国人を保護している。これらの人々は、皆米国の農業家に雇われている者である。

杜伯隠遁別報 13日浦潮特派員発

モスクワ来電によれば、トルストイ伯は、10日突然夫人に一書を遺して、最早帰来しないと書置きし、何処かに隠遁した。

解説:昨日の「トルストイ隠遁」の続報である。

1115

英国議会解散近し(貴族新造の上奏) 14日タイムス社発

英国議会解散は、多分2、3週間以内に行われると思われる。政府は、選挙の結果如何によるが、場合によっては貴族新造を皇帝に要請するつもりである。先般アスキス首相が皇帝を訪問し、拝謁した際、これに言及したと想像される。

波斯内部鎮撫策 14日上海経由路透社発

テヘラン来電=ペルシャ政府は、前カルマンシャ知事をファルス知事に任命する事に決定した。これは、その地方に於いて、同人と同じ種族の人々によって、道路警備の任に当たらせようとする意図で行われた。又特別委員等は2名の欧州将校をファルスに派遣する様主張した。

 

1116

南米革命失敗 15日タイムス社発

南米ウルガイ共和国の革命党員等は無条件で降伏した。

解説111日「ウルゲイ内乱」の続報

炭鉱主の譲歩 15日上海経由路透社発

英国ウエールスの石炭抗持主等は、一般賃金率に少額の増加を行うことに同意した。

米国大艦武装 14日紐育特派員発

米国政府の二大戦闘艦には、14吋砲10門を備え、装甲の厚さは12吋と言われている。

解説115日「英艦巨砲の影響」に見られる様に、戦艦の能力は大砲の口径に最も影響されるが、米国は最大の14吋砲を装備しようとしている。

杜翁行方不明 14日伯林特約通信社発

文豪トルストイ伯爵の行方が判明した。伯爵は、その姉妹の住んでいる寺院に隠れていた。

 

1117

米墨国境騒乱 15日桑港特派員発

テキサス州アックスクリンス市来電によれば、300名以上のメキシコ人が武装して、私刑に対する復讐の為に、テキサスに向かい侵入しようとしている。同地付近の住民も又、防御のために武装し、警戒中である。牛飼い及び農夫等は反撃する為に国境に向かっている。

解説1113日「墨人憤怒の結果」の続報 

杜翁発病別報 16日浦潮特派員発

ツーラー発の電報によれば、トルストイ伯爵は、コゼリックからロストに向かう途中、列車内に於いて発病、セスタボー駅にて下車し、療養中である。発熱が40度あり、容態不良である。

解説1114日「杜伯隠遁別報」の続報

 

1118

杜翁長逝 17日タイムス社発

露国文豪トルストイ伯爵は長逝した。

杜伯長逝と英紙 同上

タイムスは、トルストイ伯爵の逝去に言及し、日露戦争中にタイムス紙上に掲載された

伯爵の書簡及び檄文を回顧し、露国官憲は種々の損害を忍んで、トルストイ伯爵を殉教者とする(即ちトルストイ伯爵に極度の迫害を加える意)誘惑を排したと説いた。

解説:日露戦争中にタイムス紙上に掲載された伯爵の書簡について、明治3782日「トルストイ伯 日露戦争論」で説明している。これは露国で発表できないので英国の新聞で発表されたものである。

座礁英艦長懲罰 17日上海経由路透社発

支那艦隊所属の巡洋艦ベツフオルド号座礁事件の軍法会議は、同号艦長フイツヘルバート氏に対して、怠慢の結果同艦を座礁させたものとしてこれを罷免し、且厳重な譴責を加えた。

露国旗凌辱事件 同上

テヘラン来電=カシヤンに於いてバクネアク兵等が、反徒探索の為に、家宅侵入をし、露国領事館員及び国旗に凌辱を加えたが、露国は、この件について、ペルシャに対し、謝罪し、且賠償をするよう要求した。ペルシャ外務大臣は、これに答えて、同人はペルシャ臣民であるからで、ペルシャはこの領事館員の任命を認めない。但し国旗に対する無礼があったのは遺憾とする所で、犯人は懲罰されなければならないと言明した。

 

1119

露兵駐屯抗議 18日上海経由路透社発

テヘラン来電=更に、露国軍隊100余名が国境を越えて、ペルシャに入りそうだとの情報を受け、昨日、ペルシャ外相は、露国軍隊の増派及びカズイン及びダブリツの両地に引き続き露兵が駐屯する事に対して抗議を申し込んだ。然るに露国公使館通訳は、即日の午後、公文書を以って、これに回答し、露国公使は露兵の駐屯に対して、この上何らの抗議をも受けとる事はできないと言明した。

解説:ペルシャの北半分は露国の勢力下にある。

巴奈馬合併否認 17日桑港特派員発

タフト大統領は、今回、パナマに到着し、直ちに同政府に向かって、決して合併するようなことは無いと断言したと言われている。

巴奈馬運河竣工期 同上

パナマ運河竣工は、1913111日である。そして一般の船舶を通行させるのは19151月であると工事監督長は大統領タフト氏に語った。

 

1120

日本軍艦注文 19日上海経由路透社発

日本はビッカース造船所に、2万7千トン以上のドレッドノート型巡洋艦(費用250万ポンド)の建造を発注し、且大砲、装甲等を含む一切の装備品を英国に建造させる契約を行った。日本が英人の技能を嘆賞し、且其の同盟の意が誠実である事を示そうとの希望にでたと解される。

杯中の蛇影 18日紐育特派員発

現在、セントルイス市で開催中の米国連合労働大会に於いて、カナダ労働組合代表者は、次の様な言葉を述べた。日本人の侵入に依って戦争は早晩惹き起こされると思われ、労働組合は元来戦争に反対すると雖も、白色人種の優勢を保持する為には、これに対し準備しなければならない。カナダ人は黄色人を排斥しようとする理由の下に、銃を肩にして、米軍に加わり、日本と戦うであろう云々

杜翁の病状 18日伯林特約通信社発

トルストイ伯爵は、肺炎に悩んでいるが、容態は改善している。非常に衰弱しているに拘わらず、回復の望みが、全く無いわけではない。

 

1121

波斯と英国 20日上海経由路透社発

テヘラン来電:ペルシャ外相の抗議に答え、英国公使は、ペルシャの主権を侵害しているという外国軍隊の駐屯問題に関する交渉を拒絶し、無政府的状態を終止させる為に提議された措置を否認した。しかし英国は南部ペルシャの商路を警備する費用に充てる為、関税付加税を設けることには同意する旨言明した。

解説:ペルシャの南部は英国の勢力圏下であり、北部は露国の勢力圏下である。

獨逸の焼餅 18日桑港特派員発

今回米国艦隊が英仏両国を訪問しつつあるのに対し、獨逸の親米者は、何か故意があって獨逸に来ないのではないかと頻りに怒っている。

解説114日「米国艦隊欧州巡航」にある様に英仏を訪問している。

墨国の革命軍 同上

去る18日メキシコのブウエブラ市に内乱が起こり、革命軍と警察及び軍隊との衝突があり、170名の死者と数百名の負傷者を出した。

解説:現大統領は1976年以来の長期独裁政権であったが、大統領選挙を巡り、武装蜂起が発生し、全国に波及するメキシコ革命の始まりである。

 

1122

英国の対波通牒 21日タイムス社発

テヘラン来電=英国はペルシャに新通牒を送り、極めて慎重にその政策を説明し、少しも同国の主権を侵害する様な意思が無く、又ペルシャが適当な鎮撫策を定めるならば、大いにこれを歓迎しようとしている事を切言した。ペルシャ政府は最近時局の発展に鑑み、大いにこの説明に重きを置き、真意を諒察するであろうと思われる。

杜伯愈長逝 21日上海経由路透社発

アウタボウオよりの報によれば、文豪トルストイ伯爵は、20日午前6時、長逝した。

墨国反将遁亡 20日桑港特派員発

テキサス州サン.アントニオ市来電によれば、メキシコ前大統領候補であったマデロは、サンアントニオに滞在しているが、政府は彼を内乱の盟主と認め、米国政府を通じて逮捕しようとしたが、いち早くこれを嗅ぎ付け、部下を率いて

メキシココアウ州に走った様である。

新艦注文事情(某海軍中将談) 内国電報(21日発)

△内地製造能力

帝国海軍は、378年戦役当時筑波、生駒の両装甲巡洋艦の建造に成功し、爾来13,750t乃至14,620t級の装甲巡洋艦即ち前記隻及び鞍馬、伊吹以上4隻の建造を遂げ、尚19,250tの薩摩、19,800tの安芸の2大戦艦の好成績を得て、帝国海軍の建艦能力を発揮すると同時に、近くは20,800tの川内艦体の進水を終え、今現に姉妹艦摂津の建造に手を染めつつある。日本の建艦能力は表面上余裕がある様に見えるが、伊吹の如きも進水後4年の星霜を経て漸く艤装を完成し得た程で、英米獨の海軍国が起工後2乃至3年で成就するのに比較すれば、同日の論にあらず。これ一に製艦設備の欠如にある。

△内地製艦の得失

内地主義者は(1)正貨の流出(2)労銀の低廉(3)回航費の節約(4)一部秘密の確保(5)職工技術の上達を主張する。

反対論は(1)先進国への注文は、監督官の見学により得る所が甚大(2)国際関係で利する所あり(3)私立造船所相互のバテットを比較的容易に知り得る。(4)製艦造兵に関する大勢を実地に見分し得る事(5)秘密部は内地回航後に、これを改める事は容易な事等を主張している。外国注文を時々するべしという者の第1の主張は最も留意すべき点である。

 

1123

練習艦隊桑港着 21日桑港特派員発特派員

練習艦隊司令官八代少将よりの無線電信に依れば、同艦隊は22日午前9時入港の予定であり、在留民はボートを仕立てて金門港外で出迎える筈

墨国革命運動 21日紐育特派員発

メキシコ市に於いて革命的暴動が起きたが軍隊の為に鎮圧された。同地には戒厳令が敷かれている。又テキサス州に近いサンパ、クルズ市に革命軍が起こり、テキサス地方に居たメキシコ人2,000人が国境を越えて革命軍に投じた。米国軍隊は、テキサス州サラトレと言う所に集合し、何時でも実戦に応じる準備をしている。メキシコ市場に於いては、米国人の保護に尽力しつつあるも、政府反対の新聞が頻りに米国の対メキシコ政策を攻撃するので、米人の危険が少なからず。

杜伯葬儀問題 同上

トルストイ伯爵は20日朝、遂に逝去した。各寺院は同伯爵の葬儀を拒絶している。

 

1124

墨西哥革命猖獗 23日タイムス社発

ワシントン来電=メキシコ大使は、大統領ジアス氏が、容易に政府の優越的勢力を維持することが出来ると宣言した。しかし今回の暴乱は数年来に於いて最も重大なものである。諸地方に於いて激烈な戦闘がり、陸軍は大いに活動している。

波斯対英露 同上

テヘラン来電=当地方の指導者(イマーム)達は、英露の政策に反対する激烈な檄を発した。これは英国の目的が最近変動したとの意味を含むものである。諸新聞は第2の英国通牒が第1の通牒の為に生じた悪感情を和らげたことを指摘した。

練習艦隊桑港着 22日桑港特派員発

浅間、笠置の練習艦隊は、20日早朝、金門港外に到着したが、濃霧の為、直ちに入港することが出来ず、午後3時、抜錨した。米国太平洋艦隊は、演習地より来港し、盛んに歓迎した。八代少将始め乗組員一同は元気旺盛である。在留民は25日歓迎会を開く予定である。

杜伯国葬の議 23日浦潮特派員発

来る金曜日の議会に10月党より、トルストイ伯爵を国葬とし、命日を露国の喪日とすることを発議する予定である。

 

1125

墨西哥の革命 23日上海経由路透社発

メキシコに於いて容易ならざる革命が起こった。この首領は前大統領候補マデロ氏であり、既に数個の都市を占領し、関係区域7州に亘っている。新聞の検閲束縛は厳格を極めている。

日本艦隊歓交 23日桑港特派員発

練習艦隊八代司令官は、23日朝、サンフランシスコ市長その他を訪問し、22日の歓迎会に対する答礼をなし、正午両艦長を従え、太平洋司令官バーリー少将の午餐会が行われる旗艦バージニア号に赴いた。候補生は全員11時より上陸し、在留民の案内にて市内を見学し、午後3時領事官宅の懇親会に行き、出席の居留民から同地方の事情についての話を聴いた。

杜伯死後の栄誉 23日伯林特約通信社発

露帝はトルストイ伯爵の死に関する内閣の報告を見、特にこれに「最大なる露国文豪の長逝を悲しむ」旨を付記した。又露国下院に於いては、各党員が列席し、公式に伯爵の長逝を悼む旨宣言した。そしてコンスタンチン大公を議長とする露都学士院は、ボリヤナに於ける伯爵の葬儀に列席を希望する会員の為、特別列車を出すことを決議した。

 

11月26日

伯国水兵反乱 25日タイムス社発

リオデジャネイロ来電=ブラジル軍艦6隻の水兵等は、反乱を起こし、将校を放逐し、其の3名を殺害した。又彼らは政府に対し、水兵の体刑を排し、俸給を引き上げ、且水兵一同を赦免し、罰することなき旨の保障を与えるよう要求し、これを聞かない場合には、市街を砲撃すると威嚇した。大統領はある保障を与えた。

英艦急行 同上

現在アルゼンチンのブエノスアイレスに居た英国軍艦はリオデジャネイロに向かった。

墨国内乱形勢 24日紐育特派員発

メキシコの革命内乱は、今日までの處、叛徒の勢力が盛んであり、政府軍は振るわなかった。しかし昨日より勢力を回復し、叛徒は占領地を取り返されている。首府では確実に各国人の安全を保障している。兎も角も内乱を速やかに鎮定しなければ、米国よりの干渉があり、キューバやパナマ等の様な運命に陥るであろうとして、メキシコ政府は鎮定に努めている。又一方叛徒は、現在特使をワシントンに派遣し、何事か協商中である。

タフト氏運河談 同上

タフト大統領は、パナマ運河の視察を終え、ワシントンに帰着した。氏は、パナマは1915年の1月には必ず開通するであろうと述べ、若し必要があれば1913年の11日以後、米国戦闘艦を通航させることが出来るであろうと述べた。

 

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伯国水兵反乱終息 26日上海経由路透社発

リオデジャネイロ来電=ブラジル議会は大赦を決定し、反乱水兵等は降伏した。政府は、彼らが要求した体刑の廃止及び水兵を増加して、その労役を少なくする件を承諾した。

波斯前帝年金催促 同上

英国外相サー、グレーは英露公使館よりゴラムスを派遣し、ペルシャ前皇帝に対する年金の支払いを要求し、且この支払いを受けるまで、待機せよとの訓令を与えた件について質問を受けたが、これに答えて、これはペルシャの習慣によるものであると言明した。

墨国内乱形勢 25日紐育特派員発

メキシコ革命軍は、政府の為に打ち破られ、今日までに占領した場所を皆悉く奪われ、漸く一カ所を保っているのみである。現在、メキシコ領事の報告によると、革命軍の押さえているのはグレロと言う場所のみであり、その他は悉く鎮定した。革命軍は兵器、糧食が欠乏し、遂に自滅的の状態に陥っていると言われている。

 

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露国のペルシャ占領 27日上海経由路透社発

テヘラン来電=露国兵士600余名は、カスウインに向かう途中のエンセルスに上陸したとの情報があり、外交筋の間では、露国の占領が永久的なものとなりつつあるとの意見が増加している。

解説:ペルシャの北半分は露国の勢力圏下にある。前皇帝も露国を頼って亡命している。

練習艦隊歓迎 同上

26日早朝、練習艦隊候補生140名は、在留邦人の案内で、タマルバイ山に登った。同夕、米国太平洋艦隊司令官バーリー少将は、旗艦ウエスト、バージニア号艦上に於いて、矢代少将以下浅間、笠置両艦艦長及び士官30余名に晩餐を供した。次いで午後8時よりフエアモントホテルにて先般、延期となっていた天長節招宴が催された。八代司令官以下日米人の出席が多く、極めて盛会であった。

墨国革命鎮定 26日紐育特派員発

メキシコの革命は、遂に全く政府軍の鎮定する所となった。

米国の人口 同上

昨年国勢調査の結果によれば、米国の人口は全ての属領地を合わせて1億3百99万2千7百57人に達し、ハワイ、アラスカのみを本土に加えれば、9千3百47万千6百48人である。

 

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墨国革命失敗 28日タイムス社発

メキシコ市よりの特報によれば、北部は次第に平穏になりつつあり、政府は国内を鎮定する事が出来ると思われる。責任を解する人士は至る所で政府に援助しており、革命党の名望は、彼らが匪賊の助けを受けた為に大に落ちた。

伯刺西反乱止む 28日上海経由路透社発

リオデジャネイロ来電=反乱水兵は皆降伏し、将校等は再びそれぞれ司令の職務を執った。

 

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獨逸海軍予算膨張 29日タイムス社発

ベルリン来電=1911年度の獨逸海軍予算は、22,527,778ポンドという未曽有の支出額を定め、その内4,486,000ポンドは公債支弁である。戦艦建造及び砲装備費は、12,513,650ポンドの多くの額となっている。戦闘艦16隻の建造費に対する分払い金16回分は、これより支出しなければならない事になっているようである。

チェンバレン演説 同上

英国の前柘相チェンバレン氏は、選挙演説に於いて、1911年に開かれる英帝国領土会議に於いて母国及び植民地間の互恵的貿易につき一致を見る事が出来なければ、これは国家の不幸であると説き、母国が少しでも植民地の産物に就き、特恵的な取扱いを与える場合には、植民地はこれと均等な譲与を母国の製造品に与えるであろうと言明した。

土国外交弁明 28日伯林特約通信社発

トルコ宰相ハツキ、バーシャはトルコの外交政策に関する弁明書を発表し、トルコは獨墺伊三国同盟にも、又英仏露三国協商にも特に接近し、味方しようとするものではない、又ルーマニアと軍事的協約を締結したこともないと言明した。

解説:第1次世界大戦では、結局獨逸側についた。

練習艦隊告別宴 28日桑港特派員発

 

練習艦隊は29日当地を去るに臨み、28日告別の為、旗艦浅間に太平洋司令官バーク少将及び米韓6隻の艦長、幕僚を招待し、午餐を供した。又午後2時より日米人をアットホームに招待して、種々の余興があり、何れも非常に満足して退艦した。